JP2004352086A - 機械式ブレーキ付車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両停車時にエンジンを自動停止・始動するように構成された車両において、電動タイプの機械式ブレーキを用いてエンジン自動始動時の飛び出し感を抑制する。
【解決手段】電動モータによりケーブルを介して駆動されるパーキングブレーキを備えたアイドルストップ車両において、パーキングブレーキと電動モータとの間にクラッチを備え、コントロールユニットは、所定のエンジン停止条件が成立したときに、電磁クラッチを締結状態にさせると共に、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させ、その後、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、電磁クラッチを、解放状態を含む所定のスリップ状態に制御する。
【選択図】 図11
【解決手段】電動モータによりケーブルを介して駆動されるパーキングブレーキを備えたアイドルストップ車両において、パーキングブレーキと電動モータとの間にクラッチを備え、コントロールユニットは、所定のエンジン停止条件が成立したときに、電磁クラッチを締結状態にさせると共に、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させ、その後、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、電磁クラッチを、解放状態を含む所定のスリップ状態に制御する。
【選択図】 図11
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両停車時に所定のエンジン停止条件が成立したときはエンジンを自動的に停止させ、その後、所定のエンジン始動条件が検出されたときはエンジンを自動的に始動させるエンジン自動停止・始動手段と、電気駆動式の機械式ブレーキを有する車両の制御装置に関し、自動始動時における機械式ブレーキの制御の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、燃費の向上や、二酸化炭素等の環境汚染物質の排出低減、及び騒音の抑制等を図るため、車両の停車時に、所定のエンジン停止条件(例えばブレーキペダルが踏み込まれていることや、アクセルペダルが踏み込まれていないことが検出されていること等)が成立したときは、エンジンを自動的に停止させ、その後、所定のエンジン始動条件(例えばブレーキペダルの踏み込みが解除されたことが検出されたこと)が成立したときには、エンジンを自動的に始動させる、いわゆるアイドルストップ車両が知られている。
【0003】
ところで、このアイドルストップ中においては、運転者が意識的に変速段の切り換え操作を行わない場合、変速段はDレンジ等の走行モードに保持されることとなるが、その場合、上記例示したような始動条件(ブレーキペダルの踏込解除)でエンジンを自動始動させると、該始動時には既にブレーキ油圧及び制動力が低下しているから、急に発生したクリープ力(エンジン完爆時のエンジン回転の吹き上げ及びその後のアイドル回転に起因する)によって車両にショックが発生し、乗員に飛び出し感等の違和感を与えることがある。
【0004】
そこで、ブレーキペダルの踏み込みが解除されても、上記クリープ力を抑制可能な制動力がエンジンの始動完了まで残るように、ブレーキ液配管等にオリフィスを設けてブレーキ圧の減少を緩やかにさせることが考えられる。しかし、この場合、エンジンの自動停止・始動機能を有する車両と、有しない車両とで、ブレーキ液配管を共通化できなくなり、この結果、量産の支障となるだけでなく、コストアップの要因ともなる。
【0005】
一方、特許文献1には、電動モータにより駆動される機械式パーキングブレーキを備えた車両において、該機械式パーキングブレーキを上記アイドルストップ時に作動させるものが開示されている。すなわち、機械式ブレーキ(ドラムブレーキ)に連結部材を介して接続されたケーブルを電動モータにより回転されるプーリに巻き取りあるいは解放することにより、ケーブルを引張または弛緩するように構成し、かつ、エンジンの自動停止時に、電動モータによりプーリを所定方向に回転させてケーブルを巻き取ることにより機械式ブレーキを作動させ、エンジンの自動始動時には、電動モータによりプーリを自動停止時とは逆方向に回転させてケーブルを弛緩することにより機械式ブレーキの作動を解除させるものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−163198号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1には、エンジン自動始動時における機械式ブレーキの解除速度を如何に制御するかについては言及がなく、前述した飛び出し感等の問題を解決することができない。
【0008】
そこで、本発明は、車両停車時にエンジンを自動停止・始動するように構成された車両において、電動タイプの機械式ブレーキを用いてエンジン自動始動時の飛び出し感を抑制することができる機械式ブレーキ付車両の制御装置を提供することを主たる課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車両停車時に所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させ、その後、油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときにエンジンを自動的に始動させるエンジン自動停止・始動手段と、電動アクチュエータによりケーブルを介して駆動される機械式ブレーキと、上記電動アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、かつ自動変速機が備えられた機械式ブレーキ付車両の制御装置であって、制御手段は、上記所定のエンジン停止条件が成立したときに、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させると共に、その後、エンジン停止状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減するように、上記電動アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減されるように、電動アクチュエータが制御されるから、エンジンの自動始動によってクリープ力が急に発生したときにおいても、機械式ブレーキによる制動力が残留し、この結果、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0012】
また、油圧式ブレーキのブレーキ液配管等の設計変更等を行う必要がなく、エンジン自動停止・始動機能が備えられた車両と、備えられていない車両とでブレーキ液配管等を共通化でき、生産性の向上や、コストの削減等を実現することができる。
【0013】
ここで、機械式ブレーキは、周知のように、主構成部材として、固定部材(例えばドラム)と、ケーブルがリンク機構等を介して接続される可動部材(例えばブレーキシュー)と、固定部材と可動部材とを離反させるためのリターンスプリングとを備え、操作レバーでブレーキ作動操作が行われたときに、ケーブルが引かれることにより固定部材と可動部材とがリターンスプリングに抗して当接して制動力を生じ、レバーでブレーキ解除操作が行われたときに、ケーブルを引き戻しつつリターンスプリングが収縮することにより固定部材と可動部材とが離反して制動力が消失する。一方、電動タイプの機械式ブレーキは、前述したように、ケーブルを電動アクチュエータ(電動モータ)でプーリ等に巻き取りあるいは緩めることにより作動あるいは解除されるように構成したものであり、その場合、その解除時には、電動アクチュエータが作動してプーリが巻き取り時とは逆方向に回転し、これに併せてケーブルが上記リターンスプリングの収縮により引き戻されることとなるが、その場合、ケーブルの引き戻し速度、すなわち機械式ブレーキの解除速度は、電動モータの回転速度に拘束されることになる。そして、この結果、例えば平坦路等でできるだけ機械式ブレーキを早く解除して車両を発進させたいような場合に応答性が損なわれ、運転者にひきずり感等の違和感を与えることが考えられる。
【0014】
そこで、本願の請求項2に記載の発明は、車両停車時に所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させ、その後、油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときにエンジンを自動的に始動させるエンジン自動停止・始動手段と、電動アクチュエータによりケーブルを介して駆動される機械式ブレーキと、上記電動アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられた機械式ブレーキ付車両の制御装置であって、上記機械式ブレーキと電動アクチュエータとの間にクラッチが備えられており、制御手段は、上記所定のエンジン停止条件が成立したときは、クラッチを締結状態にさせると共に、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させ、その後、エンジン停止状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、クラッチを、解放状態を含む所定のスリップ状態に制御することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、機械式ブレーキの制動力の変更をクラッチのスリップ状態を制御するだけで達成することができるようになり、電動アクチュエータでケーブルを介して変更する場合よりも制御応答性が向上し、ひいては発進応答性が向上することとなる。
【0016】
また、この発明によっても、請求項1に記載の発明同様、エンジンが自動停止された状態においてブレーキペダルの解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減するように、クラッチを所定のスリップ状態に制御することが可能であり、エンジンの自動始動によってクリープ力が急に発生しても、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0017】
また、油圧式ブレーキのブレーキ液配管等の設計変更等を行う必要がなくなり、エンジン自動停止・始動機能が備えられた車両と、備えられていない車両とでブレーキ液配管等を共通化でき、生産性の向上や、コストの削減等を実現することができる。
【0018】
そして、本願の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、自動変速機が備えられており、かつ、制御手段は、エンジンの自動停止時、クラッチを締結状態にさせると共に、機械式ブレーキの制動力がクリープ力とほぼ対等となるように、電動アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、エンジン自動始動時にクリープ力が急に生じても、該クリープ力が、該力とほぼ対等の制動力によって相殺され、該クリープ力によるショックの発生が一層抑制されて、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが確実に軽減される。
【0020】
加えて、機械式ブレーキの制動力がクリープ力とほぼ対等の値から漸減されることとなるから、引きずり感等を生じさせることなく、車両が滑らかにかつ応答性よく発進することとなる。
【0021】
しかも、機械式ブレーキによるクリープ力とほぼ対等の制動力により、上り勾配路において車両が過度に後退するのが防止される。
【0022】
そして、本願の請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の発明において、制御手段は、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたとき、その解放速度が大きいほど、機械式ブレーキの制動力の低下を緩やかにすることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、油圧式ブレーキのペダル解放速度が大きいときは機械式ブレーキの制動力の低下が緩やかになり、油圧式ブレーキのペダル解放速度が小さいときは機械式ブレーキの制動力の低下が急になる。すなわち、油圧氏ブレーキと機械式ブレーキとを合せたブレーキ全体としての制動力の低下速度が、速くなりすぎたり遅くなりすぎたりすることが防がれると共に、該速度をほぼ一定の速度とすることができ、この結果、過度の制動力の発生や、発進応答性の低下の防止、及び制動力の低下が遅くなりすぎることによるひきずり感の発生の防止を実現することができる。
【0024】
