JP2004349162A - 負極およびそれを用いた電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】負極は、負極集電体と、負極集電体に気相法により形成された負極活物質層12とを有している。負極活物質層12は、ケイ素を含み、かつ、酸素の含有量が異なる第1層12Aと第2層12Bとを、交互に積層して複数ずつ有している。第1層12Aは、負極活物質としてケイ素の単体または合金を含んでいる。また、第2層12Bは酸化物としてケイ素と酸素とを含んでおり、酸素の含有量は10原子数%以上であることが好ましい。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケイ素(Si)を含む負極およびそれを用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、モバイル機器の高性能化および多機能化に伴い、それらの電源である二次電池の高容量化が切望されている。この要求に応える二次電池としてはリチウム二次電池がある。しかし、現在におけるリチウム二次電池の代表的な形態である、正極にコバルト酸リチウム、負極に黒鉛を用いた場合の電池容量は飽和状態にあり、大幅な高容量化は極めて困難な状況である。そこで、古くから負極に金属リチウム(Li)を用いることが検討されているが、この負極を実用化するには、リチウムの析出溶解効率の向上およびデンドライト状の析出形態の制御などを図る必要がある。
【0003】
その一方で、最近、ケイ素あるいはスズ(Sn)などを用いた高容量の負極の検討が盛んに行われている。しかし、これらの負極は充放電を繰り返すと、負極活物質の激しい膨張および収縮により粉砕して微細化し、集電性が低下したり、表面積の増大に起因して電解液の分解反応が促進され、サイクル特性は極めて劣悪であった。そこで、気相法、液相法あるいは焼結法などにより負極集電体に負極活物質層を形成した負極も検討されている(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3参照。)。これによれば、粒子状の負極活物質およびバインダーなどを含むスラリーを塗布した従来の塗布型負極に比べて微細化を抑制することができると共に、負極集電体と負極活物質層とを一体化することができるので負極における電子伝導性が極めて良好となり、容量的にもサイクル寿命的にも高性能化が期待されている。また、従来は負極中に存在した導電材、バインダーおよび空隙などを低減または排除することもできるので、本質的に負極を薄膜化することが可能となる。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−50922号公報
【特許文献2】
特許第2948205号公報
【特許文献3】
特開平11−135115号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この負極でも、負極活物質層を実用的な厚みとした場合、充放電に伴う負極活物質層の膨張および収縮により負極活物質の脱落が起こり、十分なサイクル特性を得ることができないという問題があった。また、電解質との反応性も依然として激しく、充放電に伴う電解質と負極との反応により電池の容量が低下してしまうという問題もあった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、負極活物質層の充放電に伴う構造破壊を抑制することができ、かつ、電解質と負極活物質層との反応性を低減することができる負極およびそれを用いた電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による負極は、ケイ素を含み、かつ、酸素(O)の含有量が異なる第1層と第2層とを、交互に積層して複数ずつ有する負極活物質層を備えたものである。
【0008】
本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、ケイ素を含み、かつ、酸素の含有量が異なる第1層と第2層とを、交互に積層して複数ずつ有する負極活物質層を備えたものである。
【0009】
本発明による負極および電池では、充放電に伴い、負極活物質層が膨張および収縮するが、酸素の含有量が異なる第1層と第2層とを、交互に積層して複数ずつ有しているので、負極活物質層の激しい膨張および収縮が抑制され、負極活物質層の構造破壊が抑制される。また、負極活物質層と電解質との反応性が低減されると考えられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る負極の構成を模式的に表すものである。この負極10は、例えば、負極集電体11と、負極集電体11に設けられた負極活物質層12とを有している。負極集電体11は、ケイ素と合金を形成可能な元素を含むことが好ましい。後述するように、負極活物質層12はケイ素を含んでいるので、充放電に伴い大きく膨張および収縮するが、負極活物質層12を負極集電体11と合金化させて強固に接着させることにより、負極活物質層12の負極集電体11からの脱落を抑制することができるからである。なお、本明細書において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0012】
ケイ素と合金を形成可能な元素としては、例えば、ニッケル(Ni),銅(Cu),鉄(Fe),チタン(Ti),タングステン(W),モリブデン(Mo)あるいはアルミニウム(Al)が挙げられ、中でも、ケイ素との合金化の進み方、負極集電体11の電子伝導性、あるいは強度を考慮すると、ニッケル,銅および鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。なお、負極集電体11は、単層により構成してもよいが、複数層により構成してもよい。その場合、負極活物質層12と接する層をケイ素と合金化しやすい金属材料により構成し、他の層を他の金属材料により構成するようにしてもよい。
