JP2004002560A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐水耐久性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリアリーレンスルフィド、(B)エラストマー及び(C)相溶化剤を含有し、(A)成分と(B)成分の総重量に占める(B)成分の量が、5重量%未満であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。このポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド本来の特性を損なうことなく、かつウェルド強度及び耐水圧性が高いので、水廻り部品に用いるのに適する。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)ポリアリーレンスルフィド、(B)エラストマー及び(C)相溶化剤を含有し、(A)成分と(B)成分の総重量に占める(B)成分の量が、5重量%未満であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。このポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド本来の特性を損なうことなく、かつウェルド強度及び耐水圧性が高いので、水廻り部品に用いるのに適する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関し、特に、水廻り部品用途に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
給水器・給湯器等の水廻り部品には、内部を通る水等の液体から受ける内圧に耐える耐水圧性、配管経路内で生じる圧力差が原因して発生する高水圧の衝撃波(ウォーターハンマー)に耐える耐衝撃性、長期間に水と接しても、強度低下が少ない耐水安定性等が求められる。
このため、金属以外では、多くの場合エラストマー強化したポリアリーレンスルフィドが使用される。
ポリアリーレンスルフィドは、非常に高い耐熱性、耐薬品性を有するエンジニアリングプラスチックであるが、脆弱であるため、エラストマーの添加により靭性、耐衝撃性の向上がなされる。
従来は、水廻り部品の物性として、特に耐衝撃性を重視したため、アイゾット衝撃強度等を目安に開発されてきた。このため、ポリアリーレンスルフィドにエラストマーを、10〜20重量部程度添加し、耐衝撃性を向上させた組成物により、水廻り部品を製造してきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このように多量のエラストマーを添加した場合、静的な強度の低下や、エラストマーの耐熱性の低さのため、ガスの発生、ウェルド強度の低下、成形性の低下等の問題があった。
このため、この組成物からなる水廻り部品は、十分な信頼性を有するとは言えなかった。
本発明は、上記課題に鑑み、十分な耐水耐久性を有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水廻り部品にはアイゾット衝撃強度より、むしろ耐水圧性が重要であるが、アイゾット衝撃強度と耐水圧性は、必ずしも相関しないことを見出し、より水廻り部品に適した耐水圧性の高いポリアリーレンスルフィド組成物を得て、本発明を完成させた。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、以下に示す(A)、(B)及び(C)成分を含有し、(A)成分と(B)成分の総重量に占める(B)成分の量が、5重量%未満であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
(A)ポリアリーレンスルフィド
(B)エラストマー
(C)相溶化剤
本発明の第2の態様によれば、第1のポリアリーレンスルフィドと第2のポリアリーレンスルフィドを含み、第1のポリアリーレンスルフィドの樹脂温度310℃、せん断速度1200/sにおける溶融粘度が、500PaS以上であり、第1のポリアリーレンスルフィドと第2のポリアリーレンスルフィドの総重量に対する、第1のポリアリーレンスルフィドの添加量が20重量%以上であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
本発明の第3の態様によれば、上記のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物よりなる水廻り部品が提供される。
【0006】
【発明の実施の態様】
以下、本発明について詳細に説明する。
[第一の態様]
本発明の第一の態様である樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド(以下、PASという)、エラストマー及び相溶化剤を含む。
(A)成分であるPASは、特に制限はなく、直鎖型、セミリニア型、架橋型いずれも用いることができる。分子量の制限も特に無く、製品の性能を損なわない範囲で任意に選択することができる。
PASは、構造式−Ar−S−(ただしArはアリーレン基)で示される繰り返し単位を70モル%以上含有する重合体で、その代表的物質は、下記構造式(I)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1は炭素数6以下のアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは0〜4の整数である。また、nは平均重合度を示し10〜30の範囲である)で示される繰り返し単位を70モル%以上有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSという)である。
