JP2004316504A - 空気圧縮機及びその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空気工具に用いられる圧縮空気を貯留するタンク部と、圧縮空気を生成し、上記タンク部に供給するための圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部を駆動するためのモータを有する駆動部と、該駆動部を制御するための制御回路部と上記駆動部のモータの温度を検知する温度センサを有し、上記制御回路部が上記温度センサの検出信号に応じて上記モータの回転数を複数段階に制御するように構成した。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気釘打機等の空気工具に用いられる圧縮空気を生成する空気圧縮機及びその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に空気工具に用いられる空気圧縮機は、モータによって圧縮機本体のクランク軸を回転駆動し、このクランク軸の回転に応じてシリンダ内でピストンを往復動させることにより、吸気弁から吸い込んだ空気を圧縮するように構成されている。そして圧縮機本体で形成された圧縮空気は排気弁からパイプを通して空気タンクに吐出され、このタンク内に貯留される。空気工具はこのタンクに貯留された圧縮空気を用いて釘打等の作業を行うものである。
【0003】
このような空気圧縮機は建築現場に持ち運び野外で用いられたり、人家の密集している場所で使用されることが多いため、いろいろな観点から改良が求められている。本発明者等が現場で使用されている状況を調査した結果、ユーザから求められている要求、技術課題は次のような項目に整理することができる。
(1)低騒音化
空気圧縮機はモータの回転をシリンダ内のピストンの往復動に変換する機構を有するためにモータの回転時にはかなりの騒音が発生するのを避けられない。またこの空気圧縮機からの圧縮空気を利用する釘打機なども作動時に作動音を出すため空気圧縮機自体の騒音と相まって建築現場の周囲にかなりの騒音を発生することとなる。特に人家の密集しているところで早朝や夕方以降に使用するときにはできるだけこの騒音を低減して欲しいという要求が大きい。
(2)高パワー高効率化
空気圧縮機が用いられる現場は、必ずしも十分な電力環境にあるとは限らず、むしろ長いコードを用いて別の場所から電源電圧を供給するために十分な大きさの電圧が確保できなかったり、多数の空気工具を同時に使用するために圧縮空気が大量に消費されるような環境で使用されることがある。
【0004】
このため、空気圧縮機から高パワーの出力を発生できなくなることがあり、出力が不足した状態で例えば釘打機を使用するといわゆる釘浮き現象が生じ、十分に釘を加工材に打ち込むことができなくなるという問題を生ずる。
【0005】
また空気圧縮機は通常、空気タンクに26〜30kg/cm2の圧縮空気を貯留しているが、この圧縮空気は工具を使用していない期間にも少しずつリークすることを避けられず、使い方によっては効率の低下を招くという問題もある。
(3)小型化可搬性の向上
空気工具用の空気圧縮機はまれに据置型として用いられるものもあるが、殆どは可搬型であり建築現場に持ち込んで使用される。従ってできるだけ小型で可搬性に優れていることも要求される。従って圧縮空気生成部及びこれを駆動する駆動部の構成を複雑にして可搬性を損なうことは極力避けなければならない。
(4)長寿命化
冷蔵庫や空調機等に用いられるコンプレッサに比べ空気工具に用いられる空気圧縮機は寿命が短いという問題がある。これは過酷な環境で用いられるため、一面においては止むを得ないところでもあるが、できるだけ負荷の変動を抑制したり、無駄な圧縮空気の生成を抑えることにより更に寿命の長期化を図ることが望まれている。
(5)温度上昇の抑制
