JP4364550B2 - 水性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用塗料、缶用塗料、建築外装用塗料、接着剤、インク、繊維・紙の含浸剤、及びシーリング剤等、広範囲な用途に利用することができる水性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境保護の観点から、塗料から放出される有機溶剤等の揮発性物質を低減することが要求されており、各種分野で溶剤系塗料から水系塗料への置換が行われつつある。
例えば、自動車の塗装分野においては、大量の溶剤系塗料が使用されており、それらの塗料から排出される有機溶剤の低減が急務となっており、自動車の下塗り、中塗り及び上塗り塗装工程で用いられる各種塗料に関して、有機溶剤系塗料から水系塗料への置換が検討されはじめている。
【0003】
上記した各種塗料のうち、自動車中塗り用の塗料は、耐チッピング性(チッピング:路上の小石等が飛びはねて、塗膜に衝突することによって起こる塗膜損傷)、下塗り塗膜等に対する付着性、貯蔵安定性(顔料分散性)、耐溶剤性、外観等の高度な特性が要求されることから、従来より有機溶剤型のポリエステル樹脂及び硬化剤としてアミノ樹脂を主成分とした樹脂組成物が用いられてきた。
近年、自動車中塗り用塗料の水性化が一部において実施されるようになってきたが、上述のような各要求特性を高度なレベルで兼ね備えた水性の自動車中塗り用塗料は、未だ開発途上の段階にある。
【0004】
例えば、ポリエステル樹脂、硬化剤及び有機スルホン酸アミン塩を含有してなる水性中塗り用塗料についての報告があり(例えば特許文献1参照)、当該手法により、自動車の塗装工程においては有機溶剤の放出を低減することが可能である。しかしながら、当該水性中塗り塗料は顔料分散性が不十分であり、貯蔵時に、顔料の凝集、沈殿等が生じるという問題をかかえている。
【0005】
顔料の凝集、沈殿や樹脂の析出等に帰因した塗料の貯蔵安定性の問題を解決する従来技術としては、一般に、界面活性剤等の顔料分散剤を使用して顔料分散性を改良する手法が知られている。しかしながら、この手法により目的とする効果を得るためにはある程度の量の顔料分散剤を使用する必要があるが、この顔料分散剤は最終的に形成される塗膜中にも残存することから、塗膜の耐水性等の物性に悪影響を及ぼし実用上大きな問題となる。
【0006】
また、酸価5以下、水酸基価1〜50の疎水性アルキド樹脂と酸価10〜200、水酸基価5以下の親水性アルキド樹脂とが化学的に結合した水分散性アルキド樹脂組成物及び顔料等を用いて得られる塗料は、粘度の経時変化が小さく貯蔵安定性に優れることが報告されている(例えば特許文献2参照)。しかし、かかる水分散性アルキド樹脂組成物は、その水性媒体中の分散体粒子の表面が水酸基価5以下の親水性アルキド樹脂で覆われ、水酸基価1〜50の疎水性アルキド樹脂がその内部に存在するという構造すなわち水酸基が粒子内部に局在化するという構造的特徴を有することから、硬化剤としてアミノ樹脂等を用いた場合の硬化性が悪く、耐溶剤性等の塗膜物性が劣るという問題が生じる。
【0007】
また、特定のビニル化脂肪酸とポリオール化合物とを縮合せしめ、塩基性化合物により中和せしめて得られる水性アルキド樹脂を含有する水性塗料用樹脂組成物が、樹脂安定性及び塗料安定性に優れ、総合的な貯蔵安定性に優れることが報告されている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、当該水性塗料用樹脂組成物を使用した水性塗料を前記自動車中塗り用の塗料として使用すると、確かに塗料の貯蔵安定性には優れるものの得られる塗膜の耐チッピング性が不十分であるという問題がある。
【0008】
以上のように、従来の溶剤系塗料を水性化する上において、耐チッピング性をはじめとする自動車中塗り用塗料の一般的な要求特性を高度なバランスで保持しつつ、なおかつ顔料分散性に優れ、貯蔵安定性に優れたものとすることは極めて困難で、かかる水性塗料は未だ完成されていないのが現状であり、これらの要求特性を高度なレベルで兼ね備えた水性塗料に対するニーズが、市場において急速に高まっている。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−76937号公報(段落〔0036〕)
【0010】
【特許文献2】
特開平5−287184号公報(特許請求の範囲、段落〔0005〕、〔0051〕〜〔0055〕)
【0011】
【特許文献3】
特開平9−111184号公報(特許請求の範囲、段落〔0018〕〜〔0020〕)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、耐チッピング性等の自動車中塗り用塗料の一般的な要求特性を保持しつつ、さらに顔料分散性、貯蔵安定性に優れた、水性塗料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが検討した結果、脂環族酸あるいは脂肪族酸を使用したポリエステル樹脂と硬化剤を主成分とする水性樹脂組成物を用いた水性塗料は、得られる塗膜の耐チッピング性には優れるが、水性樹脂組成物及び水性塗料の粘度変化が大きく、また、樹脂の分離・沈降が発生するという問題に直面した。また、芳香族酸を使用したポリエステルを用いた場合には、水性樹脂組成物等の粘度変化は改善されるが、耐チッピング性が低下するという問題が見られた。
【0014】
かかる問題を解決するために検討を進めたところ、特定の酸価及び水酸基価を有し、かつ実質的に脂環族酸と芳香族酸のみを使用し、脂肪族酸を使用しないか或いはその使用量を極力低減したポリエステル樹脂と硬化剤を主成分とする水性樹脂組成物は、予測に反して、芳香族酸のみを使用した場合よりもさらに粘度変化が改善され、また、樹脂の分離・沈降という問題も生じることなく極めて貯蔵安定性に優れたものであることを見出した。また、かかる水性樹脂組成物を用いて得られる水性塗料から得られる塗膜の耐チッピング性も、非常に優れたものであることを見出した。
しかしながら、かかる水性樹脂組成物を用いて得られる水性塗料は、顔料分散性に今一歩の改善が必要であり、場合によっては貯蔵時に経時的に顔料が凝集・沈殿が生じることもある。
【0015】
さらに検討を進めた結果、前記の実質的に脂環族酸と芳香族酸のみを使用したポリエステル樹脂と、特定の酸価及び水酸基価を有し、かつカルボキシル基含有単量体に由来する構成単位を特定量含有するビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するビニル変性ポリエステル樹脂と硬化剤とを組み合わせることで、水性樹脂組成物の貯蔵安定性に優れ、それを用いた水性塗料も顔料が沈降するようなことはなく極めて安定性に優れたものであり、かつ、得られる塗膜の耐チッピング性も、非常に優れたものであることを見出すに及んで、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、酸価10〜50及び水酸基価20〜150を有するポリエステル樹脂(A)、酸価20〜100及び水酸基価20〜150を有するビニル変性ポリエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)を含んでなり、
前記ポリエステル樹脂(A)が芳香族酸及び脂環族酸に由来する構成単位を有するものであり、かつ、前記芳香族酸及び前記脂環族酸に由来する構成単位の合計が前記ポリエステル樹脂(A)を構成する多塩基酸に由来する構成単位の70モル%以上であり、
前記ビニル変性ポリエステル樹脂(B)がビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するものであって、
