JP2004345963A - (メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法及び2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法及び2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ホスフィンとハロゲン化アルキルを出発原料として安定した品質の(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩及び2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を高い収率で選択的に得る方法を提供する。
【解決手段】高濃度ホスフィンとハロゲン化アルキルを出発原料とし、テトラアルキルホスホニウム塩又は/及びテトラアルキルアンモニウム塩の相関移動触媒を用いて、第1級ホスフィンを得る第1工程、次いで前記第1工程後の反応系を加温し反応容器から排出されるガスを10℃以下に保持した塩酸水溶液中に導入する第2工程、次いで前記第2工程後の塩酸水溶液に(メタ)アクリル酸誘導体を前記第1工程のハロゲン化アルキルに対して1倍モル未満で導入し、25℃以下で反応を行う第3工程、を含む(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法。

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、各種の有機リン化合物の中間原料として有用な(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩及びこれを反応原料として用いた2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸は、例えば下記反応式(1)
【化6】
Figure 2004345963
に従ってメチルホスフィンを塩酸水溶液に接触させ、それらの塩酸塩とし、次いで得られる塩酸塩をアクリル酸と反応させ、次に過酸化水素で酸化する方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、ホスフィンとハロゲン化アルキルを出発原料とする連続的な反応工程についてはほとんど検討されていないのが現状である。
これは、第1級ホスフィンのみを選択的に得ることが工業的に難しく、低級の第1級ホスフィンは塩酸水溶液への捕捉率が低い。更に、メチルホスフィンと塩酸との反応により得られるそれらの塩酸塩は空気に触れると発火し該塩酸塩をその場で定量分析することができないため、次工程のアクリル酸の正確な原料仕込み量を決定することができず、このため安定した品質の目的とする(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩や2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を選択的に高い収率で得ることが工業的に困難である等の理由がある。
【0004】
【特許文献1】
特開昭52−33628号公報(第5頁〜第6頁、例4)
【0005】
【発明が解決しようする課題】
本発明者らは、ホスフィンとハロゲン化アルキルとを出発原料として工業的に有利な方法で前記一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩、更に該ホスホニウム塩酸塩から前記一般式(5)で表される2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を得る方法を検討する中で、メチルホスフィンやエチルホスフィンの低級アルキル第1級ホスフィンは、原料のホスフィンとして高濃度のホスフィンを用い、触媒としてテトラアルキルホスホニウム塩及びテトラアルキルアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種以上の相関移動触媒を用いて、原料のハロゲン化アルキルに対するホスフィンのモル比が1.0以上で、且つ反応に必要量の触媒を2回に分けて又は添加速度を調製して連続的に反応系内に導入し、アルカリ水溶液の存在下に疎水性溶媒中で加圧下に反応を行うと高い収率で目的とする第1級ホスフィンを選択的に得ることができ、また、反応終了後の反応系を加温し反応容器から排出する第1級ホスフィンと未反応原料のホスフィンを含むガスを塩酸水溶液に特定温度を維持しながら導入すると目的とする第1級ホスフィンと未反応原料のホスフィンを効率よく分離できるだけでなく、該第1級ホスフィンはそれらの塩酸塩として該水溶液中に高い捕捉率で捕捉されることを見出した。更に、本発明者らは、第1工程の原料のハロゲン化アルキルを基準にして第3工程で用いる原料の(メタ)アクリル酸誘導体の仕込み量を決定でき、更に引続き一連の工程を施すと安定した品質の(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩及び2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を高い収率で選択的に得ることができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の第1の発明は、ホスフィンとハロゲン化アルキルを出発原料として安定した品質の前記一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩を高い収率で選択的に得ることを目的とする。
また、本発明の第2の発明は、前記ホスホニウム塩酸塩を反応原料として用いて安定した品質の前記一般式(5)で表される2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を高い収率で選択的に得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明が提供しようとする第1の発明は、高濃度ホスフィンと、下記一般式(1)
【化7】
Figure 2004345963
(式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化アルキルを前記ハロゲン化アルキルに対するホスフィンのモル比が1.0以上で、必要量のテトラアルキルホスホニウム塩及びテトラアルキルアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種以上の相関移動触媒を2回以上に分けて又は添加速度を調整して連続的に反応系内に導入し、アルカリ水溶液の存在下に疎水性溶媒中で加圧下に反応を行い、下記一般式(2)
【化8】
Figure 2004345963
(式中、Rは前記と同義。)で表される第1級ホスフィンを得る第1工程、次いで前記第1工程後の反応系を加温し反応容器から排出されるガスを10℃以下に保持した塩酸水溶液中に導入する第2工程、次いで前記第2工程後の塩酸水溶液に、下記一般式(3)
【化9】
Figure 2004345963
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは水素原子又は1価の有機基)で表される(メタ)アクリル酸誘導体を前記第1工程のハロゲン化アルキルに対して1倍モル未満で導入し、25℃以下で反応を行う第3工程、を含むことを特徴とする下記一般式(4)
