JP4465972B2 - 水性塗料用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、貯蔵安定性が良好な水性塗料を提供しうる水性塗料用樹脂組成物に関し、特に、自動車中塗り用塗料とし用いた場合に耐チッピング性の優れた塗膜を形成する水性塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境保護の観点から、塗料から放出される揮発性物質を低減することが要求されており、各種分野で溶剤系塗料から水系塗料への置換が行われつつある。例えば、自動車の塗装分野においては、その下塗り、中塗り及び上塗り塗装工程で用いられる各種塗料に関しては、徐々に有機溶剤系塗料から水系塗料への置換がなされている。
【0003】
ここで、前記した各種塗料のうち、中塗り用塗料に関しては、従来は有機溶剤型のポリエステル樹脂及びアミノ樹脂を主成分とした樹脂組成物が用いられていたが、近年、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂及び有機スルホン酸アミンを含有してなる水性中塗り塗料が開示された(例えば特許文献1参照)。これにより、自動車の塗装工程においては揮発性物質の放出を低減することが可能となったものの、顔料が沈殿してしまうなど塗料としての安定性に関しては、必ずしも十分といえるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】
特願平09−246582号公報(段落0036)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、一般的に水性塗料を貯蔵する温度範囲、即ち常温から40℃までの範囲において、貯蔵安定性の優れた水性塗料用樹脂組成物及び水性塗料を得ることであり、また、自動車中塗り用塗料として用いた場合には、得られる中塗り塗膜の最も重要な性能の1つである耐チッピング性にも優れた塗膜を形成することのできる水性塗料用樹脂組成物及び水性塗料を提供することである。なお、前記した耐チッピング性とは、例えば路上の小石等の跳ね上がりや衝突によって起こりうる塗膜損傷をできる限り抑制しうるものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記した課題に照準を合わせ、貯蔵安定性の優れたポリエステル樹脂を検討し、芳香族酸及び脂環酸に由来する構成単位を有するポリエステル樹脂が、水中で安定性に優れ、且つ良好な耐チッピング性を有する塗膜を形成しうることを突き止めた。しかし、前記したポリエステル樹脂に顔料及び水等を添加し水性塗料として使用する場合、水性塗料中において顔料等が分離する可能性があることがわかり、水性塗料としての貯蔵安定性に関しては、十分といえるものではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した特定のポリエステル樹脂、水酸基を有するビニル変性エポキシエステル樹脂及び硬化剤を用いることで、耐チッピング性に優れ、より貯蔵安定性の優れた水性塗料用樹脂組成物及び水性塗料を開発するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、芳香族酸及び脂環族酸に由来する構成単位を有し、酸価が10〜100且つ水酸基価が20〜200であるポリエステル樹脂(A)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)を含んでなる水性塗料用樹脂組成物であって、
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)が、
エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステル及びカルボキシル基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体を重合して得られた樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部を中和したものを、水性媒体中に溶解又は分散せしめて得られたもの
或いは
エポキシ樹脂の脂肪酸エステル及びカルボキシル基を2個以上有するビニル変性脂肪酸を縮合せしめて得られた樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部を中和したものを、水性媒体中に溶解又は分散せしめて得られたもの
であることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物に関するものであり、好ましくは前記ポリエステル樹脂(A)における芳香族酸に由来する構成単位と脂環族酸に由来する構成単位のモル比が、20/80〜70/30であり、より好ましくは20/80〜50/50である前記の水性塗料用樹脂組成物に関するものである。
【0009】
さらに、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)が、エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステル及びカルボキシル基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体を重合して得られた樹脂のカルボキシル基の一部または全部を中和したものを、水性媒体中に溶解又は分散して得られたものであることが好ましく、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)が、エポキシ樹脂の脂肪酸エステル及びカルボキシル基を2個以上有するビニル化脂肪酸を縮合反応して得られた樹脂のカルボキシル基の一部または全部を中和したものを、水性媒体中に溶解又は分散して得られたものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記した水性塗料用樹脂組成物を含有してなる水性塗料に関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の水性塗料用樹脂組成物とは、特定のポリエステル樹脂(A)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)を含んでなるものである。
【0012】
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)とは、芳香族酸及び脂環族酸を含む多価カルボン酸と多価アルコールをエステル化反応せしめて得られる芳香族酸及び脂環族酸に由来する構成単位を有するものであり、かかるポリエステル樹脂(A)の酸価としては10〜100、好ましくは10〜50、水酸基価としては20〜200、好ましくは40〜150である。酸価が10より小さくなるとポリエステル樹脂(A)の水性化が不十分になり、水酸基価が20より小さくなると塗膜の硬化性が不十分となる。また、酸価が100より大きく、さらに水酸基価が200より大きくなると、塗膜の耐水性及び耐久性が低下する。
