JP2004301579A - ガスセンサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガスセンサ10Aの保護カバー14は、センサ素子12の少なくとも先端部を覆う内側保護カバー16と、内側保護カバー16を覆う外側保護カバー18と、内側保護カバー16と外側保護カバー18との間に設置された中間保護カバー20とを具備する。内側保護カバー16に設けられた複数の内側ガス導入孔22の合計開口面積をA1、外側保護カバー18に設けられた複数の外側ガス導入孔34の合計開口面積をA2としたとき、A1/A2≧1を満足するようにする。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、車両の排出ガスや大気中に含まれるNO、NO2、SO2、CO2、H2O等のガス成分を測定するガスセンサに関し、特に、センサ素子を取り囲むように配置された保護カバーを有するガスセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、酸素イオン伝導体を用いた酸素センサ、NOxセンサ(特許文献1参照)、HCセンサ(特許文献2参照)、プロトンイオン伝導体を用いた水素センサ、H2Oセンサ、あるいはSnO2やTiO2等の酸化物半導体を用いた酸素センサや各種ガスセンサなど、様々なガスセンサが提案され、実用化されている。
【0003】
これらのガスセンサのうち、ZrO2を用いた酸素センサやTiO2を用いた酸素センサは、自動車の排気ガス環境下においても安定した性能を保つことから、広く自動車の排気ガス中の酸素濃度制御あるいはA/F(空燃比)制御用として用いられている。また、ZrO2を用いたNOxセンサも自動車のNOx制御用として実用段階に入っている。
【0004】
そして、内燃機関の排気管に取り付けられる酸素センサとしては、センサ素子部の周囲に排ガスの流れを均一にするようにした保護カバーや、エンジンの始動時に発生する凝縮水の付着(いわゆる水掛かり)を防止するようにした保護カバーが知られている。また、二重構造の保護カバーを取り付けた酸素センサとしては、特許文献3及び特許文献4に示されるものが公知になっている。
【0005】
これらの従来の保護カバーのうち、水掛かりを防止した耐飛水性の保護カバーにおいては、ガスセンサでの応答性が遅くなるおそれがある。そこで、二重構造の保護カバーのうち、センサ素子に近接する内側保護カバーの内側ガス導入孔をセンサ素子に対向して設けることによって応答性を向上させたものが提案されている(特許文献5参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−271476号公報(図2)
【特許文献2】
特開平8−247995号公報(図1)
【特許文献3】
米国特許第4597850号公報(図1)
【特許文献4】
米国特許第4683049号公報(図7、図8)
【特許文献5】
特許第2641346号公報(図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の従来例においては、触媒の前方に設置することを前提に設計されており、触媒の後方に設置して使用した場合、耐飛水性(エンジン始動時に発生する凝縮水の付着を防止する性能)の点で問題があることが判明した。また、内燃機関の排気管への取り付け角度によっても耐飛水性の点で問題があることが判明した。
【0008】
応答性を速くするために、保護カバーの構造として、被測定ガスの進入量を増加させた構造にすることが考えられるが、エンジンの始動時に発生する凝縮水も同様に浸入しやすくなる。即ち、センサ素子への水掛かりの防止効果と応答性の向上とは背反する関係にあり、これらの効果を同時に満足することは困難である。
【0009】
また、保護カバー内への被測定ガスの導入に伴ってセンサ素子に大幅な温度変動が発生し、センサ素子の構成基体にクラックが発生するおそれがある。
