JP4032382B2 - 麦茶飲料および麦茶抽出液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素分解を行うことにより麦茶本来の旨み、香ばしさを感じることができる麦茶飲料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
麦茶は、加熱焙焼した大麦を温水により抽出処理を行い、独特の香ばしい抽出液を嗜好するものである。従来より、香ばしさ、旨み、甘みがより抽出されるように、焙煎条件や原料を変更することが行われている。
【0003】
麦茶の原料となる大麦の成分は5訂食品成分表によれば、炭水化物が約70%存在し、炭水化物のほとんど全てが澱粉である。従って麦茶を作る目的で定法により抽出するとしかるべき量の澱粉が溶液中に浸出してくる。この澱粉質は風味として口当たりの丸み、やわらかさ、のように評価される因子であるが、甘み旨みとして捉えられるものではない。
【0004】
そこで、特公昭63−14942号においては、麦茶の香ばしさ増強技術として、大麦の焙煎時にアミノ酸類を含浸した後に焙煎することでメイラード反応を促進し香味を高める方法が提案されている。しかしながら、この方法においては、アミノ酸を添加し半ば強制的にメイラード反応せしめることで香ばしさ増強を狙っていると思われるが、添加物を加えること、焙煎後の異味の残存等、自然に麦茶の風味を増強するという観点からは好ましくない。
【0005】
また、特開平6−197744号公報には、麦茶の甘み増強技術として、大麦芽を所定割合混合したものを抽出した麦茶飲料は、甘味感の強いと評価されるものであることが報告されており、また、特許第2931757号においては、所定の方法で水分含量を管理した麦芽を焙煎処理して抽出、麦茶飲料にする製造方法について紹介されており、麦芽本来の甘味旨みが増強されていると評価しているものである。この方法では、麦芽を利用することにより、麦芽中に存在する澱粉質が同じく存在する糖化酵素によって分解され、生成した糖分が含まれているため、抽出液に浸出し甘みを発現することを狙っていると思われる。しかしこれは、甘みとして評価される程度に乏しく、また、麦芽は大麦に比較し苦み等、麦茶本来の風味を損なう成分も浸出するため好ましくない。
【0006】
また、麦茶の旨み増強技術として、特公平1−25554号には、水浸漬、蒸煮により大麦中の澱粉質をα化した後、麹菌発酵させ蛋白質のアミノ酸化、澱粉質の糖化を図り、焙煎することでコクと甘みのある麦茶を提供すると紹介されている。この方法では、大麦中の澱粉質、蛋白質を麹菌により発酵し、糖分、アミノ酸に変化せしめてから焙煎することで、コクと甘みの発現を狙っている。しかしα化、発酵、焙煎管理等煩雑な作業工程が多く、その管理も困難と想定されることから実用的に望ましくない。
【0007】
一方、抽出した液に酵素処理を施す技術は、特許2520287号等に記載されており、これは麦茶抽出液の保存時の混濁・沈殿を防止することを目的として紹介されている。混濁・沈殿は抽出液に浸出している澱粉質によるもので、酵素処理により低分子化することで解決しているが、この手法により低分子化した澱粉質は、甘み・旨みを発現するものとは程遠い。
【0008】
また、特公昭46−37231号では、甘藷やトウモロコシ由来の澱粉質を原料として、酵素処理によりフラクトースを生成せしめ、さらに工業的に精製することで、フラクトース含有甘味料を製造する方法が紹介されている。この方法では、酵素を用いて甘みを生成しているが、これは甘味料を製造することを目的としたものであり、本報の目的とは全く異なるものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、甘み、旨みを増強することにより、麦本来の香ばしさがバランス良く調和された麦茶の製造方法およびこの麦茶抽出液を用いた麦茶飲料を提供することを主目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、麦茶飲料の全重量中に、グルコースが0.141重量%〜0.237重量%の範囲内で含有され、さらにフラクトースが0.015重量%〜0.105重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする麦茶飲料を提供する。
【0011】
本発明は、麦茶飲料の全量中に、グルコースおよびフラクトースが上記範囲内で含有されていることから、甘みがあり、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料とすることが可能となるのである。
【0012】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記グルコースおよび上記フラクトースが、原料である麦由来のグルコースおよびフラクトースであることが好ましい。原料である麦由来のグルコースおよびフラクトースを含有することにより、麦茶全体の甘み、香ばしさ、旨みに一体感のある麦茶飲料とすることができるからである。
【0013】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、ブリックス値が、0.3〜2.0の範囲内であることが好ましい。上記範囲よりブリックス値が低い場合は、麦茶飲料としての香り、味が薄く、上記範囲よりブリックス値が高い場合には、麦茶飲料としての香り、味が濃く、好ましくないからである。
【0014】
本発明は、請求項4に記載するように、焙煎された麦と水とを用いて抽出処理を行う抽出工程と、上記抽出工程において抽出された抽出液をグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解する酵素分解処理工程とを有する麦茶抽出液の製造方法により得られた麦茶抽出液を用いて麦茶飲料を製造する麦茶飲料の製造方法であって、得られる麦茶飲料の全重量中に、グルコースが0.141重量%〜0.237重量%の範囲内で含有され、さらにフラクトースが0.015重量%〜0.105重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする麦茶飲料の製造方法を提供する。
