JP2004300272A - 燃料系部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物或いはポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)と反応性化合物(C)とを含有する樹脂組成物からなる燃料系部品であって、樹脂組成物の−40℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値が20kJ/m2以上であることを特徴とする燃料系部品。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両、船、家庭用途において、各種の燃料を配管輸送する際に好適な、耐低温衝突性、耐溶剤性、及び燃料バリヤー性に優れた燃料系部品、特に燃料タンク及び燃料チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、燃料輸送用配管および容器として、特に車両用には軽量、低燃費、デザインの自由さ等を求めて、プラスチック化が進んできた。プラスチック化に当たっては、最初ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等、先行して他用途の配管部材や容器に使用されている材料が検討されたが、燃料バリヤー性及び耐低温衝突性が不足して使用出来なかった。そのため、燃料バリヤー性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂と、オレフィン系エラストマーとを併用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では燃料バリヤー性は改良されるものの、耐低温衝突性が不十分であり、特に寒冷地においては、車両の衝突等による外部衝撃により、燃料系部品(例えば、燃料タンクやチューブ)が破損する可能性がある。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−226707号公報(第2−3頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PAS樹脂と記す。)(A)の優れた燃料バリヤー性を保持しつつ、さらに耐低温衝突性の改善されたプラスチック製燃料系部品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、−40℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値が20kJ/m2以上である、PAS樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物の成形物からなる燃料系部品が、耐低温衝突性及び燃料バリヤー性に良好であるという知見を得た。
本発明は、このような知見に基づくものである。
即ち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物からなる燃料系部品であって、樹脂組成物の−40℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値が20kJ/m2以上であることを特徴とする燃料系部品を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
前記樹脂組成物は、−40℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値が20kJ/m2以上であることが必須である。前記シャルピー衝撃値は、高い程好ましいが、実用的には20〜120kJ/m2の範囲であればよい。また、前記シャルピー衝撃値が20kJ/m2未満の場合、燃料系部品での耐低温衝突性が著しく劣ることになり、好ましくない。なお、シャルピー衝撃値は、例えば後述の方法により測定できる。
【0007】
本発明で使用するポリアリーレンスルフィド樹脂(以下PAS樹脂と略記する)は下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリフェニレンサルファイド樹脂(以下PPS樹脂と略記する。)が、機械的特性、燃料バリヤー性、耐燃料性等の点で望ましい。
【化1】
【0008】
また、前記PAS樹脂(A)には、他の共重合体構成単位を含有させることができる。この含有可能な他の共重合体構成単位の具体例としては、特に制限されるものではないが、例えば、下記構造式(2)で表されるメタ結合、下記構造式(3)で表されるエ−テル結合、下記構造式(4)で表されるスルホン結合、下記構造式(5)で表されるスルフィドケトン結合、下記構造式(6)で表されるビフェニル結合、下記構造式(7)で表される置換フェニルスルフィド結合、下記構造式(8)で表される3官能フェニルスルフィド結合及びナフチル結合等が挙げられる。
【0009】
【化2】
(式中、Rはアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、またはアルコキシ基を示す。)
【0010】
本発明で用いるPAS樹脂(A)は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を70モル%以上含有するPPS樹脂であることが、耐熱性、燃料バリヤー性、及び機械特性に優れたポリマーとしての特徴が発揮されやすいため好ましい。又、下記構造式(8)の様な3官能性以上の結合が含有される場合は、溶融成形時の粘度が高くならないよう通常5モル%以下が好ましく、3モル%以下が更に好ましい。