【0010】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、応答性を損なうことなく、測定ガスの進入によるセンサ素子の温度変動及び水掛かりを有効に低減することができ、温度特性並びに耐飛水性に優れたガスセンサを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るガスセンサは、導入された被測定ガスのうちの所定ガス成分を測定するセンサ素子と、該センサ素子を取り囲むように配置された保護カバーとを有し、前記保護カバーが、前記センサ素子の少なくとも先端部を覆う内側保護カバーと、前記内側保護カバーを覆う外側保護カバーと、前記内側保護カバーと前記外側保護カバーとの間に設置された中間保護カバーとを具備したガスセンサにおいて、前記内側保護カバーは、有底筒状に形成され、かつ、その側面のうち、前記センサ素子に対向する位置に複数の内側ガス導入孔が形成され、底部に少なくとも1つの内側ガス排出孔が形成され、前記外側保護カバーは、有底筒状に形成され、かつ、その側面のうち、前記内側ガス導入孔に対向しない位置に複数の外側ガス導入孔が形成され、前記中間保護カバーは、前記内側ガス導入孔と前記外側ガス導入孔に対向しない位置に中間ガス導入孔が少なくとも形成され、前記複数の内側ガス導入孔の合計開口面積をA1、前記複数の外側ガス導入孔の合計開口面積をA2としたとき、A1/A2≧1を満足することを特徴とする。
【0012】
これにより、まず、内側保護カバーと外側保護カバーからなる2重構造のカバーに、中間保護カバーを設けた3重構造としているため、エンジン始動時に発生する凝縮水の付着(いわゆる水掛かり)を有効に防止することができる。
【0013】
更に、前記複数の内側ガス導入孔の合計開口面積A1と、前記複数の外側ガス導入孔の合計開口面積A2との比A1/A2を1以上としているため、外側ガス導入孔から導入された被測定ガスが内側ガス導入孔を抜ける流速が低減することとなる。従って、例えば外側ガス導入孔を通じて凝縮水が外側保護カバー内に入り込んだとしても、前記被測定ガスの内側ガス導入孔への流速が低いことから、該凝縮水が内側ガス導入孔を通じてセンサ素子に向けて入り込むことがなくなる。その結果、例えばガス管(内燃機関の排気管等)に保護カバーをどのような角度で設置したとしても、センサ素子への水掛かりを防止することができる。もちろん、センサ素子に向かって急速に被測定ガスが当たるということがなくなるため、センサ素子での温度変動(被測定ガスの導入に伴う温度変動)を抑えることができる。
【0014】
従って、前記保護カバーを、ガス管に対してほぼ直角に取り付けてもよいし、ガス管に対して傾斜させて取り付けるようにしてもよく、ユーザの好みに合わせて様々なガス管への取り付けを実現させることができる。
【0015】
なお、被測定ガスの内側ガス導入孔への流速が低くなることから、センサ素子での応答性が低下するおそれがあるが、これは、外側ガス導入孔の各径や内側ガス導入孔の各径を適宜選定することで、前記応答性の低下を抑えることが可能となる。
【0016】
そして、前記構成において、前記内側ガス導入孔の個数が前記外側ガス導入孔の個数よりも多くするようにしてもよい。これにより、外側保護カバー内に導入された被測定ガスの各内側ガス導入孔に対する流量が減ることから、被測定ガスがセンサ素子に到達するまでに内側保護カバー内で拡散し、センサ素子に対する局部的で、かつ、集中的な被測定ガスの照射を回避させることができる。
【0017】
そのため、センサ素子での局部的な温度変動を防止することができ、センサ素子への温度変動に伴うクラックの発生等を有効に防止することができる。
【0018】
また、前記構成において、前記内側保護カバーは、前記複数の内側ガス導入孔を跨ぐように板部を設けるようにしてもよい。これにより、内側ガス導入孔を通じて内側保護カバー内に導入された被測定ガスは、板部によって拡散されることとなる。即ち、被測定ガスが直接センサ素子に当たるということが回避され、センサ素子での温度変動を抑制することができる。
【0019】
また、前記構成において、前記複数の内側ガス導入孔は、前記内側保護カバーの1つの円周に沿ってほぼ等ピッチで形成されていてもよい。あるいは、前記複数の内側ガス導入孔をn個のグループに分けたとき、第1のグループに属する複数の内側ガス導入孔を、前記内側保護カバーの第1の円周に沿ってほぼ等ピッチで形成し、第2のグループに属する複数の内側ガス導入孔を、前記内側保護カバーの第2の円周に沿ってほぼ等ピッチで形成し、同様に、第nのグループに属する複数の内側ガス導入孔を、前記内側保護カバーの第nの円周に沿ってほぼ等ピッチで形成するようにしてもよい。
