JP2004307971A - 窒化処理装置、窒化処理方法及び酸窒化制御装置 - Google Patents

窒化処理装置、窒化処理方法及び酸窒化制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】効率的に窒化処理が行なえ、鋼製の部材、部品等に耐摩耗性等に優れた高硬度の硬化層を比較的短時間に低コストで形成できる窒化処理装置及び方法、並びに特に酸窒化処理の安全性を確保できる酸窒化制御装置を提供する。
【解決手段】ワークWを載置する装入テーブル2と、ワークを載置するテーブル31a,31bを備えた装入・冷却室3と、ワークを載置するテーブル41を備えた窒化処理室4からなる窒化処理装置1であって、上記装入・冷却室のテーブルが、複数のワークを載置可能であると共に、載置されたそれぞれのワークを窒化処理室に交互に移送可能に構成されている。アンモニアガスと空気又は酸素はそれぞれ制御部69に電気的に接続されているマスフローコントローラ54,59、電磁弁56,60、及び逆止弁57,61を介して窒化処理室に導入される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼製の部材、部品等に耐摩耗性、機械的強度に優れた高硬度の硬化層を形成するための窒化処理装置、窒化処理方法及び酸窒化制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼製の部材、部品等の耐摩耗性、硬度等の特性向上のために、窒化処理等の表面硬化処理が一般的に実施されている。
通常のガス窒化は、アンモニアNHを反応ガス種とするものであり、アンモニアは高温に加熱されると下記式(1)のように分解する。
【化1】
Figure 2004307971
【0003】
その際生ずる発生機N・(活性窒素)が鋼表面に吸着、内部拡散し、下記式(2)で示されるように窒化され、窒素の化合物層や拡散硬化層を生成する。
【化2】
Figure 2004307971
【0004】
一方、形成されたFeNは、下記式(3)のように水素ガスによって脱窒素反応が起こる。
【化3】
Figure 2004307971
従って、被処理鋼は、アンモニアの分解によって生ずる発生機N・の窒化作用とHの脱窒素、所謂還元反応を同時に受ける。すなわち、窒素が鋼との窒化反応に、水素が窒化を抑制する還元反応に関与する窒化と窒化還元の競争反応である。
【0005】
これに対して、酸窒化反応は、アンモニア中に空気又は酸素を添加し、下記式(4)のように還元反応に作用するHとOが反応して水となり、窒化時の還元反応を抑制し、窒化反応を促進する。そのため、ガス窒化と比較して窒化反応が促進される迅速窒化法と言われている。
【化4】
Figure 2004307971
【0006】
このような窒化反応や酸窒化反応は古くから知られている(特許文献1,2等参照)。しかしながら、空気又は酸素を導入する酸窒化処理の場合、空気比が28%(酸素濃度5.6%)以上の混合ガスが高温になると、爆発限界を超えた危険な雰囲気になることが知られている。従って、特に酸窒化処理の場合には安全性に配慮することが重要な問題になる。
【0007】
また、安定な窒化物層を得るために窒化処理後に被処理材(ワーク)を強制冷却する必要があるが、一般に窒化処理はバッチ処理であるため、生産性やエネルギー効率が悪いという問題がある。すなわち、個々のワークはそれぞれ窒化処理後に強制冷却されており、窒化処理室と強制冷却室の各室での処理の際にその都度各室を開放する必要がある。窒化処理室と強制冷却室の開放期間をできるだけ短縮する装置として、NH、CO及びNの雰囲気でのガス軟窒化方法ではあるが、窒化処理室と装入・冷却室を直列に配置した装置も提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、この場合でもワークが装入・冷却室にある間は窒化処理室は休止状態にある。
【0008】
【特許文献1】
