JP2004329006A - 大根粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造工程中の菌による汚染を防止する共に、大根のアミラーゼ活性を損なうことなく大根を効率よく粉末化する方法を提供する。
【解決手段】大根をブロック状又は板状にカットして、これをpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌し、そのまま凍結乾燥して粉砕する。前記酸性溶液として、有機酸を含むものを用いることが好ましい。また、前記カットした大根を、pH2〜4に調整された5〜30℃の酸性溶液に10分以上浸漬して殺菌を行うことが好ましい。このようにして得られた大根粉末は、アミラーゼ力価が高いので例えば消化促進剤として好適に用いることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】大根をブロック状又は板状にカットして、これをpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌し、そのまま凍結乾燥して粉砕する。前記酸性溶液として、有機酸を含むものを用いることが好ましい。また、前記カットした大根を、pH2〜4に調整された5〜30℃の酸性溶液に10分以上浸漬して殺菌を行うことが好ましい。このようにして得られた大根粉末は、アミラーゼ力価が高いので例えば消化促進剤として好適に用いることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大根に含まれるアミラーゼの活性を損なうことなく大根を粉末化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大根には、ビタミン、ミネラル、食物繊維、各種酵素等が豊富に含まれていることが知られている。大根は、大根おろしとして、あるいはサラダや刺身のつま等として生で食されることも多いが、生の大根にはアミラーゼが豊富に含まれており、消化を促進し、胃酸過多、胃もたれ、胸やけ、二日酔い等に効果があると言われている。
【0003】
生鮮野菜である大根は保存性が悪く、特におろし等に加工した場合は、急速に風味の劣化や変色が進む。このため、従来より、辛味や風味等を損なうことなく工業規模で大根を加工するための様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、乾燥大根おろしに関する技術として、下記特許文献1には、大根を磨砕して得られる大根おろしを、一部の液状物を含む固状物と液状物に分離し、分離した液状物を少なくとも最高品温60℃以下で低温濃縮し、該低温濃縮した液状物を前記分離した固状物と混合してから凍結させ、定法により真空凍結乾燥することを特徴とする乾燥大根おろしの製造方法が開示されている。この方法によれば、加水復元した際、大根おろし本来の微妙な辛味、風味、色味などを好適に保持する乾燥大根おろしを提供できることが記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、辛味大根を洗浄後急速冷凍し、その後真空乾燥をしながら凍結した水分を昇華させ、固形又は粉末として辛味成分を保持した大根加工品を得る技術が開示されている。この技術によれば、辛味大根を、その辛味成分を保持したまま固形又は粉末とすることができ、辛味成分による痛風や花粉症の症状改善効果や、活性酵素(ジアスターゼ)による消化促進作用が期待できることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−303447号公報
【特許文献2】
特開2002−262823号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、生の大根には消化促進作用があることは知られているものの、大根を消化促進剤として利用するためには、大根に含まれるアミラーゼの活性をできるだけ損なわずに粉末化するなどして利用しやすい形態に加工する必要がある。
【0008】
しかし、上記特許文献1に開示された方法では、生の大根を磨砕した後、固状物と液状物との分離、濃縮、凍結乾燥等の後加工に付すため、後工程においてプロテアーゼにより、アミラーゼが分解、失活してしまい、得られた乾燥大根おろしのアミラーゼの活性が低下している可能性が高く、消化促進作用はあまり期待できない。また、磨砕した後に殺菌処理を行うことができないという問題もある。
【0009】
