JP2004357621A - 豆乳及び豆腐の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】青臭みが少なく、かつ大豆の良い香りが強い豆乳や豆腐を製造するための原料大豆の脱皮処理もしくは脱皮脱胚軸処理の方法とその後の大豆の浸漬方法を開発すること。
【解決手段】マイクロ波照射を行って丸大豆内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を、80〜100℃の熱水に浸漬処理して用いることを特徴とする香味の良好な豆乳の製造方法並びに該豆乳に豆腐製造用豆乳を前者:後者=1:3〜1:4(容量比)の比率で混合した混合豆乳を用いることを特徴とする香味の良好な豆腐の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】マイクロ波照射を行って丸大豆内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を、80〜100℃の熱水に浸漬処理して用いることを特徴とする香味の良好な豆乳の製造方法並びに該豆乳に豆腐製造用豆乳を前者:後者=1:3〜1:4(容量比)の比率で混合した混合豆乳を用いることを特徴とする香味の良好な豆腐の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、豆乳及び豆腐の製造方法に関する。さらに詳しくは、マイクロ波照射を行って丸大豆内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を用いた香味の良好な豆乳の製造方法、及び該豆乳を用いた香味の良好な豆腐の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
豆乳は、良質のタンパク質や人体に有用な健康保持(促進)機能を有する成分を多く含んだ栄養性に富む食品であり、豆腐や油揚げなどの種々の加工食品に用いられるほか、一部は飲料としても利用されている。
一方、豆乳には、幾つかの忌避要因(ヘキサナール等に由来する青臭さ、サポニンやイソフラボンによるエグ味や収斂味など)があり、特に飲料用豆乳の場合にこれらの忌避要因が問題となり、消費拡大が妨げられている傾向があった。
【0003】
飲料用豆乳の製造方法は、脱皮又は脱皮脱胚軸された大豆を粉砕し、次いで熱水とともに加熱した後、磨砕し、さらにおからを分離したのち、脱臭処理し、必要に応じて香料などを調合し、さらに均質化処理を行った後、殺菌、充填工程を経て、飲料用豆乳製品とするのが一般的である。
このような飲料用豆乳の製造工程における上記の忌避要因に対する対策としては、青臭みについては、その発生の原因となるリポキシゲナーゼなどの酵素を加熱により失活させる工程や、一旦生成してしまった青臭みを除去するための脱臭工程を加えることが一般的であり、またエグ味や収斂味成分を軽減させるためには、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を原料として使用して製造するのが一般的である。
【0004】
また、豆腐の製造においても、上記の忌避要因を軽減するために、大豆浸漬処理を高温水中にて短時間で行う方法(例えば、特許文献1参照)や、脱皮処理もしくは脱皮脱胚軸処理した大豆を用いる方法(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
しかし、例えば脱皮や脱皮脱胚軸する工程において、単に機械的な処理のみを行うと、子葉を破壊してしまい、子葉中に含まれるリポキシゲナーゼが活性化され、かえって青臭み成分であるヘキサナール等が多く発生してしまうという問題があった。
【0005】
これらの欠点を改善する方法としては、脱皮もしくは脱皮脱胚軸処理を行う前に大豆を加熱処理することによって、リポキシゲナーゼの活性を抑えたり、子葉が破壊されることを極力防止する方法が最も有効であると考えられる。
脱皮や脱皮脱胚軸処理の前に大豆を加熱処理する方法としては、既に、熱風乾燥機やオーブン等を用いて丸大豆を加熱して大豆品温を40〜120℃に高めて大豆を軟化させた後に、ローラー等で半割れの状態にする方法が提案されており(例えば、特許文献3参照)、大豆品温約60℃で脱皮処理した例が開示されている。
【0006】
しかし、該文献に開示された方法は、青臭み発生を抑制しつつ脱皮もしくは脱皮脱胚軸を行うには有効であるが、脱皮もしくは脱皮脱胚軸処理前の加熱工程において、大豆の良い香りを著しく損なってしまうという欠点があった。
なお、大豆の良い香りとは、枝豆に含まれるような硫黄化合物系の大豆の甘い香りと定義することができ、この香りは一般的に好ましいとされるものであって、ヘキサナール等に代表される青臭みとは区別されるべきものである。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−57157号公報
【特許文献2】
特開昭62−232349号公報
【特許文献3】
