JP2004308614A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】駆動アシスト手段106によってディーゼルエンジン10を再起動させるために回転駆動装置を作動させてディーゼルエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合には、ディーゼルエンジン10への燃料噴射量が低減されたとしてもエンジン再起動後のエンジン回転速度NEを安定した状態に維持できるので、燃料噴射量抑制手段102によってディーゼルエンジン10への燃料噴射量が抑制されるときに用いられる予め設定されたエンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係が燃料噴射設定量変更手段104によって燃料噴射量を低減する側に変更されて燃費が一層向上する。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃費向上のために車両の減速走行中に予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係に基づいてエンジンへの燃料噴射量を抑制する燃料噴射量抑制手段を備えた車両の制御装置に関し、特に、その燃料噴射量抑制手段によってディーゼルエンジンへの燃料噴射量が抑制されるようにした車両において、そのエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係をエンジンへの燃料噴射量がより低減する側に変更して一層燃費を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の減速走行中に燃費を向上させる目的でディーゼルエンジンへの燃料噴射量を抑制たとえばフューエルカットなどを行う燃料噴射量抑制手段が備えられた車両が知られている。たとえば、特許文献1に示すように減速走行中のアクセル開度或いはスロットル開度が全閉のときに、エンジン回転速度がアイドル回転速度より高回転側に予め設定された所定のエンジン回転速度たとえば燃料カット回転速度以上ではエンジンへの燃料噴射が停止され、またエンジン回転速度がその燃料カット回転速度と同一か或いはそれよりも低回転側に設定された所定のエンジン回転速度たとえば燃料復帰回転速度より低下するとエンジンへの燃料噴射が再開され、その後アイドル回転速度への低下に従ってそのアイドル回転速度での燃料噴射量となるようにエンジンへの燃料噴射量が漸増されるように予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係が設定されて燃費を向上させるようにした技術が提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−131787号公報
【特許文献2】
特開昭59−46335号公報
【特許文献3】
特公平7−56227号公報
【特許文献4】
特公平7−116979号公報
【特許文献5】
特開2001−41057号公報
【特許文献6】
特開2001−82204号公報
【特許文献7】
特開平3−74537号公報
【特許文献8】
特開平9−264221号公報
【特許文献9】
特開2000−205001号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、さらなる燃費向上を図るために上記特許文献1にあるような予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係をエンジンへの燃料噴射量がより低減する側、たとえばエンジンがその再起動に際して安定した滑らかな回転速度に維持されるためにアイドル回転速度に対して燃料噴射の再開時のエンジン回転速度にある程度必要である余裕分を持つように設定されている上記燃料復帰回転速度をより低回転側に変更するような場合には、その燃料復帰回転速度がより低回転側に変更されると、エンジン再起動後のエンジン回転速度に余裕がなくなる可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ディーゼルエンジンとそのディーゼルエンジンに作動的に連結される回転駆動装置と車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が全閉と判定されると、予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係に基づいて前記ディーゼルエンジンへの燃料噴射量を抑制する燃料噴射量抑制手段とを備えた車両の制御装置において、特に、回転駆動装置たとえば電動機によって再始動時のエンジンの回転駆動を補助できるか否かに応じて予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を変更するようにして燃費が一層向上する車両の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) ディーゼルエンジンと、そのディーゼルエンジンに作動的に連結される回転駆動装置と、そのディーゼルエンジンに燃料を供給する燃料噴射制御装置とを備えた車両の制御装置であって、(b) 車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が所定の抑制状態であるときは、予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係に基づいて前記ディーゼルエンジンへの燃料噴射量を抑制する燃料噴射量抑制手段と、(c) そのディーゼルエンジンを再起動させるために前記回転駆動装置を作動させて該ディーゼルエンジンの回転駆動を補助する駆動アシスト手段と、(d) その駆動アシスト手段によってその回転駆動装置が作動されて前記エンジンの回転駆動の補助が可能か否かを判定する駆動アシスト可否判定手段と、(e) その駆動アシスト可否判定手段による判定結果に応じて前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を変更する燃料噴射設定量変更手段とを、含むことにある。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、駆動アシスト可否判定手段による駆動アシスト手段によってディーゼルエンジンを再起動させるために回転駆動装置が作動されてそのディーゼルエンジンの回転駆動の補助が可能か否かの判定結果に応じて、燃料噴射量抑制手段によって車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が所定の抑制状態であるときに、ディーゼルエンジンへの燃料噴射量が抑制されるときに用いられる予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係が燃料噴射設定量変更手段によって変更されるので、たとえばその回転駆動装置としての電動機によってそのエンジンの回転駆動の補助が可能である場合には、エンジンへの燃料噴射量が低減されたとしてもエンジン再起動後のエンジン回転速度を安定した状態に維持できるので、その予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係が燃料噴射量を低減する側に変更されて燃費が一層向上する。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記燃料噴射設定量変更手段は、前記駆動アシスト可否判定手段によって前記駆動アシスト手段による前記エンジンの回転駆動の補助が可能であると判定されたときには、可能でないと判定されたときに比較して前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側に変更するものである。このようにすれば、たとえばその回転駆動装置としての電動機によってそのエンジンの回転駆動の補助が可能である場合には、可能でない場合に比較してエンジンへの燃料噴射量が低減されたとしてもエンジン再起動後のエンジン回転速度に余裕がなくなることが回避できるすなわちエンジン回転速度を安定した状態に維持できるので、そのエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係が燃料噴射量を低減する側に変更されて燃費が一層向上する。
【0009】
また、好適には、(a) 自動変速モードと手動変速モードとを備える自動変速機と、その自動変速モードと手動変速モードとの切換えを判定する変速モード判定手段とを備え、(b) 前記燃料噴射設定量変更手段は、その変速モード判定手段によって自動変速機が手動変速モードに切り換えられていると判定されたときには前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側への変更を実行しない、或いは低減する側への変更を抑制するものである。このようにすれば、たとえば自動変速機が運転者により変速比或いは変速レンジがマニュアル操作されるような手動変速モードに切り換えられていて、自動変速モードのように車速とアクセル開度から一律に変速比が決まらずまた変速実施タイミングが自動制御されないために、燃料噴射量が低減されているときに運転者により変速されてたとえばアップシフトされてエンジン回転速度が低下する可能性が避けられる。
【0010】