特公昭55−4833号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開昭62−270761号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特許第2753647号公報(第1図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記したような従来技術の問題に鑑み、窒化処理室の窒化雰囲気の濃度変化を可能な範囲で抑え、連続的にワークの処理が行なえ、特に酸窒化の場合、酸窒化雰囲気の濃度変化を可能な範囲で抑えるため、より効率的に窒化処理が行なえ、また装置全体の省スペース化が可能な窒化処理装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、鋼製の部材、部品等に耐摩耗性、機械的強度に優れた一定品質の高硬度の硬化層を比較的短時間に低コストで形成できる窒化処理方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は、特に酸窒化処理の安全性を確保できると共に酸窒化雰囲気を常に一定にして酸窒化処理の処理条件を安定化させ、酸窒化処理品の品質を一定にすることができる酸窒化制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第一の側面によれば、ワークを載置する装入テーブルと、装入テーブルから移送されたワークを載置するテーブルを備えた装入・冷却室と、装入・冷却室から移送されたワークを載置するテーブルを備えた窒化処理室からなる窒化処理装置であって、前記装入・冷却室のテーブルが、複数のワークを載置可能であると共に、載置されたそれぞれのワークを窒化処理室に交互に移送可能に構成したことを特徴とする窒化処理装置が提供される。
好適な態様においては、装入・冷却室のテーブルは、上下に複数設けられていると共に装入・冷却室内に昇降自在に設けられているか、あるいは装入・冷却室内に左右に移動自在に設けられている。
【0011】
本発明の第二の側面によれば、未処理ワークを装入・冷却室に移送し、その後、窒化処理室に移送して窒化処理を行なう窒化処理方法であって、窒化処理室で未処理ワークを窒化処理する間に次の未処理ワークを装入・冷却室に移送して待機させ、窒化処理後、処理済みワークを装入・冷却室に移送し、装入・冷却室に待機させた未処理ワークを窒化処理室に移送し、その後、装入・冷却室内で処理済みワークを冷却すると共に窒化処理室内で未処理ワークに窒化処理を行なうことを特徴とする窒化処理方法が提供される。
【0012】
さらに本発明の第三の側面によれば、アンモニアガスと空気又は酸素を混合ガスとして窒化処理室に導入し、酸窒化処理するための酸窒化制御装置であって、アンモニアガスと空気又は酸素はそれぞれ流量調整装置及び逆止弁を介して窒化処理室に導入され、前記流量調整装置がそれぞれ制御部に電気的に接続されていることを特徴とする酸窒化制御装置が提供される。
好適な態様においては、さらに窒素ガス又は不活性ガスがバルブを介して窒化処理室に導入されると共に、前記バルブが制御部に電気的に接続されている。
さらに安全面に配慮した別の好適な態様においては、窒化処理室内の混合ガスの一部は、酸素分析装置を介して排気させると共に、前記酸素分析装置が制御部に電気的に接続されている。また、窒化処理室内の混合ガスの一部は、アンモニア分析装置を介して排気させると共に、前記アンモニア分析装置が制御部に電気的に接続されている。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化処理装置は、前記したように、装入・冷却室のテーブルが、複数のワークを載置可能であると共に、載置されたそれぞれのワークを窒化処理室に交互に移送可能に構成したことにより、装入・冷却室に載置されていた未処理ワークを窒化処理室内に移送して窒化処理する間に、次の未処理ワークを装入・冷却室内に移送し、次いで窒化処理室内で窒化処理されたワークを装入・冷却室に移送すると共に装入・冷却室で待機していた未処理ワークを窒化処理室内に移送し、窒化処理されたワークを装入・冷却室内で所定時間冷却した後、装入・冷却室外に移送する各工程を順次行なえるため、効率的に窒化処理が行なえると共に、窒化処理室の窒化雰囲気の濃度変化を可能な範囲で抑え、連続的にワークの処理が行なえる。特に、酸窒化の場合、処理室内の酸窒化雰囲気の濃度変化を可能な範囲で抑えるため、より有効である。また、好適な態様においては、装入・冷却室のテーブルが、上下に複数設けられていると共に装入・冷却室内に昇降自在に設けられているため、あるいは左右に移動自在に設けられているため、装置全体の省スペース化が可能である。
