JP2004321038A - 水中油型乳化組成物およびその製造方法 - Google Patents

水中油型乳化組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ホイップクリームとして好適に用いられ、消費時の口どけ性に優れ、食感をより向上させることが可能な水中油型乳化組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】水中油型乳化組成物を調合する際に、乳化剤とは別に、口どけ改良剤としてリゾレシチンを用いる。また、油脂としては、融点が20〜60℃の範囲内にある「硬い油脂」を用いる。リゾレシチンおよび「硬い油脂」を組み合わせて用いることで、起泡に関わる品質を劣化させずに、消費時の口どけ性を改善することができるので、特に、起泡済み流通ホイップや液状流通ホイップとして好ましく用いることができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中油型乳化組成物およびその製造方法に関するものであり、特に、いわゆるホイップクリーム等として好適に用いられ、消費者が食した場合の口どけ性に優れる水中油型乳化組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品産業、中でも、製菓産業や製パン産業等においては、トッピング用やフィリング用に各種クリーム類が用いられている。
【0003】
狭義の「クリーム」と言えば、牛乳から脂肪以外の成分を除去した「生クリーム」を指すが、上記クリーム類は、乳化剤、安定剤等を添加した水中油型乳化組成物であり、外観・性状が生クリームと類似している組成物を指すものとする。
【0004】
上記クリーム類をトッピングやフィリングに用いる場合には、通常、攪拌しながら空気を混入させることで泡立たせる(起泡させる)。以下の説明では、起泡させたクリーム類または起泡させることを目的としたクリーム類をまとめてホイップクリームと称する。
【0005】
上記ホイップクリームとしては、具体的には、例えば、液状で流通させ、使用時にホイップして喫食するものと、ホイップしたものを個別充填し、流通させるものとが知られている。説明の便宜上、前者のホイップクリームを「液状流通ホイップ」と称し、後者のホイップクリームを「起泡済み流通ホイップ」と称する。液状流通ホイップには、冷蔵して流通させるもの、常温で流通させるもの、並びに、冷凍で流通させるものがある。また、起泡済ホイップには、冷蔵で流通させるもの、常温で流通させるもの、並びに冷凍で流通させ、解凍して喫食するものがある。
【0006】
上記各種ホイップクリームを製造する技術では、高品質なものを得るために、従来から製造プロセスや原料配合についてさまざまな検討がなされている。特に、起泡作用や生じた気泡の安定化には乳化剤が重要な役割を果たしているので、乳化剤について検討された技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−215783号公報(平成10(1998)年8月18日公開)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術では、ホイップクリームを消費する時の口どけ性が不十分であるという課題を有している。
【0009】
すなわち、従来では、上記クリーム類をホイップする時点やホイップした後の問題点を改善する技術については種々提案されているが、消費者が実際にホイップクリームを食する場合に、食感等を改善する技術についてはほとんど知られていない。
【0010】
例えば、常温タイプの液状流通ホイップでは、常温での流通時に乳化状態の破壊等といった問題が発生するだけでなく、喫食前のホイッピング時における物性を好適な範囲内にできるように考慮する必要もある。これら条件に対応するためには、原料として用いられる油脂を特定の物性を示すものに選定する必要が生じる。ところが、このような油脂を用いて得られるホイップクリームでは、その油脂の物性により喫食したときに口どけが悪くなりやすい。
【0011】
同様に、起泡済み流通ホイップでは、ホイップ状態で凍結可能とするために原料となる油脂を特定の物性を示すものに選定する必要が生じる。それゆえ、上記常温タイプの液状流通ホイップと同様に、用いられる油脂の物性により喫食したときに口どけが悪くなりやすい。
【0012】
近年、ホイップクリームは、その商品形態が多岐に渡っており、種々の用途に対応すべく、さまざまな性質や機能を有するものが要求されている。中でも、口どけの良いホイップクリームは、消費者の嗜好上、特に好まれるため、口どけ性は、ホイップクリームに欠かせない性質となっている。しかしながら、従来では、ホイップクリームの口どけ性を改良する具体的な手法は知られておらず、それゆえ、常温タイプの液状流通ホイップであっても、起泡済み流通ホイップであっても、口どけ性が悪く食感が低下しやすいという問題点が生じていた。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、その目的は、特に、ホイップクリームとして好適に用いられ、消費時の口どけ性に優れ、食感をより向上させることが可能な水中油型乳化組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、水中油型乳化組成物に対して、乳化剤とは別に口どけ改良剤を加えることで、他の物性を損なうことなく口どけ性を改善し、食感をより向上させ得ることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明にかかる水中油型乳化組成物は、上記の課題を解決するために、油脂および乳化剤を少なくとも含んでいる水中油型乳化組成物であって、上記油脂として、融点が20〜60℃の範囲内にあるものを用いるとともに、さらに、リゾレシチンを含んでいることを特徴としている。
