JP2004352925A - 粉体塗料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有する熱硬化性アクリル樹脂(A)及び硬化剤(B)を含んでなる粉体塗料。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する分野】
本発明は、新規にして有用なる粉体塗料に関する。さらに詳細には、塗膜の耐暴露汚染性並びに貯蔵安定性に特に優れ、かつ粉体塗料の流動性、塗膜の仕上がり外観にも優れる塗膜を提供可能な粉体塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉体塗料は、塗装時に有機溶剤を大気中に揮散することのない、環境調和型塗料として金属塗装全般に広く使用されており、なかでも、門扉、フェンス、ガードレール等の道路資材等、屋外用途への使用が増えてきている。
【0003】
これら屋外用途での使用が増えるにつれて、塗膜の長期にわたって屋外暴露されることにより、大気中の埃や自動車の排気ガスを含んだ雨に濡れることによって塗膜表面が汚染される暴露汚染性が大きな問題となっている。この問題に対しては、塗膜表面を親水性にする手法が有効であることが知られている。
例えば、粉体塗料に、シリケート化合物を配合することにより、塗膜の親水性を向上させて耐暴露汚染性を改良した防汚性粉体塗料が示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、塗膜の硬化時にシリケート化合物から硬化反応の副生成物である低級アルコールが大量に揮発するため、塗膜表面にワキ等の塗膜欠陥が発生するという問題がある。
【0005】
このワキ等の塗膜欠陥を防止する方法として、シリケート化合物とともに沸点が150〜300℃である高沸点溶剤を加える方法が開示されている(例えば、特許文献2)。かかる方法によれば、塗膜欠陥のない塗膜を得ることができる。
【0006】
しかしながら、シリケート化合物の多くは、常温において液状であり、耐暴露汚染性向上のために多量のシリケート化合物を使用すると粉体塗料の貯蔵安定性が低下するという問題があることから、十分な耐暴露汚染性を有する塗膜を形成する粉体塗料は未だ得られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−003006号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2003−105266号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、塗膜の耐暴露汚染性に特に優れるとともに、塗膜外観、貯蔵安定性にも優れる粉体塗料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した課題を解決するべく、鋭意、研究を重ねた結果、分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有する熱硬化性アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)を含んでなる粉体塗料が、耐暴露汚染性に特段に優れ、しかも塗膜外観、貯蔵安定性にも優れること等を見出し、ここに本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明は、分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有する熱硬化性アクリル樹脂(A)及び硬化剤(B)を含んでなる粉体塗料を提供するものである。
【0012】
また本発明は、前記熱硬化性アクリル樹脂(A)、前記硬化剤(B)に加え、下記一般式(I)で表されるシリケート化合物(C)、及び沸点が150〜300℃である高沸点溶剤(D)をも含んでなる粉体塗料を提供するものである。
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、nは1〜20の整数、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜9のアルキル基を表す。)
【0015】
さらには本発明は、前記の粉体塗料を基材に塗装し、塗装された該粉体塗料を硬化させて得られる被塗物。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の詳細を具体的に述べることにする。
まず、分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有する熱硬化性アクリル樹脂(A)(以下、単に熱硬化性アクリル樹脂(A)ともいう。)について述べる。
【0017】
本発明の粉体塗料を使用して形成される、塩構造を形成している基を有する塗膜は、暴露汚染を防止するために非常に有効である。本発明でいう暴露汚染とは、塗膜を屋外に暴露することにより、塗膜に大気中の汚染物質が付着することによって経時的に塗膜が汚染される現象をいう。この現象は、大気中に親油性の汚染物質の占める割合が高い都市部において顕著であり、塗装物の美観を大きく損ねる結果となっている。
【0018】
本発明で使用する熱硬化性アクリル樹脂(A)が有する「塩構造を形成している基(以下、塩構造形成基という。)」としては、カルボン酸塩、燐酸塩、スルフォン酸塩および第四級アンモニウム塩などから選ばれる塩構造を形成している基を使用することができるが、中でも、後掲するような一般式(II)で示される塩構造を有する基が好ましい。
【0019】
前記した熱硬化性アクリル樹脂(A)、つまり、分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有し、さらに必要に応じて、ポリオキシアルキレン鎖なる構造単位をも有する熱硬化性アクリル樹脂(A)を調製するには、公知慣用の方法が適用できる。
【0020】
なかでも塩構造形成基含有単量体類、硬化反応性基を有するビニル単量体類と必要に応じて、その他の共重合可能なビニル単量体類を、さらに必要に応じて、ポリオキシアルキレン鎖構造単位含有ビニル単量体類をも用いて、これらの各単量体類を、有機溶剤中でラジカル共重合せしめるという方法が、最も簡便であるので好ましい。その際に使用する重合開始剤や溶剤としては、公知慣用のものを使用できる。
【0021】
その際に使用することができる塩構造形成基含有単量体類としては、ビニルフォスフィン酸、アッシドフォスフォキシエチル(メタ)アクリレートの如き、各種の不飽和燐酸系単量体の金属塩ないしはアンモニウム塩;
【0022】
p−スチレンスルフォン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸の如き、各種のスルフォン酸基含有ビニル系単量体の金属塩ないしはアンモニウム塩;ポリオキシアルキレン−モノ−スルフォン酸−モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン−モノ−スルフォン酸アルケニル(アルキル)フェノールの如き、各種のポリオキシアルキレン鎖含有スルフォン酸基含有ビニル系単量体の金属塩ないしはアンモニウム塩;
【0023】
