JP2004335764A - 誘電体膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、膜厚が0.1〜50μmであって信頼性に優れ、かつ高誘電率であって静電容量の高い基板内蔵型キャパシタを得ることが可能な誘電体膜を提供することを目的とする。
【解決手段】対向した電極によって挟まれて基板内蔵素子に用いられる誘電体膜であって、ポリイミド系化合物と無機粒子とを含有し、破断伸びが5%以上であり、誘電率が5以上であり、膜厚が0.1〜50μmであり、体積抵抗が109Ω・cm以上であることを特徴とする誘電体膜。
【選択図】 なし
【解決手段】対向した電極によって挟まれて基板内蔵素子に用いられる誘電体膜であって、ポリイミド系化合物と無機粒子とを含有し、破断伸びが5%以上であり、誘電率が5以上であり、膜厚が0.1〜50μmであり、体積抵抗が109Ω・cm以上であることを特徴とする誘電体膜。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、実装基板に内蔵された電子部品に用いられる誘電体膜およびこのような誘電体膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、装置の小型化が進むに連れて実装基板の小型化、受動素子の基板内蔵化の検討が盛んになってきている。たとえば、多層プリント配線基板等に高誘電率の層を設け、この層をキャパシタに利用する技術が知られている。この高誘電率膜層は、たとえば熱硬化性樹脂の有機溶剤溶液に高誘電率の無機粉末を添加したものを、熱硬化性樹脂の脆さを補うためにガラス繊維等の繊維強化材に含浸させ、この強化材を基板上に設けた後に溶剤を飛散させて硬化させる等の方法により作成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法には、繊維強化材を用いるため高誘電率膜層の厚みを薄く(たとえば50μm以下)することができず、またTiO2等の無機粉末に比べて繊維強化材の比誘電率は比較的小さいことから、静電容量の高いキャパシタが得られないという問題がある。
【0004】
この問題を解決するものとして、特開平9−12742号公報には、フィルム形成能を有する熱硬化性樹脂を用いることにより、上記構成から繊維強化材を不要とした高誘電率膜層が開示されている。この公報によれば、上記熱硬化性樹脂および高誘電率の無機粉末を含む樹脂ワニスを調整し、これを塗布、乾燥することによりフィルムを作製している。
【0005】
しかし、高誘電率の無機粉末は一般に比重が大きく樹脂ワニス中において経時により沈降することがあり、この高誘電率の無機粉末を含有する樹脂ワニスは貯蔵安定性に劣るため、フィルム作製の直前に樹脂ワニスをその都度調製しなくてはならなかった。また、溶液の塗布乾燥によりフィルムを形成するので、得られるフィルムの膜厚精度を高くすることが困難であり、また基板上の特定の位置にのみフィルムを形成する場合等において操作性がよいとは言い難いものであった。
【0006】
さらに、任意の配線上に選択的に高誘電率膜層を形成しようとする場合、従来の樹脂ワニスではフォトリソグラフィー、印刷法等を組み合わせて形成位置を規定する必要があった。しかし、フォトリソグラフィーを用いた形成方法では、コストが高く、工程が煩雑であるという問題があり、また印刷法では、加工精度が低いという問題があった。さらには、高誘電率膜層に用いられる熱硬化性樹脂の多くはエポキシ樹脂を主成分としており、力学物性特に破断延びが小さいことから、基板のヒートサイクル試験などの信頼性試験に対する耐性が不十分であるという問題があった。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、膜厚が0.1〜50μmであって信頼性に優れ、かつ高誘電率であって静電容量の高い基板内蔵型キャパシタを得ることが可能な誘電体膜を提供することを目的としている。また、このような誘電体膜を、高い膜厚精度で所望の位置にのみ選択的にかつ低コストで製膜できる製造法を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、
(1)組成物中の樹脂成分としてポリイミド系重合体を含有させることによって、得られる誘電体膜の力学物性が破断伸びが5%以上となり、
(2)特定の無機粒子をこの組成物に分散させることによって、得られる誘電物性の誘電率が5以上となり、体積抵抗が109Ω・cm以上となることを見出した。
(3)そして樹脂と無機粒子とを各々水に分散した粒子状とし、この水性分散液から電着によって誘電体膜を効率的に成膜しうることを見出し、
(4)上記のようにして形成された誘電体膜上に無電解ニッケルメッキにより電極形成シード層を形成しうることを見出した。
【0009】
上記のような誘電体膜は、信頼性に優れ、かつ実用性に優れたものであり、さらには、(3)と(4)の技術を用いて素子を形成すれば、簡便かつ安価に基板内蔵型キャパシタを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0011】
(1)誘電体膜形成用組成物
誘電体膜は、樹脂と無機粒子および分散媒からなる誘電体形成用組成物(以下誘電体組成物という)を成膜し、乾燥硬化することで得られる。誘電体組成物中の無機粒子と樹脂との混合割合(無機粒子/樹脂)は体積比で、5/95〜80/20の範囲であることが好ましく、10/90〜60/40であることがより好ましい。無機粒子の割合が5体積%未満では、高誘電率のフィルムを得ることが困難である。一方、無機粒子の割合が80体積%を超える場合には、フィルムの成膜性が不足することがある。
【0012】
また、分散媒と固形分(樹脂と無機粒子の合計)の割合は基材に塗布する方式によって適する割合が異なる。
(a)印刷塗布させるペースト状組成物である場合;
固形分濃度は30〜90重量%、より好ましくは50〜90重量%であり、この範囲を外れると印刷パターンからのはみ出しが大きく所望の印刷塗布ができなかったり、印刷パターンの目詰まりが問題となることがある。
(b)回転、流延塗布させるワニス状組成物の場合;
固形分濃度は5〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%であり、この範囲を外れると膜厚が所望の範囲に制御することがある。
(c)電着成膜する水性分散体の場合;
固形分濃度は1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%であり、1%重量未満では塗膜形成が困難であり、30重量%を越えると水性分散体の分散状態が不安定となるため好ましくない。
【0013】
これら(a)〜(c)の方法のうち、プロセスの簡便性、材料の利用効率の観点から(a)、(c)の方法が好ましく、特に(c)の電着方式が好ましい。
【0014】
(1−1)樹脂
本発明で得られる絶縁において使用する誘電体組成物には、誘電体膜の破断伸びが5%以上となるように樹脂成分としてポリイミド化合物を含有する必要があり、このポリイミド化合物の組成物の割合は10重量%以上、好ましくは30重量%以上である。
【0015】
ここに言うポリイミド系化合物とは、加熱などにより反応してポリイミドを形成する単量体、オリゴマー、ポリイミド系重合体、および前駆的重合体(たとえばポリアミック酸)などの化合物を意味する。
【0016】
単量体とは以下に例示する酸無水物、ジアミン化合物などを指し、オリゴマーとはこれら単量体の調合比を制御することにより重合度を平均で3〜20量体としたものである。
【0017】
たとえば、酸無水物2モルに対してジアミンを3モル重縮合すれば両末端がアミン構造の5量体が、酸無水物2モルに対してジアミン1モル、モノアルキルアミン2モルを重縮合すれば両末端がアルキル構造の5量体を生成することができる。
【0018】
[単量体(酸無水物)]
本発明に用いられるテトラカルボン酸二無水物は特に限定されるものではなく、具体的には、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物あるいは脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;等を挙げることができ、単独または2種以上を混合して使用することができる。これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、分散媒への溶解性の観点から脂環式テトラカルボン酸二無水物を少なくとも1種用いることが好ましい。
