JP2005032897A - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】コレクタ層の膜厚やキャリア濃度を変更することなく、コレクタ層の高耐圧化を図ることのできるHBTの構造を提供すること。
【解決手段】半絶縁性基板8上に、GaAsサブコレクタ層7、GaAsコレクタ層6、GaAsベース層5、AlGaAs又はInGaPより成るエミッタ層4が順に積層形成され、前記サブコレクタ層上にコレクタ電極13が、前記ベース層上にベース電極12が、前記エミッタ層上にエミッタ電極11が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記コレクタ層6の全部もしくは一部を、GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層10で構成し、コレクタ層の高耐圧化を図る。
【選択図】 図1
【解決手段】半絶縁性基板8上に、GaAsサブコレクタ層7、GaAsコレクタ層6、GaAsベース層5、AlGaAs又はInGaPより成るエミッタ層4が順に積層形成され、前記サブコレクタ層上にコレクタ電極13が、前記ベース層上にベース電極12が、前記エミッタ層上にエミッタ電極11が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記コレクタ層6の全部もしくは一部を、GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層10で構成し、コレクタ層の高耐圧化を図る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Hetero junction Bipolar Transistor:HBT)、特にAlGaAs/GaAs系HBT及びInGaP/GaAs系HBTのコレクタを高耐圧化する構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
III−V族化合物半導体はSi(シリコン)半導体に比べて、電子移動度が高いという特長がある。この特長を活かして、高速動作や高効率動作を要求されるデバイスに多く用いられている。そのなかでもエミッタ・ベース接合にヘテロ接合を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)は、エミッタ層のバンドギャップがベース層のバンドギャップよりも広いことにより、高周波特性に優れ、電源が正電源だけで良く、携帯電話用高出力トランジスタ等に広く使用されている。特に、携帯電話の低コスト・小型化の要求から近年需要が高まっている。
【0003】
このHBTはエミッタ/ベース接合がAlGaAs/GaAsヘテロ接合により構成されるのが一般的である。しかし最近は、デバイス特性向上或いは信頼性向上の観点から、エミッタ層をAlGaAsエミッタ層からInGaPエミッタ層に置き換えることが検討され、一部においては作製されている。 これは、活性な原子であるAlを含むAlGaAs層をエミッタ層として用いた場合には、AlGaAs層に深い準位に起因する多くの非発光性再結合中心が形成され、この非発光性再結合中心を介してHBTの劣化が進行するためであり、Alを含まないInGaP層をエミッタ層として用いることによって劣化の問題を解決しようとするものである。
【0004】
一構造例として、HBT用InGaPエミッタエピタキシャルウェハ及びそれを用いて作成したInGaP/GaAs系HBTの構造を図3に示し、従来技術を説明する。
【0005】
このHBT用エピタキシャルウェハ(以下、HBT用エピタキシャルと略す)は、半絶縁性GaAs基板8上に、MOVPEやMBE法といった気相エピタキシャル成長法により結晶成長した、GaAsサブコレクタ層7、GaAsコレクタ層6、GaAsベース層5、InGaPエミッタ層4、GaAsエミッタコンタクト層3及びInGaAsノンアロイ層9より成る。
【0006】
基板8は単結晶成長するための下地である。サブコレクタ層7は金属電極とのオーミックコンタクトを形成するキャリア濃度の大きなn型のGaAs層である。コレクタ層6はベース層から電子を引き抜く働きを持つキャリア濃度の小さなn型のGaAs層である。ベース層5は電流を制御する働きを持つp型のGaAs層又はInGaAs層、AlGaAs層からなる。エミッタ層4は電子をベース層に注入し、且つベース層からの正孔の注入を制御する働きを持つn型のInGaP層又はAlGaAs層からなる。エミッタコンタクト層3は金属電極とのオーミックコンタクトを形成するキャリア濃度の大きなn型のGaAs層である。ノンアロイ層9は金属電極とのオーミックコンタクトを形成するキャリア濃度の大きなn型のInGaAs層であり、通常In組成を例えば0から0.50にリニアに変化させたグレーデッドノンアロイ層(InGaAsノンアロイ層)2と、その上にIn組成を0.50に固定した均一組成層(InGaAsノンアロイ層)1からなる。
【0007】
HBT用エピタキシャルウェハの具体的構造例を表1に示した。結晶成長のことをエピタキシャル成長と言う。エピタキシャル層名称のn−はエピタキシャル層がn型であることを表し、n+−、n−−はそれぞれキャリア濃度が大きいn型、キャリア濃度が小さいn型を表している。p+−はキャリア濃度が大きいp型を表している。厚さの単位はnm(10−9m)、キャリア濃度の単位はcm−3である。
【0008】
【表1】
【0009】
