JP2004300643A - 織物の製織方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】停台回数を減少させるために、経糸の毛羽立ち、糸切れを従来レベルから低減できる織物の製織方法を提供する。
【解決手段】スパン糸を経糸に用いてエアージェットルームで織物を製織するに際し、ヘルド最大開口時の織前側の第1ヘルドの最大開口量aを30mm≦a≦50mm、第1ヘルドとクロスフェル間の距離bを45mm≦b≦90mm、最後尾のヘルドの最大開口量cを40mm≦c≦60mm、クロスフェルとバックローラー間の距離dを500mm≦d≦900mm、ヘルド枠間ピッチeを8mm≦e≦14mmに設定して製織する織物の製織方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】スパン糸を経糸に用いてエアージェットルームで織物を製織するに際し、ヘルド最大開口時の織前側の第1ヘルドの最大開口量aを30mm≦a≦50mm、第1ヘルドとクロスフェル間の距離bを45mm≦b≦90mm、最後尾のヘルドの最大開口量cを40mm≦c≦60mm、クロスフェルとバックローラー間の距離dを500mm≦d≦900mm、ヘルド枠間ピッチeを8mm≦e≦14mmに設定して製織する織物の製織方法である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、好適にはスパン糸および/または結束紡績糸を用いる織物の製織方法およびエアージェットルームに関し、さらに詳しくは、本発明は、経糸の毛羽立ちおよび糸切れを低減させ、停台回数を減少させ、製織性を向上することができる織物の製織方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、織物を製織する際の停台原因の一つとして、経糸の毛羽発生や糸切れがあり、このような経糸の毛羽発生や糸切れの防止対策として、スパン糸の経糸には通常糊付けが施された糸条が用いられている。例えば、織物を製織するに際し糊付け工程で経糸に毛羽伏せを行い製織性を向上させようとする提案がなされている。例えば、紡績糸からなる経糸に糊付けする方法および装置において、効率的にエネルギーを使用し毛羽減少を少なくして良好な製織効率を達成する方法(特許文献1参照。)や、経糸用糊材の開発により糸切れ毛羽立ちを少なくして製織性を改善する方法(特許文献2参照。)が提案されている。
【0003】
しかしながら、この糊付け工程はまだ多量の糊剤を必要とすると共に、その糊剤の乾燥のために莫大なエネルギーを消費するためコスト上昇を招き、生産性を低下させる要因になっている。
【0004】
【特許文献1】
特開平05−279954号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平05−272058号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来の問題を解消し、スパン糸を経糸として製織する場合において、経糸の停台要因である毛羽立ちや糸切れを低減させ、停台回数を減少させ、製織性を向上させることができる織物の製織方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、次の構成を有するものである。
【0008】
すなわち、本発明の織物の製織方法は、スパン糸を経糸に用いてエアージェットルームで織物を製織するに際し、ヘルド最大開口時の織前側の第1ヘルドの最大開口量a、第1ヘルドとクロスフェル間の距離b、最後尾のヘルドの最大開口量c、クロスフェルとバックローラー間の距離d、およびヘルド枠間ピッチeを、下記の関係に設定して製織することを特徴とする織物の製織方法である。
【0009】
30mm≦a≦50mm
45mm≦b≦90mm
40mm≦c≦60mm
500mm≦d≦900mm
8mm≦e≦14mm
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、スパン糸を経糸に用いてなるエアージェットルームによる織物の製織方法である。まず、本発明の織物の製織方法を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の織物の製織方法で用いるエアージェットルームの一例を示す概略側面図である。
【0012】
