JP3391053B2 - ウォータジェットルームによる炭素繊維織物の製造方法 - Google Patents

ウォータジェットルームによる炭素繊維織物の製造方法

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JP3391053B2 JP19787993A JP19787993A JP3391053B2 JP 3391053 B2 JP3391053 B2 JP 3391053B2 JP 19787993 A JP19787993 A JP 19787993A JP 19787993 A JP19787993 A JP 19787993A JP 3391053 B2 JP3391053 B2 JP 3391053B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭素繊維織物の製造方
法に関し、さらに詳しくはウォータジェットルームによ
る炭素繊維織物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維の工業生産が始まるやいなや、
炭素繊維は織物にも加工され、先端複合材料の中間基材
として定着し、スポーツレジャー用具や航空機部材等に
使われている。炭素繊維は、比弾性率(ヤング率)が大
きくかつ比強度が大きいことから、樹脂と複合し、炭素
繊維強化プラスチックス(CFRP)に成形されて使用
されることが多い。CFRPは、その優れた性能を生か
して、航空機の構造材などに使われ始めているが、さら
にCFRPの適用範囲を拡大させていくには、炭素繊維
自身のコストダウンのみならず、織物などの中間基材や
成形工程のコストダウンが大きな課題となっている。
【0003】一方製織特性についてみると、炭素繊維
は、上記のように機械的性質に優れており、弾性率が大
きくわずかな伸びに対しても大きな張力が発生するとい
う特性を持っているので、製織の行ない易い繊維ではな
い。また、炭素繊維は、単繊維直径が5〜15ミクロン
と通常の天然繊維や合成繊維に比べて小さく、破断伸び
が1.5%〜2.5%と小さく、また、結節強さが小さ
いので、製織工程で毛羽が発生することは避け難く、製
織しづらい繊維である。
【0004】この様なことから、炭素繊維は、たとえ
ば、特開昭63−315638号公報に記載されている
ように、シャットル織機やレピア織機で、毛羽発生や糸
切れに注意しながら製織されている。しかしながら、シ
ャットル織機やレピア織機は、その製織機構から緯糸の
打ち込み速度は、毎分80〜200ピック程度と低く抑
えられており、生産効率が悪いという問題があった。
【0005】一方、高速製織可能な織機として、緯糸を
噴射水に垂せて飛走させる、ウォータジェットルームを
用いた織機が知られている。しかし、この織機で炭素繊
維の緯糸を経糸シート間に挿入させた結果、わずかな間
は高速で製織出来たが、炭素繊維は脆いので、高速で走
行している緯糸が各種のガイド等で擦られて毛羽が発生
し、瞬く間にウォータジェットルームのノズルのニード
ル部に毛羽が詰まり、緯糸の飛走ミスをフィラーが感知
して停台してしまうというトラブルが発生した。
【0006】また、炭素繊維織物の製織にあたっては、
高速運転に伴う綜絖の上下運動や筬の揺動運動によっ
て、炭素繊維糸と綜絖、筬羽との擦れによって毛羽が発
生し、織物品位が低下すると同時に、筬羽や経糸に付着
している毛羽が、緯糸飛走時に脱落して緯糸に当たり、
織物の全幅にまで緯糸が飛走する途中で経糸シートと接
触し、織物欠点となる。また、筬羽に蓄積した毛羽が詰
まって経糸が切れたりするので、100m程度の織物を
製織した後、筬に蓄積した毛羽を掃除しなければなら
ず、極めて効率が悪いという問題があった。したがっ
て、製織速度は早いが織機停台頻度が高くなり、全体と
しては効率良く製織できなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、毛羽
の発生しやすい炭素繊維の織物をウォータジェットルー
ムを用いて製織するに際し、ノズルのニードル部での緯
糸の毛羽詰まりの問題を解消し、連続運転が可能となる
炭素繊維織物の製造方法を提供することにある。
【0008】また、本発明の別の目的は、炭素繊維をウ
ォータジェットルームで高速製織するにあたって、上述
の経糸側から発生する問題点を解決し、炭素繊維の毛羽
や糸切れがなくて、高速で炭素繊維の製織を可能ならし
める、安価で、高品質の炭素繊維織物が得られる製造方
法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明係るウォータジェットルームによる炭素繊
維織物の製造方法は、経糸シートを開口・閉口運動さ
せ、炭素繊維を含む緯糸を貯溜部に1ピック相当分貯溜
し、経糸シート開口時にウォータジェットルームのノズ
ルから噴射される噴射水に乗せて緯糸を経糸シート間に
打ち込む炭素繊維織物の製造方法において、緯糸が巻か
れたボビンからノズルのニードル入口部までの間の緯糸
走行経路の少なくともノズル入口部においてノズルから
の噴射水の飛散を遮断しながら、緯糸を打ち込み、1ピ
ック相当分の緯糸の打込みが終了し、貯溜部に次の1ピ
ック相当分の緯糸を貯溜している間に、緯糸をノズルの
ニードル入口部の管壁に沿うよう振動を与えて該管壁に
付着している毛羽に接触させ、次の緯糸打込み時に該毛
羽を緯糸と共に打ち込むことを特徴とする方法からな
る。
【0010】
【0011】また、このウォータジェットルームによる
炭素繊維織物の製造方法においては、緯糸が巻かれたボ
ビンからノズルのニードル入口部までの間の緯糸走行経
路の少なくとも前記貯溜部とノズルのニードル入口部と
の間で、緯糸に付着した毛羽をエアサクションで吸引す