【0015】
本発明は、上記の抽出液中の澱粉質をグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解することにより、抽出液中にグルコースおよびフラクトースが生成する。このような本発明で得られる麦茶抽出液を用いることにより、甘みがあり、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料とすることが可能となるのである。
本発明はまた、請求項5に記載するように、焙煎された麦と水とを用いて抽出処理を行う抽出工程と、上記抽出工程において抽出された抽出液をグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解する酵素分解処理工程とを有する麦茶抽出液の製造方法により得られた麦茶抽出液と、他の製造方法により製造された麦茶抽出液とからなる混合液を用いて麦茶飲料を製造する麦茶飲料の製造方法であって、得られる麦茶飲料の全重量中に、グルコースが0.141重量%〜0.237重量%の範囲内で含有され、さらにフラクトースが0.015重量%〜0.105重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする麦茶飲料の製造方法を提供する。
【0016】
上記請求項4または請求項5に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記焙煎された麦の焙煎度L値が、30〜50の範囲内であることが好ましい。上述した範囲内で焙煎を行うことにより、抽出時に澱粉質を効果的に得ることができるため、酵素分解処理により麦茶抽出液中にグルコースおよびフラクトースを効果的に生成することができる。これより、麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料とすることが可能となるからである。
【0017】
上記請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項7に記載するように、前記焙煎された麦の焙煎時の温度が100℃〜700℃の範囲内であり、焙煎時間が1分〜60分の範囲内であることが好ましい。上述した条件下で焙煎を行うことにより、この場合も抽出時に澱粉質を効果的に得ることができ、麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料とすることが可能となるからである。
【0018】
上記請求項4から請求項7までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項8に記載するように、上記麦が、六条大麦または六条裸麦であることが好ましい。六条大麦または六条裸麦には、他の種類の麦と比較してたんぱく質が多く含まれるため、たんぱく質と澱粉質の反応によって、焙煎後に香ばしさを発生させる物質である、ピラジン類が多く生成されるためである。これによって、より香ばしさを感じることができる麦茶飲料を得ることができる麦茶抽出液を得ることが可能となるからである。
【0019】
上記請求項4から請求項8までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項9に記載するように、上記酵素分解処理工程において、まずグルコアミラーゼにより澱粉を酵素分解してグルコースを調製するグルコース調製工程を行い、次いで得られたグルコースをグルコースイソメラーゼにより異性化してフラクトースを調製するフラクトース調製工程を行うことが好ましい。上記酵素分解処理工程において、第一段階としてグルコアミラーゼにより澱粉の酵素分解を行うことにより高濃度のグルコース調整液が得られるため、フラクトース調整工程が効率的に短時間で行うことができるからである。
【0020】
上記請求項4から請求項9までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項10に記載するように、前記酵素分解処理工程におけるグルコアミラーゼの添加時のpHが3.0〜6.0の範囲内、グルコースイソメラーゼの添加時のpHが6.5〜9.0の範囲内であり、かつ温度が50℃〜65℃の範囲内であることが好ましい。上述した範囲で酵素分解処理を行うことにより、酵素分解処理が効果的に行われるため、短時間で麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料とすることができる麦茶抽出液を得ることが可能となるからである。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、麦茶飲料、麦茶抽出液の製造方法、および麦茶飲料の製造方法を含むものである。以下、これらについて説明する。
【0024】
A.麦茶飲料
本発明は、麦茶飲料の全重量中に、グルコースおよびフラクトースを所定の重量の範囲内で含有されていることを特徴とする麦茶飲料である。
【0025】
本発明の麦茶飲料は、グルコースおよびフラクトースが所定の範囲内で含有されていることによって、甘みを感じることのできる麦茶飲料とすることが可能であり、このグルコースおよびフラクトースが共存することによる甘みにより、麦茶飲料の旨み、および麦本来の香ばしさを引き出すことを可能とすることができる。
【0026】
本発明においては、麦茶飲料中のグルコースの含有量が、0.09重量%〜0.9重量%、中でも0.13重量%〜0.26重量%、特に0.18重量%〜0.22重量%の範囲内であることが好ましい。また、麦茶飲料中のフラクトースの含有量が0.010量%〜0.4重量%、中でも0.015重量%〜0.110重量%、特に0.030重量%〜0.080重量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内より少ない場合は、甘みが少ないため、麦茶飲料の旨み、および麦本来の香ばしさを引き出す効果を発揮することができず、一方上記範囲より多く含有されると、麦茶飲料の甘みが増加するため、麦茶飲料として好ましくないからである。
