以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。トルクコンバータ14は、エンジン12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えており、ポンプ翼車20とタービン翼車24との間で流体を介して動力伝達を行うとともに、ポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26を備えている。ロックアップクラッチ26は、係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチで、完全係合させられることにより、ポンプ翼車20およびタービン翼車24は一体回転させられる。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわち係合トルクがフィードバック制御されることにより、駆動時には例えば50rpm程度の所定のスリップ量でタービン翼車24をポンプ翼車20に対して追従回転させる一方、逆入力時には例えば−50rpm程度の所定のスリップ量でポンプ翼車20をタービン翼車24に対して追従回転させることができる。
自動変速機16は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置40、およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置42、第3遊星歯車装置44を備えている遊星歯車式の変速機で、第1遊星歯車装置40のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF2およびブレーキB3を介してハウジング38に選択的に連結され、逆方向(入力軸22と反対方向)の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジング38に選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられた一方向クラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置42のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっている。第2遊星歯車装置42のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置44のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF0およびクラッチC1を介して入力軸22に選択的に連結され、その入力軸22に対して相対的に逆方向へ回転することが阻止されるようになっている。第2遊星歯車装置42のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置44のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっており、更にブレーキB4と並列に設けられた一方向クラッチF3により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。そして、第3遊星歯車装置44のキャリアCA3は、出力軸46に一体的に連結されている。
上記クラッチC0〜C4、およびブレーキB1〜B4(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路98(図3参照)のソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図6参照)の操作位置(ポジション)に応じて6つの前進変速段(1st〜6th)および1つの後進変速段(Rev)が成立させられる。図2の「1st」〜「6th」は前進の第1変速段〜第6変速段を意味しており、第1変速段「1st」から第6変速段「6th」へ向かうに従って変速比(入力軸22の回転速度Nin/出力軸46の回転速度Nout )は小さくなり、第4変速段「4th」の変速比は1.0である。また、図2において「○」は係合、空欄は解放を表し、「(○)」はエンジンブレーキ時の係合を表し、「●」は動力伝達に関与しない係合を表している。
図3の油圧制御回路98は、上記変速用のソレノイド弁Sol1〜Sol5、リニアソレノイド弁SL1、SL2の他に、主にロックアップ油圧すなわち前記係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPを制御するリニアソレノイド弁SLU、主にライン油圧を制御するリニアソレノイド弁SLTを備えており、油圧制御回路98内の作動油は、ロックアップクラッチ14へも供給されるとともに、自動変速機16等の各部の潤滑にも使用される。