図1において、スパン糸からなる経糸Ya,Yb、Yc、Ydは、それぞれ多数本が図面に直交する方向に平行に配列し、かつそれぞれ矢印方向に移送されるようになっている。図1の状態では、経糸Ya、Ycが上糸、経糸Yb、Ydが下糸の位置にあるが、この上糸と下糸の位置は前後4枚のヘルド(綜絖そうこう)、すなわち、織前側の第1ヘルド1、第2ヘルド2、第3ヘルド3および最後尾の第4ヘルド4が交互に上下動する毎に入れ替わるようになっている。
【0013】
ヘルドは、それぞれ第1ヘルド1の環状のメール1mに経糸Yaが、第2ヘルド2のメール2mに経糸Ybが、第3ヘルド3のメール3mに経糸Ycが、そして第4ヘルド4のメール4mに経糸Ydがそれぞれ通され、その通糸状態で第1ヘルド1、第2ヘルド2、第3ヘルド3および第4ヘルド4が互いに反対方向に交互に上下動して、上記のように経糸Ya,Yb、Yc、Ydの上下位置関係を交互に入れ換え、側面視三角形の緯糸入れ用開口部を形成する。そして、本発明におけるエアージェットルームにおいては、この緯糸入れ用開口部の側部に、緯糸入れ用の少なくとも1つのメインノズル7が臨んでおり、そのメインノズル7とともに、緯糸入れ方向に配列された複数のサブノズル(図示せず)から噴射されるエアにより緯糸入れが行われる。
【0014】
また、側面視三角形の緯糸入れ用開口部を上下方向に横切るようにリード(筬)6が設けられている。このリード(筬)6は、開口にメインノズル7からエアー噴射と共に緯糸が1本緯入される毎に、第1ヘルド1とメインノズル7との中間位置からクロスフェル(織前最先端部)5に向けて緯糸を打ちつけて織物Fを形成するようにする。
【0015】
本発明は、上述のようなエアージェットルームにおいて、ヘルド最大開口時の織前側の第1ヘルドの最大開口量a、第1ヘルドとクロスフェル間の距離b、最後尾の第4ヘルドの最大開口量c、クロスフェルとバックローラー間の距離d、およびヘルド枠間ピッチeを、それぞれ30mm≦a≦50mm、45mm≦b≦90mm、40mm≦c≦60mm、500mm≦d≦900mm、8mm≦e≦14mmに設定し、製織する。重要なことは、これらの設定が、従来のエアージェットルームに比べて、いずれも小さい範囲になっていることである。
【0016】
このように設定することにより、経糸の毛羽発生が少なくなり停台回数を減少することができる。例えば、織機回転数で1,000rpm以上の高速にしても量産可能なレベルにすることができるのである。
【0017】
従来のエアージェットルームでは、緯糸入れを安定化するため、第1ヘルドの開口量aを大きくし、また、リードストローク長fも大きくとることがよいとされていた。このことにより、経糸開口時間が多くなり緯糸が挿入しやすくなる。そのため、従来のエアージェットルームでは、第1ヘルドの開口量aは少なくとも55mm以上、また最大リードストロークfは少なくとも65mm以上をとっていた。また、バックローラーからヘルド間の距離は、経糸上下運動を平滑にするために従来のエアジェットルームは900mm以上をとっていた。
【0018】
しかしながら、本発明者等が毛羽発生の原因について詳細を調査した結果によると、バックローラーとヘルドの間で経糸の上下の動きによって糸同士の擦過がおこり毛羽を発生させていたのである。この知見からバックローラーとヘルド間の距離を出来るだけ小さくした方が良いとわかった。また、リードストロークによって糸と金属での擦過が起こり、これからも毛羽の発生を誘発していることがわかった。
【0019】
すなわち、バックローラと第1ヘルド間の距離と第1ヘルドとクロスフェル5間の距離およびリードストローク長を小さくすれば、糸と糸、糸と金属の擦過を低減できる。こうした考察から、バックローラーとクロスフェル間の距離dを900mm以下と小さく設定し、このようにすることで、最大リードストローク長fを小さく出来るので、第1ヘルド1とクロスフェル5間の距離bも小さくすることが可能となった。
【0020】
毛羽発生のもう一つの原因としては、ヘルドメールと糸の擦過による毛羽が挙げられる。すなわち、ヘルドメール部での糸との擦過量を出来るだけ小さくすることが、有効であり、そのためには最大開口時のクロスフェル5とヘルドメール部およびバックローラーに至る経糸の糸道経路の長さとヘルド閉口時の経糸の糸道経路の長さの差を小さくすることが特に有効であることがわかった。ヘルドとは経糸を上下させるためのものであり、メールといわれる部分に糸が通っている。
【0021】
