JP2004347120A - クラッチ装置及び多板クラッチを駆動するための方法 - Google Patents

Abstract

【課題】複数のクラッチディスクが、外歯列及び内歯列を備えたディスク１６，２２として交互に内側のディスクキャリア若しくは外側のディスクキャリア４，１０，１８に相対回動不能に受容され、ディスクに、湿式クラッチを冷却するための潤滑油が供給され、内側のディスクキャリア若しくは外側のディスクキャリア４，１０，１８が、エンジンとトランスミッションとの間で力の流れを形成するために液圧機構を介して操作される形式の、自動車のエンジンとトランスミッションとの間に配置された多板クラッチを駆動するための方法を改良して、エンジンとトランスミッションとの間に配置された、補助力操作式の湿式多板クラッチを使用した場合に相応のスムーズな始動が得られるようにする。
【解決手段】少なくとも部分的に開放されたクラッチのクラッチディスク１６，２２間にオイルを適切に供給することによって、自動車を始動させるための牽引モーメントを生ぜしめる。
【選択図】図１

Description

本発明は、複数のクラッチディスクが設けられていて、これらのクラッチディスクが、外歯列及び内歯列を備えた多板若しくはディスクとして交互に内側のディスクキャリア若しくは外側のディスクキャリアに相対回動不能に受容されており、これらのディスクに、（湿式）クラッチを冷却するために潤滑油が供給されるようになっており、前記内側のディスクキャリア若しくは外側のディスクキャリアが、エンジンとトランスミッションとの間で力の流れを形成するために液圧機構を介して操作されるようになっている形式の、自動車のエンジンとトランスミッションとの間に配置された多板クラッチを駆動するための方法に関する。また本発明は、湿式運転可能な複数のクラッチディスクを備えていて、これらのクラッチディスクが、外歯列及び内歯列を備えた多板若しくはディスクとして、交互に内側若しくは外側のディスクキャリアに相対回動不能に受容されており、かつ、クラッチを操作するための液圧機構を備えている形式の、エンジンとトランスミッションとの間に配置された自動車用のクラッチ装置に関する。

オートマチックトランスミッション又はオートマチック式の切換伝動装置、例えばツインクラッチトランスミッションにおいては、本来のトランスミッションユニットにいわゆるトルクコンバータが前置接続されており、このトルクコンバータは、特に自動車のスムーズな始動を可能にする。しかしながらトルクコンバータを使用すると効率損失が発生するので、一般的には付加的にロックアップクラッチが必要となる。例えばツインクラッチトランスミッションにも使用される、補助力で操作される（hilfskraftbetaetigten）湿式の多板クラッチを使用した場合、このようなクラッチは低い滑り速度段階において不均一な噛み合い特性が発生する傾向があり、押圧力の微妙な調整に関連して比較的高価な制御費用が必要とされる。

そこで本発明の課題は、特に、エンジンとトランスミッションとの間に配置された、自動車の、補助力で操作される湿式多板クラッチを使用した場合に相応のスムーズで快適な始動が得られるような手段を提供することである。

この課題を解決した本発明の、多板クラッチを駆動するための方法によれば、少なくとも部分的に開放されたクラッチのクラッチディスク間にオイルを必要に応じて供給することによって、自動車を始動させるための牽引モーメント（Schleppmoment）を生ぜしめるようにした。

またこの課題を解決した本発明のクラッチ装置によれば、内側のディスクキャリアと外側のディスクキャリア（クラッチドラム：Kupplungskorb）との間に付加的に、２つのディスクキャリアに相互に相対回動不能に結合された多板若しくはディスクが設けられており、これらの多板若しくはディスクが、クラッチの運転状態とは無関係に互いに間隔を保たれていて、これらの多板若しくはディスク間に、始動モーメント及び牽引モーメントを生ぜしめるためのオイルが必要に応じて適切に供給されるようになっている。