図3は、図1のエンジン12や自動変速機16などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセルペダル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によってアクセルペダル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン12のアイドル回転速度NEIDL を制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC(アイドル回転速度制御)バルブ53が設けられている。この他、エンジン12の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン12の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速V(出力軸46の回転速度Nout に対応)を検出するための車速センサ66、エンジン12の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度Nin)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。また、フットブレーキの操作時に車輪がロック(スリップ)しないようにブレーキ力を制御するABS(アンチロックブレーキシステム)84に接続され、ブレーキ力に対応するブレーキ油圧等に関する情報が供給されるとともに、エアコン86から作動の有無を表す信号が供給されるようになっている。
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や自動変速機16の変速制御、ロックアップクラッチ26のスリップ制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。図4は、電子制御装置90の信号処理によって実行される機能を説明するブロック線図で、機能的にエンジン制御手段100、変速制御手段110、コースト時L/Uスリップ制御手段120を備えている。
エンジン制御手段100は、基本的にエンジン12の出力制御を行うもので、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射装置92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御し、アイドル回転速度制御のためにISCバルブ53を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図5に示す関係から実際のアクセルペダル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセルペダル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン12の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってエンジン12のクランク軸をクランキングする。
変速制御手段110は、シフトレバー72のレバーポジションPSHに応じて自動変速機16の変速制御を行う。シフトレバー72は運転席の近傍に配設され、図6に示す4つのレバーポジション「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、または「S(シーケンシャル)」へ手動操作されるようになっている。「R」ポジションは後進走行位置で、「N」ポジションは動力伝達遮断位置で、「D」ポジションは自動変速による前進走行位置で、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置であり、シフトレバー72がどのレバーポジションへ操作されているかが前記レバーポジションセンサ74によって検出される。また、レバーポジション「R」、「N」、「D(S)」は車両の前後方向(図6の上方が車両前側)に沿って設けられており、シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブがシフトレバー72の前後操作に伴って機械的に作動させられることにより、油圧回路が切り換えられるようになっており、「R」ポジションではリバース用回路が機械的に成立させられるなどして図2に示す後進変速段「Rev」が成立させられ、「N」ポジションではニュートラル回路が機械的に成立させられて総てのクラッチCおよびブレーキBが解放される。
