JP2004350604A - 醸造酢用原料及びその製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】副産物の生成が少なく、且つ風味や味質に優れた米ベースの醸造酢の生産を可能にする醸造酢用原料及びその製造法を提供すること。
【解決手段】米粉の水分散液にα−アミラーゼを加えて70〜130℃で加熱処理し、加熱処理によって生じた米成分中の不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着している脂質を除去した液を乾燥して得られる蛋白質0.5〜4.5質量%、脂質0.05〜1.0質量%含有する組成物を醸造酢用の原料として使用すること。
【選択図】なし
【解決手段】米粉の水分散液にα−アミラーゼを加えて70〜130℃で加熱処理し、加熱処理によって生じた米成分中の不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着している脂質を除去した液を乾燥して得られる蛋白質0.5〜4.5質量%、脂質0.05〜1.0質量%含有する組成物を醸造酢用の原料として使用すること。
【選択図】なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】副産物の生成が少なくて風味や味質に優れた醸造酢の生産を可能にする原料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
醸造酢は従来以下のような方法を基本として製造される。
(1)穀物を加熱後、麹や酵素で糖化、アルコール醗酵し、酢酸醗酵後熟成して製品とする、アルコール発酵を行う純粋もの。
(2)穀物を加熱後糖化したものに、アルコールを添加して酢酸醗酵後熟成して製品とする、アルコール発酵を行わないもの。
【0003】
このような方法で生産される醸造酢、特にアルコール醗酵を行う醸造酢は、アルコール醗酵までの工程が煩雑となり、醗酵粕などの副産物が多く出るので、その処理に高額の産業廃棄物処理費がかかるという問題があった。
【0004】
また、一般的な発酵基材として、澱粉を酵素や酸で分解した水飴、粉飴、マルトデキストリンなどが知られているが、これらは精製された澱粉を原料とし、更に精製工程で脱色、脱塩されているため、副産物である粕の発生が少ないという利点はあるが、水溶性蛋白質などのエキス分に乏しく、醸造酢用原料として用いた時に発酵に著しく時間がかかるし、風味や味質に乏しい醸造酢となる問題があった。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、副産物の生成が少なく、且つ風味や味質に優れた米ベースの醸造酢の生産を可能にする醸造酢用原料及びその製造法を提供することである。
【0006】
【発明を解決するための手段】
上記の課題の解決のため、本発明者は鋭意研究の結果、米粉にα−アミラーゼを添加して加熱処理することで蛋白質の一部を不溶化させ、不溶化した蛋白質に脂質を吸着させ、脂質を不溶化した蛋白質と共に除去することによって、醗酵及び風味にすぐれた醸造酢の製造を可能にする特定割合の蛋白質と脂質を含有する醸造酢用の原料が得られることを見出して本発明を完成させた。
【0007】
【発明の作用】
即ち、本発明は米粉の水分散液にα−アミラーゼを加えて70〜130℃で加熱処理し、加熱処理によって生じた米成分中の不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着させた脂質を除去した液を乾燥して得られる蛋白質0.5〜4.5質量%、脂質0.05〜1.0質量%含有する醸造酢用の原料およびその製造法に係わるものである。
【0008】
本発明でいう米粉とは、米をロール挽き、水挽きなどの適当な手段を用いて粉砕されたものを総称する。米粉用の米としてはジャポニカ種、インディカ種、ジャパニカ種などいずれの品種でもよいし、うるち米、もち米などの種類も問わない。またこれらの混合物であってもよい。加えて本発明では、市販の米粉を使用してもよいし、必要に応じて米を粉砕した粉砕品を使用してもよい。なおこの際の米粉粒度は通常100〜300μm程度である。