前記ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の15〜45重量%が前記ビニル重合体部分であり、
前記ビニル重合体部分の10〜50重量%がカルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位である、
水性樹脂組成物を提供するものである。
【0017】
さらに本発明は、前記した水性樹脂組成物を含有してなる水性塗料を提供するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について具体的に説明する。
本発明の水性樹脂組成物は、酸価10〜50及び水酸基価20〜150を有するポリエステル樹脂(A)、酸価20〜100及び水酸基価20〜150を有するビニル変性ポリエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)を含んでなり、かつそれらが水性媒体中に分散又は溶解してなるものである。
【0019】
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)は、多塩基酸と多価アルコールを主成分として用いてエステル化反応させることによって得られるものである。ポリエステル樹脂(A)は、酸価10〜50、水酸基価20〜150を有するものである。
【0020】
さらに、ポリエステル樹脂(A)は,多塩基酸として芳香族酸及び脂環族酸由来の構成単位を有し、且つ前記芳香族酸及び前記脂環族酸に由来する構成単位の合計が、多塩基酸に由来する構成単位の70モル%以上であり、90モル%以上が好ましく、100モル%がより好ましい。かかる範囲にすることで、耐チッピング性及び貯蔵安定性が共に優れた水性塗料を提供可能な水性樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
ポリエステル樹脂(A)中における、芳香族酸に由来する構成単位と脂環族酸に由来する構成単位のモル比は、20/80〜70/30の範囲であることが好ましく、その中でも当該モル比は20/80〜50/50の範囲であることがより好ましい。かかる範囲内にすることで、顔料分散性に優れ、貯蔵安定性に優れた水性塗料を得ることができる。
【0022】
ここで、ポリエステル樹脂(A)を製造する際に使用することのできる芳香族酸としては、例えば(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−tert−ブチル安息香酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、テトラクロル(無水)フタル酸、スルホン酸ナトリウムイソフタル酸ジメチルエステルの如き、各種芳香族酸類等が挙げられる。
【0023】
また、脂環族酸としては、例えば1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、メチルヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)ヘット酸、(無水)ハイミック酸〔日立化成化学工業(株)の登録商標〕、水添(無水)トリメリット酸、エンドメチレンテトラヒドロ(無水)フタル酸等の各種脂環式ポリカルボン酸類、4−tert−ブチルシクロヘキサンモノカルボン酸、ヘキサヒドロ安息香酸をはじめとする種々の脂環式モノカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
また、ポリエステル樹脂(A)を製造する際には、多塩基酸として前記した芳香族酸及び脂環族酸の他に、公知の脂肪族酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オクテン酸、イソノナン酸およびこれらの無水物等を併用することができる。
【0025】
また、ポリエステル樹脂(A)を製造する際には、前記した多塩基酸の他に、油やその油を加水分解して得られる脂肪酸を併用することができ、例えば、やし油、水添やし油、米糠油、トール油、大豆油、ひまし油、脱水ひまし油等や、それらを加水分解して得られる脂肪酸が挙げられる。また、前記した油とは別に「カージュラーE」(シェル社製の分岐状脂肪族モノカルボン酸のグリシジルエステル)なども使用することができる。
上述したような、脂肪族酸、油やその油を加水分解して得られる脂肪酸等は、前記した芳香族酸及び脂環族酸と併用することも可能ではあるが、水性塗料の貯蔵安定性をはじめ本発明の目的を達成するという観点からは、その使用量は極力小さいほうが好ましい。
【0026】
次に、ポリエステル樹脂(A)を製造する際に使用することのできる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0027】
以上の各種多塩基酸及び多価アルコールを用いて得られるポリエステル樹脂(A)の構造は、線状構造又は分岐構造のどちらであってもよい。
【0028】
ポリエステル樹脂(A)を製造する方法は、多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させる方法であれば特に制限されるものではないが、例えば溶融法や溶剤法を適用することができる。
【0029】
ここで、前記した溶融法とは、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを、窒素気流中、150〜250℃で加熱し、生成する水を逐次除去しながらエステル化反応させることで、所定の水酸基価、酸価を有する固体のポリエステル樹脂(A)を得る方法である。
【0030】
また、前記した溶剤法とは、例えば、キシレン等の溶剤中で、多塩基酸及び多価アルコールを加熱しエステル化反応させ、次いで溶剤を留去することによって固体のポリエステル樹脂(A)を得る方法である。
【0031】
ここで、溶剤としては、後述する親水性有機溶剤を使用することもできる。この場合は、エステル化反応に引き続いて後述する塩基性化合物を添加して中和させ、これを水に分散又は溶解させることによって、ポリエステル樹脂(A)の水溶液又は水分散液を得ることができる。
【0032】
また、前記したエステル化反応の際には、反応を促進するために公知の触媒を使用することができ、かかる触媒としては、例えばジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどが挙げられる。
【0033】
かくして得られるポリエステル樹脂(A)の酸価は、10〜50、好ましくは15〜40の範囲であり、水酸基価は20〜150、好ましくは40〜150の範囲である。かかる酸価が10より小さいとポリエステル樹脂(A)の水性化が不十分になり、水酸基価が20より小さいと得られる塗膜の硬化性が不十分になる。また、酸価が50をより大きい又は水酸基価が150より大きいと、得られる塗膜の耐水性及び耐久性が低下する。
【0034】
また、ポリエステル樹脂(A)としては、ウレタン変性させたポリエステル樹脂を使用することもできる。例えば、前記したポリエステル樹脂(A)を合成した後に、トリレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、あるいはヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体(TMP変性のHDI)等のポリイソシアネートを重付加反応させて得られるものが挙げられる。
【0035】
また、前記したポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量としては、1000〜20000の範囲が好ましく、1000〜10000の範囲がより好ましい。かかる範囲の重量平均分子量のポリエステル樹脂(A)を使用することで、硬化性、耐水性及び平滑性の優れた塗膜を形成しうる水性塗料を得ることができる。