あるいは、ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジアルキルアミノアルキル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジアルキルアミノアルキル)メタククリルアミドの如き、各種の含窒素ビニル系単量体を、塩化ベンジル、臭化メチル又は硫酸ジブチルのような、公知慣用の種々の四級化剤類で以て四級化せしめて得られる種々の単量体などである。
【0024】
中でも、本発明の効果を、最も高度に発現せしめるものとしては、次の一般式(II)
【0025】
【化4】
【0026】
(ただし、式中のR5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい、水素原子もしくはハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基又は−SO3M 含有基(ただし、Mは、金属イオンとアンモニウム塩よりなる群から選ばれる一つの原子イオンないしは原子団を表わすものとする。)を表わすものとし、しかも、R5 、R6 、R7 又はR8 のうちの少なくとも一つは、−SO3M であるものとし、また、R9は、水素原子又は炭素数が1〜20なるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を表わすものとする。)
【0027】
で示される、塩構造形成基を有するような単量体類が挙げられる。
【0028】
前記一般式(II)で示される塩構造形成基を有する単量体類として使用することができるものを例示すれば、モノ−メチルスルフォこはく酸ナトリウム−モノ−ビニルエステル、モノ−エチルスルフォこはく酸アンモニウム−モノ−ビニルエステル、モノ−プロピルスルフォこはく酸カリウム−モノ−プロペニルビニルエステル、モノ−オクチルスルフォこはく酸アンモニウム−モノ−ブテニルエステル又はモノ−オクチルスルフォこはく酸ナトリウム−モノ−プロペニルエステル、
【0029】
あるいは、モノ−2−エチルヘキシルスルフォこはく酸ナトリウム−モノ−プロペニルエステル、モノ−ステアリルスルフォこはく酸ナトリウム−モノ−プロペニルエステル、ジ−n−ブチルスルフォこはく酸ナトリウム−モノ−ビニルエステル、1−クロロ−2−プロピルスルフォこはく酸カルシウム−モノ−プロペニルビニルエステル、1,1−ジブロモスルフォこはく酸ナトリウム−ジ−ビニルエステル又は(3−メトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル)スルフォこはく酸ナトリウム−モノ−ビニルエステルの如き、各種のスルフォこはく酸系不飽和化合物などである。
【0030】
当該塩構造形成基含有単量体の使用量としては、全単量体類中、1〜50重量%程度の範囲内が好ましい。かかる範囲内であれば、本発明の効果が充分に発現され、本発明の粉体塗料を用いて得られる硬化物の耐候性も優れたものとすることができる。
【0031】
本発明で使用する熱硬化性アクリル樹脂(A)を製造する際に使用することができるポリオキシアルキレン鎖構造単位含有ビニル単量体類とは、次のような一般式(III)
【0032】
【化5】
【0033】
(ただし、式中のR10およびR11は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基及び/又はアルコキシ基を、また、R12は水酸基又は炭素数が1〜4のアルコキシ基を表わすものとし、さらに、pは2〜4の整数であるものとし、qは1〜200の整数であるものとする。)
【0034】
で示される一価の有機基を有する化合物が特に代表的なものであり、例えば、ポリエチレングリコール−モノ−(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−モノ−(メタ)アクリレート、ポリテトラエチレングリコール−モノ−(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェノール−モノ−(メタ)アクリレート又はポリオキシエチレンノニルアリルフェノールなどを使用することができる。
【0035】
本発明で使用する熱硬化性アクリル樹脂(A)は硬化反応性基を有するものであって、かかる硬化反応性基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、酸無水基、(ブロック)イソシアネート基などを使用することができるが、それらのなかでも製造が容易なことから、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが望ましい。なかでも、貯蔵安定性や塗膜外観に優れることから、硬化反応性基の少なくとも一種はエポキシ基であることがより好ましい。
【0036】
熱硬化性アクリル樹脂(A)に硬化反応性基を導入するためには、硬化反応性基を有するビニル単量体類を使用すればよく、かかる硬化反応性基を有するビニル単量体類を例示すれば、まず、硬化反応性基がエポキシ基の場合には、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルの如き、各種のエポキシ基含有単量体類;(2−オキソ−1,3−オキソラン)メチル(メタ)アクリレートの如き、(2−オキソ−1,3−オキソラン)基含有ビニル単量体類;3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体などを使用することができる。
【0037】
また硬化反応性基がカルボキシル基の場合には、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸の如き、各種のカルボキシル基含有単量体類;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノtert−ブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノ2−エチルヘキシル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノtert−ブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシルの如き、各種のα,β−不飽和ジカルボン酸と、炭素数が1〜18なる1価アルコールとのモノエステル類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノヘキシル、イタコン酸モノオクチル、イタコン酸モノ2−エチルヘキシルの如き、イタコン酸モノアルキルエステルなどを使用することができる。
【0038】
また硬化反応性基が水酸基の場合には、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートの如き、各種の水酸基含有(メタ)アクリレート類;上掲したような各種の(メタ)アクリレートと、ε−カプロラクトンの付加反応生成物;
【0039】
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルの如き、各種の水酸基含有ビニルエーテル類;上掲したような各種のビニルエーテルと、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;