中でもα−クロロナフタレン溶液(濃度0.4g/dl)、206℃における対数粘度が0.1〜0.5(dl/g)、好ましくは0.13〜0.4(dl/g)、さらに好ましくは0.15〜0.35(dl/g)の範囲にあるものが適当である。
PASは一般にその製造法により実質上、線状で分岐、架橋構造を有しない分子構造のもの(直鎖型)と、分岐や架橋構造を有する構造のもの(分岐型)が知られているが、本発明においては、その何れのタイプのものについても有効であり、また、これらをブレンドしたものも用いることができる。
さらに、比較的低分子量の線状ポリマーを、酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも使用できる。
【0009】
本発明で使用する、好ましいPASは、繰り返し単位として、パラフェニレンスルフィド単位を70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有するホモポリマー又はコポリマーである。
共重合構成単位としては、例えばメタフェニレンスルフィド単位、オルソフェニレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンケトンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンスルホンスルフィド単位、p,p’−ビフェニレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンエーテルスルフィド単位、2,6−ナフタレンスルフィド単位等が挙げられる。
好ましくは、PPSは、直鎖型で、樹脂温度310℃、せん断速度1200/sでの溶融粘度が、80PaS以上である。このPPSを使用すると、高い靭性を得ることができる。
ここで、溶融粘度とは、キャピラリーレオメーターを使用して、樹脂温度310℃、せん断速度1200/sの条件で測定した値である。
【0010】
PASは、アルカリ金属硫化物とハロゲン化芳香族化合物とを反応させて製造する。好ましくは、PASを硫化リチウムと塩化芳香族化合物から製造する。
具体的には、特願平6−44892公報に記載されているように、非プロトン性有機溶媒と、水酸化リチウム(LiOH)又はN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)とが存在する系に、液状又は気体状の硫黄化合物を投入する。このとき、脱水することが好ましい。この後、硫黄分の調整後、塩化芳香族化合物を投入し、重縮合させる。
尚、溶融粘度は、重合時に重合時間、反応温度等を調整することにより制御できる。
【0011】
(B)成分であるエラストマーは、特に制限はなく、例えば、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ビニル共重合体系エラストマー、ジエン系エラストマー、シリコン系エラストマー等を挙げることができる。
【0012】
オレフィン系エラストマーとしては、α−オレフィン幹ポリマーに不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト共重合させたものも挙げることができる。α−オレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、等の重合体あるいはこれらの共重合体が挙げられ、不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水メチルマレイン酸、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。具体的には、その単量体成分がエチレン、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、及び無水マレイン酸の共重合体であって、各々繰り返し単位の含有割合が、50〜90重量%、5〜49重量%、0.5〜10重量%、好ましくは、60〜85重量%、7〜45重量%、1〜8重量%のエチレン系共重合体を挙げることができる。α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、炭素数が3〜8の不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルであって、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル等が挙げられる。このエチレン系共重合体ついては、MI(190℃、2.16kgの条件下での測定値)が、0.1〜1000のものが望ましい。好ましくは0.2〜500、さらに好ましくは1〜100である。
【0013】
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミドハードセグメントと他のソフトセグメントが結合したポリアミド系ブロック共重合体である。このようなソフトセグメントとしては、例えば、ポリアルキレンオキシド(アルキル基の炭素数2〜6)が代表的なものである。ハードセグメントとしてのポリアミド成分としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミドが挙げられ、ソフトセグメントとしてのポリエーテル成分としてはポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