【0013】
また、前記したポリエステル樹脂(A)を構成する多価カルボン酸に由来する構成単位のうち、芳香族酸に由来する構成単位と脂環族酸に由来する構成単位のモル比が、20/80〜70/30であることが好ましく、20/80〜50/50であることがより好ましい。かかる範囲に調製することで、より貯蔵安定性の優れた水性塗料用樹脂組成物およびそれを用いた水性塗料を得ることができ、さらには耐チッピング性に優れた塗膜を形成しうる水性塗料用樹脂組成物及びそれを用いた水性塗料を得ることができる。
【0014】
ここで、前記したポリエステル樹脂(A)を調製する際に使用する芳香族酸としては、例えば(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−tert−ブチル安息香酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、テトラクロル(無水)フタル酸、スルホン酸ナトリウムイソフタル酸ジメチルエステル等が挙げられる。
【0015】
また、前記したポリエステル樹脂(A)を調製する際に使用する脂環族酸としては、例えば1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、メチルヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)ヘット酸、(無水)ハイミック酸[日立化成化学工業(株)の登録商標]、水添(無水)トリメリット酸、エンドメチレンテトラヒドロ(無水)フタル酸の如き、各種脂環式カルボン酸類が挙げられる。さらに、必要に応じて、4−tert−ブチルシクロヘキサンモノカルボン酸、ヘキサヒドロ安息香酸等が挙げられる。
【0016】
また、ポリエステル樹脂(A)の調製には、通常用いられるような脂肪族酸成分も、本発明の水性塗料用樹脂組成物の効果を逸脱しない範囲で使用することができ、かかる脂肪族酸としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの無水物などが挙げられる。
【0017】
また、ポリエステル樹脂(A)に用いられる多価カルボン酸には、前記した芳香族酸及び脂環族酸といった必須成分の他に、油やその油に由来する脂肪酸を併用することができ、例えば、やし油、水添やし油、米糠油、トール油、大豆油、ひまし油、脱水ひまし油等と、その脂肪酸などが挙げられ、さらに、「カージュラーE」(シェル社製の分岐状脂肪族モノカルボン酸のグリシジルエステル)、オクテン酸、イソノナン酸などが挙げられる。
【0018】
ここで、前記したポリエステル樹脂(A)を構成する各種多価カルボン酸由来の構成単位100モルのうち、芳香族酸及び脂環族酸由来の構成単位の占める割合としては、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上である。かかる範囲に調製することで、耐チッピング性および貯蔵安定性のよりすぐれた水性塗料用樹脂組成物及びそれを用いた水性塗料を得ることができる。
【0019】
次に前記したポリエステル樹脂(A)を調製する際に使用する多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0020】
以上の各種多価カルボン酸及び多価アルコールを用いて得られるポリエステル樹脂(A)の構造としては、線状構造あるいは分岐構造のどちらであってもよい。
【0021】
また、当該ポリエステル樹脂(A)を調製する方法については特に制限はないが、多価カルボン酸と多価アルコールのエステル化反応による周知の製造方法を駆使し、溶融法又は溶剤法のいずれかに従えばよい。
【0022】
前記した溶融法に関しては、例えば、原料である多価カルボン酸と多価アルコールを窒素気流中、150〜250℃で加熱し、生成する水を逐次除去しながらエステル化反応を行うことで所定の水酸基価、酸価のポリエステル樹脂(A)を得ることができる。
【0023】
また、前記した溶剤法に関しては、例えばキシレン等の溶剤中で前記した多価カルボン酸及び多価アルコールをエステル化反応し、次いで溶剤を留去することによってポリエステル樹脂(A)を得ることができる。また、溶剤として、後述する親水性の有機溶剤を使用し、かかる親水性の有機溶剤中で前記した多価カルボン酸及び多価アルコールをエステル化反応することもできる。これにより、前記したエステル化反応に引き続いて後述する塩基性化合物を添加することで、本発明に使用するポリエステル樹脂(A)の水溶液又は水分散液を得ることができる。
【0024】
また、反応成分である多価カルボン酸および多価アルコールをエステル化反応せしめる際には、これらを一度に添加しても良いし、数回に分けて添加しても良い。また、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後に、酸無水物を反応させてハーフエステル化させる方法もある。
【0025】
さらに、前記したエステル化反応の際には、反応を促進させるためにジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の公知の触媒を使用しても良い。
【0026】
かくして得られるポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量としては、1000〜20000が好ましく、1000〜10000がより好ましい。かかる範囲の重量平均分子量に調製することによって、硬化性、耐水性及び平滑性の優れた塗膜を得ることができる。
【0027】
また、前記したポリエステル樹脂(A)としては、ウレタン変性、シリコーン変性等の各種変性が施されたものであっても良く、これらは単独又は前記した変性していないポリエステル樹脂(A)との併用であっても良い。特に、ウレタン変性ポリエステル樹脂を使用することが好ましく、耐チッピング性のより優れた塗膜を形成しうる水性塗料用樹脂組成物を得ることができる。
【0028】
前記したウレタン変性ポリエステル樹脂とは、前記した芳香族酸及び脂環族酸を含む多塩基酸成分と多価アルコール成分とを反応させて得られるポリエステル樹脂に、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られるものであり、通常のウレタン化反応の反応条件が広く適用できる。
【0029】