シリンダ内のピストンの往復動及びピストンを駆動するモータに流れる電流により空気圧縮機はかなり高温になるのを避け難い。しかしながら圧縮機が高温になると損失が大きくなり高効率化を阻害する原因にもなる。従って空気圧縮機の温度上昇を可及的に抑制することも強く要望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたようないくつかの技術課題の中で本発明は特に上記(1)の低騒音化及び(5)の温度上昇の問題を改善しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、空気工具に用いられる圧縮空気を貯留するタンク部と、圧縮空気を生成し、上記タンク部に供給するための圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部を駆動するためのモータを有する駆動部と、該駆動部を制御するための制御回路部とを有する空気圧縮機において、上記駆動部のモータの温度を検知する温度センサを設け、上記温度センサの検出信号に応じて上記モータの回転数を複数段階に制御することに一つの特徴がある。
【0008】
本発明の他の特徴は、上記タンク部の圧縮空気の圧力を検出する圧力センサを設け、上記温度センサ及び上記圧力センサの検出信号に応じて上記モータの回転数を複数段階に制御することにある。
【0009】
本発明の他の特徴は、上記駆動部の電源電圧を検出する電圧検出回路と、上記駆動部の負荷電流を検出する電流検出回路を設け、上記温度センサの検出信号と、上記電圧検出回路及び電流検出回路の少なくとも一方の検出信号に応じて上記モータの回転数を複数段階に制御することにある。
【0010】
本発明の他の特徴は、上記モータを高速、中速、低速の少なくとも3段階に制御することにある。
本発明の他の特徴は以下の説明により一層明瞭に理解される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明にかかる空気圧縮機は図1の概念図に示すように圧縮空気を貯留するタンク部10、圧縮空気を生成する圧縮空気生成部20、該圧縮空気生成部20を駆動するための駆動部30及び該駆動部30を制御するための制御回路部40より構成されている。
【0012】
(1)タンク部10
タンク部10は図2に示すように高圧圧縮空気を貯留するための空気タンク10Aを有し、圧縮部20Aの吐出口に連結されたパイプ21を通して例えば20〜30kg/cm2の高圧圧縮空気が供給される。
【0013】
上記空気タンク10Aには通常複数個の圧縮空気取出口18、19が設けられており、本実施例では低圧の圧縮空気を取り出すための取出口18と、高圧の圧縮空気を取り出すための取出口19が取り付けられている例が示されている。勿論本発明がこれに限定されるものではない。
【0014】
低圧用圧縮空気取出口18は減圧弁12を介して低圧用カプラ14に接続されている。減圧弁12はその入口側の圧縮空気の圧力に拘らず出口側の圧縮空気の最高圧力が定められており、本実施例ではその最高圧力が7〜10kg/cm2の範囲の所定値に選定されている。従って減圧弁12の出口側からは空気タンク10Aの圧力に拘らず上記の最高圧力以下の圧力の圧縮空気が得られる。
【0015】
減圧弁12の出力側の圧縮空気は低圧用カプラ14を介して図1に示した低圧用の空気工具51に供給される。
【0016】
一方高圧用圧縮空気取出口19は減圧弁13を介して高圧用カプラ15に接続されている。減圧弁13はその入口側の圧縮空気の圧力に拘らず出口側の圧縮空気の最高圧力が定められており、本実施例ではその最高圧力が10〜30kg/cm2の範囲の所定値に選定されている。従って減圧弁13の出口側からはこの最高圧力以下の圧力の圧縮空気が得られる。減圧弁13の出力側の圧縮空気は高圧用カプラ15を介して図1に示した高圧用の空気工具52に供給される。
【0017】
減圧弁12及び13には低圧用圧力計16及び高圧用圧力計17がそれぞれ取り付けられており、減圧弁12及び13の出口側の圧縮空気の圧力をモニタできるように構成されている。また低圧用カプラ14と高圧用カプラ15は寸法が異なり互換性がないので低圧用カプラ14には高圧用の空気工具52を接続することができず、また高圧用カプラ15には低圧用の空気工具51は接続することができないように構成されている。このような構成は既に本願発明と同一の出願人により特開平4−296505に出願されている。