【0036】
次に、本発明で使用するビニル変性ポリエステル樹脂(B)について説明する。当該ビニル変性ポリエステル樹脂(B)とは、酸価20〜100及び水酸基価20〜150を有し、ビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するものであって、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の15〜45重量%が前記ビニル重合体部分であり、前記ビニル重合体部分の10〜50重量%がカルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位であるポリエステル樹脂である。
【0037】
かかるビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、例えば、不飽和脂肪酸の存在下で、カルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体、及びその他の共重合可能なα、β−エチレン性不飽和単量体をラジカル重合させることによって得られるビニル重合体部分を有するビニル変性脂肪酸と、後述する水酸基を有するポリエステル樹脂(E)とを縮合させる方法により得ることができる。
【0038】
特に、前記ビニル変性脂肪酸として、後述するカルボキシル基とアリール基とを有するビニル重合体部分を有するビニル変性脂肪酸(D)(以下、ビニル変性脂肪酸(D)という。)を用い、ビニル変性脂肪酸(D)と水酸基を有するポリエステル樹脂(E)とを縮合させる方法で得られるビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、貯蔵安定性に優れた水性樹脂組成物及び水性塗料を提供できることから好ましい。
【0039】
前記のビニル変性脂肪酸(D)は、例えば、不飽和脂肪酸の存在下で、カルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体、アリール基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体、及び、その他の共重合可能なα、β−エチレン性不飽和単量体をラジカル重合させることによって得ることができる。
【0040】
ビニル変性ポリエステル樹脂(B)を製造する際に使用する、ビニル変性脂肪酸(ビニル変性脂肪酸(D)を含む。以下、単にビニル変性脂肪酸というときはその下位概念であるビニル変性脂肪酸(D)を含むものとする。)の有するカルボキシル基としては、不飽和脂肪酸由来のものと、カルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体由来のものがあり、いずれのカルボキシル基も水酸基を有するポリエステル樹脂(E)の水酸基と縮合反応しうるものであるが、不飽和脂肪酸由来のカルボキシル基と、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)の水酸基とを縮合反応させて得られるビニル変性ポリエステル樹脂(B)を用いることが、水性樹脂組成物及び水性塗料の貯蔵安定性の観点から好ましい。
【0041】
ここで、ビニル変性脂肪酸を製造する際に使用することができる不飽和脂肪酸は、例えば桐油、亜麻仁油、大豆油、サフラワー油、ひまし油、脱水ひまし油、米糠油、綿実油、やし油などの各種(半)乾性油類及び不乾性油類由来の脂肪酸が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
不飽和脂肪酸の使用量は、ビニル変性脂肪酸を製造する際に使用する全原料に対して20〜70重量%の範囲が好ましく、30〜60重量%の範囲がより好ましい。かかる範囲の不飽和脂肪酸を用いて得られるビニル変性脂肪酸を使用することで、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の分散安定性、本発明の水性塗料の貯蔵安定性、さらに本発明の水性塗料を用いて得られる塗膜の耐水性、耐食性等の塗膜物性を向上させることができる。
【0043】
また、ビニル変性脂肪酸を製造する際に使用することができるカルボキシル基含有α、β−エチレン性不飽和単量体は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα、β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、さらにマレイン酸、イタコン酸等の酸無水物、さらにこれら酸無水物のモノエステル化物が挙げられ、これらのうち少なくとも1種を使用することが好ましく、得られる塗膜の物性を良好なものにすることができる点でメタクリル酸を使用することがより好ましい。
【0044】
カルボキシル基含有α、β−エチレン性不飽和単量体の使用量は、得られるビニル変性ポリエステル樹脂(B)中におけるビニル重合体部分の10〜50重量%が、カルボキシル基含有α、β−エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位となるように設定することが必要である。かかる範囲内にすることで、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の水分散液や水溶液、及び本発明の水性樹脂組成物の安定性を向上させ、本発明の水性塗料の貯蔵安定性を優れたものとすることができ、さらに乾燥後も白化しにくい塗膜を得ることができる。
【0045】
次に、ビニル変性脂肪酸(D)を製造する際に使用することができるアリール基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレンやスチレンの有する芳香族環の各位に例えばアルキル基等の官能基を有するスチレン誘導体等が挙げられる。スチレン誘導体としては、例えばターシャリーブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0046】
前記したアリール基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体の使用量は、特に限定されないが、カルボキシル基とアリール基とを有するビニル重合体部分の重合に使用される全α、β−エチレン性不飽和単量体の合計量に対して、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30〜70重量%である。アリール基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体の使用量を前記範囲内にすることで、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の水分散液や水溶液の安定性がより優れたものとなり、本発明の水性樹脂組成物及び水性塗料の貯蔵安定性もより優れたものとなる。
【0047】
ビニル変性脂肪酸を製造する際には、前記したカルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体やアリール基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体の他に、その他の共重合可能なα、β−エチレン性不飽和単量体を併用することができる。その他の共重合可能なα、β−エチレン性不飽和単量体としては、前記したカルボキシル基含有α、β−エチレン性不飽和単量体及びアリール基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体以外のα、β−エチレン性不飽和単量体であって、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類を使用することができる。