【0040】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテル、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルの如き、各種の水酸基含有アリルエーテル;上掲したような各種のアリルエーテルと、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物などを使用することができる。
【0041】
さらに、必要に応じて、その他の共重合可能なビニル単量体類をも使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル又は(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、
【0042】
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル又は(メタ)アクリル酸ステアリルの如き、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、
【0043】
(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル又は(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、
【0044】
あるいはエチルカルビトール(メタ)アクリレートの如き、各種のアルキルカルビトール(メタ)アクリレートなどをはじめ、さらには、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート又はジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレートの如き、各種の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0045】
エチレン、プロピレン、ブテン−1の如き、各種のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンの如き、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン類(ハロ・オレフィン類);スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き、各種の芳香族ビニル単量体;
【0046】
フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチルの如き、各種の不飽和ジカルボン酸と、炭素数が1〜18なる1価アルコールとのジエステル類;
【0047】
N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの如き、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
【0048】
tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアミノ基含有単量体類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水(メタ)アクリル酸、無水テトラヒドロフタル酸の如き、各種の酸無水基含有単量体類;
【0049】
ジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アク リロイルオキシエチルフォスフェートの如き、各種の燐酸エステル基含有単量体類;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランの如き、各種の加水分解性シリル基含有単量体;
【0050】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数9なる分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニル、炭素原子数10なる分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、炭素原子数11なる分岐脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニルの如き、各種の脂肪族カルボン酸ビニル類;
【0051】
シクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニルの如き、環状構造を有するカルボン酸の、各種のビニルエステル類などが挙げられる。
【0052】
熱硬化性アクリル樹脂(A)を調製する際における、前記した種々の硬化反応性基を有するビニル単量体の使用量は、使用するビニル単量体総量の10〜70重量%なる範囲内が好ましい。硬化反応性基を有するビニル単量体の使用量が上記した範囲内であれば、機械的物性及び柔軟性に優れるような塗膜を得ることができる。
【0053】
熱硬化性アクリル樹脂(A)の調製に際して使用する、有機溶剤としては、公知慣用の有機溶剤を使用することができる。
【0054】
かかる有機溶剤としては例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノールの如き、アルキルアルコール類;
【0055】
メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルの如き、グリコールエーテル類;
【0056】
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き芳香族炭化水素類;エクソンアロマティックナフサNo.2(米国エクソン社製)の如き、芳香族炭化水素を含有する混合炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタンの如き、脂肪族炭化水素類;アイソパーC、アイソパーE、エクソールDSP100/140,エクソールD30(いずれも米国エクソン社製)、IPソルベント1016(出光石油化学社製)の如き、脂肪族炭化水素を含有する混合炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンの如き、脂環族炭化水素類;
【0057】
テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテルの如き、エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如き、ケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルの如き、エステル類等を使用することができる。
【0058】
熱硬化性アクリル樹脂(A)の調製の際に使用する、ラジカル重合開始剤としては、公知慣用の種々の化合物を使用することができ、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロペン)2塩酸塩、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロピオンアミド)2水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロペン]又は2,2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)の如き、各種のアゾ化合物;