また、前進走行位置である「D」ポジションまたは「S」ポジションへ操作された場合は、同じくシフトレバー72の操作に従ってマニュアルバルブにより油圧回路が切り換えられることにより前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」で変速しながら前進走行することが可能となる。シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。すなわち、前記ソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁をそれぞれ制御することにより、油圧回路を切り換えて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の何れかの前進変速段を成立させるのである。この変速制御は、例えば図7に示すように車速Vおよびスロットル弁開度θTHをパラメータとして予め記憶された変速マップ(変速条件)に従って行われ、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段を成立させる。なお、本実施例では第1変速段「1st」〜第4変速段「4th」でクラッチC4を係合させ、第4変速段「4th」〜第6変速段「6th」では常にエンジンブレーキ作用が得られるようになっている。
シフトレバー72が「S」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断してマニュアル変速モードを成立させる。「S」ポジションは、車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、油圧回路は「D」ポジションの時と同じであるが、「D」ポジションで変速可能な変速範囲内すなわち第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の間で定められた複数の変速レンジを任意に選択できるマニュアル変速モードを電気的に成立させるのである。「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「(+)」、およびダウンシフト位置「(−)」が設けられており、シフトレバー72がそれ等のアップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」へ操作されると、そのことが前記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82によって検出され、アップ指令RUPやダウン指令RDNに従って図8に示すように最高速段すなわち変速比が小さい高速側の変速範囲が異なる6つの変速レンジ「D」、「5」、「4」、「3」、「2」、「L」の何れかを電気的に成立させるとともに、各変速範囲内において例えば図7の変速マップに従って自動的に変速制御を行う。図8の○付き数字はエンジンブレーキ作用が得られる変速段で、各変速レンジの高速側の変速段でエンジンブレーキ作用が得られるようになっており、例えば下り坂などでシフトレバー72をダウンシフト位置「−」へ繰り返し操作すると、変速レンジが例えば「4」レンジから、「3」レンジ、「2」レンジ、「L」レンジへ切り換えられ、第4変速段「4th」から第3変速段「3rd」、第2変速段「2nd」、第1変速段「1st」へ順次ダウンシフトされて、エンジンブレーキが段階的に増大させられる。
上記アップシフト位置「(+)」およびダウンシフト位置「(−)」は何れも不安定で、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により自動的に「S」ポジションへ戻されるようになっており、アップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」への操作回数或いは保持時間などに応じて変速レンジが変更される。
また、コースト時L/Uスリップ制御手段120は、スロットル弁開度θTHが略0で惰性走行する前進走行のコースト時に、ロックアップクラッチ26が所定の目標スリップ量SLP(例えば−50rpm程度)で係合させられるように、前記差圧ΔPに関与するリニアソレノイド弁SLUの励磁電流のデューティ比DSLU をフィードバック制御する。このスリップ制御は、駆動輪側からの逆入力をエンジン12側へ伝達する変速段、すなわちエンジンブレーキ作用が得られる変速段で行われ、例えば第4変速段「4th」〜第6変速段「6th」で行われる。このようにロックアップクラッチ26がスリップ係合させられると、エンジン回転速度NEがタービン回転速度NT付近まで引き上げられるため、エンジン12に対する燃料供給を停止するフューエルカット領域(車速範囲)が拡大されて燃費が向上する。なお、ロックアップクラッチ26は、コースト時以外にもスロットル弁開度θTHおよび車速V等をパラメータとして予め定められた完全係合領域およびスリップ係合領域で、それぞれ完全係合或いはスリップ係合させられるようになっている。
一方、前記エンジン制御手段100は、F/C復帰回転速度変更手段102、フューエルカット手段104、およびコースト変速時スロットル開き手段106を備えており、フューエルカット手段104は図9のフローチャートに従って信号処理を行う。フューエルカット手段104は、スロットル弁開度θTHが略0で惰性走行する前進走行のコースト時にエンジン12に対する燃料供給を停止して燃費を向上させるためのもので、図9のステップS1−1ではフューエルカット(燃料の供給停止)を実行中か否かを判断し、実行中であればステップS1−2でフューエルカット中止条件を満足するか否かを判断する一方、実行中でなければステップS1−3でフューエルカット開始条件を満足するか否かを判断する。