第1ヘルド1の最大開口量aを50mm以下、また第4ヘルド4の最大開口量cを60mm以下とし、さらには第1ヘルド1とクロスフェル5間の距離bを90mm以下、クロスフェル5とバックローラー間の距離dを900mm以下にすることにより、製織速度が高くなっても、第1ヘルド1の最大開口量aと第4ヘルド4の最大開口量cがそれより大きい場合に比べて擦過速度が低く抑えられ、かつ擦過量も小さくなるので、ヘルドメール部と糸の擦過による毛羽を抑制することができ、かつヘルド摩耗キズを抑えることが出来る。好ましくは、第4ヘルドの最大開口量cを57mm以下、第1ヘルド1とクロスフェル5間の距離bを85mm以下、クロスフェル5とバックローラー間の距離dを800mm以下とし、より好ましくは第4ヘルド4の最大開口量cを55mm以下、第1ヘルド1とクロスフェル5間の距離bを80mm以下、クロスフェル5とバックローラー間の距離dを700mm以下とする。
【0022】
また、ヘルド枠ピッチeを14mm以下にすることが、最後尾の第4ヘルド4の最大開口量を小さく抑えるのに有効であり、毛羽やヘルド摩耗キズを抑えることができ、さらに付随的には、織機の騒音や振動が小さくなる。ヘルド枠ピッチeは、12mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0023】
上述した第1ヘルド1最大開口量a、第1ヘルド1からクロスフェル5までの距離b、最後尾の第4ヘルド4の最大開口量c、クロスフェル5とバックローラー間の距離d、ヘルド枠間ピッチeは、あまり小さくなり過ぎると織機運動に支障を来すことになるので、それぞれの下限としては、第1ヘルドの最大開口量aは30mm、第1ヘルド1からクロスフェル5での距離bは45mm、最後尾の第4ヘルド4の最大開口量cは40mm、第4ヘルド4とバックローラー間の距離dは500mm、ヘルド枠間ピッチeは8mmとする。
【0024】
上記のように、図1では、ヘルド枠が4枚の場合のエアージェットルームを説明したが、本発明では、織前側の第1ヘルドと最後尾のヘルドの関係が、上述の式の関係にあればよく、ヘルド枠数は任意である。しかしながら、枠枚数が多くなると最後尾枠開口量も大きくなり、経糸同士による擦過が大きくなる。また、装置的にドロッパの位置関係の理由から、好ましいヘルド枠は2〜6枚であり、最も好ましくはヘルド枠は4枚である。
【0025】
ドロッパとは経糸切れが起こった場合、織機を止める働きがある。本発明の製織方法で経糸因停台が減少することによって、従来より付けられているドロッパを省くことも考えられる。
【0026】
本発明の織物の製織方法では、経糸にスパン糸を使用する。この経糸は、コンパクトスピニングで紡績された紡績糸でもよいが、結束紡績糸の方が望ましい。結束紡績糸とはステープル繊維束の単繊維の一端が芯繊維束の内部にあり、該単繊維の他端が前記芯繊維束の外面に巻き付いたものであり、この紡績法は空気仮撚式紡績法と呼ばれ、リング紡績法に代わる革新紡績法の一つとして注目を浴びている。本発明では20番手以上であれば効果があり好ましく、40番手以上であればより好ましい。
【0027】
また、緯糸はフィラメント糸であってもよく、フィラメントの形態はストレート糸であっても、あるいは捲縮または嵩高などが与えられた加工糸であってもよい。特に、このフィラメント糸を無糊糸として使用する場合に高い効果を発揮することができる。もちろん、フィラメント糸を糊付糸として使用することを妨げるものではない。無糊糸として使用するときは、そのフィラメント糸に予めインターレス加工を施したり、或いは整経行程で追油などして集束処理を行うことが好ましい。
【0028】
【実施例】
(実施例1,2、比較例1,2)
経糸としてポリエチレンテレフタレート/綿45番手を使用し、また緯糸としポリエチレンテレフタレート/綿45番手を使用して、下記の条件で製織した。すなわち、ヘルド開口時の織前側の第1ヘルド開口量a、第1ヘルドとクロスフェル間の距離b、最後尾の第4ヘルドの最大開口量c、第4ヘルドとバックローラー間の距離d、ヘルド枠間ピッチeをそれぞれを表1の4とおり(実施例1,2、比較例1,2)に設定して、下記の製織を行った。これら4とおりの製織性の評価結果を表1に併せて示す。
【0029】
なお、表1において、擦過量は、図2に示すA,B,A’,B’を用いて、次式により算出されるものである。また図2はヘルドによる開口または閉口になった場合の糸の距離を示している。
【0030】
擦過量X=A’−(L’/L×A)
L =A+B
L’=A’+B’
ここで、A :ヘルド閉口時のクロスフェルとヘルドメール間距離
B :ヘルド閉口時のヘルドメールとバックローラー間距離
A’:ヘルド開口時のクロスフェルとヘルドメール間距離
B’:ヘルド開口時のヘルドメールとバックローラー間距離
である。
【0031】
