JP2004346316A - スルホン酸基含有シロキサン類、プロトン伝導材料およびそれを用いた燃料電池 - Google Patents

スルホン酸基含有シロキサン類、プロトン伝導材料およびそれを用いた燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 高温かつ低湿度な環境下で高いイオン伝導性を示す硬化性ケイ素化合物を提供する。更には、この硬化性ケイ素化合物を電解質として用いた、高性能の燃料電池を提供する。
【解決手段】 スルホン酸基の含有量が2mol/g以上であるシロキサン類。
【選択図】 なし

Description

本発明は、プロトン伝導体として用いられる硬化性ケイ素化合物、さらにはプロトン伝導体を用いた燃料電池に関するものである。
プロトン伝導体は、燃料電池、Li電池(リチウム電池)等の二次電池、空気電池等の電解質や、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の電気化学的デバイスに用いられる電解質等として用いられている。
水素−酸素燃料電池に代表される燃料電池は、その反応生成物が原理的には水のみであり、地球環境への悪影響がほとんどない発電システムとして知られている。特にパーフルオロスルホン酸型陽イオン交換樹脂を用いた固体高分子電解質形燃料電池は、近年の研究が進んで高密度、高出力が可能となりつつあり、自動車等の車載用電源や家庭用電源、更には携帯機器用電源としての実用化が大いに期待されている。
固体高分子電解質を用いた燃料電池に用いる電解質板としては、通常厚さ50〜200μmのプロトン伝導性イオン交換樹脂が用いられている。特に、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が、基本特性に優れていることから、広く研究されている。しかし、かかるイオン交換膜は、高温条件での耐久性が不十分であるという欠点や、フッ素系電解質は製造が困難であるため、非常に高価であるという欠点がある。
さらにパーフルオロカーボン重合体系のイオン交換膜は、膜が十分に含水した状況でなければ良好なプロトン伝導性を示さないとの問題もあった。このために、前記のイオン交換膜は乾燥した状態や水の沸点を越える温度では良好なプロトン伝導性が得られない。そのために燃料電池には、電気化学的反応に直接関与しない水を管理するシステムが必要であり、また水の沸点以上で作動させることは困難であった。
そこで、低コストで、より高温かつ低湿度の環境で良好なプロトン伝導性を示す、プロトン伝導体の研究も盛んである。その中でもケイ素化合物を用いたプロトン伝導体の研究も盛んである。しかしながら、高温かつ低湿度の環境で燃料電池の実用に十分な性能を有するプロトン伝導体用のケイ素化合物は未だ開発されていない。
例えば、非特許文献1には、シリカゲルやメソポーラスシリカなどにリン酸を含浸させたプロトン伝導体の例がある。しかしながら、本方法で調製されたプロトン伝導体では、プロトン伝導に直接関与するリン酸がシリカに化学的に固定されていないため、燃料電池の発電条件において、容易にリン酸がシリカゲルより流出してしまうため、材料の安定性に根本的な問題がある。
また、非特許文献2等には、ヘテロポリ酸やタングステン酸とケイ素アルコキシドからゾルゲル法で調製されるプロトン伝導体の例がある。しかし、これらの材料では、開示されているプロトン伝導度は実用上不十分である。
さらに、非特許文献3には、メルカプトプロピルトリメチルシリカ(MPTMS)とケイ素アルコキシド化合物を加水分解、共縮合させる、いわゆるゾルゲル法によってチオール基を有するシリカゲルを調製し、チオール基を過酸化水素でスルホン酸基に酸化することによって得られた、スルホン酸基量が最大1.1mmol/gのプロトン伝導体の例が
ある。しかし、この文献では、材料のプロトン伝導度が温度100℃以下かつ相対湿度100%という加湿条件下の測定例があるのみである。一方で、文献中の記述では、材料の含水量が低下すると大きくプロトン伝導度が低下するとの記述もあり、本発明者らが100℃、相対湿度5%以下でプロトン伝導度を測定したところ、ほとんど確認されなかった(1.0×10-7[s/m]以下)。
この様に、従来技術によるケイ素化合物では、100℃以上の高温でかつ低湿度の環境で燃料電池の実用に十分な程度の高い性能を有するプロトン伝導体を得ることは困難であった。
J. Am. Ceram. Soc.、第83巻、3004項(2000年) Solid State Ionics、第148巻、607項(2002年) Microporous and Mesoporous Materials、第52巻、29項(2002年)
以上の理由から、高温かつ低湿度な環境下で高いプロトン伝導性を示すプロトン伝導体の提供が強く望まれていた。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、高温かつ低湿度な環境下で高いプロトン伝導性を示す硬化性ケイ素化合物を提供すること、更には、この硬化性ケイ素化合物を電解質として用いた、高性能の燃料電池を提供することに存する。
本発明者らは、従来よりも多くのスルホン酸基を化学的に結合させた硬化性ケイ素化合物を用いることにより従来よりも高いプロトン伝導度を示すプロトン伝導材料が得られると考え、鋭意検討した。
スルホン酸基を有するケイ素化合物を得る方法としては、以下(1)〜(3)の方法が知られていたが、それぞれスルホン酸基の含有量を増加させるには問題点があった。