一方、上記特許文献2に開示された方法では、大根をそのまま凍結乾燥させるので、乾燥に非常に時間がかかり、製造コストが高くなってしまうという問題がある。また、熱に弱い辛味成分を保持するために、加熱殺菌を十分に行うことができないという問題もある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、製造工程中の菌による汚染を防止する共に、大根のアミラーゼ活性を損なうことなく大根を効率よく粉末化する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の大根粉末の製造方法は、洗浄した大根をブロック状又は板状にカットする工程と、カットした大根をpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌する工程と、殺菌したブロック状又は板状の大根をそのまま凍結乾燥して粉砕する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の製造方法によれば、大根をブロック状又は板状にカットすることにより、後工程の乾燥時間を短縮することができる。また、カットした大根を、pH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌するので、アミラーゼの活性を損なうことなく殺菌することができる。更に、殺菌したブロック状又は板状の大根をそのまま凍結乾燥して粉砕するので、菌による汚染の心配がなく、高いアミラーゼ活性を維持したまま、乾燥・粉末化することができ、アミラーゼ力価の高い大根粉末を得ることができる。
【0013】
上記製造方法においては、前記酸性溶液として、有機酸を含むものを用いることが好ましい。
【0014】
また、前記カットした大根を、pH2〜4に調整された5〜30℃の酸性溶液に10分以上浸漬して殺菌を行うことが好ましい。これによれば、大根に含まれるアミラーゼの活性を損なうことなく、効率よく殺菌することかできる。
【0015】
更に、凍結乾燥時の品温が45℃を超えないように乾燥を行うことが好ましい。これによれば、凍結乾燥時におけるアミラーゼの失活を防止しながら乾燥することができる。
【0016】
更にまた、大根を厚さ3〜20mmのブロック状又は板状にカットすることが好ましい。これによれば、大根片を効率よく、均一に乾燥することができる。
【0017】
本発明の大根粉末の製造方法は、大根粉末のアミラーゼ力価が100単位/g以上である大根粉末を製造する際に好ましく適用される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製造方法を工程順に説明する。
【0019】
(1)洗浄した大根をブロック状又は板状にカットする工程
本発明で用いられる大根は、アミラーゼ活性を有している大根であれば特に制限はなく、例えば、青首ダイコン、白首ダイコン、赤首ダイコン、青味ダイコン、姫ダイコン、聖護院ダイコン、コウシンダイコン等を用いることができる。
【0020】
原料大根は、予め、葉を落としてからよく洗浄し、好ましくは剥皮してからブロック状又は板状にカットする。このとき、後の乾燥工程において、大根片を均一に乾燥できるようにするため、カットした大根の大きさができるだけ等しくなるように、大根の大きさに応じて、適宜、半割り、更には4つ切りにしてから、3〜20mm(より好ましくは8〜12mm)の厚さにカットすることが好ましい。
【0021】
(2)カットした大根をpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌する工程本工程で殺菌処理に用いられるpH2〜4に調整された酸性溶液としては、通常、食品加工において用いられる有機酸を含むものが好ましく用いられる。このような有機酸としては、具体的には、酢酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、醸造酢等が例示でき、これらの混合物を用いてもよい。なお、酸性溶液のpHが低すぎると最終製品に有機酸の風味が残り、製品の風味が悪くなり、pHが高すぎると十分な殺菌効果を得ることができない。
【0022】
また、本工程においては、大根に含まれるアミラーゼを失活させることなく、効率よく殺菌を行うために、5〜30℃に調整した酸性溶液に10分以上(通常、10〜30分)浸漬することが好ましい。
【0023】
(3)殺菌したブロック状又は板状の大根をそのまま凍結乾燥して粉砕する工程
上記酸性溶液に所定時間浸漬して殺菌した大根片は、十分に水切りした後、−30℃以下で急速冷凍し、そのまま凍結乾燥すればよい。したがって、殺菌処理後、直ちに凍結乾燥するので菌による汚染の心配がない。
【0024】
凍結乾燥は、常法に従って行うことができるが、品温が45℃を超えないように(より好ましくは35〜40℃)乾燥を行うことが好ましい。凍結乾燥時の品温が高すぎるとアミラーゼが失活する虞れがある。
【0025】
十分に乾燥した大根片は、公知の方法で、好ましくは20メッシュパス、より好ましくは30メッシュパスの大きさに粉砕する。
【0026】