ステップS1−2のフューエルカット中止条件は、エンジン回転速度NEが予め定められたF/C復帰回転速度NEFCを下回った場合、アクセルペダル50が踏込み操作されてアクセル操作量Accが略0でなくなった場合、等を含んで定められており、NE<NEFC等のフューエルカット中止条件を何れも満足しない場合には、ステップS1−5を実行してフューエルカットを継続するが、フューエルカット中止条件の何れか1つでも満足する場合にはステップS1−4でフューエルカットを中止し、燃料噴射装置92による燃料供給を再開してエンジン12を速やかに起動する。
F/C復帰回転速度NEFCは、燃料供給が再開されることにより直ちにエンジン12が起動(自力回転)できる回転速度で、エアコン86等の補機類の作動に伴うエンジン負荷の変化を考慮して予め一定値が定められても良いが、本実施例ではF/C復帰回転速度変更手段102によりエンジン負荷に応じて変更されるようになっている。図10は、F/C復帰回転速度変更手段102の信号処理を具体的に説明するフローチャートで、ステップS2−1ではエアコン86がONすなわち作動状態か否かを判断し、ONの場合はステップS2−2でF/C復帰回転速度NEFCを高回転とし、OFFすなわち非作動の場合はステップS2−3でF/C復帰回転速度NEFCを低回転とする。これにより、エンジン負荷が大きい場合でも、燃料供給の再開によりエンジン12を確実に起動できるとともに、エンジン負荷が小さい時には低回転までフューエルカットが継続されて燃費が向上する。エアコン86が可変容量エアコンである場合など、エンジン負荷が連続的に変化する場合には、そのエンジン負荷に応じてF/C復帰回転速度NEFCを連続的或いは多段階で変化させるようにしても良い。また、エアコン86のON、OFF等のエンジン負荷に応じてアイドル回転速度NEidl が変更されるため、このアイドル回転速度NEidl に対応させてF/C復帰回転速度NEFCを設定すれば、エンジン起動後のエンジン回転速度NEの変化に起因するショック等を抑制できる。
図9に戻って、前記ステップS1−3のフューエルカット開始条件は、上記ステップS1−2のフューエルカット中止条件の反対条件であっても良いが、所定のヒステリシスを与えるために、例えばエンジン回転速度NEが前記F/C復帰回転速度NEFCよりも所定量或いは所定割合だけ高い回転速度以上であること、アルセル操作量Accが略0のアクセルOFF状態が所定時間以上継続したこと、等を開始条件としても良い。また、エンジン冷却水温TW が所定値以上であるなど、他の開始条件を設定することもできる。そして、このフューエルカット開始条件を総て満足する場合は、ステップS1−5でフューエルカットを実行し、燃料噴射装置92による燃料供給を停止する。
また、図4のコースト変速時スロットル開き手段106は、図11に示すフローチャートに従って信号処理を行う。図11のステップS3−1では、前記コースト時L/Uスリップ制御手段120によるロックアップクラッチ26のスリップ制御が実行中か否かを、例えばスリップ制御実行中であることを表すフラグ等によって判断し、コースト時L/Uスリップ制御実行中の場合には、前記フューエルカット手段104によりフューエルカットが行われているか否かをステップS3−2で判断する。フューエルカット実行中であれば、ステップS3−3で前記変速制御手段110によってダウンシフト出力、すなわち前記ソレノイド弁Sol1〜Sol5やリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁の切換制御、が為されたか否か判断し、ダウンシフト出力が為された場合はステップS3−4以下を実行する。コースト時のダウンシフトは、前記図7の変速マップによる変速とは別に、コースト時ダウンシフト手段114(図4参照)により車速Vが予め定められたコーストダウン車速VDN1以下になった場合に行われるようになっている。
ステップS3−4では、フューエルカットを継続したままエンジン12の電子スロットル弁56を開き制御し、ポンピング作用によるエンジンブレーキを抑制する。すなわち、ダウンシフトに伴ってエンジン回転速度NEは上昇し、その時の回転変化に伴うイナーシャでエンジンブレーキが一時的に大きくなるため、電子スロットル弁56を開き制御してエンジンブレーキを低減し、駆動力変動によるショックを抑制するのである。電子スロットル弁56の開き制御開始時間は、ダウンシフトの変速出力時、イナーシャ相の開始時など適宜定められ、開き量は全開(100%)など適宜定められる。ステップS3−5では、ダウンシフトが終了したか否かを、例えばタービン回転速度NTと出力軸回転速度Nout との比(NT/Nout )がダウンシフト後の変速段の変速比と略一致するか否か、等によって判断し、変速が終了したらステップS3−6で電子スロットル弁56を閉じ制御する。この閉じ制御は、エンジンブレーキが徐々に大きくなるように、スロットル弁開度θTHを徐変させる。
