JP5016484B2 - 4,4’−ビシクロヘキサンジオンモノケタール類の製造方法 - Google Patents
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Description
このように、従来より知られている方法は、反応終了後の反応混合溶液中には、未反応原料、副生成物であるジケタール、目的生成物であるモノケタールが混在し、これより、目的とするモノケタールを分離、精製するには煩雑な化学的操作を要し、そのため収率も低く、工業的な製造方法としては改良が必要であった。
そこで、従来より工業的に容易に得ることができる原料から、高い収率で4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類を得ることができる製造方法の開発が望まれている。
従って、本発明は、工業的に容易に得ることができる4,4'-ビシクロヘキサンジオン類を出発物質として、これより簡易な操作により高収率にて4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類を製造する方法を提供することを課題とする。
(式中、Rは炭素原子数2〜6の直鎖状、分岐鎖状又は脂環状のアルキレン基を示す。)
(式中、Rは一般式(1)のそれと同じである。)
(式中、Rは炭素原子数2〜6の直鎖状、分岐鎖状又は脂環状のアルキレン基を示す。)
また、上記一般式(1)で表わされるジオール類において、Rは炭素原子数2〜6のアルキレン基であり、アルキレン基としては、直鎖状でも、分岐鎖状でも、又は脂環状であってもよいが、2個の水酸基(酸素原子)は、それぞれ異なる炭素原子に結合している。
したがって、Rとしては、具体的には、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、2,2‐ジメチルトリメチレン基、ヘキシレン基、1,2-シクロペンチレン基、1,2-シクロヘキシレン基等を挙げることができ、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基又はヘキシレン基は直鎖状でも、分岐鎖状であってもよく、又はシクロアルキレン基に置換基が付いていてもよい。
このようなジオール類は、通常、4,4'-ビシクロヘキサンジオン1モルに対して、0.8〜1.6モル倍、好ましくは、1〜1.4モル倍の範囲で用いられる。このようなモル範囲においては、原料ジケトンの未反応残存量も少なく、副生物のジケタールの生成量も抑制されるので好ましい。
このような酸触媒は、通常、4,4'-ビシクロヘキサンジオン1モルに対して、0.001〜0.30モル部、好ましくは、0.01〜0.10モル部の範囲で用いられる。
本発明の製造方法においては、4,4'-ビシクロヘキサンジオンとジオール類とを、液相中、酸触媒の存在下に生成した4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類を、析出させつつ反応させる。
従来、4,4'-ビシクロヘキサンジオンとジオール類とを、液相中、酸触媒の存在下に反応させると、反応の進行とともに、未反応原料、副生成物のジケタール、目的生成物のモノケタールが反応液中に混在するようになるため、反応終了後に、これより、目的とするモノケタールを分離、精製するには煩雑な化学的操作を要し、そのため、工程が長くなり、又収率も低くなっていた。さらに、反応中、生成したモノケタールがさらにジオールと反応し、ジケタールに転化することも収率を低くする原因になっていると考えられる。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、液相中において、原料のビシクロヘキサンジオンがほとんど溶解しなくても酸触媒存在下で、ジオールが存在することで反応が進行し、生成した目的物である4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類を、順次、析出、すなわち、反応系外に排出させつつ反応させることによりジケタール類の副生を抑制し、ビシクロヘキサンジオンの片側のみにジオールを選択的に反応させることができ、収率が顕著に向上することを見出した。
液相中において、反応により生成した4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類を析出させつつ反応させる方法としては、反応混合液中から、反応の進行に伴い生成した目的物である4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類が、反応の進行とともに、液相中より順次析出すればよく、このことは、例えば、反応溶媒の選定、反応時における溶媒の濃縮、目的のビシクロヘキサンジオンモノケタール類の種晶の添加、反応溶媒の組成の調整、反応温度の調整、反応圧力の調整などにより達成することができる。
具体的には、例えば、反応に際し、反応溶媒として、目的物である4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類に対し貧溶媒である脂肪族炭化水素を適宜添加して達成することができる。
