以下、本発明の実施の形態による圧縮機として空気圧縮機を例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図中、1は例えば作業現場等に設置された商用電源等からなる交流の電源で、この電源1の電圧(電源電圧)Vは、通常の負荷状態において、例えば100V程度の定格電圧V0に保持されている。そして、電源1には、後述の空気圧縮機2、他の電気機器19,20等が接続される。
2はタンク一体型の空気圧縮機で、該空気圧縮機2は、後述の電動モータ3、圧縮部4、エアタンク5等によって構成されている。
3は電源1から供給される電圧によって作動する電動モータで、該電動モータ3は、例えばインバータ制御式のDCBL(DC Brushless)モータ等によって構成されている。そして、電動モータ3は、後述の電源制御装置6を経由して電源1に接続される。これにより、電動モータ3は、電源制御装置6によって回転速度等が制御され、圧縮部4の駆動軸等を回転駆動する。
4は電動モータ3によって駆動する圧縮部で、該圧縮部4は、例えばシリンダ内でピストンが往復動作する往復動型、または2つのスクロールが相対回転するスクロール型の圧縮機構によって構成されている。そして、圧縮部4は、電動モータ3によってその駆動軸が回転駆動し、外部の空気を吸込んで圧縮し、圧縮空気を吐出する。
5は圧縮部4から吐出される圧縮空気を貯留するエアタンクで、該エアタンク5は、空気圧縮機2の下部側に例えば2個配置されている。また、エアタンク5の上側には、電動モータ3と圧縮部4とが配置されている。そして、エアタンク5には例えば釘打ち機等の空圧機器Aが接続され、該空圧機器Aは、エアタンク5内の圧縮空気を用いて作動する。
6は例えば空気圧縮機2に搭載された電源制御装置を示し、この電源制御装置6は、電源コード7を介して電源1に接続されている。そして、電源制御装置6は、図2に示す如く、後述の整流器8、駆動回路10、電流センサ13、制御回路14等によって構成されている。
8は例えば複数個のダイオード等によりブリッジ回路として形成された整流器で、該整流器8は、電源コード7、電源スイッチ9等を介して電源1に接続され、電源1の単相交流電圧を整流するものである。そして、この整流された電圧は、複数のコンデンサからなる平滑回路(図示せず)等によって平滑化され、駆動回路10に直流電圧として出力される。
10は電動モータ3を駆動する駆動回路で、該駆動回路10は、制御回路14によって開,閉される例えば6個のパワートランジスタ等からなり、整流器8の出力側に平滑回路を介して接続されている。そして、駆動回路10は、整流器8等から直流電圧が入力されるときに、この直流電圧を制御回路14の制御信号に応じてパルス幅変調(PWM制御)し、周波数可変の擬似的な交流電圧を電動モータ3に出力する。
11は電動モータ3の出力軸の回転を検出する回転速度検出器としての回転センサで、該回転センサ11は、例えばホール素子等からなり、電動モータ3の出力軸と一緒に回転するマグネットの磁束を検出する構成となっている。そして、回転センサ11は、電動モータ3の回転に同期した検出信号を制御回路14に出力する。これにより、制御回路14は、回転センサ11からの検出信号を計測することによって、電動モータ3の回転速度Nを検出している。
12はエアタンク5に付設された圧力検出器としての圧力センサで、該圧力センサ12は、エアタンク5内に貯留された圧縮空気の圧力Pを検出し、その圧力値に応じた検出信号を制御回路14に出力する。
13は整流器8の入力側に設けられた電流センサで、該電流センサ13は、電源1から整流器8に通電されるときに、その電流を電動モータ3に供給する駆動電流Iとして検出し、制御回路14に検出信号を出力する。
14は例えば電動モータ3の運転状態をインバータ制御する制御部としての制御回路で、該制御回路14は、例えばCPU等を備えた演算処理回路として構成され、ROM、RAM等からなる記憶回路を有している。また、制御回路14の入力側には、各センサ11,12,13、後述の操作スイッチ18等が接続され、制御回路14の出力側には駆動回路10が接続されている。