【0016】
上記水中油型乳化組成物においては、上記油脂の25℃における固体脂含量が10%以上であるものに適し、上記リゾレシチンの含有量が、0.008〜0.8重量%の範囲内であることが好ましい。
【0017】
また、上記水中油型乳化組成物としては、例えば、起泡性を有するものを挙げることができる。また、上記水中油型乳化組成物は、流通段階から使用段階において、少なくとも一回凍結解凍されるものであってもよい。さらに、上記水中油型乳化組成物は、液体状態で常温保存可能であるものであってもよい。加えて、上記水中油型乳化組成物は、流通後に起泡させて使用するものであってもよい。上記水中油型乳化組成物の具体的な一例としては、ホイップクリームを挙げることができる。
【0018】
また、本発明にかかる水中油型乳化組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、油脂および乳化剤を少なくとも含む水中油型乳化組成物の製造方法において、上記油脂として、融点が20〜60℃の範囲内にあるものを用いるとともに、調合時に、上記油脂および乳化剤に加えて、さらに、リゾレシチンを加えることを特徴としている。
【0019】
上記構成または方法によれば、融点が20〜60℃の範囲内にある「高融点の油脂」を用いるとともに、口どけ改良剤としてリゾレシチンを用いている。それゆえ、ホイップクリームにおける口どけ性を改善できるとともに、他の物性、特に起泡に関わる物性の低下も回避することができる。その結果、常温タイプの液状流通ホイップであっても起泡済み流通ホイップであっても、高い品質を実現することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
本発明にかかる水中油型乳化組成物は、油脂および乳化剤を少なくとも含んでおり、さらに、乳化剤とは別に、口どけ改良剤としてリゾレシチンを含んでいるものである。また、本発明にかかる水中油型乳化組成物の製造方法は、油脂、乳化剤等の原料を調合する際に、乳化剤とは別に口どけ改良剤を添加する方法である。
【0022】
なお、以下の説明では、特に断りのない限り、便宜上、水中油型乳化組成物を単に「乳化組成物」と略す。
【0023】
<水中油型乳化組成物>
本発明にかかる乳化組成物は、水中油型(oil−in−water:O/W)であり、水性の液体(分散媒)中に油性の液体(分散質)が小粒子となって分散している状態となっていれば特に限定されるものではないが、特に好ましい例としては、クリーム類を挙げることができる。
【0024】
上記クリーム類の具体的な例としては特に限定されるものではなく、油脂および乳化剤を含んでいてもよい。代表的な例としては、ホイップクリームを挙げることができる。このホイップクリームとしては、その成分から、油脂として植物性油脂のみを含む純植物性クリーム、油脂として乳脂肪のみを含む純乳脂クリーム、植物性油脂および乳脂肪を含む複合タイプのクリーム(コンパウンドクリーム)等の種類がある。
【0025】
なお、クリーム類については、前述したように、乳化剤、安定剤等を添加した水中油型乳化組成物であり、外観・性状が生クリームと類似している組成物を指すものとし、上記純植物性クリーム、純乳脂クリーム、コンパウンドクリーム等を含む。また、油脂や乳化剤等の成分については後に詳述する。
【0026】
本発明にかかる乳化組成物としてのホイップクリームは、前述のように起泡させた状態で喫食されるクリーム類であればよいが、その流通時の状態についても特に限定されるものではない。代表的な例としては、前述した「液状流通ホイップ」や「起泡済み流通ホイップ」等を挙げることができる。
【0027】
<液状流通ホイップ>
上記液状流通ホイップは、液状で流通し、使用時にホイップして喫食するタイプのものである。このタイプのホイップクリームでは、(1)乳化安定性を強化し、流通時にかかる温度変化や、高温域での油滴同士の合一・凝集等による乳化破壊の結果生じる成分の分離・増粘・凝固等を防止することが大きな課題となる。その一方で、(2)ホイップクリームには、ホイッピング時に適度な乳化破壊がなされ、安定した起泡とその保持、クリームとしての適度な保形性を有することが要求される。
【0028】
それゆえ、液状流通ホイップでは、上記(1)・(2)という相反する要件を満たすために種々の工夫がなされる。一般的には、液状流通ホイップでは、流通時の液状安定性を保持するために、乳化破壊を回避する目的で、冷蔵流通されるタイプのものが多い。一方で、常温流通されるタイプのものもある。このような常温流通タイプのものは、冷蔵設備を要しないため、流通の過程を簡便なものとすることが可能である。逆に言えば、流通の過程に冷蔵設備等を導入できないような場合には、常温流通されるタイプのものが要求される。
【0029】
ここで、上記ホイップクリームの乳化破壊についてより具体的に説明すると、まず、流通時の温度変化や、常温域の温度では、油脂の一部が溶融して液状の油脂が生じる。この液状の油脂は粘性を有しており、脂肪球同士を接触させる。これにより、脂肪球同士が凝集したり合一化したりする。この凝集や合一化を起点として上記成分の分離・増粘・凝固等が生じる。
【0030】
上記乳化破壊を防ぐためには、一般的には、配合される油脂の融点を高めに設定する手法や、乳化剤等の添加により油脂の結晶を調整する手法等が用いられる。これら手法を用いて製造される液状流通ホイップでは、通常のホイップクリームの機能を有する一方、ヒートショックを受けても乳化状態の劣化を起こすことがない。そのため、例えば、常温輸送条件でも流通を可能にすることができる。
【0031】
