JP2004304089A - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ - Google Patents

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Shunichi Minagawa
俊一 皆川
Takashi Takeuchi
隆 竹内
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Abstract

【課題】電流増幅率β及び素子信頼性を一層向上する。
【解決手段】GaAs基板1上に、サブコレクタ層9、n−GaAsコレクタ層3、p−GaAsベース層4、n−InGaP又はn−AlGaAsエミッタ層5、n−GaAsエミッタキャップ層6、n−InGaAsグレーデッドエミッタキャップ層7、及びn−InGaAsエミッタキャップ層8が順次形成してヘテロ接合バイポーラトランジスタを構成する。この構成において、サブコレクタ層9はn−InGaPで形成する。このn−InGaPサブコレクタ層9のIn混晶比範囲は0.4から0.6であり、キャリア濃度は1×1018〜1×1019cm−3であることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(以下、HBTという)に係り、特に基板とコレクタ層との間に形成するサブコレクタ層を改善したものに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は従来のHBT用エピタキシャル構造を示す。HBT用エピタキシャル構造は、半絶縁GaAs基板1上に、n−GaAsサブコレクタ層2、n−GaAsコレクタ層3、p−GaAsベース層4、n−InGaPエミッタ層5、n−GaAsエミッタキャップ層6、n−InGaAsグレーデッドエミッタキャップ層7、n−InGaAsエミッタキャップ層8から構成される。
【0003】
n−InGaPエミッタ層5のIn混晶比yは0.48である。n−InGaAsグレーデッドエミッタキャップ層7は、下方から上方に向けてln混晶比yを0から0.5まで変化させている。最上部に形成されたn−InGaAsエミッタキャップ層8のIn混晶比は0.5である。
【0004】
図3において、単位がcm−3の数値は、ドーピングされた不純物の濃度を示し、以上の各層には、図3に表示された濃度のもとにn型あるいはp型の不純物がドーピングされている。また、単位がnmの数値は、エピタキシャル層の厚さを示している。
【0005】
対応する各層にそれぞれコレクタ電極、ベース電極およびエミッタ電極が形成され、所定のHBTが構成される。
【0006】
以上の構成において、ベース層4とエミッタ層5の間に電圧を印加してこれを増加させると、コレクタ電極からの出力電流は、入力電流であるベース電流によって増幅される。このときの出力電流と入力電流の比が電流増幅率βあり、この電流増幅率βがHBTにとって重要な特性となる。
【0007】
ところで、HBTは、電流増幅率βを向上させること及び素子の信頼性を高めることが重要課題である。そのため多くの研究がおこなわれ、HBTの各層についても特性改善が試みられてきた。例えば、基板とサブコレクタ層との間に超格子構造層を形成したもの(特許文献1)、エミッタ層の上下にグレーデッド層を設け、これらの層に不純物のSiとSeをドープしたもの(特許文献2)、GaAs基板とサブコレクタ層(コレクタコンタクト層)との間にInプレーナドープ層を形成したもの(特許文献3)などがある。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−164603号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2001−85445号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2000−124444号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した特許文献1〜3に記載されたものは、いずれも、高性能なパワー増幅を得るには未だ十分ではなく、電流増幅率βや素子の信頼性に改善の余地がある。
【0012】
本発明の課題は、上述した要請に応えて、電流増幅率β及び素子信頼性を一層向上させることが可能なヘテロ接合バイポーラトランジスタを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、GaAs基板上に、サブコレクタ層、n−GaAsコレクタ層、p−GaAsベース層、n−InGaP又はn−AlGaAsエミッタ層、n−GaAs層及びn−InGaAs層のエミッタキャップ層が順次形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記サブコレクタ層がn−InGaPで形成されて構成されていることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタである。
【0014】
最近の研究で、電流増幅率β特性の悪くなる原因の一つとして、HBTエピタキシャル層の最下層にあるn−GaAsサブコレクタ層の結晶質に問題があることが分かってきた。サブコレクタ層は、HBT用エピタキシャル層を成長する際、最初に成長する層である。この層の結晶質が悪く、多くの結晶欠陥が発生してしまった場合は、その欠陥がコレクタ層、ベース層、エミッタ層の順に上層へと伝播してしまい、特性が悪くなる。第1の発明のように、サブコレクタ層をn−GaAs層ではなく、n−InGaP層に代えると、結晶欠陥の少ないサブコレクタ層が得られ、特性が良好になる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、前記n−InGaPサブコレクタ層のIn混晶比の範囲が0.4から0.6であることを特徴とする。サブコレクタ層のIn混晶比の範囲を0.4から0.6とすると、より特性が良好になる。
【0016】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記n−InGaPサブコレクタ層のキャリア濃度が1×1018〜1×1019cm−3であることを特徴とする。サブコレクタ層のキャリア濃度を1×1018〜1×1019cm−3とすると、より特性が良好になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1にInGaAs/GaAs系HBT用エピタキシャルウェハの構造を示す。