次いで、本願の請求項5に記載の発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明において、機械式ブレーキは手動操作が可能とされていると共に、エンジン自動停止・始動手段は、手動操作により機械式ブレーキが作動された場合は、エンジンを自動停止した状態でブレーキペダルの解放動作が検出されたときのエンジン自動始動を禁止すると共に、手動操作により機械式ブレーキが解除されたときにエンジンを自動始動するように構成されており、所定のエンジン停止条件が成立してエンジンが自動停止された状態で機械式ブレーキが手動で解除される場合の機械式ブレーキの制動力の低下速度は、所定のエンジン停止条件が成立せずエンジンが運転している状態で当該機械式ブレーキが手動で解除される場合の低下速度よりも、小さくされていることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、所定のエンジン停止条件が成立してエンジンが自動停止された状態で機械式ブレーキが手動で操作された場合は、エンジンの自動始動を、ブレーキペダルの解放動作が検出されたときではなくブレーキペダルが手動解除されたときに行うものにおいて、所定のエンジン停止条件が成立してエンジンが自動停止された状態で機械式ブレーキが手動で解除される場合の機械式ブレーキの制動力の低下速度は、所定のエンジン停止条件が成立せずエンジンが運転している状態で当該機械式ブレーキが手動で解除される場合の低下速度よりも緩やかになる。すなわち、エンジンが運転している状態で手動で当該機械式ブレーキが解除される場合、ドライバの要求に即して、応答性よく機械式ブレーキが解除されることとなる。一方、エンジンが自動停止した状態で手動で機械式ブレーキが解除される場合、エンジンが運転している状態で解除されるときよりもゆっくりと解除が完了することとなり、この結果、エンジンの始動完了前に機械式ブレーキが解除されるのが抑制され、上り坂でのエンジン自動始動時に、車両が過度に後退するのが防止される。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両1は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両であって、車体前部のエンジンルーム内に、エンジン10が横置きに配置され、該エンジン10にトルクコンバータ20を介して変速機30が接続されている。そして、該変速機30の出力が差動装置40を経由して左右の前輪61,62に伝達される。この車両1は、燃費の向上や、二酸化炭素等の環境汚染物質の排出低減、及び騒音の抑制等を図る、いわゆるアイドルストップ車両であって、エンジン10の始動用のスタータモータ50を備える。
【0027】
この車両1は、運転者のブレーキペダル71の操作に応じて作動する油圧式ブレーキシステム70と、運転者のレバー81の操作等により作動する機械式ブレーキシステム80とを有し、本実施形態においては、油圧式ブレーキシステム70として周知のディスク式ブレーキを採用している。すなわち、運転者のブレーキペダル71の踏力が、エンジン10の吸気管内の負圧(吸引負圧)を利用したブレーキブースタ(倍力装置)72で助勢されて、マスタシリンダ73に伝達され、上記踏力に応じたブレーキ液圧が発生する。ブレーキ液圧は、ブレーキ液圧通路74,75を通って、各車輪61〜64のキャリパ76〜76に内蔵されたホイルシリンダに伝達され、各車輪61〜64と一体回転するディスク77〜77をパッドが挟み込んで制動力が発生する。
【0028】
また、機械式ブレーキシステム80(以下、「パーキングブレーキ80」という)として、各車輪と一体回転するドラムの内面にシューが押し付けられたときに制動力が発生する周知のドラム式ブレーキを採用し、該ドラム式ブレーキを電動で作動させるように構成している。すなわち、運転者がパーキングブレーキ操作用レバー81を操作した場合、その操作量等に応じて、電動モータ82が作動すると共に、後述するギヤ類を介してプーリ83が回転し、該プーリ83に共通ケーブル84が巻き取られる。そのとき、イコライザ85を介して、各駆動輪用ケーブル86,86が引かれて、ドラム87の内面に図示しないブレーキシューが押付けられて制動力が発生する。一方、運転者がレバー81を解除操作した場合、モータ82によってプーリ82が逆回転されると共に、ドラム87の内部に備えられたリターンスプリングによりケーブル84,86,86が、ドラム87側に引き戻されると共に、ブレーキシューがドラムから離れ、制動力が消失する。
【0029】
図2に示すように、上記電動モータ82は、車体構成部材に取り付けられた支持部材90に固定されていると共に、該モータ82の駆動軸の先端にはウォームギヤ91が設けられている。該ウォームギヤ91に噛合するウォームホイール92が軸部材93に固着され、該軸部材93が上記支持部材90に回動自在に支持されている。上記軸部材93上に、ウォームホイール92に固設された電磁クラッチ94が設けられている。
【0030】
該電磁クラッチ94は、上記ウォームホイール92に固設された固定部95と、上記軸部材93上にベアリング等を介して回動可能に支持された可動部96とを有する。該可動部96の外周部には上記プーリ83が一体形成されている。固定部95の内部には、電磁コイルが設けられている。固定部95における可動部96に対向する面には、図示しない摩擦部材が設けられていると共に、可動部96における固定部95に対向する面には、図示しないアーマチュアが軸方向に移動可能に設けられており、上記電磁コイルが通電されたときに、可動部のアーマチュアが固定部95側に吸引されて、固定部95の摩擦部材に吸着される。また、軸部材93及び固定部95が回転しているときに、電磁コイルに通電すれば、可動部96が固定部95に吸着されて、軸部材93及び固定部95と一体回転することとなる。また、電磁コイルへの通電電流を制御すれば、アーマチュアの固定部95側への吸引力も制御され、摩擦部材とアーマチュアとの間の摩擦抵抗が制御され、スリップ状態を制御することができるようになる。
【0031】
図3に示すように、この車両1には、エンジン10の燃料噴射弁11…11、点火栓12…12、スタータモータ50、パーキングブレーキ80用の電動モータ82、及び電磁クラッチ94を制御するアイドルストップ用のコントロールユニット100が搭載されている。アイドルストップコントロールユニット(ISECU)100は、ブレーキペダル71が踏み込まれ始めたときにオンとなるブレーキスイッチ110の信号、アクセルペダルが踏込まれたときにオンとなるアクセルスイッチ120の信号、車速を検出する車速センサ130の信号、エンジン10の回転数を検出するエンジン回転センサ140の信号、ブレーキペダル71とマスタシリンダ73との間に介設された上記ブレーキブースタ72に導入されるブレーキブースタ負圧を検出するブースタ負圧センサ150の信号、ブレーキ液圧通路74,75のブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ160の信号、ブレーキペダル71の踏込み量を検出するブレーキストロークセンサ170の信号、パーキングブレーキ用操作レバー81の手動操作量(引き代)及び操作状態か否かを検出するレバー操作量センサ180の信号、路面勾配を検出する勾配センサ190の信号、エアコン等の補機の作動状態(補機の使用電流)を検出する補機作動状態センサ200の信号、及び、エンジン運転中に充電され、上記スタータモータ50、及び電動モータ82等の電気負荷への電力供給用バッテリの残量を検出するバッテリ残量センサ210の信号等を入力する。
【0032】
次に、本アイドルストップコントロールユニット100が行う制御について、図4〜図8のフローチャートを用いて詳細に説明する。まず、図4のフローチャートにより、エンジン10の自動停止制御について説明する。すなわち、ステップS1では、アイドルストップ許可フラグF1が1か否か、すなわちアイドルストップを実行するための基礎条件が成立しているか否かを判定する。ここで、このフラグF1が1であることは、上記アイドルストップ実行の基礎条件が成立していることを意味する。このフラグF1は、以下の3つの条件が成立したときに1となる。つまり、1つ目の条件は、バッテリ残量センサ210で検出されたバッテリ残量が所定量以上あること、2つ目の条件は、補機作動状態検出センサ200で検出された補機類の消費電力が所定量以下であること、3つ目の条件は、ブースタ負圧センサ150で検出されたブースタ負圧が所定圧以下であることである。なお、これらの条件のいずれか1つでも成立しないときはフラグF1は0となる。
【0033】
そして、上記ステップS1の判定がNOのとき、すなわちアイドルストップ許可フラグF1が0のときは、アイドルストップ実行不可状態にあることを乗員に知らせるために、ステップS2で、アイドルストップ報知装置220を作動させて報知ランプを点灯する。
【0034】
一方、ステップS1の判定がYESのとき、すなわちアイドルストップ許可フラグF1が1のときは、ステップS3で、車速センサ130で検出された車速が0か否か、及び、ブレーキスイッチ110がONか否かを検出し、車速が0でかつブレーキスイッチ110がONのとき、すなわち、ブレーキペダル71の踏込みにより車両が停止している状態が停止確定と認識できる所定時間(例えば3秒)継続したときは、ステップS4で、燃料噴射弁11による燃料噴射を停止すると共に点火栓12による点火を停止して、エンジン10を停止させる。一方、ステップS3の判定がNOのとき、すなわち、車速が0でかつブレーキスイッチ110がONのとき以外のときは、ステップS1に戻る。
【0035】
一方、上記ステップS4の実行後は、ステップS5で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されたか否かを、レバー操作量センサ180からの信号に基づいて判定し、NOのとき、すなわち操作レバー81が手動でON操作されていないときは、ステップS6で、勾配センサ190で検出された道路勾配(傾斜角)が、所定勾配αより大きいか否かを判定する。ここで、この勾配センサ190で検出される値は、上り勾配が大きくなるほど大きな値となる。
【0036】
そして、このステップS6の判定がYESのとき、すなわち、検出された道路勾配が所定勾配αより大きいときは、ステップS7で、パーキングブレーキ80の目標制動力を、検出された道路勾配に基づいて設定し、次いで、ステップS8で、上記目標制動力となるように、電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82の発生トルクを調節し、目標制動力になったら、電動モータ82の作動を停止して、ステップS1に戻る。この場合、電動モータ82の作動を停止しても、ウォームギヤ91とウォームホイール92の噛み合いにより、電動モータ82の作動停止時の状態が維持され、パーキングブレーキ80の制動力が上記目標制動力に保持される。
【0037】
一方、ステップS6の判定がNOのとき、すなわち、検出された道路勾配が所定値α以下のときは、ステップS9で、パーキングブレーキ80の目標制動力を、エンジン10の始動時に発生するクリープ力と等しい値に設定し、次いで、ステップS10で、上記ステップS8同様の処理を行って、ステップS1に戻る。
【0038】
ここで、上記ステップS7及びS9で設定される目標制動力の特性は、図9に示す通りである。すなわち、検出された道路勾配が上記所定値αより大きいときは、設定される目標制動力Faは、道路勾配が大きいほど大きくされる。これは、道路勾配が大きいほど、車両の自重により後退しやすくなるため、後退を防止することを目的とする。一方、検出された道路勾配が上記所定値α以下のときは、設定される目標制動力は、前述のように、エンジン10の自動始動時に発生するクリープ力に等しい値Fbに設定される。これによれば、エンジン10の自動始動時に車両を前進させようとするクリープ力が発生しても、パーキングブレーキ80の制動力によって、車両が不測に前進し始めるのが抑制されることとなる。この場合において、道路勾配が0から所定値αの間にあるときは、同時に車両の後退も防止されることとなる。
【0039】
一方、上記ステップS5の判定がYESのとき、すなわち操作レバー81が手動でON操作されたときは、ステップS11で、レバー操作量センサ180で検出されたドライバのレバー操作量に応じた制動力が得られるように、電動モータ82のモータトルク(電流)を制御する。
【0040】
次に、図4のフローチャートに記載の制御によってエンジン10が自動停止した後の制御、すなわち、アイドルストップ状態におけるエンジン10の自動始動制御について図5〜図8のフローチャートを用いて説明する。ここで、この制御の概要について簡単に説明しておくと、前述した勾配センサ190、レバー操作量センサ180、ブレーキスイッチ110等の各種センサ類で検出された信号に基づいて現在の車両の運転状態を分類した後、該分類結果に基づいてパーキングブレーキ80の制動力の低減率を設定し、該低減率となるように上記分類結果に応じて電動モータ82または電磁クラッチ94を制御するものである。
【0041】
すなわち、ステップS21では、現在、アイドルストップ中か否かを判定し、YESのとき、すなわちアイドルストップ中のときは、ステップS22で、エンジン10の自動停止時に検出された道路勾配が、所定勾配αより大きいか否かを判定する。そして、ステップS22の判定がYESのとき、すなわち、検出された道路勾配が所定勾配αより大きいときは、ステップS23で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されたか否かを、レバー操作量センサ180からの信号に基づいて判定する。
【0042】
そして、その判定がYESのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されたときは、ステップS24で、アイドルストップ許可フラグF1が0か否かを判定する。すなわち、本判定時にはエンジン10は必ずアイドルストップ中であるが、そのアイドルストップを解除する条件、すなわち前述したアイドルストップ許可条件が非成立になったか否かを判定するのである。そして、その判定がYESのとき、すなわち、アイドルストップ許可フラグF1が0のときは、ステップS25で、アイドルストップ報知装置220を作動させてエンジン自動始動ALMを発すると共に、ステップS26で、燃料噴射弁11による燃料噴射の実行及び点火栓12による点火の実行を行ってエンジン10を自動始動させる。
【0043】
一方、ステップS24の判定がNOのとき、すなわち、アイドルストップ許可フラグF1が0でなく1のときは、ステップS27で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動で解除(OFF)操作されたか否かを判定し、NOのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が手動で解除(OFF)操作されていないときは、エンジン10のアイドルストップを維持したまま、ステップS21に戻る。