【0027】
また、グルコースとフラクトースの含有量の重量%の比率として、グルコースの含有量を1としたときに、フラクトースの含有量が0.05重量%〜0.8重量%、好ましくは0.18重量%〜0.39重量%の範囲内であることが好ましい。グルコースおよびフラクトースの含有量の比が上記の範囲内であることにより、麦茶飲料の旨み、および麦本来の香ばしさを引き出す効果をより発揮することができるからである。
【0028】
本発明においては、グルコースおよびフラクトースは原料である麦由来のものであることが好ましい。麦由来のグルコースおよびフラクトースを含有することにより、麦茶全体の味の甘み、香ばしさ、旨みに一体感のある麦茶飲料とすることができるからである。
【0029】
ここで、麦由来のグルコースとは、麦茶飲料の原料である麦に含まれる澱粉を、グルコアミラーゼを用いて酵素分解を行うことにより得ることが可能であり、また麦由来のフラクトースとは、上記のグルコース調整工程により得られたグルコースを、グルコースイソメラーゼを用いて異性化を行うことにより、得ることが可能である。このような酵素分解処理に関しては、後で詳細に説明する。
【0030】
本発明における麦茶飲料とは、特にブリックス値が0.3〜2.0、中でも0.5〜1.5、特に0.7〜1.3の範囲内とすることが好ましい。通常、ブリックス値とは、こくをあらわす指標として使用されるものであり、上記範囲よりブリックス値が低い場合には、麦茶飲料としての旨みやこくが極めて希薄な麦茶飲料となってしまい、商品価値として問題が生じてしまう。一方、上記範囲よりブリックス値が高い場合には、麦茶飲料としての香り、味が濃く、バランスの悪い麦茶飲料となり、好ましくないからである。なお、本発明におけるブリックス値は、屈折率計で測定した値を用いることとする。
【0031】
B.麦茶抽出液の製造方法
本発明の麦茶抽出液の製造方法は、焙煎された麦と水とを用いて抽出処理を行う抽出工程と、前記抽出工程において抽出された抽出液をグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解する酵素分解処理工程とを有することを特徴とするものである。
【0032】
本発明においては、原料となる麦に含有される澱粉質を、酵素分解処理工程において、グルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解し、抽出液中にグルコースおよびフラクトースを生成することが可能である。したがって、抽出液中にグルコースおよびフラクトースを含有することにより、得られた麦茶抽出液を用いて、麦茶飲料を製造した際、従来の麦茶飲料と比較して甘みがあり、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさ、旨みを感じることのできる麦茶飲料とすることを可能とすることができる。
【0033】
本発明の麦茶抽出液の製造方法は、上記のように抽出を行う抽出工程、抽出液の酵素分解処理を行う酵素分解処理工程とを有するものである。以下、これらについて詳細に説明する。
【0034】
1.抽出工程
本発明における抽出工程は、焙煎された麦と水とを用いて抽出処理を行うことを特徴とするものである。
【0035】
(1)原材料
a.焙煎された麦
本発明において用いられる麦は、一般に食品業界において大麦と称される麦であれば用いることが可能であり、特にその産地、種類、形態等は限定されるものではない。具体的には、六条大麦、二条大麦、六条裸麦、二条裸麦、六条麦芽、二条麦芽、精麦(皮をむく、磨く加工を施したもの)六条大麦、精麦二条大麦などを挙げることができる。産地としては、国内産、外国産(カナダ、オーストラリア等)が知られている。また、はと麦を用いることが可能であり、特にその産地、種類、形態等は限定されるものではない。
【0036】
本発明においては、中でも六条大麦もしくは六条裸麦を用いることが好ましい。一般的には、大麦の成分は炭水化物が約70%存在し、その炭水化物の大部分が澱粉である。炭水化物以外の成分として、たんぱく質等の成分があるが、六条大麦または六条裸麦には、他の種類の麦と比較してこのたんぱく質成分が比較的多く含まれる。このことにより、焙煎時にたんぱく質と澱粉質の反応が生じ、香ばしさを発生させる物質であるピラジン類が多く生成される。これによって、焙煎により香ばしさが増強され、より香ばしさを感じることができる麦茶飲料を得ることができる麦茶抽出液を得ることが可能となるからである。
【0037】
本発明において、抽出時の麦の形態としては、ホール(丸粒)であることが好ましい。引き割は通常丸粒の状態で所定の焙煎を施した後に粉砕機にかけて所定粒度分布に管理する。この引き割の状態で抽出した方が抽出効率は良く、同時に澱粉成分の溶出は大きいが、この澱粉成分の多くは抽出液中で不溶性の状態のものとして多く存在するため、以降の酵素処理に効率的に利用されにくいとされる。すなわち、引き割の状態で抽出した澱粉成分は、酵素処理に利用されにくく、不溶性の沈殿しやすい状態で以降の飲料製品まで残ることになり、製品の保存におけるオリ・沈殿につながり好ましくない。一方、ホールの場合の抽出効率は引き割に比較して悪いが、水溶性の澱粉の溶出割合が比較的多く不溶性の澱粉成分が少ないために、工業的な処理(以降の濾過等清澄化)が楽で、連続生産における効率性、ランニングコスト低減につながり、麦茶エキス、麦茶飲料を製造する際の総合的な生産性の観点から選択される形態である。
【0038】
このような麦の焙煎方法として、一般的には熱風焙煎、砂炒焙煎、遠赤外焙煎等がある。本発明においては、特にその焙煎方法は限定されるものではないが、熱風焙煎とすると熱伝導効率が良く、表面から中心まで均一に焼けるため、より香ばしさを増強するといった面から好ましい。
【0039】