【化10】
Figure 2004345963
(式中、R、R及びRは前記と同義。)で表される(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法である。
【0008】
また、本発明が提供しようとする第2の発明は、前記第1の発明の製造方法で得られる(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩と過酸化水素を水溶液中で反応させることを特徴とする下記一般式(5)
【化11】
Figure 2004345963
(式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基を示す。)で表される2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
<(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩>
(第1工程)
第1工程は、高濃度ホスフィンと前記一般式(1)で表されるハロゲン化アルキルをテトラアルキルホスホニウム塩及びテトラアルキルアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種以上の相関移動触媒の存在下にアルカリ水溶液と疎水性溶媒からなる不均一系溶媒中で加圧下に反応させて前記一般式(2)で表される第1級ホスフィンを得る工程である。
【0010】
本発明において原料の高濃度ホスフィンは、ホスフィンを70体積%以上、好ましくは80体積%以上含むものを表し、このような高濃度ホスフィンとしては当該範囲のホスフィンを含む液化ホスフィン又は水素ガスを含むホスフィンガスがある。
前記液化ホスフィンとしては、例えば、黄燐に水蒸気を反応されることにより得られるホスフィンガスをコンプレッサーにより圧縮し、次いでこの圧縮ホスフィンガスを液化して水素と分離した液化ホスフィン、又は次亜リン酸ソーダの製造に際して副生する粗製ホスフィンガスを、脱水、脱アルシン、脱低級水素化燐化合物の精製操作を施した後、このホスフィンガスをコンプレッサー等により圧縮し、次いでこの圧縮ホスフィンガスを液化して水素と分離した液化ホスフィン等を用いることができる。
一方、前記水素ガスを含むホスフィンガスとしては、次亜リン酸ソーダを製造する際に副生する水素ガスとホスフィンガスを主成分とする混合ガスをガス分離膜を通してホスフィンガスの含有量を当該範囲まで高めた水素ガスを含むホスフィンガスを用いることができる(特開平2002−308608号公報参照。)。
なお、本発明において次亜リン酸ソーダを製造する際に副生する水素ガスとホスフィンガスの混合ガスとは、出発原料として黄燐と水酸化ナトリウムを用いるもの、叉は、出発原料として黄燐と水酸化カルシウムを用いて次亜リン酸ソーダを製造する際に副生するものである。
【0011】
本発明の第1工程において前記高濃度ホスフィンの添加量は、ハロゲン化アルキルに対して、ホスフィンとして1.0倍モル以上とする必要がある。この理由は、1.0倍モルより小さくなると第1級ホスフィンの反応収率が低くなる傾向があり、一方、3倍モルより大きくなっても反応は進行するが、1バッチ当りの第1級ホスフィンの収量が少なくなり、実用的でなく、該添加量は1.0〜3倍モル、好ましくは1.1〜2.0倍モルとすることが好ましい。高濃度ホスフィンの反応系への添加は反応の開始時に一度に添加してもよく、また反応の開始と途中に分けて添加してもよい。ここで言う高濃度ホスフィンの添加量は、反応の開始時は勿論、反応途中に添加したものも含めた総合的な添加量を示すものである。
【0012】
用いることができる原料のハロゲン化アルキルは、前記一般式(1)で表されるもので、式中のRは炭素数1〜2のメチル基、エチル基であり、Xは塩素、臭素又はヨウ素等のハロゲン原子を示し、具体的な化合物は塩化メチル、臭化メチル、塩化エチル、臭化エチル等が挙げられる。
【0013】
また、用いることができる相関移動触媒のテトラアルキルホスホニウム塩及びテトラアルキルアンモニウム塩としては、下記一般式(6)
【化12】
Figure 2004345963
(式中、BはP原子又はN原子、R、R、R及びRはアルキル基、Aはハロゲン原子を示す。)で表されるホスホニウム塩又はアンモニウム塩が用いられる。前記一般式(6)の式中、R〜Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ヘキサデシル基等の炭素数1〜18のアルキル基である。
【0014】
テトラアルキルホスホニウム塩の具体的な化合物としては、例えば、トリブチルメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリオクチルメチルホスホニウムブロマイド、トリオクチルエチルホスホニウムブロマイド、トリブチルドデシルホスホニウムブロマイド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド、トリオクチルエチルホスホニウムブロマイド、トリブチルメチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、トリオクチルメチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムクロライド、トリブチルドデシルホスホニウムクロライド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩等が挙げられる。一方、テトラアルキルアンモニウム塩の具体的な化合物としては、例えば、トリブチルメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリブチルドデシルアンモニウムブロマイド、トリブチルヘキサデシルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリブチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリブチルドデシルアンモニウムクロライド、トリブチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩等が挙げられる。
これらのテトラアルキルホスホニウム塩及びテトラアルキルアンモニウム塩は一種または二種以上で用いることができる。
これらの相関移動触媒の中、トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド又はトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロライド等のトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムハライドが触媒活性が高いことから特に好ましい。
【0015】
前記相関移動触媒の添加量は、ハロゲン化アルキルに対して通常0.1〜3モル%、好ましくは1〜2モル%である。なお、本発明において、この相関移動触媒の反応系内への導入は、後述するように、反応に必要量の触媒を2回以上に分けて又は添加速度を調整して連続的に反応系内に導入し、反応が完結するまで必要量の該触媒が反応系内に存在するように行うことが重要である。