そして、制御回路14は、回転速度の目標値N0を演算して出力する回転速度指令部15と、回転速度指令部15による目標値N0に基づいて電動モータ3の回転速度Nをフィードバック制御する回転速度制御部16とを備えている。
ここで、回転速度指令部15には、圧力センサ12が接続されている。これにより、回転速度指令部15は、圧力センサ12からの検出信号を用いてエアタンク5内の圧力P(圧力検出値)を検出する。そして、回転速度指令部15は、後述するように、この圧力Pおよび制限速度マップ17に基づいて回転速度の目標値N0を演算し、回転速度制御部16に向けて出力する。このとき、回転速度指令部15は、電動モータ3の駆動電流Iが最大電流Imaxよりも小さい値となるように、目標値N0を演算する。これにより、回転速度指令部15は、電動モータ3に供給する電流に常にマージンを確保し、電源電圧Vが低下したときでも、電動モータ3の駆動電流Iを増加可能にしている。
一方、回転速度制御部16には、回転センサ11が接続されると共に、回転速度指令部15の出力側が接続されている。そして、回転速度制御部16は、回転センサ11からの検出信号を用いて回転速度N(回転速度検出値)を検出すると共に、回転速度指令部15から出力される回転速度の目標値N0と検出した回転速度Nとを比較する。これにより、回転速度制御部16は、回転速度Nが目標値N0に近付くように、駆動回路10のパワートランジスタを開,閉し、電動モータ3に向けてPWM制御した駆動信号を供給する。この結果、回転速度制御部16は、駆動信号の周波数を変化させて、電動モータ3の駆動電流Iを増加または減少させ、目標値N0と検出した回転速度Nとの偏差を減少させるものである。
また、制御回路14には、エアタンク5内の圧力Pを適切な範囲に保持するための上限値Pmaxと下限値Pminとが予め記憶されており、例えば上限値Pmaxは3.0MPa程度の圧力に設定されると共に、下限値Pminは2.6MPa程度の圧力に設定されている。
そして、制御回路14は、エアタンク5内の圧力Pに応じて圧縮機を運転、停止する制御(圧力開閉制御)を行うことにより、この圧力Pを上限値Pmaxと下限値Pminとの間の圧力値に保持する。即ち、圧力開閉制御では、例えば圧力Pが上限値Pmaxに達したときに圧縮機2の運転を停止し、圧力Pが下限値Pminまで低下したときに圧縮機2を再起動する構成となっている。
さらに、制御回路14には、電流センサ13からの検出信号を用いて電動モータ3の駆動電流Iを検出する。そして、制御回路14は、この駆動電流Iが過度に大きくなったときには、電動モータ3を停止し、電動モータ3等を保護している。
17は制御回路14に格納された制限速度マップで、該制限速度マップ17は、図3に示すように、エアタンク5内の圧力Pに対応した制限速度Na(P)が記憶されている。ここで、制限速度Na(P)は、圧力Pを維持した状態で最大電流Imaxよりも例えば5〜10%程度小さい制限電流Iaを電動モータ3に供給し、このときの電動モータ3の回転速度を計測することによって得たものである。そして、回転速度指令部15は、制限速度マップ17を用いて圧力Pから制限速度Na(P)を算出する。
18は空気圧縮機2の使用者等が操作する操作スイッチで、該操作スイッチ18は、図2に示すように、圧縮機2の運転、停止等を行うものである。
19,20は作業現場等で空気圧縮機2と共に用いられる他の電気機器で、これらの電気機器19,20は、図1に示すように、例えば電動鋸、電動ドリル等の電動工具や、照明器具、暖房器具等によって構成されている。
次に、図1ないし図4を参照しつつ、電源制御装置6を用いた空気圧縮機2の制御処理について説明する。なお、図1ないし図4に示す制御処理のプログラムおよび圧力判定値P0、制限速度マップ17等は、制御回路14内に予め記憶されているものとする。