しかしながら、上記各手法で得られる液状流通ホイップでは、常温流通が可能になるものの、用いられる油脂の融点が高いことや、乳化剤による油脂の結晶の調整等により、ホイップクリームを喫食する際の口どけが悪くならざるを得ないという問題を生じる。
【0032】
<起泡済み流通ホイップ>
次に、上記起泡済み流通ホイップは、広義には凍結可能なタイプのホイップクリームであるが、より具体的(狭義)には、ホイップしたものを個別充填した上で凍結し、使用時に解凍して喫食するタイプのものである。
【0033】
このタイプのホイップクリームは、商品として流通させる段階で凍結(冷凍)されているので、上述した液状流通ホイップとは異なり、流通時に乳化状態の劣化について対策をとる必要はない。ところが、起泡済み流通ホイップは、冷凍状態という非常に低温の環境下に置かれた後に解凍されるため、油脂の結晶が急激な環境変化にさらされることになる。その結果、起泡済み流通ホイップの使用時には、クリーム性が劣化することがある。なお、このクリーム性とは、ホイップクリームにおけるオーバーラン(OR)、保形性、キメ・ツヤ、硬さ、保水性等の各種物性を指す。
【0034】
起泡済み流通ホイップにおいてクリーム性の劣化を回避する対応策としては、種々の手法が知られているが、中でも一般的な手法として、上記液状流通ホイップと同様に、配合される油脂の融点を高めに設定することが挙げられる。このように融点の比較的高い油脂を配合すると、凍結解凍という急激な環境変化によっても油脂の結晶そのものに対する影響を小さいものとすることができる。
【0035】
しかしながら、上記手法で得られる起泡済み流通ホイップでは、クリーム性の劣化を回避することが可能になるものの、用いられる油脂の融点が高いことから、やはり、ホイップクリームを喫食する際の口どけが悪くならざるを得ないという問題を生じる。
【0036】
近年、ホイップクリームは、その商品形態が多岐に渡っており、種々の用途に対応すべく、さまざまな性質や機能を有するものが要求されている。中でも、口どけの良いホイップクリームは、消費者の嗜好上、特に好まれるため、口どけ性は、ホイップクリームに欠かせない性質となっている。しかしながら、上記液状流通ホイップおよび起泡済み流通ホイップでは、何れも、上述したように高い融点を有する油脂(高融点の油脂)を用いる必要がある。そのため、上記液状流通ホイップにおいても起泡済み流通ホイップにおいても、口どけ性は低いものとなっていた。
【0037】
これに対して、本発明では、乳化剤とは別に、口どけ改良剤としてリゾレシチンを添加することにより、ホイップクリームの種類に限定されることなく口どけのよいホイップクリームを提供することができる。したがって、本発明では、液状流通ホイップであっても起泡済み流通ホイップであっても、さらには他のタイプのホイップクリームであっても、高機能を要求される種々のホイップクリームに対して、特に有効に適用することができる。
【0038】
<口どけ性>
本発明で用いられる口どけ性とは、乳化組成物を消費者が消費した際、すなわち食した際に、当該乳化組成物が、口の中で異物感を感じないように円滑にとけることを指すものとする。
【0039】
本発明では、後述する実施例に示すように、口どけ性は、モニターにより実際の食感で評価しているが、口どけ性の評価はこれに限定されるものではない。本発明における口どけ性とは、消費者が乳化組成物を口にしたときに口腔内で受ける総合的な官能であるため、口どけ性に関与すると見なされる、乳化組成物の諸物性を評価用の指標とすることが可能である。例えば、乳化組成物をホイップした後の硬度等は指標として用いることができる。
【0040】
本発明では、口どけ性を改良するための成分(口どけ改良剤)にリゾレシチンを用いている。このリゾレシチンは、レシチンを加水分解したものであれば特に限定されるものではない。例えば、リゾレシチンの原料となるレシチンは、卵黄や大豆由来のものが一般的に用いられるが特に限定されるものではない。また、リゾレシチンの状態も特に限定されるものではなく、粉末状であってもよいし、ペースト状であってもよいし、その他の状態であってもよい。
【0041】
さらに、リゾレシチンとしては、レシチンとリゾレシチンとの混合物を用いてもよい。例えば、リゾレシチンは、レシチンをホスホリパーゼにより酵素処理することで製造することができるが、本発明で用いられる口どけ改良剤としては、全てのレシチンがリゾレシチンとなっているものを用いる必要はなく、部分的にリゾレシチンとなっているものを用いてもよい。
【0042】
このような部分的に酵素処理された混合物を口どけ改良剤として用いる場合、リゾ化率によって、実際のリゾレシチンの量を算出すればよい。リゾ化率は、リゾレシチンの量をWとし、レシチンの量をWとした場合、次の式で表すことができる。
【0043】
リゾ化率P=W/(W+W
本発明において、口どけ改良剤として用いられるリゾレシチンの具体的な配合量は特に限定されるものではないが、リゾレシチン単独の量で見た場合に、その下限は、全乳化組成物中0.008重量%以上であればよい。また、上限は、全乳化組成物中0.8重量%以下であればよく、0.6重量%以下であることが好ましい。したがって、本発明にかかる乳化組成物では、上記リゾレシチンの含有量は少なくとも0.008〜0.8重量%の範囲内であればよく、0.008〜0.6重量%の範囲内であることが好ましい。
【0044】
したがって、後述する実施例のように、リゾ化率80%のリゾレシチンを用いる場合には、その配合量の下限は0.01重量%以上であればよく、上限は1.0重量%以下であればよく、0.7重量%以上であることが好ましい。したがって、本発明にかかる乳化組成物では、リゾ化率80%のリゾレシチンの配合量は、0.01〜1.0重量%の範囲内であればよく、0.01〜0.7重量%の範囲内であることが好ましい。
【0045】