また、好適には、(a) 流体伝動装置に備え付けられたロックアップクラッチ或いは前記自動変速機を制御する動力伝達装置制御手段を備え、(b) 前記燃料噴射設定量変更手段は、その動力伝達装置制御手段による前記ロックアップクラッチ或いは前記自動変速機の制御が不可能であるときには、前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しないものである。このようにすれば、たとえば動力伝達装置たとえばロックアップクラッチ或いは自動変速機等の作動が正常な状態でないことでその回転駆動装置としての電動機によってそのエンジンの回転駆動の補助が可能であるにも関わらずエンジン再起動後のエンジン回転速度に余裕がなくなる可能性が避けられる。
【0011】
また、好適には、前記燃料噴射設定量変更手段は、前記自動変速機の作動油の温度が低いときには、前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側への変更を実行しない、或いは低減する側への変更を抑制するものである。このようにすれば、たとえば自動変速機の作動油温度が低温であるためにその変速制御による変速比の切換作動が制約を受ける状態で実施されることが避けられる。
【0012】
また、好適には、前記燃料噴射設定量変更手段は、前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、前記エンジン回転速度の低下速度に応じて燃料噴射量の低減量が変化するように変更するものである。このようにすれば、たとえばエンジン回転速度の低下速度が車両の減速に伴う低下速度に比較して早い場合には、エンジンへの燃料噴射量を低減しない或いは低減量を抑制するので、たとえばその回転駆動装置としての電動機によってそのエンジンの回転駆動の補助が可能であるにも関わらずエンジン再起動後のエンジン回転速度に余裕がなくなる可能性が避けられる。
【0013】
また、好適には、前記燃料噴射設定量変更手段は、前記ロックアップクラッチがロックアップオフ状態であるときには、前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しないものである。このようにすれば、たとえばロックアップクラッチがロックアップオフ状態となってエンジン回転速度が急低下することでその回転駆動装置としての電動機によってそのエンジンの回転駆動の補助が可能であるにも関わらずエンジン再起動後のエンジン回転速度に余裕がなくなる可能性が避けられる。
【0014】
また、好適には、(a) アクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないことを予測する開度予測手段を備え、(b) 前記燃料噴射量抑制手段は、その開度予測手段によって車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測され且つアクセル開度或いはスロットル開度が減少するときに、前記ディーゼルエンジンへの燃料噴射量の抑制を開始するものである。このようにすれば、燃料噴射量抑制手段によるディーゼルエンジンへの燃料噴射量の抑制制御がアクセル開度或いはスロットル開度が減少したことで開始される、すなわち実際にはアクセル開度或いはスロットル開度が所定の抑制状態となる前に開始されるので、燃費が一層向上する。
【0015】
また、好適には、(a) アクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないことを予測する開度予測手段を備え、(b) 前記燃料噴射量抑制手段は、その開度予測手段によって車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測され且つアクセル開度或いはスロットル開度が所定の開度以下となるときに、前記ディーゼルエンジンへの燃料噴射量の抑制を開始するものである。このようにすれば、燃料噴射量抑制手段によるディーゼルエンジンへの燃料噴射量の抑制制御がアクセル開度或いはスロットル開度が所定の開度以下となったことで開始される、すなわち実際にはアクセル開度或いはスロットル開度が所定の抑制状態となる前に開始されるので、燃費が一層向上する。
【0016】
また、好適には、前記開度予測手段は、降坂路情報に基づいてアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測するものである。このようにすれば、開度予測手段による降坂路走行中には運転者は再びアクセルペダルを踏込操作することがないすなわちアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないとの予測がたとえば車両が登坂路を走行中は最高速ギヤ比へのアップシフトを禁止したり、降坂路を走行中は低速ギヤ比へダウンシフトする登降坂変速制御手段による降坂路情報に基づいて行われる。
【0017】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置8の構成を説明する骨子図である。図1において、たとえば内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのディーゼルエンジン10(以下、エンジン10と表す)の出力は、入力クラッチ12、流体伝動装置としてのトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。上記入力クラッチ12とトルクコンバータ14との間には、回転機として電動モータおよび発電機として機能する第1モータジェネレータMG1が配設されている。上記トルクコンバータ14は、入力クラッチ12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、それらポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えている。上記ロックアップクラッチ26は、係合側油室25内の油圧と解放側油室27内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチであり、それが完全係合させられることにより、ポンプ翼車20およびタービン翼車24は一体回転させられる。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわち係合トルクがフィードバック制御されることにより、車両の駆動(パワーオン)時には例えば50rpm程度の所定の目標スリップ量でタービン翼車24をポンプ翼車20に対して追従回転させる一方、車両の非駆動(パワーオフ)時には例えば−50rpm程度の所定の目標スリップ量でポンプ翼車20をタービン翼車24に対して追従回転させられる。
【0019】
上記自動変速機16は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速部32と、後進変速段および前進4段の切り換えが可能な第2変速部34とを備えている。第1変速部32は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリアK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置36と、サンギヤS0とキャリアK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング38間に設けられたブレーキB0とを備えている。
【0020】
第2変速部34は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリアK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置40と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリアK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置42と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置44とを備えている。
【0021】
上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリアK2とキャリアK3とが一体的に連結され、そのキャリアK3は出力軸46に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3および中間軸48に一体的に連結されている。そして、リングギヤR0と中間軸48との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2とリングギヤR0との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド式のブレーキB1がハウジング38に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング38との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸22と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0022】
キャリアK1とハウジング38との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング38との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0023】