【0019】
[単量体(ジアミン化合物)]
ジアミン化合物は特に限定されるものではなく、具体的には、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミン類;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンあるいは脂環式ジアミン類; 2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン等の、分子内に2つの第一級アミノ基および該第一級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン類;
モノ置換フェニレンジアミン類;
ジアミノオルガノシロキサン;等を挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
ポリイミド系重合体とは、イミド結合で構造単位が結合されたポリイミド構造を有するいわゆるポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂と他の化合物と反応させて得られる変性ポリイミド樹脂、およびポリイミド樹脂の形成に用いられる単量体と他の単量体との共重合体であってポリイミド構造を有する変性ポリイミド樹脂などである。これらのうち、分散媒への分散が容易な点で、溶媒可溶性ポリイミドが好ましく、宇部興産(株)製商品名「ユピファインST」、(株)ピーアイ技研製商品名「Q−PILON Q−VR−319A」、日産化学工業(株)製商品名「SE−812」、新日本理化(株)製商品名「リカコートSN−20、PN−20」などの市販材料が用いられる。また、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを有機極性溶媒中で混合して重縮合させて、ポリアミック酸を得た後、該ポリアミック酸を加熱イミド化法または化学イミド化法により脱水閉環反応させることにより、合成したポリイミドも用いることができる。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重縮合を多段階で行うことにより、ブロック構造を有するポリイミド樹脂を合成することも可能である。
【0021】
この有機溶媒可溶性のポリイミドは、たとえば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基等の反応性基(a)を1種以上有することが好ましい。反応性基(a)を有するポリイミドの合成方法としては、たとえば、ポリアミック酸の合成に使用されるカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、カルボン酸一無水物、モノアミン化合物等の反応原料として、反応性基(a)を有する化合物を使用し、脱水閉環反応後に反応性基(a)を残存させる方法等を挙げることができる。
【0022】
また、これらポリイミド系化合物と併用して用いることができる樹脂化合物としてエポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、フルオレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド等の熱硬化性樹脂化合物が挙げられ、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
(1−2)無機粒子
本発明において使用する無機粒子の誘電率は30以上であり、好ましくは50以上、さらに好ましくは70以上である。このような無機粒子としては、金属酸化物からなるものが好ましく用いられ、特にチタン系金属酸化物が好ましい。ここで、「チタン系金属酸化物」とはチタン元素と酸素元素とを必須元素として含む化合物をいい、具体的には二酸化チタン系、チタン酸バリウム系、チタン酸鉛系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸ネオジウム系、チタン酸カルシウム系等の金属酸化物が挙げられる。なお、たとえば上記「二酸化チタン系」の金属酸化物とは、二酸化チタンのみを含む系、または二酸化チタンに他の少量の添加物を含む系で、主成分である二酸化チタンの結晶構造が保持されているものであり、他の系の金属酸化物についても同様である。本発明においては、二酸化チタン系(ルチル構造のもの)またはチタン酸バリウム系の金属酸化物からなる無機粒子が特に好ましく用いられる。また、水性媒体への分散性を向上させるために、上記材料からなる粒子の表面をシリカ、アルミナ等で変性した粒子も好適に用いられる。
【0024】
この無機粒子の平均粒子径は1μm以下であることが必要であり、0.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、水性媒体に対する無機粒子の分散性が不足して十分な貯蔵安定性が得られないことがある。平均粒子径の下限は特に限定されないが、通常は0.02μm以上である。
【0025】
次に誘電体組成物がペースト状および水性分散液である場合について特に説明する。
【0026】
(1−3)ペースト(誘電体組成物の一形態)
上記樹脂と無機粒子と分散媒とに、ボールミル、ホモジナイザー、ビーズミル、3本ロールなどを用いて機械的シェアを加えて、無機粒子塊を粉砕しながら樹脂および分散媒中に微分散することによって、誘電体組成物を調製する。
【0027】
分散媒としては、分散加工および印刷・塗布時に揮発しにくい溶剤が好ましく、ジエチレングリコール系、プロピレングリコール系で沸点150℃から250℃の溶剤、たとえばジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチルプロピレングリコールアセテートなどが好ましい例として挙げられる。
【0028】
また、ペーストに光硬化性を付与するために必要な感光剤を加えてもよい。
【0029】
これらペーストはスクリーン印刷、ダイコーターなどの塗布装置で塗布した後、分散剤を乾燥−留去して誘電体膜を形成し、誘電体膜の膜厚はペースト濃度、塗布条件で制御することができる。
【0030】
(1−4)水性分散液(誘電体組成物の一形態)
50重量%以上の水を含む分散媒中に、上記無機粒子および微粒子化したポリイミド系化合物を分散させた水性分散液を調製し、この水性分散体を用いて電着法により誘電体膜を形成することができる。
【0031】
水性分散液に含まれる無機粒子と有機粒子との体積比は、5/95〜80/20の範囲であることが好ましく、10/90〜60/40であることがより好ましい。無機粒子の割合が5体積%未満では、高誘電率のフィルムを得ることが困難となることがあり、無機粒子の割合が80体積%を超えると、フィルムの成膜性が不足することがある。
【0032】
水性分散液のpHは3〜9(より好ましくは4〜7)であり、固形分濃度は1〜50重量%(より好ましくは2〜20重量%)であり、20℃における伝導度は50〜1000μS/cmである。pH、固形分濃度または伝導度が上記範囲を外れると、粒子の分散性等が低下して貯蔵安定性が不足したり、電着時の膜面均一性、電着効率が悪化することがある。
【0033】
この水性分散液は、▲1▼無機粒子の水分散液と有機粒子の水分散液とを混合する、▲2▼有機粒子の水分散液中に無機粒子を添加混合するなどの方法により調製することができる。このうち▲1▼の方法を用いることが好ましい。また、有機粒子水分散液と混合する以前の無機粒子水分散液のpHは、混合時の安定性を向上させるために、イタコン酸、マレイン酸などの2価の有機酸、硫酸、水酸化カリウム等を用いてpH3〜9に調製されていることが好ましい。
【0034】
本発明の水性分散液は、二層分離や粘度の著しい変化等を起こすことなく貯蔵可能な期間が20℃において1日間以上(より好ましくは2日間以上、さらに好ましくは5日間以上)であるような貯蔵安定性を有する。
【0035】
(1−4−1)有機粒子
水性分散液に用いられる有機粒子の表面は、電着を可能とするために電荷を有することが好ましく、電着時の電極酸化を防止するためにはカチオン型であることがさらに好ましい。