本発明においては、焙煎された麦の焙煎度L値が30〜50の範囲内特に35〜45の範囲内であることが好ましい。ここで、本発明でいう焙煎度L値とは、対象物を卓上の簡易粉砕ミル(例えばカリタ製ミル)により微粉砕し透明円形セルに所定量充填し、表面色を(株)日本電色の色差計にて測定した値である。この焙煎度L値は、焙煎工場等での品質管理指標として採用されているものである。
【0040】
一般に麦の焙煎を行うと焙煎時の熱により、麦中に含まれる澱粉分子が分断された低分子になり、酵素分解処理工程において、利用しやすい形態となる。したがって、焙煎度が低すぎるためL値が上記の範囲より高い場合には、澱粉分子が高分子のまま存在することから、酵素処理分解での効率が低下する。また、焙煎度が高く、L値が上記の範囲より低い場合には、麦中の澱粉分子が焦げ、酵素処理分解の対象となる澱粉分子の濃度が低下するため、酵素分解処理の効率が低下する。
【0041】
また、本発明においては、焙煎時の温度が100℃〜700℃、中でも200℃〜600℃の範囲内であることが好ましい。また、焙煎時間が1分〜60分、中でも5分〜60分の範囲内であることが好ましい。
【0042】
上記の範囲内で焙煎処理することにより、麦中に含まれる気体部分が比較的ゆるやかに膨張するため、麦がはじけない範囲で膨化させることができ、抽出時に澱粉が溶出しやすくなるためである。
【0043】
また、麦茶の原料として焙煎された麦が麦茶の原料として適当であるが、未焙煎であっても、抽出により澱粉質が浸出してくるものであれば、本発明の対象となる。
【0044】
b.水
本発明において、抽出工程を行うに際して用いる水は、特に限定されるものではないが、脱イオン交換処理精製したものまたは蒸留水を用いることが好ましい。これにより、安価、手軽であり、かつ安全に調整し抽出設備に供することができるため、効率的であり、また既存の設備にて対応可能であるため、設備投資等のコストがかからないからである。
【0045】
c.その他
本発明において、この他、抽出効率化の目的で、食品添加物のいわゆる炭酸塩、リン酸塩等を適宜添加しても良い。また、溶媒としてエタノール他親水性有機溶媒等、澱粉を溶出、溶解できるものであれば使用しても良い。
【0046】
(2)抽出工程
本発明においては、上記原材料を抽出器内に投入した後、必要な時間溶媒を接触保持させ、風味成分及び澱粉質を抽出し、その後麦残さ、不溶性の微粉等を除去することにより麦茶抽出液が得られる。このような抽出処理において、温度、時間、pH等の抽出条件により、抽出液中の澱粉濃度等が大きく変動するものである。以下、このような抽出処理条件について説明する。
【0047】
a.温度
本発明において、抽出工程における温度は、特に限定されるものではないが、80℃〜100℃の範囲内で行うことが好ましい。上記範囲で行うことにより、抽出効率が良く、抽出時間の短縮を可能となるからである。
【0048】
b.時間
本発明において、抽出時間については、抽出後の固形分の含有量を設定し、必要な抽出保持時間の適宜設定を行えば良いため、特に限定されるものではないが、20分から1時間の範囲内で行うことが、好ましい。上記範囲内より短い時間とした場合は、必要な抽出成分を得ることができず、風味の薄い麦茶抽出液となるからである。また、上記範囲より長い時間とした場合には、熱による風味変化、香気成分の放散が生じることや、製造効率が悪く、コスト面で問題となるからである。
【0049】
c.pH
本発明における抽出処理工程において、pHは特に限定されるものではないが、pH4〜8、特にpH7〜8の範囲で調整することが好ましい。上記の範囲内に調整することにより、原料麦の組織を軟化させることができ、澱粉質の溶出が容易に得られるため、抽出効率を上昇させることが可能であるからである。
【0050】
d.その他
本発明の抽出工程において、攪拌は必要に応じて適度に行えばよい。過度に攪拌すると雑味や不溶性の澱粉成分が溶液中に浸出することにより、以降の工程において処理が必要となるからである。
【0051】
また、抽出前の焙煎麦の前処理については、蒸気を通して組織自体を柔らかくし、風味成分、澱粉成分を溶出しやすい状態にして以降の抽出に供すること等は可能である。抽出前、抽出時に麦茶香気成分を回収し抽出液に再度加えることは素材の風味を抽出液に保存する目的であるならば本発明に何ら影響を及ぼさないからである。
【0052】
(3)その他
本発明において、抽出工程後抽出された液を濃縮する工程を行っても良い。一般的な濃縮の方法として、圧力容器中に抽出液を投入した後密封し、減圧ポンプにて圧力を大気圧以下に低下させ、なおかつ温度を減圧下での沸点付近まで上昇させ、必要に応じて攪拌を行いながら必要な成分のみを液中に残留させ、濃縮液を得る方法が挙げられる。
【0053】
2.酵素処理工程
本発明における酵素処理工程は、前記抽出工程において抽出された抽出液に、グルコアミラーゼ、およびグルコースイソメラーゼを加えることにより、酵素分解することを特徴とするものである。このような酵素処理において、温度、時間、pH等の処理条件により、処理効率等が大きく変動するものである。このような酵素処理条件については、下記に説明する。
【0054】
(1)原材料
本発明における酵素処理分解工程は、前記抽出液とグルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、および添加剤を原材料として準備する。
【0055】
a.グルコアミラーゼ
本発明に用いられるグルコアミラーゼとは、澱粉成分のO−グルコシド結合を加水分解して、単糖のグルコースを生成する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてグルコアミラーゼと称されている酵素であれば用いることが可能であり、特にその由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても、未精製品であっても用いることが可能である。
【0056】