ここで、前記したポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびトリメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類;等が挙げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることができ、好ましくは脂肪族ポリイソシアネートが用いられる。
【0030】
また、シリコーン変性ポリエステル樹脂については、前記したポリエステル樹脂を合成後に、公知慣用の合成法に従って得られたものであれば良く、かかるシリコーン変性ポリエステル樹脂としては、例えば大日本インキ化学工業(株)のベッコゾールM−9201、M−9202等が挙げられる。
【0031】
次に、本発明で使用するビニル変性エポキシエステル樹脂(B)とは、ビニル重合体構成成分を有するエポキシエステル樹脂であり、その水性化を目的として例えばエポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルに、カルボキシル基含有ビニル系単量体を含有するビニル系単量体を重合させて得られたものや、エポキシ樹脂の脂肪酸エステルとカルボキシル基を2個以上有するビニル化脂肪酸とを縮合反応させて得られたものが挙げられる。
【0032】
前記したエポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルとは、例えば、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンの反応によって得られるエポキシ樹脂と不飽和脂肪酸を含む成分を130℃〜250℃で3〜10時間程度加熱し重合反応させて得られるものである。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
前記したエポキシ樹脂としては、市販品をそのまま用いることができ、その具体例としてはエピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれもジャパンエポキシレジン社製商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂)等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記したビスフェノールA型エポキシ樹脂の中では、エピコート1001及びエピコート1004が好ましく、これを使用することで、優れた水分散性を有する水性塗料用樹脂組成物、および優れた付着性を有する塗膜を得ることができる。
【0034】
また、前記したエポキシ樹脂のエポキシ当量としては、150〜30000のものが好ましく、さらに好ましくは400〜10000である。かかる範囲のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を用いることで、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)が十分に水性化し、本発明の水性塗料の貯蔵安定性および耐チッピング性もまた増すことになる。
【0035】
次に、前記した不飽和脂肪酸としては、桐油、アマニ油、大豆油、サフラワー油、ひまし油、脱水ひまし油、トール油、米糠油、綿実油、やし油等の各種の(半)乾性油類及び不乾性油類の脂肪酸類が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0036】
当該不飽和脂肪酸の使用量としては、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の分散安定性、本願発明の水性塗料用樹脂組成物を用いて得られる水性塗料の貯蔵安定性の観点から、エポキシ樹脂と不飽和脂肪酸の総量中、10〜80重量%が好ましく、20〜60重量%であることがさらに好ましい。
【0037】
次に、前記したビニル変性エポキシエステル樹脂(B)を得る第1の方法としては、前記エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルの存在下、カルボキシル基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体を重合させる方法が挙げられる。
【0038】
かかるカルボキシル基含有ビニル系単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸、さらにマレイン酸、イタコン酸等の酸無水物、さらにこれら酸無水物のモノエステル化物を挙げることができ、これらに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーは単独で、あるいは2種以上を併せて用いることができる。
【0039】
これらのカルボキシル基含有ビニル系単量体の使用量としては、得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の酸価が30〜100を示すような量が好ましい。
【0040】
また、前記したカルボキシル基含有ビニル系単量体と併用して用いられる他のビニル系単量体としては、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の特性に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されなく、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレンおよび/またはスチレン誘導体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリルn−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類が;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸グリシジルエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシブチルアクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体類が挙げられる。
【0041】
また、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性の界面活性能を有するビニル系単量体の使用も可能である。
【0042】
前記したビニル変性エポキシエステル樹脂(B)を得る第1の方法における重合反応としては、公知慣用の方法を用いて行うことができるが、例えばメチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセロセルブ、イソプロピルセルソルブ、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の親水性溶剤の存在下、不活性ガス中70℃〜150℃の温度範囲で重合開始剤および必要に応じて連鎖移動剤を用いた重合反応が挙げられる。