【0013】
負極集電体11の表面粗さ、より具体的にはJIS B0601に規定される算術平均粗さRaは、0.1μm以上であることが好ましい。負極集電体11と負極活物質層12とのアンカー効果を向上させることができると共に、負極集電体11がケイ素と合金を形成可能な元素を含む場合、負極集電体11と負極活物質層12との合金化を促進させることができるからである。
【0014】
図2は負極活物質層12の構成を表す透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)写真であり、図3は図2に示したTEM写真の特徴部分を模して表したものである。負極活物質層12は、例えば、ケイ素を含み、かつ、酸素の含有量が異なる第1層12Aと第2層12Bとを、負極集電体11の側から、第1層12A、第2層12Bの順で交互に積層して複数ずつ有している。これにより、負極活物質層12は、充放電に伴う激しい膨張および収縮が抑制され、構造破壊が抑制されるようになっている。また、負極活物質層12と電解質との反応性も低減されると推測される。
【0015】
第1層12Aは、具体的には、負極活物質としてケイ素の単体およびケイ素の合金のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、他の負極活物質を含んでいてもよい。ケイ素の合金としては、例えば、Mg2 Si,Mg2 Sn,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 あるいはZnSi2 が挙げられる。この第1層12Aにおけるケイ素の含有量は、90原子数%以上であることが好ましい。より高い容量を得ることができるからである。第1層12Aは、また、酸素を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、第1層12Aにおける酸素の含有量は第2層12Bよりも少なく、なるべく少ない方が好ましい。更には、全く酸素を含んでおらず、含有量が零であればより好ましい。より高い容量を得ることができるからである。
【0016】
第2層12Bは、ケイ素に加えて酸素を含んでおり、必要に応じて他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、第1層12Aがケイ素の合金を含む場合に、ケイ素と合金を形成している元素が挙げられる。なお、第2層12Bに含まれる酸素は、主としてケイ素あるいは他の元素と結合し、酸化物として存在している。第2層12Bにおけるケイ素および酸素の含有量は、ケイ素が90原子数%以下、酸素が10原子数%以上の範囲内であることが好ましい。負極活物質層12の膨張および収縮による構造破壊をより効果的に抑制することができるからである。
【0017】
第1層12Aの間に位置する第2層12Bの平均厚みは、0.5μm以下であることが好ましい。第2層12Bが厚すぎると、負極活物質層12全体の電子伝導性あるいはリチウムイオンの拡散性が低下する恐れがあるからである。なお、最表面層は、自然酸化される場合があるので、0.5μmよりも厚くてもよい。また、第1層12Aを挟んで隣り合う第2層12Bの間隔D、具体的には、第2層12Bの厚み方向における中心間の距離Dは、2μm以下であることが好ましい。間隔Dが広すぎると、十分な性能が期待できないからである。
【0018】
なお、図示しないが、第1層12Aと第2層12Bとは、負極集電体11の側から、第2層12B、第1層12Aの順で積層されていてもよい。但し、第2層12Bにおける酸素の含有量が多い場合は、負極集電体11と負極活物質層12との接着性が低下する恐れがあるので、第1層12A、第2層12Bの順で積層されている方が好ましい。
【0019】
このような構成を有する負極活物質層12は、例えば、気相法により形成されたものであることが好ましい。充放電に伴う負極活物質層12の膨張および収縮による構造破壊を抑制することができると共に、負極集電体11と負極活物質層12とを一体化することができ、負極10における電子伝導性を向上させることができるからである。また、従来の塗布型負極と異なり、バインダーおよび空隙などを低減または排除でき、薄膜化することも可能だからである。更に、第1層12Aと第2層12Bとが精密に形成されるからである。
【0020】
また、この負極活物質層12は、負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極集電体11の構成元素が負極活物質層12に、または負極活物質の構成元素が負極集電体11に、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。この合金化は、負極活物質層12を気相法により形成する際に同時に起こることが多いが、更に熱処理が施されることにより起こったものでもよい。なお、本明細書では、上述した元素の拡散も合金化の一形態に含める。
【0021】
負極活物質層12の厚みは、例えば、放電状態で、実用的な厚みである2μm以上であることが好ましい。2μm以上とすることで、第1層12Aと第2層12Bとを交互に積層する効果がより発揮されるからである。
【0022】
この負極10は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0023】
まず、負極集電体11を用意し、負極集電体11に、気相法により、ケイ素よりなるケイ素層を形成する。次いで、ケイ素層の表面を酸化し、第1層12Aと第2層12Bとを形成し、負極活物質層12を形成する。また、負極集電体11に、気相法により、第1層12Aと第2層12Bとの両方を形成し、負極活物質層12を形成するようにしてもよい。このように気相法を用いるのは、第1層12Aと第2層12Bとを精密に形成することができるからである。また、気相法を用いることによって、場合によっては、負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化した負極活物質層12が形成され、特性を向上させることができるからである。なお、負極集電体11と負極活物質層12との界面をより合金化させることにより特性を更に向上させることができる場合があるので、必要に応じて更に真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下で熱処理を行い、負極集電体11と負極活物質層12との界面をより合金化させることが好ましい。