ると同時に貯溜部に次の1ピック相当分の緯糸を貯溜し
ている間に、緯糸をノズルのニードル入口部の管壁に沿
うようエアサクションの吸引により振動を与えて該管壁
に付着している毛羽に接触させ、次の緯糸打込み時に該
毛羽を緯糸と共に打ち込むことが好ましい。
【0012】
【0013】また、このウォータジェットルームによる
炭素繊維織物の製造方法においては、各経糸を案内する
各綜絖の位置を経糸配列方向に固定し、各綜絖からの経
糸を、各筬羽間に形成された筬目の、経糸配列方向ほぼ
中央部に通すことが好ましい。
【0014】ここで、ウォータジェットルームにおける
緯糸の打ち込み速度は、250ピック/分〜800ピッ
ク/分であることが望ましい。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】請求項1および2に係る発明においては、
少なくとも緯糸として炭素繊維を含む繊維が用いられ
る。経糸は、緯糸と同じ炭素繊維であってもよいし、ま
たガラス繊維やポリアラミド繊維のような高弾性率、高
強度の補強繊維やポリアミド繊維、ポリエステル繊維、
ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、PEEK(ポリエー
テルエーテルケトン)繊維、ポリアミド繊維、PPS
(ポリフェニレンサルファイド)繊維、ABS繊維やポ
リプロピレン繊維のような合成繊維であってもよい。炭
素繊維は、マルチフイラメント糸であってもよく、紡績
糸であってもよい。
【0021】請求項およびに係る発明においては、
少なくとも経糸として炭素繊維を含む繊維を用いる方法
および装置を対象としている。緯糸は、経糸と同じ炭素
繊維であってもよいし、またガラス繊維やポリアラミド
繊維のような高弾性率、高強度の補強繊維やポリアミド
繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン
繊維、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)繊維、
ポリアミド繊維、PPS(ポリフェニレンサルファイ
ド)繊維、ABS繊維やポリプロピレン繊維のような合
成繊維であってもよい。炭素繊維は、マルチフイラメン
ト糸であってもよく、紡績糸であってもよい。
【0022】炭素繊維がマルチフイラメント糸である場
合、単繊維直径が5〜13ミクロン程度が好ましく、製
織性をより向上させることができるという理由で、10
〜25回/m程度の撚を有するものを使用するのが好ま
しい。また、紡績糸である場合は、摩擦、締め付けによ
る強さを発現させるために、100〜600回/m程度
の撚を有するものが好ましい。また、炭素繊維糸は、P
AN系(ポリアクリロニトリル)系、ピッチ系など、い
ずれの炭素繊維からなるものであってよいが、CFRP
(炭素繊維強化プラスチック)において使用する織物を
製織する場合には、マトリックスとなる樹脂との接着性
を向上させるために、電解酸化処理などによって表面に
官能基を導入してなるものを使用するのが好ましい。
【0023】もっとも炭素繊維は、炭素繊維のみで構成
されたものでなくてよい。用途にもよるが、CFRPに
おいて用いるものにあっては、炭素繊維と、他の高強
度、高弾性率補強繊維(アラミド繊維、ガラス繊維,シ
リコーンカーバイド繊維、アルミナ繊維など)とを併用
したものであってもよく、また、炭素繊維とPEEK
(ポリエーテルエーテルケトン)繊維、ポリアミド繊
維、PPS繊維、ABS繊維などと併用したものであっ
てもよい。この発明においては、これら補強繊維や熱可
塑性繊維を併用してなる糸も、また、炭素繊維糸という
概念に含まれる。
【0024】また、本発明で使用する緯糸の炭素繊維糸
の太さは、300デニールから4,000デニール(デ
ニール:糸長9,000m当たりの糸重量)程度であ
る。炭素繊維の結節強さが小さいので、300デニール
以下であると貯溜部で緯糸が屈曲する際や緯糸用のクラ
ンパーが閉じる際、炭素繊維糸が切断することがある。
また、4,000デニール以上になると糸が重くなるの
で、噴射水で炭素繊維の緯糸を飛ばしきれず、途中で緯
糸が開口中の経糸シートと接触し、織物欠点を発生させ
ることがある。また、本発明で使用する経糸の炭素繊維
糸の太さは、300デニールから8,000デニール
(デニール:糸長9,000m当たりの糸重量)程度で
ある。
【0025】また、工程中での毛羽の発生を抑えるとい
う観点から、炭素繊維糸には0.4〜1.5重量%程度
のサイジング剤が付与されていることが好ましい。炭素
繊維の引張り弾性率が大きいので、あまりサイジング剤
付着量が多いと、硬くなって針金状になるため好ましく
ない。また、サイジング剤としては、製織後の織物を精
錬などの後処理を行わず、そのまま成形に供することが
できるという観点から、エポキシ樹脂系のものが好まし
い。
【0026】
【実施例】次に、本発明のウォータジェットルームによ
る炭素繊維織物の製造方法の、緯糸打ち込み側の望まし
い実施態様をその作用とともに図面を参照しながら説明
するとともに、具体的な実施例およびその結果について
説明する。図1は本発明の一実施態様に係るウォータジ
ェットルームによる炭素繊維織物の製造方法に用いる
造装置を示しており、主として緯糸打ち込み部を示して
いる。
【0027】まずウォータジェットルームにおける緯糸
が通過する糸道(緯糸走行経路)について説明する。ボ
ビン1から解舒された炭素繊維の緯糸2には、ワッシャ
ー型のテンサー3を通すことにより張力が付与される。
続いて緯糸2は、ヤーンガイド4を経て積極回転してい
るフィードローラ5とプレッシャーローラ6に挟まれ、
一定の速度で緯糸打ち込みに必要な糸が連続的に測長さ
れながら、貯溜部としての緯糸貯溜の回転ドラム7へと