【0014】
また、本発明の窒化処理方法においては、窒化処理室で未処理ワークを窒化処理する間に次の未処理ワークを装入・冷却室に移送して待機させ、窒化処理後、処理済みワークを装入・冷却室に移送し、装入・冷却室に待機させた未処理ワークを窒化処理室に移送し、その後、装入・冷却室内で処理済みワークを冷却すると共に窒化処理室内で未処理ワークに窒化処理を行なうため、比較的短時間に効率的に窒化処理が行なえ、耐摩耗性、機械的強度に優れた高品質の硬化層を形成できる。
【0015】
さらに酸窒化に利用される本発明の窒化処理装置は酸窒化制御装置を備えており、アンモニアガスと空気又は酸素はそれぞれ流量調整装置及び逆止弁を介して窒化処理室に導入され、前記流量調整装置がそれぞれ制御部に電気的に接続されているため、酸窒化処理の安全性を確保できると共に、酸窒化雰囲気を常に一定にして酸窒化処理の処理条件を安定化させ、酸窒化処理品の品質を一定にすることができる。なお、流量調整装置は、実施例にもとづく具体的なものとしては、マスフローコントローラ、電磁弁である。
【0016】
特に、窒素ガス又は不活性ガスを、制御部に電気的に接続されたバルブを介して窒化処理室に導入できるようにすることにより、アンモニアガスと空気又は酸素の混合ガスの窒化処理室内における濃度変化に応じ、強制的に窒素ガス又は不活性ガスを供給し、酸窒化処理の安全性を図ることができる。また、窒化処理室内の混合ガスの一部を、制御部に電気的に接続された酸素分析装置を介して排気させることにより、酸素上限値を検知したときに強制的に空気又は酸素の供給を停止するか、あるいは、窒素ガス又は不活性ガスを窒化処理室内に供給し、酸素濃度を安全側にシフトすることができる。また、窒化処理室への各ガスの供給量及び窒化処理室のガス濃度を把握することにより、より一層、酸窒化処理の安全性を確保できると共に、酸窒化雰囲気を常に一定にして酸窒化処理の処理条件を安定化させることができる。
【0017】
また、窒化処理室内の混合ガスの一部は、制御部に電気的に接続されたアンモニア分析装置を介して排気させることにより、窒化処理室内のアンモニア残存濃度を把握し、水素還元反応による水素腐食脆化を防止することができる。また、アンモニア残存濃度が設定した基準値(例えば50%)以下の場合、処理を止め、品質の安定化を図るため、炉内を一旦排気し又は窒素で置き換え、再度、アンモニアガスと空気又は酸素を供給するための判断情報として使用できる。
【0018】
【実施例】
以下、添付図面に示す実施例を説明しつつ、本発明の窒化処理装置、その処理方法及び酸窒化制御装置について詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の窒化処理を実行するための窒化処理装置の一実施例を示しており、図1は上方から見た概略部分断面平面図を示し、図2は側面から見た要部の概略縦断面図を示している。窒化処理装置1は、ワーク(被処理材)を載置、移送する装入テーブル2と、該装入テーブル2から移送されたワークを載置するテーブルを備えた冷却ガス循環方式の装入・冷却室3と、装入・冷却室3から移送されたワークを載置するテーブルを備えた窒化処理室4とからなる。なお、窒化処理室4には断熱材が内張りされており、また金属部位には耐窒化鋼インコネルが使用されている。
【0019】