【0016】
用いることができるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ水溶液が挙げられ、これらの中、水酸化ナトリウムが工業的に安価であることから好ましい。これらは、通常40〜70重量%、好ましくは45〜55重量%の水溶液として用いられ、アルカリ水溶液の添加量は、ハロゲン化アルキルに対して通常2.5倍モル以上、好ましくは2.5〜4倍モル、さらに好ましくは3倍モルである。
【0017】
用いることができる疎水性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、ニトロトルエン等の芳香族類:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、リグロイン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類:ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ベンジルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の有機極性溶媒等が挙げられ、これらは一種または二種以上で用いることができる。これらの疎水性溶媒の中でトルエンが特に好ましい。
【0018】
本発明の第1工程の反応操作は、予め前記したハロゲン化アルキル、アルカリ水溶液および疎水性溶媒を反応容器に仕込み、次いで、高濃度ホスフィンを仕込んで、好ましくは加温した後、相関移動触媒のテトラアルキルホスホニウム塩又は/及びテトラアルキルアンモニウム塩を反応系内に添加し加圧下に反応を行うことが好ましい。
【0019】
この反応はアルカリ水溶液及び疎水性溶媒の不均一溶媒系で行われ、ホスフィンはアルカリの存在によりH が除去され、PH となるが、この過程は触媒のテトラアルキルホスホニウム塩又は/及びテトラアルキルアンモニウム塩の存在により促進され、PH は(R−X(ハロゲン化アルキル)と反応して、目的生成物であるR‐PHの第1級ホスフィンが得られる。
【0020】
なお、本発明の製造方法において、上記の相関移動触媒の添加は、反応完結まで反応に必要な量の触媒が存在するように、一度に添加せず、2回以上にわたって又は連続的に添加することが重要な要件となる。この理由は、触媒のテトラアルキルホスホニウム塩及びテトラアルキルアンモニウム塩は、反応系内のアルカリ源と反応して分解し、この分解反応は、目的とする第1級ホスフィンの合成反応と競争的に進行し、反応中に触媒濃度が低下するため第1工程の目的生成物である第1級ホスフィンの収率が低下するからである。従って、相関移動触媒のテトラアルキルホスホニウム塩及びテトラアルキルアンモニウム塩の反応系内への添加は、徐々に時間をかけて添加するか、もしくは何回かに分けて多段式に添加することが好ましく、いずれの方法をとるかは、装置等の都合により適宜選択すればよいが、多段式に添加する方が触媒量を制御しやすいことから工業的に有利となる。
【0021】
より具体的には、触媒のテトラアルキルホスホニウム塩及び/又はテトラアルキルアンモニウム塩を2回以上にわたって添加する場合には、一回目の添加量はハロゲン化アルキルに対して0.05〜2.0モル%、好ましくは0.5〜1.0モル%とし、一回目の添加終了後1〜3時間を目安として、二回目以降の添加を行えばよい。本発明において触媒の添加は二回に分けて添加することが好ましい。二回目の添加量は、ハロゲン化アルキルに対して0.05〜1.0モル%、好ましくは0.5〜1.0モル%とすることが好ましい。
一方、該テトラアルキルホスホニウム塩及び/又はテトラアルキルアンモニウム塩の添加速度を調整して徐々に反応系に添加する場合、5〜6時間を目安として徐々に導入すればよい。
【0022】
反応温度は、通常30℃以上、好ましくは40〜50℃である。反応温度はハロゲン化アルキルとホスフィンとの反応性により適宜選択するが、一般的に低級アルキルハライドは反応性が高く、反応温度が低くても反応は進行する。ただし、反応温度が30℃より低くなると、反応が進行しにくくなる傾向があり、第1工程の目的生成物である第1級ホスフィンの収率が低下するので好ましくない。また、反応温度が100℃より大きくなると疎水性溶媒に溶解するホスフィンガスの量が減少し効率が悪くなり、また、反応系内の圧力がいたずらに高くなりすぎ工業的に不利となるため好ましくない。
【0023】
反応圧力は、通常0.5MPa以上、好ましくは0.5〜1.8MPaであり、反応時間は、通常5時間以上、好ましくは10〜15時間である。
【0024】
反応終了後の反応容器内には、主として未反応原料のホスフィン及び生成した第1級ホスフィンが共存して存在する。
【0025】
(第2工程)
第2工程は、前記第1工程後の反応系を加温し反応容器から排出されるガスを10℃以下に保持した塩酸水溶液に導入し、第1級ホスフィンと未反応原料のホスフィンとの塩酸に対する反応性を利用して、第1級ホスフィンのみを選択的にそれらの塩酸塩として該塩酸水溶液中に捕捉し、一方、未反応原料のホスフィンを系外に排出する工程である。
【0026】
この第2工程での操作は、第1級ホスフィンと未反応原料のホスフィンを含むガスを常に10℃以下、好ましくは−5〜8℃に保持した塩酸水溶液に導入することが重要な要件となり、前記操作を施すことにより高い捕捉率で目的とする第1級ホスフィンのみをこれらの塩酸塩として該塩酸水溶液中に選択的に捕捉させることができる。
【0027】
具体的な第2工程での操作は、前記第1工程で用いた反応容器(A)とは別の反応容器(B)に所定濃度及び所定量の塩酸水溶液を仕込み、該塩酸水溶液を10℃以下、好ましくは−5〜8℃に冷却する。一方、前記第1工程後の反応容器(A)を通常は40℃までは放圧して反応容器(A)内を常圧に戻した後、反応容器(A)を除々に70℃以上、好ましくは70〜100℃まで加熱し第1級ホスフィンと未反応原料のホスフィンを含むガスをノズル等を介して反応容器(B)の塩酸水溶液中に10℃以下、好ましくは−5〜8℃に温度を保持しながら導入する。
【0028】
前記塩酸水溶液は通常30重量%以上、好ましくは30〜40重量%の水溶液として用いられ、塩酸水溶液は、塩酸としてハロゲン化アルキルに対して通常3.0倍モル以上、好ましくは3.2〜5.0倍モルとすることが第1級ホスフィンとの反応性及び高い捕捉率を得る上で特に好ましい。
【0029】
前記第1級ホスフィンと未反応原料のホスフィンを含むガスを塩酸水溶液中に導入するのに用いるノズルの口径等は特に制限されるものではないが微細な泡を形成させることができるような口径のものを用いることが捕捉率が高くなることから好ましい。
【0030】
また、第2工程での第1級ホスフィンの塩酸水溶液への導入は、攪拌下に行うと更に第1級ホスフィンの捕捉率を高めることができる。この場合、塩酸水溶液の攪拌速度は特に制限されるものではないが、生成される気泡が塩酸水溶液の界面に到達する前に気泡の形状を崩すことができる範囲であれば特に制限されるものではない。
【0031】
また、第1級ホスフィンと未反応原料のホスフィンを含むガスの塩酸水溶液中への供給速度は塩酸水溶液が10℃以下、好ましくは−5〜8℃に保持できる速度であれば特に制限されるものではないが、除々に時間をかけて導入することが捕捉率を高める上で好ましい。