【0059】
あるいは過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、カリウムパーサルフェート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン又はtert−ブチルパーオキシーラウレート、
【0060】
tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド又はジ−tert−ブチルパーオキシドの如き、各種のケトンパーオキシド類;パーオキシケタール類;ハイドロパーオキシド類;ジアルキルパーオキシド類;ジアシルパーオキシド類;パーオキシエステル類;パーオキシジカーボネート類;あるいは過酸化水素などが挙げられる。
【0061】
本発明で使用する熱硬化性アクリル樹脂(A)の数平均分子量としては、1,000〜20,000の範囲内にあることが好ましく、なかでも1,500〜15,000なる範囲内にあることがより好ましい。当該熱硬化性アクリル樹脂の数平均分子量が上記した範囲内であれば、平滑性に優れ、しかも機械的物性にも優れる塗膜を得ることができる。
【0062】
次に、硬化剤(B)について述べる。
本発明で使用する硬化剤(B)は、熱硬化性アクリル樹脂(A)の硬化反応性基の種類に応じて、通常粉体塗料用として使用されているようなものを、適宜選択して使用することができる。
【0063】
熱硬化性アクリル樹脂(A)が有する硬化反応性基がエポキシ基の場合、硬化剤(B)としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、あるいはこれらの酸無水物やウレタン変性物などを使用することができ、なかでも塗膜物性、貯蔵安定性に優れることから、脂肪族二塩基酸が好ましく、特に塗膜物性に優れることから、ドデカン二酸が特に好ましい。
【0064】
また、熱硬化性アクリル樹脂(A)が有する硬化反応性基がカルボキシル基の場合、硬化剤(B)として、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテルの如き、種々のエポキシ樹脂;グリシジル基含有アクリル樹脂の如き、エポキシ基含有アクリル樹脂;1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンの如き、種々の多価アルコールのポリグリシジルエーテル類;
【0065】
フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸の如き、種々の多価カルボン酸のポリグリシジルエステル類;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアジペートの如き、種々の脂環式エポキシ基含有化合物;トリグリシジルイソシアヌレート、β−ヒドロキシアルキルアミドなどのヒドロキシアミド類等を使用することができる。
【0066】
また熱硬化性アクリル樹脂(A)が有する硬化反応性基が水酸基の場合、硬化剤(B)としては、ポリブロックイソシアネート、アミノプラスト等が好適である。
【0067】
ポリブロックポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き、各種の脂肪族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの如き、各種の環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類などの有機ジイソシアネート、あるいは此等の有機ジイソシアネートと、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)又は水などとの付加物などがあるし、
【0068】
さらには、上掲したような有機ジイソシアネート同志の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をも含む。)や、イソシアネート・ビウレット体などのような各種のポリイソシアネート化合物を公知慣用のブロック化剤で以てブロック化せしめて得られる形のものや、ウレトジオン結合を構造単位として有する、いわゆるセルフ・ブロックポリイソシアネート化合物等を使用することができる。
【0069】
またアミノプラストとしては、例えばメラミン、尿素、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミンの如き、種々のアミノ基含有化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザールの如き、種々のアルデヒド系化合物成分とを、公知慣用の種々の方法により反応せしめることによって得られる形の縮合物、あるいは此等の縮合物を、アルコール類で以てエーテル化せしめることによって得られる形の化合物などを使用することができる。
【0070】
かかるアミノプラストとしては、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン、メチルエーテル化メチロールメラミン、n−ブチルエーテル化メチロールメラミン、イソブチルエーテル化メチロールメラミン、あるいはそれらの縮合物;
【0071】
ヘキサメトキシグリコールウリル、ヘキサブトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリルの如き、種々の双環状化合物;脂肪族二塩基酸と、ジエタノールアミンなどのような種々のアルカノールアミンとの縮合反応によって得られるという形の種々の酸アミド類;N−メチロールアクリルアミドのブチルエーテルなどのような重合性単量体を単独で、あるいは他の共重合可能なる単量体類と共重合反応せしめて得られるような、種々の高分子化合物などが挙げられる。
【0072】
尚、上記ヘキサメトキシメチロールメラミンは「サイメル 300、301もしくは303」(三井サイアナミッド社製品)として;メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミンは「サイメル 238、232もしくは266」(三井サイアナミッド社製品)として;n−ブチルエーテル化メチロールメラミンは「スーパーベッカミン L−164」(大日本インキ化学工業(株)社製品)として;テトラメトキシメチルグリコールウリルは「パウダーリンク(POWDERLINK) 1174」(米国アメリカン・サイアナミッド社製品)として;酸アミド類は「プリミド(PRIMID) XL−552」、「プリミド (PRIMID) QM−1260」(EMS社製品)として、それぞれ市販されているものを使用することも可能である。
【0073】
本発明で使用する硬化剤(B)は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化性アクリル樹脂(A)が有する硬化反応性基と硬化剤(B)の配合量は、硬化剤(B)が有する硬化反応性基の当量に対する熱硬化性アクリル樹脂(A)が有する硬化反応性基の当量比が、2.0〜0.5の範囲であることが好ましい。
【0074】
上述した熱硬化性アクリル樹脂(A)と硬化剤(B)を含んでなる粉体塗料を用いれば、耐暴露汚染性に優れる塗膜を得ることができるが、さらに、シリケート化合物(C)及び高沸点溶剤(D)をも併せ使用することが、より耐暴露汚染性に優れる塗膜を得られることから、好ましい。