【0036】
分散媒中の水の濃度としては、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上である。50重量%未満の場合、有機粒子と無機粒子の分散安定性が経時的に悪化する場合がある。
【0037】
なお、分散媒中の水以外の成分としては、たとえば上記ポリアミック酸あるいはポリイミドの製造に使用される非プロトン性極性溶媒、エステル類、ケトン類、フェノール類、アルコール類等を挙げることができる。
【0038】
これら有機粒子は(A)有機溶媒可溶性のポリイミドと(B)親水性ポリマーと(C)疎水性化合物の混合物を自己乳化させて複合エマルジョン化することで製造することができる。
【0039】
「(A)有機溶媒可溶性のポリイミド」としては、上述のポリイミド系化合物のうち、有機溶剤に可溶な化合物を選択することができる。「(B)親水性ポリマー」としては、親水性基としてアミノ基を必須として含有し、4級アンモニウム塩としたときの水に対する20℃の溶解度が、通常、0.01g/100g以上、好ましくは0.05g/100g以上であり、ガラス転移温度が30℃以下、好ましくは0℃以下である親水性ポリマーからなる。(B)成分中には、前記(A)成分中の反応性基(a)と反応しうる反応性基(b)を1種以上有することが好ましい。このような反応性基(b)としては、たとえば、分子内に共存するアミノ基との反応を抑制するために含有量や構造が調整されたエポキシ基、イソシアネート基等を挙げることができる。このような親水性ポリマーは、アミノ基および反応性基(b)を有するモノビニル単量体を単独重合または共重合させるか、あるいはアミノ基を有するモノビニル単量体と反応性基(b)を有するモノビニル単量体とを共重合させることにより得ることができる。
【0040】
「(C)疎水性化合物」としては、(A)成分もしくは(B)成分と反応しうる基(以下、「反応性基」という。)を有する化合物であることが好ましい。この反応性基としては、たとえば、エポキシ基、イソシアナト基、カルボジイミド基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ジアゾ基、カルボニル基等を挙げることができる。これらの反応性基は、疎水性化合物中に1種以上存在することができる。なお、「疎水性」とは、水に対する20℃の溶解度が、通常、0.05g/100g未満、好ましくは0.01/100g未満、さらに好ましくは0.005g/100g未満であることを意味する。
【0041】
このような疎水性化合物としては、たとえば、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、フルオレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ポリカルボジイミド、コレステロール、ベンジルアルコールp−トルエンスルホン酸エステル、クロロ酢酸エチル、トリアジントリチオール、ジアゾメタン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等から選択される1種または2種以上を使用することができる。
【0042】
この(A)有機溶媒可溶性のポリイミドと(B)親水性ポリマーと(C)疎水性化合物とを、反応性基(a)と親水性ポリマー中の反応性基(b)とが適切な反応性を有する組み合わせとなるように選択し、該(A)、(B)、(C)成分および有機酸を、たとえば有機溶媒中にて溶液状態で混合して、必要に応じて加熱しつつ、反応させた後、得られた溶液と水性媒体とを混合することにより、(A),(B),(C)の水性媒体に対する親和性の違いから疎水性の(A)(C)を(B)が被覆して自己乳化が起こり、結果として(B)のアミノ基がカチオン電荷を持ち、これが粒子の殻部となり、中に(A),(C)を内包した有機粒子を形成する。
【0043】
(2)誘電体膜層の電着形成について
上述の水性分散液は、そのまま、あるいはこれを希釈または濃縮して、また必要に応じて従来公知の添加剤を適宜配合して、誘電体膜層形成用の電着液として用いられる。この電着液に基板を浸し、通電することにより、水性分散液中の無機粒子および有機粒子を電極表面等に電着して誘電体膜層を製造することができる。
【0044】
その際、電着時の電圧値は2〜100Vの範囲であることが好ましく、2V未満では十分な膜厚に成膜困難となることがあり、100Vを超えると塗膜中に気泡が多く生じることがある。本発明の誘電体膜層を製造するにあたっては、電着された粒子の樹脂成分をさらに加熱硬化させることが好ましい。加熱硬化の条件は特に限定されるものではないが、加熱温度は100℃〜400℃であり、より好ましくは150〜300℃である。また、加熱時間は5分以上であり、より好ましくは10分以上である。
【0045】
上述のようなペースト、水性分散液を用いると、誘電率5以上(より好ましくは10以上)の誘電体膜層を得ることができる。また、体積抵抗率は109Ω・cm以上(より好ましくは1013Ω・cm以上)のものとすることができ、誘電体膜層の破断延びは5%(より好ましくは10%以上)となる。また、この誘電体膜層の厚さは50μm以下(より好ましくは30μm以下)であることが好ましい。層の厚さの下限は特に限定されないが、通常は1μm以上である。
【0046】
(3)基板内蔵膜素子について
前記の誘電体膜層を電極でサンドイッチ構造とすることで単層のキャパシタを作製することができる。たとえば、所望の容量に応じて設定した面積に銅貼り基板の銅層をパターン形成して下地電極パターンを形成し、その銅上に上述の誘電体膜層を電着法にて成膜すると、下地銅パターン上にのみ誘電体膜層が所望の膜厚で形成される。
【0047】
次に誘電体膜層上に上部電極を形成することで、膜素子を作製することができる。
【0048】
上部電極形成では、電極を50μm以下の薄膜に密着性を高めた状態で形成することが重要であり、特に誘電体膜層と電極の界面付近にシード層を形成することが重要となる。
【0049】
シード層の形成方法は、メッキなどの湿式法、スパッタなどの乾式法に大別されるが、プロセスの簡便性、コスト面からメッキ法が好ましい。
【0050】
メッキ法では、通常下地面との密着性を高めるために、下地面の粗化−無電解メッキ−電解メッキの手順で構成される。本発明のような薄膜でしかも耐アルカリ性に乏しい下地膜の場合には、粗化条件、無電解メッキ条件の選定が重要となり、粗化処理液、無電解メッキ液のpHは3〜7の酸性〜中性であることが好ましく、この場合無電解メッキは無電解ニッケルメッキで実施されることが好ましい。
【0051】
粗化工程は、活性酸素による親水化、表面処理が好ましく、UV、エキシマ光を照射するドライプロセスや、酸化チタンの光触媒機能を活用する方法が利用できる。
【0052】
シード層の厚さは通常2μm以下であり、1μm以下である方が処理時間が短縮されるため好ましく、電解メッキ層も含めた電極層の厚みは高誘電率膜層の厚みの2倍以下であることが好ましい。また、高誘電率膜層形成−電極形成を繰り返して多層キャパシタとする際は、10μm以下であることが膜素子の総厚を薄く抑える観点から好ましい。
【0053】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下において、特記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0054】
(1)無機粒子分散液の調製
(合成例1:酸化チタン水分散液a)
主としてルチル構造の二酸化チタンからなる酸化チタン粒子(堺化学株式会社製、商品名「STR−60C」、平均粒子径0.1μm、誘電率105)200gおよびイオン交換水80gをホモミキサーで混合した後、硝酸でpH4に調整し、さらに10分間の超音波分散を行って、凝集物のない酸化チタン水分散液(固形分濃度20%)を得た。
【0055】
(合成例2:酸化チタン水分散液b)
主としてルチル構造の二酸化チタンからなる酸化チタン粒子(石原産業株式会社製、商品名「TTO−55」、平均粒子径0.2μm、誘電率110)200gおよびイオン交換水80gをホモミキサーで混合した後、硝酸でpH3に調整し、さらに10分間の超音波分散を行って、凝集物のない酸化チタン水分散液(固形分濃度20%)を得た。