【0009】
本発明では、玄米を全て、或いは玄米から糠に相当する部分を除去した程度の精米、つまり実質的に澱粉質をほぼ100質量%残した米を粉砕して得られる米粉を原料とする。
【0010】
本発明の醸造酢用原料は、米粉を水に分散させ、α−アミラーゼを加えて加熱することにより、米粉中の澱粉がα−アミラーゼで分解されて蛋白質や脂質がフリーの状態となり、同時に蛋白質の一部が熱変性して脂質を吸着して不溶化することによると推察されるが、不溶化した蛋白質を除去することにより不溶化した蛋白質と不溶化した蛋白質に吸着している脂質が除去される。
【0011】
この際、加熱温度によって不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着される脂質の量が異なるので、所定温度に制御して、醸造酢用原料中の蛋白質が0.5〜4.5質量%、脂質が0.05〜0.10質量%、より好ましくは蛋白質が2.0〜4.0質量%、脂質が0.10〜0.50質量%含まれるようにする。これにより副産物の生成が少なく、風味、味質に優れた醸造酢の生産を可能にする原料が得られる。
【0012】
醸造酢用原料中の蛋白質の含量が4.5質量%を越え、同時に脂質の含量が1.0質量%を越えると、市販の醸造酢と同じ程度の香りや風味を有する醸造酢が得られるが、醗酵粕などの副産物の量が多くなる。逆に醸造酢用原料中の蛋白質の含量が0.5質量%未満では、アルコール発酵及び酢酸醗酵の時間が長くなって非効率的であり、さらに風味が弱くてたよりない醸造酢となる。
【0013】
本発明では、先ず米粉を水に分散して20〜40質量%の懸濁液とし、炭酸カルシウム及び/又は炭酸ナトリウムを加えて、懸濁液のpHを5〜7に調整する。
【0014】
これにα−アミラーゼ、好ましくはBacillus licheniformis,Bacillus amyloliquefaciensやBacillus sublilisなどに由来する耐熱性のα−アミラーゼを添加し、適当な加熱装置、例えば加熱加圧蒸煮釜やジェットクッカーなどを用いて加熱温度を70〜130℃、より好ましくは80〜100℃で行い、米成分内の蛋白質の一部を不溶化させ、脂質を該蛋白質に吸着させ、同時に澱粉質を10〜300mPa・s(30%、30℃)程度の粘度になるように液化して、この不溶化蛋白と脂質を除去しやすくする。
【0015】
加熱温度が70℃未満では澱粉を液化する効果、および蛋白質を不溶化する効果が弱すぎて蛋白質や脂質部含量の多すぎる原料となる。130℃を超えると蛋白質を不溶化させる作用が強くて、生産時の醗酵粕など副産物の生成は少なくすることはできても、醸造酢の風味や味質に関与する水溶性蛋白質の含量が少なくなって風味の良好な醸造酢の製造を困難にする。
【0016】
尚、加熱温度が高くなると、醸造酢の発酵速度や、風味、味質に影響を与える蛋白質の少ない原料となる傾向がある。そのような場合、本発明ではα−アミラーゼに先立ってAspergillus oryzaeやBacillus nigerなどに由来するプロテアーゼによる前処理を施すと、加熱温度が高くなっても十分な蛋白質を含有した醸造酢用原料とすることができる。この前処理自体は常法に従って行えば良い。
【0017】
加熱の終了した反応液は、濾過して固液分離を行なう。濾過の際に珪藻土、セライトなどの濾過助剤を使うと、より清澄な液を得ることはできるが、米の風味や味質に関与する有効な成分をも吸着してしまうので、好ましくは濾過助剤を用いずに濾過する。濾過方法として、1〜100μmの細孔の濾布を使用し、該濾布を袋状にする、或いはプレス濾過機に貼り付けて反応液を濾過することによって、脂質を吸着した不溶化蛋白質を除去することができる。
【0018】