リゾレシチンの配合量が上記下限未満であれば、口どけ改良性を十分に発揮できず、得られる乳化組成物の食感を向上させることができないため好ましくない。一方、リゾレシチンの配合量が上記上限を超えると、得られる乳化組成物の味を低下させる等のおそれがあるため好ましくない。
【0046】
なお、上記リゾレシチンは、乳化剤として公知の物質であるが、本発明では、リゾレシチンは乳化剤ではなく口どけ改良剤として用いている。本発明者は、特に、凍結可能なホイップクリームを製造するに当たって、乳化剤の種類や配合量を変えれば、凍結・解凍に関わる諸物性を向上させることは可能であるが、解凍後の口どけ性を改善することはできないことを見出した。その結果、乳化剤とは別に、リゾレシチンを加えているものであり、それゆえ、本発明は、単に乳化剤としてリゾレシチンを加えた従来の発明とは異なり、しかも、優れた口どけ性を発揮できるという有意な効果を奏するものとなっている。
【0047】
<油脂>
本発明にかかる乳化組成物に用いられる油脂は、特に限定されるものではなく、動物性のものであっても植物性のものであってもよい。
【0048】
上記液状流通ホイップおよび起泡済み流通ホイップは、起泡させるタイミングが異なるのみで、何れも起泡性を有する乳化組成物である。このような起泡性を有する乳化組成物では、泡立てる(ホイップする)ことで解乳化されるが、このとき、凝集した脂肪球が生じた気泡の表面に吸着される。これによって気泡が安定に保持されるとともに脂肪球の連鎖が網目構造を構築する。その結果、ホイップクリームとしての保形性が発現する。本発明では、植物性油脂を用いることで、上記保形性を十分発現できるだけでなく、リゾレシチンを口どけ改良剤として用いることで、消費者が口にしたときに、口腔内でリゾレシチンによる口どけ改良作用を十分に発揮することができる。
【0049】
本発明で用いられる油脂としては、具体的には、例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂;乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性脂肪;上記油脂を従来公知の方法で加工した加工油脂;等を挙げることができる。これら油脂は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
ここで、乳化組成物が、特に、液状流通ホイップのように、液状で流通し、使用時にホイップして喫食するタイプのものや、起泡済み流通ホイップのように、ホイップしたものを個別充填した上で凍結し、使用時に解凍して喫食するタイプのものである場合には、その品質の劣化を回避する点から、いわゆる「硬い油脂」を用いることが好ましい。
【0051】
ホイップクリームにおいて、優れた口どけ性の基準となるのは、乳脂の口どけ性である。乳脂を含むクリームは優れた口どけ性を発揮できるため、上記液状流通ホイップや起泡済み流通ホイップにおいても乳脂と同様の口どけ性を発揮できることが望ましい。しかしながら、液状流通ホイップや起泡済み流通ホイップでは、その流通条件等から融点の高い油脂すなわち「硬い油脂」を用いる必要が生じ、これが口どけ性の劣化を招いていた。逆の観点から考えると、特に液状流通ホイップや起泡済み流通ホイップに用いる場合には、乳脂よりも「硬い」油脂であればよいとも言える。
【0052】
そこで、本発明では、油脂として、様々な基準から「乳脂よりも硬い」とみなされる油脂を選択するとともに、これに口どけ改良剤であるリゾレシチンとを組み合わせている。これにより、口どけ性を向上させた乳化組成物を得ることが可能となっている。
【0053】
本発明では、「硬い油脂」を判断するための指標として、上述した融点と、後述する固形脂含量とを用いることができる。まず、融点に関して説明する。
【0054】
上記融点の高い油脂(高融点の油脂)としては、具体的には、当該油脂の融点の下限が20℃以上であればよい。また、当該油脂の融点の上限は60℃以下であればよく、45℃以下であることがより好ましい。したがって、本発明にかかる乳化組成物では、その融点が20〜60℃の範囲内にある油脂、好ましくは20〜45℃の範囲内にある油脂が好適に用いられる。融点がこれら範囲内であれば、乳脂よりも「硬い油脂」であるとみなすことが可能となる。
【0055】
上記油脂の融点が上記下限未満であれば、乳化組成物の組成にもよるが、油脂の融点が低すぎて、ホイップした後の各種性質を低下させるおそれがあるため好ましくない。一方、油脂の融点が上記上限を超えると、乳化組成物の組成にもよるが、油脂の融点が高すぎて、得られるホイップクリームの口どけ性が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0056】
次に、固体脂含量について説明する。本発明にかかる乳化組成物で用いられる「硬い油脂」は、当該油脂の固体脂含量(以下、適宜SFCと略す)が所定の範囲内にある油脂であってもよい。このSFCとは、固体脂指数(SFI)と同様に、各温度における固体脂の割合を示す。同一温度におけるSFCが高い油脂ほど固化した油脂が多いことを示すため、本発明でいうところの「口どけ性」が悪いという性質を表す指標の一つとして用いることが可能である。
【0057】
本発明にかかる乳化組成物で用いられる油脂は、そのSFCが、少なくとも25℃において10%以上であることが好ましい。これは、25℃付近のSFCが口どけ性の判定により大きな重要性を有していると考えられるためであり、SFCがこの下限値以上であれば、乳脂よりも「硬い油脂」であるとみなすことが可能となる。
【0058】