このようにして得られた大根粉末は、アミラーゼ力価が100単位/g以上であり、大根に含まれるアミラーゼの活性が損なわれていないので、生の大根と同様の消化促進効果が期待できる。したがって、この大根粉末は消化促進剤等として好適に用いることができる。また、粉末化されているので、保存安定性が高く、生の大根を摂取する場合に比べて摂取しやすいという利点もある。
【0027】
なお、アミラーゼ力価とは、以下の方法により測定したアミラーゼの活性を意味する。
【0028】
▲1▼アミラーゼの抽出
大根粉末5gに、2質量%塩化カリウム溶液100mlを加えて、氷冷しながら60分間穏やかに撹拌した後、遠心分離(3,000rpm、10分)して、濾紙(ADVATEC No.5B)で濾過して濾液を回収し、サンプル溶液を調製する。
【0029】
▲2▼アミラーゼ力価の測定
予め、40℃の水浴に10分間放置しておいた1質量%デンプン溶液(pH5.0)10mlに上記サンプル溶液を0.5ml添加し、そのまま水浴中で反応を行う。
【0030】
経時的に反応液0.1mlを分取し、10倍希釈ヨウ素液10mlに加えて、670nmの透過率を測定し、透過率が66%を超えるまで反応を行う。
【0031】
・1質量%デンプン溶液:デンプン1gを水40〜50mlに添加し、ウォーターバスにて加熱溶解する。pH調整液(酢酸0.2mol、酢酸ナトリウム0.2mol、pH5.0)を20ml添加した後、水を加えて100mlに定容する。
【0032】
・ヨウ素液:ヨウ素31.8mg、ヨウ化カリウム0.1gを少量の水に溶解した後、6N HCl 10ml及び少量の水を加えて撹拌する。水を加えて100mlに定容する。使用時に水で10倍希釈して使用する。
【0033】
そして、透過率と反応時間との関係をグラフ化し、透過率が66%を示す時間を求める。上記条件で30分間に1質量%デンプン溶液を670nmの透過率が66%になるまで分解するアミラーゼ活性を1単位として、下記式によりアミラーゼ力価を計算する。
【0034】
【数1】
【0035】
本発明の大根粉末は、用途に応じて、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の各種製剤形態にすることができる。
【0036】
また、本発明の大根粉末を消化促進剤として利用する場合は、他の成分として、消化促進、健胃、整胃等の生理活性を有する成分(パパイヤの果肉や果汁の粉末、海藻抽出物、ウイキョウ、ミント、桂皮、ココア、緑茶抽出物等)、ビタミン類、ミネラル類、賦形剤(ラクトース、澱粉、グルコース、セルロース、糖アルコール等)、結着剤(プルラン等)、麦芽エキス、甘味剤、香料等を適宜含むことができる。例えば、上記消化促進、健胃、整胃等の生理活性を有する成分を併用することにより、大根粉末との相乗効果が期待できるので好ましい。
【0037】
こうして得られる消化促進剤は、摂取することにより、安全、且つ効果的に消化を促進することができ、胃酸過多、胃もたれ、胸やけ、二日酔い等の防止効果が期待できる。本発明で得られる大根粉末を含む消化促進剤の投与量(有効摂取量)は、1日当たり、大根粉末換算で好ましくは0.2g以上、より好ましくは0.6g以上である。
【0038】
また、本発明の大根粉末は、水で戻すことにより、そのまま大根おろしとして使用することができる。また、各種飲食品、例えば、ふりかけ等に添加することもできる。飲食品に添加する場合の添加量は、通常、大根粉末換算で0.1〜30質量%が好ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0040】
実施例1
葉を切り落とした大根を十分に洗浄した後、剥皮してから半割りした。半割りした大根を厚さ10mmにカットして、15℃の酸性溶液(食酢水溶液、pH3.0)に15分間浸漬して殺菌処理した。
【0041】
殺菌した大根スライスを、そのまま−30℃で凍結して、凍結乾燥(24時間、最高品温40℃)した。乾燥終了後、粉砕機で粉砕し、30メッシュパスの大根粉末を得た。
【0042】
比較例1
葉を切り落とした大根を十分に洗浄した後、剥皮してから、厚さ10mmにカットして、そのまま熱風乾燥(65℃、6時間)した。乾燥終了後、粉砕機で粉砕し、20メッシュパスの大根粉末を得た。
【0043】
比較例2
葉を切り落とした大根を十分に洗浄した後、剥皮してから、15℃の酸性溶液(食酢水溶液、pH4.0)に10分間浸漬して殺菌処理した。
【0044】
殺菌した大根をおろしてから、−20℃で冷凍した後、一旦解凍し、凍結乾燥(24時間、最高品温40℃)した。乾燥終了後、粉砕機で粉砕し、30メッシュパスの大根粉末を得た。
【0045】
比較例3
大根の洗浄、剥皮、カット、殺菌処理を実施例1と同様にして行った。そして、殺菌した大根スライスを、そのまま−20℃で凍結した後、一旦解凍してから凍結乾燥(24時間、最高品温40℃)した。乾燥終了後、粉砕機で粉砕し、30メッシュパスの大根粉末を得た。