少なくとも部分的に開放若しくは遮断されたクラッチにおいて、クラッチディスク間に必要に応じて適切にオイルを供給するようにしたことによって、例えば補助力操作式の湿式クラッチにおいて制御された始動を可能にする牽引モーメントが得られる。これによって、付加的な構成部材例えばトルクコンバータを省くことができ、ひいては、相応のパッケージ、重量及びコストに関する利点が得られる。

請求項１に従属する請求項に記載した手段によって、本発明の方法のその他の有利な実施態様が可能である。

ディスク若しくは多板を冷却するための湿式ディスククラッチにおいて設けられた潤滑油は、有利な形式で同時に、始動・牽引モーメントを生ぜしめるために用いられるので、付加的な装置例えばオイル供給ポンプ、オイル通路その他は必要ない。

始動及び牽引モーメントを形成するために十分なオイル容積流を提供することができるようにするために、クラッチの温度及び運転状態とは無関係にオイルの供給が行われる。

請求項４から７に記載した、同じ基本的考え方に基づくクラッチ装置の第２実施例は、クラッチの内側キャリアと外側キャリアに相対回動不能に結合されたディスクの一部が、クラッチ若しくは車両の運転状態とは無関係に、互いに間隔を保っていることを特徴としている。これによって、内側キャリア若しくは外側キャリアに接続されたディスク間の中間室内にオイルを適切に供給した場合、同様に所望の始動及び牽引モーメントが得られる。

従属請求項５から７には、本発明によるクラッチ装置のその他の有利な実施態様及び改良が記載されている。

有利な形式で、外側のディスクキャリアに相対回動不能に結合されたディスクはスペーサホルダによって互いに間隔を保たれていて、これらのディスクは、内側のディスクキャリアに相対回動不能に結合されたディスクに支えられており、これに対して内側のディスクキャリアに相対回動不能に結合されたディスクは軸方向で固定されていて、スペーサリングによって間隔を保たれている。

ディスクセットは、モジュール状にクラッチ装置に組み込まれた別個の構成ユニットとしても構成される。

クラッチユニットはさらに、互いに不動の間隔を保って配置されたディスクが、牽引モーメントの形成を容易にする開口、凹部、縁部又はこれと類似のものを備えている。

本発明の２つの実施例が、以下の説明及び図面に詳しく説明されている。

図２には、本発明だけに限定されない多板クラッチ２の実施例が示されており、この多板クラッチ２は、分離された２つのクラッチユニット２ａ，２ｂを有していて、これらのクラッチユニット２ａ，２ｂは、例えば自動車のエンジンとトランスミッションユニットとの間でツインクラッチトランスミッション内に配置されている。