また、製織性判定は、経因停台回数0.4回/台・時レベルを量産可能レベルと判定し、次の基準で示したものである。
○:量産可能レベル
△:量産可能下限レベル
×:量産不可
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例1および2は、いずれも製織毛羽および糸切れによる経糸因停台回数が0.4回/台・日以下であり、ヘルドメール摩耗キズの問題もなく量産可能なレベルであった。特に、ヘルドメール部と糸との擦過を考慮に入れ第1ヘルド開口量40mm、クロスフェルとバックローラー間の距離580mmにした実施例1の製織性は極めて良好な結果が得られた。これらに対し、比較例1の製織性は量産化できる下限レベルであったが、依然毛羽、糸切れが発生した。また比較例2は、製織毛羽および糸切れが多発し、量産化できるレベルではなかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、製織速度を高速化してもヘルドメール摩耗を抑制し、経糸の毛羽立ち、糸切れを量産可能レベルに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の織物の製織方法で用いるエアージェットルームの一例を示す概略側面図である。
【図2】擦過量の測定方法を説明するための概略側面図である。
【符号の説明】
1:第1ヘルド
2:第2ヘルド
3:第3ヘルド
4:第4ヘルド
5:クロスフェル
6:リード
7:メインノズル
Ya,Yb、Yc、Yd:経糸
a:第1ヘルド開口量
b:第1ヘルドとクロスフェル間の距離
c:第4ヘルドの開口量
d:クロスフェルとバックローラー間の距離
e:ヘルド枠間ピッチ
f:リードストローク
F:織物
【発明の属する技術分野】
本発明は、好適にはスパン糸および/または結束紡績糸を用いる織物の製織方法およびエアージェットルームに関し、さらに詳しくは、本発明は、経糸の毛羽立ちおよび糸切れを低減させ、停台回数を減少させ、製織性を向上することができる織物の製織方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、織物を製織する際の停台原因の一つとして、経糸の毛羽発生や糸切れがあり、このような経糸の毛羽発生や糸切れの防止対策として、スパン糸の経糸には通常糊付けが施された糸条が用いられている。例えば、織物を製織するに際し糊付け工程で経糸に毛羽伏せを行い製織性を向上させようとする提案がなされている。例えば、紡績糸からなる経糸に糊付けする方法および装置において、効率的にエネルギーを使用し毛羽減少を少なくして良好な製織効率を達成する方法(特許文献1参照。)や、経糸用糊材の開発により糸切れ毛羽立ちを少なくして製織性を改善する方法(特許文献2参照。)が提案されている。
【0003】
しかしながら、この糊付け工程はまだ多量の糊剤を必要とすると共に、その糊剤の乾燥のために莫大なエネルギーを消費するためコスト上昇を招き、生産性を低下させる要因になっている。
【0004】
【特許文献1】
特開平05−279954号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平05−272058号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来の問題を解消し、スパン糸を経糸として製織する場合において、経糸の停台要因である毛羽立ちや糸切れを低減させ、停台回数を減少させ、製織性を向上させることができる織物の製織方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、次の構成を有するものである。
【0008】
すなわち、本発明の織物の製織方法は、スパン糸を経糸に用いてエアージェットルームで織物を製織するに際し、ヘルド最大開口時の織前側の第1ヘルドの最大開口量a、第1ヘルドとクロスフェル間の距離b、最後尾のヘルドの最大開口量c、クロスフェルとバックローラー間の距離d、およびヘルド枠間ピッチeを、下記の関係に設定して製織することを特徴とする織物の製織方法である。
【0009】
30mm≦a≦50mm
45mm≦b≦90mm
40mm≦c≦60mm
500mm≦d≦900mm
8mm≦e≦14mm
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、スパン糸を経糸に用いてなるエアージェットルームによる織物の製織方法である。まず、本発明の織物の製織方法を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の織物の製織方法で用いるエアージェットルームの一例を示す概略側面図である。