導かれる。回転ドラム7から出た緯糸2は、クランパー
8、ゲートワイヤー9を経てノズルジョイント10のノ
ズル14に至る。
【0028】ノズルジョイント10には、供給パイプ1
7を介してポンプ18が接続されている。ポンプ18で
緯糸打ち込み1ピックに必要な水量3〜6cm3 程度が
計量され、12〜25kg/cm2 程度に加圧された水
が、ノズルジョイント10に送られる。ウォータジェッ
トルームのノズル14は、代表的には図2に示すような
構成を有しており、ノズル14のニードル15の入口部
15からニードル15内を挿通された緯糸2は、ノズル
ジョイント10に供給された加圧水の噴射流に乗せられ
て該噴射水とともに噴射される。ノズルジョイント10
に供給された加圧水は、まずノズル14先端(ニードル
15の先端)の緯糸2を伸ばし、その後にクランパー8
が開き、1ピック相当分の測長・貯溜された緯糸2が、
経糸シート11、11が開口され、筬13が後退し始め
たときに、ノズル14よりジェット水流に乗せて経糸シ
ート11、11間に向けて噴き出され、貯溜されていた
緯糸2およびフィードローラ5とプレッシャーローラ6
に挟まれて供給されつつある緯糸2が打ち込まれる。緯
糸2が打ち込まれた後、筬13が前方に移動して緯糸2
を相対的に織口(開口した経糸シート11、11間の根
元)まで移動させながら、経糸シート11、11が閉口
され、緯糸2がカッター12で切断されクランパー8が
閉じられて緯糸2の供給が止められる。そして、次の打
ち込みに必要な緯糸2が貯溜ドラム7に蓄積され、所定
の糸長が蓄積された後、次の緯糸打ち込みが開始され
る。以上の構成、動作は、ウォータジェットルームによ
る通常の構成および製織方法であり、炭素繊維織物を製
造するにあたって何等変わるところはない。
【0029】各種の糸道のガイドや貯溜ドラム等で擦ら
れて発生する毛羽によるノズル詰まりが解消すれば、ウ
ォータジェットルームによる炭素繊維織物の高速製織が
可能になるわけで、鋭意検討の結果、本発明に至った。
炭素繊維を緯糸に使用した場合、結節強さが小さく、破
断伸びが小さく弾性率が大きく、また単繊維直径が通常
の天然繊維や合成繊維に比べて非常に小さい。また、高
速で製織した場合、緯糸の走行速度も1分間当たり30
0〜1,500mと高速度となり、ガイドやドラム表面
で擦られ毛羽が発生することは避け難い。幸いな事にウ
ォータジェットルームで発生する炭素繊維の毛羽は、比
重が小さく、単繊維直径が5〜10ミクロン程度と細
く、毛羽の長さは数ミリメートルから数センチメートル
の短繊維状になったものであり、かつ炭素繊維の弾性率
が大きいので、合成繊維のように単繊維が互いに絡み合
うことが少なく、比較的簡単に空気中に飛散させること
が出来る。
【0030】しかしながら、良く観察していると、とく
に、ウォータジェットルームのゲートワイヤーやクラン
パーの糸道での毛羽の蓄積が多く、この蓄積した毛羽が
量的に多くなると、走行する炭素繊維の緯糸に付着して
移動し、図2に示したノズル14のニードル16の入口
部15に蓄積する。蓄積量が少なく毛羽による抵抗が少
ない間は、ノズル14から噴射されるジェット水流に乗
せて、正常に緯糸2が打ち込まれるが、緯糸打込を繰り
返していると、ニードル入口部15での毛羽の蓄積量が
多くなって詰まり、ついにはジェット水流に乗せて緯糸
2を打ち込むことが出来なくなった。エアサクションで
ゲートワイヤー9やクランパー8の糸道で蓄積する毛羽
を除去することを試みたが、この現象は変わらなかっ
た。
【0031】また、従来のウォータジェットルームで
は、一般に噴射水の飛散を防止するため、防水カバーが
取り付けられることもあるが、ノズルのニードル入口部
が噴射水の飛散領域内に設置されているため、ニードル
入口部は常に水で濡れている状態にあった。このこと
が、上記のような、ニードル入口部15での毛羽の蓄積
を助長していると考えられる。
【0032】そこで本発明では、まず、図3に示すよう
に、ノズル14のニードル入口部15が噴射水の飛散領
域外となるように、ノズル14の噴射水噴射側に防水カ
バー19が設置されている。より具体的には、ノズルホ
ルダー20の先端側に防水カバー19を取り付け、特
に、ニードル入口部15を噴射水飛散領域外とする。ま
た、この防水カバー19により、ニードル入口部15を
はじめ、ボビン1からノズル14のニードル入口部15
までの緯糸走行経路において、噴射水の飛散を完全に遮
断し、水による濡れを防止することができた。
【0033】緯糸走行経路で、噴射水の飛散を完全に遮
断し、緯糸貯溜ドラム7やノズル14までの各種ガイド
およびノズル14のニードル入口部15での、水滴によ
る炭素繊維毛羽の付着および集積を防止することによっ
て、ノズル14のニードル入口部15での毛羽詰まりが
解消し、炭素繊維を含む緯糸2の連続打ち込みが可能と
なった。観察の結果、ゲートワイヤー9やクランパー8
の糸道で蓄積する毛羽が少なくなり、また、ニードル入
口部15での毛羽蓄積も少なくなっていた。噴射水の飛
散を完全に遮断することによって、ニードル入口部15
を含めた緯糸2の糸道において、水による毛羽の付着が
無くなり、空気中に毛羽が飛散したためであると考えら
れる。
【0034】合成繊維の場合とは異なり、炭素繊維のマ
ルチフイラメント糸の毛羽は、炭素繊維の製造段階でも
発生しており、ボビンに巻かれた緯糸にはもともと毛羽
が入っている。また、ウォータジェットルームでは緯糸
の走行速度も1分間当たり300〜1,500mと高速
度となり、ボビンから解舒される炭素繊維とボビンの糸
層との擦れ、テンサー、ヤーンガイドとの擦れ、フィー
ドローラとプレッシャーローラに挟まれる際の緯糸貯溜
ドラム表面との擦れ、貯溜ドラムから出た後のクランパ
