JP2004314838A - 耐火性隔壁構造、及びエンジンルームの耐火被覆方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンルームの火災の室内空間への延焼を止めることができる耐火性隔壁構造と、エンジンルームの耐火被覆方法を提供する。
【解決手段】自動車等のボディ1のエンジンルーム3と室内空間である車室5とを仕切る耐火性隔壁10は、板材11と、板材11に積層した熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15とを備える。耐火性隔壁構造の他の態様は、板材11を配管20が貫通し、貫通孔14の周辺の板材11に熱膨張性耐火材料の耐火シート16を貼り付けて付設し、又は貫通孔14に近接して配管20に、熱膨張性耐火材料の耐火テープ17を巻き付けて付設する。
【選択図】 図2
【解決手段】自動車等のボディ1のエンジンルーム3と室内空間である車室5とを仕切る耐火性隔壁10は、板材11と、板材11に積層した熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15とを備える。耐火性隔壁構造の他の態様は、板材11を配管20が貫通し、貫通孔14の周辺の板材11に熱膨張性耐火材料の耐火シート16を貼り付けて付設し、又は貫通孔14に近接して配管20に、熱膨張性耐火材料の耐火テープ17を巻き付けて付設する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等のエンジンルームと室内空間を仕切る隔壁に係り、特に、耐火性に優れた隔壁構造と、エンジンルームの耐火被覆方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車、鉄道車両等の車両の分野においては、車両火災における被害を最小限に止めるために、内装材の難燃化が義務づけられている。しかしながら、これらの難燃材料、特に自動車においては車室内からのライターやマッチ等の小さな火源に対しては効果的だが、大きな火源に対しては効果が小さいと言われている。実際の出火原因としては放火につづいて、電気系、排気系、燃料系の構造に起因するものが多いと報告されている。
【0003】
また、自動車等のエンジンルームと車室を隔てる隔壁用吸音性防音材は、エンジンルームからの振動や音を低減するために、ポリプロピレン・ベース又はポリアミド・ベース又はポリウレタン・ベースの重質層が、外側に向いた各面に表皮又はフィルム被覆を備えた発泡材層を具備し、この防音材が自立性かつ熱形状安定性であり、隔壁の至近に配設されるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、自動車などの吸遮音材に好適な吸遮音構造体は、音源側から第1パネル層、吸音材層、第1空気層および第2パネル層の順に配列された少なくとも4層からなり、吸音材層が通気性を備えているものである(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−164643号公報(図1)
【特許文献2】
特開2002−73036号公報(図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記のような電気系、排気系、燃料系の構造に起因する火災のほとんどはエンジンルームにおいて発生するもので、ラジエーターの溶損等によって開口部が拡張されると急速に延焼拡大し、車室に火源が移ると恐ろしい速度で燃え広がり、難燃材料が効を奏さない場合が多かった。
【0007】
また、特許文献1に記載の隔壁用吸音性防音材、特許文献2に記載の吸遮音構造体は、いずれもオレフィン等の樹脂製のため、耐火性は不十分であった。そこで、このようなエンジンルームからの出火から、人的、物的な被害を最小限に止めるためには、より効果的な方法が必要とされていた。
【0008】
さらに、車両における火災のうち、エンジンルームが火の発生源となる場合は、火災における風圧が大きく、隔壁に耐火性を付与するために使用する耐火材料の中でも加熱後、燃焼後に形状を保持できなかったり、加熱後の強度が極端に低下するものなどは燃え抜けてしまい、充分な効果を発揮できないという問題点もあった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、エンジンルームの火災の室内空間への延焼を止めるための、エンジンルームと室内空間を仕切る耐火性隔壁構造を提供することにある。また、火災による風圧が大きい場合でも形状保持が可能で燃え抜けることなく、防火性能を発揮できる耐火性隔壁構造を提供することにある。さらに、エンジンルームと室内空間を仕切る隔壁を耐火性にするエンジンルームの耐火被覆方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成すべく、本発明に係る耐火性隔壁構造は、自動車等のボディのエンジンルームと室内空間とを仕切る耐火性隔壁を備える構造であり、耐火性隔壁は板材と、この板材に積層した熱膨張性耐火材料とを備えることを特徴とする。板材としては、炭素鋼板やアルミニウム板等の金属板材が好ましく、また吸遮音シート等が積層した板材であってもよい。熱膨張性耐火材料はエンジンルーム側に積層することが好ましい。板材と熱膨張性耐火材料とを備える耐火性隔壁は、自動車等のボディに固定され、エンジンルームと室内空間とを構成する。
【0011】
前記のごとく構成された本発明の耐火性隔壁構造は、エンジンルームで火災が発生すると、板材に積層した熱膨張性耐火材料が膨張して断熱し、火災による熱が室内空間に到達するのを防止し、室内空間の温度が上昇するのを防止する。これにより、室内空間のダッシュボードや他の機器が延焼するのを防止でき、室内空間の人的、物的な被害を最小限に止めることができる。また、耐熱性隔壁や、その取付部分に微細な隙間等があっても、熱膨張性耐火材料が膨張して塞ぐため、火炎や煙等が室内空間に進入することを防止できる。前記の熱膨張性耐火材料としては、耐火性を満足する材料であれば、特に形態は限定されないが、例えばパテまたは塗料形態の材料、あるいはシート状の成形材料が挙げられる。
【0012】
本発明に係る耐火性隔壁構造の他の態様としては、自動車等のボディのエンジンルームと室内空間とを仕切り該エンジンルームと室内空間とを連通する貫通孔を有する板材を備え、該貫通孔を配管やワイヤー等の被貫通物が貫通するものであり、貫通孔の周辺の板材に、又は被貫通物の該貫通孔に近接して被貫通物に、熱膨張性耐火材料を付設したことを特徴とする。前記の熱膨張性耐火材料としては、耐火性を満足する材料であれば、特に形態は限定されないが、例えばパテまたは塗料形態の材料、あるいはシート状やテープ状の成形材料が挙げられる。
【0013】
このように構成された本発明の耐火性隔壁構造は、エンジンルームで火災が発生すると、熱膨張性耐火材料が膨張して被貫通物と貫通孔との隙間を塞ぎ、火災による熱が貫通孔から室内空間に到達するのを防止し、室内空間の温度が上昇するのを防止し、室内空間のダッシュボードや他の機器が延焼するのを防止でき、室内空間の人的、物的な被害を最小限に止めることができる。
【0014】
また、本発明に係る耐火性隔壁構造の好ましい具体的な態様としては、前記熱膨張性耐火材料は、比重1.5〜7の範囲のもので遮音性を有することを特徴としている。遮音性は熱膨張性耐火材料がある場合と、ない場合とで室内空間側に到達する音圧レベルを測定して判断することができ、例えば音圧レベルが5dB減少した場合を遮音性があると判断する。この構成によれば、エンジンルームと室内空間を仕切る隔壁は、耐火性を有するとともに、遮音性を有するものとなり、室内空間の安全と快適性を確保できる。
【0015】
さらに、本発明に係る耐火性隔壁構造の好ましい具体的な他の態様としては、前記熱膨張性耐火材料は、熱可塑性樹脂及び/又はゴムに、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、ゴム及び/又は熱可塑性樹脂100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20〜200重量部、無機充填剤が50〜500重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が9:1〜1:100の範囲である樹脂組成物から成ることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る耐火性隔壁構造の好ましい具体的なさらに他の態様としては、前記熱膨張性耐火材料は、エポキシ樹脂に、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、エポキシ樹脂100重量部に対して、リン化合物30〜150重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛15〜150重量部、及び無機充填剤が30〜500重量部である樹脂組成物から成ることを特徴とする。
【0017】
前記のように構成された樹脂組成物から成るシートを使用した場合、接着剤等による固定も可能であり、耐火性に影響を及ぼさない程度であれば、ビス、タッカー等による固定も可能である。樹脂として、例示したエポキシ樹脂を使用すると、熱膨張前に溶融してだれる恐れが少ない。
【0018】
本発明に係る耐火性隔壁構造の好ましい具体的なさらに他の態様としては、前記熱膨張性耐火材料は、例えば600℃の高温で20分間加熱した後の残渣を0.25cm2 の圧子で速度0.1cm/minで圧縮した場合の破断点荷重が0.1kgf/cm2 以上であることを特徴とする。すなわち、加熱後に所要の破断点荷重を有し、火炎や爆風に耐えて室内空間へ火炎や煙が進入するのを防止できるものが好ましい。
【0019】
前記のように構成された本発明の耐火性隔壁構造は、エンジンルーム内で火災が発生しても、室内空間の温度上昇を小さく抑えることができ、熱膨張性耐火材料は加熱後の残渣の形状保持性も良好で、破断点荷重も大きく、配管等の被貫通物貫通する貫通孔周囲が火炎や爆風で突き破られることなく、室内空間の安全を確保することができる。
【0020】
本発明に係るエンジンルームの耐火被覆方法は、自動車等のボディのエンジンルームと室内空間を仕切る板材に、熱膨張性耐火材料を積層することを特徴とする。特に、板材のエンジンルーム側の面に熱膨張性耐火材料を積層すると好適であり、この構成によりエンジンルームで火災が発生したとき、室内空間への延焼を防ぐことができ、室内空間の被害を最小限とすることができる。前記の積層方法としては、板材に、パテ状や塗料状の熱膨張性耐火材料を塗布または付着させる方法、あるいはシート状の熱膨張性耐火材料を、接着剤や粘着剤を介して貼付、またはビスや釘等で留め付ける方法、さらに自着性を有するシート状の熱膨張性耐火材料にて貼付させる方法等が挙げられる。
【0021】
また、本発明に係るエンジンルームの耐火被覆方法の他の態様は、自動車等のボディのエンジンルームと室内空間を仕切り該エンジンルームと室内空間とを連通する貫通孔を有する板材を備え、該貫通孔を配管やワイヤー等の被貫通物が貫通するエンジンルームの耐火被覆方法であって、貫通孔の周辺の板材に、又は該貫通孔に近接する被貫通物に、熱膨張性耐火材料を付設することを特徴とする。前記の付設方法としては、貫通孔の周囲に、前記の積層方法と同様に、パテ状や塗料状の熱膨張性耐火材料を塗布または付着、あるいはシート状やテープ状の熱膨張性耐火材料を貼付や固定する方法が挙げられる。また、シート状あるいはテープ状の熱膨張性耐火材料を、被貫通物に巻き付ける方法が挙げられる。