【0020】
通常、内側ガス導入孔をランダムに形成した場合、その配列状態によっては、被測定ガスが1つあるいは2つの内側ガス導入孔からセンサ素子に向かって集中的に導入されるおそれがある。
【0021】
しかし、上述したように、複数の内側ガス導入孔を内側保護カバーの1つあるいは複数の円周に沿って形成することで、被測定ガスは各内側ガス導入孔に対しほぼ均等に分散されて導入されることから、各内側ガス導入孔での被測定ガスの流速をより低減することが可能となり、上述の水掛かりを有効に防止することができる。また、被測定ガスがセンサ素子に対し集中的に当たるということも回避することができることから、センサ素子での温度変動を更に抑制することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るガスセンサの実施の形態例を図1〜図19を参照しながら説明する。
【0023】
第1の実施の形態に係るガスセンサ10Aは、図1に示すように、導入された被測定ガス(排気ガス)のうちの所定ガス成分、例えばNOx等を測定するセンサ素子12と、該センサ素子12の先端部を取り囲むように配置された保護カバー14を有して構成されている。
【0024】
センサ素子12の構成は、例えば特開2000−304719号公報に記載されたセンサ素子(公報の図3及び図4参照)と同様の構成を有するため、ここでは、その説明を省略する。
【0025】
そして、この第1の実施の形態に係るガスセンサ10Aにおいて、センサ素子12を取り囲むように配置された保護カバー14は、センサ素子12の先端部を覆う内側保護カバー16と、該内側保護カバー16を覆う外側保護カバー18と、前記内側保護カバー16と外側保護カバー18との間に設置された中間保護カバー20とを有して構成されている。
【0026】
前記内側保護カバー16は、金属にて有底筒状に形成され、センサ素子12に対向する位置に複数の内側ガス導入孔22が形成され、底部(前端部)に内側ガス排出孔24が形成されている。
【0027】
中間保護カバー20は、金属にて有底円筒状に形成され、該中間保護カバー20の前端部で内側保護カバー16の前端部を覆うように構成されている。中間保護カバー20の前端面の中央には、内側保護カバー16の内側ガス排出孔24の径よりも小径の中間ガス排出孔26が形成されている。
【0028】
また、中間保護カバー20は、その後部に外側保護カバー18の内壁に当接するフランジ部28を有する。フランジ部28は、その後端部分が横方向に屈曲され、その周端縁が後方に屈曲してなる屈曲部30が一体に形成されている。この屈曲部30の外周面が前記外側保護カバー18の内壁に当接されるようになっている。
【0029】
前記フランジ部28には、その円周に沿って中間ガス導入孔を構成する複数のスリット32が形成されている。この第1の実施の形態では6等配のスリット32が形成され、各スリット32は、フランジ部28の円周に対して中心角40°の円弧状を有する。なお、隣接するスリット32間には中心角20°の円弧状の隙間が置かれている。
【0030】
前記外側保護カバー18は、金属にて有底筒状に形成され、その側周面のうち、前記内側保護カバー16の内側ガス導入孔22に対向しない位置に外側ガス導入孔34を有する。
【0031】
外側保護カバー18の側周面のうち、内側ガス排出孔24と外側保護カバー18の底部との間に、外側ガス導入孔34が6等配に形成されている。
【0032】
内側保護カバー16の側周面には、12個の内側ガス導入孔22が2段に分かれて形成されている。
【0033】
ここで、12個の内側ガス導入孔22の形成位置について説明すると、フランジ部28から距離L1の位置に対応する箇所の1つの円周に沿って6つの内側ガス導入孔22が形成され、更に、フランジ部28から距離L2(>L1)の位置に対応する箇所の1つの円周に沿って6つの内側ガス導入孔22が形成されている。また、各内側ガス導入孔22の形成位置は、内側保護カバー16の剛性を維持するために、各内側ガス導入孔22の中心を結ぶ線がジグザグとなるように設定されている。