【0075】
本発明で使用するシリケート化合物(C)は、下記一般式(I)で表される。
【0076】
【化6】
【0077】
(式中、nは1〜20の整数、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜9のアルキル基を表す。)
【0078】
上記のシリケート化合物(C)の中で、アルキル基がメチル基及び/又はエチル基のものが、塗膜の耐暴露汚染性に特に優れることから、好ましい。なかでも、アルキル基が全てメチル基であるものが、塗膜の耐暴露汚染性向上の効果が高く、特に好ましい。また一般式(I)において、nの値の範囲は1〜20であるが、好ましくは3〜20である。nの値がこの範囲にあれば、長期的に耐暴露汚染性向上の効果が持続する塗膜を得ることができる。
【0079】
かかるシリケート化合物(C)の代表的なものを例示すれば、テトラメチルシリケート、テトラアルキルシリケート、テトラ−n−プロピルシリケート、テトラ−i−プロピルシリケート、テトラ−n−ブチルシリケートの如き、テトラアルキルシリケート;
【0080】
「MS51」、「MS56」、「MS57」、「MS56S」(いずれも三菱化学(株)社製のテトラメチルシリケートの縮合物)、「エチルシリケート 40」、「エチルシリケート 48」(いずれもコルコート(株)社製の、テトラエチルシリケート縮合物)、「BTS」(三菱化学(株)社製の、テトラブチルシリケートの縮合物)、「MS58B15」、「MS58B30」(いずれも三菱化学(株)社製の、メチル基とブチル基を有するテトラアルキルシリケートシリケート縮合物)の如きテトラアルキルシリケートを加水分解した部分縮合物があげられる。
【0081】
シリケート化合物(C)の添加量は、耐暴露汚染性向上の効果を十分に発現させることができ、しかも塗料の貯蔵安定性にも優れるという点から、熱硬化性アクリル樹脂(A)と硬化剤(B)の合計に対して、1〜30重量%であることが好ましく、3〜20重量%であることがより好ましい。
【0082】
さらに、シリケート化合物(C)の縮合触媒を使用してもよい。縮合触媒として代表的なものとしては、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、イソホロンジアミン、イミダゾール、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートの如き、各種の塩基性化合物;
【0083】
テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫マレートの如き、各種の含金属化合物;
【0084】
又はp−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、リン酸、リン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、リン酸トリアルキルエステルの如き、各種の酸性化合物などがある。
【0085】
これらのなかでも、シリケート化合物の縮合促進効果が高いことから含金属化合物の使用が好ましい。
【0086】
次に、常圧における沸点が150〜300℃である高沸点溶剤(D)について述べる。
粉体塗料の原料の一部に高沸点溶剤(D)を使用して、得られる粉体塗料中に高沸点溶剤(D)を残存させることにより、シリケート化合物(C)を使用した場合でも、ワキやピンホールのような塗膜欠陥を生じない塗膜を形成する粉体塗料を得ることができる。高沸点溶剤(D)は、単一成分でも、複数成分からなる混合物でもよい。
【0087】
高沸点溶剤(D)の常圧における沸点としては、より好ましくは170〜250℃の範囲である。さらに、常圧における沸点が、本発明の粉体塗料を焼き付け硬化させる際の温度に対して+15〜+150℃であるものが特に好ましい。
【0088】
高沸点溶剤(D)は、25℃における、水及びトルエンに対する溶解度が50重量%以上であることが好ましく、さらに、メタノール、及びエタノールに対する溶解度が100重量%以上であることがより好ましい。ここで、25℃における水に対する溶解度が50重量%以上であるとは、25℃の水100gに対して、50g以上が水に溶解することを意味する。
【0089】
高沸点溶剤(D)の使用量は、粉体塗料100重量部に対して0.005〜3重量部であることが好ましく、0.01〜2重量部であることがより好ましく、0.05〜1重量部であることがさらにより好ましい。
【0090】
高沸点溶剤(D)の常圧における沸点及び使用量が上記した範囲であれば、塗料を被塗物上に塗装後、焼き付け硬化せしめて塗膜を形成させる時の、シリケート化合物(C)の反応により生成するアルコール等に由来するワキやピンホール等の塗膜欠陥の生成を防止することができる。
【0091】
かかる高沸点溶剤(D)として使用することができるものとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールの如き、多価アルコール類;ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブ、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルトリプロピレングリコールモノメチルエーテルの如き、グリコールエーテル類;
【0092】
n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールの如き、アルコール類;プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼンの如き芳香族炭化水素類;ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200(いずれも米国エクソン社製)の如き、芳香族炭化水素を含有する混合炭化水素類;エクソンナフサNo.3、エクソンナフサNo.5、エクソンナフサNo.6、エクソンソルベントNo.7、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD90、エクソールD110(いずれも米国エクソン社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2028(出光石油化学社製)、メルベイユ20,メルベイユ30、メルベイユ40(昭和シェル石油社製)、ミネラルスピリットの如き、脂肪族炭化水素を含有する混合炭化水素類;
【0093】
グリセリンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエステル;ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンの如き、ケトン類;酢酸シクロヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸イソアミル、酪酸アルキルエステル、ステアリン酸アルキルエステル、安息香酸アルキルエステル、アジピン酸ジアルキルエステル、フタル酸ジアルキルエステルの如き、エステル類;
【0094】
N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネート等があげられる。
【0095】