濾過によって分離された液は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの手段を用いて乾燥して粉末化すると、蛋白質0.5〜4.5質量%、脂質0.05〜1.0質量%、好ましくは蛋白質2.0〜4.0質量%、脂質0.10〜0.5質量%含有する醸造酢用原料となる。
【0019】
このようにして得られた醸造酢用原料は、醸造酢の製造に際し、米を全面的に置換する、或いは米と併用することを可能とする新規な醸造酢用原料となる。
即ち、本発明の醸造酢用原料を溶解後、米麹及び/又はグルコアミラーゼ活性を有する酵素剤を添加して糖化した後、アルコール発酵を行うか、もしくはアルコールを添加した後、酢酸発酵を実施する。その際、該発酵原料の一部を米で代替することもできる。
【0020】
また、本発明の醸造酢用原料を用いることにより、穀物原料のα化工程が短略化され、発酵後の粕がほとんどなく濾過などの製造工程が大幅に短縮され、加えて得られた醸造酢が製造後の所謂「おり」もおこらないし、風味や味質が改善される。
【0021】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をより詳細に説明するが、実施例において部とあるのは質量部、%は質量%で示す。
【0022】
【実施例1】
米粉1kgと水2Lを攪拌機付き加圧蒸煮釜に投入して米粉を分散して懸濁液とし、これに炭酸カルシウムを添加して懸濁液のpHを6.0に調節した。次いで「ターマミール120L」(商品名、ノボ社製の耐熱性α−アミラーゼ)を1ml添加し、懸濁液に蒸気を直接投入し、表1に示す所定の温度まで加熱し、この温度で10分間保持した。次いで60〜80℃に冷却して、10μmの細孔を持った濾布を貼り付けたフィルタープレスで濾過後,噴霧乾燥により粉末化して醗酵酢用原料とした。
【0023】
表1に未処理の米粉、その米粉を用いて加熱処理した醸造酢用原料、及びPDX#2の蛋白質含量と脂質含量を記載したが、その際、蛋白質の含量はミクロケルダール法、脂質含量はエーテル抽出法を用いて測定した。尚、PDX#2はパインデックス#2(商品名:松谷化学工業社製で精製澱粉をα−アミラーゼで分解した液を活性炭で脱色し、イオン交換樹脂で精製後噴霧乾燥したマルトデキストリン)を略記したものである。
【0024】
【表1】
【0025】
表1の醸造酢用原料を用いて以下に示す方法で醸造酢を製造した。即ち表1に示した原材料1kgに水5Lを加えて溶解し、「グルクザイムNL4.2」(商品名、アマノエンザイム社製のグルコアミラーゼ)2mlを添加して、60℃で10時間反応させた後、生酵母5gを添加して30℃でアルコール濃度約12%になるまでアルコール発酵を行った。得られたアルコール溶液3.8Lに活性酢酸菌を含む種酢0.5L及び水5.7Lを加え、30℃にて酸度が約4.5%になるまで静置酢酸発酵を行なった。発酵液は珪藻土を加えて5ミクロンメンブレンにて濾過し、85℃で殺菌後70℃にて容器に充填し、醸造酢を試作した。
【0026】
得られた醸造酢を次の基準で評価し、表2に示した。
醗酵粕の量
◎ : 非常に少ない
○: 少ない
△ : やや多い
× : 多い
【0027】
酢の風味(市販の醸造酢5点の平均的な風味を対照とした。)
◎ : 市販の醸造酢とほぼ同じような香りや旨味があって、且つすっきり感が強い。
○: 市販の醸造酢とほぼ同じような香りや旨味がある
△ : 市販の醸造酢とに比べて香りや旨味がやや弱い
× : 市販の醸造酢に比べて香りや旨味が弱い
【0028】
【表2】
【0029】
【実施例2】