【0048】
また、その他の共重合可能なα、β−エチレン性不飽和単量体としては、本発明の目的を達成する範囲内で、且つビニル変性脂肪酸(D)と水酸基を有するポリエステル(E)との縮合反応においてゲル化を起こさない範囲内で、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類を使用することができる。
【0049】
また、その他の共重合可能なα、β−エチレン性不飽和単量体としては、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの非イオン性の界面活性能を有するα、β−エチレン性不飽和単量体を使用することもできる。
【0050】
ビニル変性ポリエステル樹脂(B)を製造する際に使用する、ビニル変性脂肪酸は、例えば、溶液重合法、塊状重合法などの方法で製造することができる。
【0051】
溶液重合法によれば、例えば、有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、不活性ガス雰囲気下において、前記したカルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体等のα、β−エチレン性不飽和単量体類、及び不飽和脂肪酸を、間欠もしくは連続滴下、又は一括添加し、約70〜150℃に保つことでビニル変性脂肪酸を得ることができる。
また、重合開始剤は、上述のとおり予め有機溶剤中に添加しておいても良いが、各種α、β−エチレン性不飽和単量体類及び不飽和脂肪酸を滴下する際に同時に添加しても良い。
【0052】
この溶液重合法で使用することのできる有機溶剤は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0053】
また、溶液重合法で使用することのできる有機溶剤は、その使用量が少ないか、あるいは脱溶剤等の工程をする場合であれば、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグルコールエーテル系溶剤等を、ビニル変性脂肪酸と水酸基を有するポリエステル樹脂(E)との縮合反応に悪影響を及ぼさない範囲内で使用することができる。
【0054】
また、溶液重合法で使用することのできる重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物や、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられ、前記した有機過酸化物が好適に使用される。
【0055】
また、溶液重合法でビニル変性脂肪酸を製造する際には、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができ、かかる連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン、ノルマルオクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、あるいはα−メチルスチレンダイマー等が好適である。
【0056】
また、塊状重合法によれば、例えば、有機溶剤を使用せずに、前記したカルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体等のα、β−エチレン性不飽和単量体類、及び不飽和脂肪酸を一括添加、又は、間欠もしくは連続滴下しながら、加熱・混合することでビニル変性脂肪酸を製造することができる。
【0057】
また、このとき、後述する水酸基を有するポリエステル樹脂(E)の存在下で、各種α、β−エチレン性不飽和単量体類及び不飽和脂肪酸を塊状重合させることで、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)を直接製造することができる。
【0058】
次に、前記したビニル変性脂肪酸と縮合反応させる水酸基を有するポリエステル樹脂(E)について説明する。当該水酸基を有するポリエステル樹脂(E)とは、多塩基酸及び多価アルコールを、主成分として用いて縮合反応させて得られるもののうち、水酸基を有するものである。かかる水酸基を有するポリエステル樹脂(E)は、用途目的に応じて、ウレタン変性、シリコーン変性等がなされているものであってもよい。
【0059】
水酸基を有するポリエステル樹脂(E)を製造する際に使用する多塩基酸は、1分子中に2〜4個のカルボキシル基を含有するものが好ましく、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸、トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ピロメリット酸等およびこれらの無水物が挙げられる。
【0060】
また、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)を製造する際に使用する多価アルコールとしては、1分子中に2〜6個の水酸基を含有するものが好ましく、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、1.4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリスイソシアヌレート、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0061】
また、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)を製造する際には、前記した多塩基酸の他に、必要に応じて動物油、植物油及びそれらを加水分解して得られる脂肪酸、さらには「カージュラーE」(シェル社製の分岐状脂肪族モノカルボン酸のグリシジルエステル)などを、本発明の目的を達成する範囲内で併用することができる。
【0062】
前記の動物油、植物油及びそれらを加水分解して得られる脂肪酸としては、例えば、やし油、水添やし油、米糠油、トール油、大豆油、ひまし油、脱水ひまし油などと、それらを加水分解して得られる脂肪酸などが挙げられる。
かかる動物油、植物油及びそれらを加水分解して得られる脂肪酸の使用量は、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)中の50重量%を超えないことが、水性塗料の貯蔵安定性の観点から好ましい。
【0063】
また、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)の構造としては、線状構造あるいは分岐構造のどちらであっても良い。
【0064】
水酸基を有するポリエステル樹脂(E)は、多塩基酸と多価アルコールを主成分として用いて縮合反応させることにより製造することができ、例えば、多価アルコールが多塩基酸よりも過剰に存在する条件で、ポリエステル樹脂(A)の製造方法として前記した溶融法、溶剤法を適用することができる。
【0065】
また、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)としては、前記のように水酸基を有するポリエステル樹脂を合成後、さらに、トリレンジイソシアネートやメチレンビスフェニルイソシアネート、場合によってはヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体(TMP変性のHDI)等のポリイソシアネートを重付加反応させ、ウレタン変性させたものも使用することができる。
【0066】