【0032】
塩酸水溶液に捕捉された第1級ホスフィンは即座に接触した塩酸と反応しそれらの塩酸塩として塩酸水溶液中に保持される。一方、未反応原料のホスフィンは反応系外へ排出される。
【0033】
(第3工程)
第3工程は、前記第2工程で得られた第1級ホスフィンの塩酸塩を含む塩酸水溶液に前記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸誘導体を所定量導入し25℃以下で反応を行って前記一般式(4)で表されるホスホニウム塩酸塩を得る工程である。
この第3工程の反応は、反応温度と(メタ)アクリル酸誘導体の添加量を後述する範囲で行うことが重要な要件となる。
【0034】
原料の前記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸誘導体の式中のRは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は1価の有機基を示す。1価の有機基としては、特に制限されるものではないが、炭素数1〜3の低級アルキル基が好ましい。前記(メタ)アクリル酸誘導体の好ましい化合物としては、例えば、アクリル酸、(メタ)アクリル酸及びこれらのメチルエステル、エチルエステル等が挙げられる。
【0035】
前記(メタ)アクリル酸誘導体の添加量は、前記第1工程の原料のハロゲン化アルキルに対して1倍モル未満とする必要がある。この理由は1倍モル以上では(ビス(2−カルボキシルエチル)アルキルホスホニウム塩酸塩等の副生物の生成量が多くなり目的物の収率及び純度が低下するためである。通常、本発明の製造方法において、前記第2工程での塩酸水溶液中に捕捉される第1級ホスフィンの捕捉率は60〜100%であるので、(メタ)アクリル酸誘導体の添加量を好ましくは0.6〜0.9倍モル、特に好ましくは0.7倍モルとすると副生物の(ビス(2−カルボキシルエチル)アルキルホスホニウム塩酸塩等の副生がなく高収率で目的とする前記一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩を選択的に得ることができるため特に好ましい。
【0036】
反応温度は25℃以下、好ましくは0〜25℃、特に好ましくは15〜20℃である。この理由は反応温度が25℃を越えると、例えば塩酸とアクリル酸との副反応により3−クロロプロピオン酸等の副成分が生成する傾向があるためである。
【0037】
本発明の製造方法において、前記第1工程で目的とする第1級ホスフィンを高い収率で選択的に得、更に、前記第2工程で60〜100%、好ましくは60〜90%の捕捉率で生成した第1級ホスフィンのみをほぼ定量的に塩酸水溶液中に捕捉することができるので、第2工程で得られる危険性を伴う第1級ホスフィンの塩酸塩をその場で定量分析しなくても、第1工程の原料のハロゲン化アルキルを基準として第3工程の(メタ)アクリル酸誘導体の正確な仕込み量を把握でき、目的とする前記一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩を高い収率で選択的に得ることができる。
【0038】
反応終了後、反応液100重量部に対して水を20〜50重量部、好ましくは30〜40重量部添加し、60℃以上、好ましくは70〜100℃で加熱処理することにより未反応原料の第1級ホスフィンの塩酸塩を加水分解してメチルホスフィンやエチルホスフィンとして反応系から除去することができる。
【0039】
未反応原料を除去した前記一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩は、溶媒を除去して製品化が可能である他、反応終了後の反応液はそのまま後述する2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造原料として好適に用いることができる。
【0040】
<2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸>
次いで、本発明の前記一般式(5)で表される2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法について説明する。
本発明の2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法は、前記で得られる未反応原料の第1級ホスフィンの塩酸塩を除去した前記一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の乾燥品又は前記第3工程の反応終了後の反応液を用い、水溶液中で過酸化水素と反応を行うものである。
【0041】
用いることができる(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩は、前記第3工程後の(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩から溶媒を除去した乾燥品であってもよいが、本発明において前記第3工程の反応終了後の反応液をそのまま用いて反応を行うことが工程を簡素化でき前記第3工程からの反応を連続的に行えるので工業的に有利となる点で特に好ましい。なお、第3工程の反応終了後の反応液をそのまま用いる場合は、第3工程において反応終了後に水を添加し未反応原料の第1級ホスフィンの塩酸塩を加水分解して反応系からメチルホスフィンやエチルホスフィンとして除去したものを用いることが副生するメチルホスホン酸等の不純物の混入がなく高純度の2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を得ることができることから好ましい。
【0042】
反応操作は、前記(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩を溶解した10〜40重量%、好ましくは20〜30重量%の水溶液を調製する。
【0043】
次いで、前記ホスホニウム塩酸塩を溶解した水溶液に過酸化水素を添加する。過酸化水素の添加量は、原料の(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩に対して2.2〜2.5倍モルである。この理由は、2.2倍モル未満では過酸化水素が部分的に塩酸を分解するために実質必要量の過酸化水素が不足し、一方、2.5倍モルを超えると余剰過酸化水素がより優先的に塩酸を分解するため好ましくない。
【0044】
かかる反応は、まず35〜55℃、好ましくは40〜50℃で1時間以上、好ましくは2〜3時間反応を行い(以下、「1段目の反応」と呼ぶ。)、次いで60℃以上、好ましくは70〜100℃に加温して1時間以上、好ましくは1〜2時間引き続き反応を行う(以下、「2段目の反応」と呼ぶ)ことが目的とする2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を高収率且つ高純度で得ることができることから特に好ましい。
前記第1段目の反応を当該範囲の温度で行うことにより前記(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の酸化反応が促進され、引続き第2段目の反応を当該範囲の温度で行うことにより過酸化水素の分解反応を行うことができる。