このように、コースト時L/Uスリップ制御を実行中で且つフューエルカットを実行中にダウンシフトが行われる際には、フューエルカットを維持したまま電子スロットル弁56が開き制御され、エンジン12の吸気側のエア通路が一時的に拡大されるため、ポンピング作用によるエンジンブレーキが小さくなり、ダウンシフト時のエンジン回転速度変化に伴うエンジンブレーキの急激な増加が抑制されて変速ショックが低減される。
図4の変速制御手段110は、ダウンシフト速度変更手段112、コースト時ダウンシフト手段114、および変速条件変更手段116を備えており、コースト時ダウンシフト手段114は図12のフローチャートに従って信号処理を行う。図12のステップQ1−1では、スロットル弁開度θTHが略0で惰性走行する前進走行のコースト時か否かを、例えばアイドルスイッチ付きスロットルセンサ64のアイドルスイッチがONか否か、等によって判断し、コースト時であればステップQ1−2以下を実行する。ステップQ1−2では、前記コースト時L/Uスリップ制御手段120によるロックアップクラッチ26のスリップ制御が実行中か否かを、例えばスリップ制御実行中であることを表すフラグ等によって判断し、コースト時L/Uスリップ制御実行中の場合はステップQ1−3でダウンシフト判定を行う一方、コースト時L/Uスリップ制御を実行中でない場合はステップQ1−4でダウンシフト判定を行う。
ステップQ1−3でダウンシフト判定を行う際の判定値であるコーストダウン車速VDN1は、前記フューエルカット手段104によるフューエルカットが継続されるように、言い換えればエンジン回転速度NEが前記F/C復帰回転速度NEFCに達する前にダウンシフトが行われるように、各前進変速段の変速比に応じて変速段毎に定められている。例えば第6変速段「6th」から第5変速段「5th」へダウンシフトするコーストダウン車速VDN1は、図13の車速V2など、実線で示す通常の6→5ダウンシフト線よりも高車速側に定められる。そして、V≦VDN1であれば、ステップQ1−5でダウンシフトが行われることにより、エンジン回転速度NEがF/C復帰回転速度NEFCよりも高回転の状態が維持されて、フューエルカットが継続される。
一方、何等かの理由でロックアップクラッチ26がスリップ制御されていない場合は、スリップ制御時に比較してエンジン回転速度NEが低下し、車速Vが前記コーストダウン車速VDN1まで低下した時にはNE≦NEFCとなってフューエルカットが中止される可能性が高いため、そのコーストダウン車速VDN1でダウンシフトを行う必要性は低い。このため、ステップQ1−4でダウンシフト判定を行う際の判定値であるコーストダウン車速VDN2は、F/C復帰回転速度NEFCを考慮することなく、例えば変速ショック等を考慮してできるだけ低車速に設定することができる。例えば第6変速段「6th」から第5変速段「5th」へダウンシフトするコーストダウン車速VDN2は、図13の車速V1など、実線で示す通常の6→5ダウンシフト線よりも低車速側に定めることができる。そして、V≦VDN2であれば、ステップQ1−5でダウンシフトが行われるが、車速Vが低いため、ダウンシフトに伴うエンジン回転速度NEの変化量が少なく、イナーシャによる変速ショックが抑制される。
このように、コースト時L/Uスリップ制御手段120によってロックアップクラッチ26がスリップ係合させられているか否かにより、異なるコーストダウン車速VDN1、VDN2で自動変速機16がダウンシフトされるようになっており、ロックアップクラッチ26がスリップ制御されている時には、比較的高いコーストダウン車速VDN1(図13の車速V2など)でダウンシフトが行われることにより、フューエルカットが確実に継続されて燃費が向上する一方、ロックアップクラッチ26の解放時には、比較的低いコーストダウン車速VDN2(図13の車速V1など)でダウンシフトが行われることにより、ダウンシフトに伴う入力軸22やエンジン12の回転速度変化が小さくなって変速ショックが低減される。
前記ステップQ1−4ではまた、ロックアップクラッチ26が解放状態であっても、NE>NEFCが維持されてフューエルカットが継続されるように、例えば図13における車速V3など、前記コーストダウン車速VDN1よりも高車速をコーストダウン車速VDN2として、ダウンシフト判定を行うこともできる。すなわち、ロックアップクラッチ26が解放状態であってもトルクコンバータ14のポンプ翼車20は流体の作用で連れ廻りさせられ、それに伴ってエンジン回転速度NEが引き上げられるため、エンジン回転速度NEがF/C復帰回転速度NEFCよりも高回転の状態でダウンシフトが行われるように、コーストダウン車速VDN2を設定するのである。