【0044】
一方、ステップS27の判定がYESのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動で解除(OFF)操作されたときは、ステップS28で、アイドルストップ報知装置220を作動させてエンジン自動始動ALMを発すると共に、ステップS29で、燃料噴射弁11による燃料噴射の実行及び点火栓12による点火の実行を行ってエンジン10を自動始動させる。次いで、ステップS30で、パーキングブレーキ80の制動力の低減率を、所定値Aに設定すると共に、ステップS31で、該低減率Aに基づいて電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82の発生トルクを低減し、パーキングブレーキ80を解放する。
【0045】
一方、ステップS23の判定がNOのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されていないときは、ステップS32で、ブレーキ液圧センサ160の検出値に基づいてブレーキペダル71がOFF操作されているか否かを判定する(例えば、ブレーキ液圧変化量が所定量以上のときに、ブレーキペダル71がOFF操作されていると判定する)。そして、その判定がNOのとき、すなわちブレーキペダル71がOFF操作されていないときは、さらに、ステップS33で、アイドルストップ許可フラグF1が0か否かを判定する。そして、その判定がNOのとき、すなわち、アイドルストップ許可フラグF1が1のときは、エンジン10のアイドルストップを維持したまま、ステップS21に戻る。一方、その判定がYESのとき、すなわち、アイドルストップ許可フラグF1が0のときは、前述のステップS28〜S31を実行する。
【0046】
一方、ステップS32の判定がYESのとき、すなわち、ブレーキスイッチ110がOFFのときは、ステップS34で、アイドルストップ報知装置220を作動させてエンジン自動始動ALMを発すると共に、ステップS35で、燃料噴射弁11による燃料噴射及び点火栓12による点火を実行してエンジン10を自動始動させる。
【0047】
次いで、ステップS36で、アクセルペダルが踏込まれているか否かを、アクセルスイッチ120からの信号に基づいて判定し、NOのとき、すなわちアクセルペダルが踏込まれていないときは、YESと判定されるまで、本判定を繰り返す。そして、その判定がYESのとき、すなわちアクセルペダル71が踏込まれたときは、ステップS37で、ブレーキ液圧センサ160の信号に基づいて、ブレーキペダル71の解放速度(ブレーキ液圧の低下速度)を検出(算出)し、該解放速度に基づいて制動力の低減率(パーキングブレーキ80の解除速度)をBに設定する。ここで、その低減率Bは、ブレーキペダル71の解放速度が大きいほど、小さくなるような特性とされている(図10参照)。また、前述した所定値Aよりも大きな値とされている。
【0048】
そして、ステップS38では、ステップS37で設定された低減率に基づいて電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82の発生トルクを低減し、パーキングブレーキ80を解放する。
【0049】
一方、ステップS22の判定が、NOのとき、すなわち、検出された道路勾配が所定勾配α以下のときは、図6に示すように、ステップS39で、前述のステップS23同様の判定を行い、その判定がYESのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されたときは、ステップS40〜S47で、前述のステップS24〜S31と同様の処理を行う。
【0050】
一方、ステップS39の判定がNOのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されていないときは、ステップS48で、前述したステップS32同様の判定を行い、その判定がNOのときは、ステップS49及びステップS44〜S47で、前述のステップS33及びステップS28〜S31と同様の処理を行う。
【0051】
一方、ステップS48の判定がYESのときは、ステップS50で、アイドルストップ報知装置220を作動させてエンジン自動始動ALMを発すると共に、ステップS51で、燃料噴射弁11による燃料噴射及び点火栓12による点火を実行してエンジン10を自動始動させ、ステップS52(図7参照)で、アクセルペダルが踏込まれているか否かを、アクセルスイッチ120からの信号に基づいて判定する。
【0052】
そして、ステップS52の判定がYESのとき、すなわちアクセルペダル71が踏込まれているときは、ステップS53で、ブレーキ液圧センサ160の信号に基づいて、ブレーキペダル71の解放速度を検出(算出)し、該解放速度に基づいて制動力の低減率をCに設定する。ここで、その低減率Cは、ブレーキペダル71の解放速度が大きいほど、小さくなるような特性とされている(図10参照)。また、前述した所定値Bよりも大きな値とされている。これは、アクセルペダルが踏込まれているのは、運転者が早急に発進したい意思の現れであるから、発進性を向上させることを目的とする。
【0053】
そして、ステップS54では、ステップS53で設定された低減率に基づいて電磁クラッチ94に供給する電流を制御して、電磁クラッチ94のスリップ率を所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、パーキングブレーキ80を解放する。
【0054】
一方、ステップS52の判定がNOのとき、すなわちアクセルペダルが踏込まれていないときは、ステップS55で、ブレーキ液圧センサ160で検出されたブレーキ液圧に基づいて、ブレーキスイッチ110がOFFとなったと判定されたときのブレーキペダル71の解放速度が所定値より小さいか否かを判定し、YESのとき、すなわち小さいときは、ステップS56で、ブレーキペダル71の解放速度(ブレーキ液圧の低下速度)に基づいて制動力の低減率をDに設定する。ここで、その低減率Dは、ブレーキペダル71の解放速度が大きいほど、小さくなるような特性とされている(図10参照)。また、その特性は、ブレーキペダル71の解放速度が同一とした場合、ステップS53で設定される値Cよりも小さな値とされている。つまり、これは、アクセルペダルが踏込まれておらず、運転者が早急な発進を望んでいるわけではないことから、発進時のショックをより抑制することを目的とする。
【0055】
そして、ステップS57では、ステップS56で設定された低減率に基づいて電磁クラッチ94に供給する電流を制御して、電磁クラッチ94のスリップ率を所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、解放する。
【0056】
一方、ステップS55の判定がNOのとき、すなわちブレーキペダル71の解放速度が所定値より小さくないときは、ステップ58で、ブレーキペダル71の解放速度に基づいて制動力の低減率(パーキングブレーキ80の解除速度)をEに設定する。ここで、その低減率Eは、ブレーキペダル71の解放速度が大きいほど、小さくなるような特性とされている(図10参照)。また、その特性は、ブレーキペダル71の解放速度が同一とした場合、ステップS53及びS56で設定される低減率C,Dよりも小さな値とされる。これは、アクセルペダルが踏込まれておらず、運転者が早急な発進を望んでいるわけではないことから、発進時のショックをさらに抑制することを目的とする。
【0057】
そして、ステップS59では、ステップS58で設定された低減率に基づいて電磁クラッチ94に供給する電流を制御して、電磁クラッチ94のスリップ率を所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、パーキングブレーキ80を解放する。
【0058】
他方、図5のステップS21の判定がNOのとき、すなわち車両がアイドルストップ中でないときは、図8に示すように、ステップS60で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でONからOFFに操作されたか否かを判定し、YESのとき、すなわち手動でONからOFFに操作されたときは、ステップS61で、パーキングブレーキ80の制動力の低減率として所定値Fを設定すると共に、ステップS62で、該低減率に基づいて電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82の発生トルクを低減し、パーキングブレーキ80を解放する。ここで、この低減率Fは低減率Aよりも大きい値とされている。この理由については、図13のタイムチャートの説明時に説明する。
【0059】
一方、ステップS60の判定がNOのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でONからOFFに操作されていないとき(操作レバー81に状態変化がないとき)は、さらにステップS63で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でOFFからONに操作されたか否かを判定する。そして、その判定がYESのとき、すなわち操作レバー81が運転者により手動でOFFからONに操作されたときは、ステップS64で、レバー操作量センサ180で検出されたドライバのレバー操作量に応じた制動力が得られるように、電動モータ82のモータトルク(電流)を制御する。一方、ステップS63の判定がNOのときはステップS21に戻る。
【0060】
以上、図5〜図7を用いてエンジン自動始動時のパーキングブレーキ80の制動力の低減制御について説明したが、これをまとめれば、勾配センサ190、レバー操作センサ180、ブレーキスイッチ110等の各種センサ類で検出された信号に基づいて現在の車両の状態が分類された後、該分類結果に基づいてパーキングブレーキ80の制動力の低減率をA〜Eのいずれかに設定し、該低減率A〜Eとなるように上記分類結果に応じて電動モータ82または電磁クラッチ94を制御することにより、現在の車両の状態に適した制動力低減制御が可能となる。例えば、勾配が所定勾配α以上のときは、主として車両の後退防止のため、制動力の低減を電動モータ82でゆっくりと行うのである。一方、勾配が所定勾配αよりも小さいときは、車両の飛び出し感を抑制しつつ発進応答性を確保するため、制動力の低減を制御応答性のよい電磁クラッチ82により応答性よく行うのである。
【0061】
しかも、ブレーキペダル71の解放速度に基づいて低減率の特性をB,C,DEと複数設定したことにより、車両の状態に応じたより緻密な低減制御が可能となるのである。
【0062】
以下、本フローチャートの制御で実現される作用の具体例を、図11〜図13のタイムチャートを用いて説明する。
【0063】
すなわち、図11に示すように、時刻t1にエンジン10の停止条件が成立したものとする。ここで、この条件成立とは、前述のアイドルストップ許可フラグF1が1、車速が0、ブレーキスイッチがONという条件の全てが満足されたことである。そして、このエンジン停止条件の成立に伴って、エンジン10が自動停止され、エンジン回転数が低下する。また、上記条件成立と同時に、電動モータ82のトルクが制御されて、パーキングブレーキ80の制動力が上昇することとなるが、その目標値は検出された勾配に応じて設定される。すなわち、検出された勾配が所定勾配αより大きいときは、制動力の目標値は検出された勾配に基づいて後退を防止可能な制動力Faに設定され、該制動力Faが得られるように電動モータ82のトルクがTaに制御され、パーキングブレーキ80の制動力が上記目標値Faに達したとき(時刻t2)に、電動モータ82が停止され、ウォームギヤ91とウォームホイール92との噛み合いによりその状態が保持される。一方、検出された勾配が所定勾配α以下であるときは、エンジン始動時のクリープ力とほぼ同等の目標制動力Fbに設定され、該制動力Fbが得られるように電動モータ82のトルクがTbに制御され、パーキングブレーキ80の制動力が上記目標値Fbに達したとき(時刻t2)に、電動モータ82が停止され、ウォームギヤ91とウォームホイール92との噛み合いによりその状態が保持される。
【0064】
そして、その後、エンジン10のアイドルストップ中に、乗員によってブレーキペダル71が解除操作され、時刻t3にブレーキスイッチ110がOFFとなった場合、エンジン始動条件が成立し(エンジン停止条件が非成立となり)、エンジン10が自動始動され、エンジン回転が上昇する。
【0065】
その場合に、エンジン停止時に検出された勾配が所定勾配αより小さいときは、エンジン回転が一旦吹き上がった後目標アイドル回転Neoに低下したときに、符号ア、イで示すように、パーキングブレーキ80の制動力を低減させ始める。一方、検出された勾配が所定勾配α以上であるときは、エンジン回転が一旦吹き上がった後目標回転Neoに低下し、かつアクセルペダルが踏込まれたときに、符号ウで示すように、パーキングブレーキ80の制動力を低減させ始める。これは、検出された勾配が所定勾配α以上である場合は、アクセルペダルが踏込まれていないにもかかわらずパーキングブレーキ80の制動力を低減させると、車両が後退する虞があることから、これを防止するために、アクセルペダルの踏込みを条件としてパーキングブレーキ80の制動力を低減させるものである。
【0066】
ここで、その制動力の低減率は、エンジン停止時に検出された勾配、及び符号エで示すブレーキ液圧の低下速度(ブレーキペダル71の解放速度)に基づいて設定され、エンジン停止時に検出された勾配が所定勾配α以上であるときは、低減率は上記Bに設定され、該低減率Bに基づいて電磁クラッチ94に供給する電流が制御されて所定のスリップ状態とされ、これによりクラッチ締結率が低下して、パーキングブレーキ80の制動力が低減して、パーキングブレーキ80が解放する。なお、この場合、電動モータ82は作動させない。