グルコアミラーゼとはエキソ型の澱粉質加水分解酵素であり、すなわち澱粉質の構成成分であるアミロース、アミロペクチンのα−(1、4)O−グルコシド結合の直鎖部分の末端からの加水分解を触媒する酵素活性を有するものをいう。加えてアミロペクチンの枝分れ部分であるα−(1、6)O−グルコシド結合の加水分解を触媒する酵素活性を同時に有する。一般的には粉末状また液体状の微生物産性(アスペルギルス属、リゾパス属)酵素を抽出精製し、製剤化したものが用いられる。
【0057】
本発明においては、このようなグルコアミラーゼを、麦茶抽出液の可溶性固形分総量に対して、0.1重量%〜5.0重量%、中でも0.5重量%〜2.0重量%の範囲内で用いることが好ましい。上記範囲より添加量が少ない場合は、酵素分解効率を発揮することができず、一方上記範囲より添加量が多い場合は、大幅な酵素分解効率の向上が期待できず、コスト面で不利となるからである。
【0058】
b.グルコースイソメラーゼ
本発明に用いられるグルコースイソメラーゼとは、基質であるグルコースに作用し、そのアルドース型をケトース型に変換しフラクトースを生成する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてグルコースイソメラーゼと称されている酵素であれば用いることが可能であり、特にその由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても、未精製品であっても用いることが可能である。また本酵素については、樹脂等に酵素或いは酵素を内包する菌体を固定化し、カラム等に充填された状態で使用し、カラムに目的の液を通過させる過程で酵素反応を進行させる方法も確立されているが、この方法で該麦茶抽出液を処理しても良い。
【0059】
本発明においては、このようなグルコースイソメラーゼを、0.1重量%〜5.0重量%、中でも0.5重量%〜1.0重量%の範囲内で用いることが好ましい。上記範囲より添加量が少ない場合は、酵素異性化効率を発揮することができず、一方上記範囲より添加量が多い場合は、大幅な酵素異性化効率の向上が期待できず、コスト面で不利となるからである。
【0060】
c.その他
本発明において、澱粉質の構成成分であるアミロース、アミロペクチンのα−(1、4)O−グルコシド結合の直鎖部分の中ほどからランダムに加水分解を触媒する酵素活性を有するα−アミラーゼを併用することで効率的に糖化目的を達成することもできる。また、プルラナーゼに代表される枝切り酵素を併用して作用させることでも同様に達成できる。またその3種類共に併用することでも同様に達成できる。
【0061】
この他、pH調整、塩濃度、緩衝系等調整の目的で、食品添加物を適宜添加しても良い。
【0062】
(2)酵素分解処理工程を行う時期
本発明におけるグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを加えることによる酵素分解処理工程を行う時期としては、抽出処理工程時以降であれば、限定されるものではないが、抽出処理工程後が好ましい。抽出時に酵素を作用させ、抽出中に随時溶出する澱粉質を分解することも可能であるが、抽出後の抽出液には澱粉質が高濃度に含有されるものであり、グルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼによる酵素分解が効率よく進行するため、短時間で処理が可能となるからである。また、酵素を抽出後の抽出液に作用させる場合には、抽出機から払い出したままの粗抽出液、粗ろ過、冷却、遠心分離、精密ろ過、濃縮等のどの段階で作用させても良い。
【0063】
(3)酵素の投入時期
本発明における上記酵素分解処理工程は、上記抽出工程において得られた抽出液中に含まれる澱粉質を、グルコアミラーゼにより酵素分解してグルコースを調製するグルコース調製工程と、それにより得られたグルコース含有液中のグルコースを、グルコースイソメラーゼにより異性化してフラクトースを調製するフラクトース調製工程との2段階で構成される。酵素の投入時期としては、特に限定されるものではないが、効率的な酵素処理を実施するためには、各酵素反応に必要な基質を十分に発生させる必要がある。そのため、上記酵素分解処理工程において、抽出工程によって得られた抽出液中に含まれる澱粉質を、グルコアミラーゼによりを酵素分解してグルコースを調製するグルコース調製工程終了後に、フラクトース調整工程を行うことが好ましい。グルコース調整工程終了後の抽出液には、高濃度でグルコースが含有されることから、フラクトース調整工程が効率的に短時間で行うことができるからである。
【0064】
本発明において、酵素反応生成率は特に限定されるものではないが、グルコース生成工程においては、抽出液中に存在する澱粉質からグルコースまで90〜100%の糖化、フラクトース生成工程においては、抽出液中に存在するグルコースからフラクトースへ15%〜25%の異性化が好ましい。上記の範囲内で酵素反応を行うことにより、麦茶飲料としたときに甘みが発現し、麦茶本来の香ばしさや旨みを引き出す事が可能となるからである。
【0065】
(4)温度
本発明においては、酵素分解処理工程の温度が50℃〜65℃、中でも55℃〜60℃であることが好ましい。上記範囲内における温度において、酵素活性が最大化することにより、酵素分解処理工程の効率化を図ることができるからである。
【0066】
(5)pH
本発明においては、酵素分解処理工程のグルコアミラーゼを添加する際のpHが3.0〜6.0、中でも4.0〜4.5の範囲内、グルコースイソメラーゼを添加する際のpHが6.5〜9.0、中でも7.5〜8.5の範囲内であることが好ましい。酵素反応は,pHの影響を大きく受けやすく、最適pHが存在することによるものであり、上記の範囲外である場合には、酵素の働きが低下して酵素反応効率が低下する原因になるからである。
【0067】
(6)時間
本発明において、酵素分解処理時間については、反応の進行度を設定し、必要な保持時間の適宜設定を行えば良いため、特に限定されるものではないが、10分〜5時間の範囲内で行うことが、好ましい。上記範囲内より短い時間とした場合は、反応を十分に行うことができず、必要な成分を得ることができず、上記範囲より長い時間とした場合には、製造効率が悪く、コスト面で問題となるからである。