【0024】
なお、気相法としては、物理堆積法あるいは化学堆積法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,熱CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法あるいはプラズマCVD法等が利用可能である。
【0025】
このような負極10は、例えば、次のようにして二次電池に用いられる。
【0026】
図4は、本実施の形態に係る負極10を用いた二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、いわゆるコイン型といわれるものであり、外装カップ20に収容された本実施の形態に係る負極10と、外装缶30内に収容された正極40とが、セパレータ50を介して積層されたものである。外装カップ20および外装缶30の周縁部は絶縁性のガスケット60を介してかしめることにより密閉されている。外装カップ20および外装缶30は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウムなどの金属によりそれぞれ構成されている。
【0027】
正極40は、例えば、正極集電体41と、正極集電体41に設けられた正極活物質層42とを有している。正極集電体41は、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
【0028】
正極活物質層42は、例えば、正極活物質としてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどのバインダーを含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料としては、例えば、一般式Lix MIO2 で表されるリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。リチウム含有金属複合酸化物は、高電圧を発生可能であると共に、高密度であるため、二次電池の更なる高容量化を図ることができるからである。なお、MIは1種類以上の遷移金属であり、例えばコバルトおよびニッケルのうちの少なくとも一方が好ましい。xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム含有金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 あるいはLiNiO2 などが挙げられる。
【0029】
なお、正極40は、例えば、正極活物質と導電材とバインダーとを混合し、それにN−メチルピロリドンなどの分散媒を添加して正極合剤スラリーを調製したのち、この正極合剤スラリーを金属箔よりなる正極集電体41に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層42を形成することにより作製することができる。
【0030】
セパレータ50は、負極10と正極40とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ50は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンにより構成されている。
【0031】
セパレータ50には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩と含んでおり、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート,ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネートあるいはエチルメチルカーボネート等の有機溶媒が挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
リチウム塩としては、例えば、LiPF6 ,LiClO4 あるいはLiCF3 SO3 が挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
なお、電解液に代えて、ゲル状の電解質を用いてもよい。ゲル状の電解質は、例えば、保持体に電解液を保持させたものである。保持体としては、ブロック共重合体であるポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料、または、窒化リチウムあるいはリン酸リチウムなどの無機伝導体が挙げられ、これら高分子材料と無機伝導体とを混合して用いてもよい。
【0034】
この二次電池は、例えば、負極10、電解質が含浸されたセパレータ50および正極40を積層して、外装カップ20と外装缶30との中に入れ、それらをかしめることにより製造することができる。
【0035】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極40からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して負極10に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極10からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して正極40に吸蔵される。この充放電に伴い、負極活物質層12は膨張および収縮するが、第1層12Aと第2層12Bとが交互に積層されているので、負極活物質層12の激しい膨張および収縮が抑制され、負極活物質層12の構造破壊が抑制される。また、負極活物質層12と電解質との反応性が低減されると考えられる。