また、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)は、その水酸基価が50〜300の範囲が好ましく、100〜250の範囲がより好ましい。水酸基価がこの範囲内であれば、前記ビニル変性脂肪酸と水酸基を有するポリエステル樹脂(E)との縮合反応を円滑に進ませることができ、また、得られる塗膜の耐水性、耐久性も優れたものとすることができる。
【0067】
本発明で使用するビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、例えば、ビニル変性脂肪酸と水酸基を有するポリエステル樹脂(E)とを混合・加熱し、縮合反応させることにより製造することができる。この際、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)を製造する際に使用することのできるものとして例示した多塩基酸を、さらに添加することもできる。
【0068】
前記した縮合反応の温度は、特に制限されるものでなく、170〜210℃が好ましい。反応速度の観点からは、カルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体の種類によって適度な温度を選定するのが望ましい。
【0069】
縮合反応は、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)の水酸基と、ビニル変性脂肪酸の有するカルボキシル基との間でおこる。ビニル変性脂肪酸は、不飽和脂肪酸由来のカルボキシル基と、ビニル重合体部分由来のカルボキシル基とを有するものであるが、そのなかでも不飽和脂肪酸由来のカルボキシル基と、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)の水酸基とを縮合反応させることが、得られるビニル変性ポリエステル樹脂(B)の水分散性又は水溶解性をより優れたものとすることができるという観点から好ましい。
【0070】
特に、ビニル重合体部分由来のカルボキシル基が、メタクリル酸由来のカルボキシル基である場合には、当該カルボキシル基の反応性が不飽和脂肪酸由来のカルボキシル基の反応性と比較して低いことから、不飽和脂肪酸由来のカルボキシル基が、もっぱら当該縮合反応に関与するのでより好ましい。
【0071】
また、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、前記方法とは別に、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)の存在下に、必要に応じて少量の有機溶剤を添加した後、前記した不飽和脂肪酸、カルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体等の単量体類を添加、混合し、次いで昇温し縮合反応させることにより製造することもできる。
【0072】
また、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)及び不飽和脂肪酸を縮合反応させて得られるポリエステル樹脂に、前記したカルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体等の単量体類を添加、混合し付加重合させる方法でも得ることができる。
【0073】
さらに、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、水酸基を有するポリエステル樹脂(E)及び不飽和脂肪酸を縮合反応させて得られるポリエステル樹脂に、カルボキシル基を有するビニル重合体を、付加反応させて得ることもできる。
【0074】
かくして得られるビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、酸価20〜100の範囲を有するものが好ましく、20〜50の範囲を有するものがより好ましく、20〜40の範囲を有するものが特に好ましい。また、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、水酸基価20〜150の範囲を有するものが好ましく、40〜150の範囲を有するものがより好ましい。
【0075】
酸価が上記範囲内であれば、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)を水中に十分に分散又は溶解させることができ、得られる塗膜の耐水性、耐久性もまた良好なものとなる。また、水酸基価が上記範囲内であれば、耐水性、耐久性及び硬化性に優れた塗膜を得ることができる。
【0076】
また、本発明で使用するビニル変性ポリエステル樹脂(B)は、その15〜45重量%が前記ビニル重合体部分となるようにすることが必要である。かかる範囲内となるようにすることで、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の水分散液や水溶液の安定性がより優れたものとすることができ、本発明の水性樹脂組成物及び水性塗料の貯蔵安定性もより優れたものとすることができる。
【0077】
また、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量は、10000〜150000の範囲が好ましく、30000〜100000の範囲がより好ましい。
【0078】
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)及びビニル変性ポリエステル樹脂(B)を水中に分散又は溶解させる方法としては、公知慣用の方法が適用できるが、なかでも転相乳化法によるのが好適である。
【0079】
ポリエステル樹脂(A)を転相乳化法により水に分散又は溶解させる方法としては、例えば、ポリエステル樹脂(A)を塩基性化合物で中和した後、水中に添加・撹拌し水に分散又は溶解させる方法を適用することができる。
【0080】
具体的には、前記した溶融法又は溶剤法によって得られた固体のポリエステル樹脂(A)に、塩基性化合物及び必要に応じて親水性有機溶剤を添加・混合し、ポリエステル樹脂(A)中の酸基の一部又は全部を中和させ、次いで水を添加・混合することで、ポリエステル樹脂(A)を水に分散又は溶解させることができる。
この場合、親水性有機溶剤及び塩基性化合物をポリエステル樹脂(A)に添加する時期は、特に限定されるものではなく、親水性有機溶剤と塩基性化合物を別々に、又はその混合物を適時添加して良い。
【0081】
ポリエステル樹脂(A)の酸基を効率よく中和させ水に分散又は溶解させるためには、固体のポリエステル樹脂(A)を親水性有機溶剤に溶解させた後に、塩基性化合物を添加して酸基の一部又は全部を中和させ、次いで水を添加することで、これらを水に分散又は溶解させる方法が好ましい。
【0082】
次に、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)を転相乳化法により水に分散又は溶解させる方法としては、例えば、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)を塩基性化合物で中和した後、水中に添加・撹拌し水に分散又は溶解させる方法を適用することができる。
【0083】
具体的には、例えば、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)に塩基性化合物及び必要に応じて親水性有機溶剤を添加・混合し、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)中の酸基の一部又は全部を中和させ、次いで水を添加することで、これを水に分散又は溶解させることができる。