【0043】
前記した重合開始剤としては、例えばtert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ化合物の使用、併用が可能である。
【0044】
また、前記した連鎖移動剤としては、例えばtert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;あるいはα−メチレンスチレンダイマー等が好適に用いられる。
【0045】
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)を得るためのエポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルと、カルボキシル基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体の重量比は10/90〜95/5の範囲であることが好ましく、かかる範囲に調製することで、水性塗料用樹脂組成物の水分散性、貯蔵安定性が優れる。
【0046】
前記した重合反応で得られたビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の重量平均分子量としては、5000〜200000が好ましく、さらに10000〜100000がより好ましい。かかる範囲に調製することで、水性塗料用樹脂組成物の貯蔵安定性をより向上せしめることができる。
【0047】
次に、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)を得る第2の方法としては、例えばエポキシ樹脂の脂肪酸エステルの有するOH基とカルボキシル基を2個以上有するビニル化脂肪酸の有するカルボキシル基とを縮合反応させる方法が挙げられる。エポキシ樹脂の脂肪酸エステルとカルボキシル基を2個以上有するビニル化脂肪酸の縮合反応、いわゆるエステル化に関しては、エポキシ樹脂の脂肪酸エステルとカルボキシル基を2個以上有するビニル化脂肪酸を混合させ、カルボキシル基を2個以上有するビニル化脂肪酸に含まれる有機溶剤を留去しながら加熱することにより行われる。
【0048】
ここで、前記したエポキシ樹脂の脂肪酸エステルとは、脂肪酸のカルボキシル基と、エポキシ樹脂との反応によって得られるものであり、かかるエポキシ樹脂としては、例えば前記と同様のものが挙げられ、かかる脂肪酸としては、例えば前記した脂肪酸および不飽和脂肪酸等と同様のものが挙げられる。
【0049】
また、前記したカルボキシル基を2個以上有するビニル化脂肪酸とは、有機溶剤の存在下、重合開始剤を用いて不飽和脂肪酸とカルボキシル基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体をラジカル重合させて得られるものであり、かかる不飽和脂肪酸及びカルボキシル基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体としては、前記したものと同様のものを用いることができるが、カルボキシル基含有ビニル系単量体としては、好ましくはメタクリル酸が用いられる。メタクリル酸を使用することで、その反応性等の物性の違いにより、ビニル化脂肪酸中に於ける不飽和脂肪酸由来のカルボキシル基と、エポキシ樹脂の脂肪酸エステル中のOHとを効率的に縮合せしめることができ、ビニル変性エポキシエステル(B)をより水性化することができる。
【0050】
前記した縮合反応の際の反応温度は、150〜200℃の範囲が適当であるが、反応速度の観点からカルボキシル基含有ビニル系単量体の種類によって任意に設定するのが望ましい。反応は、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の安定性および塗膜物性を考慮すれば、好ましくはビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の酸価が、カルボキシル基含有ビニル系単量体のカルボキシル基に由来する酸価を基準にして95〜105%に達するまで反応させるのが好ましい。
【0051】
なお、前記したエポキシ樹脂の脂肪酸エステル存在下に、必要に応じて少量の有機溶剤を添加した後、前記した不飽和脂肪酸及びカルボキシル基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体を添加・混合し、引き続いてさらに昇温、縮合を行うという1段合成法でも、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の合成は可能である。
【0052】
次に、前記したポリエステル樹脂(A)及びビニル変性エポキシエステル樹脂(B)を水性化する方法に関しては、公知慣用の方法が適用できるが、例えば転相乳化法、乳化剤を用いた乳化法、機械的乳化法などが挙げられ、好ましくは転相乳化法が挙げられる。
【0053】
ここで、前記した転相乳化法について説明する。前記したポリエステル樹脂(A)を転相乳化法で水性化する方法に関しては、前記した溶融法又は溶剤法によって得られた固体のポリエステル樹脂(A)に塩基性化合物、必要に応じて親水性有機溶剤を添加することで、前記したポリエステル樹脂(A)中の酸基の一部又は全部を中和し水に溶解又は分散する方法が挙げられる。このとき、親水性有機溶剤及び塩基性化合物を前記したポリエステル樹脂(A)に添加するタイミングに関しては、特に限定されるものではなく、親水性の有機溶剤と塩基性化合物を別々に、又はその混合物を適時添加して良いが、粘度の観点から好ましくは前記した固体のポリエステル樹脂(A)を親水性の有機溶剤に溶解し、次いで塩基性化合物を用いて水に溶解又は分散する方法が挙げられる。
【0054】
また、前記したビニル変性エポキシエステル樹脂(B)を転相乳化法で水性化する方法に関しては、例えば前記したビニル変性エポキシエステル樹脂(B)に親水性の有機溶剤及び塩基性化合物を添加しビニル変性エポキシエステル樹脂(B)中の酸基の一部又は全部を中和したものを水に溶解又は分散する方法が挙げられる。このとき、親水性有機溶剤及び塩基性化合物を前記したビニル変性エポキシエステル樹脂(B)に添加するタイミングに関しては、特に限定されるものではなく、親水性の有機溶剤及び塩基性化合物を別々に、又はその混合物を適時使用することができるが、粘度の観点から好ましくは前記したビニル変性エポキシエステル樹脂(B)を親水性の有機溶剤に溶解し、次いで塩基性化合物を用いて水に溶解又は分散する方法が挙げられる。なお、前記した縮合反応に消費されるビニル化脂肪酸(D)が有するカルボキシル基は、前記したとおり不飽和脂肪酸由来のカルボキシル基であることが好ましいことから、前記した中和に消費されるカルボキシル基としては、前記したカルボキシル基含有α、β−エチレン性不飽和単量体(A)由来のカルボキシル基であることが好ましい。