装入・冷却室3は前後にワークが通過する開口5、6を有し、また窒化処理室4は装入・冷却室3に対面する側にワークが通過する開口7を備えており、装入・冷却室3の前側の開口5には昇降自在に装入扉8が付設され、また装入・冷却室3の後側の開口6と窒化処理室4の開口7との間には中間扉9が同様に昇降自在に付設されており、各室3、4はこれらの扉によって密閉されるように区画されている。なお、装入扉8と中間扉9はシリンダ(図示せず)の作動により上下動するようになっている。また、窒化処理室4には通常の窒化炉と同様にヒータとファンとが配設されているが、図示の都合上省略する。
【0020】
装入テーブル2は、左右に複数対のローラー22を備えたテーブル21からなり、ワークWを載置したトレー10を装入・冷却室3に押し出し、装入・冷却室3からワークWを載置したトレー10を引き出すために、図3に概略的に示すような図示していないモータにより駆動するチェーンベルト23を備えている。すなわち、左右一対のチェーンベルト23が左右のローラー22の内側に位置するように設けられており、このチェーンベルト23によりその上に配されるワークWを載置したトレー10を前後に移送できるように構成されている。
一方、装入・冷却室3には、左右に複数対のローラー32a、32bをそれぞれ備えた上下一対のテーブル31a、31bが所定の上下間隔で配設されており、これら一対のテーブル31a、31bはその下部に配設された昇降装置33により一体的に昇降できるように構成されている。昇降装置33としては、シリンダー機構など任意の機構とすることができる。また、装入・冷却室3には、前記図3に示すチェーンベルトと同様な図示していないモータにより駆動するチェーンベルトを備えている(図示省略)。また、窒化処理室4内にも、同様に左右に複数対のローラー42を備えたテーブル41が配設されており、前記図3を参照して説明したのと同様な図示していないモータにより駆動するチェーンベルトを備えている(図示省略)。なお、符号L3〜L6は排気用の配管を示している。
【0021】
反応ガス種であるアンモニアガスは、アンモニア容器51から流量調整装置であるマスフローコントローラ54及び電磁弁56、逆止弁57を介してミキサー58に供給され、また酸素又は空気は同様に容器52からマスフローコントローラ59、電磁弁60、逆止弁61を介してミキサー58に供給され、該ミキサー58内でアンモニアガスと酸素又は空気が混合され、均一な混合ガスとして配管L1から窒化処理室4内に導入されるようになっている。なお、アンモニアガス、酸素又は空気はミキサーで均一な混合ガスとして供給しなくとも、それぞれを配管を介し、窒化処理室4に導入し、処理室内で混合されるようにしてもよい。窒化処理室4内に導入されるアンモニアガスと酸素又は空気の供給量は、マスフローコントローラ54、59により制御される。なお、電磁弁56、60はマスフローコントローラが制御できなくなった場合のために設けているものであって、必ずしも必要ないが、安全性の面から設けることが好ましい。
また、窒素ガス(Ar、Xe等の不活性ガスでもよい)は、容器53から電磁弁62、流量計63を介して配管L2から装入・冷却室3内に導入されるようになっていると共に、電磁弁64、流量計65を介してアンモニアガス供給ラインに接続され、窒化処理室4内にも導入されるようになっている。なお、窒素ガスは、電磁弁64、流量計65から直接窒化処理室4内に導入してもかまわない。
【0022】
一方、窒化処理室4の排気ラインは、配管L3は酸素分析計66を介してアンモニア除去装置68に接続され、また配管L4はアンモニア分析計67を介してアンモニア除去装置68に接続され、さらに配管L5(メイン排気)がアンモニア除去装置68に接続されている。従って、窒化処理に供された混合ガスの一部は、これらの分析計66、67により排気中の酸素濃度やアンモニア濃度が測定された後、アンモニア除去装置68によってアンモニアガスが除去されて排気される。アンモニア除去装置68としては、ガス燃焼装置やガス吸収装置など従来公知の装置が使用でき、特定のものに限定されない。
前記電磁弁56、60、マスフローコントローラ54、59、電磁弁62、64、酸素分析計66及びアンモニア分析計67は制御部69に電気的に接続されており、これらによって酸窒化制御装置が構成されていると共に、この制御部69によって、排気ガス中の酸素濃度やアンモニア濃度に応じて窒化処理室4内に導入されるアンモニアガス及び空気(又は酸素)あるいはさらに窒素ガスの供給量が制御される。