【0056】
(合成例3:チタン酸バリウム水分散液)
チタン酸バリウム粒子(堺化学株式会社製、商品名「BT−01」、平均粒子径0.1μm、誘電率2000)200gおよびサンノプコ社製、商品名「SNスパース 70」5.5g、イオン交換水80gをホモミキサーで混合した後、イタコン酸でpH6に調整し、さらに10分間の超音波分散を行って、凝集物のないチタン酸バリウム水分散液(固形分濃度60%)を得た。
【0057】
(2)有機粒子エマルジョンの調製
(合成例4:ポリイミド系化合物エマルジョン)
テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物27.79gおよび4,10−ジオキサトリシクロ[6.3.1.02,7]ドデカン−3,5,9,11−テトラオン7.44g、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン60.01gおよびジアミノベンズアニリド3.75gを、N−メチル−2−ピロリドン400gに溶解して、室温で6時間反応させた。その後、この反応溶液に、ピリジン35gおよび無水酢酸45gを添加し、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。次いで、反応溶液を減圧留去して精製し、固形分10%のポリイミド溶液を得た。
【0058】
トルエン100部を入れた反応容器を、窒素ガス雰囲気下で80℃に保持し、この反応容器に、n−ブチルアクリレート79部、アミノ基含有モノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート20部、ブロックイソシアネート基含有モノマー;メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル1部およびアゾビスイソブチロニトリル0.08部からなる混合液を5時間かけて連続的に添加しつつ、撹拌下で溶液重合を行なった。滴下終了後、85℃でさらに2時間撹拌を続けて、溶液重合を完結させ、固形分50%のアクリルポリマー溶液を得た。ガラス転移温度は−40℃、マレイン酸でアミノ基を4級化処理したポリマーの水への溶解性は5g/100gであった。
【0059】
ポリイミド溶液30部(固形分)と、アクリルポリマー溶液40部(固形分)と、エピコート828(油化シェルエポキシ社製の商品名)30部と、マレイン酸5部と、シクロヘキサノン90部と、N−メチルピロリドン140部とを混合し、70℃の蒸留水700部に添加しつつ強く撹拌して、ポリイミド系化合物を主成分とするpH5.2、固形分濃度10%の有機粒子のカチオン性エマルジョンを得た。
【0060】
(3)水性分散液の調製
(調製例1)
合成例1で得られた酸化チタン水分散液a200部(固形分換算で40部)と、合成例4で得られたポリイミド系化合物エマルジョン600部(固形分換算で60部)と、蒸留水740部と、シクロヘキサノン115部と、N−メチルピロリドン180部とを混合して水性分散液を調製した。(体積比で有機樹脂/無機粒子=86/14)
分散液のpHは6.1であり、固形分濃度は5.4%であり、伝導度は180μS/cmであった。
【0061】
(調製例2)
合成例2で得られた酸化チタン水分散液b250部(固形分換算で50部)と、合成例4で得られたポリイミド系化合物エマルジョン500部(固形分換算で50部)と、蒸留水370部と、シクロヘキサノン50部と、N−メチルピロリドン60部とを混合して水性分散液を調製した。(体積比で有機樹脂/無機粒子=81/19)
分散液のpHは5.5であり、固形分濃度は8.1%であり、伝導度は250μS/cmであった。
【0062】
(調製例3)
合成例3で得られたチタン酸バリウム水分散液700部(固形分換算で70部)と、合成例4で得られたポリイミド系化合物エマルジョン150部(固形分換算で30部)と、蒸留水700部と、シクロヘキサノン70部と、N−メチルピロリドン120部とを混合して水性分散液を調製した。(体積比で有機樹脂/無機粒子=72/28)
分散液のpHは5.5であり、固形分濃度は5.7%であり、伝導度は150μS/cmであった。
【0063】
(調製例4)
ポリイミド系樹脂ワニス(宇部興産株式会社製、商品名「ユピファインST」)200部(固形分換算で20部)中に、合成例3で用いたチタン酸バリウム粒子80部を加え、3本ロールで分散混合してフィルム形成用のペーストを得た。(体積比で有機樹脂/無機粒子=60/40)
(比較調製例1)
合成例1で得られた酸化チタン水分散液をそのまま水性分散液とした。
【0064】
(4)フィルムの形成および性能評価
上記調製例1〜3および比較調製例1の水性分散液中に、それぞれ陰極としての銅板(電着面積=3.5cm×5.5cm)および対向電極としてのSUS板(銅板と同じ大きさ)を配置し、15mAの一定電流を60秒間連続印加する定電流法により陰極側の銅板上に粒子を電着させた。その後、100℃で10分加熱し、さらに200℃で30分間加熱してフィルムを得た。なお、比較例1では成膜性不良によりフィルムを得ることができなかった。
【0065】
調製例4のペースト状サンプルは、18μm厚の銅箔にスクリーン印刷塗布してた後100℃オーブンで10分乾燥し、さらに200℃で30分間加熱して膜厚20μmの高誘電率膜を得た。
【0066】
次に、上部電極を以下の手順で形成し、膜素子を完成させた。
(イ)高誘電体膜層を成膜した基板に高圧水銀灯によりUV光を5J/cm2照射して表面処理した。
(ロ)硫酸ニッケル(25g)、次亜リン酸ナトリウム(20g)、酢酸ナトリウム(10g)、クエン酸ナトリウム(10g)を蒸留水500ccにこの順に溶解させながら攪拌混合し、蒸留水を加えて全体を1リットルとし、さらに硫酸と、次亜リン酸ナトリウムとでpHを5に調整した無電解ニッケル液に90℃で4分浸してニッケルシード層を形成した。断面観察にて膜厚計測したところ、1.2μmであった。
(ハ)硫酸銅70g、硫酸190g、塩化ナトリウム 90mgを蒸留水に溶解して1リットルとした電解メッキ液を用いて電解銅メッキを行い、シード層上に12μmの銅層を形成した。
(ニ)ドライフィルムレジストを用いてニッケルと銅からなる上部電極を所定のパターンにエッチングして膜素子を完成させた。
【0067】
【実施例1〜4および比較例1】
調製例1〜4および比較調製例1の水性分散液またはワニスにつき、電着時に印加される電圧値、膜厚、誘電体膜としての破断延び、膜素子としての誘電率および体積抵抗率、信頼性を下記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0068】
[電圧値]定電流電着時に印加されている電圧値をデジタルマルチメーターR6551(ADVANTEST社製)にて最大値を測定した。
【0069】
[誘電体膜の膜厚]触針式膜厚計を用いて測定した。
【0070】
〔破断延び〕
水性電着液、ペースト状のサンプルから電着もしくは、流延塗布によって60μm膜厚の自立膜を作成し、これを試料片として引っ張り試験機にて破断延びを測定した。
【0071】
〔誘電率および体積抵抗率〕
JIS K6481に準拠して測定した。
【0072】
〔信頼性試験(ヒートサイクル試験)〕
膜素子を内蔵した基板を150℃と−65℃の間を15分間サイクルで加熱−冷却を繰り返すことを100、300、500、1000回繰り返した後、基板を取り出し、銅−誘電体膜−ニッケル、銅の各界面を観察。界面、膜面に亀裂、剥がれがあれば不合格、なければ合格と判定した。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、50μm以下の薄膜誘電体膜層を電着法によって精度良く成膜でき、形成された薄膜層にポリイミド樹脂を一定の割合で含有するため、誘電体膜層は十分な破断延び特性を確保することができる。また電極形成時のメッキ処理によって十分な密着性を保持しながら電極を形成することができ、十分な信頼性を保持した基板内蔵型膜素子を簡便で効率よく作製することができる。
【0075】