以下には、多板クラッチ２の主要な構成部分について記載されている。多板クラッチ２の主要な構成部分は、外側のクラッチドラム４より成っており、このクラッチドラム４の端面側に配置された連行ディスク若しくはハブ６が内歯列を備えた中央の開口８を介して、図示していない第１のトランスミッション入力軸に接続されている。この例えば中空軸として構成された第１のトランスミッション入力軸は、ツインクラッチトランスミッションの偶数ギヤ段のための歯車を支持している。内側の第２のクラッチドラム１０は、連行ディスク若しくはハブ１２を有しており、この連行ディスク若しくはハブ１２は、同様に、内歯列を備えた中央の開口１４を有している。ハブ１２には、図示していない第２のトランスミッション入力軸が受容されており、この第２のトランスミッション入力軸は例えば、第１のトランスミッション入力軸に対して同軸的な中実の軸として延在していて、ツインクラッチトランスミッションの奇数ギヤ段のための歯車を支持している。外側及び内側のクラッチドラム４，１０には、外歯列を備えた多板若しくはディスク１６が受容されており、これらの多板若しくはディスク１６は、外側及び内側のクラッチドラム４，１０の相応の溝内に係合している。さらにまた、２つのクラッチユニット２ａ，２ｂのために共通の１つのディスクキャリア１８が設けられており、このディスクキャリア１８は、エンジン側に結合された軸２０に相対回動不能に（つまり一緒に回転するように）結合されている。ディスクキャリア１８は、相応の外歯列２１を有しており、この外歯列２１内に、内歯列を備えた駆動される多板若しくはディスク２２が係合する。２つのクラッチユニット２ａ，２ｂは、液圧式の操作装置を介して制御される。このために、２つのクラッチユニット２ａ，２ｂのための同一に構成された２つのピストン／クラッチユニット２４及び２６が設けられており、これらのピストン／クラッチユニットの圧力室２８，３０に、ピストン３２，３４を操作するために相応のオイル流路３６及び３８を介して圧力油が供給される。これらのオイル流路３６，３８は、ディスクキャリア１８のハブ３９内に、半径方向に分割された半月状の切欠として構成されている。圧力室２８及び３０とは反対側の２つの室４０及び４２内には、ばねエレメント４４，４６（それぞれ２つの板ばね４４ａ，４４ｂ若しくは４６ａ，４６ｂより成る）が配置されており、これらのばねエレメント４４，４６は、ピストン３２及び３４が操作されていない時に２つのクラッチユニット２ａ，２ｂを開放維持するので、エンジンとトランスミッションとの間の作用結合は得られない。２つのクラッチユニット２ａ，２ｂの多板若しくはディスク１６，２２を冷却するために、ディスクキャリア１８のハブ３９内に、周方向に分配配置されたそれぞれ複数の半径方向のオイル孔５０及び５２が設けられており、これらのオイル孔５０及び５２は、図示していないオイルポンプを介して供給された潤滑油を、ディスクキャリア１８の複数の環状のウエブ４８を介して、２つのクラッチユニット２ａ，２ｂのディスク１６，２２に適切に（必要に応じて）供給する。製造技術的な理由により開放して構成されたオイル流路５４は、半径方向端部が栓５６によって閉鎖されている。さらにディスク１６，２２への適切なオイル供給のために、各クラッチユニット２ａ，２ｂのためのディスクキャリア１８の外周面側において、環状のフランジを備えたオイルガイド薄板５８，６０がディスクキャリア１８に固定されている。これによって、各クラッチユニット２ａ，２ｂのために、円筒形のディスクキャリア１８の構成部の外周面に亘って閉じられた環状通路６２及び６４が形成される。この環状通路６２及び６４はオイル流路５４若しくは５５に接続されている。ディスクキャリア１８の外周面全体に、２つの環状通路６２及び６４に接続された孔６６が形成されており、これらの孔６６を介してディスク１６，２２に最終的にオイルが供給される。外側及び内側のクラッチドラム４，１０の外周面に、同様に、外周面全体に亘って分配配置された複数の孔（図示せず）が設けられており、これらの孔を介して潤滑油が再びオイルパンに戻し供給される。

２つの圧力室２８及び３０は側方が、ハブ３９に固定された、ピストン３２及び３４のための各１つの支持及びガイドエレメント６８及び７０によって制限される。２つの圧力室２８及び３０とは反対側に、支持エレメント６８，７０によって分離された２つの圧力補償室７２及び７４が配置されており、これらの圧力補償室７２及び７４は、他方側が、ピストン３２及び３４に固定された２つの環状薄板７６及び７８によって制限されている。２つの圧力補償室７２及び７４に、ハブ３９内に形成された半径方向のオイル流路８０並びに軸方向に延びるオイル流路８２を介してオイルが供給可能である。圧力補償室７２及び７４によって、ピストン３２及び３４に作用する遠心力（圧力室２８若しくは３０内に存在するオイルによって生ぜしめられる）が補償される。