【0023】
酸窒化処理の場合、爆燃ガスを形成し得る酸素は処理ガス中で水素と反応し、水に変化するので、供給される空気量(又は酸素量)が所定レベル以下では安全な処理であるが、前記実施例の窒化処理装置1においては二重、三重に安全策が講じられている。すなわち、アンモニア及び空気(又は酸素)の供給ラインに流量監視装置(マスフローコントローラ54、59)及び逆止弁57、61を設置し、オペレーターの流量監視とガスの逆流防止を可能としている。さらに、酸窒化処理末端近くの排気ラインに酸素濃度計(酸素分析計66)を設置し、酸窒化処理時の酸素濃度を常時監視し、酸素濃度が規定値、例えば2%(空気比10%に相当)を超えた場合に処理を中断し、自動的に電磁弁64及び流量計65を介して窒化処理室4内に窒素ガス(又は不活性ガス)を導入し、処理サイクルを停止させる。
【0024】
次に、前記のように構成された窒化処理装置を用いて行なう酸窒化処理について説明する。
酸窒化処理に際しては、予め窒化処理室4と装入・冷却室3との間の中間扉9を閉じ、窒化処理室4内に窒素ガスを容器53から電磁弁64、流量計65を介して配管L1を通して導入しておく。あるいはまた、窒化処理室4内を窒化温度(被処理材に応じて、例えば500〜650℃の範囲内で適宜設定できる)に保持しておいてもよい。
そしてまず、装入・冷却室3の装入扉8が開かれ、装入テーブル2に装着されているチェーンベルト23によってその上のワークWが載置されているトレー10が開口5から装入・冷却室3内に押し出され、装入・冷却室3内の上段のテーブル31aにトレー10ごとワークWを配置し、続いて装入扉8が閉じられる。
【0025】
次いで、装入・冷却室3内に窒素ガスが容器53から電磁弁62、流量計63を介して配管L2を通して導入された後、中間扉9が開かれ、装入・冷却室3内に送られたワークWは、装入・冷却室3に装着されているチェーンベルト(図示せず)によってテーブル31aの上のワークWが載置されているトレー10ごと開口6、7から窒化処理室4内に押し出され、窒化処理室4内のテーブル41に配置された後、中間扉9が閉じられる。この段階で、反応ガス種であるアンモニアガスと酸素又は空気はミキサー58内で混合され、均一な混合ガスとして配管L1から窒化処理室4内に導入される。
【0026】
このようにして窒化処理室4内に配置されたワークW(A)に所定温度で酸窒素化処理を行なっている間に、装入・冷却室3内に配設されている昇降装置33が作動し、下段のテーブル31bが装入位置まで上昇した後、前記と同様にして、装入・冷却室3の装入扉8が開かれ、装入テーブル2に装着されているチェーンベルト23によってその上の未処理のワークW(B)が載置されているトレー10が開口5から装入・冷却室3内に押し出され、装入・冷却室3内の下段のテーブル31bにトレー10ごとワークW(B)を配置した後、装入扉8が閉じられる。次いで、昇降装置33が作動し、下段のテーブル31bが最下位置まで下降し、前記と同様に窒素ガスが導入され、上段のテーブル31aが装入位置に待機した状態となる。
【0027】
窒化処理室4内に配置されたワークW(A)に所定温度で所定時間(例えば120〜360分間)、酸窒素化処理を行なった後、窒化処理室4内の混合ガスの一部は、酸素分析計66及びアンモニア分析計67により排気中の酸素濃度やアンモニア濃度が測定された後、アンモニア除去装置68によってアンモニアガスが除去されて排気される。次いで、中間扉9が開かれ、窒化処理室4に装着されているチェーンベルト(図示せず)によってテーブル41の上の処理済みワークW(A)が載置されているトレー10が開口7、6から装入・冷却室3内に押し出され、上段のテーブル31aに配置される。次いで、昇降装置33が作動して下段のテーブル31bが装入位置まで上昇し、装入・冷却室3内に待機していた未処理ワークW(B)は、前記と同様に装入・冷却室3に装着されているチェーンベルト(図示せず)によってトレー10ごと開口6、7から窒化処理室4内に押し出され、窒化処理室4内のテーブル41に配置された後、中間扉9が閉じられる。