この場合、親水性有機溶剤及び塩基性化合物をビニル変性ポリエステル樹脂(B)に添加する時期は、特に限定されるものではなく、親水性有機溶剤と塩基性化合物を別々に、又はそれらの混合物を適時添加して良い。
【0084】
ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の酸基を効率よく中和させ水に分散又は溶解させるためには、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)を親水性有機溶剤に溶解させた後に、塩基性化合物を添加して酸基の一部又は全部を中和させ、次いで水を添加することで、これらを水に分散又は溶解させる方法が好ましい。
【0085】
また、ポリエステル樹脂(A)、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)及び後述する硬化剤(C)の混合物に必要に応じて親水性の有機溶剤を添加し、塩基性化合物を添加・混合し、次いで水を添加することで、これらを水に分散又は溶解させることもできる。
【0086】
前記した親水性有機溶剤としては、エーテルアルコール類、例えばエチレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールとのモノエーテル化物、プロピレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールとのモノエーテル化物、ジエチレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールとのモノエーテル化物、
【0087】
ジプロピレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールとのモノエーテル化物、1−3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル(一般名:3−メトキシブタノール)、3−メチル−3−メトキシブタノール(一般名:ソルフィット)、さらに酢酸メチルセロソルブのような20℃で水に無限可溶するエーテルエステルなどが使用できる。親水性有機溶剤の使用量としては、ポリエステル樹脂(A)及びビニル変性ポリエステル樹脂(B)の酸基を効率よく中和させる為に任意に設定することができるが、低VOCの観点から、その使用量を少なくすることが好ましい。
【0088】
また、ポリエステル樹脂(A)、あるいはビニル変性ポリエステル樹脂(B)が有する酸基の一部又は全部を中和する際に使用する塩基性化合物としては、公知慣用の種々のものを使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;
【0089】
ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−またはイソ−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミンなどのポリアミン;などがあげられ、前記したポリエステル樹脂(A)の親水性を調節するために塩基性化合物を適当に組み合わせて用いることができる。
かかる塩基性化合物の使用量は、ポリエステル樹脂(A)、あるいはビニル変性ポリエステル樹脂(B)が有するカルボキシル基の、40〜100モル%の範囲であることが好ましく、60〜100モル%の範囲がより好ましい。
【0090】
次に、本発明で使用する硬化剤(C)としては、前記したポリエステル樹脂(A)やビニル変性ポリエステル樹脂(B)が有する水酸基と反応性を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート等を使用することができる。
【0091】
前記したアミノ樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン等の1種又は2種以上とホルムアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂、イミノ基含有メチロール化アミノ樹脂等が挙げられる。これらのうち、特に水性化に適したものを使用することが好ましく、例えば前記したアミノ樹脂のメチロール基の全部または一部分を炭素数1〜8の1価アルコールでエーテル化したものが挙げられ、具体的にはブトキシメチルメラミン樹脂、メトキシメチル化メラミン樹脂、メトキシ・ブトキシ混合エーテル化メチルメラミン樹脂等が挙げられる。
【0092】
また、前記したブロックイソシアネートとしては、例えば、有機ジイソシアネート化合物と、多価アルコール、低分子量水酸基含有ポリエステル樹脂、低分子水酸基含有アルキド樹脂又は水等との付加物及び前記した有機ジイソシアネート化合物同士の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物、ウレトジオン化合物をも含む。)を、オキシム類、フェノール類、アルコール類、ジケトン類などの公知慣用のブロック化剤でブロック化させて得られるブロックイソシアネートを使用することができる。
【0093】
前記した有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネート等の各種環状ジイソシアネート類(脂環式ジイソシアネート類)、トリレンジイソシアネートもしくは4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の各種の芳香族ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。
【0094】
上記したなかでも、イソシアネート基の片末端を例えばポリオキシエチレングリコール等で変性し、片末端をアルコキシ基で封鎖したものや、片末端を活性水素含有基を有するポリオキシアルキレン化合物等で変性した水分散型ブロックイソシアネートを使用することが好ましい。
【0095】
本発明の水性樹脂組成物は、例えば、前記したポリエステル樹脂(A)の水分散液又は水溶液、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の水分散液又は水溶液及び硬化剤(C)を、公知の手法により混合することにより製造することができる。
また、ポリエステル樹脂(A)、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)の混合物に、必要に応じて親水性有機溶剤を加え、塩基性化合物及び/又は乳化剤を添加・撹拌し、次いで水を添加することで水に分散又は溶解させることによっても製造することができ。
【0096】
かかる水性樹脂組成物中のポリエステル樹脂(A)、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)の含有比率としては、重量比〔ポリエステル樹脂(A)+ビニル変性ポリエステル樹脂(B)〕/硬化剤(C)が、50/50〜90/10の範囲であることが好ましく、60/40〜85/15の範囲であることがより好ましい。
また、重量比〔ポリエステル樹脂(A)/ビニル変性ポリエステル樹脂(B)〕は、50/50〜85/15の範囲が好ましい。かかる範囲になるように調整することで、付着性、硬化性及び貯蔵安定性等に優れた水性塗料を得ることができ、また、チッピング性、耐水性に優れた塗膜を得ることができる。
【0097】
次に、本発明の水性塗料について説明する。
本発明の水性塗料は、前記した本発明の水性樹脂組成物に、必要に応じて硬化触媒、顔料、消泡剤、分散剤、表面調整剤、色分れ防止剤、流動調整剤、その他の樹脂類等を添加し、公知の装置を用いて、混合させることによって製造することができる。特に、顔料を使用する場合には、水性樹脂組成物あるいは水性樹脂組成物を構成する樹脂成分と顔料とを混合し、公知の分散機を用いて顔料を十分に分散させることが必要である。