【0067】
一方、エンジン停止時に検出された勾配が所定勾配αより小さいときは、該低減率に基づいて電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82のモータトルクを所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、解放する。なお、この場合、電磁クラッチ94は締結状態に維持される。
【0068】
図12は、アイドルストップ解除時のブレーキペダルの解放速度と、パーキングブレーキ80の制動力の低下速度との関係を示す。
【0069】
すなわち、ブレーキペダルの解放開始に伴って時刻t11からブレーキ液圧が図12に実線で示すように低下し始め、ブレーキペダルの解放完了に伴ってブレーキ液圧が消失する(時刻t12)。また、この解放完了と同時に、ブレーキスイッチ110がONからOFFに変化し、これによりアイドルストップ条件が非成立となって、エンジン10が始動される。そして、このエンジン始動時のエンジン回転数が一旦吹き上がった後目標アイドル回転Neoに低下したとき(時刻t13)に、電磁クラッチ94の通電電流を漸減することにより電磁クラッチ94の締結力を漸減させる。すなわち、電磁クラッチ94を所定のスリップ状態とする。
【0070】
一方、ブレーキペダル71の解放がこれよりも緩やかな場合、ブレーキペダル71の解放開始に伴って時刻t11からブレーキ圧が図12に点線で示すように緩やかに低下し始め、ブレーキペダル71の解放完了に伴ってにブレーキ液圧が消失する(時刻t14)。また、この解放完了と同時に、ブレーキスイッチ110がONからOFFに変化し、これによりアイドルストップ条件が非成立となって、エンジン10が自動始動される。そして、このエンジン始動時のエンジン回転数が一旦吹き上がった後上記目標アイドル回転Neoに低下したとき(時刻t15)に、電磁クラッチ94への通電電流を実線で示す場合よりも速く漸減させることにより、ブレーキペダル71の解放が急な場合よりも、電磁クラッチ94の締結率、すなわち制動力を速く漸減させる。これによれば、パーキングブレーキ80の制動力が消失するのは、ブレーキペダル71の解放速度にかかわらず、いずれの場合もほぼ同じとき(時刻t16)となる。
【0071】
すなわち、油圧式ブレーキのペダル解放速度が大きいときはパーキングブレーキ80の制動力の低下が緩やかになり、油圧式ブレーキのペダル解放速度が小さいときはパーキングブレーキ80の制動力の低下が急になる。つまり、油圧氏ブレーキとパーキングブレーキ80とを合せたブレーキ全体としての制動力の低下速度が、速くなりすぎたり遅くなりすぎたりすることが防がれると共に、該速度をほぼ一定の速度とすることができ、この結果、過度の制動力の発生や、発進応答性の低下の防止、及び制動力の低下が遅くなりすぎることによるひきずり感の発生の防止を実現することができる。
【0072】
次に、図13は、アイドルストップ中でないときに手動でパーキングブレーキ80が解除された場合の制動力の低減状態(実線で示す)と、アイドルストップ中に手動でパーキングブレーキ80が解除された場合の制動力の低減状態(点線で示す)とを説明するタイムチャートである。
【0073】
すなわち、アイドルストップ中でない状態で、時刻t21にパーキングブレーキ用操作レバー81が解除操作されて、レバー操作量センサ180がOFFとなった場合(レバー操作量が0に戻った場合)、エンジン10が自動始動すると共に、パーキングブレーキ80の制動力の低減が低減率Fで行われるように電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82のトルクを所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、パーキングブレーキ80を解放する。なお、この場合、電磁クラッチ94は締結状態に維持される。
【0074】
一方、アイドルストップ中に、パーキングブレーキ操作レバー81が解除操作された場合、アイドルストップ中でない場合同様、エンジン10が自動始動すると共に、パーキングブレーキ80の制動力の低減が所定の低減率(低減率Aに相当、なお、この低減は後述するが段階的に行うことを含む)で行われるように電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82のトルクを所定の値に制御して、パーキングブレーキ80の制動力が低減させられるが、その低減が段階的に行われ、アイドルストップ中での解除のときよりも、完全解除までをゆっくりと行う。しかも、パーキングブレーキ80の制動力がFcにまで低下したら(時刻t22)、一旦、電動モータ82の作動を停止して制動力がFcの状態を維持し、その後、エンジン回転が吹き上がった後上記目標アイドル回転Neoに低下したことを検出したときに(時刻t23)、電動モータ82を再度作動させて、緩やかに制動力を低減させる。これによれば、エンジン10の始動時に急に発生するクリープ力により、車両にショックが発生して、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。なお、この場合、電磁クラッチ94は締結状態に維持される。なお、パーキングブレーキ80の手動解除時は、制動力の低減をレバー操作と同時に開始するようにしたのは、運転者の違和感を防止することを目的としている。
【0075】
これによれば、エンジン10が自動停止された状態でパーキングブレーキ80が手動解除される場合の当該パーキングブレーキ80の制動力の低下速度は、エンジン停止条件が成立せずエンジン10が運転している状態で当該パーキングブレーキ80が手動解除される場合の低下速度よりも緩やかにされているから、エンジン10が運転している状態で手動で当該パーキングブレーキ80が解除される場合においては、ドライバの要求に即して、応答性よく機械式ブレーキが解除されることとなる。一方、エンジン10が自動停止した状態で手動でパーキングブレーキ80が解除される場合においては、エンジン10が運転している状態で解除されるときよりもゆっくりと解除が完了することとなり、この結果、エンジン10の始動完了前にパーキングブレーキ80が解除されるのが抑制され、上り坂でのエンジン自動始動時に、車両が過度に後退するのが防止される。
【0076】
また、本実施の形態によれば、エンジン10が自動停止された状態において油圧式ブレーキのブレーキペダル71の解放動作が検出されたとき、パーキングブレーキ80の制動力が漸減されるように、電動モータ82が制御されるから、エンジン10の自動始動によってクリープ力が急に発生したときにおいても、機械式ブレーキによる制動力が残留し、この結果、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0077】
そして、油圧式ブレーキのブレーキ液配管等の設計変更等を行う必要がなく、エンジン自動停止・始動機能が備えられた車両と、備えられていない車両とでブレーキ液配管等を共通化でき、生産性の向上や、コストの削減等を実現することができる。
【0078】
加えて、機械式ブレーキの制動力の変更を電磁クラッチ94のスリップ状態を制御することで達成することができるようになり、電動モータ82でケーブル84,86,86等を介して変更する場合よりも制御応答性が向上し、ひいては発進応答性が向上することとなる。
【0079】
また、エンジン10が自動停止された状態においてブレーキペダル71の解放動作が検出されたとき、パーキングブレーキ80の制動力が漸減するように、電磁クラッチ94を所定のスリップ状態に制御することから、エンジン10の自動始動によってクリープ力が急に発生しても、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0080】
そして、エンジン10の自動停止時、電磁クラッチ94を締結状態にさせると共に、パーキングブレーキ80の制動力がクリープ力とほぼ対等となるように、電動モータ82が制御されるから、エンジン10の自動始動時にクリープ力が急に生じても、該クリープ力が、該力とほぼ対等の制動力によって相殺され、該クリープ力によるショックの発生が一層抑制されて、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが確実に軽減される。
【0081】
加えて、パーキングブレーキ80の制動力がクリープ力とほぼ対等の値から漸減されることとなるから、引きずり感等を生じさせることなく、車両が滑らかにかつ応答性よく発進することとなる。
【0082】
しかも、パーキングブレーキ80によるクリープ力とほぼ対等の制動力により、上り勾配路において車両が過度に後退するのが防止される。
【0083】
なお、本実施の形態においては、油圧式ブレーキのブレーキペダルの解放速度を、ブレーキ液圧センサ160で検出されたブレーキ液圧の変化速度により検出するようにしたが、ブレーキストロークセンサ170で検出されたブレーキストロークの変化速度により検出するようにしてもよい。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減されるように、電動アクチュエータが制御されるから、エンジンの自動始動によってクリープ力が急に発生しても、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0085】
また、油圧式ブレーキのブレーキ液配管等の設計変更等を行う必要がなく、エンジン自動停止・始動機能が備えられた車両と、備えられていない車両とでブレーキ液配管等を共通化でき、生産性の向上や、コストの削減等を実現することができる。
【0086】
加えて、上記機械式ブレーキと電動アクチュエータとの間にクラッチを備え、制御手段は、上記所定のエンジン停止条件が成立したときに、クラッチを締結状態にさせると共に、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させると共に、その後、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、クラッチを、解放状態を含む所定のスリップ状態に制御するようにしたから、機械式ブレーキの制動力の変更をクラッチのスリップ状態を制御するだけで達成することができるようになり、電動アクチュエータでケーブルを介して変更する場合よりも制御応答性が向上し、ひいては発進応答性が向上することとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るアイドルストップ車両のパワートレイン及びブレーキシステムを示す全体構成図である。
【図2】上記ブレーキシステムのうちパーキングブレーキの駆動部を説明する拡大構成図である。
【図3】上記アイドルストップ車両のシステム構成図である。
【図4】上記アイドルストップ車両に搭載されたアイドルストップコントロールユニットが実行するアイドルストップ制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【図5】上記アイドルストップ車両に搭載されたアイドルストップコントロールユニットが実行するアイドルストップ解除制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである(1/4)。
【図6】同フローチャートである(2/4)。
【図7】同フローチャートである(3/4)。
【図8】同フローチャートである(4/4)。
【図9】路面勾配とアイドルストップ時におけるパーキングブレーキの制動力との関係を示す特性図である。
【図10】ブレーキペダルの解放速度とアイドルストップ解除時におけるパーキングブレーキの制動力の低減率との関係を示す特性図である。
【図11】実施の形態の作用を説明するタイムチャートである。
【図12】ブレーキペダルの解除速度とパーキングブレーキの制動力の低減率との変化を説明するタイムチャートである。
【図13】アイドルストップ中に手動でパーキングブレーキが解除された場合の制動力の低減状態と、アイドルストップしていないときに手動でパーキングブレーキが解除された場合の制動力の低減状態とを説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
1 アイドルストップ車両
10 エンジン
50 スタータモータ
70 油圧式ブレーキシステム
71 ブレーキペダル
80 パーキングブレーキ(機械式ブレーキシステム)
81 操作レバー
82 パーキングブレーキ用電動モータ(電動アクチュエータ)
84 共通ケーブル(ケーブル)
86,86 駆動輪用ケーブル(ケーブル)
94 電磁クラッチ(クラッチ)
100 アイドルストップ用コントロールユニット(エンジン自動停止・始動手段、制御手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両停車時に所定のエンジン停止条件が成立したときはエンジンを自動的に停止させ、その後、所定のエンジン始動条件が検出されたときはエンジンを自動的に始動させるエンジン自動停止・始動手段と、電気駆動式の機械式ブレーキを有する車両の制御装置に関し、自動始動時における機械式ブレーキの制御の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、燃費の向上や、二酸化炭素等の環境汚染物質の排出低減、及び騒音の抑制等を図るため、車両の停車時に、所定のエンジン停止条件(例えばブレーキペダルが踏み込まれていることや、アクセルペダルが踏み込まれていないことが検出されていること等)が成立したときは、エンジンを自動的に停止させ、その後、所定のエンジン始動条件(例えばブレーキペダルの踏み込みが解除されたことが検出されたこと)が成立したときには、エンジンを自動的に始動させる、いわゆるアイドルストップ車両が知られている。