【0028】
その後、前記と同様にして、装入・冷却室3の装入扉8が開かれ、装入テーブル2に装着されているチェーンベルト23によって次の未処理のワークW(B’)が載置されているトレー10が開口5から装入・冷却室3内に押し出され、装入・冷却室3内の下段のテーブル31bにトレー10ごとワークW(B’)を配置した後、装入扉8が閉じられる。次いで、昇降装置33が作動し、下段のテーブル31bが最下位置まで下降し、前記と同様に窒素ガスが導入され、上段のテーブル31aが装入位置に待機した状態となる。この状態で処理済みワークW(A)が所定時間冷却された後、装入扉8が開かれ、上段のテーブル31aに配置されている処理済みワークW(A)は、装入テーブル2に装着されているチェーンベルト(図示せず)によってトレー10ごと開口5から装入テーブル2のテーブル21上に引き出され、回収される。この間、次の未処理のワークW(B’)は下段のテーブル31bに待機した状態となり、上段のテーブル31aは処理済みワークの受け入れ態勢となる。
【0029】
このような操作を順次繰り返すことにより、ワークWに連続的に酸窒化処理が行なわれ、窒化処理室の開放時間を大幅に短縮できるので、単位ワーク当たり要する処理時間を大幅に短縮できると共に、消費ガス量も低減できる。
酸窒化処理においては、混合ガス中のアンモニアガスの含有量は通常6〜72容量%程度、空気含有量は28容量%以下あるいは94容量%以上(酸素含有量としては5.6容量%以下あるいは18.8容量%以上)の範囲が好ましい。前記したように、窒素ガス又は不活性ガスを制御部に電気的に接続されたバルブを介して窒化処理室に導入できるようにすることにより、アンモニアガスと空気又は酸素の混合ガスの窒化処理室内における濃度変化に応じ、強制的に窒素ガス又は不活性ガスを供給し、酸窒化処理の安全性を図ることができる。また、窒化処理室内の混合ガスの一部を、排気ラインの窒化処理室に近い部位に配された酸素分析装置を介して排気させることにより、酸素上限値を検知したときに強制的に窒素ガス又は不活性ガスを窒化処理室内に供給し、酸素濃度を安全側にシフトすることができる。
【0030】
図4は、前記図1〜3に示す窒化処理装置の変形例を示し、この実施例の場合、装入・冷却室3には、前記実施例における昇降自在に配された上下一対のテーブル31a、31bに代えて、2つのトレー10を載置できる大きさのテーブル31が左右に移動できるように構成されている点が異なり、他の構成は前記実施例と同一である。このようにテーブル31が左右に移動できるように構成することにより、装入テーブル2と装入・冷却室3との間及び装入・冷却室3と窒化処理室4との間でのワークWの移送時には該当するワークWが載置されたトレー10を装入・冷却室3の装入扉8と中間扉9の間の位置に配置でき、他のワークWが載置されたトレー10はその側部に待機状態に配置できる。
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものでなく、本発明の特徴を備える限り任意に設計変更可能であり、また酸窒化処理のみならず通常の窒化処理にも適用できる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の窒化処理装置及び窒化処理方法によれば、装入・冷却室に載置されていたワークを窒化処理室内に移送して窒化処理する間に、次の未処理ワークを装入・冷却室に移送し、次いで窒化処理室内で窒化処理されたワークを装入・冷却室に移送すると共に装入・冷却室で待機していた未処理ワークを窒化処理室内に移送し、窒化処理されたワークを装入・冷却室外に移送する各工程を順次行なえるため、効率的に窒化処理が行なえると共に、窒化処理室の窒化雰囲気の濃度変化を可能な範囲で抑え、連続的にかつ効率的にワークの窒化処理が行なえる。従って、耐摩耗性、機械的強度に優れた高品質の硬化層を形成できると共に、単位ワーク当たり要する処理時間を大幅に短縮でき、かつ消費ガス量も低減できる。特に、酸窒化の場合、処理室内の酸窒化雰囲気の濃度変化を可能な範囲で抑えるため、より有効である。