表1に示したHBT用エピタキシャルの成長方法を以下に述べる。
【0010】
エピタキシャル層を成長させる半絶縁性基板をサセプタにセットし、成長炉内で加熱する。成長炉内に原料ガスを供給すると、原料ガスが熱により分解し、基板上にエピタキシャル層を成長する。
【0011】
n+−GaAs、n−−GaAsを成長する場合には、Ga原料のGa(CH3)3(トリメチルガリウム)とAs原料のAsH3(アルシン)、及びn型ドーパントを基板に供給する。なお、Ga原料として、他にGa(CH3CH2)3(トリエチルガリウム)がある。As原料としては、他にAs(CH3)3(トリメチル砒素)、TBA(ターシャリーブチルアルシン)がある。n型ドーパントの元素としてはSi(珪素)やSe(セレン)がある。Si原料としてSiH4(モノシラン)、Si2H6(ジシラン)がある。Se原料としてはH2Se(セレン化水素)がある。
【0012】
p+−GaAsを成長する場合には、炉内の熱環境を最適化し、Ga(CH3CH2)3、AsH3及びp型ドーパントを基板に供給する。p型ドーパントの元素としてはC(炭素)がある。C原料としてはCCl3Br(ブロモトリクロロメタン)、CBr4(テトラブロモメタン)がある。
【0013】
n−In0.49Ga0.51Pを成長する場合には、Ga(CH3CH2)3とP原料のPH3(ホスフィン)、及びIn原料のIn(CH3)3(トリメチルインジウム)を基板に供給する。なお、P原料として他にTBP(ターシャリーブチルホスフィン)、In原料として他にIn(CH3CH2)3(トリエチルインジウム)がある。
【0014】
n+−In0.50Ga0.50Asを成長する場合には、n型ドーパントであるSeを高濃度にドーピングさせるため、炉内の熱環境を最適化し、Ga(CH3CH2)3、AsH3、In(CH3)3、及びH2Seを基板に供給する。
【0015】
HBTおいては、InGaAsノンアロイ層9の上にエミッタ電極が、GaAsベース層5の上にベース電極12が、そしてサブコレクタ層7の上にコレクタ電極13が形成される。エミッタ接地の場合は、コレクタ電極13に正の電圧を印加し、ベース電極12よりベース電流Ibを信号入力として流し、出力となるコレクタ電流Icを制御する(図4)。
【0016】
上記HBTにおいて、コレクタ層を高耐圧化することができれば、HBTを高い電圧で使用することが可能になり、更なる高出力化を図ることができる。
【0017】
HBTの高耐圧化に関しては、従来、サブコレクタ層に、不純物を、意図的に予め決められた濃度分にしたがって添加することにより、サブコレクタ層での空間電荷を電気的に補償し、衝突電離を助長させるバンド曲がりによる電解集中効果を解消させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ただし、コレクタ層を直接に高耐圧化するものではない。
【0018】
また、HBTの高耐圧化とは関係がないが、サブコレクタ層とコレクタ層との間にAlAs層を設けることにより、サブコレクタ層に3×1018cm−3を超えてドーパントをドーピングしても、電流増幅率β(エミッタ接地電流増幅率)が低下しないようにする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0019】
【特許文献1】
特開平5−041388号公報
【0020】
【特許文献2】
特開2001−20003217号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従来よりHBTでは、図3の如くコレクタ層にn−−GaAs層が用いられている。このコレクタ層を高耐圧化することができれば、HBTにおいてより高い電圧で使用することが可能になり、更なる高出力化を図ることができる。このコレクタ層を高耐圧化するためには、「コレクタ層n−−GaAs層の膜厚を厚くする」「コレクタ層n−−GaAs層のキャリア濃度を下げる」ことが挙げられる。
【0022】
しかしながら、膜厚を厚くすると、多くのノイズが入るようになり、HBTでの高周波特性が落ちてしまう。また、キャリア濃度を下げると、電圧をかけた際の容量変化が大きくなってしまう。
【0023】
以上のことより、HBTの基本的電気特性を劣化させることなく、コレクタ層の膜厚・キャリア濃度を変更して高耐圧化を図ることは困難であった。
【0024】
また、特許文献1の耐圧化は、高コレクタ電流注入時での衝突電離による雪崩降伏現象を抑制するコレクタ構造全体に着目して、サブコレクタ層に不純物を意図的に予め決められた濃度分にしたがって添加するものであり、これによりサブコレクタ層での空間電荷を電気的に補償し、耐圧特性の優れたHBTとするものであり、コレクタ層を直接に高耐圧化するものではない。
【0025】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、コレクタ層の膜厚やキャリア濃度を変更することなく、コレクタ層の高耐圧化を図ることのできるHBTの構造を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0027】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、半絶縁性基板上に、GaAsサブコレクタ層、GaAsコレクタ層、GaAsベース層、AlGaAs又はInGaPより成るエミッタ層が順に積層形成され、前記サブコレクタ層上にコレクタ電極が、前記ベース層上にベース電極が、前記エミッタ層上にエミッタ電極が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記コレクタ層の全部もしくは一部を、GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層で構成し、コレクタ層の高耐圧化を図ったことを特徴とする。