さらに、本発明にかかる乳化組成物で用いられる油脂は、上記SFCが25℃において10%以上であるという条件を第一のSFC条件とすると、さらに、SFCが10℃において40%以上であるという第二のSFC条件、および20℃におけるSFCが15%以上であるという第三のSFC条件の少なくとも一方、好ましくは双方を満たしていることが好ましい。各温度におけるSFCがこの条件を満たしていれば、より適切な「硬さ」を有する油脂であるとみなすことができる。
【0059】
換言すれば、本発明で用いられる油脂は、SFCが25℃において10%以上であればよく、好ましくは、SFCが25℃において10%以上であり、かつ10℃において40%以上であるか、または25℃において10%以上であり、かつ20℃におけるSFCが15%以上であり、より好ましくは、10℃において40%以上であり、かつ20℃におけるSFCが15%以上であり、かつ25℃におけるSFCが10%以上である。
【0060】
本発明において用いられる「硬い油脂」の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、パーム油、パーム核油等のパーム油類およびその加工品;ヤシ油類およびその加工品;これら油脂のブレンド油;等を挙げることができる。また、いわゆる「硬い油脂」ではない油脂については、公知の硬化技術(例えば水素添加技術や各種油脂のブレンド技術等)を用いて、「乳脂よりも硬い」レベルまで硬化させて使用してもよい。
【0061】
本発明にかかる乳化組成物では、上記油脂の配合量は、下限が10重量%以上であればよく、20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがより好ましい。また、上限が60重量%以下であればよく、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。したがって、本発明にかかる乳化組成物では、上記油脂の含有量は少なくとも10〜60重量%の範囲内であればよい。
【0062】
油脂の配合量が上記下限未満であれば、ホイップ時に十分に起泡させることとが困難となり、保形性や冷凍耐性が低下し、さらには風味も低下するおそれがあるため好ましくない。一方、油脂の配合量が上記上限を超えると、ホイップ前の粘度が高くなりすぎて起泡させたときの安定性等に欠けるため好ましくない。
【0063】
<乳化剤>
本発明にかかる乳化組成物に用いられる乳化剤は、単なる乳化作用だけでなく、起泡作用や生じた起泡の安定化、クリームの保形性等に重要な役割を果たす。
【0064】
上記乳化剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。これら乳化剤は、1種類のみを用いてもよいし2種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記の中でも、一般的な乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0065】
本発明にかかる乳化組成物では、上記乳化剤の配合量は、下限が0.01重量%以上であればよく、0.1重量%以上であることが好ましい。また、上限が5重量%以下であればよく、1重量%以下であることが好ましい。したがって、本発明にかかる乳化組成物では、上記乳化剤の含有量は少なくとも0.01〜5重量%の範囲内であればよい。
【0066】
乳化剤の配合量が上記下限未満であれば、ホイップ時に十分に起泡させることとが困難となり、保形性や冷凍耐性が低下し、さらには風味も低下するおそれがあるため好ましくない。一方、乳化剤の配合量が上記上限を超えると、風味を損なう等のおそれがあるため好ましくない。
【0067】
<乳固形分>
本発明にかかる乳化組成物では、牛乳または乳製品を用いてもよい。乳製品の具体的な種類は、特に限定されるものではないが、例えば、脱脂粉乳、スキムミルク、調製粉乳、クリーム、練乳、発酵乳等を挙げることができる。これら牛乳や乳製品は、最終的に得られるホイップクリームの性質に大きな影響を与える。
【0068】
例えば、ホイップクリームに、乳製品として乳脂肪を加えたものでは、当該乳脂肪がクリームの骨格成分となるため、ホイップクリームの組成を滑らかにしたり、風味を与えたりすることになる。また、乳製品として無脂乳固形分(タンパク質、乳糖、ミネラル等)を用いた場合、ホイップクリームに好ましい風味を与えることになる。さらに、無脂乳固形分は、オーバーラン(ミックスに空気を吹き込んで増加した量)に影響を与える。オーバーランが適切でないと、口に入れたときに食感が悪くなることがある。
【0069】
上記牛乳・乳製品の使用量や種類は特に限定されるものではない。上記のように、牛乳・乳製品は、その種類によってホイップクリームの性質に与える影響が異なる。そのため、牛乳・乳製品の機能や特性を考慮した上で、最終的に製造されるホイップクリームに要求される性質に応じて、適切な種類のものを選択したり、適切な範囲の量で用いたりすればよい。
【0070】
一般的なホイップクリームの場合、上記牛乳・乳製品の含有率は、1〜20重量%の範囲内であることが好ましく、1〜18重量%の範囲内がより好ましい。もちろん、ホイップクリームに要求される性質によっては、牛乳・乳製品の含有率は上記範囲内に限定されるものではない。
【0071】
<その他の成分>
本発明にかかる乳化組成物は、水中油型O/Wであるので、上述した口どけ改良剤としてのリゾレシチン、油脂および乳化剤に加えて水を含んでいればよい。水の配合量は、上記各成分の残量であればよい。しかしながら、得られる乳化組成物に良好な物性を与えるためには、好ましくは、下限が40重量%以上であればよく、50重量%以上であることが好ましい。また、上限が90重量%以下であればよく、80重量%以下であることが好ましい。したがって、本発明にかかる乳化組成物では、水の含有量は少なくとも40〜90重量%の範囲内であればよい。
【0072】