【0022】
このように構成されたエンジンルームの耐火被覆方法によれば、エンジンルーム内で火災が発生しても、火災による爆風や火炎が貫通孔周囲のパッキング等を突き破るのを防止し、またエンジンルームと室内空間とを連通する貫通孔を通して、火災による火炎や煙が室内空間に進入することを防止でき、しかも熱膨張性耐火材料を付設するだけで被覆が容易に行える。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る耐火性隔壁を自動車のエンジンルームと室内空間との間に設置した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る耐火性隔壁構造を用いた自動車ボディの概略斜視図、図2(a)は図1の要部の断面図、(b)は、(a)の貫通孔部分の要部断面図である。
【0024】
図1〜2において、自動車ボディ1の前部にはエンジン2を収容するエンジンルーム3が形成され、エンジンルーム3と室内空間である車室5との境界部には、耐火性隔壁10が設置されており、この耐火性隔壁によりエンジンルーム3と車室5とが仕切られている。耐火性隔壁10は、ベースとなる板材11と、この板材に積層した熱膨張性耐火材料の耐火シート15とを備える。
【0025】
板材11は上部板材12に連続しているとともに、車室5の床材を構成する下部板材13に連続している。また、板材11の左右端部は、図示していないがフェンダーの内側の板材に連続している。本実施形態では耐火シート15はエンジンルーム3に面する部分に積層しているが、上部板材12や下部板材13に所定の幅だけ連続するように積層してもよい。車室5内には座席6等が設置され、車室5とエンジンルーム3とを連通する1つの貫通孔14には、ステアリング7のシャフト8が貫通している。
【0026】
耐火性隔壁10は、前記のようにエンジンルーム3と車室5とを隔てて仕切る遮蔽板の役割を担っているものであるため、自動車の設計によって、車体の前後どちらにあってもかまわない。ただし、耐火シート15は、耐火性隔壁10の火炎の発生源がある側、すなわちエンジンルーム3側に貼付あるいは留め付け等により積層することが好ましい。本発明において使用される熱膨張性耐火材料には、特に限定はない。シート状材料や、パテあるいは塗料形態の熱膨張性耐火材料のいずれも使用可能である。
【0027】
板材への熱膨張性耐火材料の積層に関しては、板材11に十分な耐火性能を付与できるのであれば特に限定はないが、本実施形態では図2に示すように、耐火性隔壁10を形成する金属板あるいは吸遮音シート等を積層した板材11の一面に、熱膨張性耐火材料の耐火シート15を貼合わせて積層している。また、塗料、パテの形態の熱膨張性耐火材料を塗布あるいは付着してもよく、後述する図4(a)に示す実施形態のように、板材11を貫通する配管20やワイヤー等の被貫通物が貫通する貫通孔14の周辺のみに耐火シート16を設置あるいは塗料、パテを塗布あるいは付着するようにしてもよい。さらには、後述する図4(b)に示す実施形態のように、板材11ではなく、被貫通物であるケーブルあるいは空調等の配管20等に直接、熱膨張性耐火材料の耐火テープ17を巻き付けることも可能である。
【0028】
次のような火災、延焼を想定し、耐火被覆を行うのであれば、耐火性隔壁10を構成する金属板等の板材11の一面に熱膨張性耐火材料の耐火シート15等を積層し、板材11の一面を被覆するのが望ましい。
(1)自動車の衝突により、板材11に本来の貫通孔14以外の亀裂や空隙が生じてしまった場合での火災、
(2)貫通ではない、板材11からの熱伝導による接触可燃物(カーペット等の内装材)の発火、発炎による延焼、
特に、後述する約600℃で20分間加熱後の熱膨張性耐火材料のかさ密度が、0.02〜0.7g/cm3 で、膨張後厚みが2〜60mm程度のものであれば(2)の延焼を防ぐのに十分な断熱性を確保可能である。板材11のエンジンルーム側の全面を耐火シート15で覆うことにより、板材11に亀裂等が生じても火炎の進入を防ぐことができ、断熱により車室5内のものへの延焼を防ぐことができる。
【0029】
板材11への熱膨張性耐火材料の固定方法に関しても特に限定はなく、熱膨張性耐火材料がシート状成形体の耐火シート15であれば接着剤を使用しても、ビス、釘等で固定してもかまわない。また、耐火性隔壁10を構成する板材11への膨張性耐火材料の取付け、設置を容易にするため、熱膨張性耐火材料に接着層を塗布した耐火シート15を使用することも可能である。
【0030】
シート状材料としては、ケミー・リンツ社の「インツメックス」、3M社の「ファイヤー・バリヤー」、三井金属塗料社製「メジヒカット」等が挙げられる。さらに、熱膨張性耐火材料の好ましい例としては、請求項4,5に記載のように熱可塑性樹脂及び/又はゴムに、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなることを特徴とするシートや、エポキシ樹脂にリン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなることを特徴とするシートが挙げられる。
【0031】
前記のゴム成分としてば、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−プタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等が挙げられる。これらのゴム成分は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。また、前記のゴム成分には、樹脂組成物の耐火性を妨げない範囲で変性、架橋等が施されても良い。変性、架橋の方法は特に限定されず、公知の方法により行われる。
【0032】
前記ゴム成分を使用する場合には、隔壁の板材11との積層あるいは、部分的な設置を容易にするために、粘着性を付与することが好ましい。粘着性を付与する方法としては特に制限はないが、例えば、ブチルゴムのゴム成分にポリブテン等の液状樹脂や石油樹脂等の粘着付与剤を樹脂組成分に対し1〜20重量部、配合する方法が挙げられる。
【0033】
前記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0034】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンを主成分とする共重合体、これらの混合物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチレンアクリレート共重合体等が挙げられる。前記エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレン部を主成分とするエチレン−αオレフィン共重合体等が挙げられ、前記α−オレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0035】
これらのエチレン及びエチレンとエチレン以外のαオレフィンは、チーグラー・ナッタ触媒、バナジウム触媒、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を重合触媒として用い重合される。特に、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を重合触媒として重合されてなるポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0036】
前記4価の遷移金属を含むメタロセン化合物を重合触媒として用い、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンの共重合体を得る重合反応において、前記4価の遷移金属は、特に限定されず、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニッケル、パラジウム、白金等が挙げられる。前記メタロセン化合物は、前記の4価の遷移金属に1つ又はそれ以上のシクロペンタジエニル環及びその類縁体がリガンドとして1つ又はそれ以上存在する化合物をいう。
【0037】
前記メタロセン化合物を重合触媒とする重合反応によって得られたポリエチレン系樹脂は、例えば、デュポンダウ社製、商品名「CGCT」、エクソンモービルケミカル社製、商品名「EXACT」等の市販品も利用できる。前記熱可塑性樹脂は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
さらに前記熱可塑性樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性して用いてもよい。この場合、予め架橋、変性した樹脂を用いてもよく、本発明のリン化合物、無機充填剤、その他添加剤等を配合する際に同時に架橋、変性してもよいし、あるいは樹脂に前記成分を配合した後に架橋、変性してもよい。前記樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、熱可塑性樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋等が挙げられる。
【0039】
前記リン化合物としては特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。なかでも、ポリリン酸アンモニウム類;以下に示す化学式(1)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化1】
【0041】
式中、R1、R3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0042】
前記赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好ましい。前記ポリリン酸アンモニウム類としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取扱性等の点から、ポリリン酸アンモニウムが好ましい。市販品としては、ヘキスト社製「AP422」、「AP462」、住友化学工業社製「スミセーフP」が挙げられる。
【0043】
前記化学式(1)で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。前記リン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明で用いられる熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0045】
本発明では前記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和する。前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。前記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。このように中和処理した熱膨張性黒鉛の具体例としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」等が挙げられる。