ミキサーを用いてジャポニカ種うるち米1kg湿式粉砕し、水を加えて濃度30質量%の懸濁液を調製した。この懸濁液を炭酸カルシウムでpH6.0に調節し、実施例1で使用したα−アミラーゼを1.5ml添加し、該懸濁液を少量ずつ蒸気と混合して品温95℃前後を保つようにしながら、攪拌機付き蒸煮タンクに連続的に投入した。全量投入後、適宜蒸煮タンクのジャケットに蒸気を入れ品温95±1℃を保持した。この温度を10分間保持して米成分中の蛋白質を不溶化させるとともに低粘度の醸造酢用原料が得られる澱粉質の液化を行った。次いでジャケットに水を入れて品温を80℃まで冷却し、反応液を10μmの細孔を持った袋型濾布を用いて油脂を吸着した不溶化蛋白質を分離し、抽出液を凍結乾燥により粉末化して醸造酢用原料とした。得られた醸造酢用原料は、蛋白質2.90質量%、脂質0.15質量%を含有し、粘度は30mPa・s(30質量%、30℃)を示していた。この醸造酢用原料を用いて、実施例1に準じて醸造酢を製造したところ、醗酵時の醗酵粕の量が少なく、風味、味質に優れた醸造酢が得られた。
【0030】
【実施例3】
実施例1と同様に米粉の懸濁液を調製し、これに「プロテアーゼAアマノ」(商品名、アマノエンザイム社製のプロテアーゼ)を10g添加して1時間攪拌した。次いで実施例1で使用したα−アミラーゼを1ml添加し、130℃まで加熱して10分間その温度を保持した。次いで80℃に冷却して、20μmの細孔の濾布を貼り付けたフィルタープレスで濾過後、噴霧乾燥により粉末化した。得られた醸造酢用原料は、蛋白質3・10%、脂質0.13質量%を含有し、粘度は28mPa・s(30質量%、30℃)を示していた。この醸造酢用原料を用いて、実施例1に準じて醸造酢を製造したところ、醗酵時の醗酵粕の量が少なく、風味、味質に優れた醸造酢が得られた。
【0031】
【実施例4】
実施例1の試料No.7の醸造酢用原料500gにウルチ米500gをアルファ化しもの(蒸し米)を用い、実施例1に準じて醸造酢を製造した。得られた醸造酢は、製造時に発生する米粉を原料とした場合の半分程度であり、風味、味質ともに良好であった。
【産業上の利用分野】副産物の生成が少なくて風味や味質に優れた醸造酢の生産を可能にする原料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
醸造酢は従来以下のような方法を基本として製造される。
(1)穀物を加熱後、麹や酵素で糖化、アルコール醗酵し、酢酸醗酵後熟成して製品とする、アルコール発酵を行う純粋もの。
(2)穀物を加熱後糖化したものに、アルコールを添加して酢酸醗酵後熟成して製品とする、アルコール発酵を行わないもの。
【0003】
このような方法で生産される醸造酢、特にアルコール醗酵を行う醸造酢は、アルコール醗酵までの工程が煩雑となり、醗酵粕などの副産物が多く出るので、その処理に高額の産業廃棄物処理費がかかるという問題があった。
【0004】
また、一般的な発酵基材として、澱粉を酵素や酸で分解した水飴、粉飴、マルトデキストリンなどが知られているが、これらは精製された澱粉を原料とし、更に精製工程で脱色、脱塩されているため、副産物である粕の発生が少ないという利点はあるが、水溶性蛋白質などのエキス分に乏しく、醸造酢用原料として用いた時に発酵に著しく時間がかかるし、風味や味質に乏しい醸造酢となる問題があった。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、副産物の生成が少なく、且つ風味や味質に優れた米ベースの醸造酢の生産を可能にする醸造酢用原料及びその製造法を提供することである。
【0006】
【発明を解決するための手段】
上記の課題の解決のため、本発明者は鋭意研究の結果、米粉にα−アミラーゼを添加して加熱処理することで蛋白質の一部を不溶化させ、不溶化した蛋白質に脂質を吸着させ、脂質を不溶化した蛋白質と共に除去することによって、醗酵及び風味にすぐれた醸造酢の製造を可能にする特定割合の蛋白質と脂質を含有する醸造酢用の原料が得られることを見出して本発明を完成させた。
【0007】
【発明の作用】
即ち、本発明は米粉の水分散液にα−アミラーゼを加えて70〜130℃で加熱処理し、加熱処理によって生じた米成分中の不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着させた脂質を除去した液を乾燥して得られる蛋白質0.5〜4.5質量%、脂質0.05〜1.0質量%含有する醸造酢用の原料およびその製造法に係わるものである。