【0055】
ここで、前記した親水性の有機溶剤としては、エーテルアルコール類、例えばエチレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールとのモノエーテル化物、プロピレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールとのモノエーテル化物、ジエチレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールとのモノエーテル化物、ジプロピレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールとのモノエーテル化物、1−3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル(一般名:3−メトキシブタノール)、3−メチル−3−メトキシブタノール(一般名:ソルフィット)、さらに酢酸メチルセロソルブのような20℃で水に無限可溶するエーテルエステルなどが使用できる。前記した親水性の有機溶剤の使用量としては、水中での安定的な分散及び低VOCの観点などから任意に設定できる。
【0056】
また、前記した塩基性化合物としては、公知慣用の種々のものを使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−またはイソ−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミンなどのポリアミン;などがあげられ、前記したポリエステル樹脂(A)の水性化能を調節するために前記した塩基性化合物を適当に組み合わせて用いることができる。中和当量については、0.4〜1.2当量が好ましく、さらに0.6〜1.0当量の範囲がより好ましい。
【0057】
また、前記したポリエステル樹脂(A)、ビニル変性ポリエステル樹脂(2)及び後述する硬化剤(C)の混合物に、前記した塩基性化合物、必要に応じて親水性の有機溶剤を添加して水に溶解又は分散しても良い。
【0058】
また、前記した乳化剤を用いた乳化法において使用することのできる乳化剤としては、特に制限されるものではないが、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体などのノニオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系乳化剤、4級アンモニウム塩含有のカチオン系乳化剤などが挙げられ、また、共乳化剤として炭素数8〜13の高級アルコールを使用することもできる。
【0059】
また、前記した機械的乳化法において使用することのできる乳化機としては、例えばホモミキサー、ホモジナーザー、コロイドミル、マイクロフルイダイザー、ソノレーター、キャビトロンなどが挙げられる。このとき、前記と同様の乳化剤を添加しても良い。
【0060】
次に本発明で使用する硬化剤(C)としては、ポリエステル樹脂(A)およびビニル変性エポキシエステル樹脂(B)のOH基と架橋反応しうるものであれば特に制限されないが、例えばアミノ樹脂、ブロックイソシアネート樹脂から選ばれた1種または2種以上を使用することが好ましい。
【0061】
ここで前記したアミノ樹脂とは、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン等の1種または2種以上とホルムアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂、イミノ基含有メチロール化アミノ樹脂等であり、水性化の観点からそれらのメチロール基の全部または一部分を炭素数1〜8の1価アルコールでエーテル化したものなどが好ましく、例えば、ブトキシメチルメラミン樹脂、メトキシメチル化メラミン樹脂、メトキシ・ブトキシ混合エーテル化メチルメラミン樹脂等が挙げられる。
【0062】
また、前記したブロックイソシアネート樹脂としては、例えばキシレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネート等の各種環状ジイソシアネート類(脂環式ジイソシアネート類)、トリレンジイソシアネートもしくは4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の各種の芳香族ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類のような有機ジイソシアネート化合物、これら化合物と多価アルコール、低分子量水酸基含有ポリエステル樹脂、低分子量水酸基含有アルキド樹脂又は水等との付加物;前記した有機ジイソシアネート化合物同士の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物、ウレトジオン化合物をも含む。)を、オキシム類、フェノール類、アルコール類、ジケトン類等の公知慣用のブロック化剤でブロック化せしめて得られるブロックイソシアネート樹脂が挙げられる。前記したブロックイソシアネート樹脂の水性化の観点から、イソシアネート基の片末端を例えばポリオキシエチレングリコール等で変性し、片末端をアルコキシ基で封鎖したものや、片末端を活性水素含有基を有するポリオキシアルキレン化合物等で変性したものが好ましく挙げられる。
【0063】
前記したポリエステル樹脂(A)の水溶液又は水分散体、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の水溶液又は水分散体及び硬化剤(C)を混合することにより、本発明の水性塗料用樹脂組成物が得られる。その際、ポリエステル樹脂(A)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)の含有比率としては、固形分重量比(A+B)/(C)が、50/50〜90/10なる範囲内が好ましく、60/40〜85/15なる範囲がより好ましい。また、樹脂の重量比(A)/(B)としては、10/90〜90/10なる範囲が好ましい。かかる範囲に調製することで、本発明の水性塗料用樹脂組成物を自動車中塗り塗料として用いた場合に、付着性等、硬化性等の諸性能に優れた中塗り塗膜を得ることができる。
【0064】