【0034】
つまり、外側ガス導入孔34と、スリット(中間ガス導入孔)32と、内側ガス導入孔22との配置関係は、外側保護カバー18の底部から上方に向かって、外側ガス導入孔34、内側ガス導入孔22、中間ガス導入孔32の順に配置されている。
【0035】
そして、外側保護カバー18の外側ガス導入孔34から入った被測定ガスは、中間保護カバー20のスリット32と内側保護カバー16の内側ガス導入孔22を通じてセンサ素子12に達し、その後、内側保護カバー16の底部に形成された内側ガス排出孔24と中間保護カバー20の底部に形成された中間ガス排出孔26並びに外側保護カバー18の外側ガス導入孔34を通じて排出されることになる。この経路を被測定ガスの流通経路と定義したとき、中間ガス排出孔26付近が負圧となるため、被測定ガスはスムーズに前記流通経路を流れることになる。
【0036】
そして、この第1の実施の形態に係るガスセンサ10Aは、12個の内側ガス導入孔22の合計開口面積をA1、6個の外側ガス導入孔34の合計開口面積をA2としたとき、
A1/A2≧1
を満足するようになっている。
【0037】
これにより、まず、内側保護カバー16と外側保護カバー18からなる2重構造のカバーに、中間保護カバー20を設けた3重構造としているため、エンジン始動時に発生する凝縮水の付着(いわゆる水掛かり)を有効に防止することができる。
【0038】
更に、開口面積A1とA2との比A1/A2を1以上としているため、外側ガス導入孔34から導入された被測定ガスが内側ガス導入孔22を抜ける流速が低減することとなる。
【0039】
従って、例えば外側ガス導入孔34を通じて凝縮水が外側保護カバー18内に入り込んだとしても、前記被測定ガスの内側ガス導入孔22への流速が低いことから、該凝縮水が内側ガス導入孔22を通じてセンサ素子12に向けて入り込むことがなくなる。
【0040】
その結果、例えばガス管(内燃機関の排気管等)に保護カバー14をどのような角度で設置したとしても、センサ素子12への水掛かりを防止することができる。もちろん、センサ素子12に向かって急速に被測定ガスが当たるということがなくなるため、センサ素子12での温度変動(被測定ガスの導入に伴う温度変動)を抑えることができる。
【0041】
従って、保護カバー14を、ガス管に対してほぼ直角に取り付けてもよいし、ガス管に対して傾斜させて取り付けるようにしてもよく、ユーザの好みに合わせて様々なガス管への取り付けを実現させることができる。
【0042】
なお、被測定ガスの内側ガス導入孔22への流速が低くなることから、センサ素子12での応答性が低下するおそれがあるが、これは、外側ガス導入孔34の各径や内側ガス導入孔22の各径を適宜選定することで、前記応答性の低下を抑えることが可能となる。
【0043】
更に、この第1の実施の形態においては、内側ガス導入孔22の個数を外側ガス導入孔34の個数よりも多くしているため、外側保護カバー18内に導入された被測定ガスの各内側ガス導入孔22に対する流量が減る。そのため、被測定ガスがセンサ素子12に到達するまでに内側保護カバー16内で拡散し、センサ素子12に対する局部的で、かつ、集中的な被測定ガスの照射を回避させることができる。
【0044】
その結果、センサ素子12での局部的な温度変動を防止することができ、センサ素子12への温度変動に伴うクラックの発生等を有効に防止することができる。
【0045】
なお、保護カバー14の具体的な寸法例を示すと、外側保護カバー18については、該外側保護カバー18の外径Doが約14.6mmとされ、外側ガス導入孔34の直径d1が約2mmとされ、外側保護カバー18の厚みは約0.4mmとされている。
【0046】
内側保護カバー16は、外径Diが約7mmとされ、内側ガス導入孔22の直径d2は約1.5mmとされ、内側ガス排出孔24の径d3は約5.0mmとされ、内側保護カバー16の厚みは約0.3mmとされている。
【0047】
中間保護カバー20の底部に設けられた中間ガス排出孔26の径d4は約1mmとされている。
【0048】