【0046】
実施例1及び比較例1〜3で得られた各大根粉末を用いて、そのアミラーゼ力価、及び一般生菌数を測定した。なお、一般生菌数の測定は標準寒天平板培養法で行った。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から、実施例1の大根粉末は、比較例1〜3の大根粉末に比べて、高いアミラーゼ力価を有しており、大根に含まれるアミラーゼの活性を損なうことなく粉末化されていることが分かる。また、一般生菌数も非常に少ないことが分かる。
【0049】
実施例2
実施例1で得られた大根粉末を用いて、表2に示す配合で、撹拌流動造粒機を用い、常法に従って顆粒状の消化促進剤を製造した。
【0050】
【表2】
【0051】
試験例
むねやけ、胃のもたれ、吐き気、胃の痛み、周期的な不快感等の症状があり、普段から胃腸の調子のよくない30〜60代の男女19名に、実施例2で得られた消化促進剤(1g/包)を、朝食、昼食、夕食のいずれかの食中に1日1包、14日間服用してもらい、胃の調子が改善されたかどうかアンケートを行った。その結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3から分かるように、本願発明の消化促進剤を摂取することにより、58%の人に胃の調子の改善効果が認められた。症状別には、63%の人に胃のもたれの改善効果が認められた。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、大根をブロック状又は板状にカットして、これをpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌し、そのまま凍結乾燥して粉砕するので、大根に含まれるアミラーゼの活性を損なうことなく、効率よく乾燥・粉末化することができる。また、殺菌処理後、直ちに凍結乾燥するので、菌による汚染の心配もない。
【0055】
この大根粉末は、アミラーゼ力価が高いので消化促進剤として好適に用いることができ、例えば、食中、食後に摂取することにより、安全、且つ効果的に消化を促進することができ、胃酸過多、胃もたれ、胸やけ、二日酔い等の防止効果が期待できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、大根に含まれるアミラーゼの活性を損なうことなく大根を粉末化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大根には、ビタミン、ミネラル、食物繊維、各種酵素等が豊富に含まれていることが知られている。大根は、大根おろしとして、あるいはサラダや刺身のつま等として生で食されることも多いが、生の大根にはアミラーゼが豊富に含まれており、消化を促進し、胃酸過多、胃もたれ、胸やけ、二日酔い等に効果があると言われている。
【0003】
生鮮野菜である大根は保存性が悪く、特におろし等に加工した場合は、急速に風味の劣化や変色が進む。このため、従来より、辛味や風味等を損なうことなく工業規模で大根を加工するための様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、乾燥大根おろしに関する技術として、下記特許文献1には、大根を磨砕して得られる大根おろしを、一部の液状物を含む固状物と液状物に分離し、分離した液状物を少なくとも最高品温60℃以下で低温濃縮し、該低温濃縮した液状物を前記分離した固状物と混合してから凍結させ、定法により真空凍結乾燥することを特徴とする乾燥大根おろしの製造方法が開示されている。この方法によれば、加水復元した際、大根おろし本来の微妙な辛味、風味、色味などを好適に保持する乾燥大根おろしを提供できることが記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、辛味大根を洗浄後急速冷凍し、その後真空乾燥をしながら凍結した水分を昇華させ、固形又は粉末として辛味成分を保持した大根加工品を得る技術が開示されている。この技術によれば、辛味大根を、その辛味成分を保持したまま固形又は粉末とすることができ、辛味成分による痛風や花粉症の症状改善効果や、活性酵素(ジアスターゼ)による消化促進作用が期待できることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−303447号公報
【特許文献2】
特開2002−262823号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、生の大根には消化促進作用があることは知られているものの、大根を消化促進剤として利用するためには、大根に含まれるアミラーゼの活性をできるだけ損なわずに粉末化するなどして利用しやすい形態に加工する必要がある。