【0046】
本発明で用いられる中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュのものが好ましい。粒度が200メッシュより細かいと、黒鉛の膨張度が小さく、望む耐火断熱層が得られず、粒度が20メッシュより大きいと、膨潤度が大きいという点では効果があるが、樹脂と混練する際、分散性が悪く物性の低下が避けられない。
【0047】
本発明で用いられる無機充填剤としては特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
前記無機充填剤のなかでも、含水無機物は、加熱時に脱水し、吸熱する性質を有するため、耐熱性を高めるうえで有利である。具体的には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、周期律表II族又はIII 族に属する金属の金属塩又は酸化物は、燃焼時に発泡して発泡焼成物を形成する性質を有するため、形状保持性を高めるうえで好ましい。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0049】
前記のパテ材料、耐火塗料としては、例えば、エスケー化研社製「SKタイカコート」、日本ペイント社製「タイカリット」、古河電工社製「ダンシールC」等が挙げられる。これらのパテ材料、耐火塗料は、エンジンルームと室内空間を連通する板材11に形成された貫通孔14の周辺の板材に、あるいは貫通孔14に近接して配管等に付設される。
【0050】
火災時に貫通部を閉塞する材料の場合、多くの膨張材料では膨張性能は十分でも膨張後の残渣のまとまり、強度が不足するため、熱風等の風圧で吹き飛んでしまい、本来の性能を発揮できない場合がある。特に自動車の火災は、ガソリン等の着火源が存在するため燃焼時の発熱と風圧が高くなる可能性が高い。そのため、より好ましくは、例えば600℃に昇温した電気炉にて20分間加熱した後の残渣を0.25cm2 の圧子で速度0.1cm/minで圧縮した場合の破断点荷重が0.1kgf/cm2 以上である熱膨張性耐火材料を使用することが望ましい。
【0051】
このような性状の熱膨張性耐火材料としては、例えば、
(1)ゴム及び/又は熱可塑性樹脂に、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、ゴムあるいは熱可塑性樹脂100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20〜200重量部、無機充填剤が50〜500重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛:リン化合物の重量比が、9:1〜1:100である樹脂組成物から成るシート状成形体や、
(2)エポキシ樹脂に、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、エポキシ樹脂100重量部に対して、リン化合物30〜150重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛15〜150重量部、及び無機充填剤が30〜500重量部である樹脂組成物から成るシート状成形体等が挙げられる。
【0052】
熱膨張性耐火材料の残渣保持性能を強化するために、アルミ箔、ステンレス箔等の金属箔やアルミガラスクロス基材等の不燃基材、ガラスウール、セラミックウール、ロックウール等から成るクロス、不織布、ポリラミ不織布、ガラスクロス、等を積層あるいは含浸してもかまわない。
【0053】
請求項3で示したように、比重1.5〜7で遮音性を有する熱膨張性材料を使用すれば、耐火性隔壁の板材11に耐火性かつ遮音制振性も付与することが可能となる。望ましくは、比重1.6〜6である。比重1.5未満であれば、遮音制振性が不十分であり、比重7以上であれば施工が困難となる。
【0054】
望ましい遮音制振性とは、長さ600mm角、厚さ4mmの試験片上に0.4mmの鉄板を積層し、上部に450mm角の孔のあいた1000mm角の木製防音箱の孔を塞ぐように設置し、試験片上部で音を鳴らしたときの箱内部への音を集音し、鉄板単独での評価値を基準に算出した音圧減少レベルの最高値が5dB以上である。
【0055】
遮音性を有し、比重1.5〜7である熱膨張性耐火材料であれば、特に限定はないが、例えば熱膨張性無機物と真比重3.0以上の無機充填材とを含有する樹脂組成物が挙げられる。真比重3.0以上の無機充填材としては、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム及びマイカ等の無機塩、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び酸化アンチモン等の金属酸化物、鉄、鉛、亜鉛等の金属粉等が挙げられる。2種以上を併用してもかまわない。熱膨張性無機物としては、熱膨張性黒鉛、バーミキュライト、ホウ砂等が挙げられる。
【0056】
以上、本文中に例示した組成物あるいはその他の熱膨張性耐火材料はシート化する際の製造方法に限定はない。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等の混練方法により樹脂組成物を得ることが可能である。さらにプレス成型、カレンダー成型、押出成型、ロール成型等、従来公知の方法によりシート化することができる。
【0057】
前記の如く構成された本実施形態の耐火性隔壁の動作について以下に説明する。エンジンルーム3内で火災が発生すると、その熱により熱膨張性耐火材料の耐火シート15が膨張する。この膨張倍率は、それを構成する樹脂組成物、リン化合物、無機充填材等の配合により異なるが、1.1〜50倍程度に設定される。この膨張により板材11のエンジンルーム側の面に断熱層が形成され、板材自体を保護するとともに火災の熱が車室5側に伝達されるのを防止する。
【0058】
また、この膨張により耐火性隔壁10とボディ1等の取付部材との間に隙間があっても塞ぐことができるため、火災の火炎や煙が車室5内に進入するのを防止できる。さらに、エンジンルーム3と車室5とを連通するワイヤーや配管20等の被貫通物がある場合、配管20が貫通する貫通孔14の周囲には間隙ができるが、この間隙は熱膨張性耐火材料の膨張により塞がれ、火炎や煙等が車室5に進入することを防止できる。
【0059】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。図3に示した配合で樹脂と各種充填剤をロール混練し、実施例1〜3、比較例1〜2に記載の5つの樹脂組成物を得た。次いで樹脂組成物が樹脂成分としてゴム成分を使用している場合には、100℃で3分間プレス成型して耐火性評価に用いる試験片を作製した。また、前記樹脂組成物の樹脂成分がエポキシ樹脂の場合は、樹脂組成物を150℃で30分間プレス成型して硬化させ、以下に使用する試験片を作成した。
【0060】
(1)貫通孔閉塞性評価
長さ15cm×巾30cm、2.5mm厚の炭素鋼に長さ15cm×巾30cmで表1に示した厚みと被覆方法で熱膨張性耐火材料を貼り合わせた。さらにこの積層体に0.3cm、0.75cm、1cm、1.5cm、2cm直径の5種類の貫通孔をあけた。サンプルを熱膨張性耐火材料を下にして水平に置き、下側から、プロパンガスを燃料とした50kWの火炎バーナーで30分間加熱を行った。サンプルの下面でバーナー表面との距離は30cmに設定した。熱膨張性耐火材料は火源側、すなわちエンジンルーム側に配置される。この条件で加熱することにより、エンジンルーム側からの火災を想定した。
【0061】
この貫通孔中央の炭素鋼から1mm離れた位置に熱電対を設置し、炎の貫通による温度上昇があるかないかを確認した。各々の孔に対して、貫通による温度上昇が確認されたものを×と評価し、貫通が見られなかったものを○と評価した。なお、炭素鋼は厚さが1mm以下のものでもよいが、評価のために厚い材料を使用した。
【0062】
(2)断熱性評価
長さ15cm×巾30cm、2.5mm厚の炭素鋼に長さ15cm×巾30cmで表1に示した厚みと被覆方法で熱膨張性耐火材料を貼り合わせた。さらに、この積層体に5点の熱電対を設置した。このサンプルを、熱膨張性耐火材料を下にして水平に置き、下側から、プロパンガスを燃料とした50kWの火炎バーナーで30分間加熱を行った。サンプルの下面でバーナー表面との距離は30cmに設定した。そして、炭素鋼のみを同じ加熱条件で加熱した場合の30分後の5点の温度平均Tbと、熱膨張性耐火材料で被覆した積層材との温度平均Teとの差Δ=Tb−Teが150℃以上あるものを○とし、150℃未満のものを×とした。
【0063】
(3)残渣の形状保持性評価
長さ10cm×巾10cmの試験片を内寸が長さ10cm×巾10cmである高さ8cmの箱枠に入れて、約600℃に昇温した電気炉にて20分間加熱した。取り出し後の残渣を0.25cm2 の圧子で速度0.1cm/minで圧縮した場合に現れる変位−荷重曲線上の最大点を残渣の破断点荷重(kgf/cm2 )とし、残渣のかたさ、あるいはまとまりの指標として評価を行った。0.1kgf/cm2 以上であるものを○とし、0.1kgf/cm2 未満のものを×とした。
【0064】
この評価は、熱膨張性耐火材料を加熱膨張させた後の残渣の強度を測定して形状保持性を評価するものであり、JIS等で既定されている各種の圧縮特性や曲げ特性の試験では適切な評価が難しく、前記の所定の高温で所定時間加熱し残渣を圧子で圧縮する試験では残渣のくずれやひび割れが発生せず、適切な評価が可能となった。なお、加熱温度は600℃に限られるものでなく、熱膨張性耐火材料が膨張する温度であればよく、加熱時間も熱膨張性耐火材料が確実に膨張し、焼失してしまわない程度の時間であればよい。
【0065】
圧子の面積を0.25cm2 としたのは、以下の理由による。すなわち、0.25cm2 より大きくなると残渣は破断せず、大きく圧縮されるため求める破断点荷重を測定できず、残渣の強度を適切に判断できなかった。また、0.25cm2 より小さいと残渣の破断点荷重を測定はできるが、残渣性状のばらつきを拾ってしまいデータ精度が悪くなった。0.25cm2 程度の圧子であれば、残渣の破断点荷重を感度良く拾い、かつ面積内で平均化されるためデータ精度も十分であった。圧縮速度に関しては、評価試験で圧縮速度を変化させて測定した結果、0.1cm/minより速いと残渣の破断点を検知しにくいため、前記の圧縮速度が残渣の破断点強度を精度良く測定できる最速の速度であった。
【0066】
残渣の形状保持性評価に関して、以下のように考えることができる。すなわち、熱によって膨張あるいは発泡する材料の多くは、次の物質を含有している。第1として、熱膨張性無機物がある。この物質は熱によって層間に担持された物質が体積膨張する、あるいは放出されることにより層間が開くという性質を有する。また、第2として化学発泡剤がある。この物質は熱により化学反応が生じ、気体を放出するという性質を有する。
【0067】
これらの物質の熱膨張あるいは化学発泡の開始温度は、バインダーとして樹脂を使用する場合には、樹脂の溶融粘度と各々の作用を開始する温度の組み合わせによって変化する。そして、材料が膨張する倍率は加熱温度によって変化することがある。ただし、通常使用されるバインダーとしての樹脂の熱分解温度、熱膨張開始温度、発泡開始温度を充分に上回る温度であれば、膨張倍率の温度依存性は小さくなる。