本発明の内蔵キャパシタは、薄膜で高誘電率であるので、プリント回路基板、半導体パッケージ、コンデンサ、高周波用アンテナ等の電子部品等において好適に利用される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、実装基板に内蔵された電子部品に用いられる誘電体膜およびこのような誘電体膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、装置の小型化が進むに連れて実装基板の小型化、受動素子の基板内蔵化の検討が盛んになってきている。たとえば、多層プリント配線基板等に高誘電率の層を設け、この層をキャパシタに利用する技術が知られている。この高誘電率膜層は、たとえば熱硬化性樹脂の有機溶剤溶液に高誘電率の無機粉末を添加したものを、熱硬化性樹脂の脆さを補うためにガラス繊維等の繊維強化材に含浸させ、この強化材を基板上に設けた後に溶剤を飛散させて硬化させる等の方法により作成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法には、繊維強化材を用いるため高誘電率膜層の厚みを薄く(たとえば50μm以下)することができず、またTiO2等の無機粉末に比べて繊維強化材の比誘電率は比較的小さいことから、静電容量の高いキャパシタが得られないという問題がある。
【0004】
この問題を解決するものとして、特開平9−12742号公報には、フィルム形成能を有する熱硬化性樹脂を用いることにより、上記構成から繊維強化材を不要とした高誘電率膜層が開示されている。この公報によれば、上記熱硬化性樹脂および高誘電率の無機粉末を含む樹脂ワニスを調整し、これを塗布、乾燥することによりフィルムを作製している。
【0005】
しかし、高誘電率の無機粉末は一般に比重が大きく樹脂ワニス中において経時により沈降することがあり、この高誘電率の無機粉末を含有する樹脂ワニスは貯蔵安定性に劣るため、フィルム作製の直前に樹脂ワニスをその都度調製しなくてはならなかった。また、溶液の塗布乾燥によりフィルムを形成するので、得られるフィルムの膜厚精度を高くすることが困難であり、また基板上の特定の位置にのみフィルムを形成する場合等において操作性がよいとは言い難いものであった。
【0006】
さらに、任意の配線上に選択的に高誘電率膜層を形成しようとする場合、従来の樹脂ワニスではフォトリソグラフィー、印刷法等を組み合わせて形成位置を規定する必要があった。しかし、フォトリソグラフィーを用いた形成方法では、コストが高く、工程が煩雑であるという問題があり、また印刷法では、加工精度が低いという問題があった。さらには、高誘電率膜層に用いられる熱硬化性樹脂の多くはエポキシ樹脂を主成分としており、力学物性特に破断延びが小さいことから、基板のヒートサイクル試験などの信頼性試験に対する耐性が不十分であるという問題があった。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、膜厚が0.1〜50μmであって信頼性に優れ、かつ高誘電率であって静電容量の高い基板内蔵型キャパシタを得ることが可能な誘電体膜を提供することを目的としている。また、このような誘電体膜を、高い膜厚精度で所望の位置にのみ選択的にかつ低コストで製膜できる製造法を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、
(1)組成物中の樹脂成分としてポリイミド系重合体を含有させることによって、得られる誘電体膜の力学物性が破断伸びが5%以上となり、
(2)特定の無機粒子をこの組成物に分散させることによって、得られる誘電物性の誘電率が5以上となり、体積抵抗が109Ω・cm以上となることを見出した。
(3)そして樹脂と無機粒子とを各々水に分散した粒子状とし、この水性分散液から電着によって誘電体膜を効率的に成膜しうることを見出し、
(4)上記のようにして形成された誘電体膜上に無電解ニッケルメッキにより電極形成シード層を形成しうることを見出した。
【0009】
上記のような誘電体膜は、信頼性に優れ、かつ実用性に優れたものであり、さらには、(3)と(4)の技術を用いて素子を形成すれば、簡便かつ安価に基板内蔵型キャパシタを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0011】
(1)誘電体膜形成用組成物
誘電体膜は、樹脂と無機粒子および分散媒からなる誘電体形成用組成物(以下誘電体組成物という)を成膜し、乾燥硬化することで得られる。誘電体組成物中の無機粒子と樹脂との混合割合(無機粒子/樹脂)は体積比で、5/95〜80/20の範囲であることが好ましく、10/90〜60/40であることがより好ましい。無機粒子の割合が5体積%未満では、高誘電率のフィルムを得ることが困難である。一方、無機粒子の割合が80体積%を超える場合には、フィルムの成膜性が不足することがある。
【0012】
また、分散媒と固形分(樹脂と無機粒子の合計)の割合は基材に塗布する方式によって適する割合が異なる。
(a)印刷塗布させるペースト状組成物である場合;
固形分濃度は30〜90重量%、より好ましくは50〜90重量%であり、この範囲を外れると印刷パターンからのはみ出しが大きく所望の印刷塗布ができなかったり、印刷パターンの目詰まりが問題となることがある。
(b)回転、流延塗布させるワニス状組成物の場合;
固形分濃度は5〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%であり、この範囲を外れると膜厚が所望の範囲に制御することがある。
(c)電着成膜する水性分散体の場合;
固形分濃度は1〜30重量%、より好ましくは2〜20重量%であり、1%重量未満では塗膜形成が困難であり、30重量%を越えると水性分散体の分散状態が不安定となるため好ましくない。
【0013】
これら(a)〜(c)の方法のうち、プロセスの簡便性、材料の利用効率の観点から(a)、(c)の方法が好ましく、特に(c)の電着方式が好ましい。
【0014】
(1−1)樹脂
本発明で得られる絶縁において使用する誘電体組成物には、誘電体膜の破断伸びが5%以上となるように樹脂成分としてポリイミド化合物を含有する必要があり、このポリイミド化合物の組成物の割合は10重量%以上、好ましくは30重量%以上である。
【0015】
ここに言うポリイミド系化合物とは、加熱などにより反応してポリイミドを形成する単量体、オリゴマー、ポリイミド系重合体、および前駆的重合体(たとえばポリアミック酸)などの化合物を意味する。
【0016】
単量体とは以下に例示する酸無水物、ジアミン化合物などを指し、オリゴマーとはこれら単量体の調合比を制御することにより重合度を平均で3〜20量体としたものである。
【0017】
たとえば、酸無水物2モルに対してジアミンを3モル重縮合すれば両末端がアミン構造の5量体が、酸無水物2モルに対してジアミン1モル、モノアルキルアミン2モルを重縮合すれば両末端がアルキル構造の5量体を生成することができる。
【0018】
[単量体(酸無水物)]
本発明に用いられるテトラカルボン酸二無水物は特に限定されるものではなく、具体的には、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物あるいは脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;等を挙げることができ、単独または2種以上を混合して使用することができる。これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、分散媒への溶解性の観点から脂環式テトラカルボン酸二無水物を少なくとも1種用いることが好ましい。
【0019】
[単量体(ジアミン化合物)]
ジアミン化合物は特に限定されるものではなく、具体的には、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミン類;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンあるいは脂環式ジアミン類; 2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン等の、分子内に2つの第一級アミノ基および該第一級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン類;
モノ置換フェニレンジアミン類;
ジアミノオルガノシロキサン;等を挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