以上のように構成された自動変速機16では、例えば図2に示す作動表に従って後進1段および変速比γ(入力軸22の回転速度NIN/出力軸46の回転速度NOUT) が順次小さくなる前進5段(1st〜5th)の変速段のいずれかに切り換えられる。図2において「○」は係合で、空欄は解放を表し、「◎」はエンジンブレーキや第1モータジェネレータMG1の回生制動による駆動力源ブレーキ時の係合を表し、「△」は動力伝達に関与しない係合を表している。前記クラッチC0〜C2、およびブレーキB0〜B4は何れも油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式の摩擦係合装置である。この図2から明らかなように、第2速ギヤ段と第3速ギヤ段との間は、ブレーキB2およびブレーキB3の一方が解放させられると同時に他方が係合させられることにより達成される所謂クラッチツウクラッチ変速である。
【0024】
図3は図1に示したハイブリッド車両の動力伝達装置の構成を概略示す図である。図3に示すように、前記エンジン10の吸気配管50および排気管52には、排気タービン式過給機54が設けられており、排気管52には、ウェイストゲート弁56を有するバイパス通路58が並列に設けられて、そのバイパス通路58を流通する排気ガスの流量を制御することにより、タービン回転を変化させて吸気配管50内の過給圧を調節できるようになっている。吸気配管50には、スロットルアクチュエータ60によって開閉制御される電子スロットル弁62が設けられている。電子スロットル弁62は、基本的には運転者の出力要求量を表すアクセル開度ACCに対応するスロットル開度θTHとなるように制御される。
【0025】
前記第1モータジェネレータMG1はエンジン10に作動的に連結されるようにエンジン10と自動変速機16との間に配置されて、入力クラッチ12はエンジン10と第1モータジェネレータMG1との間に配置されている。上記自動変速機16の各油圧式摩擦係合装置およびロックアップクラッチ26は、電動油圧ポンプ64或いは駆動切換オイルポンプクラッチ69を介してエンジン10に機械的に連結されてそれにより直接回転駆動される機械式オイルポンプ68から発生する油圧を元圧とする油圧制御回路66により制御されるようになっている。上記元圧すなわちライン圧は、上記自動変速機16の各油圧式摩擦係合装置を係合するために用いられる最大係合圧となるものである。また、エンジン10には回転機として電動モータ或いは発電機として機能する第2モータジェネレータMG2が作動的に連結されている。また、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2は、その作動によってエンジン10の回転駆動を補助する回転駆動装置としても機能している。そして、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2の電源として機能する燃料電池70および二次電池71と、それ等から第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2へ供給される電流を制御したり或いは充電のために二次電池71へ供給される電流を制御するための電源切換スイッチ72および73とが設けられている。この電源切換スイッチ72および73は、スイッチ機能を有する装置を示すものであって、例えばインバータ機能などを有する半導体スイッチング素子などから構成され得るものである。
【0026】
図4は、本実施例の動力伝達装置8のための制御系統を説明するブロック線図である。図4において、電子制御装置90に入力される信号およびその電子制御装置90から出力される信号を例示したものである。たとえば、電子制御装置90には、アクセル開度センサにより検出されたアクセルペダルの操作量であるアクセル開度ACCを表すアクセル開度信号、スロットル弁開度センサにより検出されたスロットル弁62の開度θTHを表すスロットル開度信号、出力軸回転速度センサ47により検出された出力軸46の回転速度NOUTすなわち車速Vに対応する車速信号、タービン回転速度センサ91により検出されたタービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を表す信号、エンジン回転速度センサ76により検出されたエンジン回転速度NEを表す信号、AT油温センサ74により検出された自動変速機16の作動油温度すなわちAT油温TOIL、吸気配管50内の過給圧Paを表す信号、シフトレバー92の操作位置PSHを表す信号などが図示しないセンサから供給されている。また、電子制御装置90からは、アクセル開度ACCに応じた大きさのスロットル開度θTHとするためのスロットルアクチュエータ60を駆動する信号、燃料噴射弁82からエンジン10の各気筒86内へ噴射される燃料噴射量を制御するための噴射信号、自動変速機16のギヤ段を切り換えるために油圧制御回路66内のシフト弁を駆動するシフトソレノイドを制御する信号S1、S2、S3、ブレーキB3の直接制御、およびクラッチツウクラッチ変速を制御するリニヤソレノイド弁SLUを駆動するための指令信号DSLU、ロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量を制御するリニヤソレノイド弁SLTを駆動するための指令信号DSLT、アキュム背圧を制御するためのリニヤソレノイド弁SLNを駆動する指令値信号DSLNをそれぞれ出力させる。
【0027】
上記電子制御装置90は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、基本的にはたとえば自動変速機16のギヤ段を自動的に切り換える変速制御、ロックアップクラッチ26の係合、解放、或いはスリップを実行するロックアップクラッチ制御、燃料噴射制御装置80によるエンジン10への燃料供給量すなわちエンジン10への燃料噴射量を制御する燃料噴射制御、過給圧制御などを実行する。たとえば、上記変速制御では、たとえば図5に示す予め記憶された関係すなわち変速線図から実際のアクセル開度ACC(%)と車速V(km/h)とに基づいて自動変速機16の変速段を決定し、この決定された変速段および係合状態が得られるように油圧制御回路66の電磁弁S1、S2、S3を駆動し、エンジンブレーキを発生させる際には電磁弁S4を駆動する。上記図5の変速線図における変速線は、実際のアクセル開度ACC(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、上記値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。この変速制御の過程では、自動変速機16の入力トルクTINを推定し、変速に関与する油圧式摩擦係合装置の係合圧またはその元圧であるライン圧をその入力トルクTINに応じた大きさに制御する。
【0028】
また、上記ロックアップクラッチ制御では、加速走行時のトルクコンバータ14などの回転損失を低減するために、たとえば図6に示す予め記憶されたロックアップ領域線図から実際の車両走行状態を表す車速V(出力側回転速度NOUTに対応)と運転者の要求出力量を表すアクセル開度ACCとに基づいて、係合領域、解放領域、スリップ領域のいずれの領域に属するかを判定し、その判定された領域の作動となるように前記油圧制御回路66内のロックアップコントロールソレノイドを制御してロックアップクラッチ26を係合、解放、或いはスリップのいずれかの状態とする制御を実行する。上記図6のロックアップ領域線図におけるロックアップ領域線は、実際のアクセル開度ACC(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわちロックアップ領域線のロックアップクラッチの作動の切換えを実行すべき値すなわちロックアップ作動点を越えたか否かを判断するためのものであり、上記ロックアップ作動点の連なりとして予め記憶されていることにもなる。そのスリップ領域では、運転性を損なうことなく燃費を可及的に良くすることを目的として前記エンジン10の回転変動を吸収しつつ前記トルクコンバータ14の動力伝達損失を可及的に抑制するために、ロックアップクラッチ26のスリップ制御を実行する。ロックアップクラッチ26のスリップ制御については、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとの回転速度差(スリップ量)NSLP(=NE−NT)を目標回転速度差(目標スリップ量)NSLP *に制御するためにロックアップクラッチ26の前記差圧ΔPを制御するソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUを出力する。このスリップ制御のうちの減速走行時スリップ制御は、たとえば、アクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTHが全閉と判定されるときに惰性走行(減速走行)する前進走行時において生じる駆動輪側からの逆入力をエンジン10側へ伝達する変速段、すなわちエンジンブレーキ作用が得られる変速段で行われ、タービン回転速度NTおよびエンジン回転速度NEは、ソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUを用いたフィードバック制御により回転速度差NSLPが目標回転速度差NSLP *たとえば−50乃至−100rpmとされた状態で車両の減速にしたがって緩やかに減少させられる。このようにロックアップクラッチ26がスリップ係合させられると、エンジン回転速度NEがタービン回転速度NT付近まで引き上げられるため、エンジン10に対する燃料噴射量を抑制する制御状態がさらに長い期間維持されて燃費が向上する。
【0029】