その場合は、ロックアップクラッチ26のスリップ制御時に、フューエルカットを確実に継続したままダウンシフトが行われることにより燃費が向上する点は同じであるが、ロックアップクラッチ26の解放時にも、フューエルカットを継続したままダウンシフトが行われるため、燃費が一層向上する。
図4のダウンシフト速度変更手段112は、前記コースト時ダウンシフト手段114によってダウンシフトが行われる際の変速速度を、車両の減速度に応じて変更するもので、具体的には図14のフローチャートに従って信号処理を行う。図14のステップQ2−1では、常用ブレーキであるフットブレーキがONすなわち踏込み操作中か否かを判断し、踏込み操作中の場合、言い換えれば車両の減速度が大きい場合はステップQ2−2でコーストダウンシフト時の変速速度を大きくする一方、踏込み操作中でない場合は変速速度を通常の大きさに戻す。変速速度は、例えば前記リニアソレノイド弁SL1、SL2により係合油圧を上昇させたり、リニアソレノイド弁SLTによってライン油圧を上昇させたりすれば、前記クラッチCやブレーキBに対して速やかに作動油が供給されて、変速時間が短くなる。
このように、コースト時ダウンシフト手段114によるダウンシフト中の変速速度を、車両の減速度が大きい時すなわちブレーキ操作時には大きくするようになっているため、減速度が大きい場合にはダウンシフトが速やかに行われるようになり、エンジン回転速度NEがF/C復帰回転速度NEFCに達して燃料供給が再開されるまでの時間が長くなって燃費が向上する。また、ブレーキOFFで車両の減速度が小さい場合にはダウンシフト中の変速速度が遅いため、エンジン回転速度NEやエンジンブレーキの変化が緩やかで変速ショックが抑制される。
図15は、5→4ダウンシフト時に、上記ダウンシフト速度変更手段112によりブレーキのON、OFFに応じて変速速度が切り換えられた場合の回転速度変化を例示したタイムチャートで、実線はブレーキOFF、一点鎖線はブレーキONすなわち車両の減速度が大きい場合である。そして、時間t1 はイナーシャ相が始まった時間で、時間t3 はブレーキONで変速速度が速い場合の変速終了時間で、時間t5 はブレーキOFFで変速速度が遅い場合の変速終了時間であり、時間t3 〜t5 だけ変速時間が相違する。また、点線は、ブレーキON時にブレーキOFF時と同じ変速速度でダウンシフトを行った場合のエンジン回転速度NEで、その場合は時間t2 でエンジン回転速度NEがF/C復帰回転速度NEFCを下回ってフューエルカットが中止されるのに対し、本実施例(一点鎖線)では時間t4 までフューエルカットが延長される。
ここで、ブレーキ操作時には、変速速度上昇で変速ショックが発生しても運転者に違和感を生じさせる可能性は少ない。また、減速度が大きい場合に前記コーストダウン車速VDN1を高くすれば、ダウンシフトによりエンジン回転速度NEの低下を遅らせて燃料供給再開までの時間を長くできるが、その場合はアップシフトとのヒステリシスが狭くなるため、アクセル操作時等にビジーシフト感を生じさせる可能性があり、本実施例に比べて不利である。
上記図14は、本発明の実施例に相当する。
なお、上記実施例ではフットブレーキのON、OFFで変速速度すなわち油圧を切り換えるようになっていたが、例えばABS84から供給されるブレーキ油圧の情報に基づいて切り換えることもできるし、そのブレーキ油圧の大きさに応じて変速速度を連続的或いは多段階で変化させるようにしても良い。
また、図16に示すように、車速Vの変化から車両の減速度を検出し(Q3−1)、その減速度に応じて変速速度(例えば係合油圧)を連続的或いは多段階で変化させる(Q3−2)ようにすることもできる。この場合は、登り勾配で減速した場合でも、ダウンシフト速度が速くされてフューエルカット時間が長くなる。
図4の変速条件変更手段116は、前記F/C復帰回転速度変更手段102によってF/C復帰回転速度NEFCが変更された場合に、その変更に拘らずフューエルカットを継続したままコーストダウンシフトが行われるように自動変速機16の変速条件を変更するもので、図17のフローチャートに従って信号処理を行う。図17のステップQ4−1では、F/C復帰回転速度変更手段102によりエアコン86のON時にF/C復帰回転速度NEFCが高くされたか否かをフラグ等によって判断し、F/C復帰回転速度NEFCが高い場合はステップQ4−2で変速条件を高車速側へ移動させる一方、F/C復帰回転速度NEFCが低い場合はステップQ4−3で変速条件を通常の値に戻す。この場合の変速条件は、前記コーストダウン車速VDN1だけでなく、コースト時以外の変速条件(図7の変速マップ)も含み、例えば前記図13の車速V4をコーストダウン車速VDN1とするとともに、5→6アップシフト線、6→5ダウンシフト線を一点鎖線で示すように高車速側へずらしてコーストダウン車速VDN1がそれ等の間に入るようにする。車速V4は、エアコンON時のF/C復帰回転速度NEFCおよび第6変速段「6th」の変速比から求められる第6変速段「6th」のフューエルカット領域の範囲内で下限値に近い車速であり、これによりフューエルカットを継続したままダウンシフトが行われる。なお、前記車速V2は、エアコンOFF時のF/C復帰回転速度NEFCおよび第6変速段「6th」の変速比から求められる第6変速段「6th」のフューエルカット領域の範囲内で下限値に近い車速である。また、F/C復帰回転速度NEFCが連続的或いは多段階で変更される場合は、上記変速条件についても連続的或いは多段階で変更することが望ましい。