さらに、本発明にかかる乳化組成物は、上記リゾレシチン、油脂、乳化剤および水以外に、さらに、他の成分を含んでいてもよい。この他の成分としては特に限定されるものではなく、本発明にかかる乳化組成物の用途に応じて適宜選択すればよい。
【0073】
例えば、本発明にかかる乳化組成物は、ホイップクリーム、特に凍結可能なホイップクリームとして好適に用いることができるので、その他の成分としては、ホイップクリームに一般的に添加される成分を挙げることができる。具体的には、甘味料、安定剤、塩類、香料等を挙げることができる。
【0074】
上記甘味料は、少なくとも乳化組成物に甘味を与えるものであればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、砂糖(ショ糖・スクロース、液糖も含む)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)、トレハロース、水飴、異性化糖等の糖類;ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール等の糖アルコール類;アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、ステビオサイド、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、ジヒドロカルコン等の非糖質甘味料;等を挙げることができる。上記甘味料は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0075】
上記甘味料は、甘味成分としての機能を有するほか、全固形分を調整する機能も有する。全固形分は、ホイップクリームの物性に影響を与える。特に、全固形分が低くなりすぎると脂肪分の割合が低くなるため、クリームの骨格を形成することが困難となり、保形性が得られなくなる。また、全固形分が高くなりすぎると、製造工程において背圧が高くなりすぎる等の弊害が生じるだけでなく、得られるホイップクリームの風味も重くなる傾向にある等の問題も生じるため、良質のホイップクリームが得られない。
【0076】
それゆえ、本発明で用いられる甘味料としては、具体的な種類は限定されるものではないが、上述した甘味成分および全固形分の調整というそれぞれの機能を満たすものであることが非常に好ましい。
【0077】
上記安定剤としては、ホイップクリームの分野で用いられる公知の化合物を用いればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、セルロース、ペクチン、デンプン、アラビヤガム、キサンタンガム等の植物性安定剤;ゼラチン、カゼイン、カゼインナトリウム(ナトリウムカゼイネート)等の動物性安定剤;カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の合成安定剤;等を挙げることができる。上記安定剤は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0078】
上記塩類としては、ホイップクリームの分野で用いられる公知の化合物を用いればよく、特に限定されるものではないが、ヘキサメタリン酸、第2リン酸等のリン酸類のアルカリ金属塩;クエン酸のアルカリ金属塩;等を挙げることができる。
【0079】
上記香料としては、最終的に製造されるホイップクリームに芳香を与えるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ミルクフレーバー、バニラフレーバー、バニラエッセンス等を挙げることができる。
【0080】
なお、後述する実施例に示すように、風味原料として食塩を加えてもよいし、着色料としてβ−カロテン(β−カロチン)等を加えてもよい。
【0081】
これら他の成分の配合量は特に限定されるものではなく、その目的に応じて適切な量を添加すればよい。したがって、ホイップクリームを製造する場合には、ホイップクリームの技術分野で公知の範囲内で上記各成分を配合すればよい。
【0082】
<製造方法>
本発明にかかる乳化組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、口どけ改良剤としてリゾレシチンを用いる以外は、従来公知の製造方法を用いることができる。すなわち、油脂、乳化剤、水、リゾレシチン、およびその他の成分を配合して攪拌・混合し、水中油型乳化組成物とすればよい。また、このとき各成分の配合の仕方は特に限定されるものではない。
【0083】
ここで、本発明にかかる乳化組成物は、ホイップクリームとして好適に用いられるものであり、特に、凍結可能なものである。そこで、本発明にかかる製造方法の一例を、ホイップクリームの製造方法に基づいてより具体的に説明する。
【0084】
まず、起泡済み流通ホイップの製造方法について説明する。図1に示すように、起泡済み流通ホイップの製造方法は、調合工程、均質化工程、殺菌工程、エージング工程、ホイップ工程、充填工程、および凍結工程からなる。もちろん、必要に応じてこれら工程以外の工程が含まれていてもよいし、一部の工程は実施しなくてもよい場合もある。
【0085】
まず、上記調合工程では、上述したように、上記油脂、乳化剤、水、その他の成分に加えて、さらに口どけ改良剤としてリゾレシチンを加えてミックスを調製する。この調合工程に用いられる調合装置は特に限定されるものではなく、公知のミキサー等が用いられる。また、この調合工程における調合条件も特に限定されるものではない。
【0086】
次に、上記均質化工程では、上記調合工程で調合されたミックスに含まれる油脂を粉砕して均質化する。均質化工程で用いられる均質化装置(均質機)は特に限定されるものではなく、公知のホモジナイザーや、ホモミキサー、コロイドミル等の均質機を用いることができる。