【0068】
C.麦茶飲料の製造方法
本発明の麦茶飲料の製造方法は、上述した麦茶抽出液の製造方法により得られた麦茶抽出液を用いた製造方法の第一実施態様と、他の製造方法で製造された麦茶抽出液との混合液を用いた製造方法の第二実施態様、および焙煎された大麦と水とを用いて抽出処理を行う抽出工程を行い、抽出工程において得られた麦茶抽出液を水を用いて希釈する希釈工程、前記希釈工程において得られた希釈液に、グルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを添加して酵素分解処理工程により麦茶飲料を製造する方法の第3実施態様がある。これらについて以下説明する。
【0069】
1.第1実施態様
本発明の第1実施態様は、上述した麦茶抽出液の製造方法により得られた麦茶抽出液を用いて、麦茶飲料を製造する方法である。上述の製造方法により得られる麦茶抽出液は、風味、味ともに濃縮されたものであるため、希釈する必要があり、上述した麦茶抽出液の製造方法により得られた麦茶抽出液を使用することにより、甘みを持ち、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることのできる麦茶飲料とすることが可能となるのである。以下、本実施態様の各構成についてそれぞれ説明する。
【0070】
a.原材料
(i)麦茶抽出液
本実施態様において、希釈工程を行うに際して用いる麦茶抽出液は、上述の製造方法により得られる麦茶抽出液である。上述の麦茶抽出液は、甘みがあり、この抽出液を使用することにより、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることのできる麦茶飲料とすることが可能となるからである。
【0071】
(ii)希釈液
本実施態様において、希釈工程を行うに際して用いる材料は、特に限定されるものではないが、水を用いることが好ましい。水を用いることにより、上述の製造方法により得られた麦茶抽出液が有する、甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを損なうことなく、麦茶飲料とすることが可能となるからである。本実施態様に用いられる水は、脱イオン交換処理精製したものまたは蒸留水を用いることが好ましい。安価、手軽であることから、製造効率やコスト等の面からも好ましいからである。
【0072】
(iii)その他
本実施態様においては、この他、pH調整の目的で、食品添加物のいわゆる炭酸塩、リン酸塩や、抗酸化物質、微生物的な変敗を抑制する物質等を適宜添加しても良い。
【0073】
b.希釈工程
希釈工程は、上記原材料を用いて行われる。本実施態様において、上記原材料の混合比率、温度や時間等は特に限定されるものではない。
【0074】
2.第2実施態様
本発明の第2実施態様は、上述した製造方法により得られた麦茶抽出液と、他の製造方法により製造された麦茶抽出液とを混合した抽出液を用いた麦茶飲料を製造する方法である。上述の製造方法により得られた麦茶抽出液は、甘みを持ち、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることのできるものである。本実施態様では、その麦茶抽出液に、他の製造方法により製造された麦茶抽出液を混合することにより、さらに風味、味を加えてより一層旨みを感じることのできる麦茶飲料とすることが可能となるのである。また、本実施態様においても、上記の麦茶抽出液の混合液は風味、味ともに濃縮されたものであるため、第1実施態様と同様に希釈する工程が必要である。以下、本実施態様の各構成についてそれぞれ説明する。
【0075】
a.原材料
(i)麦茶抽出液
本実施態様において用いる麦茶抽出液は、上述の製造方法により得られた麦茶抽出液および、上述の製造方法以外の製造方法により得られた麦茶抽出液である。
【0076】
本実施態様において用いられる他の製造方法により製造された麦茶抽出液は、一般的な製造方法により製造された麦茶抽出液であれば特に限定されるものではない。この他の製造方法により製造された麦茶抽出液を上述した製造方法により得られた麦茶抽出液と混合し、麦茶抽出液とする。これにより、さらに風味、味を加えてより一層旨みを感じることのできる麦茶飲料とすることが可能となるからである。
【0077】
ここで、上述の製造方法により得られた麦茶抽出液および、他の製造方法により得られた麦茶抽出液の混合比は、特に限定されるものではなく、目的とする香りや味等により適宜調整される。上記の混合比は、上述の製造方法により得られた麦茶抽出液の含有量を1とした場合に、他の製造方法により得られた麦茶抽出液の含有量が重量比で0.3〜25.7、中でも0.4〜9.3の範囲内であることが好ましい。麦茶抽出液が上記の混合比であることにより、上述の製造方法により得られた麦茶抽出液の特徴である甘みを持ち、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることのできる麦茶飲料を製造することが可能となるからである。
【0078】
(ii)希釈液
本実施態様において、上記の麦茶抽出液を、希釈工程を行うに際して用いる材料は、特に限定されるものではないが、水を用いることが好ましい。水を用いることにより、上述の製造方法により得られた麦茶抽出液が有する、甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを損なうことなく、麦茶飲料とすることが可能となるからである。本実施態様に用いられる水は、脱イオン交換処理精製したものまたは蒸留水を用いることが好ましい。安価、手軽であり、製造効率等の面からも好ましいからである。
【0079】
(iii)その他
本実施態様においては、この他、pH調整の目的で、食品添加物のいわゆる炭酸塩、リン酸塩や、抗酸化物質、微生物的な変敗を抑制する物質等を適宜添加しても良い。
【0080】