ーやゲートワイヤーとの擦れによって毛羽が発生するこ
とは避け難い。これらの毛羽は、緯糸に付着して移動
し、ノズルのニードル入口部に蓄積し、ついには毛羽詰
まりにまで進展するのである。
【0035】本発明では、炭素繊維の比重が1.75〜
1.90と小さくまた繊維も細く、空気中に飛散するこ
とに着目して、ボビンに巻き込まれた毛羽および緯糸の
糸道で発生する毛羽を、図4に示すように、クランパー
8部、ゲートワイヤー9部およびニードル入口部15の
3箇所に吸引パイプ21、22、23を設け、該吸引パ
イプ21、22、23により、エアサクションで吸引す
る。エアサクションはブロアー24で空気を吸引させ、
各吸引パイプ21、22、23の吸引能力をバルブ2
5、26、27で適切に設定する。また、各吸引パイプ
21、22、23に対してそれぞれブロアーを設けるよ
うにしてもよい。
【0036】このエアサクションにおいては、1本の吸
引パイプの吸引能力は毎分0.1〜2.0m3 程度が好
ましい。0.1m3 以下であるとクランパー8部、ゲー
トワイヤー9部およびニードル入口部15で僅かながら
毛羽の蓄積が認められ、長時間の運転ではニードル入口
部15で毛羽蓄積が多くなり、ニードル詰まりに繋が
る。また、2.0m3 以上になると、吸引力が強くなり
過ぎて、緯糸2を吸い込み、吸引口に炭素繊維の緯糸2
が接触して毛羽が出たり、また、ノズル14から緯糸2
が抜けてしまい、次の打ち込みが出来なくなる。つま
り、緯糸打ち込みが完了し、次の打ち込みに必要な緯糸
2を貯溜している間は、クランパー8が閉じて緯糸2の
移動を拘束している。また、緯糸2は前の打ち込みの完
了後、カッター12で切断された緯糸2がノズル先端か
ら4〜6cm程度出、フリーの状態にあるので、吸引力
が強いとノズル14から緯糸2が抜けてしまう。また、
エアサクションの吸引口はパイプ状のもので、断面積が
50mm2 〜500mm2 程度が好ましい。50mm2
以下であると吸引範囲が狭くて毛羽除去が不完全とな
り、また500mm2 以上であると吸引力が弱くなり、
毛羽の吸引が不完全となる。
【0037】また、本発明においては、最終的に緯糸飛
走の障害となる毛羽によるニードル詰まりを防ぐため、
緯糸2に振動を与え、ニードル14の入口部15の管壁
に付着した毛羽を除去し、除去された毛羽を緯糸2と共
に打ち込むようにすることもできる。このような振動動
作は、上記エアサクションに伴う動作を利用して行わせ
ることが可能である。たとえば、ニードル入口部15で
常時エアサクションで吸引していると、緯糸飛走が終了
し、貯溜部7に1ピック相当分の緯糸2を貯溜している
間、緯糸2はノズル14のニードル入口部15の管壁に
沿うように弛む。次にノズル14から水が噴射されると
緯糸2が真っ直ぐに緊張され、管壁に付着していた毛羽
が脱落して緯糸2と共に打ち込まれる。この運動は、ウ
ォータジェットルームで緯糸を打ち込んでいる間繰り返
されるので、毛羽の集積は防止される。この緯糸の弛緩
・緊張の繰り返し運動は、エアサクションによる方法が
毛羽の集塵と同時に行えるので好適であるが、エアサク
ションによる方法に限定するものでなく、カム駆動等に
よる機械的振動であってもよい。
【0038】上記緯糸2の弛緩・緊張の程度は、ニード
ル16の入口の直径をD(図2に図示)とすると、緯糸
2の振幅は入口において0.5D〜1.0Dが好まし
い。
【0039】なお、上記にウォータジェットルームで炭
素繊維の織物を製造するにあたって、発生した毛羽をい
かに除去するかについて説明したが、毛羽発生を極力抑
えることが重要であり、下記方法が有効である。
【0040】すなわち、経糸シート11、11の開口・
閉口運動に伴う経糸同志の擦れによっても毛羽が発生す
るので、経糸シート11に水を噴霧して、水によって経
糸を集束させ、また水を潤滑剤とする。
【0041】また、ドラム方式で炭素繊維の緯糸の貯溜
を行う場合(図1に示した如く、貯溜ドラム7で貯溜す
る場合)、ドラム径と緯糸の打ち込み長さにもよるが、
通常、ドラムに2〜3重巻かれ、水の噴射によってドラ
ムから緯糸が解舒される。ドラムへ供給された緯糸は、
ドラムに吹き付けられている圧空によりドラムに巻き付
くようになっている。ドラムへの糸の巻き付けにおい
て、ドラムからの緯糸の解舒が、ノズル側から順次解舒
されていくように緯糸が巻き付けられていけば問題はな
い。しかし、圧空によって比較的重い炭素繊維を巻き付
けると、必ずしもノズル側から順次解舒されていくよう
な巻き付けにならず、ノズルから遠い位置にある緯糸
が、ノズルに近い位置に巻かれた緯糸と擦れながら解舒
され、毛羽が発生する場合がある。このような場合に対
しても、ドラム側壁面で、ドラム径より5〜20%大き
いところに巻き付けるようにすると、ノズル側から順次
解舒されていくような巻き付けになり、毛羽発生がなく
なる。
【0042】上記のようにウォータジェットルームによ
り製織された織物は、織機に取り付けたヒータによっ
て、あるいは製織後直ちにホットローラを通して乾燥さ
せると、サイジング剤による織物同志の接着は生じな
い。
【0043】以下に、本発明のより具体的な実施例につ
いて説明する。 実施例1 経糸に東レ株式会社製炭素繊維“トレカ”T−300、
フイラメント数が3,000フイラメント、断面積が
0.112mm2 、ヨリ数が15回/mの炭素繊維糸を
準備し、クリールに385本セットした。これを、経糸
密度が3.5本/cmとなるように筬に通した。緯糸に
は経糸と同じ炭素繊維糸を準備し、1ピックの水量が
4.2cm3 、水圧が18kg/cm2 の噴射水で、ウ
ォータジェットルームの回転数、すなわち1分間当たり
緯糸打ち込み回数が400回/分で、緯糸密度が3.5
本/cm、織物組織が平組織の炭素繊維織物を製織し