【0012】
図1において、スパン糸からなる経糸Ya,Yb、Yc、Ydは、それぞれ多数本が図面に直交する方向に平行に配列し、かつそれぞれ矢印方向に移送されるようになっている。図1の状態では、経糸Ya、Ycが上糸、経糸Yb、Ydが下糸の位置にあるが、この上糸と下糸の位置は前後4枚のヘルド(綜絖そうこう)、すなわち、織前側の第1ヘルド1、第2ヘルド2、第3ヘルド3および最後尾の第4ヘルド4が交互に上下動する毎に入れ替わるようになっている。
【0013】
ヘルドは、それぞれ第1ヘルド1の環状のメール1mに経糸Yaが、第2ヘルド2のメール2mに経糸Ybが、第3ヘルド3のメール3mに経糸Ycが、そして第4ヘルド4のメール4mに経糸Ydがそれぞれ通され、その通糸状態で第1ヘルド1、第2ヘルド2、第3ヘルド3および第4ヘルド4が互いに反対方向に交互に上下動して、上記のように経糸Ya,Yb、Yc、Ydの上下位置関係を交互に入れ換え、側面視三角形の緯糸入れ用開口部を形成する。そして、本発明におけるエアージェットルームにおいては、この緯糸入れ用開口部の側部に、緯糸入れ用の少なくとも1つのメインノズル7が臨んでおり、そのメインノズル7とともに、緯糸入れ方向に配列された複数のサブノズル(図示せず)から噴射されるエアにより緯糸入れが行われる。
【0014】
また、側面視三角形の緯糸入れ用開口部を上下方向に横切るようにリード(筬)6が設けられている。このリード(筬)6は、開口にメインノズル7からエアー噴射と共に緯糸が1本緯入される毎に、第1ヘルド1とメインノズル7との中間位置からクロスフェル(織前最先端部)5に向けて緯糸を打ちつけて織物Fを形成するようにする。
【0015】
本発明は、上述のようなエアージェットルームにおいて、ヘルド最大開口時の織前側の第1ヘルドの最大開口量a、第1ヘルドとクロスフェル間の距離b、最後尾の第4ヘルドの最大開口量c、クロスフェルとバックローラー間の距離d、およびヘルド枠間ピッチeを、それぞれ30mm≦a≦50mm、45mm≦b≦90mm、40mm≦c≦60mm、500mm≦d≦900mm、8mm≦e≦14mmに設定し、製織する。重要なことは、これらの設定が、従来のエアージェットルームに比べて、いずれも小さい範囲になっていることである。
【0016】
このように設定することにより、経糸の毛羽発生が少なくなり停台回数を減少することができる。例えば、織機回転数で1,000rpm以上の高速にしても量産可能なレベルにすることができるのである。
【0017】
従来のエアージェットルームでは、緯糸入れを安定化するため、第1ヘルドの開口量aを大きくし、また、リードストローク長fも大きくとることがよいとされていた。このことにより、経糸開口時間が多くなり緯糸が挿入しやすくなる。そのため、従来のエアージェットルームでは、第1ヘルドの開口量aは少なくとも55mm以上、また最大リードストロークfは少なくとも65mm以上をとっていた。また、バックローラーからヘルド間の距離は、経糸上下運動を平滑にするために従来のエアジェットルームは900mm以上をとっていた。
【0018】
しかしながら、本発明者等が毛羽発生の原因について詳細を調査した結果によると、バックローラーとヘルドの間で経糸の上下の動きによって糸同士の擦過がおこり毛羽を発生させていたのである。この知見からバックローラーとヘルド間の距離を出来るだけ小さくした方が良いとわかった。また、リードストロークによって糸と金属での擦過が起こり、これからも毛羽の発生を誘発していることがわかった。
【0019】
すなわち、バックローラと第1ヘルド間の距離と第1ヘルドとクロスフェル5間の距離およびリードストローク長を小さくすれば、糸と糸、糸と金属の擦過を低減できる。こうした考察から、バックローラーとクロスフェル間の距離dを900mm以下と小さく設定し、このようにすることで、最大リードストローク長fを小さく出来るので、第1ヘルド1とクロスフェル5間の距離bも小さくすることが可能となった。
【0020】
毛羽発生のもう一つの原因としては、ヘルドメールと糸の擦過による毛羽が挙げられる。すなわち、ヘルドメール部での糸との擦過量を出来るだけ小さくすることが、有効であり、そのためには最大開口時のクロスフェル5とヘルドメール部およびバックローラーに至る経糸の糸道経路の長さとヘルド閉口時の経糸の糸道経路の長さの差を小さくすることが特に有効であることがわかった。ヘルドとは経糸を上下させるためのものであり、メールといわれる部分に糸が通っている。