【0011】
前記PAS樹脂(A)を得る方法としては、特に限定されないが、PPS樹脂を例にとると、(1)ジハロゲン芳香族化合物類を硫黄と炭酸ソーダの存在下に重合させる方法、(2)ジハロゲン芳香族化合物類を極性溶媒中でスルフィド化剤の存在下に重合させる方法、(3)p−クロルチオフェノールを自己縮合させる方法、(4)有機極性溶媒とジハロゲノ芳香族化合物を混合し加熱しておき、その中に含水スルフィド化剤を加えてジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させ、この時、含水スルフィド化剤を反応混合物中の水分量が有機極性溶媒の2〜50モル%の範囲内になる様な速度で加える製造方法などがある。
【0012】
これらの中でも前記(4)の製造方法が、分子量の大きなPPS樹脂を得るのに容易である。また、このPPS樹脂は、樹脂組成物の−40℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値が20kJ/m2以上になりやすい点からも好ましく用いられる。
【0013】
本発明に用いるPAS樹脂(A)の分子量は、1−クロロナフタレンを溶媒として、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めることが出来る。前記PAS樹脂(A)は、低温での耐衝撃性、強靭性の必要から、そのピーク分子量が、35000以上が好ましく、成形時の流動性が良好であることから200000以下が好ましい。中でも、40000〜100000が特に好ましい。
【0014】
前記PAS樹脂(A)の分子量は、一般に分子量分布が非常に大きく、さらにピーク分子量の左右のテーリングが製造条件で大きく振れる傾向がある。その為、数平均分子量と重量平均分子量の差が大きくどちらを用いても実情を表さない場合があり、分子量分布の中で最も多数の分子が集まった分子量を示すピーク分子量が、比較的性能に直接反映される事を知り、ピーク分子量で評価する事にした。このピーク分子量の測定法は実施例で詳述する。PAS樹脂のピーク分子量が該範囲にある場合に、特にPAS樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)との相溶性が向上し、本発明の燃料系部品の耐低温衝突性が向上する。
【0015】
さらに、本発明に使用するPAS樹脂として、カルボキシル基で変性されたカルボキシル基含有ポリアリ−レンサルファイド系樹脂(以下、CPAS系樹脂と記す。)を用いることができる。
【0016】
前記CPAS系樹脂としては、例えば、下記一般式(9)〜(11)
【0017】
【化3】
【0018】
で示される繰り返し構造単位を有するCPAS樹脂と繰り返し単位が前記構造式(1)表される繰り返し単位を有するPASとの共重合体等が挙げられる。(一般式(10)中のYは−O−、−SO2−、−CH2−、−C(CH3)2−、−CO−、又は、−C(CF3)2−を示す。)
【0019】
上記CPAS樹脂中の繰り返し構造単位の含有率は、使用する目的等々によって異なるため一概に規定できないが、CPAS系樹脂中の0.5〜30モル%、好ましくは、0.8〜20モル%である。このような共重合によるCPAS系樹脂は、ランダムタイプでも、ブロックタイプでも、グラフトタイプでも構わない。最も代表的なものとして、PAS樹脂骨格部分がPPS樹脂骨格でCPAS樹脂骨格部分が上記一般式(9)で示されるカルボキシル基含有ポリフェニレンサルファイド樹脂(CPPS)である共重合体が挙げられる。この場合、PPS樹脂/CPPS樹脂は99.5/0.5〜70/30(重量比)が好ましい。
【0020】
共重合によるCPAS樹脂の製造方法としては、次のような方法が挙げられる。例えば、ランダムタイプの場合には、ジハロゲノ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とジハロゲノ芳香族カルボン酸及び(または)そのアルカリ金属塩とを用いる方法や該製造方法において用いたアルカリ硫化物に代えて水硫化アルカリ金属化合物と水酸化アルカリ金属を用いる方法などが挙げられる。
またブロックタイプの場合には(1)PASプレポリマーの存在する極性溶媒中で、ジハロゲノ芳香族カルボン酸及び/またはそのアルカリ金属塩とスルフィド化剤(アルカリ硫化物;水硫化アルカリ金属化合物と水酸化アルカリ金属との併用)を反応させる方法、(2)CPASプレポリマーの存在する極性溶媒中で、ジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤を反応させる方法、(3)極性溶媒中で、PASプレポリマーとCPASプレポリマーを反応させる方法などがある。
【0021】
また、本発明に用いるPAS樹脂として、アミノ基で変性されたアミノ基含有ポリアリ−レンスルフィド系樹脂(以下、APAS系樹脂と記す。)を用いることができる。APAS系樹脂中のアミノ基含有量は、樹脂組成物全体の0.1〜30モル%が好ましい。
このAPAS系樹脂は、例えば、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロベンゼンとを反応させる際に、アミノ基含有芳香族ハロゲン化物を共存させて重合することにより得ることができる。
【0022】