【0008】
本発明でいう米粉とは、米をロール挽き、水挽きなどの適当な手段を用いて粉砕されたものを総称する。米粉用の米としてはジャポニカ種、インディカ種、ジャパニカ種などいずれの品種でもよいし、うるち米、もち米などの種類も問わない。またこれらの混合物であってもよい。加えて本発明では、市販の米粉を使用してもよいし、必要に応じて米を粉砕した粉砕品を使用してもよい。なおこの際の米粉粒度は通常100〜300μm程度である。
【0009】
本発明では、玄米を全て、或いは玄米から糠に相当する部分を除去した程度の精米、つまり実質的に澱粉質をほぼ100質量%残した米を粉砕して得られる米粉を原料とする。
【0010】
本発明の醸造酢用原料は、米粉を水に分散させ、α−アミラーゼを加えて加熱することにより、米粉中の澱粉がα−アミラーゼで分解されて蛋白質や脂質がフリーの状態となり、同時に蛋白質の一部が熱変性して脂質を吸着して不溶化することによると推察されるが、不溶化した蛋白質を除去することにより不溶化した蛋白質と不溶化した蛋白質に吸着している脂質が除去される。
【0011】
この際、加熱温度によって不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着される脂質の量が異なるので、所定温度に制御して、醸造酢用原料中の蛋白質が0.5〜4.5質量%、脂質が0.05〜0.10質量%、より好ましくは蛋白質が2.0〜4.0質量%、脂質が0.10〜0.50質量%含まれるようにする。これにより副産物の生成が少なく、風味、味質に優れた醸造酢の生産を可能にする原料が得られる。
【0012】
醸造酢用原料中の蛋白質の含量が4.5質量%を越え、同時に脂質の含量が1.0質量%を越えると、市販の醸造酢と同じ程度の香りや風味を有する醸造酢が得られるが、醗酵粕などの副産物の量が多くなる。逆に醸造酢用原料中の蛋白質の含量が0.5質量%未満では、アルコール発酵及び酢酸醗酵の時間が長くなって非効率的であり、さらに風味が弱くてたよりない醸造酢となる。
【0013】
本発明では、先ず米粉を水に分散して20〜40質量%の懸濁液とし、炭酸カルシウム及び/又は炭酸ナトリウムを加えて、懸濁液のpHを5〜7に調整する。
【0014】
これにα−アミラーゼ、好ましくはBacillus licheniformis,Bacillus amyloliquefaciensやBacillus sublilisなどに由来する耐熱性のα−アミラーゼを添加し、適当な加熱装置、例えば加熱加圧蒸煮釜やジェットクッカーなどを用いて加熱温度を70〜130℃、より好ましくは80〜100℃で行い、米成分内の蛋白質の一部を不溶化させ、脂質を該蛋白質に吸着させ、同時に澱粉質を10〜300mPa・s(30%、30℃)程度の粘度になるように液化して、この不溶化蛋白と脂質を除去しやすくする。
【0015】
加熱温度が70℃未満では澱粉を液化する効果、および蛋白質を不溶化する効果が弱すぎて蛋白質や脂質部含量の多すぎる原料となる。130℃を超えると蛋白質を不溶化させる作用が強くて、生産時の醗酵粕など副産物の生成は少なくすることはできても、醸造酢の風味や味質に関与する水溶性蛋白質の含量が少なくなって風味の良好な醸造酢の製造を困難にする。
【0016】
尚、加熱温度が高くなると、醸造酢の発酵速度や、風味、味質に影響を与える蛋白質の少ない原料となる傾向がある。そのような場合、本発明ではα−アミラーゼに先立ってAspergillus oryzaeやBacillus nigerなどに由来するプロテアーゼによる前処理を施すと、加熱温度が高くなっても十分な蛋白質を含有した醸造酢用原料とすることができる。この前処理自体は常法に従って行えば良い。
【0017】