特開昭59−82063号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記の如く、青臭みが少なく、かつ大豆の良い香りが多い豆乳や豆腐を製造するための原料大豆の処理方法、特に脱皮もしくは脱皮脱胚軸の方法、並びに該大豆を用いた豆乳及び豆腐の製造方法を開発することが求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、大豆の良い香り成分を損なわない脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理前の加熱方法について検討した結果、丸大豆に対してマイクロ波照射を行い、丸大豆の内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
ちなみに、マイクロ波加熱は大豆の内部からの加熱が可能であり、従来技術であるオーブンや熱風乾燥機等の外部からの加熱と比較すると、非常に短時間で全体を均一に目的温度まで上昇させることが可能であり、しかもマイクロ波を用いて大豆の内部から加熱することにより、大豆の表面温度は、従来技術と比較すると、低温に保たれることを見出した。このことにより、大豆の良い香気成分の揮散を防止できるものと推定できた。
【0010】
すなわち、本発明はマイクロ波照射を行って丸大豆内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を、80〜100℃の熱水で浸漬処理して用いることを特徴とする豆乳の製造方法に関する。
さらに、本発明は上記の方法で製造した豆乳に、豆腐製造用豆乳を、前者:後者=1:3〜1:4(容量比)の割合で混合した豆乳を用いることを特徴とする豆腐の製造方法に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する大豆は、特に限定はなく、国内産大豆のほか外国産大豆も任意に使用でき、これらの混合物であってもよく、中でもスズユタカ、トヨマサリ、ツルノコといった風味が良いとされる品種の大豆を使用することが望ましい。
【0012】
本発明において、原料大豆は大豆不快成分のうちの一つである収斂味が強いダイジンなどのイソフラボン類が存在する種皮部を、剥皮機等を用いる機械的手段によって除去する脱皮処理や、さらに上記イソフラボン類のほかにサポニン等を多く含有する胚軸部を除去する脱皮脱胚軸処理を施した後、利用される。
胚軸部は、例えば粗砕ローラーで子葉部分と種皮部を剥離させた後、風力分級機や篩分機などにより除去することができる。
さらに、本発明においては、上記の脱皮処理または脱皮脱胚軸処理を行う前に、大豆を予めマイクロ波照射装置によりマイクロ波を照射して加熱処理し、大豆の内部温度を65〜110℃程度に高める必要がある。
【0013】
マイクロ波照射装置としては、一般に、約1〜1000GHzの波長の電子線を照射して食品を加熱する機能を有する装置が利用可能であるが、実用的には915MHz又は2450MHzの波長のものが好適に利用される。
マイクロ波照射条件は、マイクロ波を用いて大豆の内部温度が65〜110℃の温度に達する条件であれば特に限定されず、またマイクロ波の照射方法としては、比較的均一に照射できる条件であれば、バッチ式、連続式のいずれの方法でもかまわない。
【0014】
ここで、大豆内部温度が65℃未満であると、リポキシゲナーゼなどの酵素活性を十分抑制することができず、青臭みが強くなるので好ましくない。
一方、110℃を超えると、焙煎臭が強くなり豆乳の風味が悪くなるので好ましくない。
【0015】
マイクロ波加熱工程に続く脱皮工程では、ローラーなどで脱皮する方法が望ましいが、子葉を損傷しない脱皮方法であれば特に限定はされない。しかし、大豆の内部温度が65℃未満にならないうちに脱皮がなされなくてはならない。
65℃未満になると、脱皮工程において子葉が破壊されやすくなり、リポキシゲナーゼなどの酵素活性が十分抑制されにくく、豆乳の青臭みが強くなるので好ましくない。なお、胚軸部は、上記した方法で除去することができる。
【0016】
このようにして得た脱皮大豆もしくは脱皮脱胚軸大豆を、続いて水に浸漬する。この時の水の使用量は、特に限定はないが、通常は大豆1重量部当り2.5〜4.5重量部が適当であり、室温〜100℃の温度で5分〜30時間程度浸漬するのが適当であり、好ましくは80〜100℃の高温水中で20〜30分間程度浸漬するのが青臭み発生を防止する上でよい。
浸漬によって膨潤した脱皮大豆もしくは脱皮脱胚軸大豆は、通常は浸漬水と分離した後に、磨砕して用いられるが、本発明においては、大豆の良い香り成分が水に溶解しやすいことを見出したので、浸漬水とともに磨砕して利用するのが好ましい。
【0017】
その後、常法により、煮沸して煮呉を得る。次いで、常法によりオカラを分離して豆乳を得る。
飲料用豆乳を製造する場合は、上記で得られた豆乳について、バキュームバンなどの脱臭装置を用いて脱臭処理を行った後、必要に応じて香料などを添加して調合し、さらにホモジナイザー等を用いて均質化処理を行い、加熱により殺菌した後、容器に充填して飲料用豆乳とすることができる。
【0018】