【0003】
ところで、このアイドルストップ中においては、運転者が意識的に変速段の切り換え操作を行わない場合、変速段はDレンジ等の走行モードに保持されることとなるが、その場合、上記例示したような始動条件(ブレーキペダルの踏込解除)でエンジンを自動始動させると、該始動時には既にブレーキ油圧及び制動力が低下しているから、急に発生したクリープ力(エンジン完爆時のエンジン回転の吹き上げ及びその後のアイドル回転に起因する)によって車両にショックが発生し、乗員に飛び出し感等の違和感を与えることがある。
【0004】
そこで、ブレーキペダルの踏み込みが解除されても、上記クリープ力を抑制可能な制動力がエンジンの始動完了まで残るように、ブレーキ液配管等にオリフィスを設けてブレーキ圧の減少を緩やかにさせることが考えられる。しかし、この場合、エンジンの自動停止・始動機能を有する車両と、有しない車両とで、ブレーキ液配管を共通化できなくなり、この結果、量産の支障となるだけでなく、コストアップの要因ともなる。
【0005】
一方、特許文献1には、電動モータにより駆動される機械式パーキングブレーキを備えた車両において、該機械式パーキングブレーキを上記アイドルストップ時に作動させるものが開示されている。すなわち、機械式ブレーキ(ドラムブレーキ)に連結部材を介して接続されたケーブルを電動モータにより回転されるプーリに巻き取りあるいは解放することにより、ケーブルを引張または弛緩するように構成し、かつ、エンジンの自動停止時に、電動モータによりプーリを所定方向に回転させてケーブルを巻き取ることにより機械式ブレーキを作動させ、エンジンの自動始動時には、電動モータによりプーリを自動停止時とは逆方向に回転させてケーブルを弛緩することにより機械式ブレーキの作動を解除させるものである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−163198号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1には、エンジン自動始動時における機械式ブレーキの解除速度を如何に制御するかについては言及がなく、前述した飛び出し感等の問題を解決することができない。
【0008】
そこで、本発明は、車両停車時にエンジンを自動停止・始動するように構成された車両において、電動タイプの機械式ブレーキを用いてエンジン自動始動時の飛び出し感を抑制することができる機械式ブレーキ付車両の制御装置を提供することを主たる課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車両停車時に所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させ、その後、油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときにエンジンを自動的に始動させるエンジン自動停止・始動手段と、電動アクチュエータによりケーブルを介して駆動される機械式ブレーキと、上記電動アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、かつ自動変速機が備えられた機械式ブレーキ付車両の制御装置であって、制御手段は、上記所定のエンジン停止条件が成立したときに、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させると共に、その後、エンジン停止状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減するように、上記電動アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減されるように、電動アクチュエータが制御されるから、エンジンの自動始動によってクリープ力が急に発生したときにおいても、機械式ブレーキによる制動力が残留し、この結果、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0012】
また、油圧式ブレーキのブレーキ液配管等の設計変更等を行う必要がなく、エンジン自動停止・始動機能が備えられた車両と、備えられていない車両とでブレーキ液配管等を共通化でき、生産性の向上や、コストの削減等を実現することができる。
【0013】
ここで、機械式ブレーキは、周知のように、主構成部材として、固定部材(例えばドラム)と、ケーブルがリンク機構等を介して接続される可動部材(例えばブレーキシュー)と、固定部材と可動部材とを離反させるためのリターンスプリングとを備え、操作レバーでブレーキ作動操作が行われたときに、ケーブルが引かれることにより固定部材と可動部材とがリターンスプリングに抗して当接して制動力を生じ、レバーでブレーキ解除操作が行われたときに、ケーブルを引き戻しつつリターンスプリングが収縮することにより固定部材と可動部材とが離反して制動力が消失する。一方、電動タイプの機械式ブレーキは、前述したように、ケーブルを電動アクチュエータ(電動モータ)でプーリ等に巻き取りあるいは緩めることにより作動あるいは解除されるように構成したものであり、その場合、その解除時には、電動アクチュエータが作動してプーリが巻き取り時とは逆方向に回転し、これに併せてケーブルが上記リターンスプリングの収縮により引き戻されることとなるが、その場合、ケーブルの引き戻し速度、すなわち機械式ブレーキの解除速度は、電動モータの回転速度に拘束されることになる。そして、この結果、例えば平坦路等でできるだけ機械式ブレーキを早く解除して車両を発進させたいような場合に応答性が損なわれ、運転者にひきずり感等の違和感を与えることが考えられる。
【0014】
そこで、本願の請求項2に記載の発明は、車両停車時に所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させ、その後、油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときにエンジンを自動的に始動させるエンジン自動停止・始動手段と、電動アクチュエータによりケーブルを介して駆動される機械式ブレーキと、上記電動アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられた機械式ブレーキ付車両の制御装置であって、上記機械式ブレーキと電動アクチュエータとの間にクラッチが備えられており、制御手段は、上記所定のエンジン停止条件が成立したときは、クラッチを締結状態にさせると共に、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させ、その後、エンジン停止状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、クラッチを、解放状態を含む所定のスリップ状態に制御することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、機械式ブレーキの制動力の変更をクラッチのスリップ状態を制御するだけで達成することができるようになり、電動アクチュエータでケーブルを介して変更する場合よりも制御応答性が向上し、ひいては発進応答性が向上することとなる。
【0016】
また、この発明によっても、請求項1に記載の発明同様、エンジンが自動停止された状態においてブレーキペダルの解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減するように、クラッチを所定のスリップ状態に制御することが可能であり、エンジンの自動始動によってクリープ力が急に発生しても、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0017】
また、油圧式ブレーキのブレーキ液配管等の設計変更等を行う必要がなくなり、エンジン自動停止・始動機能が備えられた車両と、備えられていない車両とでブレーキ液配管等を共通化でき、生産性の向上や、コストの削減等を実現することができる。
【0018】
そして、本願の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、自動変速機が備えられており、かつ、制御手段は、エンジンの自動停止時、クラッチを締結状態にさせると共に、機械式ブレーキの制動力がクリープ力とほぼ対等となるように、電動アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、エンジン自動始動時にクリープ力が急に生じても、該クリープ力が、該力とほぼ対等の制動力によって相殺され、該クリープ力によるショックの発生が一層抑制されて、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが確実に軽減される。
【0020】
加えて、機械式ブレーキの制動力がクリープ力とほぼ対等の値から漸減されることとなるから、引きずり感等を生じさせることなく、車両が滑らかにかつ応答性よく発進することとなる。
【0021】
しかも、機械式ブレーキによるクリープ力とほぼ対等の制動力により、上り勾配路において車両が過度に後退するのが防止される。
【0022】
そして、本願の請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の発明において、制御手段は、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたとき、その解放速度が大きいほど、機械式ブレーキの制動力の低下を緩やかにすることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、油圧式ブレーキのペダル解放速度が大きいときは機械式ブレーキの制動力の低下が緩やかになり、油圧式ブレーキのペダル解放速度が小さいときは機械式ブレーキの制動力の低下が急になる。すなわち、油圧氏ブレーキと機械式ブレーキとを合せたブレーキ全体としての制動力の低下速度が、速くなりすぎたり遅くなりすぎたりすることが防がれると共に、該速度をほぼ一定の速度とすることができ、この結果、過度の制動力の発生や、発進応答性の低下の防止、及び制動力の低下が遅くなりすぎることによるひきずり感の発生の防止を実現することができる。
【0024】
次いで、本願の請求項5に記載の発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明において、機械式ブレーキは手動操作が可能とされていると共に、エンジン自動停止・始動手段は、手動操作により機械式ブレーキが作動された場合は、エンジンを自動停止した状態でブレーキペダルの解放動作が検出されたときのエンジン自動始動を禁止すると共に、手動操作により機械式ブレーキが解除されたときにエンジンを自動始動するように構成されており、所定のエンジン停止条件が成立してエンジンが自動停止された状態で機械式ブレーキが手動で解除される場合の機械式ブレーキの制動力の低下速度は、所定のエンジン停止条件が成立せずエンジンが運転している状態で当該機械式ブレーキが手動で解除される場合の低下速度よりも、小さくされていることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、所定のエンジン停止条件が成立してエンジンが自動停止された状態で機械式ブレーキが手動で操作された場合は、エンジンの自動始動を、ブレーキペダルの解放動作が検出されたときではなくブレーキペダルが手動解除されたときに行うものにおいて、所定のエンジン停止条件が成立してエンジンが自動停止された状態で機械式ブレーキが手動で解除される場合の機械式ブレーキの制動力の低下速度は、所定のエンジン停止条件が成立せずエンジンが運転している状態で当該機械式ブレーキが手動で解除される場合の低下速度よりも緩やかになる。すなわち、エンジンが運転している状態で手動で当該機械式ブレーキが解除される場合、ドライバの要求に即して、応答性よく機械式ブレーキが解除されることとなる。一方、エンジンが自動停止した状態で手動で機械式ブレーキが解除される場合、エンジンが運転している状態で解除されるときよりもゆっくりと解除が完了することとなり、この結果、エンジンの始動完了前に機械式ブレーキが解除されるのが抑制され、上り坂でのエンジン自動始動時に、車両が過度に後退するのが防止される。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両1は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両であって、車体前部のエンジンルーム内に、エンジン10が横置きに配置され、該エンジン10にトルクコンバータ20を介して変速機30が接続されている。そして、該変速機30の出力が差動装置40を経由して左右の前輪61,62に伝達される。この車両1は、燃費の向上や、二酸化炭素等の環境汚染物質の排出低減、及び騒音の抑制等を図る、いわゆるアイドルストップ車両であって、エンジン10の始動用のスタータモータ50を備える。
【0027】
この車両1は、運転者のブレーキペダル71の操作に応じて作動する油圧式ブレーキシステム70と、運転者のレバー81の操作等により作動する機械式ブレーキシステム80とを有し、本実施形態においては、油圧式ブレーキシステム70として周知のディスク式ブレーキを採用している。すなわち、運転者のブレーキペダル71の踏力が、エンジン10の吸気管内の負圧(吸引負圧)を利用したブレーキブースタ(倍力装置)72で助勢されて、マスタシリンダ73に伝達され、上記踏力に応じたブレーキ液圧が発生する。ブレーキ液圧は、ブレーキ液圧通路74,75を通って、各車輪61〜64のキャリパ76〜76に内蔵されたホイルシリンダに伝達され、各車輪61〜64と一体回転するディスク77〜77をパッドが挟み込んで制動力が発生する。
【0028】