b.希釈工程
希釈工程は、上記原材料を用いて行われる。本実施態様において、上記原材料の混合比率、温度や時間等は特に限定されるものではない。
【0081】
3.第3実施態様
本実施態様の麦茶飲料の製造方法は、焙煎された麦と水とを用いて抽出処理を行う抽出工程後、希釈を行い、得られた希釈液にグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを添加して酵素分解処理工程とを有すること特徴とする麦茶飲料の製造方法である。すなわち、一般的な方法で得られた希釈液中の澱粉質をグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解することにより、抽出液中にグルコースおよびフラクトースが生成する。このグルコースおよびフラクトースの存在により、一般的に製造された麦茶飲料に甘みを付加することができ、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料とすることが可能となるのである。
【0082】
a.抽出工程
(i)原材料
本実施態様において用いられる麦は、一般に食品業界において麦と称される麦であれば用いることが可能であり、特にその産地、種類、形態等は限定されるものではないが、上述の抽出液の製造方法に説明した理由から、中でも六条大麦もしくは六条裸麦を用いることが好ましい。また、その焙煎方法についても特に限定されるものではないが、上述の抽出液の製造方法に説明した方法で行うことが好ましい。また、はと麦を用いることが可能であり、特にその産地、種類、形態等は限定されるものではない。
【0083】
また、本実施態様に用いられる水は、特に限定されるものではないが、上記と同様の理由から脱イオン交換処理精製したものまたは蒸留水を用いることが好ましい。
【0084】
また、この他に、pH調整の目的で、食品添加物のいわゆる炭酸塩、リン酸塩等を適宜添加しても良い。
【0085】
(ii)抽出工程
本実施態様においては、上記原材料を反応器内に投入した後、抽出処理が行われ、その後、不要成分である麦等を除去することにより麦茶抽出液が得られる。このような抽出処理において、温度、時間、pH等の抽出条件により、抽出液中の澱粉濃度等が大きく変動するものである。このような抽出処理条件については、上述した麦茶抽出液の製造方法において説明したものと同様である。
【0086】
(iii)その他
本実施態様において、抽出工程後抽出された液を濃縮する工程を行っても良い。濃縮の方法については、上述した麦茶抽出液の製造方法において説明したものと同様である。
【0087】
b.希釈工程
(i)原料
本実施態様における希釈工程に用いられる原料は、前記抽出工程により得られた抽出液と水である。本実施態様において、希釈工程を行うに際して用いる水は、特に限定されるものではないが、上記の麦茶抽出液の希釈工程と同様の理由から、脱イオン交換処理精製したものまたは蒸留水を用いることが好ましい。
【0088】
(ii)希釈
上記の麦茶抽出液の希釈工程と同様の方法により行う。
【0089】
c.酵素処理工程
本実施態様における酵素処理工程は、前記希釈工程において希釈された希釈液をグルコアミラーゼ、およびグルコースイソメラーゼを加えることにより、酵素分解することを特徴とするものである。このような酵素処理において、温度、時間、pH等の処理条件により、処理効率等が大きく変動するものである。このような酵素処理条件については、上述した麦茶抽出液の製造方法において説明したものと同様である。グルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解することにより、抽出液中にグルコースおよびフラクトースが生成し、前記工程までの希釈液に甘みを付加することができ、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料とすることが可能となるのである。
【0090】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0091】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0092】
[実施例1]
以下に示す方法により麦茶抽出液を調製し、各実施例の麦茶抽出液について抽出液中に含まれる各実施例の抽出液を水にて希釈した飲料中のグルコース量、フラクトース量を高速液体クロマトグラフィーにより定量評価し、専門パネラーによる風味評価を実施した。
【0093】
(麦茶抽出液の調整方法)
焙煎麦(ホール)を以下の条件で調製し、抽出液を得た。
【0094】
焙煎は200℃×60分処理し、L値=40とした。次に、焙煎麦100重量部に、90℃温水を計300重量部、徐々に投入し、2時間かけて抽出し、抽出液180重量部を得た(Bx14、pH4.8)。次にグルコアミラーゼをこの抽出液に0.5重量%投入し、60℃×30分反応させ、炭酸塩によりpH調製〜7.5まで行った。さらに、グルコースイソメラーゼをこの抽出液に0.2重量%投入した。この際の反応は60℃で行い、反応時間は以下、
実施例1−1 ;10分
実施例1−2 ;30分
実施例1−3 ;60分
実施例1−4 ;90分
実施例1−5 ;300分
行った。さらに、L−アスコルビン酸によりpHを4.8まで調製し、酵素失活処理(95℃×10分)を行った。この調整液をBx10に濃度調整して各水準の麦茶抽出液を得た。
【0095】
また上記の麦茶抽出液調整方法において、グルコアミラーゼ処理及びグルコースイソメラーゼ処理を全く実施しないものを比較例1−1とし、グルコースイソメラーゼ処理のみを実施しないものを比較例1−2とした。
【0096】
(評価方法)
・定量分析
高速液体クロマトグラフィー機器を用い、濃度既知のグルコース、フラクトース標準液に対する検量線を作成、所定濃度に希釈した麦茶抽出液サンプルを分析にかけ、検量線より麦茶抽出液中の各水準の抽出液を水にて希釈した飲料中のグルコース量(重量%)、フラクトース量(重量%)を算出、定量した。