このAPAS系樹脂の共重合に際して用いることができるアミノ基含有芳香族ハロゲン化物としては、下記一般式(12)
【0023】
【化4】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Zは水素原子、−NH2又はハロゲン原子を表し、R1は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、mは0〜3の整数である。)で表される化合物を挙げることができる。
【0024】
その具体的化合物としては、例えばフルオロアニリン、クロルアニリン、ジクロルアニリン、アミノ−クロルトルエン、クロル−フェニレンジアミン、ブロムアニリン、ジブロムアニリン、ヨ−ドアニリン等が挙げられ、これらの1種以上の混合物を使用することができる。
【0025】
本発明に使用される熱可塑性エラストマー(B)は、PAS樹脂(A)を混練する温度で、溶融し、混合分散可能であることが好ましい。その点から、融点が300℃以下であり、室温でゴム弾性を有するエラストマーが好ましい。中でも、耐熱性、混合の容易さ、耐低温衝突性向上の点で、熱可塑性エラストマー(B)の中でもガラス転移点が−40℃以下のものが低温でもゴム弾性を有するため好ましい。前記ガラス転移点は、低いほど好ましいが、通常−180〜−40℃の範囲のものが好ましく、−150〜−40℃の範囲のものが特に好ましい。
【0026】
前記熱可塑性エラストマー(B)は、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、ビニル基、或いは酸無水基、及びエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性エラストマー(B)であることが耐低温衝突性向上の点で好ましく、更にこれらの中でも、エポキシ基或いは酸無水物、酸、エステル等のカルボン酸に起因する官能基がPAS樹脂(A)との親和性が大きくなるため特に好ましい。
【0027】
前記熱可塑性エラストマー(B)としては、例えば、α−オレフィン類と前記官能基を有するビニル重合性化合物類との共重合で得ることが出来る。前記α−オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、等の炭素数2〜8のα−オレフィン類等が挙げられる。前記官能基を有するビニル重合性化合物類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のα、β―不飽和カルボン酸類及びそのアルキルエステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他の炭素数4〜10の不飽和ジカルボン酸類とそのモノ及びジエステル類、その酸無水物等のα、β―不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、或いはグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、その分子内にエポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、ビニル基、或いは酸無水基、及びエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン−プロピレン共重合体或いはエチレン−ブテン共重合体が好ましく用いられ、さらに好ましくはカルボキシル基を有するエチレン−プロピレン共重合体或いはエチレン−ブテン共重合体である。
【0029】
上記混合の際のPAS樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)との混合比は、PAS樹脂(A)99〜50重量部に対し、熱可塑性エラストマー(B)1〜50重量部であることが好ましく、PAS樹脂(A)99〜50重量部に対し、熱可塑性エラストマー(B)5〜50重量部であることが特に好ましい。熱可塑性エラストマー(B)の配合量が上記の範囲であれば、本発明の燃料系部品の燃料バリヤー性及び耐低温衝突性が更に向上する。
【0030】
また、本発明ではPAS樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)に加えて、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、ビニル基、或いは酸無水基、及びエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する反応性化合物(C)を併用することにより、樹脂組成物の相溶性、耐低温衝突性、燃料バリヤー性がさらに向上する。
【0031】
前記反応性化合物(C)としては、例えば、ビスフェノールA、レゾルシノ−ル、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノールのグリシジルエーテル、ビスフェノールの代わりにハロゲン化ビスフェノール、ブタンジオールのジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン類等のエポキシ樹脂類、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状系及びビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他炭素数4〜10の不飽和ジカルボン酸とそのモノ及びジエステル類が例示される。