このように、エアコン86のON、OFFに伴ってF/C復帰回転速度NEFCが変更された場合に、そのF/C復帰回転速度NEFCの変更に拘らずフューエルカットが継続されるように、そのF/C復帰回転速度NEFCの変更に応じてコーストダウン車速VDN1やコースト時以外の通常の変速マップが変更されるため、F/C復帰回転速度NEFCの変更に拘らずフューエルカットが継続されて燃費が向上する。また、このようにF/C復帰回転速度NEFCの変更に応じてコーストダウン車速VDN1が変更されることから、そのコーストダウン車速VDN1をできるだけ低車速に設定することが可能で、ダウンシフトに伴うエンジン回転速度変化、更にはエンジンブレーキの変化を小さくしてショックを低減できる。
図4に戻って、前記コースト時L/Uスリップ制御手段120は変速時スリップ制御手段122を備えており、図18のフローチャートに従って信号処理を行う。図18のステップR1−6〜R1−8は、変速時スリップ制御手段122によって実行される部分である。また、図19は、5→4コーストダウンシフト時に図18のフローチャートに従ってスリップ制御が行われた場合のデューティ比DSLU 、回転速度Nout 、NT、NE、およびアウトプットトルクの変化を示すタイムチャートの一例で、デューティ比DSLU は前記差圧ΔP、更にはロックアップクラッチ26の係合トルクに対応し、アウトプットトルクはエンジンブレーキに相当する。アウトプットトルクが−側に大きくなる程エンジンブレーキが大きくなる。
図18のステップR1−1ではコースト時L/Uスリップ制御を実行中か否かを判断し、実行中でなければステップR1−2でコースト時L/Uスリップ制御の開始条件を満足するか否かを判断する一方、実行中であればステップR1−3でコースト時スリップ制御の中止条件を満足するか否かを判断する。ステップR1−2の開始条件は、スロットル弁開度θTHが略0で惰性走行する前進走行のコースト時であること、車速Vが所定車速以上であること、AT油温TOIL がスリップ制御が可能な所定の温度範囲であること、等を含んで定められており、開始条件を総て満足する場合にはステップR1−4を実行し、実際のスリップ量(NE−NT)が予め定められた目標スリップ量SLP(例えば−50rpm)となるように、フィードフォワード制御(FF)およびフィードバック制御(FB)を併用して、ロックアップクラッチ26の係合トルクに対応するリニアソレノイド弁SLUの励磁電流のデューティ比DSLU を制御する。
ステップR1−3の中止条件は、上記ステップR1−2の開始条件の反対条件、すなわちアクセルペダル50が踏込み操作されてアクセル操作量Accが略0でなくなった場合、車速Vが所定車速を下回った場合、AT油温TOIL が所定の温度範囲を外れた場合、等であっても良いが、所定のヒステリシスを与えるようにすることもできる。すなわち、アルセル操作量Accが略0のアクセルOFF状態が所定時間以上継続した場合に開始したり、中止条件の車速を開始条件よりも所定値或いは所定割合だけ低くしたりすれば良い。そして、中止条件を何れも満足しない場合には、ステップR1−4を実行してスリップ制御を継続するが、中止条件の何れか1つでも満足する場合にはステップR1−5でコースト時L/Uスリップ制御を中止する。
ステップR1−6では、前記コースト時ダウンシフト手段114によってダウンシフト出力が為されたか否か判断し、ダウンシフト出力が為された場合はステップR1−7を実行する。ステップR1−7ではイナーシャ相が始まったか否か、すなわちダウンシフト出力により低速段側のクラッチCまたはブレーキB(5→4ダウンシフトではC4)が係合トルクを発生してタービン回転速度NTが上昇し始めたか否かを、そのタービン回転速度NTと出力軸回転速度Nout との比などから判断し、イナーシャ相が開始したらステップR1−8でフィードバック制御を中止して、フィードフォワード制御のみでデューティ比DSLU を制御する。フィードフォワード制御による制御値すなわちフィードフォワード値は、例えばステップR1−7の判断がYESになった時のデューティ比DSLU 、そのデューティ比DSLU よりも所定値、或いは所定割合だけ小さい値、或いは予め定められた一定の設定値などであり、必要に応じて学習補正するようにしても良い。図19の時間t1 は、5→4ダウンシフト出力が為されてステップR1−6の判断がYESになった時間で、時間t2 はイナーシャ相が始まってステップR1−7の判断がYESになった時間であり、各グラフの実線は本実施例に関するもので、一点鎖線はダウンシフト出力時にフィードフォワード制御のみへ切り換える従来の場合である。