(1)シロキサンに対して、メルカプト基を有するシランカップリング剤を縮合させて、メルカプト基を有するシロキサンを得た後、該メルカプト基を酸化してスルホン酸基を有するシロキサンを製造する方法。
この方法によれば、シロキサンに対するメルカプト基を有するシランカップリング剤の縮合効率に限界があり、シロキサンのスルホン酸基含有量は最大でも約1.5mmol/gであった。
(2)メルカプト基を有するシランカップリング剤とケイ素アルコキシドとを縮合させて、メルカプト基を有するシロキサンを得た後、該メルカプト基を酸化してスルホン酸基を有するシロキサンを製造する方法。
この方法によれば、シロキサン内部のメルカプト基が酸化され難く、酸化反応によりメルカプト基同士が反応してジチオ体を形成する等の副反応が起きるため、メルカプト基からスルホン酸基への酸化効率に限界があり、シロキサンのスルホン酸基含有量は最大でも約1.5mmol/gであった。
(3)メルカプト基を有するシランカップリング剤の該メルカプト基を酸化してスルホン酸基を有するシランカップリング剤を得た後、該スルホン酸基を有するシランカップリング剤を縮合させてスルホン酸基を有するシロキサンを製造する方法。
この方法によれば、メルカプト基が酸化されてスルホン酸になる前にシランカップリング剤の重合が進み、シロキサン内部のメルカプト基が酸化できないため、全メルカプト基の数%しかスルホン酸にならず、結果としてシロキサンのスルホン酸基含有量は0.1mmol以下であった。
ところが、本発明者らは、(3)の方法を試みてMPTMSと過酸化水素とを混合するとゲル状に固まった混合物が生成したが、従来該ゲル状の混合物からシロキサンを分離していたところ、これを放置すると、驚くべきことに該ゲル状の混合物が自然に液化して液体となることを見出した。そして、該液体から得られたシロキサンを用いた成形体が、従来にない多くのスルホン酸基を含有するとともに高いプロトン伝導度を示すことを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、スルホン酸基の含有量が2mmol/g以上であるシロキサン類および該シロキサン類を含む硬化性組成物に存する。また、Si−NMR測定において、Si−OH結合を有さないSiをSi(A)とし、1個の−OH結合を有するSiをSi(B)としたとき、Si(A)/Si(B)ピークの比の値が1.0以上であることを特徴とする、該シロキサン類に存する。そして、酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子を有するシランカップリング剤を酸化した後にそれを縮合または酸化と同時に縮合させることによって得られることを特徴とする、スルホン酸基の含有量が2mmol/g以上であるシロキサン類の製造方法に存する。さらにはシロキサン類を含有するプロトン伝導材料および該プロトン伝導材料を含む燃料電池に存する。
本発明のシロキサン類は、イオン伝導体として使用した場合に、従来よりも高いイオン伝導性を有するイオン伝導体を得ることができる。特に、本発明のシロキサン類を用いて、プロトン伝導体を構成すれば、燃料電池等の電解質に好ましく用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のシロキサン類は、酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子含有基を有するシランカップリング剤(以下、シランカップリング剤という)と酸化剤とを接触させて、該硫黄原子含有基を酸化した後にそれを縮合または酸化と同時に縮合させることによって得られる。
(1)酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子含有基を有するシランカップリング剤
シランカップリング剤は、加水分解によりカップリングするケイ素化合物であれば特に限定されないが、本発明においては、通常以下の一般式(1)で表されるケイ素化合物、または一般式(1)で表されるケイ素化合物のオリゴマーである。
Figure 2004346316
(式(1)において、X;加水分解性の置換基、Y;酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子含有基、n;1〜3の整数を表す。各XおよびYはそれぞれ異なっていても同じでも良い。)
Xとしては、加水分解性を有する置換基であれば特に限定されないが、通常アルコキシ基、アリーロキシ基またはハロゲンが挙げられる。アルコキシ基の炭素数は通常1以上であって、通常10以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アリーロキシ基の炭素数は通常6以上12以下である。
アルコキシ基、アリーロキシ基の炭素数が大きいと、追って説明する加水分解生成物の分子量が大きくなり、加水分解生成物の除去が困難になる。また、溶媒として水を用いた場合には、水との相溶性が悪くなる。よって、炭素数は少ない方が好ましく、アルコキシ基の方が好ましい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロパノキシ基、ブトキシ基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、フェノキシ基等が挙げられるが、中でもメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が好ましい。