【0028】
請求項2の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層を、前記GaAsコレクタ層と前記GaAsベース層の間に挿入したことを特徴とする。
【0029】
請求項3の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層を、前記GaAsサブコレクタ層と前記GaAsコレクタ層の間に挿入し、前記GaAsサブコレクタ層上にコレクタ電極を設けたことを特徴とする。
【0030】
<発明の要点>
従来技術では、コレクタ層にはn−−GaAs層が用いられている。コレクタ層を高耐圧化するためには、「コレクタ層n−−GaAs層の膜厚を厚くする」「コレクタ層n−−GaAs層のキャリア濃度を下げる」ことが挙げられる。しかし、膜厚を厚くすると多くのノイズが入るようになり、HBTでの高周波特性が落ちてしまう。また、キャリア濃度を下げると、電圧をかけた際の容量変化が大きくなってしまう、という問題がある。コレクタ層の膜厚・キャリア濃度を変更せずに耐圧を挙げるためには、コレクタ層に用いる材料のバンドギャップを大きくするしかない。
【0031】
そこで本発明では、コレクタ層を成長する場合に、GaAsよりもバンドギャップの大きな材料を用いることにした。すなわち、本発明では、GaAsコレクタ層(n−−GaAs層)の膜厚・キャリア濃度を変更せずに高耐圧化を図るために、GaAsよりもバンドギャップの大きな材料AlAs、AlGaAs又はAlPSb等を用い、このAlAs等の材料の層をGaAsコレクタ層中に挿入することにした。例えばAlAsのバンドギャップは2.16[eV]であり、GaAsの1.435[eV]よりも大きいので、AlAs層をGaAsコレクタ層中に挿入することにより、HBTの基本電気的特性を劣化させることなく高耐圧化を図ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0033】
図1に本発明の実施形態に係るInGaP/GaAs系HBTの構造を、また表2にそのエピタキシャルウェハの構造を示す。これは、半絶縁性GaAs基板8上に、有機金属気相成長法(MOVPE)により、サブコレクタ層7、コレクタ層6、ベース層5、エミッタ層4、エミッタコンタクト層3、グレーデッドノンアロイ層2、ノンアロイ層1を順次成長した構造を有する。
【0034】
【表2】
【0035】
すなわち、表2に示すように、半絶縁性GaAs基板8上に、サブコレクタ層7として厚さ600nmのn+型GaAs(キャリア濃度5×1018cm−3)、コレクタ層6として500nmのn−型GaAs(キャリア濃度1×1016cm−3)が成長されている。
【0036】
このコレクタ層6上には、ベース層との中間層として、厚さ100nmのn−型AlAs層10(キャリア濃度1×1016cm−3)が成長されている。そして、このAlAs層10上には、ベース層5として70nmのp+型GaAs(キャリア濃度4×1019cm−3)が成長されている。したがって、AlAs層10が、GaAsコレクタ層6とGaAsベース層5の間に挿入された形態となっている。
【0037】
さらに、このベース層5上には、エミッタ層4として100nmのn型InxGa1−xP(In組成x=0.49、キャリア濃度5×1017cm−3)、エミッタコンタクト層3として100nmのn+型GaAs(キャリア濃度5×1018cm−3)が成長され、さらに、このエミッタコンタクト層3の上に、厚さ50nm、キャリア濃度が1×1019cm−3のn+型InxGa1−xAs(x=0→0.5)から成るグレーデッドノンアロイ層2が成長されている。このグレーデッドノンアロイ層2は、In組成yを下面から上面にかけて0から0.5まで徐々に増加させた構造となっている。
【0038】
さらにまた、このグレーデッドノンアロイ層2の上に、均一組成ノンアロイ層1として50nmのn+型InxGa1−xAs(In組成x=0.5、キャリア濃度1×1019cm−3)が成長されている。
【0039】
上記のノンアロイ層1、ベース層5及びサブコレクタ層7の上には、それぞれエミッタ電極11、ベース電極12及びコレクタ電極13が形成されて、ヘテロ接合バイポーラトランジスタが構成される。
【0040】
換言すれば、半絶縁性基板8上にサブコレクタ層7、コレクタ層6、ベース層5及びエミッタ層4が順に積層形成され、上記サブコレクタ層7の上方にコレクタ電極13が、上記ベース層5の上方にベース電極12が、上記エミッタ層4の上方にエミッタ電極11が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタが構成され、上記GaAsコレクタ層6とGaAsベース層5の間に、上記GaAsよりもバンドギャップの広い材料の中間層であるAlAs層10が挿入されている。
【0041】
[実施例]
上記構成において本発明の効果を確認するため、表2に示す構造で、AlAs層10の挿入のあるもの(実施例)と、無いもの(比較例)をMOVPE法にて成長した。
【0042】
本実施例のHBTは次のようにして作成した。
【0043】