【0097】
・風味評価
官能評価の専門パネラー7名により、麦茶抽出液の「甘みの強さ」「旨み、香ばしさの強さ」の各項目について5段階評価を実施した。「甘みの強さ」については、甘さが強ければ5、甘さが弱ければ1とした。また、「旨み、香ばしさの強さ」については、旨み、香ばしさが強ければ5、旨み、香ばしさが弱ければ1とした。
【0098】
(風味評価結果)
各水準の麦茶抽出液を水にてBx0.3に希釈したものについての風味評価を下記の表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
[実施例2]
(麦茶抽出液の調整方法)
以下の定法により得られた麦茶抽出液の一部(Bx0.7分)と、実施例1のそれぞれの麦茶抽出液の一部(Bx0.3分)を混合し、水にて希釈してBx1.0の調整液を作成し風味評価を実施した。
【0101】
焙煎麦(ホール)以下の条件で調製し、抽出液を得た。
【0102】
焙煎は500℃×5分行い、L値=40とした。次に、焙煎麦100重量部に、95℃温水を計800重量部、徐々に投入し20分間抽出する。これにより、抽出液600重量部を得た(Bx1.7、pH4.5)。
【0103】
ここで、実施例1−1を用いたものを実施例2−1、実施例1−2を用いたものを実施例2−2、実施例1−3を用いたものを実施例2−3、実施例1−4を用いたものを実施例2−4、実施例1−5を用いたものを実施例2−5とした。また、比較例1−1を用いたものを比較例2−1、比較例1−2を用いたものを比較例2−2とした。
【0104】
(風味評価結果)
各水準の麦茶抽出液を定法により得られた麦茶抽出液にてBx1.0に希釈したものについての風味評価を下記の表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
(総合評価の記号)
△ ;甘み感じられず、麦素材の雑味、苦味気になり好ましくない。
○ ;甘みによる旨みが感じられ、麦茶の香ばしさが増している。
◎ ;甘み旨みコクが増強され、香ばしさが増しておいしい。
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、麦茶飲料の全量中に、グルコースおよびフラクトースが上記範囲内で含有されていることから、甘みがあり、その甘みにより引き出された麦本来の香ばしさと旨みを感じることができる麦茶飲料とすることが可能となるといった効果を奏するものである。
Claims (10)
- 麦茶飲料の全重量中に、グルコースが0.141重量%〜0.237重量%の範囲内で含有され、さらにフラクトースが0.015重量%〜0.105重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする麦茶飲料。
- 前記グルコースおよび前記フラクトースが、原料である麦由来のグルコースおよびフラクトースであることを特徴とする請求項1に記載の麦茶飲料。
- ブリックス値が、0.3〜2.0の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の麦茶飲料。
- 焙煎された麦と水とを用いて抽出処理を行う抽出工程と、前記抽出工程において抽出された抽出液をグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解する酵素分解処理工程とを有する麦茶抽出液の製造方法により得られた麦茶抽出液を用いて麦茶飲料を製造する麦茶飲料の製造方法であって、
得られる麦茶飲料の全重量中に、グルコースが0.141重量%〜0.237重量%の範囲内で含有され、さらにフラクトースが0.015重量%〜0.105重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする麦茶飲料の製造方法。 - 焙煎された麦と水とを用いて抽出処理を行う抽出工程と、前記抽出工程において抽出された抽出液をグルコアミラーゼおよびグルコースイソメラーゼを用いて酵素分解する酵素分解処理工程とを有する麦茶抽出液の製造方法により得られた麦茶抽出液と、他の製造方法により製造された麦茶抽出液とからなる混合液を用いて麦茶飲料を製造する麦茶飲料の製造方法であって、
得られる麦茶飲料の全重量中に、グルコースが0.141重量%〜0.237重量%の範囲内で含有され、さらにフラクトースが0.015重量%〜0.105重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする麦茶飲料の製造方法。 - 前記焙煎された麦の焙煎度L値が、30〜50の範囲内であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の麦茶飲料の製造方法。
- 前記焙煎された麦の焙煎時の温度が100℃〜700℃の範囲内であり、焙煎時間が1分〜60分の範囲内であることを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載の麦茶飲料の製造方法。
- 前記麦が、六条大麦または六条裸麦であることを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれかの請求項に記載の麦茶飲料の製造方法。
- 前記酵素分解処理工程において、まずグルコアミラーゼにより澱粉を酵素分解してグルコースを調製するグルコース調製工程を行い、次いで得られたグルコースをグルコースイソメラーゼにより異性化してフラクトースを調製するフラクトース調製工程を行うことを特徴とする請求項4から請求項8までいずれかの請求項に記載の麦茶飲料の製造方法。
- 前記酵素分解処理工程におけるグルコアミラーゼの添加時のpHが3.0〜6.0の範囲内、グルコースイソメラーゼの添加時のpHが6.5〜9.0の範囲内であり、かつ温度が50℃〜65℃の範囲内であることを特徴とする請求項4から請求項9までいずれかの請求項に記載の麦茶飲料の製造方法。
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