本発明において第1段目の反応温度を当該範囲とする理由は、反応温度が35℃未満では未反応過酸化水素が蓄積し、続いて一気に反応が進行して、反応温度が急激に上昇する危険性があり、一方、55℃を超えると酸化反応と塩酸分解反応が競合する可能性があるため好ましくない。また、第2段目の反応温度を当該範囲とする理由は、反応温度が60℃未満では余剰過酸化水素の分解反応が進行しないため、目的物に不純物として含有される結果となるため好ましくない。
【0045】
反応終了後、反応液から常法により溶媒を除去し製品としてもよいが、このようにして得られる2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸中には多量の塩素が含有されているため、残存塩素を嫌う分野の反応原料として用いる場合には、反応終了後の2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を含む反応液を温度90℃以上、好ましくは100〜110℃で減圧度5〜50mmHg、好ましくは10〜30mmHgで減圧下に30分以上溶媒を留去し、次いで得られる残留物を有機溶媒を用いて晶析を行うことにより残存塩素を200ppm以下、好ましくは50ppm以下まで低減させることができる。
【0046】
晶析で用いることができる有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド等のアミド類等の1種又は2種以上を適宜選択して用いることができ、この中、アセトンが不純物の除去効率が高く、また、工業的に安価であることから特に好ましい。
【0047】
この晶析操作は、常法に従えばよいが、通常は2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸100重量部に前記の有機溶媒を300〜1000重量部、好ましくは500〜800重量部添加し、50℃以上、好ましくは50〜80℃の温度で該2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を十分溶解した後、次に10℃以下、好ましくは0〜5℃に冷却し該2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の結晶を析出させる。本発明において、この晶析操作は上記反応終了後の反応液を温度90℃以上、好ましくは100〜110℃で減圧下に溶媒を留去する操作後、冷却する際の余熱を利用して前記晶析操作で用いる溶媒を適度な温度で加えて、引続き晶析操作を行うと再加熱することなく工業的に有利に実施することができる。また、この際、結晶の種となる2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の結晶を前記有機溶媒に加えると結晶の析出を促進させることができる。また、実験室レベルでは、晶析の際の固結は特に問題にはならないが、工業化レベルでは、有機溶媒を添加する前に先に若干量の水を添加して前記晶析を行うことにより2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の結晶の固結を防止することができる。
【0048】
かくして得られる前記一般式(5)で表される2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸は、樹脂改質剤、例えば、添加型又は反応型難燃剤等として用いることができ、また、該2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸をエチレングリコール等の溶媒に溶解させるか、又は該2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸とエチレングリコールとを反応させて得られるエステル類はポリエステル用の樹脂改質剤、例えば、反応型難燃剤等として好適に用いることができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
<(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩>
実施例1
(第1工程)
窒素で置換した後に真空としたオートクレーブ(A)に、56重量%水酸化カリウム水溶液300g(3モル)、トルエン200ml、塩化メチル51g(1モル)、液化ホスフィン(99体積%、日本化学工業社製)68g(2モル)を仕込んだ。次いで40℃までオートクレーブを加熱し、トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド3.3g(0.007モル)を溶解したトルエン溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した(1.8MPa)。40℃で1時間熟成した後、更に、トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド3.3g(0.007モル)を溶解したトルエン溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した。更に、反応系内の温度を40℃に保持して10時間熟成を行った(圧力:0.7MPa)。
(第2工程)
上記のオートクレーブとは別に窒素で置換したガラス製のオートクレーブ(B)に35重量%濃塩酸水溶液300mL(3.4モル)を仕込み該オートクレーブを8℃に冷却した。
オートクレーブ(A)を除々に70℃まで加温し、内径1mmのノズルを介してオートクレーブ(A)から排出されるガスを攪拌下(500rpm)の塩酸水溶液に温度を8℃に保持しながら4時間かけて前記のガラス製のオートクレーブ(B)に導入し、メチルホスホニウムクロライドを含む塩酸水溶液を得た。
(第3工程)
次いで、ガラス製のオートクレーブ(B)をそのまま用いて、前記で得られたメチルホスホニウムクロライドを含む水溶液に、窒素雰囲気下にアクリル酸51g(0.7モル)を2時間かけて滴下し、20℃で0.5時間攪拌下に反応を行った。次いで、反応液に水150mLを加え、更に窒素雰囲気中で30分間攪拌を継続した。次に70℃に昇温し減圧下に塩酸水溶液150gを回収すると共に、過剰のメチルホスフィンを除去し、更に十分に減圧下で乾燥することで(2−カルボキシエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶110g(0.7モル)を得た(収率70%)。
【0051】
実施例2
実施例1の第1工程において、56重量%水酸化カリウム水溶液300g(3モル)に代えて56%水酸化ナトリウム水溶液215g(3モル)とした以外は実施例1と同様に反応を行い(2−カルボキシエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶110g(0.7モル)を得た(収率70%)。
【0052】
実施例3
実施例1の第1工程において、56重量%水酸化カリウム水溶液300g(3モル)に代えて48%水酸化ナトリウム水溶液250g(3モル)とした以外は実施例1と同様に反応を行い(2−カルボキシエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶110g(0.7モル)を得た(収率70%)。
【0053】