また、前記燃料噴射制御装置80には前記エンジン10の各気筒86に装着された前記燃料噴射弁82とその燃料噴射弁82に燃料を圧送する燃料噴射ポンプ84とが備えられており、前記燃料噴射制御では、その燃料噴射ポンプ84が前記電子制御装置90から出力されたその燃料噴射弁82からエンジン10の気筒86内に直接噴射される燃料供給量すなわち燃料噴射量を制御するための噴射信号に基づいて燃料噴射量を制御する。たとえば、その燃料噴射量は予め決められた関係図すなわちマップから前記アクセル開度ACCと前記エンジン回転速度NEとに基づいて求められる。また、上記燃料噴射制御はたとえばアクセル開度Accが全閉と判定されるアイドル状態のときには、アイドル回転速度NEIDを予め設定された目標アイドル回転速度NEIDL *となるようにたとえばアイドル回転速度NEIDでの燃料噴射量FIDLとなるように燃料噴射量を制御するアイドル制御を実行する。
【0030】
図7において、前記シフトレバー92を備えたシフト操作装置94は例えば運転席の横に配設されており、そのシフトレバー92は、自動変速機16の出力軸46をロックするための駐車位置P、後進走行のための後進走行位置R、自動変速機16内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立位置N、自動変速モードで第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の範囲で自動変速される前進走行位置D(最高速レンジ位置)、第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段でエンジンブレーキが作用させられる第4エンジンブレーキ走行位置4、第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段でエンジンブレーキが作用させられる第3エンジンブレーキ走行位置3、第1速ギヤ段乃至第2速ギヤ段の範囲で自動変速され且つ各ギヤ段においてエンジンブレーキが作用させられる第2エンジンブレーキ走行位置2、第1速ギヤ段で走行させられ且つエンジンブレーキが作用させられる第1エンジンブレーキ走行位置Lへそれぞれ操作可能に設けられている。つまり、上記P乃至Lレンジに示す各変速レンジは、PレンジおよびNレンジは車両を走行させないときに選択される非走行レンジであり、Rレンジは車両を後進走行させるための後進レンジであり、Dレンジ、4レンジ、3レンジ、2レンジ、Lレンジは車両を前進走行させるための前進レンジである。また、4レンジ、3レンジ、2レンジ、Lレンジは、車両の駆動力を高めるだけでなくエンジンブレーキを発生させるため、エンジンブレーキレンジでもある。また、前記図2に示した所定のギヤ段たとえば第2速ギヤ段(2nd)が達成されるためには、非エンジンブレーキレンジであるDレンジではクラッチC1およびブレーキB3が係合させられるのに対し、エンジンブレーキレンジである2レンジでは上記クラッチC1およびブレーキB3に加えてクラッチC0がさらに係合させられるようになっている。上記シフト操作装置94には、スポーツ走行や雪道走行などのための手動変速モードへ切り換えるためのモード切換スイッチ96が設けられている。たとえば、このモード切換スイッチ96によって手動変速モードが選択されると図示しないステアリングホイールに設けられた手動変速操作釦が有効化されて、Dレンジで変速可能な変速範囲内すなわち第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の間で定められた複数の変速レンジを運転者によって任意に選択できる手動変速モードを成立させる。これによって、運転者によって任意に選択された変速レンジの各変速範囲内において自動変速される。また、運転者は変速レンジを任意に切り換えることで変速段を切り換えていることにもなる。また、上記シフト操作装置94にはシフト操作装置94の各操作位置を検出するための操作位置検出スイッチ98が備えられており、上記シフトレバー92の操作位置を表す信号PSHやモード切換スイッチ96の選択位置を表す信号Pmを電子制御装置90へ出力する。
【0031】
図8は、前記電子制御装置90が備えている制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図8において開度検出手段100は、アクセル開度センサによりアクセルペダル操作量であるアクセル開度ACCを表すアクセル開度信号或いはスロットル弁開度センサによりスロットル開度θTHを表すスロットル開度信号を検出する。たとえば、アクセル開度ACC或いはスロットル開度θTH(以下、アクセル開度ACCと表す)が零である全閉すなわちアクセルオフ或いはスロットルオフ(以下、アクセルオフと表す)は、アクセル開度ACC或いはスロットル開度θTHが全閉と判定される値となったときであり、たとえば全閉スイッチがオンとなったときに判定される。
【0032】
燃料噴射量抑制手段102は、エンジン回転速度NEやアクセル開度Accなどに基づいてエンジン10への燃料供給量すなわち燃料噴射量を抑制して燃費を向上させるために、燃料噴射量抑制作動のための指令Dすなわちエンジン10への燃料噴射量抑制指令Dをたとえば図9の実線に示す燃料低減線に基づいて燃料噴射制御装置80に出力する。図9に示すその燃料低減線は、前記開度検出手段100によって検出されたアクセル開度Accが所定の抑制状態である車両の減速走行時に燃料噴射量抑制手段102が用いることになるエンジン回転速度NEに基づく燃料噴射量を定めた予め設定された関係図である。また、上記所定の抑制状態とは、たとえばアクセルオフであったり略全閉であったり或いはアクセル開度Accが2〜3%程度以下であったり或いはアクセル開度Accが微開であったりする状態のことである。図9の実線によれば、燃料噴射量はエンジン回転速度NEが予め決められた所定値である燃料噴射再開回転速度NEA以上であれば零すなわちエンジン10への燃料噴射が停止されるフューエルカット作動となり、燃料噴射再開回転速度NEAより低回転速度側ではエンジン10への燃料噴射が再開されてエンジン回転速度NEの低下に従ってアイドル回転速度NEIDLでの燃料噴射量FIDLに漸増させられるように予め設定されている。上記燃料噴射再開回転速度NEAはエンジン10の特性或いは種類等に応じ好適に設定されるようにしてよい。また、上記燃料噴射再開回転速度NEAはフューエルカット作動の開始と燃料噴射の再開とを定めたものであるが、たとえばフューエルカット作動の開始を定めるものとして燃料噴射再開回転速度NEAより高回転速度側に所定の回転速度たとえば燃料噴射停止回転速度NECを設定してエンジン回転速度NEがその燃料噴射停止回転速度NEC以上のときにフューエルカット作動が開始されるようにしてもよい。また、上記燃料噴射量抑制手段102はエンジン10が燃料噴射量抑制作動が可能な状態であるか否かを判断する。たとえば、エンジン10が暖気運転前であったり、エンジン10の排気ガス中の有害成分を低減するための触媒の劣化防止のためにフューエルカット作動が実行されない状態であるかを判断して燃料噴射量抑制作動が可能な状態であるか否かを判断する。
【0033】
駆動アシスト手段106は、回転駆動装置としての第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2を作動させて、エンジン10の回転駆動を補助する。上記燃料噴射再開回転速度NEAは、たとえばエンジン10はその再起動に際して安定した滑らかなエンジン回転速度NEたとえば滑らかに自律回転することのできるエンジン回転速度NEたとえばアイドル回転速度NEIDLに維持されるには、そのアイドル回転速度NEIDLに対して燃料噴射の再開時のエンジン回転速度NEにある程度の余裕が必要であることから、その余裕分を持つように設定されている。そこで、この燃料噴射再開回転速度NEAを一層低回転速度側に設定してフューエルカット作動となる領域を拡大すると共に燃料噴射量FIDLとなるように漸増させられる燃料噴射量をより低減して燃費を向上させるために、エンジン10のより低回転での燃料噴射の再開でも速やかにそのアイドル回転速度NEIDLでの燃料噴射量FIDLとなるように第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2を作動させてエンジン10の回転駆動を補助する。
【0034】
駆動アシスト可否判定手段108は、上記駆動アシスト手段106によるエンジン10の回転駆動を補助するための第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2の作動が可能か否かを判定する。たとえば、燃料電池70および二次電池71が第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2に充分な電力を供給する電源として機能できるか否かを、たとえば燃料電池70の電圧或いは二次電池71の充電状態が所定の基準値以上であるか否か、または燃料電池70および二次電池71の温度が所定の基準温度以上であるか否かによって判定する。
【0035】
燃料噴射設定量変更手段104は、前記駆動アシスト可否判定手段108によって前記駆動アシスト手段106による第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2の作動が可能か否かの判定結果に応じて、前記燃料噴射量抑制手段102によるエンジン10への燃料噴射量抑制作動のための前記燃料低減線を変更するすなわち燃料噴射量を調整する。すなわち、エンジン10の回転駆動を補助するための第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2の作動が可能でない場合には、予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係であるその燃料低減線を通常の設定であるその第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2が備えられてない場合の設定たとえば図9に示す実線に設定される。また、上記第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2を作動させてエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合には、上記可能でない場合に比較してその燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減する側すなわちより低回転速度側たとえば図9の燃料供給再開回転速度NEAを燃料供給再開回転速度NEMA或いはNEMBに変更してフューエルカット作動となる領域を拡大すると共にアイドル回転速度NEIDLでの燃料供給量FIDLとなるように漸増させられる燃料噴射量をより低減するようにすなわち燃料低減線の傾きを変化させたり横軸に垂直にするようにたとえば図9に示す一点鎖線或いは二点差線に設定される。