【0018】
上記空気タンク10Aの一部には圧力センサ11が取り付けられており、タンク10A内の圧縮空気の圧力が検出される。この検出信号は制御部40に供給され、後述のモータの制御に用いられる。また空気タンク10Aの一部には安全弁10Bが取り付けられており、空気タンク10A内の圧力が異常に高くなったときにその空気の一部を外部に逃がして安全を確保している。
【0019】
(2)圧縮空気生成部20
圧縮空気生成部20はシリンダ内にピストンを往復運動させ、シリンダの吸気弁からシリンダ内に引き込まれた空気を圧縮することにより圧縮空気を生成するもので、このように圧縮機自体は既に公知である。例えば本願発明と同一の出願人により出願されている特開平11−280653にはモータの回転を、ロータ軸の先端に設けたピニオン及びこれとかみ合うギアを介して出力軸に伝達し、出力軸の運動によりピストンを往復動される機構が開示されている。
【0020】
ピストンがシリンダ内を往復動するとシリンダヘッドに設けられた吸気弁より引き込まれた空気が圧縮され、所定の圧力に達するとシリンダヘッドに設けられた排気弁から圧縮空気が得られる。この圧縮空気は図2のパイプ21を通して前述の空気タンク10Aに供給される。
【0021】
(3)駆動部30
駆動部30は上述のピストンを往復運動させるための駆動力を発生させるもので図3に示すようにモータ33とモータ駆動回路32及び電源回路31より構成されている。電源回路31は100Vの交流電源310の電圧を整流するための整流回路313及び整流された電圧を平滑し、昇圧した後定電圧にするための平滑・昇圧・定電圧回路314を含んでいる。
【0022】
また電源310の両端の電圧を検出するための電圧検出器311及び負荷電流を検出するための電流検出器312が設けられており、各検出器311及び312の出力信号が後述の制御部40に供給される。これらの検出器311、312は例えば、電源310のブレーカ(図示せず)が切れない範囲で極めて短時間の間、モータ33を超高速回転するような場合等の制御に用いられる。また定電圧回路314により一定の電圧を得るためにも制御部40が関与するが定電圧回路の構成自体は公知であるのでここでは詳しく述べない。
【0023】
モータ駆動回路32は直流電圧からU相、V相、W相の3相のパルス電圧を発生するためのスイッチング用トランジスタ321〜326を含んでいる。各トランジスタ321〜326のオン・オフは制御部40によって制御される。各トランジスタ321〜326に供給されるパルス信号の周波数を制御することによって、モータの回転数を制御している。
【0024】
一例として、モータ33の回転数Nは、0rpm,1200rpm,2400rpm,3600rpmのように、基準値Nの任意の数n倍に多段階に設定され、この中から選択された回転数で駆動するように制御される。
【0025】
各スイッチング用トランジスタ321〜326には並列にダイオードが接続されているが、これはモータ33のステータ33Aに発生する逆起電力によりトランジスタ321〜326が破壊するのを防止するためのものである。
【0026】
次にモータ33はステータ33Aとロータ33Bを含む。ステータ33AにはU相、V相、W相の巻線331、332、333が形成されており、これら巻線331〜333に流れる電流によって回転磁界が形成される。
【0027】
ロータ33Bは本実施例では永久磁石から構成され、ステータ33Aの巻線331〜333に流れる電流により形成される回転磁界により回転する。このロータ33Bの回転力が前述の圧力空気生成部20(図1)のピストンを動作させる駆動力になる。
【0028】
モータ33にはステータ33Aの巻線の温度を検出するための温度検出回路334が設けられ、その検出信号が制御部40に供給される。また必要に応じてロータ33Bの回転数を検出する回転数検出回路335が設けられ、その検出信号が制御部40に供給される。
【0029】
(4)制御回路部40
制御回路部40は図1に示すように中央処理ユニット(以下CPUと略す)41、ランダムアクセスメモリ(以下RAMと略す)42、及びリードオンリメモリ(以下ROMと略す)43を含む。