実施例4
実施例1の第3工程において、アクリル酸に代えてアクリル酸メチル60g(0.7モル)とした以外は実施例1と同様に反応を行い(2−カルボキシルエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶110g(0.7モル)を得た(収率70%)。
【0054】
実施例5
実施例1の第1工程において、触媒としてトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイドに代わりにトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロライドを用いた以外は実施例1と同様に反応を行い(2−カルボキシエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶110g(0.7モル)を得た(収率70%)。
【0055】
比較例1
(第1工程)
窒素で置換した後に真空としたオートクレーブ(A)に、56重量%水酸化カリウム水溶液300g(3モル)、トルエン200ml、塩化メチル51g(1モル)、液化ホスフィン(99体積%、日本化学工業社製)44.2g(1.3モル)及びトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド6.6g(0.014モル)を溶解したトルエン溶液100mLを仕込んだ。次いで40℃までオートクレーブを加熱し、更に、反応系内の温度を40℃に保持して10時間反応を行った(圧力:0.7MPa)。
(第2工程)
上記のオートクレーブとは別に窒素で置換したガラス製のオートクレーブ(B)に35重量%濃塩酸水溶液300mL(3.4モル)を仕込み該オートクレーブを8℃に冷却した。
オートクレーブ(A)を除々に70℃まで加温し、内径1mmのノズルを介してオートクレーブ(A)から排出されるガスを攪拌下(500rpm)の塩酸水溶液に温度を8℃に保持しながら4時間かけて前記のガラス製のオートクレーブ(B)に導入し、メチルホスホニウムクロライドを含む塩酸水溶液を得た。
(第3工程)
次いで、ガラス製のオートクレーブ(B)をそのまま用いて、前記で得られたメチルホスホニウムクロライドを含む水溶液に、窒素雰囲気下にアクリル酸51g(0.7モル)を2時間かけて滴下し、20℃で0.5時間攪拌下に反応を行った。次いで、反応液に水150mLを加え、更に窒素雰囲気中で30分間攪拌を継続した。次に70℃に昇温し減圧下に塩酸水溶液150gを回収すると共に、過剰のメチルホスフィンを除去し、更に十分に減圧下に乾燥することで(2−カルボキシエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶55g(0.35モル)を得た(収率35%)。
【0056】
比較例2
(第1工程)
窒素で置換した後に真空としたオートクレーブ(A)に、56重量%水酸化カリウム水溶液300g(3モル)、トルエン200ml、塩化メチル51g(1モル)、液化ホスフィン(99体積%、日本化学工業社製)30.6g(0.9モル)を仕込んだ。次いで40℃までオートクレーブを加熱し、トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド3.3g(0.007モル)を溶解したトルエン溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した(1.8MPa)。40℃で1時間熟成した後、更に、トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド3.3g(0.007モル)を溶解したトルエン溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した。更に、反応系内の温度を40℃に保持して10時間熟成を行った(圧力:0.7MPa)。
(第2工程)
上記のオートクレーブとは別に窒素で置換したガラス製のオートクレーブ(B)に35重量%濃塩酸水溶液300mL(3.4モル)を仕込み該オートクレーブを8℃に冷却した。
オートクレーブ(A)を除々に70℃まで加温し、内径1mmのノズルを介してオートクレーブ(A)から排出されるガスを攪拌下(500rpm)の塩酸水溶液に温度を8℃に保持しながら4時間かけて前記のガラス製のオートクレーブ(B)に導入し、メチルホスホニウムクロライドを含む塩酸水溶液を得た。
(第3工程)
次いで、ガラス製のオートクレーブ(B)をそのまま用いて、前記で得られたメチルホスホニウムクロライドを含む水溶液に、窒素雰囲気下にアクリル酸51g(0.7モル)を2時間かけて滴下し、20℃で0.5時間攪拌下に反応を行った。次いで、反応液に水150mLを加え、更に窒素雰囲気中で30分間攪拌を継続した。次に70℃に昇温し減圧下に塩酸水溶液150gを回収すると共に、過剰のメチルホスフィンを除去し、更に十分に減圧下に乾燥することで(2−カルボキシエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶80g(0.51モル)を得た(収率51%)。
【0057】
比較例3
第2工程においてのガラス製のオートクレーブ(B)の温度を室温(25℃)としてオートクレーブ(A)から排出されるガスをガラス製のオートクレーブ(B)に導入した以外は、実施例1と同様に第1工程及び第3工程を実施し(2−カルボキシエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶94.3g(0.6モル)を得た(収率60%)。
【0058】
比較例4
第3工程においてアクリル酸72g(1モル)とした以外は実施例1と同様に第1工程及び第2工程を実施し(2−カルボキシエチル)メチルホスホニウムクロライドの結晶91.1g(0.58モル)を得た(収率58%)。
【0059】
【表1】
Figure 2004345963
注)表1中の416Bはトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド(日本化学工業社製)、416Cはトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムクロライド(日本化学工業社製)を示す。
【0060】
【表2】
Figure 2004345963
注)表2中の416Bはトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド(日本化学工業社製)を示す。
【0061】
<2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸>
実施例6
(第1工程)
窒素で置換した後に真空としたオートクレーブ(A)に、56重量%水酸化カリウム水溶液300g(3モル)、トルエン200ml、塩化メチル51g(1モル)、液化ホスフィン(99体積%、日本化学工業社製)68g(2モル)を仕込んだ。次いで40℃までオートクレーブを加熱し、トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド3.3g(0.007モル)を溶解したトルエン溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した(1.8MPa)。40℃で1時間熟成した後、更に、トリn−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド3.3g(0.007モル)を溶解したトルエン溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した。更に、反応系内の温度を40℃に保持して10時間熟成を行った(圧力 0.7MPa)。