た。なお、ノズルホルダーの先端に防水カバーを取り付
け、ニードル入口部を噴射水の飛散領域外とし、ニード
ル入口部をはじめ、ボビンからノズルのニードル入口部
までの緯糸走行経路において噴射水の飛散を完全に遮断
し、緯糸の水による濡れを防止した。上記条件で1,0
00m製織したところ、炭素繊維のノズルのニードル詰
まりによって緯糸フィラーが感知した織機の、製織10
0m当たりの停台頻度は15.3回と良好であった。
【0044】実施例2 経糸に東レ株式会社製炭素繊維“トレカ”T−300、
フイラメント数が3,000フイラメント、断面積が
0.112mm2 、ヨリ数が15回/mの炭素繊維糸を
準備し、クリールに385本セットした。これを、経糸
密度が3.5本/cmとなるように筬に通した。緯糸に
は経糸と同じ炭素繊維糸を準備し、1ピックの水量が
4.2cm3 、水圧が18kg/cm2 の噴射水で、ウ
ォータジェットルームの回転数、すなわち1分間当たり
緯糸打ち込み回数が400回/分で、緯糸密度が3.5
本/cm、織物組織が平組織の織物を製織した。なお、
クランパー部、ゲートワイヤー部およびニードル入口部
の3箇所に設けた内口径18mmの吸引パイプにより、
1本のエアー吸引能力が毎分1.05m3 にてエアサク
ション方式で吸引した。上記条件で1,000m製織し
たところ、炭素繊維のノズルのニードル詰まりによって
緯糸フィラーが感知した織機の、製織100m当たりの
停台頻度は13.1回と良好であった。
【0045】実施例3 経糸に東レ株式会社製炭素繊維“トレカ”T−300、
フイラメント数が3,000フイラメント、断面積が
0.112mm2 、ヨリ数が15回/mの炭素繊維糸を
準備し、クリールに385本セットした。これを、経糸
密度が3.5本/cmとなるように筬に通した。緯糸に
は経糸と同じ炭素繊維糸を準備し、1ピックの水量が
4.2cm3 、水圧が18kg/cm2 の噴射水で、ウ
ォータジェットルームの回転数、すなわち1分間当たり
緯糸打ち込み回数が400回/分で、緯糸密度が3.5
本/cm、織物組織が平組織の織物を製織した。なお、
緯糸の弛緩・緊張は、ニードルの入口部で、入口の直径
Dに対し、緯糸の振幅を1.0Dとし、ニードルの管壁
に付着した炭素繊維の毛羽を除去しながら炭素繊維糸の
緯糸打ち込みを行った。上記条件で1,000m製織し
たところ、炭素繊維のノズルのニードル詰まりによって
緯糸フィラーが感知した織機の、製織100m当たりの
停台頻度は13.1回と良好であった。
【0046】実施例4 経糸に東レ株式会社製炭素繊維“トレカ”T−300、
フイラメント数が3,000フイラメント、断面積が
0.112mm2 、ヨリ数が15回/mの炭素繊維糸を
準備し、クリールに385本セットした。これを、経糸
密度が3.5本/cmとなるように筬に通した。緯糸に
は経糸と同じ炭素繊維糸を準備し、1ピックの水量が
4.2cm3 、水圧が18kg/cm2 の噴射水で、ウ
ォータジェットルームの回転数、すなわち1分間当たり
緯糸打ち込み回数が400回/分で、緯糸密度が3.5
本/cm、織物組織が平組織の織物を製織した。なお、
クランパー部、ゲートワイヤー部及びニードル入口部の
3箇所に設けた内口径18mmの吸引パイプにより、1
本のエア吸引能力が毎分1.05m3 にてエアサクショ
ンで吸引しながら、緯糸の弛緩・緊張は、ニードルの入
口で、入口直径Dに対し、緯糸の振幅を1.0Dとし、
ニードルの管壁に付着した炭素繊維の毛羽を除去しなが
ら炭素繊維糸の緯糸打ち込みを行った。上記の条件で
1,000m製織したところ、炭素繊維のノズルのニー
ドル詰まりによって緯糸フィラーが感知した織機の、製
織100m当たりの停台頻度は2.5回と非常に良好で
あった。
【0047】実施例5 経糸に東レ株式会社製炭素繊維“トレカ”T−300、
フイラメント数が3,000フイラメント、断面積が
0.112mm2 、ヨリ数が15回/mの炭素繊維糸を
準備し、クリールに385本セットした。これを、経糸
密度が3.5本/cmとなるように筬に通した。緯糸に
は経糸と同じ炭素繊維糸を準備し、1ピックの水量が
4.2cm3 、水圧が18kg/cm2 の噴射水で、ウ
ォータジェットルームの回転数、すなわち1分間当たり
緯糸打ち込み回数が400回/分で、緯糸密度が3.5
本/cm、織物組織が平組織の織物を製織した。なお、
ノズルホルダーの先端に防水カバーを取り付け、ニード
ル入口部を噴射水の飛散領域外とし、ニードル入口部を
はじめ、ボビンからノズルのニードル入口部までの緯糸
走行経路において、噴射水の飛散を完全に遮断し、緯糸
の水による濡れを防止した。また、クランパー部、ゲー
トワイヤー部およびニードル入口部の3箇所に設けた内
口径18mmの吸引パイプにより、1本のエア吸引能力
が毎分1.05m3 にてエアサクションで吸引しなが
ら、緯糸の弛緩・緊張は、ニードルの入口で、入口の直
径Dに対し、緯糸の振幅を1.0Dとし、ニードルの管
壁に付着した炭素繊維の毛羽を除去しながら炭素繊維糸
の緯糸打ち込みを行った。上記条件で1,000m製織
したところ、炭素繊維のノズルのニードル詰まりによっ
て緯糸フィラーが感知した織機の、製織100m当たり
の停台頻度は0.3回と極めて良好であった。
【0048】比較例1 経糸と緯糸の炭素繊維糸、経糸と緯糸の密度、経糸本
数、織物組織、緯糸打ち込み速度、噴射水の1ピックの
水量、水圧の条件を上記実施例と同じにして、従来技術
による製織試験を行い、実施例と同様に炭素繊維のノズ
ルのニードル詰まりによる織機の停台状況を調べたとこ
ろ、製織0.1〜1.5m程度で炭素繊維の毛羽がノズ
ルのニードルに詰まり停台した。製織100m当たりの
停台回数は82回となり極めて多かった。ニードルに詰
まった毛羽の除去、ニードルへの糸通しなど運転再開に