【0036】
このように本実施の形態では、ケイ素を含み、かつ、酸素の含有量が異なる第1層12Aと第2層12Bとを、交互に積層して複数ずつ有するようにしたので、負極活物質層12の激しい膨張および収縮を抑制し、負極活物質層12の構造破壊を抑制することができる。また、負極活物質層12と電解質との反応性を低減することもできる。よって、サイクル特性を向上させることができ、負極活物質層12を実用的な厚みとしても、実用的なサイクル特性を得ることができる。
【0037】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【0038】
(実施例1−1)
まず、正極活物質である平均粒径5μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2 )の粉末と、導電材であるカーボンブラックと、バインダーであるポリフッ化ビニリデンとを、コバルト酸リチウム:カーボンブラック:ポリフッ化ビニリデン=92:3:5の質量比で混合し、これを分散媒であるN−メチルピロリドンへ投入して正極合剤スラリーとし、厚み30μmのアルミニウムよりなる正極集電体41に塗布して乾燥させ、加圧することにより正極活物質層42を形成し、正極40を作製した。
【0039】
また、厚み25μm、表面粗さRa値0.1μmの銅箔よりなる負極集電体11に電子ビーム蒸着法により厚み0.5μmのケイ素層を形成し、その後、大気解放せず、酸素濃度5%のアルゴンガスを真空チャンバーの内部へ5分間フローさせ、ケイ素層の表面を酸化するという工程を繰り返し、厚み0.4μmの第1層12Aと厚み0.1μmの第2層12Bとが交互に積層された合計の厚みが4μmの負極活物質層12を形成し、負極10を作製した。なお、この負極10を、AES( Auger Electron Spectroscopy;オージェ電子分光法)およびEDX(Energy Dispersive X−Ray Spectroscope;エネルギー分散型X線検出器)により分析したところ、負極活物質層12が負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化していることが確認された。
【0040】
次いで、外装カップ20の中央部に負極10およびセパレータ50を順次積層し、電解液を注入して、正極40を入れた外装缶30を被せてかしめ、直径20mm、高さ1.6mmの二次電池を作製した。電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1の質量比で混合した溶媒に、電解質塩であるLiPF6 を1mol/dm3 の濃度で溶解させたものを用いた。
【0041】
また、実施例1−1に対する比較例1−1として、電子ビーム蒸着法により、ケイ素層を4μmの厚みとなるまで連続形成し、負極活物質層12を形成したことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0042】
作製した実施例1−1および比較例1−1の二次電池について、25℃の条件下で充放電試験を行い、30サイクル目の容量維持率を求めた。その際、充電は、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で電流密度が0.02mA/cm2 に達するまで行い、放電は、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。なお、充電を行う際には、予め計算により求めた負極10および正極40の充放電容量に基づいて初回の充電での負極利用率を90%と設定し、金属リチウムが析出しないようにした。30サイクル目の容量維持率は、初回放電容量に対する30サイクル目の放電容量の比率、すなわち(30サイクル目の放電容量)/(初回放電容量)×100として算出した。得られた結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から分かるように、実施例1−1によれば、比較例1−1に比べて、容量維持率を大きくすることができた。すなわち、第1層12Aと第2層12Bとを交互に積層して複数ずつ有するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0045】
(実施例2−1〜2−5)
第1層12Aと第2層12Bとの積層数を変えることにより、負極活物質層12の厚みを表2に示したように変えたことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。また、実施例2−1〜2−5に対する比較例2−1〜2−5として、電子ビーム蒸着法により、ケイ素層を表2に示した厚みとなるまで連続形成し、負極活物質層12を形成したことを除き、他は実施例2−1〜2−5とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。なお、実施例2−1〜2−5の負極10についても、実施例1−1と同様にしてAESおよびEDXにより分析したところ、負極活物質層12が、負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化していることが確認された。
【0046】
【表2】
【0047】
作製した実施例2−1〜2−5および比較例2−1〜2−5の二次電池についても、実施例1−1と同様にして、充放電試験を行い、30サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を実施例1−1および比較例1−1の結果と共に表2に示す。
【0048】