上述した高沸点溶剤(D)のなかでも、得られる塗膜の塗膜欠陥発生を防止する効果が高いことから、グリコールエーテル類の使用が好ましく、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールからなる群の中から選ばれる少なくとも一種の使用が特に好ましい。
【0096】
高沸点溶剤(D)を粉体塗料に添加する方法としては、特に制限はない。溶融混練法により粉体塗料を製造する場合には、塗料原料を配合する際に、他の原料と共に混合してやればよく、また噴霧乾燥法により粉体塗料を製造する場合には、粉体塗料原料溶液を調製する際に他の原料と共に混合、溶解する方法や、粉体塗料原料溶液を噴霧乾燥する直前に添加して混合する等の方法が簡便であるので推奨される。熱硬化性アクリル樹脂(A)が溶液重合により得られるような場合には、重合させる際の重合溶剤の一部として予め添加する方法や、あるいは重合終了後に添加する方法も採用できる。
【0097】
さらに、必要に応じて、顔料、他の樹脂類、硬化触媒、添加剤等を加えて塗料化してもよい。
【0098】
顔料としては、酸化チタン、弁柄、クロムチタンイエロー、黄色酸化鉄、カーボンブラックの種々の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、インダスレンブルー、ジアントラキノニルレッド等のアントラキノン系、キナクリドン系、レーキレッド、ファーストイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントレッド等のアゾ系、ナフトールイエロー等のニトロ系、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーン等のニトロソ系の如き、公知慣用の種々の有機顔料、公知慣用の種々の体質顔料、さらには、アルミ・フレーク、マイカ・フレークの如き、公知慣用の種々の光輝性(メタリック調)顔料などを使用することができる。
【0099】
他の樹脂類としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、あるいは塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、石油樹脂、エポキシ樹脂、塩化ゴムの如き、各種の樹脂類であって、かつ熱硬化性アクリル樹脂(A)以外の樹脂を使用することができる。
【0100】
硬化触媒も、熱硬化性アクリル樹脂(A)と硬化剤(B)の組み合わせに応じて公知慣用のものを使用することができる。
添加剤類としては、流動調整剤類、色別れ防止剤類、酸化防止剤類、紫外線吸収剤類、光安定剤類、シランカップリング剤類等、公知慣用の添加剤類等を使用することができる。
【0101】
更に、必要に応じて、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレートの如き、各種の繊維素誘導体類等を使用してもよい。
【0102】
本発明の粉体塗料を調製する方法としては特に制限はなく、通常、粉体塗料の製造方法として採用されている溶融混練法でも、あるいは凍結乾燥法等の他の製造方法でもいずれの方法も採用できる。なかでも、噴霧乾燥法により製造された粉体塗料は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性に優れ、塗料の貯蔵安定性にも優れることから、製造法として好ましい。
【0103】
噴霧乾燥法によれば、上述した熱硬化性アクリル樹脂(A)及び硬化剤(B)と、さらに必要に応じてシリケート化合物(C)及び高沸点溶剤(D)を含んでなる混合物を有機溶剤中に溶解あるいは分散した粉体塗料原料溶液を、噴霧乾燥して有機溶剤を除去することにより、粉体塗料を製造することができる。
【0104】
噴霧乾燥に用いる装置は、噴霧された粉体塗料原料溶液から有機溶剤を除去することのできるものであればよく、例えば噴霧された粉体塗料原料溶液を熱源ガスと接触させて有機溶剤を揮発させる噴霧乾燥装置などが使用できる。有機溶剤を揮発させることから、装置は防爆仕様であることが望ましい。また、噴霧された粉体塗料原料溶液を乾燥させるために使用される、熱源ガス中の溶剤の蒸気含有量を低く保つという観点からは、溶剤回収装置を備えることが望ましい。
【0105】
上記の、噴霧された粉体塗料原料溶液を熱源ガスと接触させて有機溶剤を揮発させる噴霧乾燥装置を使用する場合において、粉体塗料原料溶液と熱源ガスの接触方式は特に限定されず、通常用いられているような、並流式、向流式、並流・向流混合式のようないずれの方式でもよい。装置内の圧力は、常圧でも、減圧あるいは加圧でもよく、特に制限はない。
【0106】
粉体塗料原料溶液の噴霧方式についても、回転円盤式、二流体ノズル式、圧力ノズル式など、公知慣用のものがいずれも使用できる。噴霧する際の、粒子径をコントロールするための因子としては、回転円盤式においては、円盤の回転速度、二流体ノズル式においては、ノズルからの吐出速度、原料溶液と混合して使用される圧縮空気と原料溶液の混合比、圧力ノズル式においては、吐出圧力等があるが、これらの値については、目標とする粒子径に応じて適宜決定すればよい。
【0107】
原料溶液の供給速度、熱源ガスの流量についても、目標とする粒子径にあわせて、適宜決定すれば良いが、噴霧乾燥中に原料溶液の供給速度や熱源ガスの流量が変化すると、得られる粒子の粒子径、粒子径分布や不揮発分の値も変化するため、噴霧乾燥中は一定に保つことが望ましい。
【0108】
また、噴霧乾燥を行う際の粉体塗料原料溶液の不揮発分濃度は、噴霧乾燥装置の仕様、噴霧乾燥する条件に応じて適宜決定すればよい。
【0109】
通常、噴霧乾燥により得られた粒子を含む熱源ガスは、引き続き、サイクロンに代表される分級装置へ導かれ、粒子の捕集・分級が行われる。本発明の粉体塗料の粒度分布を整えるため、粗大粒子や微細粒子を除去するための分級が必要な場合は市販されている一般的な分級機を用いることもできる。
【0110】
熱源ガスとしては、不活性ガスが望ましい。なかでもコスト等の点からは窒素ガスの使用が望ましい。熱源ガスの温度は、粉体塗料原料溶液の熱硬化性樹脂及び硬化剤が実質的に硬化反応を起こさないような温度、すなわち、一部硬化反応が起こったとしても得られる粉体塗料の塗料としての性能が実質的に損なわれることのないような温度範囲で、適宜決定すればよい。熱源ガスの温度の下限については特に制限はないが、効率よく溶剤を蒸発させるためには、20℃以上が好ましく、25℃以上とすることがより好ましい。通常は、熱源ガスの温度は20〜160℃、好ましくは25〜100℃の範囲で適宜決定される。
【0111】
さらに溶剤の蒸発をより効率的に行わせるために、粉体塗料原料溶液を、噴霧乾燥する前に予備加熱しても良い。
【0112】
かくして得られる粉体塗料は、そのままで使用することができるが、さらに、必要に応じて、真空乾燥、通気乾燥、流動層乾燥等の他の乾燥方法で二次乾燥させてもよい。
【0113】
また得られた粉体塗料は、さらに、必要に応じて、粉砕工程あるいは造粒工程により、粒子径を調整して使用してもよい。
【0114】
本発明の粉体塗料の塗装方法については、静電吹付法又は摩擦帯電塗装方法、流動浸漬などのような、公知慣用の種々の方法によって、基材に粉体塗料を塗装し、通常、塗装された当該粉体塗料を、120〜250℃の温度で焼き付けて硬化させればよく、かくして本発明の粉体塗料が塗装された被塗物を得ることができる。
【0115】