【0021】
第1ヘルド1の最大開口量aを50mm以下、また第4ヘルド4の最大開口量cを60mm以下とし、さらには第1ヘルド1とクロスフェル5間の距離bを90mm以下、クロスフェル5とバックローラー間の距離dを900mm以下にすることにより、製織速度が高くなっても、第1ヘルド1の最大開口量aと第4ヘルド4の最大開口量cがそれより大きい場合に比べて擦過速度が低く抑えられ、かつ擦過量も小さくなるので、ヘルドメール部と糸の擦過による毛羽を抑制することができ、かつヘルド摩耗キズを抑えることが出来る。好ましくは、第4ヘルドの最大開口量cを57mm以下、第1ヘルド1とクロスフェル5間の距離bを85mm以下、クロスフェル5とバックローラー間の距離dを800mm以下とし、より好ましくは第4ヘルド4の最大開口量cを55mm以下、第1ヘルド1とクロスフェル5間の距離bを80mm以下、クロスフェル5とバックローラー間の距離dを700mm以下とする。
【0022】
また、ヘルド枠ピッチeを14mm以下にすることが、最後尾の第4ヘルド4の最大開口量を小さく抑えるのに有効であり、毛羽やヘルド摩耗キズを抑えることができ、さらに付随的には、織機の騒音や振動が小さくなる。ヘルド枠ピッチeは、12mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0023】
上述した第1ヘルド1最大開口量a、第1ヘルド1からクロスフェル5までの距離b、最後尾の第4ヘルド4の最大開口量c、クロスフェル5とバックローラー間の距離d、ヘルド枠間ピッチeは、あまり小さくなり過ぎると織機運動に支障を来すことになるので、それぞれの下限としては、第1ヘルドの最大開口量aは30mm、第1ヘルド1からクロスフェル5での距離bは45mm、最後尾の第4ヘルド4の最大開口量cは40mm、第4ヘルド4とバックローラー間の距離dは500mm、ヘルド枠間ピッチeは8mmとする。
【0024】
上記のように、図1では、ヘルド枠が4枚の場合のエアージェットルームを説明したが、本発明では、織前側の第1ヘルドと最後尾のヘルドの関係が、上述の式の関係にあればよく、ヘルド枠数は任意である。しかしながら、枠枚数が多くなると最後尾枠開口量も大きくなり、経糸同士による擦過が大きくなる。また、装置的にドロッパの位置関係の理由から、好ましいヘルド枠は2〜6枚であり、最も好ましくはヘルド枠は4枚である。
【0025】
ドロッパとは経糸切れが起こった場合、織機を止める働きがある。本発明の製織方法で経糸因停台が減少することによって、従来より付けられているドロッパを省くことも考えられる。
【0026】
本発明の織物の製織方法では、経糸にスパン糸を使用する。この経糸は、コンパクトスピニングで紡績された紡績糸でもよいが、結束紡績糸の方が望ましい。結束紡績糸とはステープル繊維束の単繊維の一端が芯繊維束の内部にあり、該単繊維の他端が前記芯繊維束の外面に巻き付いたものであり、この紡績法は空気仮撚式紡績法と呼ばれ、リング紡績法に代わる革新紡績法の一つとして注目を浴びている。本発明では20番手以上であれば効果があり好ましく、40番手以上であればより好ましい。
【0027】
また、緯糸はフィラメント糸であってもよく、フィラメントの形態はストレート糸であっても、あるいは捲縮または嵩高などが与えられた加工糸であってもよい。特に、このフィラメント糸を無糊糸として使用する場合に高い効果を発揮することができる。もちろん、フィラメント糸を糊付糸として使用することを妨げるものではない。無糊糸として使用するときは、そのフィラメント糸に予めインターレス加工を施したり、或いは整経行程で追油などして集束処理を行うことが好ましい。
【0028】
【実施例】
(実施例1,2、比較例1,2)
経糸としてポリエチレンテレフタレート/綿45番手を使用し、また緯糸としポリエチレンテレフタレート/綿45番手を使用して、下記の条件で製織した。すなわち、ヘルド開口時の織前側の第1ヘルド開口量a、第1ヘルドとクロスフェル間の距離b、最後尾の第4ヘルドの最大開口量c、第4ヘルドとバックローラー間の距離d、ヘルド枠間ピッチeをそれぞれを表1の4とおり(実施例1,2、比較例1,2)に設定して、下記の製織を行った。これら4とおりの製織性の評価結果を表1に併せて示す。
【0029】
なお、表1において、擦過量は、図2に示すA,B,A’,B’を用いて、次式により算出されるものである。また図2はヘルドによる開口または閉口になった場合の糸の距離を示している。
【0030】
擦過量X=A’−(L’/L×A)
L =A+B
L’=A’+B’