また、フランジ部28から第1群の内側ガス導入孔22の中心までの距離L1は約3.5mm、フランジ部28から第2群の内側ガス導入孔22の中心までの距離L2は約5.5mm、外側保護カバー18の先端から外側ガス導入孔34の中心までの距離L3は約2.8mm、外側ガス導入孔34の中心からフランジ部28までの距離L4は約16mm、外側保護カバー18の先端から中間保護カバー20の先端までの距離L5は約4.5mm、外側保護カバー18の先端から内側保護カバー16の先端までの距離L6は約6.5mmである。
【0049】
ここで、3つの実験例(第1〜第3の実験例)を示す。まず、第1の実験例は、比較例1並びに実施例1〜3について水掛かりとセンサ素子12の温度変動をみたものである。
【0050】
実験方法は、図2に示すように、2.0リットルのガソリンエンジン50を搭載した自動車52の排気管54のうち、触媒56の後方にガスセンサ(代表的に参照符号を10とする)を取り付け、更に、自動車52のリア部分を持ち上げて、自動車52を地面58に対して傾斜角3°だけ傾けた。
【0051】
そして、図3に示すように、時点t0において、自動車52の排気管54のうち、ほぼ後輪60と対応する部分62に100ccの墨汁等により着色した水を注入し、数秒〜数10秒後の時点t1において、ガスセンサ10のヒータへの通電を開始し、60秒後の時点t2において、エンジン50をスタートし(アイドル状態の回転数=600rpm)、15秒後の時点t3において、3秒間の加速運転(加速状態のピーク時の回転数=5000rpm)を続けて3回行った。
【0052】
センサ素子12への水掛かり状態、即ち、センサ素子12に水が付着したか否かの判定は目視により行った。
【0053】
センサ素子12の温度変動は、以下のように測定した。即ち、センサ素子12の温度を一定に保つために、環境温度の変化に応じてヒータに対する通電量(電力)をフィードバック制御するようにしている。従って、無風状態のときのヒータへの通電量(電力)と、排気管54に流速45m/secの流体を流通させたときのヒータへの通電量(電力)との差をとり、該差を温度変動の測定結果とした。
【0054】
これらの測定は、図4に示すように、ガスセンサ10を排気管54に対して直角に取り付けた場合(以下、標準取り付けと記す)と、図5に示すように、ガスセンサ10を排気管54に対して傾斜(傾斜角θ=35°)させて取り付けた場合(以下、傾斜取り付けと記す)とで行った。
【0055】
比較例1は、内側ガス導入孔22の合計開口面積A1と外側ガス導入孔34の合計開口面積A2との比A1/A2を1未満とした構成を有する。
【0056】
実施例1は、前記比A1/A2が1以上であって、かつ、外側ガス導入孔34の径を比較例1よりも小さくした構成を有する。実施例2は、前記比A1/A2が1以上であって、かつ、内側ガス導入孔22の数を比較例1よりも多くした構成を有する。実施例3は、上述した第1の実施の形態に係るガスセンサ10Aと同様の構成を有し、前記比A1/A2が1以上であって、かつ、外側ガス導入孔34の径を比較例1よりも小さくし、更に、内側ガス導入孔22の数を比較例1よりも多くした構成を有する。
【0057】
水掛かりの測定結果を図6に示し、センサ素子12の温度変動の測定結果を図7に示す。図7において、それぞれ左側のバーが標準取り付けの場合を示し、右側のバーが傾斜取り付けの場合を示す。
【0058】
水掛かりの状況は、図6に示すように、標準取り付けの場合、比較例1では20個中4個がNGであり、実施例2では22個中2個がNGであった。実施例1及び実施例3は、共にNGはなかった。
【0059】
傾斜取り付けの場合は、比較例1では20個中15個がNGであり、実施例1では20個中3個がNGであり、実施例2では20個中14個がNGであり、実施例3では21個中1個がNGであった。
【0060】
このように、比較例1及び実施例2は、ガスセンサ10の取り付け状態によってNGの発生頻度が変わり、特に、傾斜取り付けの場合においては、NGの発生が顕著であった。但し、実施例2は、比較例1よりもNGの個数が低くなっている。
【0061】
これに対し、実施例1及び3は、取り付け状態に拘わらず、水掛かりがほとんど生じていない。
【0062】
センサ素子12の温度変動は、図7に示すように、標準取り付けの場合、比較例1では通電量の差が約2.1Wであり、実施例1では約2.05W、実施例2では約1.2W、実施例3では約1.8Wであった。