表2に示したエピタキシャル成長の条件を下記する。成長炉内圧力は50Torr、希釈用ガスは水素である。基板には半絶縁性GaAsウェハを用いた。
【0044】
n+−GaAsサブコレクタ層7の成長には、Ga(CH3)3、AsH3及びSi2H6を使用した。Ga(CH3)3の流量は200cc/分である。AsH3の流量は50cc/分である。Si2H6の流量は400cc/分である。
【0045】
n−−GaAsコレクタ層6の成長には、Ga(CH3)3、AsH3及びSi2H6を用い、それらの流量はそれぞれ200cc/分、600cc/分及び10cc/分である。
【0046】
n−−AlAs層10の成長には、Al(CH3)3及びAsH3及びSi2H6を用い、それらの流量はそれぞれ100cc/分、300cc/分及び20cc/分である。
【0047】
p+−GaAsベース層5の成長には、Ga(CH3CH2)3、AsH3及びCBr4を用い、それらの流量はそれぞれ200cc/分、20cc/分及び20cc/分である。n−In0.49Ga0.51Pエミッタ層4の成長にはGa(CH3CH2)3、In(CH3)3、PH3及びSi2H6を用い、それらの流量はそれぞれ200cc/分、200cc/分、500cc/分及び50cc/分である。n+−GaAsエミッタコンタクト層3の成長にはGa(CH3)3、AsH3及びSi2H6を用い、それらの流量はそれぞれ200cc/分、300cc/分及び300cc/分である。n+−In0.50Ga0.50Asノンアロイ層9の成長にはGa(CH3CH2)3、In(CH3)3、AsH3及びH2Seを用い、それらの流量はそれぞれ400cc/分、200cc/分、500cc/分及び100cc/分である。
【0048】
上記実施例のHBTの他、表2に示す構造でAlAs層10の挿入の無いもの(比較例のHBT)を作製し、その特性を比較した。すなわち、上記比較例(従来技術)と上記実施例(本発明)についてそれぞれHBTを作製し、コレクタ耐圧(BVbco)をそれぞれ測定した。両者の特性の比較結果を、HBTの基本電気的特性でもある電流利得βとともに表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すように、上記比較例(従来技術)ではコレクタ耐圧が22.2Vであったものが、上記実施例(本発明)ではコレクタ耐圧が29.7Vにまで高まった。また、電流利得(電流増幅率β)は上記比較例(従来技術)がβ=102、本実施例(本発明)がβ=104であり、低下がみられなかった。
【0051】
よって本発明に従い、GaAsよりもバンドギャップの大きなAlAs層をGaAsコレクタ層中に挿入することで、HBTの基本電気的特性を劣化させずに高耐圧化を図ることができる。コレクタ層を高耐圧化することができれば、HBTにおいてより高い電圧で使用することが可能になり、更なる高出力化を図ることができる。
【0052】
<他の実施例、変形例>
上記実施形態では、コレクタ層6とベース層5の間にAlAs層10を挿入したが、この代わりに、図2に示すように、サブコレクタ層7とコレクタ層6の間にAlAs層10を挿入することもでき、かかる構成によってもコレクタ層の高耐圧化を図ることができる。
【0053】
またコレクタ層6の全てにAlAs層10を適用し、コレクタ層6の全てをAlAs層10で構成することによっても、コレクタ層の高耐圧化を図ることができる。
【0054】
また本発明はコレクタ層の高耐圧化方法であり、AlAs層を用いたが、AlAs層10を他の材料層に変えて適用することもできる。例えば、GaAsよりもバンドギャップの大きなAlGaAs、AlPSbを適用することもでき、AlAs層10と同様のコレクタ層の高耐圧化を達成することが可能である。
【0055】
上記実施形態では、エミッタ層をInGaPとしたがAlGaAsで構成することもできる。またベース層をGaAsとしたが、InGaAs又はAlGaAsで構成することもできる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0057】
本発明では、GaAsコレクタ層の膜厚・キャリア濃度を変更せずに高耐圧化を図るために、GaAsよりもバンドギャップの大きな材料AlAs、AlGaAs又はAlPSb等を用い、このAlAs等の材料の層をGaAsコレクタ層中に挿入した。このため、本発明によれば、コレクタ層の膜厚・キャリア濃度を変更しないで、HBTの基本的電気特性(例えば電流増幅率β)を劣化させることなく、コレクタ層を高耐圧化することができる。したがって、本発明によりHBTをより高い電圧で使用することが可能になり、HBTの更なる高出力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかるHBTの横断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態にかかるHBTの横断面図である。
【図3】従来のHBTの横断面図である。
【符号の説明】
1 ノンアロイ層
2 グレーデッドノンアロイ層
3 エミッタコンタクト層
4 エミッタ層
5 ベース層
6 コレクタ層
7 サブコレクタ層
8 基板
9 ノンアロイ層
10 AlAs層
11 エミッタ電極
12 ベース電極
13 コレクタ電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Hetero junction Bipolar Transistor:HBT)、特にAlGaAs/GaAs系HBT及びInGaP/GaAs系HBTのコレクタを高耐圧化する構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