また、上記豆乳、すなわち本発明により製造した豆乳から豆腐を製造する場合は、該豆乳単独ではなく、必ず通常の豆腐製造に用いられる豆腐製造用豆乳と混合して調製した混合豆乳を用いて製造すべきである。
なお、上記豆乳と豆腐製造用豆乳の混合比率は、前者:後者=1:3〜1:4(容量比)程度が好ましく、これより上記豆乳の混合比率を高めると、凝固剤を添加して豆乳を凝固させようとした場合に、十分な凝固性が得られない。また、上記豆乳の混合比率を低下させると、上記豆乳由来の甘い良い香りが弱まるため、好ましくない。
【0019】
上記の混合豆乳を凝固させるには、該豆乳を5℃程度に一旦冷却した後、通常用いられるグルコノデルタラクトンや塩化カルシウム、硫酸マグネシウムなどの凝固剤を適量(例えば、豆乳当り0.4重量/容量%程度)添加した後、85℃で30分間程度加熱する方法が好ましく、この方法で凝固させて豆腐を製造することが可能である。
このようにして、青臭みが少なく、かつ大豆の良い香りが強い豆乳を製造することができ、さらに、この豆乳を用いることにより香りの良い飲料用豆乳や豆腐を製造することが可能となる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明について試験例及び実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0021】
試験例1
脱皮前加熱の際の大豆内部及び外部の温度分布を比較すべく、乾熱乾燥機加熱には乾熱乾燥機VR−420(温度設定100〜180℃)(アドバンテック東洋社製)を用い、マイクロ波加熱には家庭用電子レンジRE−EM6−H(平均出力500W・h−1)(シャープ社製)を用いて、大豆を加熱し、その際の温度変化や大豆の子葉を乖離させて脱皮させるのに必要な圧力を調査した。
すなわち、それぞれ、50gの小粒大豆を均一に敷き詰めて加熱を開始し、その後経時的に大豆を5粒づつサンプリングして、針型温度測定用センサBT−11E−TC1(安立計器社製)を用いて、大豆の表面温度もしくは内部温度(子葉の中心部温度)の変化を測定した。また、同様に重量計上に載せた5粒づつの大豆に圧力をかけ、大豆の子葉が乖離して脱皮した時の圧力を測定した。各測定値は、計5粒の大豆を測定した値の内、最高値と最低値を除く残り3粒の測定値の平均値で表わした。
【0022】
乾熱乾燥機加熱の場合の変化を図1に、またマイクロ波加熱の場合の変化を図2に示したが、両者の加熱方法による内部温度と外部温度の変化を比較すると、乾熱乾燥機加熱によれば、内部温度に対して外部温度がかなり高めに推移するのに対して、マイクロ波加熱では、内部温度に対して外部温度が低めに推移することが確認された。
このような温度分布の差異が、両加熱方法における大豆の良い香りの強さの差異をもたらすものと推定された。
なお、内部温度が同一であれば、大豆の子葉が乖離して脱皮するのに必要な圧力値は乾熱乾燥機加熱とマイクロ波加熱との場合でほぼ同一であったことから、脱皮機で脱皮する際の子葉の破壊程度については、両加熱方法による違いは無いと思われる結果が得られた。
【0023】
試験例2
続いて、乾熱乾燥機加熱とマイクロ波加熱による加熱方法の違いによる豆乳の品質に及ぼす効果を検証するため、大豆内部温度を同じにした場合における加熱方法の相違による豆乳の品質の差異を確認する実験を行った。
すなわち、100gの小粒大豆を、試験例1で用いた乾熱乾燥機または電子レンジで、表1に示すような条件で加熱した。
【0024】
【表1】
第1表 加熱条件
【0025】
上記条件で加熱した大豆を、それぞれ、直ちに手で脱皮処理し、さらに手で脱胚軸処理して脱皮脱胚軸大豆を得た。
次いで、各々の脱皮脱胚軸大豆を100℃の熱水中にて30分間浸漬し、3.5倍(重量比)加水になるように調整し、その後ブレンダーで磨砕し、さらに圧搾機にてオカラを分離して豆乳を得た。
このようにして調製された各豆乳について、7人の検査員による官能評価を実施し、豆乳の品質を評価した。
評価は、青臭み、大豆の良い香り、焙煎臭について行い、その結果を表2に示した。
【0026】
【表2】
第2表 脱皮前加熱条件の違いと豆乳の官能評価結果
【0027】
表2の結果から、マイクロ波加熱及び乾熱乾燥機加熱のどちらにおいても、大豆が軟化しない内部温度(50℃)の段階では、青臭みが感じられるようになり、好ましくない結果が得られた。従って、青臭み防止の点から内部温度は65℃以上である必要があることが確認された。
また、大豆の良い香りについては、マイクロ波加熱の方が、乾熱乾燥機加熱に比べて、強くなる傾向が認められ、マイクロ波加熱が大豆の良い香りを発生させるのに効果的であることが確認された。なお、内部温度が高温になればなる程、大豆の良い香りは低下する傾向にあったが、マイクロ波加熱による内部温度が65〜110℃程度の範囲であれば、大豆のよい香りが十分に強く発生することが確認された。
一方、より高温の内部温度120℃においては、マイクロ波加熱の場合も焙煎臭が感じられるようになり、豆乳として好ましくない結果が得られた。
以上の結果、マイクロ波加熱による大豆内部温度の最適値は65〜110℃であることが確認された。
【0028】