(第2工程)
上記のオートクレーブとは別に窒素で置換したガラス製のオートクレーブ(B)に35重量%濃塩酸水溶液300mL(3.4モル)を仕込み該オートクレーブ(B)を8℃に冷却した。
オートクレーブ(A)を除々に70℃まで加温し、内径1mmのノズルを介してオートクレーブ(A)から排出されるガスを攪拌下(500rpm)の塩酸水溶液に温度を8℃に保持しながら4時間かけて前記のガラス製のオートクレーブ(B)に導入し、メチルホスホニウムクロライドを含む塩酸水溶液を得た。
(第3工程)
次いで、ガラス製のオートクレーブ(B)をそのまま用いて、前記で得られたメチルホスホニウムクロライドを含む水溶液に、窒素雰囲気下にアクリル酸51g(0.7モル)を2時間かけて滴下し、20℃で0.5時間攪拌下に反応を行った。次いで、反応液に水150mLを加え、更に窒素雰囲気中で30分間攪拌を継続した。次に70℃に昇温し減圧下に塩酸水溶液150gを回収すると共に、過剰のメチルホスフィンを除去した。
(第4工程)
前記第3工程後の反応液430gに、窒素導入下で35重量%過酸化水素水溶液150g(1.5モル)を50℃に反応系内の温度を保持しながら2時間かけて滴下し、滴下終了後40℃で1時間、次いで70℃で1時間反応を行った。次に溶媒を100〜105℃で減圧度10〜20mmHgとし3時間減圧下に溶媒を除去し(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸110g(0.7モル)を得た(収率70%、純度98%)。得られた(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸中の塩素含有量を硝酸銀滴定法により求めたところ1重量%であった。
<同定データ>
1)NMR;H (300MHz, DMSO, δ: TMS = 0 ppm)
1.39 (d, 3H, J=13.8)、1.89 (q, 2H, J=7.8)、2.47 (m, 2H)、10.58 (b, 2H)
2)31P (122MHz, DMSO)
48.32(m)
3)FAB−MS(Pos.);153(M+1)
4)FAB−MS(Neg.);151(M−1)
【0062】
実施例7
(第1工程)
窒素で置換した後に真空としたオートクレーブ(A)に、56重量%水酸化カリウム水溶液300g(3モル)、トルエン200ml、塩化メチル51g(1モル)、液化ホスフィン(99体積%、日本化学工業社製)68g(2モル)を仕込んだ。次いで40℃までオートクレーブを加熱し、トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド3.3g(0.007モル)を溶解したトルエン溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した(1.8MPa)。40℃で1時間熟成した後、更に、トリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムブロマイド3.3g(0.007モル)を溶解したトルエン溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した。更に、反応系内の温度を40℃に保持して10時間熟成を行った(圧力 0.7MPa)。
(第2工程)
上記のオートクレーブとは別に窒素で置換したガラス製のオートクレーブ(B)に35重量%濃塩酸水溶液300mL(3.4モル)を仕込み該オートクレーブ(B)を8℃に冷却した。
オートクレーブ(A)を除々に70℃まで加温し、内径1mmのノズルを介してオートクレーブ(A)から排出されるガスを攪拌下(500rpm)の塩酸水溶液に温度を8℃に保持しながら4時間かけて前記のガラス製のオートクレーブ(B)に導入し、メチルホスホニウムクロライドを含む塩酸水溶液を得た。
(第3工程)
次いで、ガラス製のオートクレーブ(B)をそのまま用いて、前記で得られたメチルホスホニウムクロライドを含む水溶液に、窒素雰囲気下にアクリル酸51g(0.7モル)を2時間かけて滴下し、20℃で0.5時間攪拌下に反応を行った。次いで、反応液に水150mLを加え、更に窒素雰囲気中で30分間攪拌を継続した。次に70℃に昇温し減圧下に塩酸水溶液150gを回収すると共に、過剰のメチルホスフィンを除去した。
(第4工程)
前記第3工程後の反応液430gに、窒素導入下で35重量%過酸化水素水溶液150g(1.5モル)を50℃に反応系内の温度を保持しながら2時間かけて滴下し、滴下終了後40℃で1時間、次いで70℃で1時間反応を行った。次に溶媒を100〜105℃で減圧度15mmHgとし3時間減圧下に溶媒を除去し、次いで、60℃まで冷却した後、アセトン330mlを加え、更に5℃まで除々に冷却し結晶を析出させた。次いで常法により固液分離し結晶を回収後、冷アセトン88mlで3回洗浄後、減圧乾燥して(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸99g(0.63モル)を得た(収率63%、純度99%)。
また、得られた(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸中の塩素含有量を硝酸銀滴定法により求めたところ20ppmであった。
<同定データ>
1)NMR;H (300MHz, DMSO, δ: TMS = 0 ppm)
1.39 (d, 3H, J=13.8)、1.89 (q, 2H, J=7.8)、2.47 (m, 2H)、10.58 (b, 2H)
2)31P (122MHz, DMSO)
48.32(m)
3)FAB−MS(Pos.);153(M+1)
4)FAB−MS(Neg.);151(M−1)
【0063】
実施例8
(第1工程)
窒素で置換した後に真空としたオートクレーブ(A)に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液250g(3モル)、トルエン270ml、塩化メチル51g(1モル)、液化ホスフィン(99体積%、日本化学工業社製)68g(2モル)を仕込んだ。次いで40℃までオートクレーブを加熱し、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド2.1g(0.007モル;東京化成工業社製)を溶解した水溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した(1.1MPa)。40℃で1時間熟成した後、更に、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド2.1g(0.007モル)を溶解した水溶液50mLを1時間かけてポンプで圧入した。更に、反応系内の温度を40℃に保持して10時間熟成を行った(圧力 0.9MPa)。
(第2工程)