【0030】
前述の圧力センサ11の検出信号及び温度検出回路334の検出信号はインターフェース回路(以下I/F回路と略す)44、45を介してCPU41に供給される。またCPUからの指令信号はI/F回路45を介して駆動部30のモータ駆動回路32に供給されスイッチング用トランジスタ321〜326(図3)の制御が行われる。
【0031】
ROM43には図4に示すようなモータの制御プログラムが格納されており、RAM42はそのプログラムの実行に必要なデータや演算結果を一時格納するために用いられる。
【0032】
(5)制御用のプログラム
図4は本発明の制御回路部40のROM43に格納されているプログラムの一実施例を示すフローチャートである。
図4のステップ101においては初期設定が行われ、モータ33の回転数がN2(2400rpm)に設定される。次にステップ104においては本発明の空気圧縮機の制御に用いられる回転数のデータが記憶される。本実施例においてはモータ33の回転数Nを4段階、即ちN0、N1、N2、N3に制御する例を示しており、それぞれ、N=0rpm、N1=1200rpm、N2=2400rpm、N3=3600rpmの各速度で制御することができる。勿論本発明はこのような例に限定されるものではなく、回転数Nを多段階に制御することも可能であり、またN0、N1、N2、N3の値も任意に設定することができる。
【0033】
ステップ105においては圧力センサ11(図2)により空気タンク10A内の圧縮空気の圧力P(T)が検出される。この圧力P(T)は制御回路部40内において適宜A/D変換され、RAM42の中の領域に格納される。
【0034】
次にステップ106においてタンク10A内の圧力Pが30kg/cm2を超えたか否かの判定が行われ、もし超えた場合はステップ107に進みモータ33の回転を停止するように制御される。即ち、本実施例では空気タンク10Aの圧力を26〜30kg/cm2の範囲に維持されるように制御するために、30kg/cm2を超えた場合にはモータ33の回転を停止し、圧縮空気生成部20の動作を停止する。
【0035】
空気タンク10A内の圧力Pが30kg/cm2を超えていない場合はステップ112に進み、P(T)を測定した時点から5秒を経過したか(ΔT=5秒)否かの判定が行われる。これは単に空気タンク10A内の圧力を検出するだけでなく、圧力変化率ΔP/ΔTを検出するためである。もしΔT=5秒を経過したときには再びタンク10A内の圧力P(T+ΔT)を検出し、その値を制御回路部40のRAM42に格納する。
【0036】
ステップ113においては制御回路部40で圧力変化率ΔP/ΔTの算出が行われる。即ち本実施例ではΔT=5秒としてある時点Tにおけるタンク内圧力P(T)とΔT後におけるタンク内の圧力P(T+ΔT)との差ΔP=P(T+ΔT)−P(T)を求め、次にΔP/ΔTの算出が行われる。通常、タンク10Aの圧力変化は緩やかであるので本実施例ではΔT=5秒としたが、圧力センサ11の取付場所や感度に応じてΔTの値は適宜選定される。
【0037】
次にステップ114では回転数遷移テーブルの選定が行われる。制御回路部40のRAM42には予め図6、図7、図8、図9に示すような4種類の回転数遷移判定テーブルが格納されている。モータ33の現在の回転数Nが初期値のN2(=2400rpm)のときは図6のテーブルが選択される。また現在の回転数NがN3(=3600rpm)のときは図7のテーブルが選択される。同様にして回転数NがN1のときは図8のテーブルが、NがN0のときは図9のテーブルが選択される。これらのテーブルは何れも縦軸にタンク内の圧力P、横軸にタンク内圧力の圧力変化率ΔP/ΔTをとってあり、それらの値からモータ33の回転数を決定するために用いられる。
【0038】
図6を例にとって説明すると、まずタンク内の圧力Pが30kg/cm2を超えた場合はΔP/ΔTの値にかかわらず回転数をN0にする。つまりモータを停止する。これはタンク内の圧力を常に26kg/cm2から30kg/cm2の範囲に保持するように制御しているのであるから当然である。
【0039】