試験例3
マイクロ波加熱によって調製した豆乳を用いて豆腐を製造する方法について検討した。
すなわち、試験例2の試験区2で調製したマイクロ波加熱豆乳に対して、市販の国産大豆100gを冷水中(10℃前後)にて18時間浸漬を行った後、4倍加水になるように水を加え、ブレンダー(Gester社製)を用いて15000rpmで5分間磨砕処理を行って呉を得た。この呉を圧搾式豆乳絞り機を用いてオカラと分離して調製した豆腐製造用豆乳を、所定の比率で混合して混合豆乳を調製した。
得られた混合豆乳に対して、にがりを0.4重量/容量%添加し、容器に充填して85℃、30分間の加熱を行って凝固させて充填豆腐を製造した。
このようにして調製した充填豆腐について、その性状を調べた結果を表3に示した。
【0029】
【表3】
第3表 混合豆乳の混合比と豆腐の性状
【0030】
この結果、マイクロ波加熱後に脱皮処理した大豆を用い、高温で浸漬処理して調製したマイクロ波加熱豆乳だけを用いた場合は、豆腐用凝固剤を用いても凝固反応が起きず、豆腐を製造できないことが判明した。
これに対して、通常の豆腐の製造に用いられる豆腐製造用豆乳を混合すると、次第に凝固性は向上し、豆腐が製造可能になる。一方、通常の脱皮処理を施していない大豆で調製した豆腐製造用豆乳のみを用いた場合は、マイクロ波加熱豆乳に由来する甘さや香りの良さが発揮されないことが分かった。
大豆由来の甘みや香りを十分発揮し、かつ豆腐としての凝固性が得られるような両豆乳の好ましい混合比率は、マイクロ波加熱豆乳:豆腐製造用豆乳=1:3〜1:4程度(容量比)であることが判明した。
【0031】
試験例4
試験例2の試験区1〜5及び対照区1〜5で得られた脱皮大豆を用いて調製した豆乳と、一般的な豆腐製造用豆乳とを1:3(容量比)の割合で混合した混合豆乳を用いて豆腐を製造した。なお、一般的な豆腐製造用豆乳は、試験例3と同様の方法で製造した。
このようにして調製した混合豆乳を用いた豆腐の製造は、混合豆乳に対して、にがりを0.4重量/容量%添加し、容器に充填して85℃で30分間加熱して混合豆乳を凝固させることにより製造した。得られた豆腐の品質を、試験例2と同様の方法で評価し、その結果を表4に示した。
【0032】
【表4】
第4表 脱皮前加熱条件の違いと豆腐の官能評価結果
【0033】
表4の結果から、マイクロ波加熱豆乳を用いて調製した充填豆腐及び乾熱乾燥機加熱豆乳を用いて調製した充填豆腐のいずれも、大豆の青臭みはほとんど感じられないことが分かった。
一方、大豆の良い香りについては、豆乳として、マイクロ波加熱豆乳を用いた場合の方が、乾熱乾燥機加熱豆乳を用いた場合に比べて、強くなる傾向が認められ、特に大豆の内部温度が65℃以上のものを用いたときに、良い香りが一層強くなることが確認できた。
しかし、大豆の内部温度が110℃を超えて120℃になると、マイクロ波加熱豆乳を用いた場合及び乾熱乾燥機加熱豆乳を用いた場合のいずれの豆腐も焙煎臭が強くなってしまうという結果が得られた。
以上の結果から、マイクロ波加熱により大豆の内部温度を65〜110℃に高めてから脱皮処理した大豆を用いて調製した豆乳を使用して充填豆腐を製造した方が、より好ましい豆腐を製造できることが確認できた。
【0034】
実施例1
市販の国産大豆100gに電子レンジRE−EM6−H(シャープ社製)を用いて発振周波数2450MHzのマイクロ波を45秒間(平均出力500W・h−1)照射し、大豆内部温度を65℃にして、平均水分含量約12.5%の加熱大豆を得た。これを直ちに手で脱皮、脱胚軸して脱皮脱胚軸大豆を得た。
この脱皮脱胚軸大豆を沸騰水中にて30分間熱水浸漬した後、この熱水浸漬水を捨てることなく該大豆を磨砕処理した。この際の最終的な加水量は脱皮脱胚軸大豆に対して3倍(重量比)加水になるようにした。
浸漬大豆の磨砕にはブレンダー(Gester社製)を用い、15000rpmで5分間磨砕処理した。その後、オカラと豆乳の分離には、圧搾式豆乳絞り機を用いた。
得られた豆乳は、青臭みもなく、大豆の甘さや良い香りに富むものであった。
【0035】
実施例2
市販の国産大豆500gを冷水中(10℃前後)にて18時間浸漬を行った後、4倍(重量比)加水になるように水を加え、ブレンダー(Gester社製)を用いて15000rpmで5分間磨砕処理を行って得た呉を圧搾式豆乳絞り機を用いてオカラと分離して豆腐製造用豆乳を調製した。
この豆腐製造用豆乳3.5部(容量)に対して、実施例1で調製した豆乳1部(容量)の割合で混合した混合豆乳を調製した。
得られた混合豆乳に対して、にがりを0.4重量/容量%添加し、容器に充填して85℃、30分間の加熱を行い凝固させて充填豆腐を製造した。
得られた充填豆腐は、青臭さがほとんどなく、かつ大豆の良い香りが豊かな優れた豆腐であった。
【0036】
【発明の効果】
原料大豆の脱皮処理もしくは脱皮脱胚軸処理前の加熱工程において、従来の乾熱乾燥機やガスオーブンを用いる方式では、大豆の良い香りが損なわれていたが、本発明のマイクロ波加熱方式によれば、青臭みの発生を防止でき、しかも大豆の良い香りを損なうことなく、脱皮大豆もしくは脱皮脱胚軸大豆を作成できる。それ故、本発明に従ってこの大豆を使用して豆乳や豆腐を製造すれば、香味の良好な製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾熱乾燥機加熱の場合の温度変化及び圧力変化を示す図である。