まず、空気圧縮機2を起動すると、電源1から電源制御装置6を介して電動モータ3に通電が行われる。そして、電動モータ3が作動することにより、圧縮部4が外部の空気を吸込んでエアタンク5内に圧縮空気を吐出する。これにより、作業現場等では、例えば釘打ち機等の空圧機器Aを圧縮機2に接続し、エアタンク5から供給される空気圧によって空圧機器Aを作動させることができる。
また、制御回路14は、操作スイッチ18等によって圧縮機2の停止操作が行われるまで、図4中のステップ1〜13に示す制御処理を繰返す。このとき、この制御処理では、まずステップ1において、エアタンク5内の圧力Pが上昇中であることを示す昇圧フラグFpをON(Fp=1)に設定する。そして、ステップ2では、圧力センサ12を用いてエアタンク5内の圧力Pを圧力検出値として読込む。
次に、ステップ3では、エアタンク5内の圧力Pが例えば2.0MPa程度に設定された圧力判定値P0よりも低い(圧力判定値P0未満)か否かを判定する。このとき、圧力判定値P0は、例えば3000rpm程度の初期速度Nsで電動モータ3を駆動したときに、電動モータ3に供給する駆動電流Iが制限電流Iaを超えるときの圧力の値に設定されている。
即ち、エアタンク5内の圧力Pが上昇するに従って、圧縮部4の負荷が増加する。このため、圧力Pの上昇に伴って、電動モータ3の駆動電流Iも増加する。そこで、本実施の形態による圧力判定値P0は、電動モータ3の駆動電流Iが最大電流Imaxよりも例えば5〜10%程度小さい制限電流Ia(Ia<Imax)となる圧力の値に設定している。
そして、ステップ3で「YES」と判定したときには、エアタンク5内の圧力Pは圧力判定値P0未満であり、エアタンク5内には圧縮空気が不足している。このため、ステップ4に移って、回転速度指令部15は、例えば3000rpmのように予め決められた一定の初期速度Nsを目標値N0に設定し、この目標値N0を回転速度制御部16に向けて出力する。これにより、ステップ8に移って、回転速度制御部16は、後述する回転速度フィードバック処理を行う。具体的には、回転速度制御部16は、目標値N0と回転速度Nとの偏差が減少するように、電動モータ3に供給する駆動信号の周波数を変化させて、電動モータ3に供給する電流を増加または減少させる。この結果、回転速度制御部16は、初期速度Nsに近付くように、電動モータ3の回転速度Nをフィードバック制御する。
一方、ステップ3で「NO」と判定したときには、エアタンク5内の圧力Pが圧力判定値P0以上となり、このままの回転速度Nを維持して圧縮機2を駆動すると、電動モータ3の駆動電流Iが制限電流Iaを超えてしまう。
このため、以後のステップ5〜8では、駆動電流Iが制限電流Iaを超えないように回転速度の目標値N0を初期速度Nsよりも低下させている。また、ステップ9〜11では、圧力Pに応じて圧縮機2の駆動、停止を制御する圧力開閉処理を行っている。
ステップ5では、例えば圧力Pが2.6MPa程度の下限値Pminよりも高いか否かを判定する。そして、ステップ5で「NO」と判定したときには、圧力Pが下限値Pmin以下に低下し、エアタンク5内の圧縮空気が残り少なくなっている。このため、ステップ6で、エアタンク5内の圧力Pが上昇中であることを示す昇圧フラグFpをON(Fp=1)に設定し、ステップ7に移行する。
そして、ステップ7では、回転速度指令部15は、図3に示す制限速度マップ17を用いて、圧力センサ12による圧力Pから制限速度Na(P)を演算する。このとき、制限速度Na(P)は、検出した圧力Pで電動モータ3を駆動したときに、電動モータ3の駆動電流Iが最大電流Imax(例えばImax=10A)よりも例えば5%小さい制限電流Ia(例えばIa=9.5A)となるような回転速度に設定されている。そして、回転速度指令部15は、算出した制限速度Na(P)を回転速度の目標値N0として回転速度制御部16に向けて出力する。