ポリイミド系重合体とは、イミド結合で構造単位が結合されたポリイミド構造を有するいわゆるポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂と他の化合物と反応させて得られる変性ポリイミド樹脂、およびポリイミド樹脂の形成に用いられる単量体と他の単量体との共重合体であってポリイミド構造を有する変性ポリイミド樹脂などである。これらのうち、分散媒への分散が容易な点で、溶媒可溶性ポリイミドが好ましく、宇部興産(株)製商品名「ユピファインST」、(株)ピーアイ技研製商品名「Q−PILON Q−VR−319A」、日産化学工業(株)製商品名「SE−812」、新日本理化(株)製商品名「リカコートSN−20、PN−20」などの市販材料が用いられる。また、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを有機極性溶媒中で混合して重縮合させて、ポリアミック酸を得た後、該ポリアミック酸を加熱イミド化法または化学イミド化法により脱水閉環反応させることにより、合成したポリイミドも用いることができる。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重縮合を多段階で行うことにより、ブロック構造を有するポリイミド樹脂を合成することも可能である。
【0021】
この有機溶媒可溶性のポリイミドは、たとえば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基等の反応性基(a)を1種以上有することが好ましい。反応性基(a)を有するポリイミドの合成方法としては、たとえば、ポリアミック酸の合成に使用されるカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、カルボン酸一無水物、モノアミン化合物等の反応原料として、反応性基(a)を有する化合物を使用し、脱水閉環反応後に反応性基(a)を残存させる方法等を挙げることができる。
【0022】
また、これらポリイミド系化合物と併用して用いることができる樹脂化合物としてエポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、フルオレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド等の熱硬化性樹脂化合物が挙げられ、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
(1−2)無機粒子
本発明において使用する無機粒子の誘電率は30以上であり、好ましくは50以上、さらに好ましくは70以上である。このような無機粒子としては、金属酸化物からなるものが好ましく用いられ、特にチタン系金属酸化物が好ましい。ここで、「チタン系金属酸化物」とはチタン元素と酸素元素とを必須元素として含む化合物をいい、具体的には二酸化チタン系、チタン酸バリウム系、チタン酸鉛系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸ビスマス系、チタン酸マグネシウム系、チタン酸ネオジウム系、チタン酸カルシウム系等の金属酸化物が挙げられる。なお、たとえば上記「二酸化チタン系」の金属酸化物とは、二酸化チタンのみを含む系、または二酸化チタンに他の少量の添加物を含む系で、主成分である二酸化チタンの結晶構造が保持されているものであり、他の系の金属酸化物についても同様である。本発明においては、二酸化チタン系(ルチル構造のもの)またはチタン酸バリウム系の金属酸化物からなる無機粒子が特に好ましく用いられる。また、水性媒体への分散性を向上させるために、上記材料からなる粒子の表面をシリカ、アルミナ等で変性した粒子も好適に用いられる。
【0024】
この無機粒子の平均粒子径は1μm以下であることが必要であり、0.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、水性媒体に対する無機粒子の分散性が不足して十分な貯蔵安定性が得られないことがある。平均粒子径の下限は特に限定されないが、通常は0.02μm以上である。
【0025】
次に誘電体組成物がペースト状および水性分散液である場合について特に説明する。
【0026】
(1−3)ペースト(誘電体組成物の一形態)
上記樹脂と無機粒子と分散媒とに、ボールミル、ホモジナイザー、ビーズミル、3本ロールなどを用いて機械的シェアを加えて、無機粒子塊を粉砕しながら樹脂および分散媒中に微分散することによって、誘電体組成物を調製する。
【0027】
分散媒としては、分散加工および印刷・塗布時に揮発しにくい溶剤が好ましく、ジエチレングリコール系、プロピレングリコール系で沸点150℃から250℃の溶剤、たとえばジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチルプロピレングリコールアセテートなどが好ましい例として挙げられる。
【0028】
また、ペーストに光硬化性を付与するために必要な感光剤を加えてもよい。
【0029】
これらペーストはスクリーン印刷、ダイコーターなどの塗布装置で塗布した後、分散剤を乾燥−留去して誘電体膜を形成し、誘電体膜の膜厚はペースト濃度、塗布条件で制御することができる。
【0030】
(1−4)水性分散液(誘電体組成物の一形態)
50重量%以上の水を含む分散媒中に、上記無機粒子および微粒子化したポリイミド系化合物を分散させた水性分散液を調製し、この水性分散体を用いて電着法により誘電体膜を形成することができる。
【0031】
水性分散液に含まれる無機粒子と有機粒子との体積比は、5/95〜80/20の範囲であることが好ましく、10/90〜60/40であることがより好ましい。無機粒子の割合が5体積%未満では、高誘電率のフィルムを得ることが困難となることがあり、無機粒子の割合が80体積%を超えると、フィルムの成膜性が不足することがある。
【0032】
水性分散液のpHは3〜9(より好ましくは4〜7)であり、固形分濃度は1〜50重量%(より好ましくは2〜20重量%)であり、20℃における伝導度は50〜1000μS/cmである。pH、固形分濃度または伝導度が上記範囲を外れると、粒子の分散性等が低下して貯蔵安定性が不足したり、電着時の膜面均一性、電着効率が悪化することがある。
【0033】
この水性分散液は、▲1▼無機粒子の水分散液と有機粒子の水分散液とを混合する、▲2▼有機粒子の水分散液中に無機粒子を添加混合するなどの方法により調製することができる。このうち▲1▼の方法を用いることが好ましい。また、有機粒子水分散液と混合する以前の無機粒子水分散液のpHは、混合時の安定性を向上させるために、イタコン酸、マレイン酸などの2価の有機酸、硫酸、水酸化カリウム等を用いてpH3〜9に調製されていることが好ましい。
【0034】
本発明の水性分散液は、二層分離や粘度の著しい変化等を起こすことなく貯蔵可能な期間が20℃において1日間以上(より好ましくは2日間以上、さらに好ましくは5日間以上)であるような貯蔵安定性を有する。
【0035】
(1−4−1)有機粒子
水性分散液に用いられる有機粒子の表面は、電着を可能とするために電荷を有することが好ましく、電着時の電極酸化を防止するためにはカチオン型であることがさらに好ましい。
【0036】
分散媒中の水の濃度としては、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上である。50重量%未満の場合、有機粒子と無機粒子の分散安定性が経時的に悪化する場合がある。
【0037】
なお、分散媒中の水以外の成分としては、たとえば上記ポリアミック酸あるいはポリイミドの製造に使用される非プロトン性極性溶媒、エステル類、ケトン類、フェノール類、アルコール類等を挙げることができる。
【0038】
これら有機粒子は(A)有機溶媒可溶性のポリイミドと(B)親水性ポリマーと(C)疎水性化合物の混合物を自己乳化させて複合エマルジョン化することで製造することができる。
【0039】