要する時間が多くて稼働率が低く、正常に炭素繊維織物
を生産できる状況にはならなかった。
【0049】次に、本発明のウォータジェットルームに
よる炭素繊維織物の製造方法およびそれに用いる装置
の、経糸側の望ましい実施態様を、その作用とともに図
面を参照しながら説明するとともに、具体的な実施例お
よびその結果について説明する。図5および図6は、本
発明の一実施態様に係るウォータジェットルームによる
炭素繊維織物の製造方法に用いる装置の、経糸製織部を
示している。
【0050】図5、図6において、経糸31はクリール
のボビン32から引出され、並行配列された経糸31が
張力付与ロール33を経た後、4つの綜絖枠、すなわち
織り前A(図6)から第1綜絖枠34、第2綜絖枠3
5、第3綜絖枠36、第4綜絖枠37にとりつけられた
多数本(経糸の糸本数分)のワイヤーヘルド38、3
9、40、41のそれぞれの綜目42、43、44、4
5に通され、該経糸31が、筬13の各筬羽47間に形
成される筬目48に、一本づつ通される。経糸31は、
筬羽47と筬羽47の間に、つまり各筬目48に、第1
綜絖枠34の綜目42に通した経糸から第4綜絖枠37
の綜目45までに通した経糸を一本一本順番に通し、こ
れを繰り返して筬13に経糸31が互いに絡みあわない
ように並行に通した。経糸31の開口・閉口運動は、第
1綜絖枠34と第3綜絖枠36、第2綜絖枠35と第4
綜絖枠37の上下運動を同期させることによって与え
た。各綜絖の上下運動によって、経糸の1本当りの張力
が0.01〜0.03g/デニールがかかった状態で、
経糸シートが開口した時、ポンプによって12〜25k
g/cm2 に加圧された、水量3〜6cm3 /ピックの
ウォータジェットによって緯糸2が挿入される。緯糸2
は、次いで筬13によって織り口まで運ばれ、このとき
綜絖が上下運動して閉口し、織物61が形成される。か
かる織成操作を繰り返すことによって得られた織物61
は、ガイドロールを経た後ヒータで乾燥され、ついで巻
取ロール(図示略)に巻き取られる。ここまでの工程
は、ウォータジェットルームによる通常の織成操作と何
ら変わらない。
【0051】さて、緯糸の打ち込み速度が100ピック
/分〜150ピック/分程度の低速で炭素繊維の製織を
行うのであれば、経糸の張力管理を十分行い、ガイド類
やロールの表面状態を最適化すれば、毛羽の発生はある
ものの炭素繊維の製織は可能であったが、ウォータジェ
ットルームで織機回転数を大きく、特に250ピック/
分以上の打ち込み速度で運転すると、瞬く間に多数本の
経糸の炭素繊維に毛羽が発生し、これが経糸切れも誘発
し、織成操作が不能の状態に至ったのである。鋭意検討
し、下記の現象を発見した。
【0052】経糸の炭素繊維の毛羽発生状況を観察し
ていると、経糸クリールから引出されたシート状の経糸
は、綜絖に入るまでは極端なフィラメント切れもなく正
常であるが、通常の合成繊維の製織と同様、筬部と綜絖
部において著しく毛羽発生していた。 さらに運転状態を詳細に観察していると、経糸の毛羽
が発生する箇所は、全幅に対して一様ではなく、キャリ
アロッド(図6の49、50、51、52に対応するも
の)に通された1本1本の綜絖の間隔が均一でなく、綜
絖の間隔が不均一になっている所で経糸が集中的に毛羽
立っていた。 経糸を4枚の綜絖枠に通して、経糸シートに開口・閉
口運動をさせたが、後方の綜絖を通っている経糸が、前
方の綜絖のキャリアロッドに通された1本1本の綜絖の
間隔が不均一な箇所で、経糸が前方の綜絖の綜目の外側
や綜絖ワイヤーに擦られ経糸の炭素繊維が毛羽立ってい
た。
【0053】一般に炭素繊維織物は、炭素繊維糸が通常
の合成繊維糸と比べ太く、また複合材料にした時、織物
を構成する織糸の屈曲による応力集中を小さくし、機械
的特性を大きくするため、密度の小さな織物規格となっ
ている。したがって、炭素繊維織物を製織する際、経糸
密度も粗く、すなわちキャリアロッドに通された綜絖の
密度も粗くなっている。綜絖の綜目に経糸が通って、こ
れら経糸のシートは製織中は開口・閉口運動をし、綜絖
は上下運動して常に振動が与えられる状態である。合成
繊維織物を製織する場合、経糸密度も20〜50本/c
mと大きいので、使用する綜絖本数も多く、したがって
綜絖の密度も大きく、すなわち綜絖の間隔が小さく問題
ないが、炭素繊維織物の場合、経糸密度は1〜15本/
cm程度と小さいので、綜絖の密度が粗く、すなわち綜
絖の間隔が大きいので、経糸張力のバラツキによって、
キャリアロッドに通された綜絖の位置が大きく移動す
る。
【0054】一方、経糸は筬の筬目に通され、この筬は
織機本体に固定されているので、このように、綜絖の位
置が移動すると、経糸が綜絖の綜目に対して斜め方向に
入り、筬羽のエッジに擦られることになる。特に、織機
回転数が高く、250ピック/分以上の高速回転になる
と、この擦れによって、炭素繊維糸を構成するフィラメ
ントの切れ頻度が多くなり、毛羽発生も多くなることが
わかった。
【0055】そこで、本発明の実施態様を図面に基づい
て説明するに、図6に示すように、綜絖枠を4枚使用
し、織り前Aから第1綜絖枠34、第2綜絖枠35、第
3綜絖枠36および第4綜絖枠37とし、各々の上部の
キャリアロッド49、50、51、52には織物の経糸
間隔(mm)×綜絖枚数の等間隔で溝53を付け、この
溝53に使用する全ての綜絖を引っ掛けた。綜絖枠に対
するキャリアロッドの固定は、上下方向はミドルフック
54で固定し、左右方向には各綜絖に通した経糸31が
等間隔で配列するように、第1綜絖枠34〜第4綜絖枠
37の各キャリアロッド49、50、51、52の溝2
3が順番に経糸間隔分づつずれるようにし、その上を押
さえ板55で各綜絖が移動出来ないようにした。綜絖の