このため、ステップ8に移行すると、回転速度制御部16は、目標値N0と回転速度Nとの偏差が減少するように、電動モータ3に供給する駆動信号の周波数(パルス幅)を変化させて、電動モータ3に供給する電流を増加または減少させる。この結果、回転速度制御部16は、制限速度Na(P)に近付くように、電動モータ3の回転速度Nをフィードバック制御する。
このとき、制限速度Na(P)で電動モータ3が駆動したときには、例えば最大電流Imaxよりも5%小さい制限電流Iaが電動モータ3に供給される。このため、電動モータ3の駆動電流Iは、最大電流Imaxよりも小さい値になる。
一方、ステップ5で「YES」と判定したときには、ステップ9では、例えば圧力Pが3.0MPa程度の上限値Pmaxに達しているか否かを判定する。
そして、ステップ9で「YES」と判定したときには、エアタンク5内の空気圧が十分に高くなっている。このため、ステップ10で、エアタンク5内の圧力Pが上昇中であることを示す昇圧フラグFpをOFF(Fp=0)に設定し、ステップ11で圧縮機2の運転を停止させる。
また、ステップ9で「NO」と判定したときには、エアタンク5内の圧力Pは下限値Pminと上限値Pmaxとの間の値になっている。このため、ステップ12に移行して、昇圧フラグFpを用いて圧力Pが上昇中か否かを判定する。そして、ステップ12で「YES」と判定したときには、圧力Pが上昇途中であるから、ステップ7およびステップ8に移って、電動モータ3を制限速度Na(P)で駆動する。一方、ステップ12で「NO」と判定したときには、圧力Pが下降途中であるから、ステップ11に移って、圧縮機2の運転を停止させる。
そして、ステップ8またはステップ11の終了後には、ステップ13に移って、操作スイッチ18の停止操作等により圧縮機の運転を終了するか否かを判定する。そして、ステップ13で「YES」と判定したとには、ステップ14で終了する。また、ステップ13で「NO」と判定したときには、ステップ1〜12を繰返し実行する。
このように、本実施の形態では、圧力Pが圧力判定値P0よりも高い状態で圧縮機2を駆動するときには、電動モータ3の駆動電流Iが制限電流Iaとなるように、回転速度の目標値N0として制限速度Na(P)を出力する構成としている。
次に、図2および図5を参照しつつ、回転速度フィードバック処理について説明する。
まず、ステップ21において、制御回路14の回転速度制御部16は、回転センサ11からの検出信号を用いて電動モータ3の回転速度Nを回転速度検出値として検出する。
次に、ステップ22では、検出した回転速度Nが回転速度指令部15から出力された目標値N0よりも低いか否かを判定する。そして、ステップ22で「YES」と判定したときには、電動モータ3の回転速度Nが目標値N0よりも低下している。このため、ステップ23に移って、回転速度制御部16は、駆動回路10を用いて電動モータ3に供給する駆動信号の周波数(パルス幅)を変化させて、電動モータ3の駆動電流Iを増加させた後、ステップ27でリターンする。
一方、ステップ22で「NO」と判定したときには、ステップ24で、回転速度Nが目標値N0よりも高いか否かを判定する。そして、ステップ24で「YES」と判定したときには、電動モータ3の回転速度Nが目標値N0よりも上昇している。このため、ステップ25に移って、回転速度制御部16は、駆動回路10を用いて電動モータ3に供給する駆動信号の周波数(パルス幅)を変化させて、電動モータ3の駆動電流Iを減少させた後、ステップ27でリターンする。
また、ステップ24で「NO」と判定したときには、電動モータ3の回転速度Nが目標値N0とほぼ一致している。このため、ステップ26に移って、回転速度制御部16は、電動モータ3に供給する駆動信号の周波数を現在の値に保持し、電動モータ3の駆動電流Iを維持する。その後、ステップ27でリターンする。