まず、用いられる脂肪族炭化水素溶媒としては、鎖状ないし環状の脂肪族炭化水素であり、具体的には,例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、イソヘキサン、石油エーテル、リグロイン等の鎖状脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環状炭化水素が挙げられ、特に、シクロヘキサン、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン等の炭素原子数4〜8の鎖状又は環状の脂肪族炭化水素が目的とするモノケタール類に対し溶解度が低い理由で好ましい。これらは、単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
また、反応の進行に伴い生成した目的物である4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類が、液相中より析出するのを阻害しない限りにおいて、他の溶媒を併用してもよい。このような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素又は酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。
除去する方法としては、具体的には、例えば、生成水を含んだ溶媒を留出させて溶媒と生成水を分離する方法、或いは、生成水を含んだ溶媒を共沸させて、溶媒と生成水を分離する方法など公知の方法によって生成水を除去することができ、又、回収溶媒は、再び反応系内に戻すことが工業的には好ましい。このような分離は、小規模には、例えばディーンスターク分離器を使い行うことができる。その他の生成水の除去方法としては硫酸マグネシウム等の脱水剤を使用して行うこともできる。
更に、本発明の製造方法においては、4,4'-ビシクロヘキサンジオンとジオールが、大略反応した後、反応液の温度を、例えば、1〜45℃程度下げて、撹拌下に後反応を、通常5〜25時間程度を行うことにより、副生物のジケタールがモノケタールに転化し、未反応ビシクロヘキサンジオンもモノケタールに転化して、生成したモノケタールが析出する。この場合ジケタールがジオールとモノケタールに加水分解してそのジオールが未反応ジオンと反応するか、あるいはジケタール1分子とビシクロヘキサンジオン1分子が直接反応してモノケタール2分子になるのかはわからないが、反応選択率をさらに向上させることができるので好ましい。
本発明の製造方法において、反応温度は、通常−50〜80℃の範囲、好ましくは0〜49℃の範囲、最も好ましくは10〜45℃の範囲である。但し、80℃以上で結晶が析出しない温度で反応させても、その後、上記温度範囲に下げて結晶を析出させて後撹拌することにより平衡がずれてモノケタールの反応選択率を上げることができる。
また、反応圧力は、加圧、減圧又は常圧でもよく、特に制限はないが、使用する溶媒によって沸点や水との共沸温度等が変わるので、例えば、溶媒の沸点を下げたい場合は減圧にし、プロパンなど常圧で気体のものを溶媒として使用する場合は、加圧下で液化して使用することもできるので、反応操作の必要に応じて、反応圧力を適宜選択することが必要である。
上記のような反応条件においては、反応は、通常、1〜30時間程度で完結し、本発明の製造方法による原料ビシクロヘキサンジオンの反応率は通常85〜100%程度、モノケタール選択率は通常75〜95%程度、原料ビシクロヘキサンジオンに対するモノケタール反応収率は通常64〜95%程度である。
反応終了後、本発明の製造方法においては、反応終了混合物から、常法により、簡単な操作で、容易に、目的物であるモノケタールの高純度品を得ることができる。例えば、反応液から結晶をそのまま濾過するか、得られた反応混合物に水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリを加えて、前記酸触媒を中和し、そのまま結晶を濾別するか、又は、溶媒を添加したり、温度を上げて結晶を溶解した後、油層を水洗し、次いで、有機層を分離し、晶析後、結晶を濾別、乾燥することにより、或いは分離した有機層の一部の反応溶剤を蒸留にて濃縮し、その後、濃縮有機層に脂肪族炭化水素、アルコール等の晶析溶媒を加えて晶析し、得られた結晶を濾別、乾燥することにより、目的とするモノケタールを得ることができる。
なお、中和方法は、酸性サイドからpHを調整すると中和で水分が増加することによる加水分解によって選択率が低下するおそれがあるので、アルカリで短時間でアルカリサイドにし、その後、pH調整を行うことが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下において、ガスクロマトグラフィーによる分析値は、面積百分率(%)である。また、目的物の同定は、質量分析、プロトン核磁気共鳴分析にて行なった。
得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ4,4'-ビシクロヘキサンジオンの反応率は88.9%、4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノエチレンケタール選択率は81.2%で、原料4,4'-ビシクロヘキサンジオンに対する反応収率は72.2モル%であった。