ポリエステル系エラストマーとしては、ハードセグメントに高結晶性の芳香族ポリエステルを、ソフトセグメントに非晶性ポリエーテル又は脂肪族ポリエステルを使用したマルチブロックポリマーが用いられる。このようなハードセグメントとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のテレフタル酸系結晶性ポリエステルが挙げられ、ソフトセグメントとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の脂肪族ポリエーテル、又はシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピロメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等のグリコール類とから得られる脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0015】
ジエン系エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB、SEBC)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、又はエチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、又はこれらを変性したゴム等が挙げられる。
【0016】
また、ポリオルガノシロキサン系ゴムも挙げることができ、ポリオルガノシロキサンと架橋剤を共重合させたものが好ましい。ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられ、架橋剤としては、3官能性又は4官能性のシロキサン系架橋剤、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
好ましくは、オレフィン系エラストマーであり、特に好ましくは、無水マレイン酸変性したものである。
【0018】
PASとエラストマーの相溶性を改善するため、(C)成分として相溶化剤を配合する。相溶化剤としては、シラン化合物、エポキシ樹脂等がある。
シラン化合物としては、特に限定されないが、好ましくはエポキシシランエポキシ基を有するシラン化合物である。中でも、1分子中にエポキシ基を1個以上、かつSi−OR基(Rはアルキル基を示す)を1個以上有するシラン化合物が好適である。ここでRとしては、炭素数が1〜20のアルキル基が挙げられ、中でも炭素数が1〜10のものが好ましい。エポキシシランとしては、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を1個又は2個以上含むものであり、液体又は固体状のものを用いことができる。例えば、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、等のビスフェノールのクリシジルエーテルや、ビスフェノールのかわりにハロゲン化ビスフェノールブタンジオールのジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系等のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、またジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロロヒドリンを反応させて得られるノボラック型エポキシ樹脂、或いは、これらに塩素、臭素等のハロゲン基、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基等が置換したものが挙げられる。上記ノボラック型フェノール樹脂としてはフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られるものが好適である。
シラン化合物、エポキシ樹脂は1種のみで使用してもよく、また複数を混合して用いることもできる。
その他、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等、反応性若しくは相溶性の高い官能基を複数含んでなる、PASとエラストマーを相溶化する効果のある物質であればよい。
【0020】
耐熱性、機械特性、寸法安定性等を改善するため、(D)成分として充填材を配合することが好ましい。充填材には目的に応じて繊維状、粉粒状、板状のものが用いられる。
繊維状充填材としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等、金属の繊維状物等の無機質繊維状物質を挙げることができる。特に代表的な繊維状充填材はガラス繊維、又はカーボン繊維である。尚、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機質繊維状物質も使用することができる。好ましくはガラス繊維である。
【0021】
一方、粉粒状充填物としてはカーボンブラック、溶融又は結晶シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、硅藻土、ウォラストナイトのような硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナのような金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属の硫酸塩、その他炭化珪素、窒化硼素、各種金属粉末を挙げることができる。
また、板状充填材としてはマイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等を挙げることができる。
【0022】
これらの充填材は、一種又は二種以上併用することができる。繊維状充填材、特にガラス繊維又は炭素繊維と粒状及び/又は板状充填材の併用は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。