【0008】
しかし、上記特許文献1に開示された方法では、生の大根を磨砕した後、固状物と液状物との分離、濃縮、凍結乾燥等の後加工に付すため、後工程においてプロテアーゼにより、アミラーゼが分解、失活してしまい、得られた乾燥大根おろしのアミラーゼの活性が低下している可能性が高く、消化促進作用はあまり期待できない。また、磨砕した後に殺菌処理を行うことができないという問題もある。
【0009】
一方、上記特許文献2に開示された方法では、大根をそのまま凍結乾燥させるので、乾燥に非常に時間がかかり、製造コストが高くなってしまうという問題がある。また、熱に弱い辛味成分を保持するために、加熱殺菌を十分に行うことができないという問題もある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、製造工程中の菌による汚染を防止する共に、大根のアミラーゼ活性を損なうことなく大根を効率よく粉末化する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の大根粉末の製造方法は、洗浄した大根をブロック状又は板状にカットする工程と、カットした大根をpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌する工程と、殺菌したブロック状又は板状の大根をそのまま凍結乾燥して粉砕する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の製造方法によれば、大根をブロック状又は板状にカットすることにより、後工程の乾燥時間を短縮することができる。また、カットした大根を、pH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌するので、アミラーゼの活性を損なうことなく殺菌することができる。更に、殺菌したブロック状又は板状の大根をそのまま凍結乾燥して粉砕するので、菌による汚染の心配がなく、高いアミラーゼ活性を維持したまま、乾燥・粉末化することができ、アミラーゼ力価の高い大根粉末を得ることができる。
【0013】
上記製造方法においては、前記酸性溶液として、有機酸を含むものを用いることが好ましい。
【0014】
また、前記カットした大根を、pH2〜4に調整された5〜30℃の酸性溶液に10分以上浸漬して殺菌を行うことが好ましい。これによれば、大根に含まれるアミラーゼの活性を損なうことなく、効率よく殺菌することかできる。
【0015】
更に、凍結乾燥時の品温が45℃を超えないように乾燥を行うことが好ましい。これによれば、凍結乾燥時におけるアミラーゼの失活を防止しながら乾燥することができる。
【0016】
更にまた、大根を厚さ3〜20mmのブロック状又は板状にカットすることが好ましい。これによれば、大根片を効率よく、均一に乾燥することができる。
【0017】
本発明の大根粉末の製造方法は、大根粉末のアミラーゼ力価が100単位/g以上である大根粉末を製造する際に好ましく適用される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製造方法を工程順に説明する。
【0019】
(1)洗浄した大根をブロック状又は板状にカットする工程
本発明で用いられる大根は、アミラーゼ活性を有している大根であれば特に制限はなく、例えば、青首ダイコン、白首ダイコン、赤首ダイコン、青味ダイコン、姫ダイコン、聖護院ダイコン、コウシンダイコン等を用いることができる。
【0020】
原料大根は、予め、葉を落としてからよく洗浄し、好ましくは剥皮してからブロック状又は板状にカットする。このとき、後の乾燥工程において、大根片を均一に乾燥できるようにするため、カットした大根の大きさができるだけ等しくなるように、大根の大きさに応じて、適宜、半割り、更には4つ切りにしてから、3〜20mm(より好ましくは8〜12mm)の厚さにカットすることが好ましい。
【0021】
(2)カットした大根をpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌する工程本工程で殺菌処理に用いられるpH2〜4に調整された酸性溶液としては、通常、食品加工において用いられる有機酸を含むものが好ましく用いられる。このような有機酸としては、具体的には、酢酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、醸造酢等が例示でき、これらの混合物を用いてもよい。なお、酸性溶液のpHが低すぎると最終製品に有機酸の風味が残り、製品の風味が悪くなり、pHが高すぎると十分な殺菌効果を得ることができない。
【0022】
また、本工程においては、大根に含まれるアミラーゼを失活させることなく、効率よく殺菌を行うために、5〜30℃に調整した酸性溶液に10分以上(通常、10〜30分)浸漬することが好ましい。