上記加水分解性の置換基は、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン類で置換されていてもよい。
Yとしては、酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子含有基であれば、特に限定されないが、通常、硫黄の酸化数が5以下の硫黄原子を含む官能基を含む置換基であり、具体的には、メルカプト基、亜硫酸基等を含む置換基が挙げられ、このうちメルカプト基を含む置換基が好ましい。
上記Yとしては、上述のメルカプト基、亜硫酸基等の官能基自体や該官能基が酸化剤や溶媒に対する反応性の低い基と結合してなる置換基が挙げられるが、このうち後者が好ましい。酸化剤や溶媒に対する反応性の低い基としては、酸化剤により影響を受ける基を有さない及び/又は溶媒との反応性基を有さないものであれば特に限定されないが、通常炭化水素基が用いられる。該炭化水素基の炭素数は、通常12以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、最も好ましくは3以下であり、通常1以上である。
炭化水素基の種類としては、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基が挙げられ、好ましくは、アルキレン基およびアリーレン基であって、アルキレン基が最も好ましい。これらの基は硫黄原子の酸化反応に影響を及ばさない置換基を含んでいてもよい。アルキレン基としては炭素数4以下が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基等が好ましく挙げられる。アリーレン基としては炭素数9以下が好ましく、フェニレン基、メチルフェニレン基およびジメチルフェニレン基等が好ましく挙げられる。
好ましい酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子含有基としては、メルカプトアルキル基やメルカプトアリ−ル基やメルカプト基が挙げられ、メルカプトアルキル基が特に好ましい。メルカプトアルキル基としては、メルカプトメチル基、2−メルカプトエチル基、3−メルカプトプロピル基等が挙げられる。メルカプトアリ−ル基としては、メルカプトフェニル基や、メチル基やエチル基等がベンゼン環に置換したアルキルメルカプトフェニル基等が挙げられる。
酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子含有基に含まれる硫黄原子の数は何個でもよいが、通常1個である。
nの数は1〜3であるが、より好ましくは2又は3である。nが小さいと、プロトン伝導体の強度が上がらない可能性があるので、多い方がよい。
nが複数の場合、加水分解性の置換基の種類は、同一であっても異なった種類のものであってもよい。
またシランカップリング剤として、XやYの種類及び数が異なる有機ケイ素化合物の混合物を用いてもよい。
さらに、これらのシランカップリング剤は、上述の有機ケイ素化合物が2以上縮合したオリゴマーであっても構わないが、オリゴマーに含まれるケイ素原子の数は、通常2〜20個であり、10個以下が好ましく、5個以下がより好ましい。
一般にオリゴマーが大きい方が最終的に得られるプロトン伝導度が上がるが、シランカップリング剤の溶媒に対する溶解性、酸化剤の処理の収率等を勘案し、これらのバランスを考えてオリゴマーの種類を検討する。
こうしたオリゴマーは、通常、加水分解性の置換基を有する有機ケイ素化合物に加水分解性の置換基の10モル%以上1000モル%以下の水を作用させることによって得るこ
とができる。
シランカップリング剤は、全体として分子量は通常100以上、好ましくは150以上、通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下である。分子量が大きすぎると、追って例示する溶媒に溶解しづらくなる。
最も好ましい有機ケイ素化合物の具体例のひとつとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランや、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
(2)酸化および縮合方法
上記のシランカップリング剤と酸化剤とを接触させ、シランカップリング剤に含まれるスルホン酸基に変換可能な硫黄原子含有基をスルホン酸基に酸化する。そして、酸化剤の後、または酸化剤と同時に水を接触させて、シランカップリング剤を縮合させる。
酸化剤としては硫黄原子含有基をスルホン酸基に酸化できるものであれば特に限定されないが、溶媒に可溶な酸化剤が好ましい。酸化剤としては、過酸化物が好ましく、中でも過酸化水素がより好ましく、特には過酸化水素水が好ましい。
シランカップリング剤と接触させる酸化剤の量は、シランカップリング剤中の硫黄原子1モルに対して、酸化当量として0.5モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、さらに好ましくは3モル当量以上である。酸化剤が少ないと、酸化が進行しづらいことや、後述のシロキサン類を含む溶液、すなわち硬化性組成物が均一なシロキサンの溶液とならない等の問題が生ずる。酸化剤の量の上限は特に制限はないが、シランカップリング剤中のメルカプト基1モルに対して酸当量として、通常10000モル等量以下、好ましくは1000モル等量以下、より好ましくは100モル当量以下である。酸化剤が多すぎると、経済性が悪くなったり、スルホン酸基が硫酸まで酸化されたり、その他の好ましくない酸化反応がおこることがある。