本発明の粉体塗料は、被塗物上に単層又は複層の塗膜を形成する際に、下塗り塗料、トップコート塗料として好適に使用できる。
【0116】
ここにおいて、被塗物とは塗料が塗布される基材をいい、具体的には、未塗装の鋼板、未処理の若しくは化成処理されたアルミ基材等の未塗装金属素材であって、自動車車体、2輪車車体等の道路車両に使用される基材や、アルミホイ−ル等の自動車部品用に使用される基材、飲料缶などに使用される基材等が挙げられるし、また電着塗装がほどこされた状態の自動車車体等の道路車両に使用される基材も含まれる。さらに、家電製品、自動販売機、スチ−ル家具等に使用される基材、例えば電気亜鉛メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板等や、瓦類;ガラス類;又は各種の無機質建材類;門扉又はフェンス類の如き、各種の建材類;アルミサッシ類の如き、各種の建築内外装用資材類等も例示される。
【0117】
これらの基材は、最終用途に応じた形状に加工されたものでも良いし、またPCM(プレコ−トメタル)塗装法が適用される形態、即ちおおまかに平板状の切板状基材であって本発明の方法により塗膜が形成された後に目的に応じた所定の形状に折り曲げ加工されるものであっても良いし、さらにはコイルコ−ティングのような完全に後加工に供される塗装システムに使用される基材でも良い。
【0118】
本発明の粉体塗料は、常法により、上掲したような種々の被塗物基材類に塗布され、次いで、常法に従って、焼き付け乾燥せしめるということによって、塗膜の、とりわけ、硬化性、外観、耐候性ならびに機械的物性などに優れた塗膜を与えることができるものである。
【0119】
【実施例】
次に、本発明を参考例、実施例及び比較例により、一層具体的に説明する。以下において、特に断りのない限りは、「部」は、すべて「重量部」を意味するものとする。
【0120】
参考例1(分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有する熱硬化性アクリル樹脂(A)の調製例)
温度計、撹拌機、還流冷却器および窒素導入口を備えた反応容器に、キシレンの600部を入れ、130℃にまで昇温した。
【0121】
これに、単量体としての、スチレンの200部、メチルメタクリレートの300部、n−ブチルメタクリレートの220部、グリシジルメタクリレートの250部と、塩構造形成基含有単量体としてp−スチレンスルフォン酸ナトリウム30部、重合開始剤としてのtertーブチルパーオキシ2ーエチルヘキサノエートの25部、キシレン200部とからなる混合物を、5時間に亘って滴下した。
【0122】
滴下終了後も、同温度に、さらに、10時間のあいだ保持して、重合反応を続行し反応を完結せしめることによって、分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有する熱硬化性アクリル樹脂(A−1)の溶液(A’−1)を得た。さらに、得られた樹脂溶液を、約20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによって熱硬化性アクリル樹脂(A−1)を得た。性状値を第1表(1)に示す。
【0123】
参考例2(同上)
窒素ガスで内部の空気を置換したステンレス製のオートクレーブに、メチルエチルケトン1200部を仕込み、120℃に昇温した。そこへ、スチレン300部、メチルメタクリレート600部、n−ブチルメタクリレート260部、グリシジルメタクリレート700部と、塩構造形成基含有単量体として、モノ−2−エチルヘキシルスルフォこはく酸ナトリウム−モノ−プロペニルエステル70部、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシオクトエート90部及びメチルエチルケトン400部からなる混合物を、6時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度に5時間の間保持して重合反応を完結せしめることによって、熱硬化性アクリル樹脂(A−2)の溶液(A′−2)を得た。さらに、得られた樹脂溶液(A’−2)の1000部を、約20Torrの減圧下に保持し、メチルエチルケトンを除去することによって熱硬化性アクリル樹脂(A−2)を得た。性状値を第1表(1)に示す。
【0124】
参考例3(同上)
第1表(1)に示すような、それぞれ、単量体と、重合開始剤とからなる混合物を用いるというように変更した以外は、参考例1と同様にして、熱硬化性アクリル樹脂(A−3)の溶液(A’−3)を得た。さらに得られた樹脂溶液(A’−3)を、約20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによって熱硬化性アクリル樹脂(A−3)を得た。性状値を第1表(1)に示す。
【0125】
比較参考例1(比較対照用の熱硬化性アクリル樹脂(R)の調製)
第1表(2)に示すような、それぞれ、単量体と、重合開始剤とからなる混合物を用いるというように変更した以外は、参考例1と同様にして、比較対照用の熱硬化性アクリル樹脂(R)の溶液(R’)を得た。さらに得られた樹脂溶液(R’)を、約20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによって比較対照用の熱硬化性アクリル樹脂(R)を得た。性状値を第1表(2)に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
≪第1表の脚注≫
[X−1]・・・・・パラスチレンスルホン酸ナトリウム
[X−2]・・・・・(2−エチルヘキシル)−スルフォこはく酸ナトリウム−プロペニルエステル
「PE−350」・・・・・「ブレンマー PE−350」(商品名;日本油脂(株)製のポリエチレングリコールモノメタクリレート)なるポリオキシアルキレン鎖構造単位含有ビニル系単量体
【0129】
参考例4(粉体塗料原料溶液の調製例)
撹拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、参考例2で得られた熱硬化性アクリル樹脂(A−2)の溶液(A′−2)1410部と、メチルエチルケトン1200部、イソプロピルアルコール700部を仕込み、攪拌しながら硬化剤(B)としてドデカン二酸200部、シリケート化合物(C)として「エチルシリケート 40」(コルコート社製のテトラエチルシリケートの縮合物)70部、高沸点溶剤(D)としてブチルカルビトール4部と、ベンゾイン5部、「モダフロー」(米国モンサント社製の、流動調整剤)5部を加えて、原料が均一に溶解して溶液が透明になるまで、十分に攪拌、混合することによって、粉体塗料原料溶液(S−1)を調製した。得られた粉体塗料原料溶液(S−1)の性状値を第2表に示す。
【0130】
【表3】
【0131】
≪第2表の脚注≫
「40」・・・・・コルコート(株)社製のテトラエチルシリケート縮合物「エチルシリケート 40」
「モダフロー」・・・・・・米国モンサント社製の、流動調整剤
【0132】
実施例1(溶融混練法による本発明の粉体塗料の製造例)
参考例1で得られた熱硬化性アクリル樹脂(A−1)