表2から分かるように、実施例2−1〜2−5によれば、比較例2−1〜2−5に比べて、容量維持率を大きくすることができ、特に、負極活物質層12の厚みが2μm以上でその効果が大きかった。すなわち、第1層12Aと第2層12Bとを交互に積層して複数ずつ有するようにすれば、負極活物質層12の厚みを、実用的な厚みである2μm以上とした場合に、特に、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0049】
(実施例3−1〜3−5)
表3に示した厚みのケイ素層を形成し、表3に示した厚みの第1層12Aと厚み0.1μmの第2層12Bとが交互に積層された厚み6μmの負極活物質層12を形成したことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。また、実施例3−1〜3−5に対する比較例3−1として、ケイ素層を6μmの厚みとなるまで連続形成し、負極活物質層12を形成したことを除き、他は実施例3−1〜3−5と同様にして二次電池を作製した。なお、実施例3−1〜3−5の負極10についても、実施例1−1と同様にしてAESおよびEDXにより分析したところ、負極活物質層12が、負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化していることが確認された。
【0050】
【表3】
【0051】
作製した実施例3−1〜3−5および比較例3−1の二次電池についても、実施例1−1と同様にして、充放電試験を行い、30サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を表3に示す。
【0052】
表3から分かるように、実施例3−1〜3−5によれば、比較例3−1に比べて、容量維持率を大きくすることができ、特に、ケイ素層の厚み、換言すれば、第1層12Aを挟んで隣り合う第2層12Bの間隔Dであるが、この間隔Dを2.0μm以下とした場合にその効果が大きかった。すなわち、第2層12Bの間隔Dを2μm以下とすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0053】
(実施例4−1〜4−4)
実施例1−1と同じ銅箔よりなる負極集電体11に電子ビーム蒸着法によりケイ素層を形成し、第1層12Aを形成した後、同じく電子ビーム蒸着法により第1層12A上に二酸化ケイ素よりなる第2層12Bを形成するという工程を4回繰り返し、第1層12Aと第2層12Bとが交互に積層された合計の厚みが4μmの負極活物質層12を形成したことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。その際、ケイ素層、第1層12Aおよび第2層12Bの厚みは、実施例4−1〜4−4で表4に示したように変化させた。なお、実施例4−1〜4−4の負極10についても、実施例1−1と同様にしてAESおよびEDXにより分析したところ、負極活物質層12が、負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化していることが確認された。
【0054】
【表4】
【0055】
作製した実施例4−1〜4−4の二次電池についても、実施例1−1と同様にして、充放電試験を行い、30サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を比較例1−1の結果と共に表4に示す。
【0056】
表4から分かるように、実施例4−1〜4−4によれば、比較例1−1に比べて、容量維持率を大きくすることができた。すなわち、第2層12Bの厚みを0.5μm以下とすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0057】
(実施例5−1〜5−3)
表面粗さRa値が表5に示した値で、厚みが25μmの銅箔よりなる負極集電体11を用いたことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。なお、実施例5−1〜5−3の負極10についても、実施例1−1と同様にしてAESおよびEDXにより分析したところ、負極活物質層12が、負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化していることが確認された。作製した実施例5−1〜5−3の二次電池についても、実施例1−1と同様にして、充放電試験を行い、30サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を実施例1−1の結果と共に表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表5から分かるように、実施例5−1,5−2,1−1によれば、容量維持率を90%以上とすることができた。すなわち、表面粗さRaを0.1μm以上とすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0060】
(実施例6−1〜6−4)
厚み25μm、表面粗さRa0.01μmの表6に示した金属箔よりなる負極集電体11を用いたことを除き、他は実施例5−3と同様にして二次電池を作製した。なお、実施例6−1〜6−4の負極10についても、実施例1−1と同様にしてAESおよびEDXにより分析したところ、負極活物質層12が、負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化していることが確認された。作製した実施例6−1〜6−4の二次電池についても、実施例1−1と同様にして、充放電試験を行い、30サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を実施例5−3の結果と共に表6に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