【0063】
傾斜取り付けの場合は、比較例1では通電量の差が約2.15Wであり、実施例1では約1.5W、実施例2では約2.1W、実施例3では約1.4Wであった。
【0064】
このように、比較例1では取り付け状態に拘わらず、通電量の差が大きく、温度変動が大きいことがわかる。
【0065】
これに対して、実施例1は、標準取り付け状態では比較例1とほぼ同じように温度変動が大きいが、傾斜取り付け状態では通電量の差が小さくなっている。実施例2は、傾斜取り付け状態では比較例1とほぼ同じように温度変動が大きいが、標準取り付け状態では通電量の差が小さく、温度変動が小さくなっている。
【0066】
実施例3は、標準取り付け状態及び傾斜取り付け状態のいずれにおいても、通電量の差が比較例1よりも小さく、取り付け状態に拘わらず、センサ素子12の温度変動が抑制されていることがわかる。
【0067】
次に、第2の実験例は、上述した比較例1並びに実施例1〜3についてA/F(空燃比)を変化させたときの応答性をみたものである。
【0068】
図示しない1.8リットルのガソリンエンジンを用い、2500rpm/26Nm、ガス温度=380℃の条件で、図4に示すように、ガスセンサ10を排気管54に対して直角に取り付け、図8に示すように、燃料をリッチからリーンに変化させた場合に、ガスセンサ10がA/F=13.2を検出した時点t11からA/F=21を検出した時点t12までの応答時間T1と、図9に示すように、燃料をリーンからリッチに変化させた場合に、ガスセンサ10がA/F=21を検出した時点t13からA/F=13.2を検出した時点t14までの応答時間T2とを測定した。
【0069】
また、図10に示すように、2つのガスセンサ10a及び10bを排気管54に対してそれぞれ直角に、かつ、互いに対向するように取り付け、図11に示すように、燃料をリッチからリーンに変化させた場合に、一方のガスセンサ10a(比較例1)がA/F=17.1を検出した時点t15から他方のガスセンサ10b(実施例1、実施例2又は実施例3)がA/F=17.1を検出した時点t16までの遅延時間T3と、図12に示すように、燃料をリーンからリッチに変化させた場合に、一方のガスセンサ10a(比較例1)がA/F=17.1を検出した時点t17から他方のガスセンサ10b(実施例1、実施例2又は実施例3)がA/F=17.1を検出した時点t18までの遅延時間T4とを測定した。
【0070】
比較例1並びに実施例1〜3の応答時間T1及びT2の測定結果を図13に示し、実施例1〜3の遅延時間T3及びT4を図14に示す。
【0071】
図13及び図14から、実施例1は、比較例1に対して30msec程度の遅延はあるものの、応答時間T1は比較例1よりも短くなっている。実施例2は、比較例1に対して70〜80msec程度の遅延があり、応答時間T1も比較例1より10msec程度長くなっている。実施例3は、比較例1に対して40msecから60msec程度の遅延はあるものの、比較例1と実施例1とはほとんど応答時間T1に変化がないことがわかる。
【0072】
次に、第3の実験例は、上述した比較例1並びに実施例1〜3について、プロパンの燃焼ガス中のNOx濃度を変化させたときの応答性をみたものである。ガスの温度を380℃、流速を10m/sとした。
【0073】
そして、図4に示すように、ガスセンサ10を排気管54に対して直角に取り付け、図15に示すように、ガス中のNOx濃度を低濃度から高濃度に変化させた場合に、ガスセンサ10がNOx濃度=33%を検出した時点t19からNOx濃度=66%を検出した時点t20までの応答時間T5と、図16に示すように、ガス中のNOx濃度を高濃度から低濃度に変化させた場合に、ガスセンサ10がNOx濃度=66%を検出した時点t21からNOx濃度=33%を検出した時点t22までの応答時間T6とを測定した。
【0074】
比較例1並びに実施例1〜3の応答時間T5及びT6の測定結果を図17に示す。比較例1の応答時間T5及びT6は共に約750msecであり、実施例1の応答時間T5及びT6は共に約790msecであった。また、実施例2の応答時間T5及びT6は共に約800msecであり、実施例3の応答時間T5及びT6は共に約700msecであった。
【0075】