III−V族化合物半導体はSi(シリコン)半導体に比べて、電子移動度が高いという特長がある。この特長を活かして、高速動作や高効率動作を要求されるデバイスに多く用いられている。そのなかでもエミッタ・ベース接合にヘテロ接合を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)は、エミッタ層のバンドギャップがベース層のバンドギャップよりも広いことにより、高周波特性に優れ、電源が正電源だけで良く、携帯電話用高出力トランジスタ等に広く使用されている。特に、携帯電話の低コスト・小型化の要求から近年需要が高まっている。
【0003】
このHBTはエミッタ/ベース接合がAlGaAs/GaAsヘテロ接合により構成されるのが一般的である。しかし最近は、デバイス特性向上或いは信頼性向上の観点から、エミッタ層をAlGaAsエミッタ層からInGaPエミッタ層に置き換えることが検討され、一部においては作製されている。 これは、活性な原子であるAlを含むAlGaAs層をエミッタ層として用いた場合には、AlGaAs層に深い準位に起因する多くの非発光性再結合中心が形成され、この非発光性再結合中心を介してHBTの劣化が進行するためであり、Alを含まないInGaP層をエミッタ層として用いることによって劣化の問題を解決しようとするものである。
【0004】
一構造例として、HBT用InGaPエミッタエピタキシャルウェハ及びそれを用いて作成したInGaP/GaAs系HBTの構造を図3に示し、従来技術を説明する。
【0005】
このHBT用エピタキシャルウェハ(以下、HBT用エピタキシャルと略す)は、半絶縁性GaAs基板8上に、MOVPEやMBE法といった気相エピタキシャル成長法により結晶成長した、GaAsサブコレクタ層7、GaAsコレクタ層6、GaAsベース層5、InGaPエミッタ層4、GaAsエミッタコンタクト層3及びInGaAsノンアロイ層9より成る。
【0006】
基板8は単結晶成長するための下地である。サブコレクタ層7は金属電極とのオーミックコンタクトを形成するキャリア濃度の大きなn型のGaAs層である。コレクタ層6はベース層から電子を引き抜く働きを持つキャリア濃度の小さなn型のGaAs層である。ベース層5は電流を制御する働きを持つp型のGaAs層又はInGaAs層、AlGaAs層からなる。エミッタ層4は電子をベース層に注入し、且つベース層からの正孔の注入を制御する働きを持つn型のInGaP層又はAlGaAs層からなる。エミッタコンタクト層3は金属電極とのオーミックコンタクトを形成するキャリア濃度の大きなn型のGaAs層である。ノンアロイ層9は金属電極とのオーミックコンタクトを形成するキャリア濃度の大きなn型のInGaAs層であり、通常In組成を例えば0から0.50にリニアに変化させたグレーデッドノンアロイ層(InGaAsノンアロイ層)2と、その上にIn組成を0.50に固定した均一組成層(InGaAsノンアロイ層)1からなる。
【0007】
HBT用エピタキシャルウェハの具体的構造例を表1に示した。結晶成長のことをエピタキシャル成長と言う。エピタキシャル層名称のn−はエピタキシャル層がn型であることを表し、n+−、n−−はそれぞれキャリア濃度が大きいn型、キャリア濃度が小さいn型を表している。p+−はキャリア濃度が大きいp型を表している。厚さの単位はnm(10−9m)、キャリア濃度の単位はcm−3である。
【0008】
【表1】
【0009】
表1に示したHBT用エピタキシャルの成長方法を以下に述べる。
【0010】
エピタキシャル層を成長させる半絶縁性基板をサセプタにセットし、成長炉内で加熱する。成長炉内に原料ガスを供給すると、原料ガスが熱により分解し、基板上にエピタキシャル層を成長する。
【0011】
n+−GaAs、n−−GaAsを成長する場合には、Ga原料のGa(CH3)3(トリメチルガリウム)とAs原料のAsH3(アルシン)、及びn型ドーパントを基板に供給する。なお、Ga原料として、他にGa(CH3CH2)3(トリエチルガリウム)がある。As原料としては、他にAs(CH3)3(トリメチル砒素)、TBA(ターシャリーブチルアルシン)がある。n型ドーパントの元素としてはSi(珪素)やSe(セレン)がある。Si原料としてSiH4(モノシラン)、Si2H6(ジシラン)がある。Se原料としてはH2Se(セレン化水素)がある。
【0012】
p+−GaAsを成長する場合には、炉内の熱環境を最適化し、Ga(CH3CH2)3、AsH3及びp型ドーパントを基板に供給する。p型ドーパントの元素としてはC(炭素)がある。C原料としてはCCl3Br(ブロモトリクロロメタン)、CBr4(テトラブロモメタン)がある。
【0013】
n−In0.49Ga0.51Pを成長する場合には、Ga(CH3CH2)3とP原料のPH3(ホスフィン)、及びIn原料のIn(CH3)3(トリメチルインジウム)を基板に供給する。なお、P原料として他にTBP(ターシャリーブチルホスフィン)、In原料として他にIn(CH3CH2)3(トリエチルインジウム)がある。
【0014】
n+−In0.50Ga0.50Asを成長する場合には、n型ドーパントであるSeを高濃度にドーピングさせるため、炉内の熱環境を最適化し、Ga(CH3CH2)3、AsH3、In(CH3)3、及びH2Seを基板に供給する。
【0015】