【0032】
これらの中でも、同一分子内に3個以上のエポキシ樹脂を有するエポキシ化合物が特に好ましい。該化合物の代表例として、ノボラック型エポキシ樹脂が使用できる。ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、ノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンとから誘導されるものである。前記ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。前記フェノール類としては特に制限はないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p−ターシャリーブ、ルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びこれらの混合物が特に好適に用いられる。更に、ポリ−p−ビニルフェノールのエポキシ化物もエポキシ樹脂として用いることができる。なお、反応性化合物(C)はハロゲン基或いは水酸基等を有していてもよく、単独又は二種以上の混合物として使用してもよい。
【0033】
特に、熱可塑性エラストマー(B)として、エポキシ基と反応する官能基を有するものと、反応性化合物(C)が3個以上のエポキシ基を有する化合物を用いた場合に、−40℃での耐衝撃性が著しく向上する。PAS樹脂(A)と、熱可塑性エラストマー(B)との界面が衝撃エネルギーの吸収に適した構造になっていると推定される。
【0034】
本発明に使用するエポキシ樹脂(C)の配合量は、前記したPAS樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)の合計量100重量部に対し、0.01〜5重量部であることが好ましく、0.1〜2重量部であることが特に好ましい。
【0035】
また、本発明の燃料系部品に用いられるPAS樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、機械的特性の向上や成形加工性の向上を図る等の目的で、各種の強化材及び/又は充填剤を添加しても良い。
【0036】
本発明に使用することができる強化材及び充填材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、窒化珪素、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、ウオラストナイト、フェライト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄、ミルドガラス、ガラスビーズ、及びガラスバルーン等がある。
【0037】
更に本発明に使用する樹脂組成物には、本発明の目的を損わない範囲で下記の如き重合体を混合して使用できる。かかる重合体としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどを挙げることができる。
【0038】
加えて、本発明の燃料系部品に用いられるPAS樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、防錆剤、滑剤、結晶核剤、着色剤等を添加することができる。
【0039】
また、本発明の燃料用配管部材に用いられるPAS樹脂組成物は、種々の方法で調製することができる。
【0040】
調製方法としては、例えばPAS樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)更に必要に応じて用いる反応性化合物(C)をあらかじめヘンシェルミキサー又はタンブラー等で混合した後、1軸又は2軸押出混練機などに供給して200℃〜360℃で混練した後、ペレット化することにより得る方法が挙げられる。特に、混練用のニーディングディスクを備えた同方向回転の2軸押出混練機を用いることが好ましい。
【0041】
また、ペレット化後に、アニーリング処理や、UV照射、プラズマ照射等の加工処理を施すこともできる。
【0042】
本発明の燃料系部品としては、燃料タンク、チューブ類(チューブ、ホース、パイプ等)、ライニング管、管継ぎ手類(エルボー、チーズ、レデューサー、その他ジョイントやカップラー)、各種バルブ、流量計、ガスケット(シール材、パッキン類)等が挙げられる。
【0043】
本発明の燃料系部品の成形方法としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形等が挙げられる。特に、射出成形、押出成形が好ましく適用される。本発明の燃料系部品は、PAS樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)、更に必要に応じて用いる反応性化合物(C)を用いて形成されることを特徴とするが、該組成物は単独で使用しても良いし、多層構造とする際の少なくとも一層に使用しても良い。
【0044】
射出成形の場合は、金型の設計上、燃料の流路となる部分に入れ子を用い、金型を解放する際に入れ子を抜き取る方法が好ましく適用される。入れ子が使用しにくい場合、例えば、U字型のパイプ等を成形する場合は、構成する2個以上の分割体を、前記PAS樹脂組成物を用いて射出成形により各々成形する射出成形工程と、前記射出成形工程で成形された分割体を相互に接合させてU字型のパイプ等を形成させる接合工程とを含む方法を採用しても良い。このような方法の例として、例えば、ダイスライド成形法を採用しても良い。また、多層構造とする場合は、二色成形法を採用しても良い。