次に、本発明の水性塗料用樹脂組成物の硬化を促進せしめる為には、硬化触媒を用いることができ、例えばp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、またはこれらのアミンブロック化物、テトラクロル無水フタル酸と1価アルコールとのハーフエステル化物、トリクロル酢酸の如き有機酸等の酸触媒;テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジオクテート、ナフテン酸コバルトの如き、各種の含金属化合物類;モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸、モノアルキル亜燐酸、ジアルキル燐酸の如き各種燐系酸性化合物などを使用することができる。
【0065】
当該硬化触媒の使用量としては、ポリエステル樹脂(A)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)および硬化剤(C)の合計の固形分100重量部に対して、0.1〜10重量部となる範囲内が好ましい。
【0066】
また、本発明の水性塗料用樹脂組成物は、顔料分散性もまた良好であり、公知の顔料を使用することができるが、例えばカーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物、アルミフレーク、雲母、ケイ酸塩類、クロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの無機顔料、フタロシアニンブル−、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ベンズイシダゾロン、スレン、ペリレン等の有機顔料が挙げられ、これらを単独で、あるいは任意の組み合わせで使用することができる。
【0067】
また、本発明の水性塗料用樹脂組成物には、必要に応じて他の樹脂類、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリオール/ラクトン/酸無水物から得られる低分子量2級アルコール性ヒドロキシル基含有ポリエステルポリオールなどを本発明の目的を達成する範囲内において添加することができる。また、その他にも例えば流動調製剤、色分れ防止剤、消泡剤、分散剤、表面調製剤などの各種添加剤を加えることができる。
【0068】
前記した水性塗料の製造方法としては、例えばビニル変性エポキシエステル樹脂(B)、顔料及びガラスビーズ、さらに必要に応じて前記した各種添加剤を混合し、次いでポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(C)を加え撹拌した後にガラスビーズを取り除き、粘度調整する方法が挙げられる。
【0069】
ここで前記しした水性塗料の粘度は、フォードカップNo.4を使用して測定するものであり、温度条件20℃で20〜80秒であることが好ましい。
【0070】
次に、本発明の水性塗料を用いて、目的とする実用的効果の高い塗膜を形成する方法としては、例えば、基材の表面処理を施し、又は必要に応じて電着塗膜等のプライマー層を塗設した基材表面に本発明の水性塗料を塗装し、次いで熱硬化する方法が挙げられる。
【0071】
ここで、基材表面に本発明の水性塗料を塗装する方法としては、例えばスプレー塗装、静電塗装、電着塗装等が挙げられ、乾燥硬化膜厚が10〜60umになるように、所望の条件で硬化せしめればよい。
【0072】
また、前記した熱硬化に関しては、水性塗料を塗装後、加熱することで硬化剤による架橋反応を引き起こすためのものであり、架橋反応の条件としては、110〜170℃で15〜40分間程度
が適切であり、なかでも120℃〜160℃で20〜30分間なる範囲内が好ましい。
【0073】
ここで、前記した基材としては、例えば鉄鋼板、ステンレス・スチール板、クロム・メッキ板、トタン板、ブリキ板、アルミニウム板、アルミサッシ、アルミホイル等の、鉄又は非鉄金属系の種々の金属素材類、金属製品類などをはじめ、木材、スレート板、瓦、ガラスなどが挙げられるが、好ましくは金属素材ないしは金属製品、就中、鉄製品に適用され、特に自動車の車体等に適用することができる。
【0074】
かくして、本発明の水性塗料用樹脂組成物を用いて得られる水性塗料は、貯蔵安定性に優れ、それ自体高固形分なものである。かかる水性塗料は、各種基材に対する塗料として用いることができるが、好ましくは自動車中塗り塗料として用いられるものである。さらに本発明の水性塗料を用いて得られた中塗り塗膜に引き続いて、上塗り塗膜を施した総合塗膜の外観は、仕上がり塗膜の平滑性、鮮映性及び光沢性に優れ、チッピングないしはピーリングと呼ばれる塗膜剥離の防止性能等にもまた、顕著に優れた効果を示すものである。
【0075】
【実施例】
次に、本発明を、参考例、実施例及び比較例により一層具体的に説明するが、本発明は決してこれらの例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部及び%は、特に断りのない限り、全て重量基準であるものとする。
【0076】
参考例1〜5(ポリエステル樹脂(A)の調製例)
【0077】
参考例1
撹拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、イソフタル酸123部、ヘキサヒドロ無水フタル酸455部、ネオペンチルグリコール129部、1,6−ヘキサンジオール209部、トリメチロールプロパン84部、ジブチル錫オキサイド0.3部を仕込み、撹拌下に210℃まで昇温して、ポリエステル樹脂(A)の酸価が30に達するまで脱水縮合反応を行った。ついで、160℃まで冷却した後、ジプロピレングリコールメチルエーテル100部を添加し、均一に攪拌混合した後、温度を80℃に下げ、ジメチルエタノールアミン38部を添加して1時間保持した。ついで、イオン交換水1360部を1時間かけて滴下し、不揮発分約40%、溶液酸価約12、固形分水酸基価約70、重量平均分子量約6000のポリエステル樹脂(A)の水分散体(A−1)を得た。
【0078】
参考例2
撹拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、無水フタル酸369部、テトラヒドロ無水フタル酸162部、ネオペンチルグリコール82部、1,6−ヘキサンジオール309部、トリメチロールプロパン78部、ジブチル錫オキサイド0.3部を仕込み、撹拌下に220℃まで昇温し、ポリエステル樹脂(A)の酸価が15に達するまで脱水縮合反応を行った。ついで、160℃まで冷却した後、ジプロピレングリコールメチルエーテル100部を添加し、均一に攪拌混合した後、温度を80℃に下げ、ジメチルエタノールアミン19部を添加して1時間保持した。ついで、イオン交換水1380部を1時間かけて滴下し、不揮発分約40%、溶液酸価約6、固形分水酸基価約95、重量平均分子量約4000のポリエステル樹脂(A)の水分散体(A−2)を得た。
【0079】
参考例3