HBTおいては、InGaAsノンアロイ層9の上にエミッタ電極が、GaAsベース層5の上にベース電極12が、そしてサブコレクタ層7の上にコレクタ電極13が形成される。エミッタ接地の場合は、コレクタ電極13に正の電圧を印加し、ベース電極12よりベース電流Ibを信号入力として流し、出力となるコレクタ電流Icを制御する(図4)。
【0016】
上記HBTにおいて、コレクタ層を高耐圧化することができれば、HBTを高い電圧で使用することが可能になり、更なる高出力化を図ることができる。
【0017】
HBTの高耐圧化に関しては、従来、サブコレクタ層に、不純物を、意図的に予め決められた濃度分にしたがって添加することにより、サブコレクタ層での空間電荷を電気的に補償し、衝突電離を助長させるバンド曲がりによる電解集中効果を解消させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ただし、コレクタ層を直接に高耐圧化するものではない。
【0018】
また、HBTの高耐圧化とは関係がないが、サブコレクタ層とコレクタ層との間にAlAs層を設けることにより、サブコレクタ層に3×1018cm−3を超えてドーパントをドーピングしても、電流増幅率β(エミッタ接地電流増幅率)が低下しないようにする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0019】
【特許文献1】
特開平5−041388号公報
【0020】
【特許文献2】
特開2001−20003217号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従来よりHBTでは、図3の如くコレクタ層にn−−GaAs層が用いられている。このコレクタ層を高耐圧化することができれば、HBTにおいてより高い電圧で使用することが可能になり、更なる高出力化を図ることができる。このコレクタ層を高耐圧化するためには、「コレクタ層n−−GaAs層の膜厚を厚くする」「コレクタ層n−−GaAs層のキャリア濃度を下げる」ことが挙げられる。
【0022】
しかしながら、膜厚を厚くすると、多くのノイズが入るようになり、HBTでの高周波特性が落ちてしまう。また、キャリア濃度を下げると、電圧をかけた際の容量変化が大きくなってしまう。
【0023】
以上のことより、HBTの基本的電気特性を劣化させることなく、コレクタ層の膜厚・キャリア濃度を変更して高耐圧化を図ることは困難であった。
【0024】
また、特許文献1の耐圧化は、高コレクタ電流注入時での衝突電離による雪崩降伏現象を抑制するコレクタ構造全体に着目して、サブコレクタ層に不純物を意図的に予め決められた濃度分にしたがって添加するものであり、これによりサブコレクタ層での空間電荷を電気的に補償し、耐圧特性の優れたHBTとするものであり、コレクタ層を直接に高耐圧化するものではない。
【0025】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、コレクタ層の膜厚やキャリア濃度を変更することなく、コレクタ層の高耐圧化を図ることのできるHBTの構造を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0027】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、半絶縁性基板上に、GaAsサブコレクタ層、GaAsコレクタ層、GaAsベース層、AlGaAs又はInGaPより成るエミッタ層が順に積層形成され、前記サブコレクタ層上にコレクタ電極が、前記ベース層上にベース電極が、前記エミッタ層上にエミッタ電極が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記コレクタ層の全部もしくは一部を、GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層で構成し、コレクタ層の高耐圧化を図ったことを特徴とする。
【0028】
請求項2の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層を、前記GaAsコレクタ層と前記GaAsベース層の間に挿入したことを特徴とする。
【0029】
請求項3の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、前記GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層を、前記GaAsサブコレクタ層と前記GaAsコレクタ層の間に挿入し、前記GaAsサブコレクタ層上にコレクタ電極を設けたことを特徴とする。
【0030】
<発明の要点>
従来技術では、コレクタ層にはn−−GaAs層が用いられている。コレクタ層を高耐圧化するためには、「コレクタ層n−−GaAs層の膜厚を厚くする」「コレクタ層n−−GaAs層のキャリア濃度を下げる」ことが挙げられる。しかし、膜厚を厚くすると多くのノイズが入るようになり、HBTでの高周波特性が落ちてしまう。また、キャリア濃度を下げると、電圧をかけた際の容量変化が大きくなってしまう、という問題がある。コレクタ層の膜厚・キャリア濃度を変更せずに耐圧を挙げるためには、コレクタ層に用いる材料のバンドギャップを大きくするしかない。
【0031】