【0068】
前記の内容をふまえ、熱膨張性耐火材料の膨張倍率、かさ密度、形状保持性等を評価するに際しては安全かつ簡便に評価できるように加熱温度を600℃に設定した。加熱温度600℃、加熱時間20分間の時間設定は、実施例に示した大きさのサンプルが完全燃焼する最低時間として設定したが、10分以上2時間までは性能に変化がないことは確認済である。
【0069】
本実施形態で採用した評価方法は、種々の条件で発生する実際のエンジンルームでの火災と比較すると緩やかな加熱条件である可能性もあり、緩やかな場合は燃焼残渣のかさ密度が若干大きくなる傾向がある。しかし、この評価後の燃焼残渣が好適な形状保持性を有するものであれば、実際の火災の場合でも合格となる可能性は大きくなる。逆に、この評価後に良好な物性を示さない材料であれば、実際の火災の場合でも不合格となる可能性は高い。
【0070】
(4)膨張後の厚み
長さ10cm×巾10cmの試験片を内寸が長さ10cm×巾10cmである高さ8cmの箱枠に入れて600℃に昇温した電気炉にて20分間加熱した後の残渣の厚みをノギスにて測定し、膨張後の厚みとした。膨張後の厚みは、10mm程度以上あれば隙間や配管等との隙間を塞ぐのに好ましい。
【0071】
(5)膨張後のかさ密度
長さ10cm×巾10cmの試験片を内寸が長さ10cm×巾10cmである高さ8cmの箱枠に入れて約600℃に昇温した電気炉にて20分間加熱した。取り出し後の残渣の重量を計測し、下記の計算式に基づいて膨張後のかさ密度を算出した。
膨張後のかさ密度=(膨張後の残渣重量)/(断面積×膨張後の厚み)
膨張後のかさ密度は、0.02〜0.7g/cm3 が好適であり、この値が0.02未満になると、圧縮により破断しやすくなり好ましくなく、0.7を超えると断熱性が悪くなり好ましくない。
【0072】
(6)遮音制振性能評価
長さ600mm角、厚さ4mmの試験片上に0.4mmの鉄板を積層し、上部に450mm角の孔のあいた1000mm角の木製防音箱の孔を塞ぐように設置し、試験片上部で音を鳴らしたときの箱内部への音を集音し、鉄板単独での評価値を基準に算出した音圧減少レベルを計測した。音圧減少レベルの最高値が5dB以上のものを○とし、5dB未満のものを×とした。なお、音圧減少レベルは5dBを基準としたが、この数値に限られるものでない。
【0073】
本発明の他の実施形態を図4に基づき詳細に説明する。図4(a),(b)はそれぞれ本発明に係る耐火性隔壁構造の他の実施形態の断面図である。なお、この実施形態は前記した実施形態のように熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15を板材11の全面に積層するのに対し、熱膨張性耐火材料を板材11の貫通孔14の周囲に留め付けあるいは貼り付けにて積層する例と、被貫通物に巻き付けて付着する例を示している。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
図4(a)において、耐火性隔壁10は金属製の板材11と、この板材を貫通しエンジンルーム3と車室5とを連通する貫通孔14の周囲に、熱膨張性耐火材料の耐火シート16を積層している。貫通孔14は円形であり、耐火シート16は貫通孔14の直径より1.5倍程度大きい外径で形成されている。すなわち、貫通孔の直径が20mm程度の場合、耐火シート16の直径は30mm程度が好ましい。貫通孔14の直径は配管20やワイヤー等の被貫通物の直径より僅かに大きい直径で穿設され、貫通孔14と配管20との間には数mm程度の間隙が形成されている。貫通孔14と配管20との間には、隙間を塞ぐためのゴム製のグロメットやパッキング(図示せず)等が介在されているが、耐火シート16はパッキング等を覆うように積層することが好ましい。
【0075】
この実施形態においても、エンジンルーム3内で火災が発生すると熱膨張性耐火材料からなる耐火シート16は火災の熱で膨張し、配管20と貫通孔14との間隙を塞ぐとともに断熱し、火炎が貫通孔14から車室5内に到達せず、高熱が車室5内に伝達されない。また、被貫通物がワイヤー等である場合、燃焼により焼失しても、その間隙は熱膨張性耐火材料の耐火シート16により塞がれ、火炎、煙や熱が車室5に進入することが防止される。
【0076】
また図4(b)において、耐火性隔壁構造は、エンジンルーム3と室内空間である車室5とを連通する貫通孔14を有するベースとなる金属製の板材11と、被貫通物である配管20の貫通孔14に近接して巻き付けた熱膨張性耐火材料の耐火テープ17とを備えている。耐火テープ17を構成する熱膨張性耐火材料は、前記の実施形態と同様の材料で構成され、例えば厚さが数mmで幅が数cmに切断されたテープ状に形成され、配管等に巻き付けやすい形状となっている。そして、一方の面に粘着性が付与されていると好ましい。
【0077】
この実施形態においても、前記した図4(a)の実施形態と同様の効果を奏し、エンジンルーム3で発生した火炎が車室5内に到達せず、高熱が車室5内に伝達されず、ワイヤー等の被貫通物が燃焼により焼失しても、その間隙は熱膨張性耐火材料により塞がれ、火炎、煙や熱が車室5に進入しないため、車室内の人的、物的な被害を最小限とすることができる。
【0078】
本発明に係るエンジンルーム構造は、前記した耐火性隔壁構造を、エンジンルーム3と車室5との間に設置している。すなわち、図2に示すように、ベースとなる金属製板材11のエンジンルーム側の面に熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15を積層している。また、図4(a)に示すように、金属製板材11の貫通孔14の周囲に熱膨張性耐火材料からなる耐火シート16を貼り付けて付設している。さらに、図4(b)に示すように、貫通孔14に近接して被貫通物である配管20やワイヤーに膨張性耐火材料からなる耐火テープ17を巻き付けて付設している。
【0079】
このように構成したエンジンルーム構造によれば、エンジンルーム3内で火災が発生しても、熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15,16及び耐火テープ17が膨張することによって火災の熱が車室5に伝達されるのを防止し、車室5内が延焼するのを回避できる。また、火災の火炎や煙が車室5内に進入するのを防止でき、被害を最小限とすることができる。
【0080】
本発明に係るエンジンルームの耐火被覆方法は、前記の各実施形態で用いた熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15,16、耐火テープ17を、エンジンルーム3と車室5とを仕切る板材11に積層すること、あるいは板材11の貫通孔14を貫通する配管20等の被貫通物の周囲に設置又は巻き付けることで被覆できる。このため、自動車のボディ1等の製造時に被覆できると共に、すでに製造されたボディ1に熱膨張性耐火材料を後付けで被覆することもでき、自動車等の火災の被害を最小限とすることができる。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、エンジンが車室の下に配置される自動車においては、隔壁はエンジンルームの上部に配置され、車室等の室内空間とエンジンルームは上下に仕切られる。
【0082】
本発明の耐火性隔壁構造は自動車に限られるものでなく、例えば船舶のエンジンルームと車室(乗務員室)との間に設置するものでもよい。また、本発明は、バス、鉄道等の車両のように、エンジンルームと客室との間に設置されるものを含む。隔壁のベースとなる板材は金属製の板材に限られるものでなく、合成樹脂製のものやカーボンファイバ等で補強された合成樹脂製等、適宜のものを用いることができる。さらに、耐火性隔壁の室内空間側にフェルト等の遮音材を積層してもよいことは勿論である。
【0083】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明の耐火性隔壁構造と、これを用いたエンジンルーム構造は、火災が生じる前には、軽量でかつ自動車等のエンジンルームという限られた空間の体積を占める割合を最大限に抑えることも可能であり、自動車等の本来の性能を損なうことなく耐火性を格段に向上させることができ、火災による被害を最小限とすることができる。
【0084】
また、本発明のエンジンルームの耐火被覆方法は、ベースとなる板材に熱膨張性耐火材料を積層、あるいは付着するという容易な操作でエンジンルームの耐火性を向上させることができ、エンジンルームから出火したときの室内空間の人的、物的な被害を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る耐火性隔壁構造を用いた自動車ボディの一実施形態を示す概略斜視図。
【図2】(a)は図1のエンジンルームと車室部分との要部断面図、(b)は(a)の貫通孔部分の要部断面図。
【図3】本発明の実施例と比較例との樹脂組成物の配合と、耐火実験結果を示す表図。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ本発明に係る耐火性隔壁構造の他の実施形態の要部断面図。
【符号の説明】
1 自動車ボディ、 3 エンジンルーム、
5 車室(室内空間)、
8 ステアリングシャフト(被貫通物)、
10 耐火性隔壁、 11 板材、
14 貫通孔、
15,16 耐火シート(熱膨張性耐火材料)、
17 耐火テープ(熱膨張性耐火材料)、
20 配管(被貫通物)
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等のエンジンルームと室内空間を仕切る隔壁に係り、特に、耐火性に優れた隔壁構造と、エンジンルームの耐火被覆方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車、鉄道車両等の車両の分野においては、車両火災における被害を最小限に止めるために、内装材の難燃化が義務づけられている。しかしながら、これらの難燃材料、特に自動車においては車室内からのライターやマッチ等の小さな火源に対しては効果的だが、大きな火源に対しては効果が小さいと言われている。実際の出火原因としては放火につづいて、電気系、排気系、燃料系の構造に起因するものが多いと報告されている。
【0003】
また、自動車等のエンジンルームと車室を隔てる隔壁用吸音性防音材は、エンジンルームからの振動や音を低減するために、ポリプロピレン・ベース又はポリアミド・ベース又はポリウレタン・ベースの重質層が、外側に向いた各面に表皮又はフィルム被覆を備えた発泡材層を具備し、この防音材が自立性かつ熱形状安定性であり、隔壁の至近に配設されるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、自動車などの吸遮音材に好適な吸遮音構造体は、音源側から第1パネル層、吸音材層、第1空気層および第2パネル層の順に配列された少なくとも4層からなり、吸音材層が通気性を備えているものである(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−164643号公報(図1)
【特許文献2】