ステップR1−9ではダウンシフトが終了したか否かを、例えばタービン回転速度NTと出力軸回転速度Nout との比(NT/Nout )がダウンシフト後の変速段の変速比と略一致するか否か、等によって判断し、変速が終了したらステップS1−10を実行してフィードバック制御を再開し、フィードフォワード制御およびフィードバック制御を併用して、実際のスリップ量(NE−NT)が予め定められた目標スリップ量SLP(例えば−50rpm)となるようにデューティ比DSLU を制御する。図19の時間t3 は、ダウンシフトが終了してフィードバック制御が再開された時間である。
このように、コースト時ダウンシフト手段114によってダウンシフトが行われる際に、イナーシャ相が始まるまではロックアップクラッチ26が所定の目標スリップ量SLPとなるようにデューティ比DSLU をフィードバック制御するため、例えば図19に一点鎖線で示す従来例のように実際のスリップ量(NE−NT)が過大になってエンジン回転速度NEがF/C復帰回転速度NEFCを下回り、燃料供給が再開されて燃費が悪化したりアウトプットトルクが急に変化したりすることが防止される。また、このようにスリップ量(NE−NT)が過大になってエンジン回転速度NEが大きく低下することが防止されることから、コーストダウン車速VDN1をできるだけ低車速に設定することが可能で、ダウンシフトに伴うエンジン回転速度変化、更にはエンジンブレーキの変化を小さくしてショックを低減できる。
また、ダウンシフトに伴ってタービン回転速度NTが変化し始めるまで、すなわちイナーシャ相が始まるまでは、実際のスリップ量(NE−NT)と目標スリップ量SLPとの偏差が拡大することはないため、そのイナーシャ相が始まるまでフィードバック制御を継続してその後に中止することにより、フィードバック制御の中止でエンジン回転速度NEが低下することをできるだけ抑制しながら、ダウンシフトに伴うタービン回転速度NTの変化で実際のスリップ量(NE−NT)と目標スリップ量SLPとの偏差が大きくなってフィードバック制御によりエンジン回転速度NE、更にはエンジンブレーキが急激に変化して変速ショックを発生することが防止される。
一方、上記実施例では変速終了後に直ちに目標スリップ量SLPを用いてフィードバック制御を再開するため、その再開時の実際のスリップ量(NE−NT)と目標スリップ量SLPとの偏差が大きい場合には、図22に一点鎖線で示すように、フィードバック制御の再開に伴ってエンジン回転速度NE、更にはエンジンブレーキが急に変化してショックを発生する可能性がある。このため、図20の機能ブロック線図に示すように目標スリップ量変更手段124を設け、ダウンシフト後にフィードバック制御を再開する際の目標スリップ量SLPを変更することにより、フィードバック制御によるスリップ量の制御性能を一時的に低下させるようにすることも可能である。
すなわち、図21のフローチャートに示すように、ダウンシフトが終了してステップR1−9の判断がYESとなったら、先ずステップR1−11で、その時の実際のスリップ量(NE−NT)、またはそれより所定量、或いは所定割合だけ小さい(0に近い)値を目標スリップ量SLPに設定し、ステップR1−10ではその目標スリップ量SLPを用いてフィードバック制御を再開するのである。また、ステップR1−12では、目標スリップ量SLPを元の基準値(例えば−50rpm)まで徐々に戻し、実際のスリップ量(NE−NT)をその基準値まで緩やかに近づける。ステップR1−11およびR1−12は目標スリップ量変更手段124によって実行される。図22の実線は、この場合のデューティ比DSLU 、回転速度Nout 、NT、NE、および目標スリップ量SLPの変化を示すタイムチャートの一例である。
本実施例では、ダウンシフト後にフィードバック制御を再開する際に、目標スリップ量変更手段124により実際のスリップ量(NE−NT)に応じて目標スリップ量SLPを一時的に大きくした後、徐々に元の目標スリップ量(基準値)へ戻すため、ダウンシフト時のタービン回転速度NTの変化に伴って拡大したスリップ量(NE−NT)が徐々に元の目標スリップ量(基準値)へ近づけられるようになり、それに伴ってエンジン回転速度NEやエンジンブレーキも徐々に変化させられるため、変速時のショックが一層確実に防止される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用駆動装置 12:エンジン 16:自動変速機 56:電子スロットル弁 90:電子制御装置 100:エンジン制御手段 104:フューエルカット手段 110:変速制御手段 112:ダウンシフト速度変更手段 114:コースト時ダウンシフト手段 NE:エンジン回転速度