圧力変化率ΔP/ΔTが負であるということは、タンク10Aに供給される圧縮空気よりも消費される圧縮空気の方が多いことを意味するからモータ33の現在の回転数N2(=2400rpm)をこれよりも高い回転数N3(=3600rpm)に切換える制御が行われる。特に、空気工具51、52(図1)がフル稼働しているような場合は圧縮空気の消費量が多くタンク10A内の圧力が急速に低下するおそれがあるので、この例ではΔP/ΔTが−1kg/cm2/sec以上のときはタンク内の圧力Pが30kg/cm2にあれば直ちに回転数をN3に切換える。但し圧力変化率ΔP/ΔTが0〜−1kg/cm2/secと比較的小さい場合は、タンク10Aの圧力Pが26kg/cm2以上あれば引き続きN2の回転数でモータ33を運転し、タンク10Aの圧力Pが26kg/cm2より下がったときにN3に切換える。またΔP/ΔTが0〜+0.1kg/cm2/secの範囲にあるとき、即ち圧縮空気の消費よりも供給の方が若干多いときにはタンク10A内の圧力Pが20kg/cm2以上あれば引き続きN2で運転し、これより低下したときにN3に切換える。
【0040】
ΔP/ΔTの値が+0.1〜+0.15kg/cm2/secの範囲にあるときは、タンク10A内の圧縮空気の量が増加しつつあることを示しているからタンク内圧力Pが10kg/cm2以上あればN2で回転し続け、10kg/cm2より低下したらN3に切換える。ΔP/ΔTが+0.15〜+0.3kg/cm2/secと大きくなると、急速にタンク内圧力Pの増加が予測されるのでタンク内の圧力が10kg/cm2以上あればモータの回転数を現在のN2からN1に低下させるように制御する。
【0041】
以上の説明は現在運転中のモータ33の回転数をN2として、これからN0、N3、N1に遷移する場合であるが、現在の回転数がN3、N1、N0の場合には図7、図8、図9のように異なったパターンにより遷移するように制御される。
【0042】
図4に戻り、ステップ115においてはP(T+ΔT)、ΔP/ΔTから、選択された判定テーブルを検索し、モータ33の回転数を決定する。
ステップ116では上記のステップ115で選択された回転数NがN3(=3600rpm)か否かを判定し、肯定(YES)の場合は次のステップ121に進み、モータ33の温度tが測定される。即ち回転数遷移判定テーブルからモータ33の回転数を高速のN3にする必要があると判断された場合でもモータ33の温度に応じてN3を最終的に選択するか否かを決定するためである。このモータ温度tは通常はモータ巻線331〜333の温度が測定されるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
次にステップ122において測定された温度tが所定値より大きいか否かが判定される。この実施例では所定値は120℃に設定されているが本発明はこれに限定されるものではない。ステップ122の判定が否定(NO)のときは、モータ33の温度が120℃以下であり、更にモータの回転速度を増加させても支障ないと判断しモータ33の回転数NをN3(=3600rpm)の高速にする(ステップ123)。一方、ステップ122の判定が肯定(YES)のときは、これ以上モータ33の回転数を増大するとモータ33が過度に温度上昇し、空気圧縮機の効率が低下すると判断してモータ33の回転数Nを中速のN2(=2400rpm)に設定する。
【0044】
このように本発明はタンク内の圧力変化に応じてモータ33の回転速度が制御されるだけでなく、モータ温度、特にモータ巻線温度も検出し、この温度に応じて回転数が制御されるのでモータ33の過昇温を防止することができる。
【0045】
次に本発明空気圧縮機の制御プログラムの他の実施例について図5を参照して説明する。
【0046】