【0023】
(3)殺菌したブロック状又は板状の大根をそのまま凍結乾燥して粉砕する工程
上記酸性溶液に所定時間浸漬して殺菌した大根片は、十分に水切りした後、−30℃以下で急速冷凍し、そのまま凍結乾燥すればよい。したがって、殺菌処理後、直ちに凍結乾燥するので菌による汚染の心配がない。
【0024】
凍結乾燥は、常法に従って行うことができるが、品温が45℃を超えないように(より好ましくは35〜40℃)乾燥を行うことが好ましい。凍結乾燥時の品温が高すぎるとアミラーゼが失活する虞れがある。
【0025】
十分に乾燥した大根片は、公知の方法で、好ましくは20メッシュパス、より好ましくは30メッシュパスの大きさに粉砕する。
【0026】
このようにして得られた大根粉末は、アミラーゼ力価が100単位/g以上であり、大根に含まれるアミラーゼの活性が損なわれていないので、生の大根と同様の消化促進効果が期待できる。したがって、この大根粉末は消化促進剤等として好適に用いることができる。また、粉末化されているので、保存安定性が高く、生の大根を摂取する場合に比べて摂取しやすいという利点もある。
【0027】
なお、アミラーゼ力価とは、以下の方法により測定したアミラーゼの活性を意味する。
【0028】
▲1▼アミラーゼの抽出
大根粉末5gに、2質量%塩化カリウム溶液100mlを加えて、氷冷しながら60分間穏やかに撹拌した後、遠心分離(3,000rpm、10分)して、濾紙(ADVATEC No.5B)で濾過して濾液を回収し、サンプル溶液を調製する。
【0029】
▲2▼アミラーゼ力価の測定
予め、40℃の水浴に10分間放置しておいた1質量%デンプン溶液(pH5.0)10mlに上記サンプル溶液を0.5ml添加し、そのまま水浴中で反応を行う。
【0030】
経時的に反応液0.1mlを分取し、10倍希釈ヨウ素液10mlに加えて、670nmの透過率を測定し、透過率が66%を超えるまで反応を行う。
【0031】
・1質量%デンプン溶液:デンプン1gを水40〜50mlに添加し、ウォーターバスにて加熱溶解する。pH調整液(酢酸0.2mol、酢酸ナトリウム0.2mol、pH5.0)を20ml添加した後、水を加えて100mlに定容する。
【0032】
・ヨウ素液:ヨウ素31.8mg、ヨウ化カリウム0.1gを少量の水に溶解した後、6N HCl 10ml及び少量の水を加えて撹拌する。水を加えて100mlに定容する。使用時に水で10倍希釈して使用する。
【0033】
そして、透過率と反応時間との関係をグラフ化し、透過率が66%を示す時間を求める。上記条件で30分間に1質量%デンプン溶液を670nmの透過率が66%になるまで分解するアミラーゼ活性を1単位として、下記式によりアミラーゼ力価を計算する。
【0034】
【数1】
【0035】
本発明の大根粉末は、用途に応じて、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の各種製剤形態にすることができる。
【0036】
また、本発明の大根粉末を消化促進剤として利用する場合は、他の成分として、消化促進、健胃、整胃等の生理活性を有する成分(パパイヤの果肉や果汁の粉末、海藻抽出物、ウイキョウ、ミント、桂皮、ココア、緑茶抽出物等)、ビタミン類、ミネラル類、賦形剤(ラクトース、澱粉、グルコース、セルロース、糖アルコール等)、結着剤(プルラン等)、麦芽エキス、甘味剤、香料等を適宜含むことができる。例えば、上記消化促進、健胃、整胃等の生理活性を有する成分を併用することにより、大根粉末との相乗効果が期待できるので好ましい。
【0037】
こうして得られる消化促進剤は、摂取することにより、安全、且つ効果的に消化を促進することができ、胃酸過多、胃もたれ、胸やけ、二日酔い等の防止効果が期待できる。本発明で得られる大根粉末を含む消化促進剤の投与量(有効摂取量)は、1日当たり、大根粉末換算で好ましくは0.2g以上、より好ましくは0.6g以上である。
【0038】
また、本発明の大根粉末は、水で戻すことにより、そのまま大根おろしとして使用することができる。また、各種飲食品、例えば、ふりかけ等に添加することもできる。飲食品に添加する場合の添加量は、通常、大根粉末換算で0.1〜30質量%が好ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0040】
実施例1
葉を切り落とした大根を十分に洗浄した後、剥皮してから半割りした。半割りした大根を厚さ10mmにカットして、15℃の酸性溶液(食酢水溶液、pH3.0)に15分間浸漬して殺菌処理した。
【0041】
殺菌した大根スライスを、そのまま−30℃で凍結して、凍結乾燥(24時間、最高品温40℃)した。乾燥終了後、粉砕機で粉砕し、30メッシュパスの大根粉末を得た。
【0042】
比較例1