【0036】
動力伝達装置制御手段110は、変速制御手段122とロックアップクラッチ制御手段124とを備えており、動力伝達装置である前記自動変速機16或いはロックアップクラッチ26を制御する。上記変速制御手段122は、たとえば図5に示す予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびアクセル開度Acc(エンジン負荷)に基づいて自動変速機16の変速段を決定する。また、上記ロックアップクラッチ制御手段124は、たとえば図6に示す予め記憶されたロックアップ領域線図から実際の車両走行状態を表す車速V(出力側回転速度NOUTに対応)と運転者の要求出力量を表すアクセル開度ACCとに基づいて、係合領域、解放領域、スリップ領域のいずれの領域に属するかを判定し、その判定された領域の作動となるように前記油圧制御回路66内のロックアップコントロールソレノイドを制御してロックアップクラッチ26を係合、解放、或いはスリップのいずれかの状態とする制御を実行する。ここで、ロックアップクラッチ26の係合状態の係合側とは、ロックアップクラッチ26の係合力が大きい側たとえばロックアップオン状態或いはスリップ状態のことであり、またロックアップクラッチ26の係合状態の解放側とは、ロックアップクラッチ26の係合力が小さい側たとえばロックアップオフ状態のことである。たとえば、ロックアップクラッチ26の係合力を減少させる方向への切換えとは、ロックアップクラッチ26の係合側から解放側への切換えのことであり、ロックアップクラッチ26の係合力を増加させる方向への切換えとは、ロックアップクラッチ26の解放側から係合側への切換えのことである。
【0037】
また、上記ロックアップクラッチ制御手段124によって現在のロックアップクラッチ26の係合状態がロックアップオフ状態となっているとエンジン回転速度NEは、ロックアップクラッチ26がロックアップオン状態或いはスリップ状態の場合の車両の減速に従ったエンジン回転速度NEの低下速度たとえばタービン回転速度NT(=γ×出力軸回転速度NOUT、γは現在のギヤ段)の低下速度より早い低下速度となるので、たとえ第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2を作動させてエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合でも、燃料噴射設定量変更手段104による燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減する側への変更を実行しない。
【0038】
また、自動変速機16のクラッチツウクラッチ変速を制御するリニヤソレノイド弁SLUやロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量を制御するリニヤソレノイド弁SLT等に異常が発生した場合には、変速制御手段122による自動変速機16の変速制御或いはロックアップクラッチ制御手段124によるロックアップクラッチ26の制御が速やかに実行されない可能性があるので、たとえ第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2を作動させてエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合でも、燃料噴射設定量変更手段104による燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減する側への変更を実行しない。
【0039】
変速モード判定手段112は、前記操作位置検出スイッチ98によりシフトレバー92の各操作位置を表す信号PSHやモード切換スイッチ96の選択位置を表す信号Pmを検出して、運転者によって手動変速モードが選択されていないか否かを判定する。ここで運転者によって手動変速モードが選択されている場合には、自動変速モードが選択されている場合と違って車速Vとアクセル開度Accから一律に変速段が決定されず、運転者によって何時変速が実行されるのかわからない。たとえば、減速走行中のフューエルカット作動にアップシフトが実行されるとエンジン回転速度NEがより低下するので、変速モード判定手段112によって運転者によって手動変速モードが選択されていると判定される場合には、たとえ第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2を作動させてエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合でも、燃料噴射設定量変更手段104による燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減する側への変更を実行しない。
【0040】
AT油温検出手段116は、前記自動変速機16の作動油温度すなわちAT油温TOILをAT油温センサ74により検出する。ここで検出されたAT油温TOILが低温たとえば暖機運転中であって通常運転状態の温度よりも低いような場合には、変速制御手段122による自動変速機16の変速制御が速やかに実行されない可能性があるので、たとえ第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2を作動させてエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合でも、燃料噴射設定量変更手段104による燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減する側への変更を実行しない。
【0041】
エンジン回転速度判定手段114は、エンジン回転速度センサ76により検出された現在のエンジン回転速度NEの低下速度を判定する。たとえば、現在のエンジン回転速度NEの低下速度が減速走行中のエンジンブレーキ作用が得られる変速段でロックアップクラッチ制御手段124によるスリップ制御作動時における車両の減速にしたがって緩やかに減少させられるときのエンジン回転速度NEの低下速度たとえばタービン回転速度NT(=γ×出力軸回転速度NOUT、γは現在のギヤ段)の低下速度より早くないか否かを判定する。この判定が否定されるすなわち現在のエンジン回転速度NEの低下速度がスリップ制御作動時におけるエンジン回転速度NEの低下速度より早い場合には、たとえ第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2を作動させてエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合でも、燃料噴射設定量変更手段104による燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減する側への変更を実行しない。
【0042】
図10は、前記電子制御装置90の制御作動の要部すなわちアクセルオフの車両の減速走行時にエンジン10への燃料噴射量抑制作動のための予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係である燃料低減線を変更する制御作動を説明するフローチャートである。図10において、前記開度検出手段100に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1において、車両が減速走行中であるか否かがたとえばアクセル開度ACCが所定の抑制状態であるか否かたとえばアクセルオンからアクセルオフにされたか否かによって判定される。このSA1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記駆動アシスト可否判定手段108に対応するSA2において、上記燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減される側すなわちエンジン低回転速度側に設定するために前記駆動アシスト手段106によるエンジン10の回転駆動を補助するための第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2の作動が可能か否かが、たとえば、燃料電池70および二次電池71が第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2に充分な電力を供給する電源として機能できるか否かによって判定される。
【0043】