まずステップ101において初期設定を行い、モータ33の回転数NをN2=2400rpmに設定することは図4と同様である。この実施例では圧力タンク10Aの圧力センサ11により検出された信号を制御回路部40に取り込むためのサンプリング周期ΔTは二種類として短周期ΔT1は0.05秒、長周期ΔT2は5秒とする。即ちi=0、1、2、3…100としてP(i−1)とP(i)との差から0.05秒に1回タンク内圧力の変化を検出すると共に、P(i=0)とP(i=100)との差から5秒間に1回圧力変化を検出する。本実施例では短時間の周期を0.05秒としたが、これは1回に大量の空気を消費する釘打機等が作動したときに生ずるタンク内圧力のリップルを検出するために設定された周期であり、使用される空気工具等にも依存する値であるから本発明が必ずしもこの数値に限定されるものでないことはもちろんである。同様に長時間の周期の5秒は、空気工具の使用状態によるタンク内圧力変化を検出するために設定された周期であるから一つの例示であってこの数値に限定される訳ではない。
【0047】
次にステップ104に進み、本発明の空気圧縮機の制御に用いられる回転数のデータを記憶する。この実施例ではモータ33の回転数NをN0(=0rpm)、N1(1200rpm)、N2(2400rpm)、N3(3600rpm)の4段階に制御するので、それぞれN0、N1、N2、N3の値がRAM42の適当な領域に記憶される。モータ33の速度を更に多段階に設定することは容易であるが、少なくとも3段階以上であることが望ましい。
【0048】
次にステップ105に進みタンク10Aの圧縮空気の圧力P(i)を測定し、これを記憶する。ステップ106においては測定した圧力P(i)が30kg/cm2より大きいか否かを判定し、その判定が肯定(YES)のときはステップ107に進みモータ33の回転数NをN0(0rpm)に設定する。即ち本実施例ではタンク10Aの圧力を20kg/cm2〜30kg/cm2に維持するように制御する例を示しており、従ってタンク内圧力が30kg/cm2を超えるとモータ33の回転が止められる。
【0049】
ステップ106における判定が否定(NO)のときはステップ108に進み、(i+1)を(i)と代入され、ステップ109においてタンク内圧力P(i)が測定され、その値が先のP(i−1)と共に記憶される。更にステップ110においてCPU41により短時間周期ΔT1における圧力変化率ΔP1/ΔT1(=(P(i)−P(i−1)/0.05)が算出される。
【0050】
更にステップ111では上述の短周期の圧力変化率ΔP1/ΔT1が所定値より小さいか否かが判定される。この判定は圧力タンク10Aに接続された空気工具が連続釘打ちなどのように短時間に多量の空気を消費する態様で作動しているか否かを判定するもので、本実施例では所定値を−1として設定されている。連続釘打ちをすると、タンク内圧力が脈動し、圧力変化のリップルが大きくなる。そしてΔT1におけるΔP1の減少が(−1)より大きい(つまりΔP1/ΔT1<−1)ときにはそのリップルの大きさより判断して連続釘打ち等の態様で空気工具が使用されていると判定してステップ125に進む。
【0051】
ステップ125では電源回路31(図3)における電源310の電圧(V)が検出器311によって検出され、更にステップ126でその値が所定値より小さいか否かが判定される。本実施例では上記の所定値は90Vに設定されている。即ち空気工具による空気消費量が大きいときには直ちにモータ33の回転数を上昇して圧縮空気の生成量を増大することが望ましいが、例えばタンク10Aに他の空気工具も接続され使用されているような場合は負荷が大きくなり電源回路31(図3)のブレーカ(図示せず)が作動してしまうことがあるのでこれを避けるために電源電圧Vの大きさが所定値(90V)より小さいか否かをステップ126で判定しているのである。このステップ126の判定が肯定(YES)のとき、つまり通常100Vである電源電圧が90V以下に低下しているということは、他の空気工具等の使用により電源310の負荷が相当大きいと判断してモータ33の回転数NをN2(=2400rpm)に維持する。
【0052】
電源310の電圧が90V以上あるときは次にステップ127に進み、電流検出器312によって電源回路31に流れる電流Iが検出される。そしてステップ128において測定された電流Iが所定値より大きいか否かが判定される。本実施例では上記の所定値が30Aに設定されている。この判定が肯定(YES)のときは、モータ33の回転数Nを現状以上に上昇すると電源310のブレーカが切断する可能性があると判定して、やはりステップ132に進みモータ33の回転数をN2(=2400rpm)に維持する。