左右方向の固定は、必ずしも上部と下部の双方のキャリ
アロッドに対して行う必要はなく、少なくともどちらか
片方のキャリアロッドで固定すればよい。
【0056】筬13に対しては、経糸31が筬目48の
経糸配列方向のほぼ中央部を通るように、各綜絖枠また
は筬13の位置を調整し、綜絖枠と筬13の位置を固定
する。すなわち筬面と、各綜絖を通った経糸31とのな
す角度がほぼ直角になるようにし、全ての経糸31が筬
目48に真っ直ぐ入るようにする。
【0057】各綜絖の固定は、必ずしも上記方法に限定
するものではなく、簡便的に通常の溝のないキャリアロ
ッドに、経糸の間隔、すなわち筬羽のピッチで各綜絖を
等間隔に並べ、耐久性のある接着テープで固定してもよ
い。つまり、所定の間隔に並べられた綜絖が運転中も移
動しないように、固定させておけばよい。
【0058】また、本発明で使用する綜絖枚数は、4枚
に限定するものではなく、織物の組織を形成するに必要
な枚数を使用すればよく、例えば、織物組織が平組織の
場合は2枚か4枚、5枚繻子織りの場合は5枚、8枚繻
子織りの場合は8枚使用できる。
【0059】本発明では綜絖を通った経糸と筬面とのな
す角度は、90°であることが最も好ましいが、綜絖枠
や筬の取り付けで若干ずれることはある。実用的には9
0°±10°以内であれば問題はない。この角度を外れ
ると、経糸と筬羽との擦れが大きくなり毛羽が発生する
ので好ましくない。
【0060】また、本発明による炭素繊維織物の緯糸の
打ち込み速度は、1分間あたり250〜800ピックで
ある。250ピック/分以下であると、ウォータジェッ
トルームで製織した織物は水で濡れていて、乾燥が必要
となるので、経済効果が小さい。また、800ピック/
分以上になると、経糸毛羽発生が多くなり、また炭素繊
維の比重が合成繊維と比べて大きく、かつ糸条繊度が大
きいので緯糸飛走ミスも多くなるので好ましくない。
【0061】通常ウォータジェットルームはフラット・
ヘルドが用いられているが、本発明で使用する綜絖は、
炭素繊維糸の損傷を少なくする観点から、リング入りワ
イヤー・ヘルドを使用すると、糸の通る綜目やワイヤー
と糸の擦れによる毛羽発生が少なくなるので好ましい。
【0062】また、経糸の開口・閉口運動に伴う経糸同
志の擦れによる毛羽発生を防ぐ意味合いから、綜絖とバ
ックレストビームの間で、炭素繊維の経糸シートに遠心
式加湿機で1時間あたり5〜20リットル程度の水を噴
霧すると、撚のない、または撚数の少ない炭素繊維の経
糸の集束性を与える事ができ、また水が潤滑材としても
作用するので、ウォータジェットルームによる高速回転
に好ましい。
【0063】実施例6 経糸に東レ株式会社製炭素繊維“トレカ”T−300、
フィラメント数が3,000フィラメント、断面積が
0.112mm2 、ヨリ数が15回/mの炭素繊維糸を
準備し、クリールに550本セットした。クリールから
解舒された経糸を3本の張力付与ローラに通し、ガイド
ロールを経たのち、綜絖枠にとりつけられたワイヤーヘ
ルドの綜目に通した。綜絖枠は4枚使用し、織り前から
第1綜絖枠、第2綜絖枠、第3綜絖枠および第4綜絖枠
とし、各々の上部のキャリアロッドには織物の経糸間隔
2mm×4(綜絖枚数)=8mmの間隔で溝を付け、綜
絖枠に対するキャリアロッドの固定は、第1綜絖枠〜第
4綜絖枠の各キャリアロッドの溝が順番に2mmずれる
ようにし、その上を押さえ板で各綜絖が移動出来ないよ
うにした。経糸は、筬密度が5本/cmの筬目に第1綜
絖枠の綜目に通した経糸から第4綜絖枠綜目に通した経
糸を一本一本筬目に通し、これを繰り返して筬に経糸が
互いに絡みあわないように通した。
【0064】経糸の開口・閉口運動は、第1綜絖枠と第
3綜絖枠、第2綜絖枠と第4綜絖枠の経糸シートの上下
運動を同じにすることによって与えた。経糸シートに遠
心式加湿機で1時間あたり8リットルの水を噴霧しなが
ら、第1綜絖枠と第3綜絖枠が上がり、第2綜絖枠と第
4綜絖枠下がって経糸シートが開口した時、ポンプによ
って18kg/cm2 に加圧された、水量が4.2cm
3 /ピックの噴射水で緯糸を挿入した後筬打ちし、次に
第1綜絖枠と第3綜絖枠が下がり、第2綜絖枠と第4綜
絖枠が上がって経糸シートが開口した時、同様に緯糸打
ち込みし、これを繰り返し、織機回転数、すなわち1分
間当たりの緯糸打ち込み速度が400ピックで、緯糸密
度が5本/cmになるように巻き取った。この織物は水
で濡れているので、ヒータで乾燥したのち巻取ロールに
巻き取った。織り上がった織物は、経糸、緯糸密度は各
々5本/cm、炭素繊維目付が200g/m2 、織物幅
は110cmであった。
【0065】この状態で製織を続けたところ、製織長さ
が増えるに従い、筬に付着する毛羽は若干観察された
が、1,100mまで織物品位に影響するものではな
く、また、経糸切れも無かった。製織長さが1,100
mを超えると、筬の筬目に付着した毛羽で、経糸の張力
むらが発生し始めたので、織機の運転を停止し、筬に付
着した毛羽を除去した。
【0066】比較例2 従来技術のように、溝無しのキャリアロッドを用いて、
キャリアロッド上で全ての綜絖が自由に移動出来るよう
にし、その他は実施例6と条件は同じにして、経糸、緯
糸密度は各々5本/cm、炭素繊維目付が200g/m
2 、織物幅は110cmの炭素繊維織物を製織した。
【0067】この状態で製織を続けたところ、製織長さ
が増えるに従い、筬の筬目に多くの毛羽が蓄積し始め、
50m程度製織したところから、経糸の張力むらが発生
し、また織り上がった織物にリードマーク、すなわち織
物の経糸間隔むらの発生している箇所が多く観察され
た。さらに、製織を続けたところ、製織長さが200m
を超えると、筬の筬目に付着した毛羽で、経糸の張力む
らが発生し始めたので、織機の運転を停止し、筬に付着