上記SA2の判断が肯定される場合は前記ロックアップクラッチ制御手段124に対応するSA3において、現在のロックアップクラッチ26の係合状態が係合側に切換えられている状態であればSA3は肯定されて、反対に現在のロックアップクラッチ26の係合状態がロックアップオフ状態であればSA3は否定される。このSA3では他の態様として、前記変速モード判定手段112によって操作位置検出スイッチ98によりシフトレバー92の各操作位置を表す信号PSHやモード切換スイッチ96の選択位置を表す信号Pmを検出して手動変速モードが選択されていないか否かが判定されてもよい。また、前記エンジン回転速度判定手段114によって現在のエンジン回転速度NEの低下速度が早くないか否かが、たとえば現在のエンジン回転速度NEの低下速度が減速走行中のエンジンブレーキ作用が得られる変速段でロックアップクラッチ制御手段124によるスリップ制御作動時における車両の減速にしたがって緩やかに減少させられるときのエンジン回転速度NEの低下速度たとえばタービン回転速度NT(=γ×出力軸回転速度NOUT、γは現在のギヤ段)の低下速度より早くないか否かで判定されてもよい。また、自動変速機16のクラッチツウクラッチ変速を制御するリニヤソレノイド弁SLUやロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量を制御するリニヤソレノイド弁SLT等に異常が発生した場合には、SA3が否定されるようにしてもよい。また、AT油温検出手段116によって検出されたAT油温TOILが低温である場合には、SA3が否定されるようにしてもよい。
【0044】
上記SA3の判断が肯定される場合は前記燃料噴射設定量変更手段104に対応するSA4において、燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減する側すなわちより低回転速度側たとえば図9に示す一点鎖線或いは二点差線に設定される。また、上記SA2の判断が否定されるか或いは上記SA3の判断が否定される場合は前記燃料噴射設定量変更手段104に対応するSA5において、上記燃料低減線が通常の設定である第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2が備えられてない場合の設定たとえば図9に示す実線に設定される。
【0045】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図8において開度予測手段118は、アクセル開度Accが増加することが無いか否かを現在の車両の走行状態等から判断する。たとえば、車両に備えられた登降坂変速制御手段120から降坂路情報を得ることで、車両が降坂路を走行中であり運転者によってアクセルペダルが戻された後すなわちアクセル開度が減少した後直ぐにアクセルペダルが再び踏み込まれるすなわちアクセル開度が増加することが無いと予測する。上記登降坂変速制御手段120は、車両が登降坂路を走行中での自動変速機16の変速を制御ものであり、たとえば、アクセル開度Accや車速Vに基づいて登り坂或いは下り坂を判定し、登坂路では常に最適な駆動力が得られるように最高速ギヤ段たとえば第5速ギヤ段或いは高速ギヤ段たとえば第4速ギヤ段へのアップシフトを禁止或いは抑制し、降坂路では最適なエンジンブレーキが得られるように自動的に現在のギヤ段よりも低速ギヤ段たとえば第3速ギヤ段へダウンシフトする。従って、上記登降坂変速制御手段120による制御作動によって登降坂路情報が得られる、すなわち車両が現在登降坂路を走行中か否かが得られることになる。
【0047】
また、たとえば車両に備えられた協調変速制御手段126から進路前方に存在するカーブの情報や渋滞情報を得ることで、車両が減速される状況であり運転者によってアクセルペダルが戻された後すなわちアクセル開度が減少した後直ぐにアクセルペダルが再び踏み込まれるすなわちアクセル開度が増加することが無いと予測する。上記協調変速制御手段126はよく知られたナビゲーションシステム或いは道路に設けられた発信装置などから送信される車両周辺或いは車両前方の状況に関連した情報を自動変速機16の変速に反映させるものであり、たとえば進路前方に存在するカーブの情報からカーブ領域に進入する前に適切なカーブ進入速度とするためにダウンシフト或いはアップシフト禁止を行って十分なエンジンブレーキ力により減速してカーブを安定的に通過できるようにする。従って、上記協調変速制御手段126によって進路前方に存在するカーブの情報、またそのナビゲーションシステムに関連したよく知られたVICS(道路交通情報通信システム)情報より渋滞情報が得られることになる。また、たとえば車両に搭載された車間距離制御から車間センサたとえばレーダセンサによって前方車両の存在を確認して、その前方車両との距離と現在の車速Vに基づいて車両が減速される状況であり運転者によってアクセルペダルが戻された後すなわちアクセル開度が減少した後直ぐにアクセルペダルが再び踏み込まれるすなわちアクセル開度が増加することが無いと予測する。
【0048】
開始条件設定手段128は、上記開度予測手段118による予測に基づいて前記燃料噴射量抑制手段102によるディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制を開始するためのアクセル開度或いはスロットル開度の条件を設定する。たとえば、車両減速走行中に開度予測手段118によってアクセル開度Accが増加することが無いと予測されるときには、たとえばアクセル開度Accが減少したとき或いはアクセル開度Accが所定の開度以下たとえば前記所定の抑制状態より大きい開度たとえばアクセル開度Accが3〜10%程度以下となったときに燃料噴射量抑制手段102によるディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制を開始するように設定する。また、車両減速走行中に開度予測手段118によってアクセル開度Accが増加することが無いと予測されない場合には、燃料噴射量抑制手段102によるディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制の開始を通常の設定であるアクセル開度Accが所定の抑制状態たとえばアクセルオフで開始するように設定する。
【0049】
図11は、前記電子制御装置90の制御作動の要部すなわちアクセルオフの車両の減速走行時にエンジン10への燃料噴射量抑制作動のための予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係である燃料低減線を変更する制御作動を説明するフローチャートである。図11において、前記開度検出手段100に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SB1において、車両が減速走行中であるか否かがたとえばアクセル開度Accが減少を開始したか否かで判定される。このSB1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は燃料噴射量抑制手段102に対応するSB2において、エンジン10が燃料噴射量抑制作動が可能な状態であるか否かが、たとえばエンジン10が暖気運転前であったり、エンジン10の排気ガス中の有害成分を低減するための触媒の劣化防止のためにフューエルカット作動が実行されない状態であるか否かによって判定される。このSB2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は開度予測手段118に対応するSB3において、アクセル開度Accが増加することが無いか否かが現在の車両の走行状態等から判断される。たとえば、車両に備えられた登降坂変速制御手段120から得られる降坂路情報により車両が降坂路を走行中であるとか、またたとえば車両に備えられた協調変速制御手段126から得られる進路前方に存在するカーブの情報や渋滞情報により車両が減速される状況であるとか、またたとえば車両に搭載された車間距離制御から車間センサたとえばレーダセンサによって前方車両の存在を確認してその前方車両との距離と現在の車速Vに基づいて車両が減速される状況であるとかの場合には、運転者によってアクセルペダルが戻された後すなわちアクセル開度が減少した後直ぐにアクセルペダルが再び踏み込まれるすなわちアクセル開度が増加することが無いと予測される。
【0050】
上記SB3の判断が肯定される場合は開始条件設定手段128に対応するSB4において、アクセル開度Accが減少したとき或いはアクセル開度Accが所定の開度以下たとえば前記所定の抑制状態より大きい開度たとえばアクセル開度Accが3〜10%程度以下となったときにディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制が開始されるように設定される。反対に、SB3の判断が否定される場合は開始条件設定手段128に対応するSB7において、ディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制の開始を通常の設定であるアクセル開度Accが所定の抑制状態たとえばアクセルオフで開始するように設定される。つまり、SB4或いはSB7において車両減速時の燃料噴射量抑制作動の開始を定めるためのアクセル開度Accの条件が設定されることになる。よってSB3の判断が肯定される場合は燃料噴射量抑制作動がアクセル開度Accが所定の抑制状態たとえばアクセルオフとなる前に開始されるように設定される。
【0051】