ここで、A :ヘルド閉口時のクロスフェルとヘルドメール間距離
B :ヘルド閉口時のヘルドメールとバックローラー間距離
A’:ヘルド開口時のクロスフェルとヘルドメール間距離
B’:ヘルド開口時のヘルドメールとバックローラー間距離
である。
【0031】
また、製織性判定は、経因停台回数0.4回/台・時レベルを量産可能レベルと判定し、次の基準で示したものである。
○:量産可能レベル
△:量産可能下限レベル
×:量産不可
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例1および2は、いずれも製織毛羽および糸切れによる経糸因停台回数が0.4回/台・日以下であり、ヘルドメール摩耗キズの問題もなく量産可能なレベルであった。特に、ヘルドメール部と糸との擦過を考慮に入れ第1ヘルド開口量40mm、クロスフェルとバックローラー間の距離580mmにした実施例1の製織性は極めて良好な結果が得られた。これらに対し、比較例1の製織性は量産化できる下限レベルであったが、依然毛羽、糸切れが発生した。また比較例2は、製織毛羽および糸切れが多発し、量産化できるレベルではなかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、製織速度を高速化してもヘルドメール摩耗を抑制し、経糸の毛羽立ち、糸切れを量産可能レベルに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の織物の製織方法で用いるエアージェットルームの一例を示す概略側面図である。
【図2】擦過量の測定方法を説明するための概略側面図である。
【符号の説明】
1:第1ヘルド
2:第2ヘルド
3:第3ヘルド
4:第4ヘルド
5:クロスフェル
6:リード
7:メインノズル
Ya,Yb、Yc、Yd:経糸
a:第1ヘルド開口量
b:第1ヘルドとクロスフェル間の距離
c:第4ヘルドの開口量
d:クロスフェルとバックローラー間の距離
e:ヘルド枠間ピッチ
f:リードストローク
F:織物
Claims (2)
- スパン糸を経糸に用いてエアージェットルームで織物を製織するに際し、ヘルド最大開口時の織前側の第1ヘルドの最大開口量a、第1ヘルドとクロスフェル間の距離b、最後尾のヘルドの最大開口量c、クロスフェルとバックローラー間の距離d、およびヘルド枠間ピッチeを、下記の関係に設定して製織することを特徴とする織物の製織方法。
30mm≦a≦50mm
45mm≦b≦90mm
40mm≦c≦60mm
500mm≦d≦900mm
8mm≦e≦14mm - スパン糸として結束紡績糸を用いることを特徴とする請求項1記載の織物の製織方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003097769A JP2004300643A (ja) | 2003-04-01 | 2003-04-01 | 織物の製織方法 |
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JP2003097769A JP2004300643A (ja) | 2003-04-01 | 2003-04-01 | 織物の製織方法 |
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---|---|
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ID=33409470
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---|---|---|---|
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004300643A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013083019A (ja) * | 2011-10-11 | 2013-05-09 | Tsudakoma Corp | 織機における情報表示装置 |
CN110846784A (zh) * | 2019-11-25 | 2020-02-28 | 江苏联发纺织股份有限公司 | 一种色织纯亚麻面料的织造方法 |
-
2003
- 2003-04-01 JP JP2003097769A patent/JP2004300643A/ja active Pending
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