【0098】
ここで、前記した硬化触媒は、本発明の水性樹脂組成物あるいは水性塗料の硬化を促進させる為に用いられるものであり、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、またはこれらのアミンブロック化物、テトラクロル無水フタル酸と一価アルコールとのハーフエステル化物、トリクロル酢酸の如き有機酸などの酸触媒;
【0099】
テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジオクテート、ナフテン酸コバルトの如き、各種の含金属化合物類;モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸、モノアルキル亜燐酸、ジアルキル燐酸の如き各種燐系酸性化合物などを使用することができる。
【0100】
かかる硬化触媒の使用量としては、ポリエステル樹脂(A)とビニル変性ポリエステル樹脂(B)と硬化剤(C)の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部となる範囲内が好ましい。
【0101】
また、前記した顔料としては、公知の顔料を使用することができ、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物や、アルミフレーク、雲母、ケイ酸塩類、クロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの無機顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ベンズイシダゾロン、スレン、ペリレンなどの有機顔料等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を任意に組み合わせて使用するこができる。
【0102】
また、前記したその他の樹脂類としては、例えばポリエーテルポリオール、ポリオール/ラクトン/酸無水物から得られる低分子量二級アルコール性ヒドロキシル基含有ポリエステルポリオールなどを、適宜使用することができる。
【0103】
本発明の水性塗料の粘度としては、フォードカップNo.4を使用して測定した場合、温度条件20℃で20〜80秒であることが好ましい。
【0104】
次に、本発明の水性塗料を用いて、目的とする実用的効果の高い塗膜を形成する方法としては、例えば、基材に表面処理を施し、又は必要に応じて電着塗膜等のプライマー層を塗設した基材表面に本発明の水性塗料を塗装し、次いで熱硬化させる方法が挙げられる。
【0105】
基材表面に本発明の水性塗料を塗装する方法としては、例えばスプレー法、静電法、電着法等の方法を適用することができ、所望の乾燥硬化膜厚が得られるように、適宜、塗装し硬化させればよい。
【0106】
また、熱硬化条件としては、例えば、110〜170℃で15〜40分間など、水性塗料を構成する各樹脂成分や硬化剤との間の架橋反応が十分に行われるように、適宜設定すればよい。
【0107】
また、本発明の水性塗料を塗装する基材としては、例えば、鉄鋼板、ステンレス・スチール板、クロム・メッキ板、トタン板、ブリキ板、アルミニウム板、アルミサッシ、アルミホイル等の、鉄又は非鉄金属系の種々の金属素材類、金属製品類などをはじめ、木材、スレート板、瓦、ガラスなどが挙げられる。
【0108】
また、本発明の水性塗料は、自動車中塗り塗料として特に適しており、かかる水性塗料を用いて得られる塗膜表面に上塗り塗料を塗布し、積層塗膜を形成することができる。中塗り塗膜表面に上塗り塗膜を施した複合塗膜は、優れた外観を有し、塗膜剥離の起こりにくい、優れた耐チッピング性を有するものである。
【0109】
【実施例】
次に、本発明を、参考例、実施例及び比較例により一層具体的に説明する。
【0110】
参考例1〜5(ポリエステル樹脂の調製例)
攪拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた3リットルの四つ口フラスコに、第1表に示す組成の原料とジブチル錫オキサイド0.5重量部を仕込み、220℃まで昇温し、脱水縮合反応を行った。このとき、酸価測定のために樹脂溶液の一部を取り出し、ブチルセロソルブで不揮発分が60重量%になるまで希釈した時の溶液の酸価が、第1表の値になるまで反応させた。
反応終了後150℃まで冷却した時点で、必要に応じて第1表に示した親水性有機溶剤を添加後1時間撹拌し、次に90℃で第1表に示す塩基性化合物を添加し同温度で1時間撹拌した。その後、不揮発分が40重量%になるようなイオン交換水を添加し、ポリエステル樹脂(A)−1〜5の水分散液を得た。それぞれの性状値はまとめて第1表に示す。
【0111】
【表1】
Figure 0004364550
【0112】
【表2】
Figure 0004364550
【0113】
HHPA :ヘキサヒドロ無水フタル酸
THPA :テトラヒドロ無水フタル酸
NPG :ネオペンチルグリコール
1,6HD:1,6−ヘキサンジオール
TMP :トリメチロールプロパン
BCS :エチレングリコール−n−ブチルエーテル
PnP :プロピレングリコール−n−プロピルエーテル
DMEA :ジメチルエタノールアミン
【0114】
参考例6〜9(水酸基を有するポリエステル樹脂の調製例)
攪拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた3リットルの四つ口フラスコに、第2表に示す組成の原料とジブチル錫オキサイド0.5重量部とを仕込み、220℃まで昇温し、脱水縮合反応を行った。このとき、樹脂溶液の一部を取り出してブチルセロソルブで不揮発分が60重量%になるまで希釈した時の溶液の酸価が、第2表の値になるまで反応を続行せしめ、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の原料である固形の水酸基を有するポリエステル樹脂(E)−1〜4を得た。それぞれの性状値はまとめて第2表に示す。
【0115】
【表3】
Figure 0004364550
【0116】
参考例10〜12(ビニル変性脂肪酸の調製例)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた3リットルの四つ口フラスコに、第3表に示した量の脂肪酸とキシレンを仕込み、撹拌しながら130℃まで昇温し、そこにビニル重合可能な単量体類と重合開始剤の混合物を3時間かけて添加した。一晩130℃で撹拌し、80℃に降温後、第3表に示す量のメチルエチルケトンを添加し、第3表に示す性状のビニル変性脂肪酸(D)−1〜3の溶液を得た。なお、溶液の不揮発分は50重量%である。
【0117】
【表4】
Figure 0004364550
【0118】
参考例13〜16(ビニル変性ポリエステル樹脂の調製例)
攪拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた3リットルの四つ口フラスコに、第4表に示した組成の原料を仕込み、180℃まで徐々に昇温し、キシレンとメチルエチルケトンを留去させ、脱水縮合反応を行った。ここで、ブチルセロソルブで不揮発分が50重量%になるまで希釈した時の樹脂溶液の酸価が、第4表の値になるまで反応を続行させた。反応終了後150℃まで冷却した時点で、必要に応じて第4表に示した親水性有機溶剤を添加し、次いで1時間撹拌し、90℃で第4表に示す塩基性化合物を添加し同温度で1時間撹拌した。その後、不揮発分が40重量%になるようにイオン交換水を添加し、ビニル変性ポリエステル樹脂(B)−1〜4の水分散液を得た。それぞれの性状値をまとめて第4表に示す。