加熱の終了した反応液は、濾過して固液分離を行なう。濾過の際に珪藻土、セライトなどの濾過助剤を使うと、より清澄な液を得ることはできるが、米の風味や味質に関与する有効な成分をも吸着してしまうので、好ましくは濾過助剤を用いずに濾過する。濾過方法として、1〜100μmの細孔の濾布を使用し、該濾布を袋状にする、或いはプレス濾過機に貼り付けて反応液を濾過することによって、脂質を吸着した不溶化蛋白質を除去することができる。
【0018】
濾過によって分離された液は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの手段を用いて乾燥して粉末化すると、蛋白質0.5〜4.5質量%、脂質0.05〜1.0質量%、好ましくは蛋白質2.0〜4.0質量%、脂質0.10〜0.5質量%含有する醸造酢用原料となる。
【0019】
このようにして得られた醸造酢用原料は、醸造酢の製造に際し、米を全面的に置換する、或いは米と併用することを可能とする新規な醸造酢用原料となる。
即ち、本発明の醸造酢用原料を溶解後、米麹及び/又はグルコアミラーゼ活性を有する酵素剤を添加して糖化した後、アルコール発酵を行うか、もしくはアルコールを添加した後、酢酸発酵を実施する。その際、該発酵原料の一部を米で代替することもできる。
【0020】
また、本発明の醸造酢用原料を用いることにより、穀物原料のα化工程が短略化され、発酵後の粕がほとんどなく濾過などの製造工程が大幅に短縮され、加えて得られた醸造酢が製造後の所謂「おり」もおこらないし、風味や味質が改善される。
【0021】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をより詳細に説明するが、実施例において部とあるのは質量部、%は質量%で示す。
【0022】
【実施例1】
米粉1kgと水2Lを攪拌機付き加圧蒸煮釜に投入して米粉を分散して懸濁液とし、これに炭酸カルシウムを添加して懸濁液のpHを6.0に調節した。次いで「ターマミール120L」(商品名、ノボ社製の耐熱性α−アミラーゼ)を1ml添加し、懸濁液に蒸気を直接投入し、表1に示す所定の温度まで加熱し、この温度で10分間保持した。次いで60〜80℃に冷却して、10μmの細孔を持った濾布を貼り付けたフィルタープレスで濾過後,噴霧乾燥により粉末化して醗酵酢用原料とした。
【0023】
表1に未処理の米粉、その米粉を用いて加熱処理した醸造酢用原料、及びPDX#2の蛋白質含量と脂質含量を記載したが、その際、蛋白質の含量はミクロケルダール法、脂質含量はエーテル抽出法を用いて測定した。尚、PDX#2はパインデックス#2(商品名:松谷化学工業社製で精製澱粉をα−アミラーゼで分解した液を活性炭で脱色し、イオン交換樹脂で精製後噴霧乾燥したマルトデキストリン)を略記したものである。
【0024】
【表1】
【0025】
表1の醸造酢用原料を用いて以下に示す方法で醸造酢を製造した。即ち表1に示した原材料1kgに水5Lを加えて溶解し、「グルクザイムNL4.2」(商品名、アマノエンザイム社製のグルコアミラーゼ)2mlを添加して、60℃で10時間反応させた後、生酵母5gを添加して30℃でアルコール濃度約12%になるまでアルコール発酵を行った。得られたアルコール溶液3.8Lに活性酢酸菌を含む種酢0.5L及び水5.7Lを加え、30℃にて酸度が約4.5%になるまで静置酢酸発酵を行なった。発酵液は珪藻土を加えて5ミクロンメンブレンにて濾過し、85℃で殺菌後70℃にて容器に充填し、醸造酢を試作した。
【0026】
得られた醸造酢を次の基準で評価し、表2に示した。
醗酵粕の量
◎ : 非常に少ない
○: 少ない
△ : やや多い
× : 多い
【0027】
酢の風味(市販の醸造酢5点の平均的な風味を対照とした。)
◎ : 市販の醸造酢とほぼ同じような香りや旨味があって、且つすっきり感が強い。
○: 市販の醸造酢とほぼ同じような香りや旨味がある
△ : 市販の醸造酢とに比べて香りや旨味がやや弱い
× : 市販の醸造酢に比べて香りや旨味が弱い
【0028】
【表2】
【0029】
【実施例2】