そこで本発明では、コレクタ層を成長する場合に、GaAsよりもバンドギャップの大きな材料を用いることにした。すなわち、本発明では、GaAsコレクタ層(n−−GaAs層)の膜厚・キャリア濃度を変更せずに高耐圧化を図るために、GaAsよりもバンドギャップの大きな材料AlAs、AlGaAs又はAlPSb等を用い、このAlAs等の材料の層をGaAsコレクタ層中に挿入することにした。例えばAlAsのバンドギャップは2.16[eV]であり、GaAsの1.435[eV]よりも大きいので、AlAs層をGaAsコレクタ層中に挿入することにより、HBTの基本電気的特性を劣化させることなく高耐圧化を図ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0033】
図1に本発明の実施形態に係るInGaP/GaAs系HBTの構造を、また表2にそのエピタキシャルウェハの構造を示す。これは、半絶縁性GaAs基板8上に、有機金属気相成長法(MOVPE)により、サブコレクタ層7、コレクタ層6、ベース層5、エミッタ層4、エミッタコンタクト層3、グレーデッドノンアロイ層2、ノンアロイ層1を順次成長した構造を有する。
【0034】
【表2】
【0035】
すなわち、表2に示すように、半絶縁性GaAs基板8上に、サブコレクタ層7として厚さ600nmのn+型GaAs(キャリア濃度5×1018cm−3)、コレクタ層6として500nmのn−型GaAs(キャリア濃度1×1016cm−3)が成長されている。
【0036】
このコレクタ層6上には、ベース層との中間層として、厚さ100nmのn−型AlAs層10(キャリア濃度1×1016cm−3)が成長されている。そして、このAlAs層10上には、ベース層5として70nmのp+型GaAs(キャリア濃度4×1019cm−3)が成長されている。したがって、AlAs層10が、GaAsコレクタ層6とGaAsベース層5の間に挿入された形態となっている。
【0037】
さらに、このベース層5上には、エミッタ層4として100nmのn型InxGa1−xP(In組成x=0.49、キャリア濃度5×1017cm−3)、エミッタコンタクト層3として100nmのn+型GaAs(キャリア濃度5×1018cm−3)が成長され、さらに、このエミッタコンタクト層3の上に、厚さ50nm、キャリア濃度が1×1019cm−3のn+型InxGa1−xAs(x=0→0.5)から成るグレーデッドノンアロイ層2が成長されている。このグレーデッドノンアロイ層2は、In組成yを下面から上面にかけて0から0.5まで徐々に増加させた構造となっている。
【0038】
さらにまた、このグレーデッドノンアロイ層2の上に、均一組成ノンアロイ層1として50nmのn+型InxGa1−xAs(In組成x=0.5、キャリア濃度1×1019cm−3)が成長されている。
【0039】
上記のノンアロイ層1、ベース層5及びサブコレクタ層7の上には、それぞれエミッタ電極11、ベース電極12及びコレクタ電極13が形成されて、ヘテロ接合バイポーラトランジスタが構成される。
【0040】
換言すれば、半絶縁性基板8上にサブコレクタ層7、コレクタ層6、ベース層5及びエミッタ層4が順に積層形成され、上記サブコレクタ層7の上方にコレクタ電極13が、上記ベース層5の上方にベース電極12が、上記エミッタ層4の上方にエミッタ電極11が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタが構成され、上記GaAsコレクタ層6とGaAsベース層5の間に、上記GaAsよりもバンドギャップの広い材料の中間層であるAlAs層10が挿入されている。
【0041】
[実施例]
上記構成において本発明の効果を確認するため、表2に示す構造で、AlAs層10の挿入のあるもの(実施例)と、無いもの(比較例)をMOVPE法にて成長した。
【0042】
本実施例のHBTは次のようにして作成した。
【0043】
表2に示したエピタキシャル成長の条件を下記する。成長炉内圧力は50Torr、希釈用ガスは水素である。基板には半絶縁性GaAsウェハを用いた。
【0044】
n+−GaAsサブコレクタ層7の成長には、Ga(CH3)3、AsH3及びSi2H6を使用した。Ga(CH3)3の流量は200cc/分である。AsH3の流量は50cc/分である。Si2H6の流量は400cc/分である。
【0045】
n−−GaAsコレクタ層6の成長には、Ga(CH3)3、AsH3及びSi2H6を用い、それらの流量はそれぞれ200cc/分、600cc/分及び10cc/分である。
【0046】
n−−AlAs層10の成長には、Al(CH3)3及びAsH3及びSi2H6を用い、それらの流量はそれぞれ100cc/分、300cc/分及び20cc/分である。
【0047】
p+−GaAsベース層5の成長には、Ga(CH3CH2)3、AsH3及びCBr4を用い、それらの流量はそれぞれ200cc/分、20cc/分及び20cc/分である。n−In0.49Ga0.51Pエミッタ層4の成長にはGa(CH3CH2)3、In(CH3)3、PH3及びSi2H6を用い、それらの流量はそれぞれ200cc/分、200cc/分、500cc/分及び50cc/分である。n+−GaAsエミッタコンタクト層3の成長にはGa(CH3)3、AsH3及びSi2H6を用い、それらの流量はそれぞれ200cc/分、300cc/分及び300cc/分である。n+−In0.50Ga0.50Asノンアロイ層9の成長にはGa(CH3CH2)3、In(CH3)3、AsH3及びH2Seを用い、それらの流量はそれぞれ400cc/分、200cc/分、500cc/分及び100cc/分である。
【0048】