このように、比較例1並びに実施例1〜3は、ほとんど応答時間が同じであることがわかる。
【0076】
このように、実施例1〜3については、内側ガス導入孔22の合計開口面積A1と外側ガス導入孔34の合計開口面積A2との比A1/A2を1以上としていることから、被測定ガスの内側ガス導入孔22への流速が低くなり、センサ素子12での応答性が低下するおそれがあるが、上述の第2の実験例や第3の実験例からもわかるように、外側ガス導入孔34の各径や内側ガス導入孔22の各径を適宜選定することで、応答性の低下を抑えることが可能となる。
【0077】
次に、第2の実施の形態に係るガスセンサ10Bについて図18を参照しながら説明する。
【0078】
この第2の実施の形態に係るガスセンサ10Bは、上述した第1の実施の形態に係るガスセンサ10Aとほぼ同様の構成を有するが、図18に示すように、内側保護カバー16に、矩形状の内側ガス導入孔22を跨ぐように板部40がそれぞれ設けられている点と、内側ガス導入孔22の個数が6個である点で異なる。
【0079】
また、中間保護カバー20のフランジ部28が第1の実施の形態の場合よりも下方の位置に設定され、外側ガス導入孔34と、スリット32と、内側ガス導入孔22との配置関係が、外側保護カバー18の底部から上方に向かって、外側ガス導入孔34、スリット32、内側ガス導入孔22の順に配置されている点でも異なる。
【0080】
板部40は、図19に示すように、内側ガス導入孔22の周辺部のうち、互いに対向する部分から内側保護カバー16の中心に向かって立ち上がる2つの側壁40a及び40bとこれら側壁40a及び40b間を一体につなぎ、内側ガス導入孔22の開口と平行に配置された平板部40cとを有する。つまり、2つの側壁40a及び40bと平板部40c以外の部分が被測定ガスの通り道となる。
【0081】
従って、内側ガス導入孔22に導入された被測定ガスは、平板部40cに当たって拡散され、前記通り道を流通して内側保護カバー16内のセンサ素子12に伝わることになる。このように、被測定ガスが直接センサ素子12に当たるということが回避され、センサ素子12での温度変動を抑制することができる。
【0082】
なお、この第2の実施の形態に係るガスセンサ10Bにおける保護カバー14の具体的な寸法例を示すと、外側保護カバー18については、該外側保護カバー18の外径Doが約14.6mmとされ、外側ガス導入孔34の直径d1が約2mmとされ、外側保護カバー18の厚みは約0.4mmとされている。
【0083】
内側保護カバー16は、外径Diが約10mmとされ、内側ガス導入孔22の長辺d2は約3mmとされ、内側保護カバー16の厚みは約0.3mmとされている。中間保護カバー20の底部に設けられた中間ガス排出孔26の径d3は約1mmとされている。
【0084】
また、フランジ部28から内側ガス導入孔22の中心までの距離L11は約6.3mm、外側保護カバー18の先端から外側ガス導入孔34の中心までの距離L12は約3mm、外側ガス導入孔34の中心からフランジ部28までの距離L13は7.5mm、外側保護カバー18の先端から中間保護カバー20の先端までの距離L14は約4mmである。
【0085】
この発明に係るガスセンサは、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るガスセンサによれば、応答性を損なうことなく、測定ガスの進入によるセンサ素子の温度変動及び水掛かりを有効に低減することができ、温度特性並びに耐飛水性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るガスセンサを一部省略して示す断面図である。
【図2】第1の実験例の測定方法を示す説明図である。
【図3】第1の実験例の測定タイミングを示す図である。
【図4】ガスセンサの標準取り付けを示す説明図である。
【図5】ガスセンサの傾斜取り付けを示す説明図である。
【図6】水掛かりの測定結果を示す表図である。
【図7】センサ素子の温度変動の測定結果を示すグラフである。
【図8】燃料をリッチからリーンに変化させた場合の応答時間を説明するための図である。
【図9】燃料をリーンからリッチに変化させた場合の応答時間を説明するための図である。