次に、図6および図7を参照しつつ、上記制御による空気圧縮機2の運転状態と、他の電気機器19,20の使用状態との関係を具体的に説明する。
まず、他の電気機器19,20を使用せず、本実施の形態による空気圧縮機2を単独で運転した場合について検討する。
この場合には、図6中に実線で示すように、電源電圧Vは、例えば定格電圧である100V程度に常時保持される。そして、エアタンク5内の圧力Pが低圧な状態で空気圧縮機2の運転を開始すると、制御回路14の回転速度指令部15は、エアタンク5内の圧力Pに基づいて回転速度の目標値N0を3000rpm程度の初期速度Nsに設定し、回転速度制御部16に向けて出力する。
これにより、回転速度制御部16は、回転センサ11を用いて検出した回転速度Nが目標値N0に近付くように、電動モータ3の駆動電流Iを増加、減少させて、電動モータ3のフィードバック制御を行う。この結果、図6中に実線で示す特性線のように、電動モータ3の回転速度Nはほぼ初期速度Nsと一致する。このとき、圧縮部4は、電動モータ3によって駆動し、外部の空気を圧縮して圧縮空気をエアタンク5に向けて吐出する。これにより、エアタンク5内の圧力Pは徐々に上昇する。
ここで、エアタンク5内の圧力Pが上昇すると、圧縮部4の負荷が増加する。このため、電動モータ3を一定の初期速度Nsで駆動したときでも、図6中に実線で示す特性線のように、電動モータ3に供給する駆動電流Iは、圧力Pの上昇に伴って徐々に増加し、圧縮空気の吐出量Qは徐々に減少する。
そして、空気圧縮機2の駆動を継続すると、エアタンク5内の圧力Pは圧力判定値P0を超える。この状態で、電動モータ3を初期速度Nsで駆動し続けたときには、電動モータ3の駆動電流Iは、最大電流Imaxの95%に設定された制限電流Iaを超えてしまう。
このとき、回転速度指令部15は、制限速度マップ17を用いて圧力Pから初期速度Nsよりも低速の制限速度Na(P)を算出する。そして、回転速度指令部15は、回転速度の目標値N0を制限速度Na(P)に設定し、回転速度制御部16に向けて出力する。
これにより、回転速度制御部16は、回転センサ11を用いて検出した回転速度Nが目標値N0に近付くように、電動モータ3の駆動電流Iを増加、減少させて、電動モータ3のフィードバック制御を行う。この結果、電動モータ3は制限速度Na(P)で駆動し、圧縮部4は、外部の空気を圧縮して圧縮空気をエアタンク5に向けて吐出する。
このとき、制限速度Na(P)は、電動モータ3の駆動電流Iが制限電流Iaとなるような回転速度に設定されている。また、制限電流Iaは、最大電流Imaxよりも例えば5%小さい値に設定されている。このため、電動モータ3の駆動電流Iは、最大電流Imaxよりも小さい値になる。
そして、エアタンク5内の圧力Pが上限値Pmaxを超えると、制御回路14は、圧縮機2の駆動を停止する。一方、空圧機器Aの使用等によって圧力Pが下限値Pminよりも低下すると、制御回路14は、圧縮機2を再起動する。これにより、制御回路14は、エアタンク5内の圧力Pを下限値Pminと上限値Pmaxとの間の値に保持する。
次に、従来技術と同様の比較例による空気圧縮機を単独で運転した場合について検討する。
この場合、エアタンク5内の圧力Pが圧力判定値P0よりも低いときには、比較例でも、本実施の形態と同様に、電動モータ3を3000rpm程度の一定の初期速度Nsで駆動する。このため、図6中に点線で示すように、電動モータ3の回転速度N′は、ほぼ初期速度Nsと一致する。このとき、エアタンク5内の圧力Pは徐々に上昇する。このため、図6中に点線で示すように、圧力Pの上昇に伴って、電動モータ3の駆動電流I′は増加し、圧縮空気の吐出量Q′は減少する。
一方、比較例では、エアタンク5内に圧力Pに拘わらず、回転速度の目標値N0を常に初期速度Nsに維持する。このため、電動モータ3の駆動電流I′は、制限電流Iaを超えて増加し、例えば圧力Pが2.3MPaとなったときに、最大電流Imaxに到達する。この結果、圧力Pが2.3MPa以上では、電動モータ3は制限速度Na(P)よりも高速で回転するものの、電動モータ3の駆動電流I′は最大電流Imaxに保持される。そして、圧力Pが上限値Pmaxに到達すると、電動モータ3(圧縮機2)を停止し、圧力開閉制御を行う。