さらに本発明の酸窒化制御装置を採用することにより、酸窒化処理の安全性を確保できると共に、酸窒化雰囲気を常に一定にして酸窒化処理の処理条件を安定化させ、処理品の品質を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化処理装置の一実施例を示す概略部分断面平面図である。
【図2】図1に示す窒化処理装置の要部を示す概略部分縦断面図である。
【図3】装入テーブルの要部を示す概略部分正面図である。
【図4】本発明の窒化処理装置の他の実施例の要部を示す概略部分断面平面図である。
【符号の説明】
1 窒化処理装置
2 装入テーブル
3 装入・冷却室
4 窒化処理室
8 装入扉
9 中間扉
10 トレー
21,31,31a,31b,41 テーブル
54,59 マスフローコントローラ
56,60,62,64 電磁弁
57,61 逆止弁
58 ミキサー
66 酸素分析装置
67 アンモニア分析装置
69 制御部

Claims (8)

  1. ワーク(W)を載置する装入テーブル(2)と、装入テーブルから移送されたワークを載置するテーブルを備えた装入・冷却室(3)と、装入・冷却室から移送されたワークを載置するテーブル(41)を備えた窒化処理室(4)からなる窒化処理装置(1)であって、前記装入・冷却室のテーブル(31、31a、31b)が、複数のワークを載置可能であると共に、載置されたそれぞれのワークを窒化処理室に交互に移送可能に構成したことを特徴とする窒化処理装置。
  2. 装入・冷却室(3)のテーブル(31a、31b)が上下に複数設けられていると共に、装入・冷却室内に昇降自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の窒化処理装置。
  3. 装入・冷却室(3)のテーブル(31)が左右に移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の窒化処理装置。
  4. 未処理ワークを装入・冷却室に移送し、その後、窒化処理室に移送して窒化処理を行なう窒化処理方法であって、窒化処理室で未処理ワークを窒化処理する間に次の未処理ワークを装入・冷却室に移送して待機させ、窒化処理後、処理済みワークを装入・冷却室に移送し、装入・冷却室に待機させた未処理ワークを窒化処理室に移送し、その後、装入・冷却室内で処理済みワークを冷却すると共に窒化処理室内で未処理ワークに窒化処理を行なうことを特徴とする窒化処理方法。
  5. アンモニアガスと空気又は酸素を混合ガスとして窒化処理室(4)に導入し、酸窒化処理するための酸窒化制御装置であって、アンモニアガスと空気又は酸素はそれぞれ流量調整装置(54、56、59、60)及び逆止弁(57、61)を介して窒化処理室に導入され、前記流量調整装置がそれぞれ制御部(69)に電気的に接続されていることを特徴とする酸窒化制御装置。
  6. さらに窒素ガス又は不活性ガスがバルブ(64)を介して窒化処理室に導入されると共に、前記バルブが制御部(69)に電気的に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の酸窒化制御装置。
  7. 窒化処理室内の混合ガスの一部は、酸素分析装置(66)を介して排気させると共に、前記酸素分析装置が制御部(69)に電気的に接続されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の酸窒化制御装置。
  8. 窒化処理室内の混合ガスの一部は、アンモニア分析装置(67)を介して排気させると共に、前記アンモニア分析装置が制御部(69)に電気的に接続されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の酸窒化制御装置。
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