【0045】
押出成形の場合は、チューブ用ダイスを用いて成形される。多層構造とする場合は、層の数もしくは材料の数の押出機より押し出された溶融樹脂を、一つの多層チューブ用ダイスに導入し、ダイス内もしくはダイスを出した直後に接着せしめることにより、多層チューブを製造することができる。また、一旦単層チューブを製造し、その内側あるいは外側に他の層を積層し、多層チューブを製造する方法によってもよい。なお、三層以上の多層構成からなる多層チューブを製造する場合には、押出機を適宜に増設してそれぞれの押出機を共押出ダイに接続し、多層状のパリソンを押し出すことにより得られる。
【0046】
かくしてなる本発明の燃料系部品は、ガソリン、アルコールガソリン、サワーガソリンなどに対する耐薬品性や燃料バリヤー性に優れると共に、耐低温衝突性にも優れており、特に自動車の燃料タンク及びチューブに好ましく適用される。
【0047】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明する。例中の部は、重量部を示す。尚、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0048】
後記実施例の測定値及び評価基準は以下のとおり測定・評価した。
(1)耐低温衝撃性;シャルピー衝撃試験(−40℃下、ノッチ付)
[試験片の作製]
後述の方法により得られた該組成物のペレットを用いて、射出成形機により、ISO 3167タイプAの多目的試験片を成形した。次にISO 2818に従って、この多目的試験片を長さ80mm×幅10.0mm×厚さ4.0mmに切削加工を行った後、ISO 2818に従いノッチを切削した。
[測定方法]
ISO 179に従い、試験片を液槽中で完全に−40℃になるまで放置した後、液槽中から取り出して5秒以内に衝撃試験を行った。
(2)ピーク分子量;ゲル浸透クロマトグラフ測定にて求めた。
装置:超高温ポリマー分子量分布測定装置SSC−7000(センシュウ科学社製)、カラム:UT−805L(昭和電工社製)、溶媒:1−クロロナフタレン、カラム温度:210℃、検出器:UV検出器(360nm)を用い、6種類の単分散ポリスチレンを校正に用いて分子量分布を測定し、縦軸がd(重量)/dLog(分子量)、横軸がLog(分子量)の微分重量分子量分布を得、そのピーク分子量を横軸から読み取った。
(2)ガラス転移点(Tg)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「PYRIS Diamond DSC」)を用い、JIS K 7121に準拠して測定した。
(3)燃料バリヤー性
後述の方法により押し出したペレットを用い、1軸押出機にて、290〜330℃でチューブ用ダイス(丸ダイ)より吐出させ、冷却、引き取りを調整して、外径8mm、内径6mmのチューブを得た。このチューブを30cmの長さにカットし、カットしたチューブの一端を密栓して、内部にトルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10体積比で混合した擬似燃料を入れ、残りの端部も密栓した。その後、全体の重量を測定し、試験チューブを40℃のオーブンに入れ、経過時間と重量をプロットして、単位時間当たりの重量変化が一定となった時点での重量変化の値を求めた。該値が1g/m2・24時間未満の場合を○、1g/m2・24時間以上の場合を×とした。
(4)耐低温衝突性
[試験成形品の作製]
(A)燃料タンク成形品
後述の方法により押し出したペレットを用い、ダイスライド成形法を用いて燃料タンクを二分割した分割体を樹脂温度300℃、金型温度130℃、射出圧力100MPaにて射出成形した後、各分割体の周縁部に溶融樹脂を樹脂温度320℃、射出圧力100MPaにて射出し、融着させることにより燃料タンク(厚み;平均4mm)を成形した。
(B)燃料チューブ成形品
後述の方法により押し出したペレットを用い、1軸押出機にて、樹脂温度300℃でチューブ用ダイス(丸ダイ)より吐出させ、冷却、引き取りを調整して、外径8mm、内径6mmのチューブを得た。
[試験方法]
運輸省令(自車1327号3.1衝撃試験)に準拠し、−40℃で15kgの三角錐を高さ21cmから落として割れの発生の有無を観察し、割れが発生しない場合を○、割れが発生する場合を×とした。
【0049】
実施例および比較例中に用いた、成分は次の通りである。
PPS―1:以下の合成法により合成した。
温度センサー、冷却塔、滴下槽、滴下ポンプ、留出物分離槽を連結した攪拌翼付チタン製反応釜にp−DCB 1.838 kg(12.5モル)、NMP 4.958kg(50モル)、水 0.090kg(5.0モル)を室温で仕込み、攪拌しながら窒素雰囲気下で100℃まで20分かけて昇温した。系を閉じ、更に220℃まで40分かけて昇温した後、その温度で内圧を0.22MPaにコントロールして、Na2S・xH2O 1.5kg、NaSH・yH2O 0.225kg、水0.425kgの混合液(Na2S:11.4モル、NaSH:3.2モル、水分50.3重量%)を3時間かけて滴下した。滴下中は同時に脱水操作を行い、水は系外に除去し、水と共に留出するp−DCBは連続的にオートクレーブに戻した。なお、脱水操作とp−DCBを戻す操作は240℃昇温完了まで行い、昇温完了時に系を密閉した。