これらの充填材の使用にあたっては、樹脂との接着性を良好にするために、カップリング剤等で表面処理を施したものを用いてもよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤の他、従来公知のカップリング剤の中から任意に選択して用いることができる。その他の成分の含有量は、この発明の目的を害しない範囲において適宜選択することができる。
【0023】
PAS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を添加してもよい。例えば、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、着色剤、可塑剤、導電性付与剤等の各種の添加剤、ポリアミド、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、種々の官能基を導入したシリコーンオイル、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、顔料等を挙げることができる。
【0024】
本発明における各成分の組成割合について、PASである(A)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計量中、95重量%より大きく、好ましくは、97重量%以上である。
エラストマーである(B)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計量中、5重量%未満、好ましくは、3重量%以下である。また、好ましくは1重量%以上である。5重量%以上では、耐熱性、弾性率、難燃性のようなPASを特徴づける性質が著しく低下し、1重量%未満では、耐衝撃、靱性の改良効果が不十分となる恐れがある。
【0025】
また、相溶化剤である(C)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分との合計((A)+(B))100重量部に対して、好ましくは0.3〜3重量部、特に好ましくは、0.5〜1重量部である。
(C)成分の割合が、0.3重量部未満であると、相溶化剤としての働きが不十分であり、3重量部を超えると、粘度上昇、耐熱性や耐衝撃性の低下につながる場合がある。
【0026】
さらに、充填材である(D)成分の添加量は、組成物全体((A)+(B)+(C)+(D))中、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。10重量%より小さいと、機械的強度、弾性率等の改良効果が乏しく、50重量%より大きいと、流動性や成形性の低下を引き起こす場合がある。
【0027】
PAS樹脂組成物を製造する方法としては、特に制限はない。例えば、(A)、(B)及び(C)成分、さらに必要に応じて(D)成分等を、ヘンシェルミキサーのような混合機で、均一に混合したのち、一軸又は二軸混練押出機に供給し、280〜340℃の温度範囲下で溶融混練し、ペレットとして樹脂組成物を得ることができる。
このペレットを押出成形機、射出成形機等の樹脂成形機に供給し、各種樹脂成形品を製造することができる。
尚、(A)、(B)及び(C)成分、さらに必要に応じて(D)成分等を、直接、上記の成形機に投入して、樹脂成形品を得ることもできる。
【0028】
[第二の態様]
本発明の第二の態様である樹脂組成物は、第1のPASと第2のPASを含む樹脂組成物である。
第1のPASの樹脂温度310℃、せん断速度1200/sにおける溶融粘度が、500PaS以上、好ましくは600PaS以上である。溶融粘度が、500PaS未満では、高いウェルド強度が発現しない。
第2のPASは、特に限定されないが、好ましくは、樹脂温度310℃、せん断速度1200/sにおける溶融粘度は、10PaS〜200PaSである。
尚、この樹脂組成物は、第1のPASのみから構成されていてもよく、また、第1のPASと第2のPASの他に、複数種のPASを含有してもよい。
このようなPASは、前述の方法と同様にして重合できる。
【0029】
耐熱性、機械特性、寸法安定性等を改善するため、(D)成分として、第一の態様と同様の充填材を配合することが好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、第一の態様と同様の各種添加材等を含有させることもできる。
【0030】
第1のPASの添加量は、PASの合計量中、20重量%以上であり、好ましくは30重量%以上である。また、好ましくは90重量%以下である。20重量%未満では、高いウェルド強度を発現しない。
第2のPASの添加量は、PASの合計量中、80重量%以下であり、好ましくは70重量%以下である。また、好ましくは、10重量%以上である。
【0031】
また、充填材である(D)成分の添加量は、組成物全体(PAS+(D))中、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。10重量%より小さいと、機械的強度、弾性率等の改良効果が乏しく、50重量%より大きいと、流動性や成形性の低下を引き起こす場合がある。
樹脂組成物を製造する方法としては、第一の態様と同様の方法を使用できる。
【0032】
上記、第一の態様及び第二の態様のPAS樹脂組成物は、エラストマーを添加しないか、又は添加しても量が少ないため、PASの有する耐熱性、耐薬品性等の特性を保持している。また、静的な強度の低下や、エラストマーに起因する、ガスの発生、ウェルド強度の低下、成形性の低下もない。さらに、高いウェルド強度と、伸び・靭性を兼ね備え、加えて離型抵抗が少ない等、成形性にも優れている。