特開2002−73036号公報(図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記のような電気系、排気系、燃料系の構造に起因する火災のほとんどはエンジンルームにおいて発生するもので、ラジエーターの溶損等によって開口部が拡張されると急速に延焼拡大し、車室に火源が移ると恐ろしい速度で燃え広がり、難燃材料が効を奏さない場合が多かった。
【0007】
また、特許文献1に記載の隔壁用吸音性防音材、特許文献2に記載の吸遮音構造体は、いずれもオレフィン等の樹脂製のため、耐火性は不十分であった。そこで、このようなエンジンルームからの出火から、人的、物的な被害を最小限に止めるためには、より効果的な方法が必要とされていた。
【0008】
さらに、車両における火災のうち、エンジンルームが火の発生源となる場合は、火災における風圧が大きく、隔壁に耐火性を付与するために使用する耐火材料の中でも加熱後、燃焼後に形状を保持できなかったり、加熱後の強度が極端に低下するものなどは燃え抜けてしまい、充分な効果を発揮できないという問題点もあった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、エンジンルームの火災の室内空間への延焼を止めるための、エンジンルームと室内空間を仕切る耐火性隔壁構造を提供することにある。また、火災による風圧が大きい場合でも形状保持が可能で燃え抜けることなく、防火性能を発揮できる耐火性隔壁構造を提供することにある。さらに、エンジンルームと室内空間を仕切る隔壁を耐火性にするエンジンルームの耐火被覆方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成すべく、本発明に係る耐火性隔壁構造は、自動車等のボディのエンジンルームと室内空間とを仕切る耐火性隔壁を備える構造であり、耐火性隔壁は板材と、この板材に積層した熱膨張性耐火材料とを備えることを特徴とする。板材としては、炭素鋼板やアルミニウム板等の金属板材が好ましく、また吸遮音シート等が積層した板材であってもよい。熱膨張性耐火材料はエンジンルーム側に積層することが好ましい。板材と熱膨張性耐火材料とを備える耐火性隔壁は、自動車等のボディに固定され、エンジンルームと室内空間とを構成する。
【0011】
前記のごとく構成された本発明の耐火性隔壁構造は、エンジンルームで火災が発生すると、板材に積層した熱膨張性耐火材料が膨張して断熱し、火災による熱が室内空間に到達するのを防止し、室内空間の温度が上昇するのを防止する。これにより、室内空間のダッシュボードや他の機器が延焼するのを防止でき、室内空間の人的、物的な被害を最小限に止めることができる。また、耐熱性隔壁や、その取付部分に微細な隙間等があっても、熱膨張性耐火材料が膨張して塞ぐため、火炎や煙等が室内空間に進入することを防止できる。前記の熱膨張性耐火材料としては、耐火性を満足する材料であれば、特に形態は限定されないが、例えばパテまたは塗料形態の材料、あるいはシート状の成形材料が挙げられる。
【0012】
本発明に係る耐火性隔壁構造の他の態様としては、自動車等のボディのエンジンルームと室内空間とを仕切り該エンジンルームと室内空間とを連通する貫通孔を有する板材を備え、該貫通孔を配管やワイヤー等の被貫通物が貫通するものであり、貫通孔の周辺の板材に、又は被貫通物の該貫通孔に近接して被貫通物に、熱膨張性耐火材料を付設したことを特徴とする。前記の熱膨張性耐火材料としては、耐火性を満足する材料であれば、特に形態は限定されないが、例えばパテまたは塗料形態の材料、あるいはシート状やテープ状の成形材料が挙げられる。
【0013】
このように構成された本発明の耐火性隔壁構造は、エンジンルームで火災が発生すると、熱膨張性耐火材料が膨張して被貫通物と貫通孔との隙間を塞ぎ、火災による熱が貫通孔から室内空間に到達するのを防止し、室内空間の温度が上昇するのを防止し、室内空間のダッシュボードや他の機器が延焼するのを防止でき、室内空間の人的、物的な被害を最小限に止めることができる。
【0014】
また、本発明に係る耐火性隔壁構造の好ましい具体的な態様としては、前記熱膨張性耐火材料は、比重1.5〜7の範囲のもので遮音性を有することを特徴としている。遮音性は熱膨張性耐火材料がある場合と、ない場合とで室内空間側に到達する音圧レベルを測定して判断することができ、例えば音圧レベルが5dB減少した場合を遮音性があると判断する。この構成によれば、エンジンルームと室内空間を仕切る隔壁は、耐火性を有するとともに、遮音性を有するものとなり、室内空間の安全と快適性を確保できる。
【0015】
さらに、本発明に係る耐火性隔壁構造の好ましい具体的な他の態様としては、前記熱膨張性耐火材料は、熱可塑性樹脂及び/又はゴムに、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、ゴム及び/又は熱可塑性樹脂100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20〜200重量部、無機充填剤が50〜500重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が9:1〜1:100の範囲である樹脂組成物から成ることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る耐火性隔壁構造の好ましい具体的なさらに他の態様としては、前記熱膨張性耐火材料は、エポキシ樹脂に、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、エポキシ樹脂100重量部に対して、リン化合物30〜150重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛15〜150重量部、及び無機充填剤が30〜500重量部である樹脂組成物から成ることを特徴とする。
【0017】
前記のように構成された樹脂組成物から成るシートを使用した場合、接着剤等による固定も可能であり、耐火性に影響を及ぼさない程度であれば、ビス、タッカー等による固定も可能である。樹脂として、例示したエポキシ樹脂を使用すると、熱膨張前に溶融してだれる恐れが少ない。
【0018】
本発明に係る耐火性隔壁構造の好ましい具体的なさらに他の態様としては、前記熱膨張性耐火材料は、例えば600℃の高温で20分間加熱した後の残渣を0.25cm2 の圧子で速度0.1cm/minで圧縮した場合の破断点荷重が0.1kgf/cm2 以上であることを特徴とする。すなわち、加熱後に所要の破断点荷重を有し、火炎や爆風に耐えて室内空間へ火炎や煙が進入するのを防止できるものが好ましい。
【0019】
前記のように構成された本発明の耐火性隔壁構造は、エンジンルーム内で火災が発生しても、室内空間の温度上昇を小さく抑えることができ、熱膨張性耐火材料は加熱後の残渣の形状保持性も良好で、破断点荷重も大きく、配管等の被貫通物貫通する貫通孔周囲が火炎や爆風で突き破られることなく、室内空間の安全を確保することができる。
【0020】
本発明に係るエンジンルームの耐火被覆方法は、自動車等のボディのエンジンルームと室内空間を仕切る板材に、熱膨張性耐火材料を積層することを特徴とする。特に、板材のエンジンルーム側の面に熱膨張性耐火材料を積層すると好適であり、この構成によりエンジンルームで火災が発生したとき、室内空間への延焼を防ぐことができ、室内空間の被害を最小限とすることができる。前記の積層方法としては、板材に、パテ状や塗料状の熱膨張性耐火材料を塗布または付着させる方法、あるいはシート状の熱膨張性耐火材料を、接着剤や粘着剤を介して貼付、またはビスや釘等で留め付ける方法、さらに自着性を有するシート状の熱膨張性耐火材料にて貼付させる方法等が挙げられる。
【0021】
また、本発明に係るエンジンルームの耐火被覆方法の他の態様は、自動車等のボディのエンジンルームと室内空間を仕切り該エンジンルームと室内空間とを連通する貫通孔を有する板材を備え、該貫通孔を配管やワイヤー等の被貫通物が貫通するエンジンルームの耐火被覆方法であって、貫通孔の周辺の板材に、又は該貫通孔に近接する被貫通物に、熱膨張性耐火材料を付設することを特徴とする。前記の付設方法としては、貫通孔の周囲に、前記の積層方法と同様に、パテ状や塗料状の熱膨張性耐火材料を塗布または付着、あるいはシート状やテープ状の熱膨張性耐火材料を貼付や固定する方法が挙げられる。また、シート状あるいはテープ状の熱膨張性耐火材料を、被貫通物に巻き付ける方法が挙げられる。
【0022】
このように構成されたエンジンルームの耐火被覆方法によれば、エンジンルーム内で火災が発生しても、火災による爆風や火炎が貫通孔周囲のパッキング等を突き破るのを防止し、またエンジンルームと室内空間とを連通する貫通孔を通して、火災による火炎や煙が室内空間に進入することを防止でき、しかも熱膨張性耐火材料を付設するだけで被覆が容易に行える。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る耐火性隔壁を自動車のエンジンルームと室内空間との間に設置した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る耐火性隔壁構造を用いた自動車ボディの概略斜視図、図2(a)は図1の要部の断面図、(b)は、(a)の貫通孔部分の要部断面図である。
【0024】
図1〜2において、自動車ボディ1の前部にはエンジン2を収容するエンジンルーム3が形成され、エンジンルーム3と室内空間である車室5との境界部には、耐火性隔壁10が設置されており、この耐火性隔壁によりエンジンルーム3と車室5とが仕切られている。耐火性隔壁10は、ベースとなる板材11と、この板材に積層した熱膨張性耐火材料の耐火シート15とを備える。
【0025】
板材11は上部板材12に連続しているとともに、車室5の床材を構成する下部板材13に連続している。また、板材11の左右端部は、図示していないがフェンダーの内側の板材に連続している。本実施形態では耐火シート15はエンジンルーム3に面する部分に積層しているが、上部板材12や下部板材13に所定の幅だけ連続するように積層してもよい。車室5内には座席6等が設置され、車室5とエンジンルーム3とを連通する1つの貫通孔14には、ステアリング7のシャフト8が貫通している。
【0026】
耐火性隔壁10は、前記のようにエンジンルーム3と車室5とを隔てて仕切る遮蔽板の役割を担っているものであるため、自動車の設計によって、車体の前後どちらにあってもかまわない。ただし、耐火シート15は、耐火性隔壁10の火炎の発生源がある側、すなわちエンジンルーム3側に貼付あるいは留め付け等により積層することが好ましい。本発明において使用される熱膨張性耐火材料には、特に限定はない。シート状材料や、パテあるいは塗料形態の熱膨張性耐火材料のいずれも使用可能である。
【0027】
板材への熱膨張性耐火材料の積層に関しては、板材11に十分な耐火性能を付与できるのであれば特に限定はないが、本実施形態では図2に示すように、耐火性隔壁10を形成する金属板あるいは吸遮音シート等を積層した板材11の一面に、熱膨張性耐火材料の耐火シート15を貼合わせて積層している。また、塗料、パテの形態の熱膨張性耐火材料を塗布あるいは付着してもよく、後述する図4(a)に示す実施形態のように、板材11を貫通する配管20やワイヤー等の被貫通物が貫通する貫通孔14の周辺のみに耐火シート16を設置あるいは塗料、パテを塗布あるいは付着するようにしてもよい。さらには、後述する図4(b)に示す実施形態のように、板材11ではなく、被貫通物であるケーブルあるいは空調等の配管20等に直接、熱膨張性耐火材料の耐火テープ17を巻き付けることも可能である。