【0053】
ステップ128の判定が否定(NO)のときはステップ129に進みモータ33におけるステータ331の巻線温度tが測定され、更にステップ130においてこの巻線温度tが所定値より大きいか否かが判定される。本実施例では上記の所定値は120℃に設定されている。モータ巻線の温度tが120℃以上の状態でモータ33の回転数を更に増加するとモータ33の温度が過度に上昇し、モータの運転に支障をきたすおそれがあると共に、過度の温度上昇により圧縮空気生成部20の圧縮空気生成効率を著しく低下させるおそれがあるのでステップ130の判定が肯定(YES)のときはやはりステップ132に進み、モータ33の回転数NをN2(=2400rpm)に維持する。
【0054】
ステップ130の判定が否定(NO)のときはステップ131に進み、モータ33の回転数NがN3(=3600rpm)に設定される。
【0055】
次にステップ133では再びi=0としてステップ134でタンク10Aの内圧P(i)が30kg/cm2より大きいか否かが判定される。この判定が肯定(YES)の場合はステップ107に戻ってモータ33の回転を止める。ステップ134の判定が否定(NO)の場合はステップ135でi+1をiに置き換える演算を行い、ステップ136ではiが100になったか否か、つまり5秒経過したか否かが判定される。この判定が肯定(YES)の場合はi=0と置き(ステップ102)、ステップ104に戻る。上記のステップ134〜136は、0.05秒毎にモータ33の回転数が切り替わると不快感を覚えるので5秒間は同一の回転数を維持するように制御するためである。
【0056】
一方、前述のステップ111における判定が否定(NO)の場合、つまり短時間(0.05秒)におけるタンク内の圧力変化率が所定値より小さい場合はステップ112に進み、時間がΔT2秒(=5秒)経過したか否か判定される。この判定が否定(NO)の場合はステップ106に戻るが、肯定(YES)の場合はステップ113に進み、長時間(5秒)における圧力変化率ΔP2/ΔT2(=(P(i=100)−P(i=0))/5)の算出が行われる。
【0057】
次にステップ114では回転数遷移テーブルの選定が行われる。ステップ114〜116は図4の実施例と同じであるので説明は省略する。この結果、選択された回転数NがN3(=3600rpm)の場合は(ステップ116)、次のステップ117〜122の判定により電源電圧Vが90V以上、且つ負荷電流Iが30A以下、且つモータ巻線温度tが120℃以下か否かが判定される。このステップ117〜122の機能は前述のステップ125〜130と同じであるので詳細な説明は省略するが、要するに電源ブレーカ(図示せず)の作動を防止し、且つモータ33の過昇温防止のためのフローである。
【0058】
これらのステップ117〜122の判定の結果、モータ33の回転数Nを最高速の3600rpmに切換えてもブレーカが切断したりモータ33の温度が過度に上昇しないと判断された場合はステップ123に進みN=N3(=3600rpm)にモータ速度が設定される。しかしその条件を満たさない場合はステップ124に進みモータ33の回転数NはN2に維持される。即ち本発明においては短時間(0.05秒)の圧力変化率が大きい場合及び長時間(5秒)の圧力変化率が大きい場合には空気消費量が多くなると予測してモータ33の回転数をN3に上昇させるが、モータ33の負荷がすでに相当重く、ブレーカが切断するおそれがあったりモータ巻線温度が過度に上昇するおそれがある場合はN2に維持するという制御が行われる。
【0059】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかなように本発明はタンク内の圧力に応じてモータの回転数を多段階に制御する空気圧縮機において、モータの温度が所定値以上の場合には高速回転させずに中速回転させるようにしたのでモータ温度が過度に上昇し、効率が低下するのを防止することができる。
【0060】