よって、具体的には、フィルム、シート、ロッド、電線被覆、ギヤ、カム、軸受け、ベアリング、バッキング、ガスケット、Oリング、ファスナー等の用途に使用でき、特に、バルブ、ジョイント、チューブ、ホース、パイプ、風呂関連部品、給水・給湯器関連部品等の水廻り部品に好適に使用できる。
【0033】
[第三の態様]
次に、本発明の第三の態様である水廻り部品について説明する。
上記、第一の態様又は第二の態様の樹脂組成物を成形加工して、水廻り部品を製造する。
成形機としては、特に限定されないが、例えば、押出成形機、射出成形機等が利用できる。
例えば、パイプやホース等を成形するときは、押出成形機を使用でき、各種ジョイント部等、複雑な形状を有する部品の成形には射出成形機を使用できる。
また、水廻り部品に要求される特性に応じて、発泡成形や、他の樹脂又は金属等とのインサート成形、多層成形、多色成形等の成形法も利用できる。
水廻り部品は、内部を通る水等の液体から受ける内圧に耐える耐水圧性が要求されるため、用いる樹脂組成物は、好ましくは、ウェルド強度が68MPa以上又は耐水圧性が85kg/cm2以上、より好ましくは、ウェルド強度が70MPa以上又は耐水圧性が90kg/cm2以上であることが好ましい。
本発明の水廻り部品は、上記の性質を有する樹脂組成物からなり、十分な耐水耐久性を有する。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
尚、各例で得られた樹脂組成物の評価は下記の通りである。
(1)引張り伸び
ASTM D638に従い、引張破壊伸びを測定した。
(2)曲げ試験
ASTM 790に従い測定した。
(3)アイゾット衝撃試験
ASTM D256に従い、ノッチあり及びノッチなしの試験片について行った。
(4)ウェルド強度
ASTM D638準拠の、引張ダンベル形状成形金型の両端にゲートを設け、中央部でウェルドを形成するようにした金型を用い、強度評価用成形品を作製した。得られた成形品を、ASTM D638に準拠し引張試験を行い、破断荷重をウェルド強度とした。
(5)耐水圧試験
図1は耐水圧試験の試験方法を説明するための図である。特定形状に成形した樹脂組成物の、各配管接続部1、3、5を真鍮7、9、11で栓をし、加圧ポンプ13で水を注入して徐々に内圧をかけて、成形品が破壊した際の圧力(kg/cm2)で評価した。圧力はブルトン管15にて測定した。
尚、図中の寸法の単位はミリメートルである。
【0035】
[製造例]
ポリアリーレンスルフィドの重合法
・直鎖型PPS(PPS−A)
攪拌機を備えた重合槽に含水硫化ナトリウム(NA2S・5H2O)8.3キロモル,塩化リチウム(LiCl)8.3キロモルとNMP5,000リットルを加え、減圧下で145℃に保ちながら1時間脱水処理をした。ついで反応系を45℃に冷却後パラジクロルベンゼン(DCB)8.3キロモルを加え、260℃で3時間重合した。内容物を熱水で5回、170℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で1回、水で3回洗い185℃で乾燥してPPSを得た。
得られたPPSの310℃、1,200/sにおける溶解粘度は700PaSであった。
・セミリニア型PPS(PPS−B)
ディーアイシー・イーピー社製のT−2を使用した。
・直鎖型PPS(PPS−C)
パラジクロロベンゼンを8.80キロモルに変えた以外は、PPS−Aと同じ条件で実施した。
【0036】
実施例1
製造例で重合したPPS−A79重量部と、同PPS−B21重量部、及びガラス繊維(旭ファイバーグラス製、JAFT591)を、PPS総量70重量%、ガラス繊維30重量%となるように、射出成形機(日本製鋼所製、型締力50トン、J50E−P)に投入し、樹脂組成物の成形品を作製した。
各種金型を使用して、ウェルド強度用成形品、耐水圧性試験用の成形品及びその他物性試験用成形品を作製した。
成形条件は、シリンダの設定温度320℃、金型温度は、キャビティー表面温度の測定値が135℃で行った。また、射出速度を30%設定とし、ストロークを調整、保圧は最少充填後にかかるよう設定し、設定値は充填圧の70%とした。
この成形品の引張伸び、曲げ試験、アイゾット衝撃試験、ウェルド強度及び耐水圧性試験の結果を表1に示す。
尚、以下の実施例及び比較例で、作製した樹脂組成物の配合、物性試験の結果も表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例2
PPS−AとPPS−Bの配合比を表1の通りに変更した他は、実施例1と同様にして各成形品を得た。
【0039】
実施例3
PPS−A50重量部、PPS−B47重量部、エラストマーとして、SEBS(旭化成製、タフテックM1943)3重量部及び相溶化剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3重量部を、これらの総量70重量%、ガラス繊維30重量%となるように、射出成形機に投入した他は、実施例1と同様にして、各成形品を得た。
【0040】
実施例4
PPS−A及びPPS−Bを、PPS−Cに変更した他は、実施例3と同様にして、各成形品を得た。
【0041】
実施例5
PPS−AとPPS−Bの配合比を表1の通りに変更し、相溶化剤(東亞合成株式会社製、レゼダGP−505)0.7重量部添加した他は、実施例3と同様にして各成形品を得た。
【0042】
実施例6
オレフィン系エラストマー(住友化学工業製、ボンダインAX8390)3重量部及び相溶化剤として、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(チバガイギー製、ECN1299)1重量部を使用した他は、実施例3と同様にして各成形品を得た。
【0043】
比較例1〜6
表1に示す配合比で、射出成形機に投入した他は、実施例1と同様にして各成形品を得た。
【0044】