車両を始動させるために、多板クラッチ２は次のように駆動される（図１参照）。例えば第２ギヤ段で始動される際に、開放状態にある第１のクラッチユニット２ａ（クラッチユニット２ｂも遮断されている）に、オイル容積流を制御可能な弁８４によってオイルが供給される。ディスク１６と２２との間に分配されるオイルは、始動及び牽引モーメントを生ぜしめる。この始動及び牽引モーメントによって車両は停止状態から制御されて、スムーズに始動されるようになっている。オイル容積流の調整可能性によって、クラッチユニット２ａ内に形成された、始動及び牽引モーメントのための油圧は、実際に存在する条件（車両の負荷、登り坂走行その他）に応じて適合される。車両が移動せしめられると直ちに、圧力室２８にオイル供給されてピストン３２がばねエレメント４４のばね力に抗して調節されることによって、クラッチユニット２ａは接続されるか若しくはクラッチが入れられる。こうして始めは牽引モーメントを形成するために利用されたオイルが、閉じたクラッチユニット２ａに供給される冷却オイルとして利用される。この場合、冷却オイル・容積流は、クラッチユニット２ａの運転状態（温度、負荷その他）に関連して制御される。車両の前記始動は、第１ギヤ段によって、クラッチユニット２ｂを介して同じ形式で行われる。

クラッチ装置の、図５に概略的に示された第２実施例には、機能のために重要な構成部分だけが記載されかつ図示されているが、この図５においては、同様に所望の始動及び牽引モーメントが、所望のオイル供給によって、互いに定置の間隔を保って配置されたディスク８６と８８との間に生ぜしめられる。この場合、内側のディスクキャリア１８′に相対回動不能に結合されたディスク８６は、スペーサリング９０によって間隔を保って保持されていて、「通常は」開放及び閉鎖しているクラッチユニット２′の端部摩擦ディスク１６′と固定リングとの間で軸方向に緊締されている。外側のディスクキャリア１０′（クラッチドラム）に相対回動可能に結合されたディスク８８は、コーム（櫛）状に、相応の中間スペースを維持しながらディスク８６内に係合し、この場合、ディスク８８をディスク８６で支持するために相応のスペーサホルダ９４が設けられている。さらに、外歯列を備えたディスク８８は、外側のディスクキャリア１０′の領域内で、例えば溶接によって形状接続（形状による束縛）的に互いに結合されている。

第１実施例と同様に、互いに所定の間隔を保って配置されたディスク８６と８８との間に形成された中間室内にオイルを所望に供給することによって牽引モーメントが生ぜしめられ、この牽引モーメントは車両を制御しながら始動させることを可能にする。この場合も、ディスクセットに供給されたオイル容積流の制御を介して自動車の運転状態に応じて必要とされる牽引モーメントの高さが調節可能である。自動車が停止状態から移動せしめられると、オイル供給は中断され、「通常の」クラッチユニットはクラッチが入れられた状態に移行せしめられる。

自動車の始動のために必要な牽引モーメントの形成は、ディスク８６，８８若しくはスペーサホルダ９４の構造的な構成によってさらに好都合に行われる。例えば図６に示されているように、スペーサホルダ９４内に通じる半径方向の開口９６、及びディスク８８内に通じる半径方向の開口９８，並びにディスク８６，８８内に通じる軸方向の開口１００によって、フロー抵抗（流れ抵抗）は周方向で上昇せしめられる。

液圧操作式の湿式クラッチの概略的な断面図及び機能図である。 ツインクラッチトランスミッションのための液圧操作式のクラッチの部分断面図である。 クラッチのディスクキャリアの第１の縦断面図である。 ディスクキャリアの第２の縦断面図である。 第２実施例による多板クラッチの部分断面図である。 ディスクセットの部分図である。