続く、前記駆動アシスト可否判定手段108に対応するSB5において、燃料噴射量を調整するための条件が成立したか否かが、たとえば上記燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減される側すなわちエンジン低回転速度側に設定するために前記駆動アシスト手段106によるエンジン10の回転駆動を補助するための第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2の作動が可能か否かが、たとえば、燃料電池70および二次電池71が第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2に充分な電力を供給する電源として機能できるか否かによって判定される。上記SB5の判断が肯定される場合は前記燃料噴射設定量変更手段104に対応するSB6において、燃料低減線をエンジン10への燃料噴射量が低減する側すなわちより低回転速度側たとえば図9に示す一点鎖線或いは二点差線に設定されて、SB4或いはSB7で設定された燃料噴射量抑制作動の開始を定めるためのアクセル開度Accの条件に基づいて燃料噴射量抑制手段102によってエンジン10への燃料噴射量の抑制が開始される。また、上記SB5の判断が否定される場合は前記燃料噴射設定量変更手段104に対応するSB8において、上記燃料低減線が通常の設定である第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2が備えられてない場合の設定たとえば図9に示す実線に設定されて、SB4或いはSB7で設定された燃料噴射量抑制作動の開始を定めるためのアクセル開度Accの条件に基づいて燃料噴射量抑制手段102によってエンジン10への燃料噴射量の抑制が開始される。
【0052】
上述のように、本実施例によれば、駆動アシスト可否判定手段108(SA2)による駆動アシスト手段106によってディーゼルエンジン10を再起動させるために回転駆動装置が作動されてそのディーゼルエンジン10の回転駆動の補助が可能か否かの判定結果に応じて、燃料噴射量抑制手段102によって車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が所定の抑制状態であるときに、ディーゼルエンジン10への燃料噴射量が抑制されるときに用いられる予め設定されたエンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係が燃料噴射設定量変更手段104(SA4、SA5)によって変更されるので、たとえばその回転駆動装置としての電動機(MG1、MG2)によってそのエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合には、エンジン10への燃料噴射量が低減されたとしてもエンジン再起動後のエンジン回転速度NEを安定した状態に維持できるので、その予め設定されたエンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係が燃料噴射量を低減する側に変更されて燃費が一層向上する。
【0053】
また、本実施例によれば、燃料噴射設定量変更手段104(SA4、SA5)は、駆動アシスト可否判定手段108(SA2)によって駆動アシスト手段106によるエンジン10の回転駆動の補助が可能であると判定されたときには、可能でないと判定されたときに比較してエンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側に変更するものであるので、たとえばその回転駆動装置としての電動機(MG1、MG2)によってそのエンジン10の回転駆動の補助が可能である場合には、可能でない場合に比較してエンジン10への燃料噴射量が低減されたとしてもエンジン再起動後のエンジン回転速度NEに余裕がなくなることが回避できるすなわちエンジン回転速度NEを安定した状態に維持できるので、そのエンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係が燃料噴射量を低減する側に変更されて燃費が一層向上する。
【0054】
また、本実施例によれば、燃料噴射設定量変更手段104(SA4、SA5)は、その変速モード判定手段112(SA3)によって自動変速機16が手動変速モードに切り換えられていると判定されたときにはエンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しない、或いは低減する側への変更を抑制するものであるので、たとえば自動変速機16が運転者により変速比或いは変速レンジがマニュアル操作されるような手動変速モードに切り換えられていて、自動変速モードのように車速Vとアクセル開度Accから一律に変速比が決まらずまた変速実施タイミングが自動制御されないために、燃料噴射量が低減されているときに運転者により変速されてたとえばアップシフトされてエンジン回転速度NEが低下する可能性が避けられる。
【0055】
また、本実施例によれば、燃料噴射設定量変更手段104(SA4、SA5)は、その動力伝達装置制御手段110(SA3)によるロックアップクラッチ26或いは自動変速機16の制御が不可能であるときには、エンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しないものであるので、たとえば動力伝達装置たとえばロックアップクラッチ26或いは自動変速機16等の作動が正常な状態でないことでその回転駆動装置としての電動機(MG1、MG2)によってそのエンジン10の回転駆動の補助が可能であるにも関わらずエンジン再起動後のエンジン回転速度NEに余裕がなくなる可能性が避けられる。
【0056】
また、本実施例によれば、燃料噴射設定量変更手段104(SA4、SA5)は、自動変速機16の作動油の温度が低いときには、エンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しない、或いは低減する側への変更を抑制するものであるので、たとえば自動変速機16の作動油温度が低温であるためにその変速制御手段122による変速比の切換作動が制約を受ける状態で実施されることが避けられる。
【0057】
また、本実施例によれば、燃料噴射設定量変更手段104(SA4、SA5)は、エンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係を、エンジン回転速度NEの低下速度に応じて燃料噴射量の低減量が変化するように変更するものであるので、たとえばエンジン回転速度NEの低下速度が車両の減速に伴う低下速度に比較して早い場合には、エンジン10への燃料噴射量を低減しない或いは低減量を抑制するので、たとえばその回転駆動装置としての電動機(MG1、MG2)によってそのエンジン10の回転駆動の補助が可能であるにも関わらずエンジン再起動後のエンジン回転速度NEに余裕がなくなる可能性が避けられる。
【0058】
また、本実施例によれば、燃料噴射設定量変更手段104(SA4、SA5)は、ロックアップクラッチ26がロックアップオフ状態であるときには、エンジン回転速度NEに対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しないものであるので、たとえばロックアップクラッチ26がロックアップオフ状態となってエンジン回転速度NEが急低下することでその回転駆動装置としての電動機(MG1、MG2)によってそのエンジン10の回転駆動の補助が可能であるにも関わらずエンジン再起動後のエンジン回転速度NEに余裕がなくなる可能性が避けられる。
【0059】
また、本実施例によれば、燃料噴射量抑制手段102は、開度予測手段118(SB3)によって車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測され且つアクセル開度或いはスロットル開度が減少するときに、ディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制を開始するものであるので、燃料噴射量抑制手段102によるディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制制御がアクセル開度或いはスロットル開度が減少したことで開始される、すなわち実際にはアクセル開度或いはスロットル開度が所定の抑制状態となる前に開始されるので、燃費が一層向上する。
【0060】
また、本実施例によれば、燃料噴射量抑制手段102は、開度予測手段118(SB3)によって車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測され且つアクセル開度或いはスロットル開度が所定の開度以下となるときに、ディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制を開始するものであるので、燃料噴射量抑制手段102によるディーゼルエンジン10への燃料噴射量の抑制制御がアクセル開度或いはスロットル開度が所定の開度以下となったことで開始される、すなわち実際にはアクセル開度或いはスロットル開度が所定の抑制状態となる前に開始されるので、燃費が一層向上する。
【0061】
また、本実施例によれば、開度予測手段118(SB3)は、降坂路情報に基づいてアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測するものであるので、開度予測手段118による降坂路走行中には運転者は再びアクセルペダルを踏込操作することがないすなわちアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないとの予測がたとえば車両が登坂路を走行中は最高速ギヤ比へのアップシフトを禁止したり、降坂路を走行中は低速ギヤ比へダウンシフトする登降坂変速制御手段120による降坂路情報に基づいて行われる。
【0062】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0063】
たとえば、前述の実施例において、SA4或いはSB6で実行される燃料噴射設定量変更手段104によって変更される燃料低減線は、たとえば図9に示すようにエンジン高回転側(通常時)に対してエンジン低回転側の2段階であったが、より多くの段階乃至連続的となるように好適に設定されてもよい。