酸化剤の濃度が高いと、後で溶媒を除去する際の負荷が下がるため好ましいが、高すぎると安全性が確保できなかったり、溶液の粘度が上がってシランカップリング剤との混合がしづらくなるため、好ましくない。例えば過酸化水素であれば、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であって、通常60重量%以下、より好ましくは40重量以下である。
酸化する方法は、シランカップリング剤と酸化剤とを充分に接触させられれば特に限定されないが、該シランカップリング剤と酸化剤とを液相で混合するのが好ましい。よって、シランカップリング剤は液体であるか、もしくは溶媒に溶解している状態であることが好ましい。溶媒が存在しない状態でもシランカップリング剤自体が液体であれば溶媒を用いなくてもよい。
また、シランカップリング剤の溶液に酸化剤を溶解させてもよく、酸化剤の溶液にシランカップリング剤を溶解させてもよい。
本反応で用いられる溶媒としては、溶質に対して不活性であれば特に限定されない。通常水および/または有機溶媒が用いられ、シランカップリング剤および酸化剤の種類によって、各々適宜選択することができる。各々の溶媒は、異なっていてもよいが、異なる溶媒を用いる場合は、どちらの溶媒もシランカップリング剤および酸化剤を溶解する溶媒であるのが好ましい。
有機溶媒としては、アルコール類、あるいはグリコール誘導体、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類等のうちの1種、または2種以上を混合し使用する。有機溶媒は、通常炭素数1以上10以下であって、8以下が好ましく、6以下がより好ましい。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、オクタノール、n−プロピルアルコール、アセチルアセトンアルコール等が挙げられる。
グリコール誘導体としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
炭化水素類としてはベンゼン、ケロシン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エステル類としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等が挙げられる。
エーテル類としては、エチルエーテル、ブチルエーテル、2−α−メトキシエタノール、2−α−エトキシエタノール、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
これらの有機溶媒のうち、スルホン酸含有基に対する溶解性が高く、また、水と相分離しづらいためアルコール類が好ましい。アルコール類の炭素数は、水との相溶性や、後の溶媒を除去のしやすさの観点から、炭素数は1以上6以下が好ましく、4以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール又はブタノールが好ましく、中でもメタノールやエタノールが好ましい。
縮合の際には、シランカップリング剤に対して、シランカップリング剤の加水分解性置換基の0.1モル当量以上、好ましくは1モル当量以上、1000モル当量以下、好ましくは100モル当量以下の水を接触させる。
酸化剤として過酸化水素を、溶媒として水または水を含む溶媒を、そしてシランカップリング剤として上述のアルコキシシラン類を用いた場合は、シランカップリング剤中のチオール基がスルホン酸基に酸化されることと同時に、アルコキシシラン類の加水分解縮合反応も進行する。その結果、より溶媒中で安定な硬化性ケイ素化合物を合成することができるために好ましい。このとき、過酸化水素の溶媒中に炭素数1〜5の低級アルコール等、水以外の溶媒が溶媒全体の50重量%以下含まれていても構わない。
本反応において、シランカップリング剤の濃度は、酸化剤と混合できる範囲であれば特に制限されないが、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、通常100%以下である。濃度が低すぎると溶媒を除く工程の負荷が大きくなるため、好ましくない。
シランカップリング剤と酸化剤とを接触させる温度は特に制限されないが、通常−50〜200℃で行う。
シランカップリング剤と酸化剤とを接触させる圧力は、特に制限されず、減圧下であっても加圧下であっても構わないが、通常常圧である。
シランカップリング剤と酸化剤とを接触させる時間は、特に制限は無いが、接触後の混合物の形態が均一な溶液になるまでの時間、保持又は攪拌することが好ましい。通常180分から20日である。
シランカップリング剤の種類や接触させる条件によっては、接触させるべき所定量の過酸化水素のうち、全部もしくはその一部分を接触させた段階で、溶液が固化、ゲル化したり固体が析出する場合がある。そのような場合でも所定量の過酸化水素を全て接触させた
上で、溶媒が蒸発しないような状況下で保持することにより均一な溶液を得ることができる。
こうして得られた溶液は、常温、常圧で長期間安定であり、例えば空気中、常温、常圧で20日以上放置しても安定に保存できる。
(3)硬化性組成物
こうして、スルホン酸基の含有量が2mmol/g以上であるシロキサン類を含む溶液、すなわち本発明の硬化性組成物が得られる。
本発明のシロキサン類のスルホン酸基の量は、2mmol/g以上であるが、その量は、該シロキサン類の溶液を0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液等の既知の濃度のアルカリを用いて、中和滴定により求めることができる。