【図2】マイクロ波加熱の場合の温度変化及び圧力変化を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、豆乳及び豆腐の製造方法に関する。さらに詳しくは、マイクロ波照射を行って丸大豆内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を用いた香味の良好な豆乳の製造方法、及び該豆乳を用いた香味の良好な豆腐の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
豆乳は、良質のタンパク質や人体に有用な健康保持(促進)機能を有する成分を多く含んだ栄養性に富む食品であり、豆腐や油揚げなどの種々の加工食品に用いられるほか、一部は飲料としても利用されている。
一方、豆乳には、幾つかの忌避要因(ヘキサナール等に由来する青臭さ、サポニンやイソフラボンによるエグ味や収斂味など)があり、特に飲料用豆乳の場合にこれらの忌避要因が問題となり、消費拡大が妨げられている傾向があった。
【0003】
飲料用豆乳の製造方法は、脱皮又は脱皮脱胚軸された大豆を粉砕し、次いで熱水とともに加熱した後、磨砕し、さらにおからを分離したのち、脱臭処理し、必要に応じて香料などを調合し、さらに均質化処理を行った後、殺菌、充填工程を経て、飲料用豆乳製品とするのが一般的である。
このような飲料用豆乳の製造工程における上記の忌避要因に対する対策としては、青臭みについては、その発生の原因となるリポキシゲナーゼなどの酵素を加熱により失活させる工程や、一旦生成してしまった青臭みを除去するための脱臭工程を加えることが一般的であり、またエグ味や収斂味成分を軽減させるためには、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を原料として使用して製造するのが一般的である。
【0004】
また、豆腐の製造においても、上記の忌避要因を軽減するために、大豆浸漬処理を高温水中にて短時間で行う方法(例えば、特許文献1参照)や、脱皮処理もしくは脱皮脱胚軸処理した大豆を用いる方法(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
しかし、例えば脱皮や脱皮脱胚軸する工程において、単に機械的な処理のみを行うと、子葉を破壊してしまい、子葉中に含まれるリポキシゲナーゼが活性化され、かえって青臭み成分であるヘキサナール等が多く発生してしまうという問題があった。
【0005】
これらの欠点を改善する方法としては、脱皮もしくは脱皮脱胚軸処理を行う前に大豆を加熱処理することによって、リポキシゲナーゼの活性を抑えたり、子葉が破壊されることを極力防止する方法が最も有効であると考えられる。
脱皮や脱皮脱胚軸処理の前に大豆を加熱処理する方法としては、既に、熱風乾燥機やオーブン等を用いて丸大豆を加熱して大豆品温を40〜120℃に高めて大豆を軟化させた後に、ローラー等で半割れの状態にする方法が提案されており(例えば、特許文献3参照)、大豆品温約60℃で脱皮処理した例が開示されている。
【0006】
しかし、該文献に開示された方法は、青臭み発生を抑制しつつ脱皮もしくは脱皮脱胚軸を行うには有効であるが、脱皮もしくは脱皮脱胚軸処理前の加熱工程において、大豆の良い香りを著しく損なってしまうという欠点があった。
なお、大豆の良い香りとは、枝豆に含まれるような硫黄化合物系の大豆の甘い香りと定義することができ、この香りは一般的に好ましいとされるものであって、ヘキサナール等に代表される青臭みとは区別されるべきものである。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−57157号公報
【特許文献2】
特開昭62−232349号公報
【特許文献3】
特開昭59−82063号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記の如く、青臭みが少なく、かつ大豆の良い香りが多い豆乳や豆腐を製造するための原料大豆の処理方法、特に脱皮もしくは脱皮脱胚軸の方法、並びに該大豆を用いた豆乳及び豆腐の製造方法を開発することが求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、大豆の良い香り成分を損なわない脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理前の加熱方法について検討した結果、丸大豆に対してマイクロ波照射を行い、丸大豆の内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