また、機械式ブレーキシステム80(以下、「パーキングブレーキ80」という)として、各車輪と一体回転するドラムの内面にシューが押し付けられたときに制動力が発生する周知のドラム式ブレーキを採用し、該ドラム式ブレーキを電動で作動させるように構成している。すなわち、運転者がパーキングブレーキ操作用レバー81を操作した場合、その操作量等に応じて、電動モータ82が作動すると共に、後述するギヤ類を介してプーリ83が回転し、該プーリ83に共通ケーブル84が巻き取られる。そのとき、イコライザ85を介して、各駆動輪用ケーブル86,86が引かれて、ドラム87の内面に図示しないブレーキシューが押付けられて制動力が発生する。一方、運転者がレバー81を解除操作した場合、モータ82によってプーリ82が逆回転されると共に、ドラム87の内部に備えられたリターンスプリングによりケーブル84,86,86が、ドラム87側に引き戻されると共に、ブレーキシューがドラムから離れ、制動力が消失する。
【0029】
図2に示すように、上記電動モータ82は、車体構成部材に取り付けられた支持部材90に固定されていると共に、該モータ82の駆動軸の先端にはウォームギヤ91が設けられている。該ウォームギヤ91に噛合するウォームホイール92が軸部材93に固着され、該軸部材93が上記支持部材90に回動自在に支持されている。上記軸部材93上に、ウォームホイール92に固設された電磁クラッチ94が設けられている。
【0030】
該電磁クラッチ94は、上記ウォームホイール92に固設された固定部95と、上記軸部材93上にベアリング等を介して回動可能に支持された可動部96とを有する。該可動部96の外周部には上記プーリ83が一体形成されている。固定部95の内部には、電磁コイルが設けられている。固定部95における可動部96に対向する面には、図示しない摩擦部材が設けられていると共に、可動部96における固定部95に対向する面には、図示しないアーマチュアが軸方向に移動可能に設けられており、上記電磁コイルが通電されたときに、可動部のアーマチュアが固定部95側に吸引されて、固定部95の摩擦部材に吸着される。また、軸部材93及び固定部95が回転しているときに、電磁コイルに通電すれば、可動部96が固定部95に吸着されて、軸部材93及び固定部95と一体回転することとなる。また、電磁コイルへの通電電流を制御すれば、アーマチュアの固定部95側への吸引力も制御され、摩擦部材とアーマチュアとの間の摩擦抵抗が制御され、スリップ状態を制御することができるようになる。
【0031】
図3に示すように、この車両1には、エンジン10の燃料噴射弁11…11、点火栓12…12、スタータモータ50、パーキングブレーキ80用の電動モータ82、及び電磁クラッチ94を制御するアイドルストップ用のコントロールユニット100が搭載されている。アイドルストップコントロールユニット(ISECU)100は、ブレーキペダル71が踏み込まれ始めたときにオンとなるブレーキスイッチ110の信号、アクセルペダルが踏込まれたときにオンとなるアクセルスイッチ120の信号、車速を検出する車速センサ130の信号、エンジン10の回転数を検出するエンジン回転センサ140の信号、ブレーキペダル71とマスタシリンダ73との間に介設された上記ブレーキブースタ72に導入されるブレーキブースタ負圧を検出するブースタ負圧センサ150の信号、ブレーキ液圧通路74,75のブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ160の信号、ブレーキペダル71の踏込み量を検出するブレーキストロークセンサ170の信号、パーキングブレーキ用操作レバー81の手動操作量(引き代)及び操作状態か否かを検出するレバー操作量センサ180の信号、路面勾配を検出する勾配センサ190の信号、エアコン等の補機の作動状態(補機の使用電流)を検出する補機作動状態センサ200の信号、及び、エンジン運転中に充電され、上記スタータモータ50、及び電動モータ82等の電気負荷への電力供給用バッテリの残量を検出するバッテリ残量センサ210の信号等を入力する。
【0032】
次に、本アイドルストップコントロールユニット100が行う制御について、図4〜図8のフローチャートを用いて詳細に説明する。まず、図4のフローチャートにより、エンジン10の自動停止制御について説明する。すなわち、ステップS1では、アイドルストップ許可フラグF1が1か否か、すなわちアイドルストップを実行するための基礎条件が成立しているか否かを判定する。ここで、このフラグF1が1であることは、上記アイドルストップ実行の基礎条件が成立していることを意味する。このフラグF1は、以下の3つの条件が成立したときに1となる。つまり、1つ目の条件は、バッテリ残量センサ210で検出されたバッテリ残量が所定量以上あること、2つ目の条件は、補機作動状態検出センサ200で検出された補機類の消費電力が所定量以下であること、3つ目の条件は、ブースタ負圧センサ150で検出されたブースタ負圧が所定圧以下であることである。なお、これらの条件のいずれか1つでも成立しないときはフラグF1は0となる。
【0033】
そして、上記ステップS1の判定がNOのとき、すなわちアイドルストップ許可フラグF1が0のときは、アイドルストップ実行不可状態にあることを乗員に知らせるために、ステップS2で、アイドルストップ報知装置220を作動させて報知ランプを点灯する。
【0034】
一方、ステップS1の判定がYESのとき、すなわちアイドルストップ許可フラグF1が1のときは、ステップS3で、車速センサ130で検出された車速が0か否か、及び、ブレーキスイッチ110がONか否かを検出し、車速が0でかつブレーキスイッチ110がONのとき、すなわち、ブレーキペダル71の踏込みにより車両が停止している状態が停止確定と認識できる所定時間(例えば3秒)継続したときは、ステップS4で、燃料噴射弁11による燃料噴射を停止すると共に点火栓12による点火を停止して、エンジン10を停止させる。一方、ステップS3の判定がNOのとき、すなわち、車速が0でかつブレーキスイッチ110がONのとき以外のときは、ステップS1に戻る。
【0035】
一方、上記ステップS4の実行後は、ステップS5で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されたか否かを、レバー操作量センサ180からの信号に基づいて判定し、NOのとき、すなわち操作レバー81が手動でON操作されていないときは、ステップS6で、勾配センサ190で検出された道路勾配(傾斜角)が、所定勾配αより大きいか否かを判定する。ここで、この勾配センサ190で検出される値は、上り勾配が大きくなるほど大きな値となる。
【0036】
そして、このステップS6の判定がYESのとき、すなわち、検出された道路勾配が所定勾配αより大きいときは、ステップS7で、パーキングブレーキ80の目標制動力を、検出された道路勾配に基づいて設定し、次いで、ステップS8で、上記目標制動力となるように、電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82の発生トルクを調節し、目標制動力になったら、電動モータ82の作動を停止して、ステップS1に戻る。この場合、電動モータ82の作動を停止しても、ウォームギヤ91とウォームホイール92の噛み合いにより、電動モータ82の作動停止時の状態が維持され、パーキングブレーキ80の制動力が上記目標制動力に保持される。
【0037】
一方、ステップS6の判定がNOのとき、すなわち、検出された道路勾配が所定値α以下のときは、ステップS9で、パーキングブレーキ80の目標制動力を、エンジン10の始動時に発生するクリープ力と等しい値に設定し、次いで、ステップS10で、上記ステップS8同様の処理を行って、ステップS1に戻る。
【0038】
ここで、上記ステップS7及びS9で設定される目標制動力の特性は、図9に示す通りである。すなわち、検出された道路勾配が上記所定値αより大きいときは、設定される目標制動力Faは、道路勾配が大きいほど大きくされる。これは、道路勾配が大きいほど、車両の自重により後退しやすくなるため、後退を防止することを目的とする。一方、検出された道路勾配が上記所定値α以下のときは、設定される目標制動力は、前述のように、エンジン10の自動始動時に発生するクリープ力に等しい値Fbに設定される。これによれば、エンジン10の自動始動時に車両を前進させようとするクリープ力が発生しても、パーキングブレーキ80の制動力によって、車両が不測に前進し始めるのが抑制されることとなる。この場合において、道路勾配が0から所定値αの間にあるときは、同時に車両の後退も防止されることとなる。
【0039】
一方、上記ステップS5の判定がYESのとき、すなわち操作レバー81が手動でON操作されたときは、ステップS11で、レバー操作量センサ180で検出されたドライバのレバー操作量に応じた制動力が得られるように、電動モータ82のモータトルク(電流)を制御する。
【0040】
次に、図4のフローチャートに記載の制御によってエンジン10が自動停止した後の制御、すなわち、アイドルストップ状態におけるエンジン10の自動始動制御について図5〜図8のフローチャートを用いて説明する。ここで、この制御の概要について簡単に説明しておくと、前述した勾配センサ190、レバー操作量センサ180、ブレーキスイッチ110等の各種センサ類で検出された信号に基づいて現在の車両の運転状態を分類した後、該分類結果に基づいてパーキングブレーキ80の制動力の低減率を設定し、該低減率となるように上記分類結果に応じて電動モータ82または電磁クラッチ94を制御するものである。
【0041】
すなわち、ステップS21では、現在、アイドルストップ中か否かを判定し、YESのとき、すなわちアイドルストップ中のときは、ステップS22で、エンジン10の自動停止時に検出された道路勾配が、所定勾配αより大きいか否かを判定する。そして、ステップS22の判定がYESのとき、すなわち、検出された道路勾配が所定勾配αより大きいときは、ステップS23で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されたか否かを、レバー操作量センサ180からの信号に基づいて判定する。
【0042】
そして、その判定がYESのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されたときは、ステップS24で、アイドルストップ許可フラグF1が0か否かを判定する。すなわち、本判定時にはエンジン10は必ずアイドルストップ中であるが、そのアイドルストップを解除する条件、すなわち前述したアイドルストップ許可条件が非成立になったか否かを判定するのである。そして、その判定がYESのとき、すなわち、アイドルストップ許可フラグF1が0のときは、ステップS25で、アイドルストップ報知装置220を作動させてエンジン自動始動ALMを発すると共に、ステップS26で、燃料噴射弁11による燃料噴射の実行及び点火栓12による点火の実行を行ってエンジン10を自動始動させる。
【0043】
一方、ステップS24の判定がNOのとき、すなわち、アイドルストップ許可フラグF1が0でなく1のときは、ステップS27で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動で解除(OFF)操作されたか否かを判定し、NOのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が手動で解除(OFF)操作されていないときは、エンジン10のアイドルストップを維持したまま、ステップS21に戻る。
【0044】
一方、ステップS27の判定がYESのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動で解除(OFF)操作されたときは、ステップS28で、アイドルストップ報知装置220を作動させてエンジン自動始動ALMを発すると共に、ステップS29で、燃料噴射弁11による燃料噴射の実行及び点火栓12による点火の実行を行ってエンジン10を自動始動させる。次いで、ステップS30で、パーキングブレーキ80の制動力の低減率を、所定値Aに設定すると共に、ステップS31で、該低減率Aに基づいて電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82の発生トルクを低減し、パーキングブレーキ80を解放する。
【0045】
一方、ステップS23の判定がNOのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されていないときは、ステップS32で、ブレーキ液圧センサ160の検出値に基づいてブレーキペダル71がOFF操作されているか否かを判定する(例えば、ブレーキ液圧変化量が所定量以上のときに、ブレーキペダル71がOFF操作されていると判定する)。そして、その判定がNOのとき、すなわちブレーキペダル71がOFF操作されていないときは、さらに、ステップS33で、アイドルストップ許可フラグF1が0か否かを判定する。そして、その判定がNOのとき、すなわち、アイドルストップ許可フラグF1が1のときは、エンジン10のアイドルストップを維持したまま、ステップS21に戻る。一方、その判定がYESのとき、すなわち、アイドルストップ許可フラグF1が0のときは、前述のステップS28〜S31を実行する。
【0046】
一方、ステップS32の判定がYESのとき、すなわち、ブレーキスイッチ110がOFFのときは、ステップS34で、アイドルストップ報知装置220を作動させてエンジン自動始動ALMを発すると共に、ステップS35で、燃料噴射弁11による燃料噴射及び点火栓12による点火を実行してエンジン10を自動始動させる。
【0047】