またモータの電源回路の電源電圧及び負荷電流を検出する検出回路を有し、電源電圧が所定値より低く、負荷電流が所定値より大きい場合にはモータを高速回転させないように構成したのでモータ巻線温度が過度に上昇したり電源ブレーカが作動するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる空気圧縮機の一実施例を示す概念図。
【図2】本発明にかかる空気圧縮機の一実施例を示す上面図。
【図3】本発明空気圧縮機におけるモータ駆動回路の一実施例を示す回路図。
【図4】本発明空気圧縮機の制御に用いられるプログラムの一実施例を示すフローチャート。
【図5】本発明空気圧縮機の制御に用いられるプログラムの他の実施例を示すフローチャート。
【図6】本発明空気圧縮機の制御に用いられる回転数遷移テーブルの説明図。
【図7】本発明空気圧縮機の制御に用いられる回転数遷移テーブルの説明図。
【図8】本発明空気圧縮機の制御に用いられる回転数遷移テーブルの説明図。
【図9】本発明空気圧縮機の制御に用いられる回転数遷移テーブルの説明図。
【符号の説明】
10:タンク部、10A:圧力タンク、10B:安全弁、11:圧力センサ、12、13:減圧弁、14、15:カプラ、16、17:圧力計、18、19:取出口、20:圧縮空気生成部、21:パイプ、30:駆動部、31:電源回路、32:モータ制御回路、33:モータ、33A:ステータ、33B:ロータ、311:電圧検出器、312:電流検出器、334:温度検出回路、335:回転数検出回路、40:制御回路部、41:CPU、42:RAM、43:ROM、44、45:I/F回路
Claims (7)
- 空気工具に用いられる圧縮空気を貯留するタンク部と、圧縮空気を生成し、上記タンク部に供給するための圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部を駆動するためのモータを有する駆動部と、該駆動部を制御するための制御回路部とを有する空気圧縮機において、上記駆動部のモータの温度を検知する温度センサを有し、上記制御回路部は上記温度センサの検出信号に応じて上記モータの回転数を複数段階に制御することを特徴とする空気圧縮機。
- 請求項1において、上記タンク部の圧縮空気の圧力を検出する圧力センサを有し、上記制御回路部は上記温度センサ及び上記圧力センサの検出信号に応じて上記モータの回転数を複数段階に制御することを特徴とする空気圧縮機。
- 請求項1において、上記駆動部の電源電圧を検出する電圧検出回路と、上記駆動部の負荷電流を検出する電流検出回路を有し、上記制御回路部は上記温度センサと、上記電圧検出回路及び電流検出回路の少なくとも一方の検出信号に応じて上記モータの回転数を複数段階に制御することを特徴とする空気圧縮機。
- 請求項1又は2又は3において、上記制御回路部は上記モータを高速、中速、低速の少なくとも3段階に制御することを特徴とする空気圧縮機。
- 空気工具に用いられる圧縮空気を貯留するタンク部と、圧縮空気を生成し、上記タンク部に供給するための圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部を駆動するためのモータを有する駆動部と、該駆動部を制御するための制御回路部とを有する空気圧縮機の制御方法において、上記駆動部のモータの温度を温度センサにより検知するステップと、上記温度センサからの検出信号に応じて上記モータの回転数を高速、中速、低速の少なくとも3段階に制御するステップとを有することを特徴とする空気圧縮機の制御方法。
- 請求項5において、上記タンク部の圧縮空気の圧力を圧力センサにより検出するステップと、上記温度センサ及び圧力センサによる検出信号に応じて上記モータの回転数を高速、中速、低速の少なくとも3段階に制御するステップとを有することを特徴とする空気圧縮機の制御方法。
- 請求項5において、上記駆動部の電源電圧と負荷電流を検出するステップと、検出された電圧及び電流と上記温度センサによる検出信号に応じて上記モータを高速、中速、低速の少なくとも3段階に制御するステップとを有することを特徴とする空気圧縮機の制御方法。
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