ちなみに、マイクロ波加熱は大豆の内部からの加熱が可能であり、従来技術であるオーブンや熱風乾燥機等の外部からの加熱と比較すると、非常に短時間で全体を均一に目的温度まで上昇させることが可能であり、しかもマイクロ波を用いて大豆の内部から加熱することにより、大豆の表面温度は、従来技術と比較すると、低温に保たれることを見出した。このことにより、大豆の良い香気成分の揮散を防止できるものと推定できた。
【0010】
すなわち、本発明はマイクロ波照射を行って丸大豆内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を、80〜100℃の熱水で浸漬処理して用いることを特徴とする豆乳の製造方法に関する。
さらに、本発明は上記の方法で製造した豆乳に、豆腐製造用豆乳を、前者:後者=1:3〜1:4(容量比)の割合で混合した豆乳を用いることを特徴とする豆腐の製造方法に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用する大豆は、特に限定はなく、国内産大豆のほか外国産大豆も任意に使用でき、これらの混合物であってもよく、中でもスズユタカ、トヨマサリ、ツルノコといった風味が良いとされる品種の大豆を使用することが望ましい。
【0012】
本発明において、原料大豆は大豆不快成分のうちの一つである収斂味が強いダイジンなどのイソフラボン類が存在する種皮部を、剥皮機等を用いる機械的手段によって除去する脱皮処理や、さらに上記イソフラボン類のほかにサポニン等を多く含有する胚軸部を除去する脱皮脱胚軸処理を施した後、利用される。
胚軸部は、例えば粗砕ローラーで子葉部分と種皮部を剥離させた後、風力分級機や篩分機などにより除去することができる。
さらに、本発明においては、上記の脱皮処理または脱皮脱胚軸処理を行う前に、大豆を予めマイクロ波照射装置によりマイクロ波を照射して加熱処理し、大豆の内部温度を65〜110℃程度に高める必要がある。
【0013】
マイクロ波照射装置としては、一般に、約1〜1000GHzの波長の電子線を照射して食品を加熱する機能を有する装置が利用可能であるが、実用的には915MHz又は2450MHzの波長のものが好適に利用される。
マイクロ波照射条件は、マイクロ波を用いて大豆の内部温度が65〜110℃の温度に達する条件であれば特に限定されず、またマイクロ波の照射方法としては、比較的均一に照射できる条件であれば、バッチ式、連続式のいずれの方法でもかまわない。
【0014】
ここで、大豆内部温度が65℃未満であると、リポキシゲナーゼなどの酵素活性を十分抑制することができず、青臭みが強くなるので好ましくない。
一方、110℃を超えると、焙煎臭が強くなり豆乳の風味が悪くなるので好ましくない。
【0015】
マイクロ波加熱工程に続く脱皮工程では、ローラーなどで脱皮する方法が望ましいが、子葉を損傷しない脱皮方法であれば特に限定はされない。しかし、大豆の内部温度が65℃未満にならないうちに脱皮がなされなくてはならない。
65℃未満になると、脱皮工程において子葉が破壊されやすくなり、リポキシゲナーゼなどの酵素活性が十分抑制されにくく、豆乳の青臭みが強くなるので好ましくない。なお、胚軸部は、上記した方法で除去することができる。
【0016】
このようにして得た脱皮大豆もしくは脱皮脱胚軸大豆を、続いて水に浸漬する。この時の水の使用量は、特に限定はないが、通常は大豆1重量部当り2.5〜4.5重量部が適当であり、室温〜100℃の温度で5分〜30時間程度浸漬するのが適当であり、好ましくは80〜100℃の高温水中で20〜30分間程度浸漬するのが青臭み発生を防止する上でよい。
浸漬によって膨潤した脱皮大豆もしくは脱皮脱胚軸大豆は、通常は浸漬水と分離した後に、磨砕して用いられるが、本発明においては、大豆の良い香り成分が水に溶解しやすいことを見出したので、浸漬水とともに磨砕して利用するのが好ましい。
【0017】
その後、常法により、煮沸して煮呉を得る。次いで、常法によりオカラを分離して豆乳を得る。
飲料用豆乳を製造する場合は、上記で得られた豆乳について、バキュームバンなどの脱臭装置を用いて脱臭処理を行った後、必要に応じて香料などを添加して調合し、さらにホモジナイザー等を用いて均質化処理を行い、加熱により殺菌した後、容器に充填して飲料用豆乳とすることができる。
【0018】
また、上記豆乳、すなわち本発明により製造した豆乳から豆腐を製造する場合は、該豆乳単独ではなく、必ず通常の豆腐製造に用いられる豆腐製造用豆乳と混合して調製した混合豆乳を用いて製造すべきである。
なお、上記豆乳と豆腐製造用豆乳の混合比率は、前者:後者=1:3〜1:4(容量比)程度が好ましく、これより上記豆乳の混合比率を高めると、凝固剤を添加して豆乳を凝固させようとした場合に、十分な凝固性が得られない。また、上記豆乳の混合比率を低下させると、上記豆乳由来の甘い良い香りが弱まるため、好ましくない。
【0019】
上記の混合豆乳を凝固させるには、該豆乳を5℃程度に一旦冷却した後、通常用いられるグルコノデルタラクトンや塩化カルシウム、硫酸マグネシウムなどの凝固剤を適量(例えば、豆乳当り0.4重量/容量%程度)添加した後、85℃で30分間程度加熱する方法が好ましく、この方法で凝固させて豆腐を製造することが可能である。