【0064】
また、前述の実施例において、流体伝動装置としてロックアップクラッチ26が備えられているトルクコンバータ14が用いられていたが、トルク増幅作用のないフルードカップリングが用いられてもよい。
【0065】
また、前述の実施例のエンジン10は、少なくともエンジン10を走行用駆動力源として備えておればよく、エンジン10の吸気配管50および排気管52に設けられている排気タービン式過給機54が備えられてない車両や吸気配管50に設けられているスロットルアクチュエータ60によって開閉制御される電子スロットル弁62が備えられてない車両などにも適用され得る。また、エンジン10に作動的に連結される回転駆動装置としてのモータジェネレータMG1およびMG2は少なくともの一方を備えて少なくとも駆動輪からの運動エネルギーを回転運動に変換して発電を行なう発電機として作動すればよく、またエンジン10に直結される以外にベルト等を介してエンジン10に間接的に連結されてもよい。
【0066】
また、前述の実施例のエンジン10は、気筒86に備えられた吸気弁或いは排気が電磁アクチュエータによって開閉駆動される電磁駆動弁、吸気弁74および排気弁75が電気的アクチュエータである電動モータによって開閉駆動されるモータ駆動式開閉弁、クランク軸の回転に同期して吸気弁および排気弁を開閉駆動させるよく知られた動弁機構に可変機構が備え付けられたものであってもよい。
【0067】
また、前述の実施例では、自動変速機16は3組の遊星歯車装置40、42、44の組み合わせから成る前進5速の変速機であったが、クラッチC或いはブレーキBの油圧式摩擦係合装置の解放および係合の少なくとも一方によって変速が実行される型式の変速機であればよく、自動変速機16を構成する遊星歯車装置の組数は3組とは異なる数であってもよいし、また前進6速の変速機、前進4速の変速機等であっても差し支えない。また、自動変速機16は、変速比が無段階に連続的に変化させられる無段変速機であってもよいし、また、手動変速機としてよく知られた常時噛合式平行2軸型ではあるが、セレクトシリンダおよびシフトシリンダによりギヤ段が自動的に切換られることが可能な自動変速機であってもよい。さらに、自動変速機16は手動変速機であってもよい。
【0068】
また、前述の実施例では、自動変速機16の係合要素であるクラッチC或いはブレーキBは、油圧式摩擦係合装置であったが、電磁式係合装置たとえば電磁クラッチや磁粉式クラッチ等であってもよい。
【0069】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド車両の動力伝達装置を説明する骨子図である。
【図2】図1の自動変速機における、複数の油圧式摩擦係合装置の作動の組合わせとそれにより成立する変速段との関係を示す図である。
【図3】図1のハイブリッド車両の動力伝達装置の概略構成図である。
【図4】図1の動力伝達装置が備えている電子制御装置の入出力系統の要部を説明するブロック線図である。
【図5】図1の動力伝達装置における自動変速機の変速制御に用いられる変速線図を説明する図である。
【図6】図1の動力伝達装置におけるロックアップクラッチの制御に用いられるロックアップ領域線図を説明する図である。
【図7】図1の車両に設けられたシフト操作装置を示す図である。
【図8】図4の電子制御装置が備えている制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図9】燃料噴射量抑制手段に用いられるエンジン回転速度に対する燃料噴射量示す関係図である。
【図10】図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわちアクセルオフの車両の減速走行時にエンジンへの燃料噴射量抑制作動のための予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係である燃料低減線を変更する制御作動を説明するフローチャートである。
【図11】図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわちアクセルオフの車両の減速走行時にエンジンへの燃料噴射量抑制作動のための予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係である燃料低減線を変更する制御作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
10:ディーゼルエンジン
14:トルクコンバータ(流体伝動装置)
26:ロックアップクラッチ
80:燃料噴射制御装置
102:燃料噴射量抑制手段
104:燃料噴射設定量変更手段
106:駆動アシスト手段
108:駆動アシスト可否判定手段
110:動力伝達装置制御手段
112:変速モード判定手段
118:開度予測手段
MG1、MG2:モータジェネレータ(回転駆動装置)
Claims (10)
- ディーゼルエンジンと、該ディーゼルエンジンに作動的に連結される回転駆動装置と、該ディーゼルエンジンに燃料を供給する燃料噴射制御装置とを備えた車両の制御装置であって、
車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が所定の抑制状態であるときは、予め設定されたエンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係に基づいて前記ディーゼルエンジンへの燃料噴射量を抑制する燃料噴射量抑制手段と、
該ディーゼルエンジンを再起動させるために前記回転駆動装置を作動させて該ディーゼルエンジンの回転駆動を補助する駆動アシスト手段と、
該駆動アシスト手段によって該回転駆動装置が作動されて前記エンジンの回転駆動の補助が可能か否かを判定する駆動アシスト可否判定手段と、
該駆動アシスト可否判定手段による判定結果に応じて前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を変更する燃料噴射設定量変更手段と
を、含むことを特徴とする車両の制御装置。 - 前記燃料噴射設定量変更手段は、前記駆動アシスト可否判定手段によって前記駆動アシスト手段による前記エンジンの回転駆動の補助が可能であると判定されたときには、可能でないと判定されたときに比較して前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側に変更するものである請求項1の車両の制御装置。
- 自動変速モードと手動変速モードとを備える自動変速機と、該自動変速モードと手動変速モードとの切換えを判定する変速モード判定手段とを備え、
前記燃料噴射設定量変更手段は、該変速モード判定手段によって自動変速機が手動変速モードに切り換えられていると判定されたときには前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しない、或いは低減する側への変更を抑制するものである請求項2の車両の制御装置。 - 流体伝動装置に備え付けられたロックアップクラッチ或いは前記自動変速機を制御する動力伝達装置制御手段を備え、
前記燃料噴射設定量変更手段は、該動力伝達装置制御手段による前記ロックアップクラッチ或いは前記自動変速機の制御が不可能であるときには、前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しないものである請求項2の車両の制御装置。 - 前記燃料噴射設定量変更手段は、前記自動変速機の作動油の温度が低いときには、前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しない、或いは低減する側への変更を抑制するものである請求項2の車両の制御装置。
- 前記燃料噴射設定量変更手段は、前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、前記エンジン回転速度の低下速度に応じて燃料噴射量の低減量が変化するように変更するものである請求項2の車両の制御装置。
- 前記燃料噴射設定量変更手段は、前記ロックアップクラッチがロックアップオフ状態であるときには、前記エンジン回転速度に対する燃料噴射量の関係を、燃料噴射量が低減する側へ変更しないものである請求項2の車両の制御装置。
- アクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないことを予測する開度予測手段を備え、
前記燃料噴射量抑制手段は、該開度予測手段によって車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測され且つアクセル開度或いはスロットル開度が減少するときに、前記ディーゼルエンジンへの燃料噴射量の抑制を開始するものである請求項1または2の車両の制御装置。 - アクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないことを予測する開度予測手段を備え、
前記燃料噴射量抑制手段は、該開度予測手段によって車両の減速走行中にアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測され且つアクセル開度或いはスロットル開度が所定の開度以下となるときに、前記ディーゼルエンジンへの燃料噴射量の抑制を開始するものである請求項1または2の車両の制御装置。 - 前記開度予測手段は、降坂路情報に基づいてアクセル開度或いはスロットル開度が増加することがないと予測するものである請求項8または9の車両の制御装置。
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