【0028】
次のような火災、延焼を想定し、耐火被覆を行うのであれば、耐火性隔壁10を構成する金属板等の板材11の一面に熱膨張性耐火材料の耐火シート15等を積層し、板材11の一面を被覆するのが望ましい。
(1)自動車の衝突により、板材11に本来の貫通孔14以外の亀裂や空隙が生じてしまった場合での火災、
(2)貫通ではない、板材11からの熱伝導による接触可燃物(カーペット等の内装材)の発火、発炎による延焼、
特に、後述する約600℃で20分間加熱後の熱膨張性耐火材料のかさ密度が、0.02〜0.7g/cm3 で、膨張後厚みが2〜60mm程度のものであれば(2)の延焼を防ぐのに十分な断熱性を確保可能である。板材11のエンジンルーム側の全面を耐火シート15で覆うことにより、板材11に亀裂等が生じても火炎の進入を防ぐことができ、断熱により車室5内のものへの延焼を防ぐことができる。
【0029】
板材11への熱膨張性耐火材料の固定方法に関しても特に限定はなく、熱膨張性耐火材料がシート状成形体の耐火シート15であれば接着剤を使用しても、ビス、釘等で固定してもかまわない。また、耐火性隔壁10を構成する板材11への膨張性耐火材料の取付け、設置を容易にするため、熱膨張性耐火材料に接着層を塗布した耐火シート15を使用することも可能である。
【0030】
シート状材料としては、ケミー・リンツ社の「インツメックス」、3M社の「ファイヤー・バリヤー」、三井金属塗料社製「メジヒカット」等が挙げられる。さらに、熱膨張性耐火材料の好ましい例としては、請求項4,5に記載のように熱可塑性樹脂及び/又はゴムに、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなることを特徴とするシートや、エポキシ樹脂にリン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなることを特徴とするシートが挙げられる。
【0031】
前記のゴム成分としてば、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−プタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等が挙げられる。これらのゴム成分は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。また、前記のゴム成分には、樹脂組成物の耐火性を妨げない範囲で変性、架橋等が施されても良い。変性、架橋の方法は特に限定されず、公知の方法により行われる。
【0032】
前記ゴム成分を使用する場合には、隔壁の板材11との積層あるいは、部分的な設置を容易にするために、粘着性を付与することが好ましい。粘着性を付与する方法としては特に制限はないが、例えば、ブチルゴムのゴム成分にポリブテン等の液状樹脂や石油樹脂等の粘着付与剤を樹脂組成分に対し1〜20重量部、配合する方法が挙げられる。
【0033】
前記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0034】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンを主成分とする共重合体、これらの混合物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチレンアクリレート共重合体等が挙げられる。前記エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレン部を主成分とするエチレン−αオレフィン共重合体等が挙げられ、前記α−オレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0035】
これらのエチレン及びエチレンとエチレン以外のαオレフィンは、チーグラー・ナッタ触媒、バナジウム触媒、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を重合触媒として用い重合される。特に、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を重合触媒として重合されてなるポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0036】
前記4価の遷移金属を含むメタロセン化合物を重合触媒として用い、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンの共重合体を得る重合反応において、前記4価の遷移金属は、特に限定されず、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニッケル、パラジウム、白金等が挙げられる。前記メタロセン化合物は、前記の4価の遷移金属に1つ又はそれ以上のシクロペンタジエニル環及びその類縁体がリガンドとして1つ又はそれ以上存在する化合物をいう。
【0037】
前記メタロセン化合物を重合触媒とする重合反応によって得られたポリエチレン系樹脂は、例えば、デュポンダウ社製、商品名「CGCT」、エクソンモービルケミカル社製、商品名「EXACT」等の市販品も利用できる。前記熱可塑性樹脂は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
さらに前記熱可塑性樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性して用いてもよい。この場合、予め架橋、変性した樹脂を用いてもよく、本発明のリン化合物、無機充填剤、その他添加剤等を配合する際に同時に架橋、変性してもよいし、あるいは樹脂に前記成分を配合した後に架橋、変性してもよい。前記樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、熱可塑性樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋等が挙げられる。
【0039】
前記リン化合物としては特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。なかでも、ポリリン酸アンモニウム類;以下に示す化学式(1)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化1】
【0041】
式中、R1、R3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0042】
前記赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好ましい。前記ポリリン酸アンモニウム類としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取扱性等の点から、ポリリン酸アンモニウムが好ましい。市販品としては、ヘキスト社製「AP422」、「AP462」、住友化学工業社製「スミセーフP」が挙げられる。
【0043】
前記化学式(1)で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。前記リン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明で用いられる熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0045】
本発明では前記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和する。前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。前記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。このように中和処理した熱膨張性黒鉛の具体例としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」等が挙げられる。
【0046】
本発明で用いられる中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュのものが好ましい。粒度が200メッシュより細かいと、黒鉛の膨張度が小さく、望む耐火断熱層が得られず、粒度が20メッシュより大きいと、膨潤度が大きいという点では効果があるが、樹脂と混練する際、分散性が悪く物性の低下が避けられない。
【0047】
本発明で用いられる無機充填剤としては特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
前記無機充填剤のなかでも、含水無機物は、加熱時に脱水し、吸熱する性質を有するため、耐熱性を高めるうえで有利である。具体的には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、周期律表II族又はIII 族に属する金属の金属塩又は酸化物は、燃焼時に発泡して発泡焼成物を形成する性質を有するため、形状保持性を高めるうえで好ましい。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0049】
前記のパテ材料、耐火塗料としては、例えば、エスケー化研社製「SKタイカコート」、日本ペイント社製「タイカリット」、古河電工社製「ダンシールC」等が挙げられる。これらのパテ材料、耐火塗料は、エンジンルームと室内空間を連通する板材11に形成された貫通孔14の周辺の板材に、あるいは貫通孔14に近接して配管等に付設される。
【0050】
火災時に貫通部を閉塞する材料の場合、多くの膨張材料では膨張性能は十分でも膨張後の残渣のまとまり、強度が不足するため、熱風等の風圧で吹き飛んでしまい、本来の性能を発揮できない場合がある。特に自動車の火災は、ガソリン等の着火源が存在するため燃焼時の発熱と風圧が高くなる可能性が高い。そのため、より好ましくは、例えば600℃に昇温した電気炉にて20分間加熱した後の残渣を0.25cm2 の圧子で速度0.1cm/minで圧縮した場合の破断点荷重が0.1kgf/cm2 以上である熱膨張性耐火材料を使用することが望ましい。
【0051】
このような性状の熱膨張性耐火材料としては、例えば、
(1)ゴム及び/又は熱可塑性樹脂に、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、ゴムあるいは熱可塑性樹脂100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20〜200重量部、無機充填剤が50〜500重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛:リン化合物の重量比が、9:1〜1:100である樹脂組成物から成るシート状成形体や、
(2)エポキシ樹脂に、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、エポキシ樹脂100重量部に対して、リン化合物30〜150重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛15〜150重量部、及び無機充填剤が30〜500重量部である樹脂組成物から成るシート状成形体等が挙げられる。