した毛羽を除去した。経糸切れが3回発生し製織効率が
極めて悪かった。
【0068】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のウォータ
ジェットルームによる炭素繊維織物の製造方法によれ
ば、毛羽の発生しやすい炭素繊維の緯糸打ち込みにあた
って、緯糸の糸道において噴射水の飛散遮断により毛羽
の蓄積を防止することによって、また、吸引により毛羽
の除去を行うことによって、さらに、ニードル入口にお
ける緯糸に弛緩・緊張等の振動を与えることにより付着
毛羽を脱落させその毛羽を噴射水と同時に打ち込むこと
によって、炭素繊維毛羽によるノズルのニードル詰まり
を解消することができ、ウォータジェットルームを用い
た織機の停台頻度を少なくし、高い稼働率で安価に炭素
繊維織物を製造することが可能となった。
【0069】また、本発明においては、炭素繊維織物を
ウォータジェットルームで製織するにあたり、各綜絖の
位置を固定し、筬羽の間のほぼ中央に経糸を通している
から、経糸密度の小さな炭素繊維織物を製造するにあた
っても、運転中に綜絖の位置がずれるようなことはな
く、経糸間隔が均一になっている。したがって、高速回
転で運転しても、綜絖や筬羽に擦られて発生する炭素繊
維の毛羽量が少なくなり、長時間毛羽掃除をしなくても
操業可能であり、また経糸切れがなく、また経糸張力む
らが小さくなるので織物品位も良い。ウォータジェット
ルームにおける緯糸の打ち込み速度が、250ピック/
分〜800ピック/分以上が可能となり、生産性が向上
し、安価に炭素繊維織物を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係るウォータジェットル
ームによる炭素繊維織物の製造装置の緯糸打ち込み部の
斜視図である。
【図2】図1の装置のノズル部の縦断面図である。
【図3】図1の装置の部分斜視図である。
【図4】図3の装置にエアサクションパイプを付加した
場合の斜視図である。
【図5】図1の装置における経糸織成部の斜視図であ
る。
【図6】図5の装置の拡大部分斜視図である。
【符号の説明】
1 ボビン 2 緯糸 3 テンサー 4 ヤーンガイド 5 フィードローラ 6 プレッシャーローラ 7 緯糸貯溜ドラム 8 クランパー 9 ゲートワイヤー 10 ノズルジョイント 11 経糸シート 12 カッター 13 筬 14 ノズル 15 ニードル入口部 16 ニードル 17 供給パイプ 18 ポンプ 19 防水カバー 20 ノズルホルダー 21、22、23 吸引パイプ 24 ブロアー 25、26、27 バルブ 31 経糸 32 ボビン 33 張力付与ロール 34、35、36、37 綜絖枠 38、 9、40、41 ワイヤーヘルド 42、43、44、45 綜目 47 筬羽 48 筬目 49、50、51、52 キャリアロッド 53 溝 54 ミドルフック 55 押さえ板 61 織物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−185153(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D03D 47/32 D03D 23/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 経糸シートを開口・閉口運動させ、炭素
    繊維を含む緯糸を貯溜部に1ピック相当分貯溜し、経糸
    シート開口時にウォータジェットルームのノズルから噴
    射される噴射水に乗せて緯糸を経糸シート間に打ち込む
    炭素繊維織物の製造方法において、緯糸が巻かれたボビ
    ンからノズルのニードル入口部までの間の緯糸走行経路
    の少なくともノズル入口部においてノズルからの噴射水
    の飛散を遮断しながら、緯糸を打ち込み、1ピック相当
    分の緯糸の打込みが終了し、貯溜部に次の1ピック相当
    分の緯糸を貯溜している間に、緯糸をノズルのニードル
    入口部の管壁に沿うよう振動を与えて該管壁に付着して
    いる毛羽に接触させ、次の緯糸打込み時に該毛羽を緯糸
    と共に打ち込むことを特徴とするウォータジェットルー
    ムによる炭素繊維織物の製造方法。
  2. 【請求項2】 緯糸が巻かれたボビンからノズルのニー
    ドル入口部までの間の緯糸走行経路の少なくとも前記貯
    溜部とノズルのニードル入口部との間で、緯糸に付着し
    た毛羽をエアサクションで吸引すると同時に貯溜部に次
    の1ピック相当分の緯糸を貯溜している間に、緯糸をノ
    ズルのニードル入口部の管壁に沿うようエアサクション
    の吸引により振動を与えて該管壁に付着している毛羽に
    接触させ、次の緯糸打込み時に該毛羽を緯糸と共に打ち
    込むことを特徴とする、請求項1に記載のウォータジェ
    ットルームによる炭素繊維織物の製造方法。
  3. 【請求項3】 各経糸を案内する各綜絖の位置を経糸配
    列方向に固定し、各綜絖からの経糸を、各筬羽間に形成
    された筬目の、経糸配列方向ほぼ中央部に通すことを特
    徴とする、請求項1または2に記載のウォータジェット
    ルームによる炭素繊維織物の製織方法。
  4. 【請求項4】 ウォータジェットルームにおける緯糸の
    打ち込み速度が、250ピック/分〜800ピック/分
    であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記
    載のウォータジェットルームによる炭素繊維織物の製造
    方法。
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