このようにして、青臭みが少なく、かつ大豆の良い香りが強い豆乳を製造することができ、さらに、この豆乳を用いることにより香りの良い飲料用豆乳や豆腐を製造することが可能となる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明について試験例及び実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0021】
試験例1
脱皮前加熱の際の大豆内部及び外部の温度分布を比較すべく、乾熱乾燥機加熱には乾熱乾燥機VR−420(温度設定100〜180℃)(アドバンテック東洋社製)を用い、マイクロ波加熱には家庭用電子レンジRE−EM6−H(平均出力500W・h−1)(シャープ社製)を用いて、大豆を加熱し、その際の温度変化や大豆の子葉を乖離させて脱皮させるのに必要な圧力を調査した。
すなわち、それぞれ、50gの小粒大豆を均一に敷き詰めて加熱を開始し、その後経時的に大豆を5粒づつサンプリングして、針型温度測定用センサBT−11E−TC1(安立計器社製)を用いて、大豆の表面温度もしくは内部温度(子葉の中心部温度)の変化を測定した。また、同様に重量計上に載せた5粒づつの大豆に圧力をかけ、大豆の子葉が乖離して脱皮した時の圧力を測定した。各測定値は、計5粒の大豆を測定した値の内、最高値と最低値を除く残り3粒の測定値の平均値で表わした。
【0022】
乾熱乾燥機加熱の場合の変化を図1に、またマイクロ波加熱の場合の変化を図2に示したが、両者の加熱方法による内部温度と外部温度の変化を比較すると、乾熱乾燥機加熱によれば、内部温度に対して外部温度がかなり高めに推移するのに対して、マイクロ波加熱では、内部温度に対して外部温度が低めに推移することが確認された。
このような温度分布の差異が、両加熱方法における大豆の良い香りの強さの差異をもたらすものと推定された。
なお、内部温度が同一であれば、大豆の子葉が乖離して脱皮するのに必要な圧力値は乾熱乾燥機加熱とマイクロ波加熱との場合でほぼ同一であったことから、脱皮機で脱皮する際の子葉の破壊程度については、両加熱方法による違いは無いと思われる結果が得られた。
【0023】
試験例2
続いて、乾熱乾燥機加熱とマイクロ波加熱による加熱方法の違いによる豆乳の品質に及ぼす効果を検証するため、大豆内部温度を同じにした場合における加熱方法の相違による豆乳の品質の差異を確認する実験を行った。
すなわち、100gの小粒大豆を、試験例1で用いた乾熱乾燥機または電子レンジで、表1に示すような条件で加熱した。
【0024】
【表1】
第1表 加熱条件
【0025】
上記条件で加熱した大豆を、それぞれ、直ちに手で脱皮処理し、さらに手で脱胚軸処理して脱皮脱胚軸大豆を得た。
次いで、各々の脱皮脱胚軸大豆を100℃の熱水中にて30分間浸漬し、3.5倍(重量比)加水になるように調整し、その後ブレンダーで磨砕し、さらに圧搾機にてオカラを分離して豆乳を得た。
このようにして調製された各豆乳について、7人の検査員による官能評価を実施し、豆乳の品質を評価した。
評価は、青臭み、大豆の良い香り、焙煎臭について行い、その結果を表2に示した。
【0026】
【表2】
第2表 脱皮前加熱条件の違いと豆乳の官能評価結果
【0027】
表2の結果から、マイクロ波加熱及び乾熱乾燥機加熱のどちらにおいても、大豆が軟化しない内部温度(50℃)の段階では、青臭みが感じられるようになり、好ましくない結果が得られた。従って、青臭み防止の点から内部温度は65℃以上である必要があることが確認された。
また、大豆の良い香りについては、マイクロ波加熱の方が、乾熱乾燥機加熱に比べて、強くなる傾向が認められ、マイクロ波加熱が大豆の良い香りを発生させるのに効果的であることが確認された。なお、内部温度が高温になればなる程、大豆の良い香りは低下する傾向にあったが、マイクロ波加熱による内部温度が65〜110℃程度の範囲であれば、大豆のよい香りが十分に強く発生することが確認された。
一方、より高温の内部温度120℃においては、マイクロ波加熱の場合も焙煎臭が感じられるようになり、豆乳として好ましくない結果が得られた。
以上の結果、マイクロ波加熱による大豆内部温度の最適値は65〜110℃であることが確認された。
【0028】
試験例3
マイクロ波加熱によって調製した豆乳を用いて豆腐を製造する方法について検討した。
すなわち、試験例2の試験区2で調製したマイクロ波加熱豆乳に対して、市販の国産大豆100gを冷水中(10℃前後)にて18時間浸漬を行った後、4倍加水になるように水を加え、ブレンダー(Gester社製)を用いて15000rpmで5分間磨砕処理を行って呉を得た。この呉を圧搾式豆乳絞り機を用いてオカラと分離して調製した豆腐製造用豆乳を、所定の比率で混合して混合豆乳を調製した。
得られた混合豆乳に対して、にがりを0.4重量/容量%添加し、容器に充填して85℃、30分間の加熱を行って凝固させて充填豆腐を製造した。
このようにして調製した充填豆腐について、その性状を調べた結果を表3に示した。
【0029】
【表3】
第3表 混合豆乳の混合比と豆腐の性状
【0030】