符号の説明

２ 多板クラッチ、 ２ａ，２ｂ クラッチユニット、 ４ 外側のクラッチドラム、 ６ 連行ディスク若しくはハブ、 ８ 開口、 １０ クラッチドラム、 １０′ 外側のディスクキャリア、 １２ 連行ディスク若しくはハブ、 １４ 開口、 １６ 多板若しくはディスク、 １６′ 端部摩擦ディスク、 １８ ディスクキャリア、 １８′ 内側のディスクキャリア、 ２０ 軸、 ２１ 外歯列、 ２２ 多板若しくはディスク、 ２４，２６ ピストン／シリンダユニット、 ２６′ 液圧機構、 ２８，３０ 圧力室、 ３２，３４ ピストン、 ３６，３８ オイル流路、 ３９ ハブ、 ４０，４２ 室、 ４４，４６ ばねエレメント、 ４４ａ，４４ｂ若しくは４６ａ，４６ｂ 板ばね、 ４８ ウエブ、 ５０，５２ オイル孔、 ５４，５５ オイル流路、 ５６ 栓、 ５８，６０ オイルガイド薄板、 ６２，６４ 環状通路、 ６８，７０ 支持及びガイドエレメント、 ７２，７４ 圧力補償室、 ７６，７８ 環状薄板、 ８０ 半径方向のオイル流路、 ８２ 軸方向に延びるオイル流路、 ８４ 弁、 ８６，８８ ディスク、 ９０ スペーサリング、 ９４ スペーサホルダ、 ９６ 半径方向の開口、 ９８ 半径方向の開口、 １００ 軸方向の開口

Claims (7)

1. 複数のクラッチディスクが設けられており、これらのクラッチディスクが、外歯列及び内歯列を備えた多板若しくはディスク（１６，２２）として交互に内側のディスクキャリア若しくは外側のディスクキャリア（４，１０，１８）に相対回動不能に受容されており、これらのディスクに、（湿式）クラッチを冷却するための潤滑油が供給されるようになっており、前記内側のディスクキャリア若しくは外側のディスクキャリア（４，１０，１８）が、エンジンとトランスミッションとの間で力の流れを形成するために液圧機構を介して操作されるようになっている形式の、自動車のエンジンとトランスミッションとの間に配置された多板クラッチを駆動するための方法において、
   少なくとも部分的に開放されたクラッチのクラッチディスク（１６，２２）間にオイルを適切に供給することによって、自動車を始動させるための牽引モーメントを生ぜしめるようにすることを特徴とする、自動車のエンジンとトランスミッションとの間に配置された多板クラッチを駆動するための方法。
2. ディスク（１６，２２）を冷却するための潤滑油を、牽引モーメントを形成するために使用する、請求項１記載の方法。
3. 牽引モーメントに適合させるために、クラッチディスク（１６，２２）間に供給されたオイル容積流を制御可能にする、請求項１又は２記載の方法。
4. エンジンとトランスミッションとの間に配置された自動車用のクラッチ装置であって、湿式運転可能な複数のクラッチディスク（１６，２２）を備えていて、これらのクラッチディスクが、外歯列及び内歯列を備えた多板若しくはディスクとして、交互に内側若しくは外側のディスクキャリア（１０′，１８′）に相対回動不能に受容されており、かつ、クラッチを操作するための液圧機構（２６′）を備えている形式のものにおいて、
   内側のディスクキャリアと外側のディスクキャリア（クラッチドラム）との間に付加的に、２つのディスクキャリア（１０′、２８′）に相互に相対回動不能に結合された多板若しくはディスク（８６，８８）が設けられており、これらの多板若しくはディスクが、クラッチの運転状態とは無関係に互いに間隔を保たれていて、これらの多板若しくはディスク間に、始動モーメント及び牽引モーメントを生ぜしめるためのオイルが供給されるようになっていることを特徴とする、クラッチ装置。
5. 外歯列を備えたディスク（８８）がスペーサホルダ（９４）を介して、内歯列を備えた多板（８６）で支えられている、請求項４記載のクラッチ装置。
6. 内歯列を備えたディスク（８６）がディスクキャリア（１８′）に軸方向で固定されていて、スペーサリング（９０）によって間隔を保たれている、請求項４又は５記載のクラッチ装置。
7. 互いに不動の間隔を保って配置された、内歯列を備えたディスクと外歯列を備えたディスク（８６，８８）が、別個の構造ユニットとして構成されている、請求項４から６までのいずれか１項記載のクラッチ装置。

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