【0087】
次に、上記殺菌工程では、調合工程で得られたミックス(乳化組成物)を従来公知の方法で殺菌する。殺菌方法としては特に限定されるものではなく、少なくともミックス中に含まれる微生物等を、有効に死滅させる方法であればよい。
【0088】
回分式では、タンクにミックスを蓄積し、タンクを一定時間加熱して内部の乳化組成物を加熱殺菌する。具体的な殺菌条件としては、63℃で30分、75℃で15分、80℃で15分等の条件が挙げられるが特に限定されるものではない。タンクを加熱する方法も特に限定されるものではないが、例えば、タンクの外壁に熱水を噴霧する方法、タンク内を循環する熱交換コイルに熱水を送り込む方法、タンクの浸水部分に熱水または蒸気を循環する方法、タンク外壁を取り巻く熱水コイルに熱水を高速で流す方法等が挙げられる。
【0089】
連続式では、ミックスを配管やパネル内に一定温度で一定時間保持して連続的に加熱殺菌する。具体的な殺菌条件としては、一例を挙げると、LTLT、HTST、UHTが挙げられる。LTLT(low temperature long time heating method:低温長時間殺菌)は、65℃以上で30分以上加熱する。HTST(high temperature short time heating method:高温短時間殺菌法)は、72℃以上で15秒以上加熱する。UHT(ultra high temperature heating method:超高温瞬間殺菌法)は、120〜150℃の範囲内で1〜2秒加熱する。
【0090】
上記エージング工程では、均質化および殺菌工程がなされた後のミックスを一定時間放置する。上記各工程を経たミックスは油脂が均一化された乳化状態にあるが、この状態をより安定化させるために、一定時間放置する。このときの放置条件としては特に限定されるものではないが、一般的には、数時間ないしは1日から2日程度の期間、攪拌または無攪拌の状態で静置すればよい。
【0091】
上記ホイップ工程では、エージングが完了したミックスをホイップして起泡させる。ホイップの条件も特に限定されるものではなく、公知の条件を採用すればよい。また、ホイップするための装置(ホイッパーと呼ばれる)としては特に限定されるものではないが、例えば、連続式のものや回分式(バッチ式)のもの等を挙げることができる。
【0092】
連続式ホイッパーは、連続的にミックスを供給して攪拌しホイッピングさせる装置であり、ミックスを効率よく起泡させることができる。バッチ式ホイッパーは、連続式のものに比べると処理効率は低いが、装置としては安価であるためよく利用される。これらホイッパーについては必要に応じて適宜選択して用いればよい。
【0093】
上記充填工程では、ホイップが完了して得られたホイップクリームを所望の容器に充填する。ホイップクリームを充填する装置(充填装置)やホイップクリームが充填される容器(充填容器)については特に限定されるものではなく、公知のものを必要に応じて選択して用いればよい。また、充填に関する条件についても特に限定されるものではなく、公知の条件を採用すればよい。
【0094】
上記凍結工程では、容器に充填されたホイップクリームを冷却し凍結させる。ホイップクリームを凍結させる装置については特に限定されるものではないが、充填されたホイップクリームをなるべく迅速に凍結させるために、冷凍トンネルを用いることもある。
【0095】
この冷凍トンネルは、−40℃程度の冷却能力を有するトンネル型のフリーザーで、これを通すことにより、充填されたホイップクリームを効率よく冷却・凍結することができる。上記冷凍トンネルの具体的な構成は特に限定されるものではないが、直線型やスパイラル型等が知られており、必要に応じてこれらを選択して用いればよい。また、凍結の条件も特に限定されるものではなく、公知の条件を採用すればよい。
【0096】
また、本発明にかかる乳化組成物は、起泡済み流通ホイップに限定されるものではなく、上述した液状流通ホイップであってもよい。図2に示すように、液状流通ホイップの製造方法では、調合工程、均質化工程、殺菌工程、および充填工程からなる。すなわち、液状流通ホイップでは、流通後にホイップすればよいので、ホイップ工程は必須ではない。上記調合工程、殺菌工程および充填工程は、前記起泡済み流通ホイップの製造方法で説明した工程と同様であるため、その説明は省略する。
【0097】
このように、本発明にかかる乳化組成物の製造方法では、調合時に、上記油脂および乳化剤に加えて、さらに口どけ改良剤としてリゾレシチンを加えるようになっていればよい。
【0098】
本発明により得られるホイップクリーム(本発明にかかる乳化組成物)は、このように、口どけ改良剤としてリゾレシチンを含んでいる。そのため、凍結した後に解凍して、例えば、ケーキやパフェなどに用いられるトッピングクリーム等として用いる場合でも、消費時の口どけ性に優れ、食感をより向上させることが可能となる。それゆえ、従来の起泡済み流通ホイップや液状流通ホイップに比べても優れた品質を有するものとなる。
【0099】
なお、本発明は、水中油型組成物全般に適用されるものであって、上述した本実施の形態や後述する実施例の記載に限定されるものではない。
【0100】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における口どけ性および凍結解凍後の物性は、次のようにして評価した。
【0101】
〔口どけ性の評価〕
口どけ性は、解凍後のホイップクリームをモニターが実際の食したときに感じる食感に基づいて評価した。当該ホイップクリームが、口の中で異物感を全く感じないように円滑にとけた場合を◎、口の中で異物感をほとんど感じないように円滑にとけた場合を○、口の中で若干の異物感を感じたが比較的円滑にとけた場合を△として評価した。