上記のオートクレーブとは別に窒素で置換したガラス製のオートクレーブ(B)に35重量%濃塩酸水溶液300mL(3.4モル)を仕込み該オートクレーブ(B)を8℃に冷却した。
オートクレーブ(A)を徐々に70℃まで加温し、内径1mmのノズルを介してオートクレーブ(A)から排出されるガスを攪拌下(500rpm)の塩酸水溶液に温度を8℃に保持しながら4時間かけて前記のガラス製のオートクレーブ(B)に導入し、メチルホスホニウムクロライドを含む塩酸水溶液を得た。
(第3工程)
次いで、ガラス製のオートクレーブ(B)をそのまま用いて、前記で得られたメチルホスホニウムクロライドを含む水溶液に、窒素雰囲気下にアクリル酸51g(0.7モル)を2時間かけて滴下し、20℃で0.5時間攪拌下に反応を行った。次いで、反応液に水150mLを加え、更に窒素雰囲気中で30分間攪拌を継続した。次に70℃に昇温し減圧下に塩酸水溶液150gを回収すると共に、過剰のメチルホスフィンを除去した。
(第4工程)
前記第3工程後の反応液430gに、窒素導入下で35重量%過酸化水素水溶液150g(1.5モル)を50℃に反応系内の温度を保持しながら2時間かけて滴下し、滴下終了後40℃で1時間、次いで70℃で1時間反応を行った。次に溶媒を100℃で減圧度15mmHgとし1時間減圧下に溶媒を除去し、次いで、60℃まで冷却した後、アセトン330mlを加え、更に5℃まで除々に冷却し結晶を析出させた。次いで常法により固液分離し結晶を回収後、冷アセトン110mlで3回洗浄後、減圧乾燥して(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸100g(0.64モル)を得た(収率64%、純度99%)。
また、得られた(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸中の塩素含有量を硝酸銀滴定法により求めたところ50ppmであった。
<同定データ>
1)NMR;H (300MHz, DMSO, δ: TMS = 0 ppm)
1.39 (d, 3H, J=13.8)、1.89 (q, 2H, J=7.8)、2.47 (m, 2H)、10.58 (b, 2H)
2)31P (122MHz, DMSO)
48.32(m)
3)FAB−MS(Pos.);153(M+1)
4)FAB−MS(Neg.);151(M−1)
【0064】
【発明の効果】
上記したとおり、本発明の(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法によれば、ホスフィンとハロゲン化アルキルを出発原料とする連続的な反応工程で、且つ危険を含んだ化合物の定量分析を行わないでも第1工程のハロゲン化アルキルを基準として選択的に目的とする該(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩及び2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を高い収率で得ることできる。

Claims (8)

  1. 高濃度ホスフィンと、下記一般式(1)
    Figure 2004345963
    (式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化アルキルを前記ハロゲン化アルキルに対するホスフィンのモル比が1.0以上で、必要量のテトラアルキルホスホニウム塩及びテトラアルキルアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種以上の相関移動触媒を2回以上に分けて又は添加速度を調整して連続的に反応系内に導入し、アルカリ水溶液の存在下に疎水性溶媒中で加圧下に反応を行い、下記一般式(2)
    Figure 2004345963
    (式中、Rは前記と同義。)で表される第1級ホスフィンを得る第1工程、次いで前記第1工程後の反応系を加温し反応容器から排出されるガスを10℃以下に保持した塩酸水溶液中に導入する第2工程、次いで前記第2工程後の塩酸水溶液に、下記一般式(3)
    Figure 2004345963
    (式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは水素原子又は1価の有機基)で表される(メタ)アクリル酸誘導体を前記第1工程のハロゲン化アルキルに対して1倍モル未満で導入し、25℃以下で反応を行う第3工程、を含むことを特徴とする下記一般式(4)
    Figure 2004345963
    (式中、R、R及びRは前記と同義。)で表される(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法。
  2. 前記第1工程の相関移動触媒がトリn−ブチルn−ヘキサデシルホスホニウムハライドである請求項1記載の(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法。
  3. 前記第3工程の(メタ)アクリル酸誘導体の添加量は、前記第1工程のハロゲン化アルキルに対して0.7〜0.9倍モルである請求項1又は2記載の(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法。
  4. 前記第3工程は、反応終了後の反応液に水を添加し、次いで反応液を加温する工程を含む請求項1乃至3記載の(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩の製造方法。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法で得られる(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩と過酸化水素を水溶液中で反応させることを特徴とする下記一般式(5)
    Figure 2004345963
    (式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基を示す。)で表される2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法。
  6. 前記反応は、(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩を含む水溶液に過酸化水素を添加し35〜55℃で反応を行い、次いで60℃以上に加温して引続き反応を行う請求項5記載の2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法。
  7. 前記(メタ)アクリル酸誘導体が付加したホスホニウム塩酸塩を含む水溶液は、前記第3工程の反応終了後の反応液を用いる請求項6記載の2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法。
  8. 反応終了後の2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸を含む反応液を温度90℃以上で減圧下に溶媒を留去し、次いで得られる残留物を有機溶媒を用いて晶析を行う請求項6又は7記載の2−ヒドロキシルカルボニルエチルアルキルホスフィン酸の製造方法。
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