該シロキサン類の分子量は通常200以上、好ましくは300以上であって、通常5000以下、好ましくは1000以下である。
スルホン酸基の含有量は、シランカップリング剤に含まれる酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子含有基の量や酸化剤の混合量等によって制御することができる。なお、本発明のシロキサン類は、少なくともスルホン酸基と酸素原子とを有するが、その他に炭素原子、水素原子、窒素原子などの他の原子が含まれていても構わない。
本発明のシロキサン類において、スルホン酸基は直接、もしくは炭化水素基等の酸化剤や溶媒に対する反応性の低い基を介して、ケイ素原子に化学的に結合している。化学的に結合しているとは、例えば1つ以上の共有結合を介して結合していることであり、例えば水等の溶媒に均一に溶解させた場合でも、スルホン酸基が硫酸として遊離しない状態のことを示す。このことは、例えば本発明のケイ素化合物を水を含有する溶媒に溶解させたのち、溶液をイオンクロマトグラフィー法により遊離した硫酸を分析することによって確かめることができる。
スルホン酸基とケイ素原子とが炭化水素基を介して結合している場合、炭化水素基としては、前述のシランカップリング剤の説明において記載したのと同様の基が挙げられる。
本発明のシロキサン類は、シロキサン中のSiの環境にも大きな特徴がある。すなわち、Si−NMR測定において、Si−OH結合を有さないSiをSi(A)とし、1個のSi−OH結合を有するSiをSi(B)としたとき、Si(A)/Si(B)ピークの比の値が1.0以上、好ましくは3.0以上、さらに好ましくは4.0以上であることを特徴とする。このことは、本発明のシロキサン類は、末端シラノール基のモル数がSi原子のモル数以下であることを意味する。
Si−NMRにおけるSi(A)、Si(B)ピークについて以下に説明する。
シロキサン類の構造は、一般的にはSi原子が酸素原子を介して共有結合したSi−O−Si結合が基本骨格となる。ここで、1つのSiに注目した場合、下記式(1)に示す様に4個のO−Si結合を有するSi(Q4)や、下記式(2)に示すように3個のO−Si結合を有するSi(Q3)等が存在する。Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順位にQ4ピーク、Q3ピーク、と呼ばれる。
また、トリアルコキシ置換のシランカップリング剤由来のシロキサン類では、下記式(3)に示すように3個のO−Si結合とシランカップリング剤由来の置換基(R)との結合を有するSi(T3)や、下記式(4)に示すように2個のO−Si結合とシランカップリング剤由来の置換基(R)との結合を有するSi(T2)等が存在する。Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順位にT3ピーク、T2ピークと呼ばれる。
Figure 2004346316
これらのSiに関して、上記のSi(Q4)やSi(T3)のように、Si−OH結合を有さないSiをSi(A)とし、上記のSi(Q3)やSi(T2)のように、1個の−OH結合を有するSiをSi(B)とすると、本発明のシロキサン類は、Si−NMR測定によるA/Bの値が、通常1.0以上、中でも3.0以上、さらには4.0以上であることが望ましい。ここで、A/Bの値とは、上述したシロキサン類の構造の中で、Si(B)に対するSi(A)のモル比を意味する。
上記のA/B値が1.0以上の化合物で、スルホン酸基を2mmol/g以上含有するシロキサン類の報告例はない。
なお、Si−NMRにおけるA/Bの値は、シランカップリング剤としてMPTMSを用いた場合には、ヘキサメチルジシロキサンのシグナルを7.2ppmとした場合に、−62ppmから−74ppmまでのピークの積分値をSi(A)、−54ppmから−62ppmまでのピークの積分値をSi(B)として算出する。測定条件にピークが影響を受ける場合には、実施例の説明において後述する条件においてSi−NMR測定を行い、その結果に基づいて算出すればよい。
本発明の硬化性組成物中の硬化性ケイ素化合物であるシロキサン類の濃度は、通常0.1重量%以上であり、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。シロキサン類が溶解する範囲で高濃度である方が好ましい。
本発明のシロキサン類は、溶媒中に均一に溶解する。溶液におけるシロキサン類の濃度は、例えば溶液のICP発光分光分析等により、溶解しているケイ素の量を定量することによって算出できる。溶媒中にケイ素原子が含有される場合には、該シロキサン類を溶解させる前にあらかじめ溶媒中のケイ素化合物量を定量しておき、ケイ素化合物を溶解させ
た後の値から差し引く必要がある。
本発明の硬化性組成物としては、前述の方法により得られた溶液をそのまま使用してもよいが、該硬化性組成物は、シランカップリング剤の溶媒、酸化剤の溶媒、酸化剤に由来する成分、硫黄含有基の酸化反応による副生成物を含むため、これらのうち、酸化剤に由来する成分、すなわち未反応の酸化剤や酸化剤の分解物を除去する方が好ましい。例えば、酸化剤として過酸化水素水を用いた場合には白金等の過酸化水素を自己分解できる金属等により酸素と水とに分解して、過酸化水素を除去する。
酸化剤として過酸化水素水を用いた場合、水を含有する溶媒における水の含有量は0.1%重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上である。