撹拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、イソフタル酸103部、ヘキサヒドロ無水フタル酸383部、ネオペンチルグリコール127部、1,6−ヘキサンジオール207部、トリメチロールプロパン85部、ジブチル錫オキサイド0.3部を仕込み、撹拌下に210℃まで昇温し、ポリエステル樹脂(A)の酸価が33に達するまで脱水縮合反応を行った。ついで、80℃まで冷却した後、メチルエチルケトン200部を添加し、均一に攪拌混合した後、ジブチル錫ラウレート1部を加え、ヘキサメチレンジイソシアネート95部を1時間かけて滴下した。同温度で5時間保持した後、ジプロピレングリコールメチルエーテル100部、ジメチルエタノールアミン38部を添加して1時間保持した。ついで、イオン交換水1360部を1時間かけて滴下後、減圧下にメチルエチルケトンを留去し、不揮発分約40%、溶液酸価約12、固形分水酸基価約55、重量平均分子量約7000のポリエステル樹脂(A)の水分散体(A−3)を得た。
【0080】
参考例4
撹拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸124部、無水フタル酸387部、テトラヒドロ無水フタル酸57部、ネオペンチルグリコール50部、1,6−ヘキサンジオール282部、トリメチロールプロパン100部、ジブチル錫オキサイド0.3部を仕込み、撹拌下に220℃まで昇温し、ポリエステル樹脂(A)の酸価が30に達するまで脱水縮合反応を行った。ついで、160℃まで冷却した後、ジプロピレングリコールメチルエーテル150部を添加し、均一に攪拌混合した後、温度を80℃に下げ、ジメチルエタノールアミン38部を添加して1時間保持した。ついで、イオン交換水1310部を1時間かけて滴下し、不揮発分約40%、溶液酸価約13、固形分水酸基価約50、重量平均分子量約13000のポリエステル樹脂(A)の水分散体(A−4)を得た。
【0081】
参考例5
撹拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、イソフタル酸317部、アジピン酸280部、ネオペンチルグリコール170部、1,6−ヘキサンジオール193部、トリメチロールプロパン40部、ジブチル錫オキサイド0.3部を仕込み、撹拌下に220℃まで昇温し、ポリエステル樹脂(A)の酸価が50に達するまで脱水縮合反応を行った。ついで、160℃まで冷却した後、ジプロピレングリコールメチルエーテル50部を添加し、均一に攪拌混合した後、温度を80℃に下げ、ジメチルエタノールアミン63部を添加して1時間保持した。ついで、イオン交換水1387部を1時間かけて滴下し、不揮発分約40%、溶液酸価約22、固形分水酸基価約35、重量平均分子量約5000のポリエステル樹脂(A)の水分散体(A−5)を得た。
【0082】
参考例6〜7(ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の調製例)
参考例6
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノール型エポキシ樹脂403部(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート1001)、大豆油脂肪酸269部を仕込み、220℃で撹拌下に固形分酸価が1以下になるまで反応を進め、冷却後、イソプロピルセルソルブ242部を加えて、エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルを得た。125℃でスチレン10.8部、メタクリル酸n−ブチル10.8部、アクリル酸27.4部、イソプロピルセルソルブ41部及びtert−ブチルパーオキシペンゾエート6.4部の混合液を2時間かけて滴下し、さらに125℃で10時間保温した。ついで80℃に冷却した後、トリエチルアミン23.5部を添加して1時間保持した。ついで、イオン交換水987部を1時間かけて滴下し、不揮発分約36%、溶液酸価約8、重量平均分子量約10000のビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の水分散体(B−1)を得た。
【0083】
参考例7
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノール型エポキシ樹脂600部(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート1001)、大豆油脂肪酸400部を仕込み、220℃で撹拌下に固形分酸価が1以下になるまで反応を進め、エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステルを得た。これとは別の撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、キシレン650部、脱水ヒマシ油脂肪酸410部を仕込み、撹拌下に130℃まで昇温した。これにスチレン190部、メタクリル酸n−ブチル190部、メタクリル酸210部及びtert−ブチルパーオキシペンゾエート35部の混合液を3時間かけて滴下し、さらに130℃で5時間保温した。ついで80℃に冷却した後、メチルエチルケトン350部を添加して不揮発分約50%のビニル化脂肪酸を得た。撹拌機、温度計、脱水トラップ付き還流冷却器および窒素導入管を備えた反応容器に、前記で得られたエポキシ樹脂の脂肪酸エステル508部、ビニル化脂肪酸584部を仕込み、メチルエチルケトン、キシレンを留去しながら180℃まで昇温した。さらに、同温度で固形分酸価約50に達するまで脱水縮合反応を行った。反応終了後、160℃に冷却し、ジプロピレングリコールメチルエーテル80部を添加し、均一に攪拌混合した後、温度を80℃に下げ、ジメチルエタノールアミン51部を添加して1時間保持した。ついで、イオン交換水1175部を1時間かけて滴下し、不揮発分約38%、溶液酸価約20、重量平均分子量約40000のビニル変性エポキシエステル樹脂(B)の水分散体(B−2)を得た。
【0084】
実施例1〜3、比較例1〜3
ステンレス容器に第1表に示す所定量のビニル変性エポキシエステル樹脂(B)と、所定量の顔料(タイペークCR−97:石原産業(株)製の酸化チタン)及びそれらと同量のガラスビーズを仕込み、さらに消泡剤(BYK−080:ビックケミー・ジャパン(株)製のシリコン系消泡剤をビニル変性エポキシエステル樹脂(B)と顔料の合計量に対して0.5%添加し、ペイントシェーカーにて2時間分散し、ついで、第1表に示す所定量のポリエステル樹脂(A)と硬化剤(C)を仕込んで5分間撹拌した後、ガラスビーズを除去し、さらに、イオン交換水を用いてフォードカップNo.4で50秒(20℃)となるように粘度を調整して、水性塗料用樹脂組成物をそれぞれ得た。
【0085】
得られた水性塗料用樹脂組成物を40℃で10日保存し、保存後の塗料粘度をフォードカップNo.4で測定した。保存前の粘度に対する保存後の粘度変化を第1表に示した。