以上のように、他の電気機器19等を使用しない状態では、本実施の形態と比較例とは、回転速度N,N′、駆動電流I,I′、圧縮空気の吐出量Q,Q′はエアタンク5内の圧力Pに対してほぼ同様に変化する。
次に、本実施の形態による空気圧縮機2を運転している途中で他の電気機器19,20を一緒に使用した場合について検討する。
この場合、図7に示すように、空気圧縮機2と電気機器19,20を一緒に使用すると、電源電圧Vが一時的に低下する。これにより、電動モータ3の回転速度Nも低下する傾向がある。
ここで、エアタンク5内の圧力Pが圧力判定値P0よりも低いときには、回転速度指令部15は、初期速度Nsを目標値N0として出力する。このとき、電動モータ3の駆動電流Iは、最大電流Imaxよりも十分に小さい値になっている。このため、電気機器19等による電圧降下に伴って電動モータ3の回転速度Nが低下すると、回転速度制御部16は、電動モータ3に供給する駆動信号の周波数(パルス幅)を変化させて、図7中に実線で示すように、駆動電流Iを一時的に増加させる。この結果、電動モータ3の回転速度Nは、初期速度Ns付近に維持される。
また、エアタンク5内の圧力Pが圧力判定値P0以上となったときには、回転速度指令部15は、制限速度Na(P)を目標値N0として出力する。このとき、電動モータ3の駆動電流Iは、最大電流Imaxよりも小さい制限電流Iaと同じ値になっている。このため、圧力Pが圧力判定値P0以上であっても、本実施の形態では、電動モータ3の駆動電流Iを制限電流Iaから最大電流Imaxまで増加させることができる。従って、圧力Pが圧力判定値P0以上で、電気機器19等による電圧降下に伴って電動モータ3の回転速度Nが低下しても、回転速度制御部16は、圧力Pが圧力判定値P0よりも低いときと同様に、電動モータ3の駆動電流Iを一時的に増加させる。この結果、電動モータ3の回転速度Nは制限速度Na(P)付近に維持される。
次に、従来技術と同様の比較例による空気圧縮機を運転している途中で他の電気機器19,20と一緒に使用した場合について検討する。
まず、エアタンク5内の圧力Pが圧力判定値P0よりも低いときには、電動モータ3は初期速度Nsで駆動する。このとき、電動モータ3の駆動電流I′は、最大電流Imaxよりも十分に小さい値になっている。このため、電気機器19等による電圧降下に伴って電動モータ3の回転速度Nが低下すると、比較例でも、本実施の形態と同様に、電動モータ3に供給する駆動信号の周波数(パルス幅)を変化させて、駆動電流I′を一時的に増加させる。この結果、電動モータ3の回転速度N′は、本実施の形態と同様に、初期速度Ns付近に維持される。
一方、エアタンク5内の圧力Pが圧力判定値P0以上となったときでも、比較例では、回転速度の目標値N0を常に初期速度Nsに維持する。このため、例えば圧力Pが2.3MPa以上となったときには、図7中に点線で示すように、電動モータ3の駆動電流I′は、最大電流Imaxと同じ値になる。
このように、電動モータ3が最大電流Imaxで駆動している状態では、他の電気機器19等によって電圧降下が生じても、電動モータ3の駆動電流I′を増加させることができない。このため、比較例では、本実施の形態と異なり、他の電気機器19等によって一時的な電圧降下が生じると、電動モータ3の回転速度N′が低下する。この結果、比較例では、電源電圧Vの降下によって、電動モータ3の回転速度N′に変動が生じ易く、電動モータ3、圧縮部4等から不快音が生じて、使用者に故障であるとの誤認を生じさせる。