【0019】
図において、半絶縁性GaAs基板1上に、コレクタの抵抗を低減させるためのサブコレクタ層9と、コレクタ層3とが積層されている。上記サブコレクタ層9は厚さ500nm、Siドープによるキャリア濃度5×1018cm−3で、In混晶比yを0.48としたn−InGaP層から構成されている。また、上記コレクタ層3は厚さ1000nm、Siドープによるキャリア濃度5×1016cm−3のn−GaAs層から構成されている。
【0020】
上記コレクタ層3上には、厚さ80nm、C(カーボン)ドープによるキャリア濃度が4×1019cm−3のp−GaAsベース層4が形成され、その上にはエミッタ層5が形成されている。
【0021】
エミッタ層5は、厚さ40nm、Siドープによるキャリア濃度5×1017cm−3で、In混晶比yを0.48としたn−InGaP層から構成されている。このエミッタ層5の上にオーミックコンタクト抵抗を低減させるための3つのエミッタキャップ層が順に積層されている。第1のエミッタキャップ層6は、厚さ100nm、Siドープによるキャリア濃度5×1018cm−3のn−GaAs層で構成されている。第2のエミッタキャップ層7は、厚さ50nm、Seドープによるキャリア濃度2×1019cm−3で、下方から上方に向けてln混晶比yを0〜0.5まで変化させたn−InGaAsグレーデッド層から構成されている。そして、最上部の第3のエミッタキャップ層8は、厚さ50nm、Seドープによるキャリア濃度2×1019cm−3で、In混晶比yを0.5と高くして、ここに形成される電極との接触抵抗を低減するn−InGaAs層で構成されている。
【0022】
前述したようにサブコレクタ層9は、特に、n−GaAs層ではなくn−In0.48GaP層で形成している。また、サブコレクタ層9のIn混晶比は、GaAs基板1と格子定数が合う0.48とし、キャリア濃度は5×1018cm−3としている。このn−InGaPサブコレクタ層9を成長するために、原料としてトリエチルガリウム((CGa)、トリメチルインジウム((CHIn、フォスフィン(PH))を使用した。また、ドーパントガスとしてはジシラン(Si)を使用した。
【0023】
上記サブコレクタ層9、ベース層4およびエミッタキャップ層8には、電極形成のためのエッチング加工を施した後、それぞれコレクタ電極、ベース電極およびエミッタ電極を形成し、これによって所定のHBTを構成した(各電極は図示せず)。
【0024】
図2及び図4に、実施の形態と従来例とのHBTの通電時間と電流増幅率βの変動を比較して示す。ここで従来例のHBTとは、サブコレクタ層をn−GaAs層で構成したものである。実施の形態によるHBTの電流増幅率βの低下率は、通電時間600時間で95%、2000時間でも90%である。これに対して、従来例のものは、通電時間が増えるに従い電流増幅率βが大幅に低下しており、低下率は通電時間600時間で44%であった。これより、従来例では電流増幅率βが100〜110程度であったものが、実施の形態では170〜180もあり、電流増幅率βが大幅に改善されていることがわかった。従って、実施の形態によれば、通電時間の増加とともに、高い電流増幅率βを維持でき、素子の信頼性も向上するから、より高性能なパワー増幅を得たいという技術要請に応えることができる。
【0025】
なお、実施の形態では、n−InGaPサブコレクタ層のIn混晶比yは、GaAs基板の格子定数が合うように0.48とした。しかし0.4〜0.6の範囲では、実施の形態のIn混晶比0.48と殆ど変わらないことがわかった。もっとも、In混晶比がGaAs基板の格子定数と大きくずれると電流増幅率β、素子信頼性ともに、かえって悪くなることもわかった。また、従来例のようにサブコレクタ層をn−GaAs層で構成した場合、キャリア濃度が高くなるに従い素子の信頼性が悪くなることから、サブコレクタ層の抵抗を下げることが出来なかった。しかし実施の形態のように、サブコレクタ層をn−InGaP層で構成した場合は、キャリア濃度は5×1018cm−3に限定されることなく、1×1018〜1×1019cm−3の範囲で、電流増幅率β及び素子の信頼性とも変化なく、ともに高いことが分かった。このようにInGaAsP層は成長条件によりΔECが小さくなる結果として、GaAs層と比べて、コレクタのコンタクト抵抗を小さくすることができる。
【0026】
なお、実施の形態では、エミッタ層をn−InGaPで形成したInGaP/GaAs系HBTで行ったが、エミッタ層をAlGaAsで形成したAlGaAs/GaAs系HBTでも同様な効果がある。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、サブコレクタ層をn−InGaPで形成したので、電流増幅率β、及び素子の信頼性を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態によるHBT用のエピタキシャル構造を示す図である。
【図2】実施の形態によるHBTの信頼性(通電時間と電流増幅率βの関係)を示す説明図である。
【図3】従来例のHBTエピタキシャル構造を示す図である。
【図4】従来例のHBTの信頼性(通電時間と電流増幅率βの関係)を示す説明図である。
【符号の説明】
1 半絶縁性GaAs基板
3 コレクタ層
4 ベース層
5 エミッタ層
6〜8 エミッタキャップ層
9 サブコレクタ層

Claims (3)

  1. GaAs基板上に、サブコレクタ層、n−GaAsコレクタ層、p−GaAsベース層、n−InGaP又はn−AlGaAsエミッタ層、n−GaAs及びn−InGaAsのエミッタキャップ層が順次形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
    前記サブコレクタ層がn−InGaPで形成されて構成されていることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  2. 前記n−InGaPサブコレクタ層のIn混晶比の範囲が0.4から0.6であることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  3. 前記n−InGaPサブコレクタ層のキャリア濃度が1×1018〜1×1019cm−3であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
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