「(A)有機溶媒可溶性のポリイミド」としては、上述のポリイミド系化合物のうち、有機溶剤に可溶な化合物を選択することができる。「(B)親水性ポリマー」としては、親水性基としてアミノ基を必須として含有し、4級アンモニウム塩としたときの水に対する20℃の溶解度が、通常、0.01g/100g以上、好ましくは0.05g/100g以上であり、ガラス転移温度が30℃以下、好ましくは0℃以下である親水性ポリマーからなる。(B)成分中には、前記(A)成分中の反応性基(a)と反応しうる反応性基(b)を1種以上有することが好ましい。このような反応性基(b)としては、たとえば、分子内に共存するアミノ基との反応を抑制するために含有量や構造が調整されたエポキシ基、イソシアネート基等を挙げることができる。このような親水性ポリマーは、アミノ基および反応性基(b)を有するモノビニル単量体を単独重合または共重合させるか、あるいはアミノ基を有するモノビニル単量体と反応性基(b)を有するモノビニル単量体とを共重合させることにより得ることができる。
【0040】
「(C)疎水性化合物」としては、(A)成分もしくは(B)成分と反応しうる基(以下、「反応性基」という。)を有する化合物であることが好ましい。この反応性基としては、たとえば、エポキシ基、イソシアナト基、カルボジイミド基、水酸基、メルカプト基、ハロゲン基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ジアゾ基、カルボニル基等を挙げることができる。これらの反応性基は、疎水性化合物中に1種以上存在することができる。なお、「疎水性」とは、水に対する20℃の溶解度が、通常、0.05g/100g未満、好ましくは0.01/100g未満、さらに好ましくは0.005g/100g未満であることを意味する。
【0041】
このような疎水性化合物としては、たとえば、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、フルオレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ポリカルボジイミド、コレステロール、ベンジルアルコールp−トルエンスルホン酸エステル、クロロ酢酸エチル、トリアジントリチオール、ジアゾメタン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等から選択される1種または2種以上を使用することができる。
【0042】
この(A)有機溶媒可溶性のポリイミドと(B)親水性ポリマーと(C)疎水性化合物とを、反応性基(a)と親水性ポリマー中の反応性基(b)とが適切な反応性を有する組み合わせとなるように選択し、該(A)、(B)、(C)成分および有機酸を、たとえば有機溶媒中にて溶液状態で混合して、必要に応じて加熱しつつ、反応させた後、得られた溶液と水性媒体とを混合することにより、(A),(B),(C)の水性媒体に対する親和性の違いから疎水性の(A)(C)を(B)が被覆して自己乳化が起こり、結果として(B)のアミノ基がカチオン電荷を持ち、これが粒子の殻部となり、中に(A),(C)を内包した有機粒子を形成する。
【0043】
(2)誘電体膜層の電着形成について
上述の水性分散液は、そのまま、あるいはこれを希釈または濃縮して、また必要に応じて従来公知の添加剤を適宜配合して、誘電体膜層形成用の電着液として用いられる。この電着液に基板を浸し、通電することにより、水性分散液中の無機粒子および有機粒子を電極表面等に電着して誘電体膜層を製造することができる。
【0044】
その際、電着時の電圧値は2〜100Vの範囲であることが好ましく、2V未満では十分な膜厚に成膜困難となることがあり、100Vを超えると塗膜中に気泡が多く生じることがある。本発明の誘電体膜層を製造するにあたっては、電着された粒子の樹脂成分をさらに加熱硬化させることが好ましい。加熱硬化の条件は特に限定されるものではないが、加熱温度は100℃〜400℃であり、より好ましくは150〜300℃である。また、加熱時間は5分以上であり、より好ましくは10分以上である。
【0045】
上述のようなペースト、水性分散液を用いると、誘電率5以上(より好ましくは10以上)の誘電体膜層を得ることができる。また、体積抵抗率は109Ω・cm以上(より好ましくは1013Ω・cm以上)のものとすることができ、誘電体膜層の破断延びは5%(より好ましくは10%以上)となる。また、この誘電体膜層の厚さは50μm以下(より好ましくは30μm以下)であることが好ましい。層の厚さの下限は特に限定されないが、通常は1μm以上である。
【0046】
(3)基板内蔵膜素子について
前記の誘電体膜層を電極でサンドイッチ構造とすることで単層のキャパシタを作製することができる。たとえば、所望の容量に応じて設定した面積に銅貼り基板の銅層をパターン形成して下地電極パターンを形成し、その銅上に上述の誘電体膜層を電着法にて成膜すると、下地銅パターン上にのみ誘電体膜層が所望の膜厚で形成される。
【0047】
次に誘電体膜層上に上部電極を形成することで、膜素子を作製することができる。
【0048】
上部電極形成では、電極を50μm以下の薄膜に密着性を高めた状態で形成することが重要であり、特に誘電体膜層と電極の界面付近にシード層を形成することが重要となる。
【0049】
シード層の形成方法は、メッキなどの湿式法、スパッタなどの乾式法に大別されるが、プロセスの簡便性、コスト面からメッキ法が好ましい。
【0050】
メッキ法では、通常下地面との密着性を高めるために、下地面の粗化−無電解メッキ−電解メッキの手順で構成される。本発明のような薄膜でしかも耐アルカリ性に乏しい下地膜の場合には、粗化条件、無電解メッキ条件の選定が重要となり、粗化処理液、無電解メッキ液のpHは3〜7の酸性〜中性であることが好ましく、この場合無電解メッキは無電解ニッケルメッキで実施されることが好ましい。
【0051】
粗化工程は、活性酸素による親水化、表面処理が好ましく、UV、エキシマ光を照射するドライプロセスや、酸化チタンの光触媒機能を活用する方法が利用できる。
【0052】
シード層の厚さは通常2μm以下であり、1μm以下である方が処理時間が短縮されるため好ましく、電解メッキ層も含めた電極層の厚みは高誘電率膜層の厚みの2倍以下であることが好ましい。また、高誘電率膜層形成−電極形成を繰り返して多層キャパシタとする際は、10μm以下であることが膜素子の総厚を薄く抑える観点から好ましい。
【0053】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下において、特記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0054】
(1)無機粒子分散液の調製
(合成例1:酸化チタン水分散液a)
主としてルチル構造の二酸化チタンからなる酸化チタン粒子(堺化学株式会社製、商品名「STR−60C」、平均粒子径0.1μm、誘電率105)200gおよびイオン交換水80gをホモミキサーで混合した後、硝酸でpH4に調整し、さらに10分間の超音波分散を行って、凝集物のない酸化チタン水分散液(固形分濃度20%)を得た。
【0055】
(合成例2:酸化チタン水分散液b)
主としてルチル構造の二酸化チタンからなる酸化チタン粒子(石原産業株式会社製、商品名「TTO−55」、平均粒子径0.2μm、誘電率110)200gおよびイオン交換水80gをホモミキサーで混合した後、硝酸でpH3に調整し、さらに10分間の超音波分散を行って、凝集物のない酸化チタン水分散液(固形分濃度20%)を得た。
【0056】
(合成例3:チタン酸バリウム水分散液)
チタン酸バリウム粒子(堺化学株式会社製、商品名「BT−01」、平均粒子径0.1μm、誘電率2000)200gおよびサンノプコ社製、商品名「SNスパース 70」5.5g、イオン交換水80gをホモミキサーで混合した後、イタコン酸でpH6に調整し、さらに10分間の超音波分散を行って、凝集物のないチタン酸バリウム水分散液(固形分濃度60%)を得た。
【0057】
(2)有機粒子エマルジョンの調製
(合成例4:ポリイミド系化合物エマルジョン)
テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物27.79gおよび4,10−ジオキサトリシクロ[6.3.1.02,7]ドデカン−3,5,9,11−テトラオン7.44g、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン60.01gおよびジアミノベンズアニリド3.75gを、N−メチル−2−ピロリドン400gに溶解して、室温で6時間反応させた。その後、この反応溶液に、ピリジン35gおよび無水酢酸45gを添加し、110℃で4時間脱水閉環反応を行った。次いで、反応溶液を減圧留去して精製し、固形分10%のポリイミド溶液を得た。