以上のように、比較例では、圧力Pが圧力判定値P0よりも高いときには、電源電圧Vの降下によって、電動モータ3の回転速度N′に変動が生じ易い。これに対し、本実施の形態では、圧力Pに拘わらず、電動モータ3の回転速度Nの変動を抑制することができるから、電動モータ3、圧縮部4等からの不快音を減少させることができ、使用者による故障の誤認をなくすことができる。
かくして、本実施の形態によれば、制御回路14の回転速度指令部15は、エアタンク5の圧力Pが圧力判定値P0よりも低いときには、初期速度Nsを目標値N0として回転速度制御部16に出力し、エアタンク5の圧力Pが圧力判定値P0よりも高いときには、圧力Pに基づいて演算した制限速度Na(P)を目標値N0として回転速度制御部16に出力する構成とした。
このため、エアタンク5の圧力Pが圧力判定値P0よりも低いときには、圧縮部4の負荷が小さいから、電動モータ3の駆動電流Iは、比較的小さい値となり、最大電流Imaxに到達することはない。一方、エアタンク5の圧力Pが圧力判定値P0よりも高いとき(圧力判定値P0以上のとき)には、電動モータ3は、初期速度Nsよりも低速な制限速度Na(P)で駆動する。このとき、制限速度Na(P)は、電動モータ3の駆動電流Iが最大電流Imaxよりも小さい制限電流Iaとなる値に設定されている。このため、圧力Pが圧力判定値P0よりも高いときであっても、電動モータ3の駆動電流Iは、最大電流Imaxよりも小さい値になる。
この結果、本実施の形態では、エアタンク5内の圧力Pに拘わらず、電動モータ3の駆動電流Iは、最大電流Imaxよりも小さい値に制限されている。このため、他の電気機器19等を使用したことによって一時的に電源電圧Vが低下して電動モータ3の回転速度Nが低下するときでも、制御回路14の回転速度制御部16は、電動モータ3の駆動電流Iを最大電流Imaxまで増加させることができる。この結果、電圧低下が生じても、電動モータ3の回転速度Nの変動(低下)を抑制することができるから、電動モータ3等の不快音を抑えることができると共に、使用者による故障の誤認をなくすことができる。
また、本実施の形態では、圧力判定値P0は、電動モータ3を初期速度Nsで駆動したときに、電動モータ3の駆動電流Iが制限電流Iaを超えるときの圧力の値に設定している。このため、電源電圧Vが定格電圧V0に近いときには、エアタンク5内の圧力Pが圧力判定値P0を超えるか否かに拘わらず、電動モータ3には制限電流Ia以下の駆動電流Iを供給することができる。従って、電源電圧Vが定格電圧V0に近いときには、常に電動モータ3を最大電流Imaxよりも小さい電流で駆動することができ、電動モータ3の駆動電流Iに対してマージンを確保することができる。これにより、電源電圧Vが定格電圧V0よりも低下したときには、電動モータ3の駆動電流Iを増加させることができ、電動モータ3の回転速度Nの変動を抑制することができる。
なお、実施の形態では、図2中の回転速度制御部16および図4中のステップ8が回転速度制御手段の具体例を示している。また、図4中のステップ3が圧力判定手段の具体例を示し、ステップ4が初期速度出力手段の具体例を示し、ステップ7が制限速度出力手段の具体例を示している。
また、実施の形態では、回転速度指令部15は、図3に示す制限速度マップ17を用いて、圧力Pから制限速度Na(P)を演算する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば数式を用いて圧力Pから制限速度Na(P)を演算する構成としてもよい。この場合、例えば圧力Pに比例して制限速度Na(P)を減少させるものである。
また、実施の形態では、圧力判定値P0、初期速度Ns、制限速度Na(P)、制限電流Ia、最大電流Imax等として具体的な数値を例示した。しかし、本発明は、実施の形態で例示した数値に限定されるものではなく、個々の数値を自由に設定できるのは勿論である。
さらに、実施の形態では、圧縮機として空気圧縮機2を例に挙げて説明したが、窒素等の他の気体を圧縮する圧縮機、または冷媒等の流体を圧縮する圧縮機に適用してもよい。