【図10】遅延時間を測定する場合のガスセンサの取り付け状態を示す説明図である。
【図11】燃料をリッチからリーンに変化させた場合の遅延時間を説明するための図である。
【図12】燃料をリーンからリッチに変化させた場合の遅延時間を説明するための図である。
【図13】A/Fの変化に対する応答時間の測定結果を示すグラフである。
【図14】A/Fの変化に対する遅延時間の測定結果を示すグラフである。
【図15】NOx濃度を33%から66%に変化させた場合の応答時間を説明するための図である。
【図16】NOx濃度を66%から33%に変化させた場合の応答時間を説明するための図である。
【図17】NOx濃度の変化に対する応答時間の測定結果を示すグラフである。
【図18】第2の実施の形態に係るガスセンサを一部省略して示す断面図である。
【図19】内側ガス導入孔に跨って形成された板部を示す斜視図である。
【符号の説明】
10、10A、10Aa、10Ab、10B…ガスセンサ
12…センサ素子 14…保護カバー
16…内側保護カバー 18…外側保護カバー
20…中間保護カバー 22…内側ガス導入孔
24…内側ガス排出孔 26…中間ガス排出孔
28…フランジ部 32…スリット(中間ガス導入孔)
34…外側ガス導入孔 40…板部
Claims (7)
- 導入された被測定ガスのうちの所定ガス成分を測定するセンサ素子と、該センサ素子を取り囲むように配置された保護カバーとを有し、
前記保護カバーが、前記センサ素子の少なくとも先端部を覆う内側保護カバーと、前記内側保護カバーを覆う外側保護カバーと、前記内側保護カバーと前記外側保護カバーとの間に設置された中間保護カバーとを具備したガスセンサにおいて、
前記内側保護カバーは、有底筒状に形成され、かつ、その側面のうち、前記センサ素子に対向する位置に複数の内側ガス導入孔が形成され、底部に少なくとも1つの内側ガス排出孔が形成され、
前記外側保護カバーは、有底筒状に形成され、かつ、その側面のうち、前記内側ガス導入孔に対向しない位置に複数の外側ガス導入孔が形成され、
前記中間保護カバーは、前記内側ガス導入孔と前記外側ガス導入孔に対向しない位置に中間ガス導入孔が少なくとも形成され、
前記複数の内側ガス導入孔の合計開口面積をA1、前記複数の外側ガス導入孔の合計開口面積をA2としたとき、
A1/A2≧1
を満足することを特徴とするガスセンサ。 - 請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記内側ガス導入孔の個数が前記外側ガス導入孔の個数よりも多いことを特徴とするガスセンサ。 - 請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記内側保護カバーは、前記複数の内側ガス導入孔を跨ぐように板部が設けられていることを特徴とするガスセンサ。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記複数の内側ガス導入孔は、前記内側保護カバーの1つの円周に沿ってほぼ等ピッチで形成されていることを特徴とするガスセンサ。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記複数の内側ガス導入孔をn個のグループに分けたとき、
第1のグループに属する複数の内側ガス導入孔は、前記内側保護カバーの第1の円周に沿ってほぼ等ピッチで形成され、
第2のグループに属する複数の内側ガス導入孔は、前記内側保護カバーの第2の円周に沿ってほぼ等ピッチで形成され、
同様に、第nのグループに属する複数の内側ガス導入孔は、前記内側保護カバーの第nの円周に沿ってほぼ等ピッチで形成されていることを特徴とするガスセンサ。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記保護カバーは、ガス管に対してほぼ直角に取り付けられることを特徴とするガスセンサ。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記保護カバーは、ガス管に対して傾斜させて取り付けられることを特徴とするガスセンサ。
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