次いで、ステップS36で、アクセルペダルが踏込まれているか否かを、アクセルスイッチ120からの信号に基づいて判定し、NOのとき、すなわちアクセルペダルが踏込まれていないときは、YESと判定されるまで、本判定を繰り返す。そして、その判定がYESのとき、すなわちアクセルペダル71が踏込まれたときは、ステップS37で、ブレーキ液圧センサ160の信号に基づいて、ブレーキペダル71の解放速度(ブレーキ液圧の低下速度)を検出(算出)し、該解放速度に基づいて制動力の低減率(パーキングブレーキ80の解除速度)をBに設定する。ここで、その低減率Bは、ブレーキペダル71の解放速度が大きいほど、小さくなるような特性とされている(図10参照)。また、前述した所定値Aよりも大きな値とされている。
【0048】
そして、ステップS38では、ステップS37で設定された低減率に基づいて電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82の発生トルクを低減し、パーキングブレーキ80を解放する。
【0049】
一方、ステップS22の判定が、NOのとき、すなわち、検出された道路勾配が所定勾配α以下のときは、図6に示すように、ステップS39で、前述のステップS23同様の判定を行い、その判定がYESのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されたときは、ステップS40〜S47で、前述のステップS24〜S31と同様の処理を行う。
【0050】
一方、ステップS39の判定がNOのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でON操作されていないときは、ステップS48で、前述したステップS32同様の判定を行い、その判定がNOのときは、ステップS49及びステップS44〜S47で、前述のステップS33及びステップS28〜S31と同様の処理を行う。
【0051】
一方、ステップS48の判定がYESのときは、ステップS50で、アイドルストップ報知装置220を作動させてエンジン自動始動ALMを発すると共に、ステップS51で、燃料噴射弁11による燃料噴射及び点火栓12による点火を実行してエンジン10を自動始動させ、ステップS52(図7参照)で、アクセルペダルが踏込まれているか否かを、アクセルスイッチ120からの信号に基づいて判定する。
【0052】
そして、ステップS52の判定がYESのとき、すなわちアクセルペダル71が踏込まれているときは、ステップS53で、ブレーキ液圧センサ160の信号に基づいて、ブレーキペダル71の解放速度を検出(算出)し、該解放速度に基づいて制動力の低減率をCに設定する。ここで、その低減率Cは、ブレーキペダル71の解放速度が大きいほど、小さくなるような特性とされている(図10参照)。また、前述した所定値Bよりも大きな値とされている。これは、アクセルペダルが踏込まれているのは、運転者が早急に発進したい意思の現れであるから、発進性を向上させることを目的とする。
【0053】
そして、ステップS54では、ステップS53で設定された低減率に基づいて電磁クラッチ94に供給する電流を制御して、電磁クラッチ94のスリップ率を所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、パーキングブレーキ80を解放する。
【0054】
一方、ステップS52の判定がNOのとき、すなわちアクセルペダルが踏込まれていないときは、ステップS55で、ブレーキ液圧センサ160で検出されたブレーキ液圧に基づいて、ブレーキスイッチ110がOFFとなったと判定されたときのブレーキペダル71の解放速度が所定値より小さいか否かを判定し、YESのとき、すなわち小さいときは、ステップS56で、ブレーキペダル71の解放速度(ブレーキ液圧の低下速度)に基づいて制動力の低減率をDに設定する。ここで、その低減率Dは、ブレーキペダル71の解放速度が大きいほど、小さくなるような特性とされている(図10参照)。また、その特性は、ブレーキペダル71の解放速度が同一とした場合、ステップS53で設定される値Cよりも小さな値とされている。つまり、これは、アクセルペダルが踏込まれておらず、運転者が早急な発進を望んでいるわけではないことから、発進時のショックをより抑制することを目的とする。
【0055】
そして、ステップS57では、ステップS56で設定された低減率に基づいて電磁クラッチ94に供給する電流を制御して、電磁クラッチ94のスリップ率を所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、解放する。
【0056】
一方、ステップS55の判定がNOのとき、すなわちブレーキペダル71の解放速度が所定値より小さくないときは、ステップ58で、ブレーキペダル71の解放速度に基づいて制動力の低減率(パーキングブレーキ80の解除速度)をEに設定する。ここで、その低減率Eは、ブレーキペダル71の解放速度が大きいほど、小さくなるような特性とされている(図10参照)。また、その特性は、ブレーキペダル71の解放速度が同一とした場合、ステップS53及びS56で設定される低減率C,Dよりも小さな値とされる。これは、アクセルペダルが踏込まれておらず、運転者が早急な発進を望んでいるわけではないことから、発進時のショックをさらに抑制することを目的とする。
【0057】
そして、ステップS59では、ステップS58で設定された低減率に基づいて電磁クラッチ94に供給する電流を制御して、電磁クラッチ94のスリップ率を所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、パーキングブレーキ80を解放する。
【0058】
他方、図5のステップS21の判定がNOのとき、すなわち車両がアイドルストップ中でないときは、図8に示すように、ステップS60で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でONからOFFに操作されたか否かを判定し、YESのとき、すなわち手動でONからOFFに操作されたときは、ステップS61で、パーキングブレーキ80の制動力の低減率として所定値Fを設定すると共に、ステップS62で、該低減率に基づいて電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82の発生トルクを低減し、パーキングブレーキ80を解放する。ここで、この低減率Fは低減率Aよりも大きい値とされている。この理由については、図13のタイムチャートの説明時に説明する。
【0059】
一方、ステップS60の判定がNOのとき、すなわちパーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でONからOFFに操作されていないとき(操作レバー81に状態変化がないとき)は、さらにステップS63で、パーキングブレーキ用操作レバー81が運転者により手動でOFFからONに操作されたか否かを判定する。そして、その判定がYESのとき、すなわち操作レバー81が運転者により手動でOFFからONに操作されたときは、ステップS64で、レバー操作量センサ180で検出されたドライバのレバー操作量に応じた制動力が得られるように、電動モータ82のモータトルク(電流)を制御する。一方、ステップS63の判定がNOのときはステップS21に戻る。
【0060】
以上、図5〜図7を用いてエンジン自動始動時のパーキングブレーキ80の制動力の低減制御について説明したが、これをまとめれば、勾配センサ190、レバー操作センサ180、ブレーキスイッチ110等の各種センサ類で検出された信号に基づいて現在の車両の状態が分類された後、該分類結果に基づいてパーキングブレーキ80の制動力の低減率をA〜Eのいずれかに設定し、該低減率A〜Eとなるように上記分類結果に応じて電動モータ82または電磁クラッチ94を制御することにより、現在の車両の状態に適した制動力低減制御が可能となる。例えば、勾配が所定勾配α以上のときは、主として車両の後退防止のため、制動力の低減を電動モータ82でゆっくりと行うのである。一方、勾配が所定勾配αよりも小さいときは、車両の飛び出し感を抑制しつつ発進応答性を確保するため、制動力の低減を制御応答性のよい電磁クラッチ82により応答性よく行うのである。
【0061】
しかも、ブレーキペダル71の解放速度に基づいて低減率の特性をB,C,DEと複数設定したことにより、車両の状態に応じたより緻密な低減制御が可能となるのである。
【0062】
以下、本フローチャートの制御で実現される作用の具体例を、図11〜図13のタイムチャートを用いて説明する。
【0063】
すなわち、図11に示すように、時刻t1にエンジン10の停止条件が成立したものとする。ここで、この条件成立とは、前述のアイドルストップ許可フラグF1が1、車速が0、ブレーキスイッチがONという条件の全てが満足されたことである。そして、このエンジン停止条件の成立に伴って、エンジン10が自動停止され、エンジン回転数が低下する。また、上記条件成立と同時に、電動モータ82のトルクが制御されて、パーキングブレーキ80の制動力が上昇することとなるが、その目標値は検出された勾配に応じて設定される。すなわち、検出された勾配が所定勾配αより大きいときは、制動力の目標値は検出された勾配に基づいて後退を防止可能な制動力Faに設定され、該制動力Faが得られるように電動モータ82のトルクがTaに制御され、パーキングブレーキ80の制動力が上記目標値Faに達したとき(時刻t2)に、電動モータ82が停止され、ウォームギヤ91とウォームホイール92との噛み合いによりその状態が保持される。一方、検出された勾配が所定勾配α以下であるときは、エンジン始動時のクリープ力とほぼ同等の目標制動力Fbに設定され、該制動力Fbが得られるように電動モータ82のトルクがTbに制御され、パーキングブレーキ80の制動力が上記目標値Fbに達したとき(時刻t2)に、電動モータ82が停止され、ウォームギヤ91とウォームホイール92との噛み合いによりその状態が保持される。
【0064】
そして、その後、エンジン10のアイドルストップ中に、乗員によってブレーキペダル71が解除操作され、時刻t3にブレーキスイッチ110がOFFとなった場合、エンジン始動条件が成立し(エンジン停止条件が非成立となり)、エンジン10が自動始動され、エンジン回転が上昇する。
【0065】
その場合に、エンジン停止時に検出された勾配が所定勾配αより小さいときは、エンジン回転が一旦吹き上がった後目標アイドル回転Neoに低下したときに、符号ア、イで示すように、パーキングブレーキ80の制動力を低減させ始める。一方、検出された勾配が所定勾配α以上であるときは、エンジン回転が一旦吹き上がった後目標回転Neoに低下し、かつアクセルペダルが踏込まれたときに、符号ウで示すように、パーキングブレーキ80の制動力を低減させ始める。これは、検出された勾配が所定勾配α以上である場合は、アクセルペダルが踏込まれていないにもかかわらずパーキングブレーキ80の制動力を低減させると、車両が後退する虞があることから、これを防止するために、アクセルペダルの踏込みを条件としてパーキングブレーキ80の制動力を低減させるものである。
【0066】
ここで、その制動力の低減率は、エンジン停止時に検出された勾配、及び符号エで示すブレーキ液圧の低下速度(ブレーキペダル71の解放速度)に基づいて設定され、エンジン停止時に検出された勾配が所定勾配α以上であるときは、低減率は上記Bに設定され、該低減率Bに基づいて電磁クラッチ94に供給する電流が制御されて所定のスリップ状態とされ、これによりクラッチ締結率が低下して、パーキングブレーキ80の制動力が低減して、パーキングブレーキ80が解放する。なお、この場合、電動モータ82は作動させない。
【0067】
一方、エンジン停止時に検出された勾配が所定勾配αより小さいときは、該低減率に基づいて電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82のモータトルクを所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、解放する。なお、この場合、電磁クラッチ94は締結状態に維持される。
【0068】
図12は、アイドルストップ解除時のブレーキペダルの解放速度と、パーキングブレーキ80の制動力の低下速度との関係を示す。
【0069】
すなわち、ブレーキペダルの解放開始に伴って時刻t11からブレーキ液圧が図12に実線で示すように低下し始め、ブレーキペダルの解放完了に伴ってブレーキ液圧が消失する(時刻t12)。また、この解放完了と同時に、ブレーキスイッチ110がONからOFFに変化し、これによりアイドルストップ条件が非成立となって、エンジン10が始動される。そして、このエンジン始動時のエンジン回転数が一旦吹き上がった後目標アイドル回転Neoに低下したとき(時刻t13)に、電磁クラッチ94の通電電流を漸減することにより電磁クラッチ94の締結力を漸減させる。すなわち、電磁クラッチ94を所定のスリップ状態とする。
【0070】
一方、ブレーキペダル71の解放がこれよりも緩やかな場合、ブレーキペダル71の解放開始に伴って時刻t11からブレーキ圧が図12に点線で示すように緩やかに低下し始め、ブレーキペダル71の解放完了に伴ってにブレーキ液圧が消失する(時刻t14)。また、この解放完了と同時に、ブレーキスイッチ110がONからOFFに変化し、これによりアイドルストップ条件が非成立となって、エンジン10が自動始動される。そして、このエンジン始動時のエンジン回転数が一旦吹き上がった後上記目標アイドル回転Neoに低下したとき(時刻t15)に、電磁クラッチ94への通電電流を実線で示す場合よりも速く漸減させることにより、ブレーキペダル71の解放が急な場合よりも、電磁クラッチ94の締結率、すなわち制動力を速く漸減させる。これによれば、パーキングブレーキ80の制動力が消失するのは、ブレーキペダル71の解放速度にかかわらず、いずれの場合もほぼ同じとき(時刻t16)となる。
【0071】