この結果、マイクロ波加熱後に脱皮処理した大豆を用い、高温で浸漬処理して調製したマイクロ波加熱豆乳だけを用いた場合は、豆腐用凝固剤を用いても凝固反応が起きず、豆腐を製造できないことが判明した。
これに対して、通常の豆腐の製造に用いられる豆腐製造用豆乳を混合すると、次第に凝固性は向上し、豆腐が製造可能になる。一方、通常の脱皮処理を施していない大豆で調製した豆腐製造用豆乳のみを用いた場合は、マイクロ波加熱豆乳に由来する甘さや香りの良さが発揮されないことが分かった。
大豆由来の甘みや香りを十分発揮し、かつ豆腐としての凝固性が得られるような両豆乳の好ましい混合比率は、マイクロ波加熱豆乳:豆腐製造用豆乳=1:3〜1:4程度(容量比)であることが判明した。
【0031】
試験例4
試験例2の試験区1〜5及び対照区1〜5で得られた脱皮大豆を用いて調製した豆乳と、一般的な豆腐製造用豆乳とを1:3(容量比)の割合で混合した混合豆乳を用いて豆腐を製造した。なお、一般的な豆腐製造用豆乳は、試験例3と同様の方法で製造した。
このようにして調製した混合豆乳を用いた豆腐の製造は、混合豆乳に対して、にがりを0.4重量/容量%添加し、容器に充填して85℃で30分間加熱して混合豆乳を凝固させることにより製造した。得られた豆腐の品質を、試験例2と同様の方法で評価し、その結果を表4に示した。
【0032】
【表4】
第4表 脱皮前加熱条件の違いと豆腐の官能評価結果
【0033】
表4の結果から、マイクロ波加熱豆乳を用いて調製した充填豆腐及び乾熱乾燥機加熱豆乳を用いて調製した充填豆腐のいずれも、大豆の青臭みはほとんど感じられないことが分かった。
一方、大豆の良い香りについては、豆乳として、マイクロ波加熱豆乳を用いた場合の方が、乾熱乾燥機加熱豆乳を用いた場合に比べて、強くなる傾向が認められ、特に大豆の内部温度が65℃以上のものを用いたときに、良い香りが一層強くなることが確認できた。
しかし、大豆の内部温度が110℃を超えて120℃になると、マイクロ波加熱豆乳を用いた場合及び乾熱乾燥機加熱豆乳を用いた場合のいずれの豆腐も焙煎臭が強くなってしまうという結果が得られた。
以上の結果から、マイクロ波加熱により大豆の内部温度を65〜110℃に高めてから脱皮処理した大豆を用いて調製した豆乳を使用して充填豆腐を製造した方が、より好ましい豆腐を製造できることが確認できた。
【0034】
実施例1
市販の国産大豆100gに電子レンジRE−EM6−H(シャープ社製)を用いて発振周波数2450MHzのマイクロ波を45秒間(平均出力500W・h−1)照射し、大豆内部温度を65℃にして、平均水分含量約12.5%の加熱大豆を得た。これを直ちに手で脱皮、脱胚軸して脱皮脱胚軸大豆を得た。
この脱皮脱胚軸大豆を沸騰水中にて30分間熱水浸漬した後、この熱水浸漬水を捨てることなく該大豆を磨砕処理した。この際の最終的な加水量は脱皮脱胚軸大豆に対して3倍(重量比)加水になるようにした。
浸漬大豆の磨砕にはブレンダー(Gester社製)を用い、15000rpmで5分間磨砕処理した。その後、オカラと豆乳の分離には、圧搾式豆乳絞り機を用いた。
得られた豆乳は、青臭みもなく、大豆の甘さや良い香りに富むものであった。
【0035】
実施例2
市販の国産大豆500gを冷水中(10℃前後)にて18時間浸漬を行った後、4倍(重量比)加水になるように水を加え、ブレンダー(Gester社製)を用いて15000rpmで5分間磨砕処理を行って得た呉を圧搾式豆乳絞り機を用いてオカラと分離して豆腐製造用豆乳を調製した。
この豆腐製造用豆乳3.5部(容量)に対して、実施例1で調製した豆乳1部(容量)の割合で混合した混合豆乳を調製した。
得られた混合豆乳に対して、にがりを0.4重量/容量%添加し、容器に充填して85℃、30分間の加熱を行い凝固させて充填豆腐を製造した。
得られた充填豆腐は、青臭さがほとんどなく、かつ大豆の良い香りが豊かな優れた豆腐であった。
【0036】
【発明の効果】
原料大豆の脱皮処理もしくは脱皮脱胚軸処理前の加熱工程において、従来の乾熱乾燥機やガスオーブンを用いる方式では、大豆の良い香りが損なわれていたが、本発明のマイクロ波加熱方式によれば、青臭みの発生を防止でき、しかも大豆の良い香りを損なうことなく、脱皮大豆もしくは脱皮脱胚軸大豆を作成できる。それ故、本発明に従ってこの大豆を使用して豆乳や豆腐を製造すれば、香味の良好な製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾熱乾燥機加熱の場合の温度変化及び圧力変化を示す図である。
【図2】マイクロ波加熱の場合の温度変化及び圧力変化を示す図である。
Claims (2)
- マイクロ波照射を行って丸大豆内部温度を65〜110℃に高めた後、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した大豆を、80〜100℃の熱水で浸漬処理して用いることを特徴とする豆乳の製造方法。
- 請求項1に記載の方法で製造した豆乳に、豆腐製造用豆乳を、前者:後者=1:3〜1:4(容量比)の割合で混合した豆乳を用いることを特徴とする豆腐の製造方法。
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