表6から分かるように、実施例5−3,6−1,6−2によれば、容量維持率を85%以上とすることができた。すなわち、負極集電体11にニッケル,銅あるいは鉄を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0063】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、気相法により形成された負極活物質層12について説明したが、負極活物質層は他の方法により形成されたものでもよい。他の方法としては、例えば、電解鍍金あるいは無電解鍍金等の液相法、または、雰囲気焼結法,反応焼結法あるいはホットプレス等の焼結法が挙げられる。
【0064】
また、上記実施の形態および実施例では、第1層12Aが、負極活物質としてケイ素またはケイ素の合金を含む場合について説明したが、第1層は、例えば、塗布により形成され、負極活物質に加えて、ポリフッ化ビニリデンなどのバインダーを含んでいてもよい。
【0065】
更に、上記実施の形態および実施例では、負極集電体11に負極活物質層12を形成するようにしたが、負極集電体と負極活物質層との間に他の層を形成するようにしてもよい。
【0066】
加えて、上記実施の形態および実施例では、コイン型の二次電池について説明したが、本発明は、円筒型、角型、ボタン型、薄型、大型、巻回ラミネート型、積層ラミネート型などの他の二次電池についても同様に適用することができる。また、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明による負極および電池によれば、ケイ素を含み、かつ、酸素の含有量が異なる第1層と第2層とを、交互に積層して複数ずつ有するようにしたので、負極活物質層の激しい膨張および収縮を抑制し、負極活物質層の構造破壊を抑制することができる。また、負極活物質層と電解質との反応性を低減することもできる。よって、サイクル特性を向上させることができ、負極活物質層の厚みを実用的な厚みとしても、実用的なサイクル特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る負極の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した負極活物質層の構成を表すTEM写真である。
【図3】図2に示したTEM写真の特徴部分を模して表したものである。
【図4】図1に示した負極を用いた二次電池の構成を表す断面図である。
【符号の説明】
10…負極、11…負極集電体、12…負極活物質層、12A…第1層、12B…第2層、20…外装カップ、30…外装缶、40…正極、41…正極集電体、42…正極活物質層、50…セパレータ、60…ガスケット、D…間隔。
Claims (22)
- ケイ素(Si)を含み、かつ、酸素(O)の含有量が異なる第1層と第2層とを、交互に積層して複数ずつ有する負極活物質層を備えたことを特徴とする負極。
- 前記第2層は、酸素を10原子数%以上含むことを特徴とする請求項1記載の負極。
- 隣り合う前記第2層の間隔は、2μm以下であることを特徴とする請求項2記載の負極。
- 前記第1層の間に位置する前記第2層の厚みは、0.5μm以下であることを特徴とする請求項2記載の負極。
- 前記負極活物質層の厚みは、2μm以上であることを特徴とする請求項1記載の負極。
- 更に、負極集電体を備え、前記負極活物質層は、前記負極集電体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の負極。
- 前記負極集電体の表面粗さは、算術平均粗さで0.1μm以上であることを特徴とする請求項6記載の負極。
- 前記負極集電体は、ケイ素と合金を形成可能な元素を含むことを特徴とする請求項6記載の負極。
- 前記負極集電体は、ニッケル(Ni),銅(Cu),鉄(Fe),チタン(Ti),タングステン(W),モリブデン(Mo)およびアルミニウム(Al)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項6記載の負極。
- 前記負極活物質層は、前記負極集電体に気相法により形成されたことを特徴とする請求項6記載の負極。
- 前記負極活物質層は、前記負極集電体との界面の少なくとも一部において前記負極集電体と合金化していることを特徴とする請求項6記載の負極。
- 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、ケイ素(Si)を含み、かつ、酸素(O)の含有量が異なる第1層と第2層とを、交互に積層して複数ずつ有する負極活物質層を備えたことを特徴とする電池。 - 前記第2層は、酸素を10原子数%以上含むことを特徴とする請求項12記載の電池。
- 隣り合う前記第2層の間隔は、2μm以下であることを特徴とする請求項13記載の電池。
- 前記第1層の間に位置する前記第2層の厚みは、0.5μm以下であることを特徴とする請求項13記載の電池。
- 前記負極活物質層の厚みは、2μm以上であることを特徴とする請求項12記載の電池。
- 前記負極は、更に、負極集電体を備え、前記負極活物質層は、前記負極集電体に設けられていることを特徴とする請求項12記載の電池。
- 前記負極集電体の表面粗さは、算術平均粗さで0.1μm以上であることを特徴とする請求項17記載の電池。
- 前記負極集電体は、ケイ素と合金を形成可能な元素を含むことを特徴とする請求項17記載の電池。
- 前記負極集電体は、ニッケル(Ni),銅(Cu),鉄(Fe),チタン(Ti),タングステン(W),モリブデン(Mo)およびアルミニウム(Al)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項17記載の電池。
- 前記負極活物質層は、前記負極集電体に気相法により形成されたことを特徴とする請求項17記載の電池。
- 前記負極活物質層は、前記負極集電体との界面の少なくとも一部において前記負極集電体と合金化していることを特徴とする請求項17記載の電池。
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