すなわち、油圧式ブレーキのペダル解放速度が大きいときはパーキングブレーキ80の制動力の低下が緩やかになり、油圧式ブレーキのペダル解放速度が小さいときはパーキングブレーキ80の制動力の低下が急になる。つまり、油圧氏ブレーキとパーキングブレーキ80とを合せたブレーキ全体としての制動力の低下速度が、速くなりすぎたり遅くなりすぎたりすることが防がれると共に、該速度をほぼ一定の速度とすることができ、この結果、過度の制動力の発生や、発進応答性の低下の防止、及び制動力の低下が遅くなりすぎることによるひきずり感の発生の防止を実現することができる。
【0072】
次に、図13は、アイドルストップ中でないときに手動でパーキングブレーキ80が解除された場合の制動力の低減状態(実線で示す)と、アイドルストップ中に手動でパーキングブレーキ80が解除された場合の制動力の低減状態(点線で示す)とを説明するタイムチャートである。
【0073】
すなわち、アイドルストップ中でない状態で、時刻t21にパーキングブレーキ用操作レバー81が解除操作されて、レバー操作量センサ180がOFFとなった場合(レバー操作量が0に戻った場合)、エンジン10が自動始動すると共に、パーキングブレーキ80の制動力の低減が低減率Fで行われるように電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82のトルクを所定の値に制御し、パーキングブレーキ80の制動力を低減させて、パーキングブレーキ80を解放する。なお、この場合、電磁クラッチ94は締結状態に維持される。
【0074】
一方、アイドルストップ中に、パーキングブレーキ操作レバー81が解除操作された場合、アイドルストップ中でない場合同様、エンジン10が自動始動すると共に、パーキングブレーキ80の制動力の低減が所定の低減率(低減率Aに相当、なお、この低減は後述するが段階的に行うことを含む)で行われるように電動モータ82に供給する電流を制御して、電動モータ82のトルクを所定の値に制御して、パーキングブレーキ80の制動力が低減させられるが、その低減が段階的に行われ、アイドルストップ中での解除のときよりも、完全解除までをゆっくりと行う。しかも、パーキングブレーキ80の制動力がFcにまで低下したら(時刻t22)、一旦、電動モータ82の作動を停止して制動力がFcの状態を維持し、その後、エンジン回転が吹き上がった後上記目標アイドル回転Neoに低下したことを検出したときに(時刻t23)、電動モータ82を再度作動させて、緩やかに制動力を低減させる。これによれば、エンジン10の始動時に急に発生するクリープ力により、車両にショックが発生して、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。なお、この場合、電磁クラッチ94は締結状態に維持される。なお、パーキングブレーキ80の手動解除時は、制動力の低減をレバー操作と同時に開始するようにしたのは、運転者の違和感を防止することを目的としている。
【0075】
これによれば、エンジン10が自動停止された状態でパーキングブレーキ80が手動解除される場合の当該パーキングブレーキ80の制動力の低下速度は、エンジン停止条件が成立せずエンジン10が運転している状態で当該パーキングブレーキ80が手動解除される場合の低下速度よりも緩やかにされているから、エンジン10が運転している状態で手動で当該パーキングブレーキ80が解除される場合においては、ドライバの要求に即して、応答性よく機械式ブレーキが解除されることとなる。一方、エンジン10が自動停止した状態で手動でパーキングブレーキ80が解除される場合においては、エンジン10が運転している状態で解除されるときよりもゆっくりと解除が完了することとなり、この結果、エンジン10の始動完了前にパーキングブレーキ80が解除されるのが抑制され、上り坂でのエンジン自動始動時に、車両が過度に後退するのが防止される。
【0076】
また、本実施の形態によれば、エンジン10が自動停止された状態において油圧式ブレーキのブレーキペダル71の解放動作が検出されたとき、パーキングブレーキ80の制動力が漸減されるように、電動モータ82が制御されるから、エンジン10の自動始動によってクリープ力が急に発生したときにおいても、機械式ブレーキによる制動力が残留し、この結果、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0077】
そして、油圧式ブレーキのブレーキ液配管等の設計変更等を行う必要がなく、エンジン自動停止・始動機能が備えられた車両と、備えられていない車両とでブレーキ液配管等を共通化でき、生産性の向上や、コストの削減等を実現することができる。
【0078】
加えて、機械式ブレーキの制動力の変更を電磁クラッチ94のスリップ状態を制御することで達成することができるようになり、電動モータ82でケーブル84,86,86等を介して変更する場合よりも制御応答性が向上し、ひいては発進応答性が向上することとなる。
【0079】
また、エンジン10が自動停止された状態においてブレーキペダル71の解放動作が検出されたとき、パーキングブレーキ80の制動力が漸減するように、電磁クラッチ94を所定のスリップ状態に制御することから、エンジン10の自動始動によってクリープ力が急に発生しても、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0080】
そして、エンジン10の自動停止時、電磁クラッチ94を締結状態にさせると共に、パーキングブレーキ80の制動力がクリープ力とほぼ対等となるように、電動モータ82が制御されるから、エンジン10の自動始動時にクリープ力が急に生じても、該クリープ力が、該力とほぼ対等の制動力によって相殺され、該クリープ力によるショックの発生が一層抑制されて、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが確実に軽減される。
【0081】
加えて、パーキングブレーキ80の制動力がクリープ力とほぼ対等の値から漸減されることとなるから、引きずり感等を生じさせることなく、車両が滑らかにかつ応答性よく発進することとなる。
【0082】
しかも、パーキングブレーキ80によるクリープ力とほぼ対等の制動力により、上り勾配路において車両が過度に後退するのが防止される。
【0083】
なお、本実施の形態においては、油圧式ブレーキのブレーキペダルの解放速度を、ブレーキ液圧センサ160で検出されたブレーキ液圧の変化速度により検出するようにしたが、ブレーキストロークセンサ170で検出されたブレーキストロークの変化速度により検出するようにしてもよい。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減されるように、電動アクチュエータが制御されるから、エンジンの自動始動によってクリープ力が急に発生しても、車両にショックが発生するのが抑制され、乗員に飛び出し感等の違和感を与えるのが防止される。
【0085】
また、油圧式ブレーキのブレーキ液配管等の設計変更等を行う必要がなく、エンジン自動停止・始動機能が備えられた車両と、備えられていない車両とでブレーキ液配管等を共通化でき、生産性の向上や、コストの削減等を実現することができる。
【0086】
加えて、上記機械式ブレーキと電動アクチュエータとの間にクラッチを備え、制御手段は、上記所定のエンジン停止条件が成立したときに、クラッチを締結状態にさせると共に、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させると共に、その後、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、クラッチを、解放状態を含む所定のスリップ状態に制御するようにしたから、機械式ブレーキの制動力の変更をクラッチのスリップ状態を制御するだけで達成することができるようになり、電動アクチュエータでケーブルを介して変更する場合よりも制御応答性が向上し、ひいては発進応答性が向上することとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るアイドルストップ車両のパワートレイン及びブレーキシステムを示す全体構成図である。
【図2】上記ブレーキシステムのうちパーキングブレーキの駆動部を説明する拡大構成図である。
【図3】上記アイドルストップ車両のシステム構成図である。
【図4】上記アイドルストップ車両に搭載されたアイドルストップコントロールユニットが実行するアイドルストップ制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【図5】上記アイドルストップ車両に搭載されたアイドルストップコントロールユニットが実行するアイドルストップ解除制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである(1/4)。
【図6】同フローチャートである(2/4)。
【図7】同フローチャートである(3/4)。
【図8】同フローチャートである(4/4)。
【図9】路面勾配とアイドルストップ時におけるパーキングブレーキの制動力との関係を示す特性図である。
【図10】ブレーキペダルの解放速度とアイドルストップ解除時におけるパーキングブレーキの制動力の低減率との関係を示す特性図である。
【図11】実施の形態の作用を説明するタイムチャートである。
【図12】ブレーキペダルの解除速度とパーキングブレーキの制動力の低減率との変化を説明するタイムチャートである。
【図13】アイドルストップ中に手動でパーキングブレーキが解除された場合の制動力の低減状態と、アイドルストップしていないときに手動でパーキングブレーキが解除された場合の制動力の低減状態とを説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
1 アイドルストップ車両
10 エンジン
50 スタータモータ
70 油圧式ブレーキシステム
71 ブレーキペダル
80 パーキングブレーキ(機械式ブレーキシステム)
81 操作レバー
82 パーキングブレーキ用電動モータ(電動アクチュエータ)
84 共通ケーブル(ケーブル)
86,86 駆動輪用ケーブル(ケーブル)
94 電磁クラッチ(クラッチ)
100 アイドルストップ用コントロールユニット(エンジン自動停止・始動手段、制御手段)
Claims (5)
- 車両停車時に所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させ、その後、油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときにエンジンを自動的に始動させるエンジン自動停止・始動手段と、電動アクチュエータによりケーブルを介して駆動される機械式ブレーキと、上記電動アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、かつ自動変速機が備えられた機械式ブレーキ付車両の制御装置であって、制御手段は、上記所定のエンジン停止条件が成立したときに、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させると共に、その後、エンジン停止状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、機械式ブレーキの制動力が漸減するように、上記電動アクチュエータを制御することを特徴とする機械式ブレーキ付車両の制御装置。
- 車両停車時に所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させ、その後、油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときにエンジンを自動的に始動させるエンジン自動停止・始動手段と、電動アクチュエータによりケーブルを介して駆動される機械式ブレーキと、上記電動アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられた機械式ブレーキ付車両の制御装置であって、上記機械式ブレーキと電動アクチュエータとの間にクラッチが備えられており、制御手段は、上記所定のエンジン停止条件が成立したときは、クラッチを締結状態にさせると共に、電動アクチュエータを作動させて機械式ブレーキを作動させ、その後、エンジン停止状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたときに、クラッチを、解放状態を含む所定のスリップ状態に制御することを特徴とする機械式ブレーキ付車両の制御装置。
- 自動変速機が備えられており、かつ、制御手段は、エンジンの自動停止時、クラッチを締結状態にさせると共に、機械式ブレーキの制動力がクリープ力とほぼ対等となるように、電動アクチュエータを制御することを特徴とする請求項2に記載の機械式ブレーキ付車両の制御装置。
- 制御手段は、エンジンが自動停止された状態において油圧式ブレーキのペダル解放動作が検出されたとき、その解放速度が大きいほど、機械式ブレーキの制動力の低下を緩やかにすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の機械式ブレーキ付車両の制御装置。
- 機械式ブレーキは手動操作が可能とされていると共に、エンジン自動停止・始動手段は、手動操作により機械式ブレーキが作動された場合は、エンジンを自動停止した状態でブレーキペダルの解放動作が検出されたときのエンジン自動始動を禁止すると共に、手動操作により機械式ブレーキが解除されたときにエンジンを自動始動するように構成されており、所定のエンジン停止条件が成立してエンジンが自動停止された状態で機械式ブレーキが手動で解除される場合の機械式ブレーキの制動力の低下速度は、所定のエンジン停止条件が成立せずエンジンが運転している状態で当該機械式ブレーキが手動で解除される場合の低下速度よりも、小さくされていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の機械式ブレーキ付車両の制御装置。
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