溶液中のシロキサン類の濃度やシロキサン類由来のケイ素濃度は、必要に応じて上述した水および/または有機溶媒を加えたり、減圧蒸留等により溶媒のみを除去することによって所定の濃度に調節できる。
ここでいう有機溶媒としては、前述のシランカップリング剤および酸化剤と同様の有機溶媒が使用できる。
(4)成形方法
この硬化性組成物から溶媒を除去して、さらに必要に応じて加熱処理を行うことにより硬化させ、シロキサン類の成形体を得ることができる。本発明の硬化性組成物中には、本発明のシロキサン類の他に、助剤を含有させることにより、成形体の成形を容易にしたり、成形体の物性すなわちプロトン伝導度や強度等を制御することができる。該助剤として、アルコキシシラン類やシランカップラーが挙げられる。
ここで硬化とは、固体の状態になることを示す。固体の状態とは、例えば粒子状、膜状であることを言う。
本発明の硬化性組成物を成形する方法は制限されない。例えば薄膜状に硬化成型するための方法として、シロキサン類の溶液や、本発明の硬化性組成物からキャステイング法等の公知の薄膜形成方法を用いることができる。キャステイング法とは、シロキサン類の溶液である本発明の硬化性組成物を基板上に一定の厚さに展開した後、溶媒を乾燥等によって除去することによって、シロキサン類の硬化した薄膜を得る方法である。
溶媒を除去する方法は、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の任意の溶媒除去方法が用いられる。乾燥させるときの温度は500℃以下、好ましくは400℃以下であり、加熱処理の雰囲気は、空気等の含酸素雰囲気、窒素や二酸化炭素等の不活性ガス雰囲気や空気と不活性ガスとの混合ガス雰囲気がよい。
こうして硬化性組成物から得られた硬化体は、シロキサン類に含有されていたスルホン酸基と酸素原子を含有する。スルホン酸基の量は硬化体1g当たり、2mmol以上、好ましくは2.5mmol以上であり、通常5mmol以下である。
硬化性ケイ素化合物の硬化体中のスルホン酸基の量は、硬化体を飽和食塩水中に分散させて、硬化体中のスルホン酸基由来のプロトンをナトリウムイオンと交換させた後、濾過して得られた濾液中のプロトン量を、既知の濃度のアルカリで中和滴定することによって定量することができる。
硬化体の形状は、破砕状の粒子状であっても、不定形や球状の粒子状であっても良い。破砕状の粒子であれば、取扱いの容易性の面から、いったんこれを微粉砕し、錠剤状にプレス成形したり、押出品,ペレット品,粒状品に成形したりすることにより、好ましく使用される。
このような硬化体は、プロトン伝導材料として用いることができる。プロトン伝導材料の形状は任意であるが、薄膜状が好ましい。
(5)燃料電池の電解質
本発明のシロキサン類の硬化体はプロトン伝導材料として、特に燃料電池の電解質として好ましく用いられる。以下、本発明の硬化性ケイ素化合物の硬化体を燃料電池の電解質として用いる場合について説明する。
(燃料電池の原理説明)
燃料電池は、水素やメタノールのような燃料を電気化学的に酸化して、直接電力を取り出す方式である。特に最近注目されている固体高分子電解質形燃料電池は、常温から作動でき、高出力密度が得られ、原理的に水や二酸化炭素のみが生成するという特徴を持つ。このため、近年のエネルギー、地球環境問題への社会的要請の高まりと共に電気自動車用電源、定置式電源、移動式(携帯式)電源などとして大きな期待が寄せられている。
燃料電池の発電原理は、次の通りである。電解質である膜状のイオン交換体(プロトン伝導体)の両面に燃料極(アノード)と空気極(カソード)の二つの電極を接触させる。燃料極に水素やメタノール等の燃料を供給すると燃料が電気化学的に酸化されて、プロトンと電子が発生する。例えば、水素やメタノールの場合、以下の式のような反応が起こる。
Figure 2004346316
発生したプロトンは、電解質である膜状のイオン交換体(プロトン伝導体)中を通って空気極に移動する。一方、電子は外部負荷回路を通って、空気極へ移動する。空気極ではプロトンと空気中の酸素とで、
Figure 2004346316
の反応が起こり、水の生成と共に電気エネルギーが得られる。従って、プロトン伝導体を電解質として用いた場合、電解質中を移動するプロトンの早さ、すなわち電解質に用いるプロトン伝導体中のプロトン伝導度の大きさ(プロトン伝導性)は、燃料電池の性能を決定する重要な性質である。つまり、燃料電池電解質に用いるためには、プロトン伝導度は高い程好ましい。
(電解質)
本発明のシロキサン類を用いたプロトン伝導材料は通常100℃、相対湿度10%以下でのプロトン伝導度が1.0×10-4[s/cm]以上、好ましくは1.0×10-3[s/cm]以上のものである。また140℃、相対湿度0.5%でのプロトン伝導度が1.0×10-4[s/cm]以上、更に好ましくは1.0×10-3[s/cm]以上である。上限としては通常10[s/cm]以下である。
また、シロキサン類のスルホン酸基の含有量を変化させることにより、プロトン伝導度を制御することができる。さらに、本発明のシロキサン類をプロトン伝導材料として用いる場合は、その何れか一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
さらに、シロキサン類と共に、含酸素、含窒素化合物を含有させることができる。含酸素化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレング
リコール、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシド等のポリエーテル材料や、ポリエチレンカーボネイト、ポリプロピレンカーボネイト、ポリブチレンカーボネイト等のポリカーボネイト材料、ポリエステル材料、ポリアクリル酸類が挙げられる。含窒素化合物としては、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズビスイミダゾールや、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等のイソシアヌレート化合物等が挙げられる。このような含酸素、含窒素化合物を含有させることにより、スルホン酸基の酸強度を調節し、プロトン伝導度を制御することができる。
また、シロキサン類を多孔性の材料の細孔中に含有させることにより、プロトン伝導材料とすることもできる。
シロキサン類を多孔性の材料の細孔中に含有させる方法としては、例えば、固体への各種化合物の担持方法としてよく知られている含浸法、具体的には吸着(adsorption)法、ポアフィリング(pore-filling)法、“incipient wetness”法、蒸発乾固(evaporation to dryness)法、およびスプレー(spray)法等等が用いられる。
多孔性の材料としては、シリカゲル、MCM−41やMCM−48等のメソポーラスシリカ材料、各種ゼオライト等が挙げられる。
燃料電池の電解質の形状は特に限定されないが、通常は膜状、フィルム状、シート状であり、これらの厚さは通常1μm以上20mm以下である。電気抵抗を下げるためにはより薄くすることが好ましい。すなわち、1mm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
本発明のシロキサン類を、燃料電池の電解質として所望の形状に成型するために、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPVDF(ポリビニリデンフルオライド)のようなバインダーや成形剤を使用しても構わない。本発明のシロキサン類を含有した多孔性材料についても、同様にバインダーや成形剤を使用して所望の形状に成形することができる。
また、電解質がそれ自身、単独でその形状を維持しなくても、燃料極や空気極、又はカーボンペーパー、カーボンクロス、グラファイト板のような支持体上に0.001〜20mm程度に薄膜化、もしくは積層させたものでも構わない。このときの一般的な方法としては、キャステイング法、デイッピング法、スピンコート法等の公知の薄膜化技術、コーテイング技術が使用できる。この場合も、PTFEやPVDFのようなバインダーや成形剤を使用しても構わない。
本発明のシロキサン類を用いた電解質板を使用し、この電解質板を燃料極(アノード)と空気極(カソード)とで挟持した起電部を構成することで、燃料電池を形成することができる。このときの電解質板は、本発明のケイ素化合物を、燃料電池として使用する形状(通常シート状)に成形したものが好ましい。これは、燃料電池の組み立て作業中及び、組み立て後の運転時に一定の形状を保つことができる程度の形状保持性を有していることが好ましいとの意味である。
(アノード・カソード)
燃料電池の燃料極(アノード)には、通常、水素やメタノールを電気化学的に酸化して、プロトンと電子を生成させるための白金等の電極触媒が含有される。空気極(カソード)には、アノードから電解質中を伝導したプロトンを水に酸化するための白金等の電極触媒が含有される。電極触媒として用いられる白金の一部は、必要に応じてパラジウムやルテニウムなどの他の貴金属で置き換えたり、合金化してもよい。
また、アノード、カソードには、集電のための、電気伝導性化合物が含まれる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制約されるものではなく、種々変形して実施することが可能である。
(実施例1)
<硬化性ケイ素化合物の調製>
信越化学製3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン37重量部に対して、エタノール63重量部を大気圧下室温で加えて溶解させた。ここに、蒸留水10重量部を加えて、オイルバスで70℃下3時間攪拌した。溶液を室温まで冷却した後に、市販の三菱瓦斯化学製31%過酸化水素水溶液75重量部をマイクロフィーダーを用いて一定速度で3時間かけて攪拌しながら滴下した。その後の混合物をオイルバスで70℃、60時間保持することによって均一な溶液を得た。この溶液中に室温下で白金片を入れて攪拌することにより残留した過酸化水素を除去して、無色透明の均一溶液を得た。この溶液は、本発明の硬化性ケイ素化合物が溶解した溶液である。
得られた硬化性組成物中のSi濃度をICP発光分光分析によって定量したところ、3.2重量%であった。本実施例ではケイ素原子の由来は実質上3−メルカプトプロピルトリメトキシシランに由来するケイ素化合物のみである。
Si濃度測定結果と、スルホン酸基の量の測定結果から、溶解しているケイ素化合物中のスルホン酸基とケイ素化合物に由来するケイ素原子とのモル数比は、1.0と算出された。
Varian社製NMR装置(「INOVA500」)を使用して、外部磁場11.7ステラにおいて、得られた硬化性組成物の29Si−NMR測定を行った。サンプルチューブは外径10mmのものを用いて、その中に標準物質としてヘキサメチルジシロキサンの重水素置換クロロホルム溶液を入れた外径5mmのサンプルチューブを入れて測定を行った。29Si−NMRの化学シフトは、ヘキサメチルジシロキサンのシグナルを7.2ppmとした。測定は、25℃、フリップ角45℃、パルス繰り返し時間31秒にて実施した。