葉を切り落とした大根を十分に洗浄した後、剥皮してから、厚さ10mmにカットして、そのまま熱風乾燥(65℃、6時間)した。乾燥終了後、粉砕機で粉砕し、20メッシュパスの大根粉末を得た。
【0043】
比較例2
葉を切り落とした大根を十分に洗浄した後、剥皮してから、15℃の酸性溶液(食酢水溶液、pH4.0)に10分間浸漬して殺菌処理した。
【0044】
殺菌した大根をおろしてから、−20℃で冷凍した後、一旦解凍し、凍結乾燥(24時間、最高品温40℃)した。乾燥終了後、粉砕機で粉砕し、30メッシュパスの大根粉末を得た。
【0045】
比較例3
大根の洗浄、剥皮、カット、殺菌処理を実施例1と同様にして行った。そして、殺菌した大根スライスを、そのまま−20℃で凍結した後、一旦解凍してから凍結乾燥(24時間、最高品温40℃)した。乾燥終了後、粉砕機で粉砕し、30メッシュパスの大根粉末を得た。
【0046】
実施例1及び比較例1〜3で得られた各大根粉末を用いて、そのアミラーゼ力価、及び一般生菌数を測定した。なお、一般生菌数の測定は標準寒天平板培養法で行った。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から、実施例1の大根粉末は、比較例1〜3の大根粉末に比べて、高いアミラーゼ力価を有しており、大根に含まれるアミラーゼの活性を損なうことなく粉末化されていることが分かる。また、一般生菌数も非常に少ないことが分かる。
【0049】
実施例2
実施例1で得られた大根粉末を用いて、表2に示す配合で、撹拌流動造粒機を用い、常法に従って顆粒状の消化促進剤を製造した。
【0050】
【表2】
【0051】
試験例
むねやけ、胃のもたれ、吐き気、胃の痛み、周期的な不快感等の症状があり、普段から胃腸の調子のよくない30〜60代の男女19名に、実施例2で得られた消化促進剤(1g/包)を、朝食、昼食、夕食のいずれかの食中に1日1包、14日間服用してもらい、胃の調子が改善されたかどうかアンケートを行った。その結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3から分かるように、本願発明の消化促進剤を摂取することにより、58%の人に胃の調子の改善効果が認められた。症状別には、63%の人に胃のもたれの改善効果が認められた。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、大根をブロック状又は板状にカットして、これをpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌し、そのまま凍結乾燥して粉砕するので、大根に含まれるアミラーゼの活性を損なうことなく、効率よく乾燥・粉末化することができる。また、殺菌処理後、直ちに凍結乾燥するので、菌による汚染の心配もない。
【0055】
この大根粉末は、アミラーゼ力価が高いので消化促進剤として好適に用いることができ、例えば、食中、食後に摂取することにより、安全、且つ効果的に消化を促進することができ、胃酸過多、胃もたれ、胸やけ、二日酔い等の防止効果が期待できる。
Claims (6)
- 洗浄した大根をブロック状又は板状にカットする工程と、カットした大根をpH2〜4に調整された酸性溶液に浸漬して殺菌する工程と、殺菌したブロック状又は板状の大根をそのまま凍結乾燥して粉砕する工程とを含むことを特徴とする大根粉末の製造方法。
- 前記酸性溶液として、有機酸を含むものを用いる、請求項1に記載の大根粉末の製造方法。
- 前記カットした大根を、pH2〜4に調整された5〜30℃の酸性溶液に10分以上浸漬して殺菌を行う、請求項1又は2に記載の大根粉末の製造方法。
- 凍結乾燥時の品温が45℃を超えないように乾燥を行う、請求項1〜3のいずれか一つに記載の大根粉末の製造方法。
- 大根を厚さ3〜20mmのブロック状又は板状にカットする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の大根粉末の製造方法。
- 得られる大根粉末のアミラーゼ力価が100単位/g以上である、請求項1〜5のいずれか一つに記載の大根粉末の製造方法。
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JP2003124917A JP2004329006A (ja) | 2003-04-30 | 2003-04-30 | 大根粉末の製造方法 |
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- 2003-04-30 JP JP2003124917A patent/JP2004329006A/ja active Pending
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