【0119】
【表5】
Figure 0004364550
【0120】
実施例1〜5、比較例1〜3
ステンレス容器に第5表に示す所定量のビニル変性ポリエステル樹脂(B)−1〜4と、所定量の酸化チタンR−930又は酸化チタンCR−97と、それらと同量のガラスビーズを仕込み、さらに消泡剤BYK−080を、ビニル変性ポリエステル樹脂と酸化チタンの合計量の0.5重量%を添加し、ペイントシェーカーにて2時間分散させた。
【0121】
次いで、第5表に示す所定量のポリエステル樹脂(A)−1〜5と硬化剤を仕込んで5分間攪拌したのち、ガラスビーズを除き、さらに、イオン交換水でフォードカップNo.4で50秒(20℃)となるように粘度を調整して、水性塗料をそれぞれ得た。水性塗料の製造直後と、水性塗料を40℃で10日間保存した後の粘度を測定し、その粘度の変化を第6表に示した。また、水性塗料の不揮発分も第6表に示した。
【0122】
【表6】
Figure 0004364550
【0123】
C−370 :サイメルC−370(三井サイテック社製の一部エーテル化メチロールメラミン樹脂、不揮発分88重量%)
S−695 :スーパーベッカミンS−695(大日本インキ社製メラミン樹脂、不揮発分66重量%)
BN−69 :エラストロンBN−69(第一工業製薬社製水分散型ブロックイソシアネート、不揮発分40重量%)
R−930 :タイペークR−930(石原産業(株)製の酸化チタン)
CR−97 :タイペークCR−97(石原産業(株)製の酸化チタン)
【0124】
参考例21 (中塗り塗板の作製)
実施例1〜5、比較例1〜3で得られた水性塗料を、電着板(日本ルートサービス社製)上に、乾燥膜厚が約35μmとなるようにスプレーで塗装し、10分間、室温に放置した後、60℃で10分間乾燥させた。次に、140℃で30分間焼き付けを行い、中塗り塗板を得た。得られた中塗り塗板を用いて、第6表に示す光沢、硬度及びキシレンラビングといった中塗り塗膜性能の試験を行った。
【0125】
参考例22(ベースコート塗料の調製)
下記に示す組成で配合したものを、トルエン/酢酸エチルを9/1の重量比で混合してなる希釈用溶剤でもってフォードカップNo.4での粘度が12〜13秒となる様に調整して、ベースコート塗料を得た。
【0126】
アクリディック A−322 〔大日本インキ化学工業(株)製のアクリル樹脂〕 ; 160重量部
スーパーベッカミン L−117−60 〔大日本インキ化学工業(株)製のブチル化メラミン樹脂〕 ; 33重量部
アルペースト 1860YL 〔東洋アルミニウム工業(株)製のアルミニウムペースト〕 ; 23重量部
ファーストゲンブルーNK 〔大日本インキ化学工業(株)製のフタロシアニン系有機顔料〕 ; 2重量部
【0127】
参考例23(クリヤーコート塗料の調製)
下記に示す組成で配合したものを、キシレン/1−ブタノールを8/2の重量比で混合してなる希釈用溶剤でもってフォードカップNo.4での粘度が22〜24秒となる様に調整して、クリヤーコート塗料を得た。
【0128】
アクリディック A−345 〔大日本インキ化学工業(株)製のアクリル樹脂〕 ; 127重量部
スーパーベッカミン L−117−60 〔大日本インキ化学工業(株)製のブチル化メラミン樹脂〕 ; 50重量部
チヌビン 900 (チバガイギー社製のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤); 3重量部
サノールLS−765: (三共製薬(株)製のヒンダードアミン系光安定剤); 1重量部
KP−321 〔信越化学(株)製のレベリング剤〕 ; 0.05重量部
【0129】
参考例24(上塗り塗板の作成と評価)
参考例21で得た中塗り塗板上に参考例22で調製したベースコート塗料を乾燥膜厚が約15μmとなる様にスプレーで塗装し、3分間室温に放置したのち、参考例23で調製したクリヤーコート塗料を乾燥膜厚が約35μmとなるようにスプレーで塗装した。次いで、室温に10分間放置し、140℃で30分間焼き付けを行い、複合塗膜を有する上塗り塗板を得た。
【0130】
得られた上塗り塗板の外観を目視により判定した結果、どの上塗り塗板も艶感が劣るなどの不具合が無く良好であった。また、上塗り塗板を用いて耐チッピング性の試験を行ったところ、上塗り塗膜の耐チッピング性は、優れたものであった。結果を第6表に示す。
【0131】
【表7】
Figure 0004364550
*顔料の沈殿。
【0132】
水性塗料の粘度変化:得られた水性塗料の粘度を、イオン交換水を用いてフォードカップNo.4で50秒(20℃)となるように調整し、40℃で10日保存した。保存後の水性塗料の粘度をフォードカップNo.4で測定し、保存前の粘度に対する保存後の粘度変化を調べた。
【0133】
塗膜諸物性評価判定の要領
【0134】
光沢:スガ試験機(株)製ハンディ光沢計で60度光沢(60度鏡面反射率:%)を測定した。
【0135】
硬度:JIS K 5400の鉛筆ひっかき試験に従い、塗膜の破れが認められない鉛筆の硬度記号を示した。
【0136】
キシレンラビング性:キシレンをネル布に浸し、ラビングテスターにて50往復後の塗面状態を目視で観察した。
○ :膨潤、傷なし
△ :微傷、薄傷が認められる
× :著しい膨潤、傷が認められる
【0137】
耐チッピング性:スガ試験機(株)製の「グラベロメータ」で、−20℃の雰囲気中で50gの7号砕石を0.4MPaで送出し、上塗り塗板表面に衝突させた際の塗膜剥離の程度を目視により判定した。
◎ :良好(はがれが全くない)
○ :良好(僅かにはがれが見られる)
△ :普通(はがれが散見される)
× :劣る(はがれが目立つ)
【0138】
【発明の効果】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、且つ耐チッピング性、外観等に優れた塗膜を形成可能な水性塗料を得ることができる。

Claims (4)

  1. 酸価10〜50及び水酸基価20〜150を有するポリエステル樹脂(A)、酸価20〜100及び水酸基価20〜150を有するビニル変性ポリエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)を含んでなり、
    前記ポリエステル樹脂(A)が芳香族酸及び脂環族酸に由来する構成単位を有するものであり、かつ、前記芳香族酸及び前記脂環族酸に由来する構成単位の合計が前記ポリエステル樹脂(A)を構成する多塩基酸に由来する構成単位の70モル%以上であり、
    前記ビニル変性ポリエステル樹脂(B)が、ビニル重合体部分が結合した脂肪酸鎖を有するものであって、
    前記ビニル変性ポリエステル樹脂(B)の15〜45重量%が前記ビニル重合体部分であり、
    前記ビニル重合体部分の10〜50重量%が、カルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位である、
    水性樹脂組成物。
  2. 前記ビニル変性ポリエステル樹脂(B)が、カルボキシル基とアリール基とを有するビニル重合体部分を有するビニル変性脂肪酸(D)と水酸基を有するポリエステル樹脂(E)とを縮合させて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物。
  3. ポリエステル樹脂(A)における芳香族酸に由来する構成単位と脂環族酸に由来する構成単位のモル比が、20/80〜50/50である請求項1に記載の水性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の水性樹脂組成物を含有してなる水性塗料。
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