ミキサーを用いてジャポニカ種うるち米1kg湿式粉砕し、水を加えて濃度30質量%の懸濁液を調製した。この懸濁液を炭酸カルシウムでpH6.0に調節し、実施例1で使用したα−アミラーゼを1.5ml添加し、該懸濁液を少量ずつ蒸気と混合して品温95℃前後を保つようにしながら、攪拌機付き蒸煮タンクに連続的に投入した。全量投入後、適宜蒸煮タンクのジャケットに蒸気を入れ品温95±1℃を保持した。この温度を10分間保持して米成分中の蛋白質を不溶化させるとともに低粘度の醸造酢用原料が得られる澱粉質の液化を行った。次いでジャケットに水を入れて品温を80℃まで冷却し、反応液を10μmの細孔を持った袋型濾布を用いて油脂を吸着した不溶化蛋白質を分離し、抽出液を凍結乾燥により粉末化して醸造酢用原料とした。得られた醸造酢用原料は、蛋白質2.90質量%、脂質0.15質量%を含有し、粘度は30mPa・s(30質量%、30℃)を示していた。この醸造酢用原料を用いて、実施例1に準じて醸造酢を製造したところ、醗酵時の醗酵粕の量が少なく、風味、味質に優れた醸造酢が得られた。
【0030】
【実施例3】
実施例1と同様に米粉の懸濁液を調製し、これに「プロテアーゼAアマノ」(商品名、アマノエンザイム社製のプロテアーゼ)を10g添加して1時間攪拌した。次いで実施例1で使用したα−アミラーゼを1ml添加し、130℃まで加熱して10分間その温度を保持した。次いで80℃に冷却して、20μmの細孔の濾布を貼り付けたフィルタープレスで濾過後、噴霧乾燥により粉末化した。得られた醸造酢用原料は、蛋白質3・10%、脂質0.13質量%を含有し、粘度は28mPa・s(30質量%、30℃)を示していた。この醸造酢用原料を用いて、実施例1に準じて醸造酢を製造したところ、醗酵時の醗酵粕の量が少なく、風味、味質に優れた醸造酢が得られた。
【0031】
【実施例4】
実施例1の試料No.7の醸造酢用原料500gにウルチ米500gをアルファ化しもの(蒸し米)を用い、実施例1に準じて醸造酢を製造した。得られた醸造酢は、製造時に発生する米粉を原料とした場合の半分程度であり、風味、味質ともに良好であった。
Claims (4)
- 米粉の水分散液にα−アミラーゼを加えて70〜130℃で加熱処理し、加熱処理によって生じた米成分中の不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着している脂質を除去した液を乾燥して得られる蛋白質0.5〜4.5質量%、脂質0.05〜1.0質量%含有する醸造酢用原料。
- 米粉の水分散液にα−アミラーゼを加えて70〜130℃で加熱処理し、加熱処理によって生じた米成分中の不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着している脂質を除去した液を乾燥することを特徴とする醸造酢用原料の製造方法。
- α−アミラーゼを加えて加熱処理する温度が80〜100℃で、濾過助剤を用いずに濾過して不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着している脂質を除去した液を乾燥して得られる蛋白質2.0〜4.0質量%,脂質0.10〜0.50質量%含有する請求項1に記載の醸造酢用原料。
- α−アミラーゼを加えて加熱処理する温度が80〜100℃で、濾過助剤を用いずに濾過して不溶化蛋白質と不溶化蛋白質に吸着している脂質を除去した液を乾燥することを特徴とする請求項2に記載の醸造酢用原料の製造方法。
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JP2010130990A (ja) * | 2008-12-08 | 2010-06-17 | Mitsukan Group Honsha:Kk | コクが増強された食酢とその製造方法 |
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2003
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