【0058】
トルエン100部を入れた反応容器を、窒素ガス雰囲気下で80℃に保持し、この反応容器に、n−ブチルアクリレート79部、アミノ基含有モノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート20部、ブロックイソシアネート基含有モノマー;メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル1部およびアゾビスイソブチロニトリル0.08部からなる混合液を5時間かけて連続的に添加しつつ、撹拌下で溶液重合を行なった。滴下終了後、85℃でさらに2時間撹拌を続けて、溶液重合を完結させ、固形分50%のアクリルポリマー溶液を得た。ガラス転移温度は−40℃、マレイン酸でアミノ基を4級化処理したポリマーの水への溶解性は5g/100gであった。
【0059】
ポリイミド溶液30部(固形分)と、アクリルポリマー溶液40部(固形分)と、エピコート828(油化シェルエポキシ社製の商品名)30部と、マレイン酸5部と、シクロヘキサノン90部と、N−メチルピロリドン140部とを混合し、70℃の蒸留水700部に添加しつつ強く撹拌して、ポリイミド系化合物を主成分とするpH5.2、固形分濃度10%の有機粒子のカチオン性エマルジョンを得た。
【0060】
(3)水性分散液の調製
(調製例1)
合成例1で得られた酸化チタン水分散液a200部(固形分換算で40部)と、合成例4で得られたポリイミド系化合物エマルジョン600部(固形分換算で60部)と、蒸留水740部と、シクロヘキサノン115部と、N−メチルピロリドン180部とを混合して水性分散液を調製した。(体積比で有機樹脂/無機粒子=86/14)
分散液のpHは6.1であり、固形分濃度は5.4%であり、伝導度は180μS/cmであった。
【0061】
(調製例2)
合成例2で得られた酸化チタン水分散液b250部(固形分換算で50部)と、合成例4で得られたポリイミド系化合物エマルジョン500部(固形分換算で50部)と、蒸留水370部と、シクロヘキサノン50部と、N−メチルピロリドン60部とを混合して水性分散液を調製した。(体積比で有機樹脂/無機粒子=81/19)
分散液のpHは5.5であり、固形分濃度は8.1%であり、伝導度は250μS/cmであった。
【0062】
(調製例3)
合成例3で得られたチタン酸バリウム水分散液700部(固形分換算で70部)と、合成例4で得られたポリイミド系化合物エマルジョン150部(固形分換算で30部)と、蒸留水700部と、シクロヘキサノン70部と、N−メチルピロリドン120部とを混合して水性分散液を調製した。(体積比で有機樹脂/無機粒子=72/28)
分散液のpHは5.5であり、固形分濃度は5.7%であり、伝導度は150μS/cmであった。
【0063】
(調製例4)
ポリイミド系樹脂ワニス(宇部興産株式会社製、商品名「ユピファインST」)200部(固形分換算で20部)中に、合成例3で用いたチタン酸バリウム粒子80部を加え、3本ロールで分散混合してフィルム形成用のペーストを得た。(体積比で有機樹脂/無機粒子=60/40)
(比較調製例1)
合成例1で得られた酸化チタン水分散液をそのまま水性分散液とした。
【0064】
(4)フィルムの形成および性能評価
上記調製例1〜3および比較調製例1の水性分散液中に、それぞれ陰極としての銅板(電着面積=3.5cm×5.5cm)および対向電極としてのSUS板(銅板と同じ大きさ)を配置し、15mAの一定電流を60秒間連続印加する定電流法により陰極側の銅板上に粒子を電着させた。その後、100℃で10分加熱し、さらに200℃で30分間加熱してフィルムを得た。なお、比較例1では成膜性不良によりフィルムを得ることができなかった。
【0065】
調製例4のペースト状サンプルは、18μm厚の銅箔にスクリーン印刷塗布してた後100℃オーブンで10分乾燥し、さらに200℃で30分間加熱して膜厚20μmの高誘電率膜を得た。
【0066】
次に、上部電極を以下の手順で形成し、膜素子を完成させた。
(イ)高誘電体膜層を成膜した基板に高圧水銀灯によりUV光を5J/cm2照射して表面処理した。
(ロ)硫酸ニッケル(25g)、次亜リン酸ナトリウム(20g)、酢酸ナトリウム(10g)、クエン酸ナトリウム(10g)を蒸留水500ccにこの順に溶解させながら攪拌混合し、蒸留水を加えて全体を1リットルとし、さらに硫酸と、次亜リン酸ナトリウムとでpHを5に調整した無電解ニッケル液に90℃で4分浸してニッケルシード層を形成した。断面観察にて膜厚計測したところ、1.2μmであった。
(ハ)硫酸銅70g、硫酸190g、塩化ナトリウム 90mgを蒸留水に溶解して1リットルとした電解メッキ液を用いて電解銅メッキを行い、シード層上に12μmの銅層を形成した。
(ニ)ドライフィルムレジストを用いてニッケルと銅からなる上部電極を所定のパターンにエッチングして膜素子を完成させた。
【0067】
【実施例1〜4および比較例1】
調製例1〜4および比較調製例1の水性分散液またはワニスにつき、電着時に印加される電圧値、膜厚、誘電体膜としての破断延び、膜素子としての誘電率および体積抵抗率、信頼性を下記方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0068】
[電圧値]定電流電着時に印加されている電圧値をデジタルマルチメーターR6551(ADVANTEST社製)にて最大値を測定した。
【0069】
[誘電体膜の膜厚]触針式膜厚計を用いて測定した。
【0070】
〔破断延び〕
水性電着液、ペースト状のサンプルから電着もしくは、流延塗布によって60μm膜厚の自立膜を作成し、これを試料片として引っ張り試験機にて破断延びを測定した。
【0071】
〔誘電率および体積抵抗率〕
JIS K6481に準拠して測定した。
【0072】
〔信頼性試験(ヒートサイクル試験)〕
膜素子を内蔵した基板を150℃と−65℃の間を15分間サイクルで加熱−冷却を繰り返すことを100、300、500、1000回繰り返した後、基板を取り出し、銅−誘電体膜−ニッケル、銅の各界面を観察。界面、膜面に亀裂、剥がれがあれば不合格、なければ合格と判定した。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、50μm以下の薄膜誘電体膜層を電着法によって精度良く成膜でき、形成された薄膜層にポリイミド樹脂を一定の割合で含有するため、誘電体膜層は十分な破断延び特性を確保することができる。また電極形成時のメッキ処理によって十分な密着性を保持しながら電極を形成することができ、十分な信頼性を保持した基板内蔵型膜素子を簡便で効率よく作製することができる。
【0075】
本発明の内蔵キャパシタは、薄膜で高誘電率であるので、プリント回路基板、半導体パッケージ、コンデンサ、高周波用アンテナ等の電子部品等において好適に利用される。
Claims (4)
- 対向した電極によって挟まれて基板内蔵素子に用いられる誘電体膜であって、ポリイミド系化合物と無機粒子とを含有し、破断伸びが5%以上であり、誘電率が5以上であり、膜厚が0.1〜50μmであり、体積抵抗が109Ω・cm以上であることを特徴とする誘電体膜。
- 請求項1に記載の誘電体膜を、電着法により製膜することを特徴とする誘電体膜の製造方法。
- ポリイミド系化合物を含む有機粒子と無機粒子とからなる固形分濃度が1〜50重量%であり、電気伝導度が50〜1000μS/cmであり、pHが3〜9であって、分散媒中に50重量%以上の水を含む水性分散液を用い、5〜100Vの電圧を印加することにより、基板上に誘電体膜を電着法により製膜することを特徴とする誘電体膜の製造方法。
- 有機粒子が(A)有機溶媒可溶性であり、かつ反応性基(a)を有するポリイミドと、(B)該反応性基(a)と反応する反応性基(b)を有する親水性ポリマーと、(C)疎水性化合物とを、反応性基(a)と反応性基(b)とが反応するようにして得られたものである請求項3に記載の誘電体膜の製造方法。
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