850部を粉砕し、硬化剤(B)としてドデカン二酸150部、「タイペーク CR−90」(石原産業(株)社製のルチル型酸化チタン)430部、ベンゾイン5部、及び「モダフロー」(米国モンサント社製の、流動調整剤)5部を加えて、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機(社)製のドライブレンダー)で、混合せしめた後、「MP−2015」(米国APVケミカルマシナリー社製の、二軸押し出し混練機)によって、加熱混練せしめた。得られた混練物を、粉砕、分級することによって、平均粒径28μmの粉体塗料(P−1)を得た。
【0133】
実施例2,3(同上)
使用する原料を、第3表に示すように変更した以外は、実施例と同様にして粉体塗料(P−2)(平均粒径21μm)、(P−3)(平均粒子径23μm)を得た。
【0134】
【表4】
【0135】
≪第3表の脚注≫
「B1530」・・・・・ドイツ国ヒュルス社製「VESTAGON B1530」(イソホロンジイソシアネートのヌレート体をε−カプロラクタムでブロック化せしめた形のブロック・イソシアネート化合物)
「CR−90」・・・・・石原産業(株)社製のルチル型酸化チタン「タイペーク CR−90」
【0136】
実施例4(噴霧乾燥法による本発明の粉体塗料の製造例)
溶剤回収装置を備えた防爆型の垂直下降並流式噴霧乾燥装置で、噴霧方式として二流体ノズル方式を用いて粉体塗料を製造した。噴霧ガス圧を0.3MPaとし、熱源ガスとしては窒素ガスを用い、原料溶液と熱源ガスを垂直下降並流式で接触させた。熱源ガスの温度は35℃に設定した。40℃に予備加熱した粉体塗料原料溶液(S−1)を供給速度1kg/hrで噴霧乾燥装置中に噴霧し、装置内で乾燥された粉体塗料の粒子をサイクロンで捕集することによって、平均粒子径17μmの粉体塗料(P−4)を得た。得られた粉体塗料の不揮発分は99.4%で、高沸点溶剤(D)であるブチルカルビトールの含有量を測定したところ、0.35重量%であった。
【0137】
比較参考例2(比較対照用の粉体塗料(P−5)の製造例)
比較参考例1で得られた比較対照用熱硬化性アクリル樹脂(R)
800部を粉砕し、「B1530」(ドイツ国ヒュルス社製「VESTAGONB1530」(イソホロンジイソシアネートのヌレート体をε−カプロラクタムでブロック化せしめた形のブロック・イソシアネート化合物))200部、ジ―n―ブチル錫ジラウレート2部、「エチルシリケート 40」(コルコート(株)社製のテトラエチルシリケート縮合物)300部、ベンゾイン5部、ブチルカルビトール5部、及び「モダフロー」(米国モンサント社製の、流動調整剤)5部を加えて、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機(社)製のドライブレンダー)で、混合せしめた後、「MP−2015」(米国APVケミカルマシナリー社製の、二軸押し出し混練機)によって、加熱混練せしめた。得られた混練物を、粉砕、分級することによって、比較対照用の粉体塗料(P−5)(平均粒径24μm)を得た。
【0138】
実施例5(本発明の粉体塗料により得られる硬化塗膜の性状)
0.8mm厚の燐酸亜鉛処理鋼板上に、実施例1で得られた粉体塗料(P−1)を60μmの膜厚になるように静電塗装した。塗装した試験板を160℃で20分間焼き付け硬化させることによって、塗板を得た。得られた硬化塗膜の性状を第4表(1)に示す。
【0139】
実施例6(同上)
0.8mm厚の燐酸亜鉛処理鋼板上に、白色アルキドメラミン溶剤系塗料を30μmの膜厚になるようにスプレー塗装し、160℃で20分間焼き付け硬化させた後、その上に実施例2で得られた粉体塗料(P−2)を60μmの膜厚になるように静電塗装した。塗装した試験板を160℃で20分間焼き付け硬化させることによって、塗板を得た。粉体塗料と得られた硬化塗膜の評価結果を第4表(1)に示す。
【0140】
実施例7,8(同上)
使用する粉体塗料と焼き付け硬化温度を、第4表(1)、(2)に示すように変更する以外は、実施例6と同様にして、塗板を得た。得られた硬化塗膜の性状を第4表(1)、(2)に示す。
【0141】
比較例1
使用する粉体塗料を、比較参考例2で得られた粉体塗料(P−5)に変更した以外は、実施例6と同様にして、塗板を得た。粉体塗料と、得られた硬化塗膜の評価結果を第4表(2)に示す。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
≪第3表の脚注≫
・平滑性・・・・・・・・塗膜の平滑性を目視で判定した。
評価 5:非常にスムーズなる平滑な塗面の場合
評価 4:小さなラウンドがある場合
評価 3:大きなラウンドがある場合
評価 2:大きなラウンドがあり、細かいチリ肌が多く認められる場合
評価 1:大きなラウンドがあり、細かいチリ肌が著しく、塗膜外観を大きく損ねている場合
【0145】
・塗膜欠陥の有無・・・・塗膜表面の、ワキ、ヘコミ、ピンホール等の塗膜欠陥の生じた個数(塗板100平方cm当たり)で判定した。
評価 ◎:0個
評価 ○:1〜2個
評価 △:3〜10個
評価 ×:>10個
【0146】
・塗膜光沢・・・・・・JIS−K5400の鏡面光沢度より測定した。
【0147】
・汚染性・・・・・・・・水1リットルと、JIS Z−8901に定められた当該汚染試験用の12種類の混在ダスト[(財)日本粉体工業技術協会品]の5gとからなる懸濁水中に、それぞれの試験板を、10分間浸積してから引き上げた後、2分間シャワー洗浄せしめる操作を1サイクルとして、所定のサイクル数繰り返し試験を行い、しかる後、試験板を乾燥して、未試験の試験板との色差(ΔE)を測定した。ΔE値が大きいほど、汚れの度合いが大きいことを意味している。
【0148】
・貯蔵安定性・・・・製造した塗料を、恒温器内に30℃で3週間放置した後、再度、塗料をスプレーしたときの塗装作業性で判定した。
評価 ○:問題なし
評価 △:一部凝集物発生のためスプレー困難
評価 ×:スプレー不可能。
【0149】
【発明の効果】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、かつ、とりわけ耐暴露汚染性及び外観等にも優れた塗膜を形成可能な粉体塗料を提供することができる。
Claims (7)
- 分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有する熱硬化性アクリル樹脂(A)及び硬化剤(B)を含んでなる粉体塗料。
- 前記の塩構造を形成している基が、カルボン酸塩、燐酸塩、スルフォン酸塩及び第四級アンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の粉体塗料。
- 前記の塩構造を形成している基の少なくとも1種が、下記一般式(II)で表される構造を有している基である、請求項1〜3のいずれかに記載の粉体塗料。
- 前記の高沸点溶剤(D)が、25℃における水及びトルエンに対する溶解度が50重量%以上である、請求項2〜4のいずれかに記載の粉体塗料。
- 前記の分子の末端及び/又は側鎖に塩構造を形成している基を有する熱硬化性アクリル樹脂(A)が、分子の末端及び/又は側鎖にポリオキシアルキレン鎖含有基を有するものである、請求項1〜5のいずれかに記載の粉体塗料。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の粉体塗料を基材に塗装し、塗装された該粉体塗料を硬化させて得られる被塗物。
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