滴下終了後、さらに同温度においてn-ペンタン還流下に、ディーンスターク分離器により生成水を除去しながら、40分反応を行なった後、内温を26〜31℃に下げ14.7時間更に反応を行なった。
反応終了液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、4,4’-ビシクロヘキサンジオンの反応率95.6%、4,4’-ビシクロヘキサンジオンモノエチレンケタールの選択率85.4%、原料の4,4’-ビシクロヘキサンジオンに対する反応収率81.6%であった。
滴下終了後、さらに同温度においてn-ペンタン還流下に、ディーンスターク分離器により生成水を除去しながら、40分反応を行なった後、反応液温を26〜31℃に下げ、さらに、撹拌下に14.7時間反応を行なった。その後、エチレングリコールを2.42g(3.90×10-2モル)を加え、5時間更に反応を行なった。
得られた反応終了液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、4,4'-ビシクロヘキサンジオンの反応率は99.4%、4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノエチレンケタール選択率は90.2%で、原料4,4'-ビシクロヘキサンジオンに対する反応収率は89.7%であった。
さらに得られた反応液に20℃で16%水酸化ナトリウム水溶液2.91gを加え、1.0時間撹拌後、水30gを加え75%リン酸で中和した。その後、20℃で結晶を濾別し、ガスクロマトグラフィーによる純度93.6%の溶媒の付着した白色粗結晶を45.7g得た。
この粗結晶に同量の2-ブタノールを加え昇温し54℃で溶解させた後、晶析して15℃まで冷却した。結晶をろ過、乾燥してガスクロマトグラフィーによる純度99.1%の4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノエチレンケタールの白色結晶23.5gを収率50.6%で得た。
得られた反応終了液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、4,4'-ビシクロヘキサンジオンの反応率は94.4%、4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノエチレンケタール選択率は86.6%、原料4,4'-ビシクロヘキサンジオンに対する反応収率は81.8%であった。
1L容量の四つ口フラスコに4,4'-ビシクロヘキサンジオン37.5g(0.193モル)、トルエン75.0g、75%リン酸0.76gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、撹拌下に昇温し、反応容器内圧を3.3〜3.8KPaに減圧して、温度24〜26℃でトルエンを還流しつつ、ディーンスターク分離器で1.0時間、脱水前処理を行なった。その後、同温度で、3.3〜3.0KPaの減圧下において、トルエン還流下に、ディーンスターク分離器により生成水を除去しながら、エチレングリコール13.29g(0.214モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了1.5時間後の反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、4,4'-ビシクロヘキサンジオンの反応率は62.8%、4,4'-ビシクロヘキサンジオンモノエチレンケタール選択率は75.8%であった。
滴下終了後、減圧下に、トルエン還流下で生成水の除去を行いながら温度22〜24℃で5時間反応を行った。また、反応液は反応の進行に伴い原料の4,4'-ビシクロヘキサンジオンの結晶が徐々に溶解し、後撹拌3時間後ではほぼ結晶がなくなり、その後結晶が析出することはなかった。
得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4,4'-ビシクロヘキサンジオンの反応率は83.8%、4,4'-ビシクロヘキサンジオンエチレンモノケタール選択率は65.9%であつた。滴下終了1.5時間後の反応液と比較すると、反応率は上がっていたが、選択率は低下していた。
Claims (1)
- 4,4’-ビシクロヘキサンジオンと下記一般式(1)で表されるジオール類を、脂肪族炭化水素溶媒を含有する液相中、酸触媒の存在下に、生成した4,4’-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類を、析出させつつ反応させることを特徴とする下記一般式(2)で表される4,4’-ビシクロヘキサンジオンモノケタール類の製造方法。
(式中、Rは炭素原子数2〜6の直鎖状、分岐鎖状又は脂環状のアルキレン基を示す。)
(式中、Rは一般式(1)のそれと同じである。)
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