【0086】
中塗り塗板の作成
実施例1〜3、比較例1、2で得られた水性塗料用樹脂組成物を、それぞれ、日本ルートサービス社製の電着版上に、乾燥膜厚が約35umとなるように塗装し、10分間の間、室温に放置した後、60℃で10分間乾燥後、140℃で30分間焼き付けを行って塗板を得た。これを中塗り塗板としてベースコート、クリヤーコートを2コート1ベーク塗装で塗装し、得られた上塗り塗板の塗膜性能試験を行った。
【0087】
ベースコート塗料の調製
下記の組成で配合せしめた配合物を、トルエン/酢酸エチル=9/1の重量比で混合してなる希釈剤を用いてフォードカップNo.4での粘度が12〜13秒となるように調整して目的とするベースコート塗料を得た。
【0088】
アクリディックA−332(大日本インキ化学工業(株)製のアクリル樹脂);160部
スーパーベッカミンL−117−60(大日本インキ化学工業(株)製のメラミン樹脂);33部
アルペースト1860YL(東洋アルミニウム工業(株)製のアルミニウムペースト);23部
ファーストゲンブルーNK(大日本インキ化学工業(株)製のシアニンブルー);2部
【0089】
クリヤーコート塗料の調製
下記の組成で配合せしめた配合物を、キシレン/1−ブタノール=8/2の重量比で混合してなる希釈剤を用いてフォードカップNo.4での粘度が22〜24秒となるように調整して目的とするクリヤーコート塗料を得た。
【0090】
アクリディックA−345(大日本インキ化学工業(株)製のアクリル樹脂);127部
スーパーベッカミンL−117−60(大日本インキ化学工業(株)製のメラミン樹脂);50部
チヌビン900(チバガイギー社製の紫外線吸収剤);3部
チヌビン765(チバガイギー社製のラジカル補足剤);1部
KP−321(信越化学社製のレベリング剤);0.05部
【0091】
前記で得られた中塗り塗板上に前記ベースコート塗料を乾燥膜厚が約15umとなるように塗装し、3分間の間、室温に放置した後、前記クリヤーコート塗料を乾燥膜厚が約35umとなるように塗装した。しかるのち、室温に10分間放置し、140℃で30分間焼き付けを行い、上塗り塗板を得た。
【0092】
かくして形成された上塗り塗板の塗膜性能試験(外観、硬度、キレンラビング、付着性、耐水性、耐チッピング性)を行い、結果を表2に記した。
【0093】
【表1】
第1表
【0094】
【表2】
第2表
【0095】
C−370:サイメルC−370(三井サイテック社製メラミン樹脂、不揮発分88%)
CR−97:タイペークCR−97(石原産業(株)製の酸化チタン)
【0096】
塗膜諸物性評価判定の要領
【0097】
外観:上塗り塗膜の表面を目視で観察した
○:良好
△:やや良好
×:劣る
【0098】
キシレンラビング性:キシレンをネル布に浸し、ラビングテスターにて50往復後の塗面状態を目視で観察した。
:膨潤、傷なし
:微傷、薄傷が認められる
×:著しい膨潤、傷が認められる
【0099】
光沢:スガ試験機(株)製ハンディ光沢計で60°光沢(60度鏡面反射率:%)を測定した。
【0100】
付着性:カッターナイフで2mm×2mmの碁盤目を100個作り、その塗面にセロハンテープを貼り、テープを急激に剥離した後の残存碁盤目塗膜数を判定した。
:100/100
:99〜90/100
×:90以下
【0101】
耐水性:上塗り塗版を40℃の温水に10日間浸漬した後の塗面を目視で観察し、ブリスターの有無を観察した。
:ほとんどなし
:わずかに発生
×:かなり発生
【0102】
耐チッピング性:スガ試験機(株)製の「グラベロメータ」でもって、−20℃の雰囲気中で50gの7号砕石を0.4MPaで送出し、上塗り塗板表面に衝突させた際の塗膜剥離の程度を目視により判定した。
:良好(はがれが全くない、僅かにはがれが見られる)
△:普通(はがれが散見される)
×:劣る(はがれが目立つ)
【0103】
第1表および第2表の結果から明らかなように、実施例1〜3は、本発明の水性塗料用樹脂組成物から得られたものであり、塗料の貯蔵安定性に優れ、耐チッピング性に優れた塗膜が得られた。一方、比較例1〜3では、実施例1〜3の塗料と比較して、貯蔵安定性に劣り、得られた塗膜も耐チッピング性に劣っていた。
【0104】
【発明の効果】
本発明は、特定のポリエステル樹脂(A)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)を含有してなる本発明の水性塗料用樹脂組成物及びそれを用いて得られる水性塗料に関するものであり、常温から40℃までの範囲で貯蔵安定性に優れ、特に、自動車中塗り用塗料として用いた場合には、耐チッピング性のより優れた塗膜を提供することができることから、極めて実用性の高いものである。
Claims (4)
- 芳香族酸及び脂環族酸に由来する構成単位を有し、酸価が10〜100且つ水酸基価が20〜200であるポリエステル樹脂(A)、ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)及び硬化剤(C)を含んでなる水性塗料用樹脂組成物であって、
前記ビニル変性エポキシエステル樹脂(B)が、
エポキシ樹脂の不飽和脂肪酸エステル及びカルボキシル基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体を重合して得られた樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部を中和したものを、水性媒体中に溶解又は分散せしめて得られたもの
或いは
エポキシ樹脂の脂肪酸エステル及びカルボキシル基を2個以上有するビニル変性脂肪酸を縮合せしめて得られた樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部を中和したものを、水性媒体中に溶解又は分散せしめて得られたもの
であることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物。 - 前記ポリエステル樹脂(A)に於ける芳香族酸に由来する構成単位と脂環族酸に由来する構成単位のモル比が、20/80〜70/30である請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
- 前記ポリエステル樹脂(A)における芳香族酸に由来する構成単位と脂環族酸に由来する構成単位のモル比が、20/80〜50/50である請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
- 請求項1、2または3記載の水性塗料用樹脂組成物を含有してなる水性塗料。
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