【0102】
〔凍結解凍後物性の評価〕
凍結解凍後の物性は、硬度、温度、オーバーランの数値が、凍結させないホイップクリームと比較して十分に良好な物性を示すことができるような範囲内に入っているか否かで評価した。このような範囲内に入っている場合を良好とした。
【0103】
〔実施例1〕
油脂としてパーム核油W−500(商品名、植田製油株式会社製、10℃のSFCが53.3%、20℃のSFCが40%、25℃のSFCが22.9%)を、乳化剤として、レシチン、シュガーエステルおよびモノグリセライドを、口どけ改良剤としてペースト状のリゾレシチン(ツルーレシチン社製、リゾ化率80%)を用いるとともに、その他の成分として表1に示すものを用い、水およびこれら各成分を表1に示す配合量となるように調合工程で調合し、本発明にかかる乳化組成物としての起泡済み流通ホイップのミックスを得た。なお、表1中の%は重量%を示す。
【0104】
その後、前述したように、殺菌工程、エージング工程、ホイップ工程を行った。ホイップ工程では、バッチ式kenmixerを用いて5分46秒間ホイップを行った。その後、充填工程、凍結工程を行った後、解凍後のホイップクリームについて、硬度、温度、オーバーラン、口どけ性を測定または評価するとともに、凍結解凍後物性を総合的に評価した。その結果を表2に示す。
【0105】
〔実施例2〕
リゾレシチンの配合量を0.30%とする(表1参照)とともに、ホイップ時間を7分42秒とした以外は、実施例1と同様にして、解凍後のホイップクリームについて、硬度、温度、オーバーラン、口どけ性を測定または評価するとともに、凍結解凍後の物性を総合的に評価した。その結果を表2に示す。
【0106】
〔比較例〕
口どけ改良剤として、リゾレシチンに代えてS−570(シュガーエステル:リョートー社製HLB5)を0.30%の配合量となるように用いる(表1参照)とともに、ホイップ時間を6分47秒とした以外は、実施例1と同様にして、解凍後のホイップクリームについて、硬度、温度、オーバーラン、口どけ性を測定または評価するとともに、凍結解凍後の物性を総合的に評価した。その結果を表2に示す。
【0107】
【表1】
Figure 2004321038
【0108】
【表2】
Figure 2004321038
【0109】
上記の結果から明らかなように、口どけ改良剤としてリゾレシチンを用いることで、特に凍結後解凍したホイップクリームにおける口どけ性を改善できるとともに、他の物性の低下も回避することができ、優れた品質の起泡済み流通ホイップクリームが得られることがわかる。
【0110】
【発明の効果】
このように、本発明にかかる水中油型乳化組成物およびその製造方法は、融点が20〜60℃の範囲内にある「硬い油脂」を用いるとともに、口どけ改良剤としてリゾレシチンを用いる構成である。それゆえ、ホイップクリームにおける口どけ性を改善できるとともに、他の物性、特に起泡に関わる物性の低下も回避することができる。その結果、起泡済み流通ホイップや液状流通ホイップに好適に適用することができるという効果を奏する。
【0111】
したがって、本発明は、製菓産業や製パン産業等の各種食品産業に利用できるだけでなく、起泡済み流通ホイップや液状流通ホイップを利用するような各種外食産業等のようなサービス業にも好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる水中油型乳化組成物の製造方法が適用可能な、起泡済み流通ホイップの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明にかかる水中油型乳化組成物の製造方法が適用可能な、液状流通ホイップの製造方法の一例を示す工程図である。

Claims (9)

  1. 油脂および乳化剤を少なくとも含んでいる水中油型乳化組成物であって、
    上記油脂として、融点が20〜60℃の範囲内にあるものを用いるとともに、
    さらに、リゾレシチンを含んでいることを特徴とする水中油型乳化組成物。
  2. 上記油脂の25℃における固体脂含量が10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
  3. 上記リゾレシチンの含有量が、0.008〜0.8重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の水中油型乳化組成物。
  4. 起泡性を有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の水中油型乳化組成物。
  5. 上記水中油型乳化組成物が、流通段階から使用段階において、少なくとも一回凍結解凍されることを特徴とする請求項4記載の水中油型乳化組成物。
  6. 液体状態で常温保存可能であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の水中油型乳化組成物。
  7. 上記水中油型乳化組成物が、流通後に起泡させて使用することを特徴とする請求項6記載の水中油型乳化組成物。
  8. 水中油型乳化組成物がホイップクリームであることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の水中油型乳化組成物。
  9. 油脂および乳化剤を少なくとも含む水中油型乳化組成物の製造方法において、
    上記油脂として、融点が20〜60℃の範囲内にあるものを用いるとともに、
    調合時に、上記油脂および乳化剤に加えて、さらにリゾレシチンを加えることを特徴とする水中油型乳化組成物の製造方法。
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