【0050】
その後、そのままの温度圧力で1時間保持した後、1時間かけて、内圧を0.17MPaに下げながら、内温を240℃まで昇温、その温度で1時間保持して反応を終了し、室温まで冷却した。得られた反応スラリーを減圧下(−0.08MPa)、120℃に加熱することにより反応溶媒を留去、残査に水を注いで80℃で1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過した。この操作を3回繰り返し、更に水を加え、200℃で1時間攪拌後、濾過し、熱風乾燥機で120℃−10時間乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。このポリマーを以後PPS−1という。このPPS−1のピーク分子量は、40,700であった。
【0051】
実施例1〜6及び比較例1
各種原料及びその他の原料を、下記表1に示す割合で均一に混合した後、35mmφの2軸押出機にて290〜330℃で混練してPAS樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用い、上述の方法に従い、耐低温衝撃性、燃料バリヤー性、及び耐低温衝突性を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1中の前記PPS−1以外の材料は、下記のものを用いた。
PPS−2;PPS樹脂[ピーク分子量34,200(大日本インキ化学工業社製 「LR−2G」)]
PPS−3;PPS樹脂[ピーク分子量16,000(大日本インキ化学工業社製 「B−100−C」)]
ELA−1;酸変性エチレン−ブテン共重合体、Tg=−65℃(三井化学社製 「タフマー MH7020」)
ELA−2;酸変性エチレン−プロピレン共重合体、Tg=−50℃(三井化学社製 「タフマー MP0430」)
ELA−3;エチレン−グリシジルメタアクリル酸−アクリル酸メチル共重合体、Tg=−33℃(住友化学工業社製 「ボンドファースト7L」)
ELA−4;エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸エチル共重合体、Tg=−35℃(住友化学工業社製 「ボンダインAX8390」)
ADD;クレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製 「EPICLON N−695」)
【0054】
【発明の効果】
本発明によると、耐低温衝突性と燃料バリヤー性のバランスに優れた燃料系部品を提供することが可能である。特に、本発明は、自動車の燃料タンク及びチューブに好ましく適用される。
Claims (10)
- ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)及び熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物からなる燃料系部品であって、樹脂組成物の−40℃におけるノッチ付のシャルピー衝撃値が20kJ/m2以上であることを特徴とする燃料系部品。
- 熱可塑性エラストマー(B)のガラス転移点が−40℃以下である請求項1記載の燃料系部品。
- 熱可塑性エラストマー(B)が、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、ビニル基、或いは酸無水基、及びエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性エラストマー(B)である請求項1記載の燃料系部品。
- 熱可塑性エラストマー(B)が、エチレン−プロピレン共重合体或いはエチレン−ブテン共重合体である請求項1記載の燃料系部品。
- 熱可塑性エラストマー(B)が、その分子内にカルボキシル基を有するものである請求項4記載の燃料系部品。
- 更に、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、ビニル基、酸無水基、及びエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する反応性化合物(C)を含有する請求項1〜5の何れか1つに記載の燃料系部品。
- 反応性化合物(C)が、3個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物である請求項6記載の燃料系部品。
- ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる分子量分布のピーク分子量で35,000〜200,000である請求項1〜7の何れか1つに記載の燃料系部品。
- ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、有機極性溶媒とジハロゲン芳香族化合物とを含む混合物を加熱し、反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲に制御しながら、含水スルフィド化剤を供給して行き、該有機極性溶媒中で該ジハロゲン芳香族化合物と該スルフィド化剤とを反応させることにより得られることを特徴とする請求項8記載の燃料系部品。
- 車両用の燃料タンクまたは燃料チューブである請求項1〜9の何れか1つに記載の燃料系部品。
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