【0052】
熱膨張性耐火材料の残渣保持性能を強化するために、アルミ箔、ステンレス箔等の金属箔やアルミガラスクロス基材等の不燃基材、ガラスウール、セラミックウール、ロックウール等から成るクロス、不織布、ポリラミ不織布、ガラスクロス、等を積層あるいは含浸してもかまわない。
【0053】
請求項3で示したように、比重1.5〜7で遮音性を有する熱膨張性材料を使用すれば、耐火性隔壁の板材11に耐火性かつ遮音制振性も付与することが可能となる。望ましくは、比重1.6〜6である。比重1.5未満であれば、遮音制振性が不十分であり、比重7以上であれば施工が困難となる。
【0054】
望ましい遮音制振性とは、長さ600mm角、厚さ4mmの試験片上に0.4mmの鉄板を積層し、上部に450mm角の孔のあいた1000mm角の木製防音箱の孔を塞ぐように設置し、試験片上部で音を鳴らしたときの箱内部への音を集音し、鉄板単独での評価値を基準に算出した音圧減少レベルの最高値が5dB以上である。
【0055】
遮音性を有し、比重1.5〜7である熱膨張性耐火材料であれば、特に限定はないが、例えば熱膨張性無機物と真比重3.0以上の無機充填材とを含有する樹脂組成物が挙げられる。真比重3.0以上の無機充填材としては、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム及びマイカ等の無機塩、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び酸化アンチモン等の金属酸化物、鉄、鉛、亜鉛等の金属粉等が挙げられる。2種以上を併用してもかまわない。熱膨張性無機物としては、熱膨張性黒鉛、バーミキュライト、ホウ砂等が挙げられる。
【0056】
以上、本文中に例示した組成物あるいはその他の熱膨張性耐火材料はシート化する際の製造方法に限定はない。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等の混練方法により樹脂組成物を得ることが可能である。さらにプレス成型、カレンダー成型、押出成型、ロール成型等、従来公知の方法によりシート化することができる。
【0057】
前記の如く構成された本実施形態の耐火性隔壁の動作について以下に説明する。エンジンルーム3内で火災が発生すると、その熱により熱膨張性耐火材料の耐火シート15が膨張する。この膨張倍率は、それを構成する樹脂組成物、リン化合物、無機充填材等の配合により異なるが、1.1〜50倍程度に設定される。この膨張により板材11のエンジンルーム側の面に断熱層が形成され、板材自体を保護するとともに火災の熱が車室5側に伝達されるのを防止する。
【0058】
また、この膨張により耐火性隔壁10とボディ1等の取付部材との間に隙間があっても塞ぐことができるため、火災の火炎や煙が車室5内に進入するのを防止できる。さらに、エンジンルーム3と車室5とを連通するワイヤーや配管20等の被貫通物がある場合、配管20が貫通する貫通孔14の周囲には間隙ができるが、この間隙は熱膨張性耐火材料の膨張により塞がれ、火炎や煙等が車室5に進入することを防止できる。
【0059】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。図3に示した配合で樹脂と各種充填剤をロール混練し、実施例1〜3、比較例1〜2に記載の5つの樹脂組成物を得た。次いで樹脂組成物が樹脂成分としてゴム成分を使用している場合には、100℃で3分間プレス成型して耐火性評価に用いる試験片を作製した。また、前記樹脂組成物の樹脂成分がエポキシ樹脂の場合は、樹脂組成物を150℃で30分間プレス成型して硬化させ、以下に使用する試験片を作成した。
【0060】
(1)貫通孔閉塞性評価
長さ15cm×巾30cm、2.5mm厚の炭素鋼に長さ15cm×巾30cmで表1に示した厚みと被覆方法で熱膨張性耐火材料を貼り合わせた。さらにこの積層体に0.3cm、0.75cm、1cm、1.5cm、2cm直径の5種類の貫通孔をあけた。サンプルを熱膨張性耐火材料を下にして水平に置き、下側から、プロパンガスを燃料とした50kWの火炎バーナーで30分間加熱を行った。サンプルの下面でバーナー表面との距離は30cmに設定した。熱膨張性耐火材料は火源側、すなわちエンジンルーム側に配置される。この条件で加熱することにより、エンジンルーム側からの火災を想定した。
【0061】
この貫通孔中央の炭素鋼から1mm離れた位置に熱電対を設置し、炎の貫通による温度上昇があるかないかを確認した。各々の孔に対して、貫通による温度上昇が確認されたものを×と評価し、貫通が見られなかったものを○と評価した。なお、炭素鋼は厚さが1mm以下のものでもよいが、評価のために厚い材料を使用した。
【0062】
(2)断熱性評価
長さ15cm×巾30cm、2.5mm厚の炭素鋼に長さ15cm×巾30cmで表1に示した厚みと被覆方法で熱膨張性耐火材料を貼り合わせた。さらに、この積層体に5点の熱電対を設置した。このサンプルを、熱膨張性耐火材料を下にして水平に置き、下側から、プロパンガスを燃料とした50kWの火炎バーナーで30分間加熱を行った。サンプルの下面でバーナー表面との距離は30cmに設定した。そして、炭素鋼のみを同じ加熱条件で加熱した場合の30分後の5点の温度平均Tbと、熱膨張性耐火材料で被覆した積層材との温度平均Teとの差Δ=Tb−Teが150℃以上あるものを○とし、150℃未満のものを×とした。
【0063】
(3)残渣の形状保持性評価
長さ10cm×巾10cmの試験片を内寸が長さ10cm×巾10cmである高さ8cmの箱枠に入れて、約600℃に昇温した電気炉にて20分間加熱した。取り出し後の残渣を0.25cm2 の圧子で速度0.1cm/minで圧縮した場合に現れる変位−荷重曲線上の最大点を残渣の破断点荷重(kgf/cm2 )とし、残渣のかたさ、あるいはまとまりの指標として評価を行った。0.1kgf/cm2 以上であるものを○とし、0.1kgf/cm2 未満のものを×とした。
【0064】
この評価は、熱膨張性耐火材料を加熱膨張させた後の残渣の強度を測定して形状保持性を評価するものであり、JIS等で既定されている各種の圧縮特性や曲げ特性の試験では適切な評価が難しく、前記の所定の高温で所定時間加熱し残渣を圧子で圧縮する試験では残渣のくずれやひび割れが発生せず、適切な評価が可能となった。なお、加熱温度は600℃に限られるものでなく、熱膨張性耐火材料が膨張する温度であればよく、加熱時間も熱膨張性耐火材料が確実に膨張し、焼失してしまわない程度の時間であればよい。
【0065】
圧子の面積を0.25cm2 としたのは、以下の理由による。すなわち、0.25cm2 より大きくなると残渣は破断せず、大きく圧縮されるため求める破断点荷重を測定できず、残渣の強度を適切に判断できなかった。また、0.25cm2 より小さいと残渣の破断点荷重を測定はできるが、残渣性状のばらつきを拾ってしまいデータ精度が悪くなった。0.25cm2 程度の圧子であれば、残渣の破断点荷重を感度良く拾い、かつ面積内で平均化されるためデータ精度も十分であった。圧縮速度に関しては、評価試験で圧縮速度を変化させて測定した結果、0.1cm/minより速いと残渣の破断点を検知しにくいため、前記の圧縮速度が残渣の破断点強度を精度良く測定できる最速の速度であった。
【0066】
残渣の形状保持性評価に関して、以下のように考えることができる。すなわち、熱によって膨張あるいは発泡する材料の多くは、次の物質を含有している。第1として、熱膨張性無機物がある。この物質は熱によって層間に担持された物質が体積膨張する、あるいは放出されることにより層間が開くという性質を有する。また、第2として化学発泡剤がある。この物質は熱により化学反応が生じ、気体を放出するという性質を有する。
【0067】
これらの物質の熱膨張あるいは化学発泡の開始温度は、バインダーとして樹脂を使用する場合には、樹脂の溶融粘度と各々の作用を開始する温度の組み合わせによって変化する。そして、材料が膨張する倍率は加熱温度によって変化することがある。ただし、通常使用されるバインダーとしての樹脂の熱分解温度、熱膨張開始温度、発泡開始温度を充分に上回る温度であれば、膨張倍率の温度依存性は小さくなる。
【0068】
前記の内容をふまえ、熱膨張性耐火材料の膨張倍率、かさ密度、形状保持性等を評価するに際しては安全かつ簡便に評価できるように加熱温度を600℃に設定した。加熱温度600℃、加熱時間20分間の時間設定は、実施例に示した大きさのサンプルが完全燃焼する最低時間として設定したが、10分以上2時間までは性能に変化がないことは確認済である。
【0069】
本実施形態で採用した評価方法は、種々の条件で発生する実際のエンジンルームでの火災と比較すると緩やかな加熱条件である可能性もあり、緩やかな場合は燃焼残渣のかさ密度が若干大きくなる傾向がある。しかし、この評価後の燃焼残渣が好適な形状保持性を有するものであれば、実際の火災の場合でも合格となる可能性は大きくなる。逆に、この評価後に良好な物性を示さない材料であれば、実際の火災の場合でも不合格となる可能性は高い。
【0070】
(4)膨張後の厚み
長さ10cm×巾10cmの試験片を内寸が長さ10cm×巾10cmである高さ8cmの箱枠に入れて600℃に昇温した電気炉にて20分間加熱した後の残渣の厚みをノギスにて測定し、膨張後の厚みとした。膨張後の厚みは、10mm程度以上あれば隙間や配管等との隙間を塞ぐのに好ましい。
【0071】
(5)膨張後のかさ密度
長さ10cm×巾10cmの試験片を内寸が長さ10cm×巾10cmである高さ8cmの箱枠に入れて約600℃に昇温した電気炉にて20分間加熱した。取り出し後の残渣の重量を計測し、下記の計算式に基づいて膨張後のかさ密度を算出した。
膨張後のかさ密度=(膨張後の残渣重量)/(断面積×膨張後の厚み)
膨張後のかさ密度は、0.02〜0.7g/cm3 が好適であり、この値が0.02未満になると、圧縮により破断しやすくなり好ましくなく、0.7を超えると断熱性が悪くなり好ましくない。
【0072】
(6)遮音制振性能評価
長さ600mm角、厚さ4mmの試験片上に0.4mmの鉄板を積層し、上部に450mm角の孔のあいた1000mm角の木製防音箱の孔を塞ぐように設置し、試験片上部で音を鳴らしたときの箱内部への音を集音し、鉄板単独での評価値を基準に算出した音圧減少レベルを計測した。音圧減少レベルの最高値が5dB以上のものを○とし、5dB未満のものを×とした。なお、音圧減少レベルは5dBを基準としたが、この数値に限られるものでない。
【0073】
本発明の他の実施形態を図4に基づき詳細に説明する。図4(a),(b)はそれぞれ本発明に係る耐火性隔壁構造の他の実施形態の断面図である。なお、この実施形態は前記した実施形態のように熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15を板材11の全面に積層するのに対し、熱膨張性耐火材料を板材11の貫通孔14の周囲に留め付けあるいは貼り付けにて積層する例と、被貫通物に巻き付けて付着する例を示している。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