上記実施例のHBTの他、表2に示す構造でAlAs層10の挿入の無いもの(比較例のHBT)を作製し、その特性を比較した。すなわち、上記比較例(従来技術)と上記実施例(本発明)についてそれぞれHBTを作製し、コレクタ耐圧(BVbco)をそれぞれ測定した。両者の特性の比較結果を、HBTの基本電気的特性でもある電流利得βとともに表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すように、上記比較例(従来技術)ではコレクタ耐圧が22.2Vであったものが、上記実施例(本発明)ではコレクタ耐圧が29.7Vにまで高まった。また、電流利得(電流増幅率β)は上記比較例(従来技術)がβ=102、本実施例(本発明)がβ=104であり、低下がみられなかった。
【0051】
よって本発明に従い、GaAsよりもバンドギャップの大きなAlAs層をGaAsコレクタ層中に挿入することで、HBTの基本電気的特性を劣化させずに高耐圧化を図ることができる。コレクタ層を高耐圧化することができれば、HBTにおいてより高い電圧で使用することが可能になり、更なる高出力化を図ることができる。
【0052】
<他の実施例、変形例>
上記実施形態では、コレクタ層6とベース層5の間にAlAs層10を挿入したが、この代わりに、図2に示すように、サブコレクタ層7とコレクタ層6の間にAlAs層10を挿入することもでき、かかる構成によってもコレクタ層の高耐圧化を図ることができる。
【0053】
またコレクタ層6の全てにAlAs層10を適用し、コレクタ層6の全てをAlAs層10で構成することによっても、コレクタ層の高耐圧化を図ることができる。
【0054】
また本発明はコレクタ層の高耐圧化方法であり、AlAs層を用いたが、AlAs層10を他の材料層に変えて適用することもできる。例えば、GaAsよりもバンドギャップの大きなAlGaAs、AlPSbを適用することもでき、AlAs層10と同様のコレクタ層の高耐圧化を達成することが可能である。
【0055】
上記実施形態では、エミッタ層をInGaPとしたがAlGaAsで構成することもできる。またベース層をGaAsとしたが、InGaAs又はAlGaAsで構成することもできる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0057】
本発明では、GaAsコレクタ層の膜厚・キャリア濃度を変更せずに高耐圧化を図るために、GaAsよりもバンドギャップの大きな材料AlAs、AlGaAs又はAlPSb等を用い、このAlAs等の材料の層をGaAsコレクタ層中に挿入した。このため、本発明によれば、コレクタ層の膜厚・キャリア濃度を変更しないで、HBTの基本的電気特性(例えば電流増幅率β)を劣化させることなく、コレクタ層を高耐圧化することができる。したがって、本発明によりHBTをより高い電圧で使用することが可能になり、HBTの更なる高出力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかるHBTの横断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態にかかるHBTの横断面図である。
【図3】従来のHBTの横断面図である。
【符号の説明】
1 ノンアロイ層
2 グレーデッドノンアロイ層
3 エミッタコンタクト層
4 エミッタ層
5 ベース層
6 コレクタ層
7 サブコレクタ層
8 基板
9 ノンアロイ層
10 AlAs層
11 エミッタ電極
12 ベース電極
13 コレクタ電極
Claims (3)
- 半絶縁性基板上に、GaAsサブコレクタ層、GaAsコレクタ層、GaAsベース層、AlGaAs又はInGaPより成るエミッタ層が順に積層形成され、前記サブコレクタ層上にコレクタ電極が、前記ベース層上にベース電極が、前記エミッタ層上にエミッタ電極が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
前記コレクタ層の全部もしくは一部を、GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層で構成し、コレクタ層の高耐圧化を図ったことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。 - 請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
前記GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層を、前記GaAsコレクタ層と前記GaAsベース層の間に挿入したことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。 - 請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
前記GaAsよりもバンドギャップの広いAlAs、AlGaAs又はAlPSb等の材料から成る層を、前記GaAsサブコレクタ層と前記GaAsコレクタ層の間に挿入し、前記GaAsサブコレクタ層上にコレクタ電極を設けたことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
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- 2003-07-10 JP JP2003194753A patent/JP2005032897A/ja active Pending
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