その結果、得られたスペクトルにおいて、−62ppmから−74ppmまでのピークの積分値をSi(A)、−54ppmから−62ppmまでのピークの積分値をSi(B)としたところ、A/Bの値は4.5であった。
<硬化性ケイ素化合物の硬化体の調製>
得られた硬化性組成物をフッ素樹脂膜上にキャステイングして、溶媒を室温下で1週間かけて乾燥することにより、厚さ0.15mmの薄膜状の硬化性ケイ素化合物の硬化体を得た。
この硬化体10重量部を飽和食塩水中に分散後、室温下15分間攪拌処理することによって、硬化体中のスルホン酸基中のプロトンを食塩中のナトリウムイオンと交換させた。混合物を濾過して得られた濾液を、0.025規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した結果、硬化体中に含まれていたスルホン酸基量は、4.9mmol/gと算出された。
<硬化体のプロトン伝導度の測定>
得られた薄膜状のケイ素化合物を、金メッキを施したステンレス電極に挟むことにより評価用セルを作製し、交流インピーダンス法(日置電機製LCRハイテスタ、測定周波数0.1Hz〜5MHz)により、恒温槽中乾燥条件下に、140℃(相対湿度0.5%以下)および100℃(相対湿度約1.1%)におけるプロトン伝導度を測定した。その結果、得られた伝導度は、2.4×E(−2)[S/cm]および8.2×E(−3)[S/cm]であった。
(比較例1)
実施例において、ケイ素化合物の代わりにスルホン酸基を1.1mmol/g含む公知のプロトン伝導体であるナフィオン(ナフィオン115、ElectroChem社製)
を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた伝導度は1.1×E(−5)[S/cm]および8.2×E(−3)[S/cm]であった。
(比較例2)<メルカプト基を有するシランカップリング剤を縮合させて、メルカプト基を有するシロキサンを得た後、該メルカプト基を酸化して得たスルホン酸基を有するシロキサンを用いたプロトン伝導体>
第一工業製薬株式会社製「エパンU103」1.6gに水106mlを加えて、45℃で攪拌下に、35重量%の塩酸20mlを滴下し、30分攪拌した。この溶液に、テトラエトキシシラン3.0gと3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.2gを5分かけて滴下し、45℃下に8時間攪拌後、さらに80℃で3時間攪拌した。混合液を室温に冷却した後、31重量%過酸化水素水2.4gと水20gの混合溶液を滴下して室温で8時間攪拌し、さらに70℃で6時間攪拌した。得られた固体を濾過、水洗して、50℃で5時間乾燥した。さらに4%酸素/窒素ガス雰囲気で、350℃で6時間焼成することにより、スルホン酸基を有するケイ素化合物2.5gを得た。
このシリカ材料10重量部を飽和食塩水中に分散後、室温下15分間攪拌処理することによって、硬化体中のスルホン酸基中のプロトンを食塩中のナトリウムイオンと交換させた。混合物を濾過して得られた濾液を、0.025規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した結果、硬化体中に含まれていたスルホン酸基量は、0.77mmol/gと算出された。
得られた固体のケイ素化合物を、プレス機により厚さ0.5mmの薄膜状に成型した。この成型体を金メッキを施したステンレス電極に挟むことにより評価用セルを作製し、交流インピーダンス法(日置電機製LCRハイテスタ、測定周波数0.1Hz〜5MHz)により、恒温槽中乾燥条件下に、140℃(相対湿度0.5%以下)および100℃(相対湿度約1.1%)におけるプロトン伝導度を測定した。その結果、得られた伝導度は、8.3×E(−9)[S/cm]および7.5×E(−8)[S/cm]であった。
比較例1と実施例を対比することにより、本発明のプロトン伝導材料は、従来公知のプロトン伝導材料に対して高温かつ低湿度の環境下に、優れたプロトン伝導性を示すことがわかる。
また、比較例2により、従来のスルホン酸基含有シロキサン類は、シロキサン類に導入できるケイ素化合物の量が十分でないため、高温かつ低湿度の環境下でのプロトン伝導度が低いことがわかる。
このことから、実施例の硬化性ケイ素化合物の硬化体を燃料電池の電解質として用いた場合においても、比較例と比べてより高い発電効率が得られることは明らかである。

Claims (6)

  1. スルホン酸基の含有量が2mmol/g以上であるシロキサン類。
  2. Si−NMR測定において、Si−OH結合を有さないSiをSi(A)とし、1個の−OH結合を有するSiをSi(B)としたとき、Si(A)/Si(B)ピークの比の値が1.0以上である、請求項1のシロキサン類。
  3. 酸化によりスルホン酸基に変換可能な硫黄原子を含むシランカップリング剤を酸化した後にそれを縮合または酸化と同時に縮合させることを特徴とする、請求項1または2のシロキサン類の製造方法。
  4. 請求項1または2のシロキサン類を含む硬化性組成物。
  5. 請求項1または2のシロキサン類を含有するプロトン伝導材料。
  6. 請求項4に記載のプロトン伝導材料を含む燃料電池。
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