図4(a)において、耐火性隔壁10は金属製の板材11と、この板材を貫通しエンジンルーム3と車室5とを連通する貫通孔14の周囲に、熱膨張性耐火材料の耐火シート16を積層している。貫通孔14は円形であり、耐火シート16は貫通孔14の直径より1.5倍程度大きい外径で形成されている。すなわち、貫通孔の直径が20mm程度の場合、耐火シート16の直径は30mm程度が好ましい。貫通孔14の直径は配管20やワイヤー等の被貫通物の直径より僅かに大きい直径で穿設され、貫通孔14と配管20との間には数mm程度の間隙が形成されている。貫通孔14と配管20との間には、隙間を塞ぐためのゴム製のグロメットやパッキング(図示せず)等が介在されているが、耐火シート16はパッキング等を覆うように積層することが好ましい。
【0075】
この実施形態においても、エンジンルーム3内で火災が発生すると熱膨張性耐火材料からなる耐火シート16は火災の熱で膨張し、配管20と貫通孔14との間隙を塞ぐとともに断熱し、火炎が貫通孔14から車室5内に到達せず、高熱が車室5内に伝達されない。また、被貫通物がワイヤー等である場合、燃焼により焼失しても、その間隙は熱膨張性耐火材料の耐火シート16により塞がれ、火炎、煙や熱が車室5に進入することが防止される。
【0076】
また図4(b)において、耐火性隔壁構造は、エンジンルーム3と室内空間である車室5とを連通する貫通孔14を有するベースとなる金属製の板材11と、被貫通物である配管20の貫通孔14に近接して巻き付けた熱膨張性耐火材料の耐火テープ17とを備えている。耐火テープ17を構成する熱膨張性耐火材料は、前記の実施形態と同様の材料で構成され、例えば厚さが数mmで幅が数cmに切断されたテープ状に形成され、配管等に巻き付けやすい形状となっている。そして、一方の面に粘着性が付与されていると好ましい。
【0077】
この実施形態においても、前記した図4(a)の実施形態と同様の効果を奏し、エンジンルーム3で発生した火炎が車室5内に到達せず、高熱が車室5内に伝達されず、ワイヤー等の被貫通物が燃焼により焼失しても、その間隙は熱膨張性耐火材料により塞がれ、火炎、煙や熱が車室5に進入しないため、車室内の人的、物的な被害を最小限とすることができる。
【0078】
本発明に係るエンジンルーム構造は、前記した耐火性隔壁構造を、エンジンルーム3と車室5との間に設置している。すなわち、図2に示すように、ベースとなる金属製板材11のエンジンルーム側の面に熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15を積層している。また、図4(a)に示すように、金属製板材11の貫通孔14の周囲に熱膨張性耐火材料からなる耐火シート16を貼り付けて付設している。さらに、図4(b)に示すように、貫通孔14に近接して被貫通物である配管20やワイヤーに膨張性耐火材料からなる耐火テープ17を巻き付けて付設している。
【0079】
このように構成したエンジンルーム構造によれば、エンジンルーム3内で火災が発生しても、熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15,16及び耐火テープ17が膨張することによって火災の熱が車室5に伝達されるのを防止し、車室5内が延焼するのを回避できる。また、火災の火炎や煙が車室5内に進入するのを防止でき、被害を最小限とすることができる。
【0080】
本発明に係るエンジンルームの耐火被覆方法は、前記の各実施形態で用いた熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15,16、耐火テープ17を、エンジンルーム3と車室5とを仕切る板材11に積層すること、あるいは板材11の貫通孔14を貫通する配管20等の被貫通物の周囲に設置又は巻き付けることで被覆できる。このため、自動車のボディ1等の製造時に被覆できると共に、すでに製造されたボディ1に熱膨張性耐火材料を後付けで被覆することもでき、自動車等の火災の被害を最小限とすることができる。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、エンジンが車室の下に配置される自動車においては、隔壁はエンジンルームの上部に配置され、車室等の室内空間とエンジンルームは上下に仕切られる。
【0082】
本発明の耐火性隔壁構造は自動車に限られるものでなく、例えば船舶のエンジンルームと車室(乗務員室)との間に設置するものでもよい。また、本発明は、バス、鉄道等の車両のように、エンジンルームと客室との間に設置されるものを含む。隔壁のベースとなる板材は金属製の板材に限られるものでなく、合成樹脂製のものやカーボンファイバ等で補強された合成樹脂製等、適宜のものを用いることができる。さらに、耐火性隔壁の室内空間側にフェルト等の遮音材を積層してもよいことは勿論である。
【0083】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明の耐火性隔壁構造と、これを用いたエンジンルーム構造は、火災が生じる前には、軽量でかつ自動車等のエンジンルームという限られた空間の体積を占める割合を最大限に抑えることも可能であり、自動車等の本来の性能を損なうことなく耐火性を格段に向上させることができ、火災による被害を最小限とすることができる。
【0084】
また、本発明のエンジンルームの耐火被覆方法は、ベースとなる板材に熱膨張性耐火材料を積層、あるいは付着するという容易な操作でエンジンルームの耐火性を向上させることができ、エンジンルームから出火したときの室内空間の人的、物的な被害を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る耐火性隔壁構造を用いた自動車ボディの一実施形態を示す概略斜視図。
【図2】(a)は図1のエンジンルームと車室部分との要部断面図、(b)は(a)の貫通孔部分の要部断面図。
【図3】本発明の実施例と比較例との樹脂組成物の配合と、耐火実験結果を示す表図。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ本発明に係る耐火性隔壁構造の他の実施形態の要部断面図。
【符号の説明】
1 自動車ボディ、 3 エンジンルーム、
5 車室(室内空間)、
8 ステアリングシャフト(被貫通物)、
10 耐火性隔壁、 11 板材、
14 貫通孔、
15,16 耐火シート(熱膨張性耐火材料)、
17 耐火テープ(熱膨張性耐火材料)、
20 配管(被貫通物)
Claims (8)
- 自動車等のボディのエンジンルームと室内空間とを仕切る耐火性隔壁を備えた構造であって、該耐火性隔壁は、板材と、該板材に積層した熱膨張性耐火材料とを備えることを特徴とする耐火性隔壁構造。
- 自動車等のボディのエンジンルームと室内空間とを仕切り該エンジンルームと室内空間とを連通する貫通孔を有する板材を備え、該貫通孔を配管やワイヤー等の被貫通物が貫通する耐火性隔壁構造であって、前記貫通孔の周辺の板材に、又は前記貫通孔に近接して前記被貫通物に、熱膨張性耐火材料を付設したことを特徴とする耐火性隔壁構造。
- 前記熱膨張性耐火材料は、比重1.5〜7の範囲のもので、遮音性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火性隔壁構造。
- 前記熱膨張性耐火材料は、熱可塑性樹脂及び/又はゴムに、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、ゴム及び/又は熱可塑性樹脂100重量部に対して、リン化合物と中和処理された熱膨張性黒鉛との合計量が20〜200重量部、無機充填剤が50〜500重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比が9:1〜1:100の範囲である樹脂組成物から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐火性隔壁構造。
- 前記熱膨張性耐火材料は、エポキシ樹脂に、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤を含有してなり、それぞれの含有量が、エポキシ樹脂100重量部に対して、リン化合物30〜150重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛15〜150重量部、及び無機充填剤が30〜500重量部である樹脂組成物から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐火性隔壁構造。
- 前記熱膨張性耐火材料は、所定の高温で所定時間加熱した後の残渣を0.25cm2 の圧子で速度0.1cm/minで圧縮した場合の破断点荷重が0.1kgf/cm2 以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐火性隔壁構造。
- 自動車等のボディのエンジンルームと室内空間を仕切る板材に、熱膨張性耐火材料を積層することを特徴とするエンジンルームの耐火被覆方法。
- 自動車等のボディのエンジンルームと室内空間を仕切り該エンジンルームと室内空間とを連通する貫通孔を有する板材の該貫通孔を、配管やワイヤー等の被貫通物が貫通するエンジンルームの耐火被覆方法であって、前記貫通孔の周辺の板材に、又は前記貫通孔に近接する被貫通物に、熱膨張性耐火材料を付設することを特徴とするエンジンルームの耐火被覆方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003113074A JP2004314838A (ja) | 2003-04-17 | 2003-04-17 | 耐火性隔壁構造、及びエンジンルームの耐火被覆方法 |
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JP2003113074A Withdrawn JP2004314838A (ja) | 2003-04-17 | 2003-04-17 | 耐火性隔壁構造、及びエンジンルームの耐火被覆方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016151001A (ja) * | 2015-02-19 | 2016-08-22 | 積水化学工業株式会社 | 熱膨張性耐火性シート及びその製造方法 |
WO2018033266A1 (de) * | 2016-08-17 | 2018-02-22 | Contitech Elastomer-Beschichtungen Gmbh | Kautschukmischung und elastomerer artikel mit flammhemmenden eigenschaften |
WO2018033267A1 (de) * | 2016-08-17 | 2018-02-22 | Contitech Luftfedersysteme Gmbh | Artikel, insbesondere ein luftfederbalg, ein metall-gummi-element oder ein schwingungsdämpfer |
JP2020050274A (ja) * | 2018-09-28 | 2020-04-02 | マツダ株式会社 | 自動車のパネル構造 |
-
2003
- 2003-04-17 JP JP2003113074A patent/JP2004314838A/ja not_active Withdrawn
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