実施例の樹脂組成物は、比較例と同程度の耐衝撃性を有し、かつ靭性、剛性、耐水圧性及びウェルド強度が優れていることが確認できた。測定結果からアイゾット衝撃値と、ウェルド強度又は耐水圧性は必ずしも相関するとは言えないことが分かった。
従って、実施例の樹脂組成物が、靭性、剛性、耐水圧性及びウェルド強度に優れ、水廻り部品用途に適していることが分かった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、耐水耐久性に優れるPAS樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐水圧試験の試験方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1、3、5 各配管接続部
7、9、11 真鍮栓
13 加圧ポンプ
15 ブルトン管
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関し、特に、水廻り部品用途に適したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
給水器・給湯器等の水廻り部品には、内部を通る水等の液体から受ける内圧に耐える耐水圧性、配管経路内で生じる圧力差が原因して発生する高水圧の衝撃波(ウォーターハンマー)に耐える耐衝撃性、長期間に水と接しても、強度低下が少ない耐水安定性等が求められる。
このため、金属以外では、多くの場合エラストマー強化したポリアリーレンスルフィドが使用される。
ポリアリーレンスルフィドは、非常に高い耐熱性、耐薬品性を有するエンジニアリングプラスチックであるが、脆弱であるため、エラストマーの添加により靭性、耐衝撃性の向上がなされる。
従来は、水廻り部品の物性として、特に耐衝撃性を重視したため、アイゾット衝撃強度等を目安に開発されてきた。このため、ポリアリーレンスルフィドにエラストマーを、10〜20重量部程度添加し、耐衝撃性を向上させた組成物により、水廻り部品を製造してきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このように多量のエラストマーを添加した場合、静的な強度の低下や、エラストマーの耐熱性の低さのため、ガスの発生、ウェルド強度の低下、成形性の低下等の問題があった。
このため、この組成物からなる水廻り部品は、十分な信頼性を有するとは言えなかった。
本発明は、上記課題に鑑み、十分な耐水耐久性を有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水廻り部品にはアイゾット衝撃強度より、むしろ耐水圧性が重要であるが、アイゾット衝撃強度と耐水圧性は、必ずしも相関しないことを見出し、より水廻り部品に適した耐水圧性の高いポリアリーレンスルフィド組成物を得て、本発明を完成させた。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、以下に示す(A)、(B)及び(C)成分を含有し、(A)成分と(B)成分の総重量に占める(B)成分の量が、5重量%未満であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
(A)ポリアリーレンスルフィド
(B)エラストマー
(C)相溶化剤
本発明の第2の態様によれば、第1のポリアリーレンスルフィドと第2のポリアリーレンスルフィドを含み、第1のポリアリーレンスルフィドの樹脂温度310℃、せん断速度1200/sにおける溶融粘度が、500PaS以上であり、第1のポリアリーレンスルフィドと第2のポリアリーレンスルフィドの総重量に対する、第1のポリアリーレンスルフィドの添加量が20重量%以上であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提供される。
本発明の第3の態様によれば、上記のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物よりなる水廻り部品が提供される。
【0006】
【発明の実施の態様】
以下、本発明について詳細に説明する。
[第一の態様]
本発明の第一の態様である樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド(以下、PASという)、エラストマー及び相溶化剤を含む。
(A)成分であるPASは、特に制限はなく、直鎖型、セミリニア型、架橋型いずれも用いることができる。分子量の制限も特に無く、製品の性能を損なわない範囲で任意に選択することができる。
PASは、構造式−Ar−S−(ただしArはアリーレン基)で示される繰り返し単位を70モル%以上含有する重合体で、その代表的物質は、下記構造式(I)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1は炭素数6以下のアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子から選ばれる置換基であり、mは0〜4の整数である。また、nは平均重合度を示し10〜30の範囲である)で示される繰り返し単位を70モル%以上有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSという)である。
中でもα−クロロナフタレン溶液(濃度0.4g/dl)、206℃における対数粘度が0.1〜0.5(dl/g)、好ましくは0.13〜0.4(dl/g)、さらに好ましくは0.15〜0.35(dl/g)の範囲にあるものが適当である。
PASは一般にその製造法により実質上、線状で分岐、架橋構造を有しない分子構造のもの(直鎖型)と、分岐や架橋構造を有する構造のもの(分岐型)が知られているが、本発明においては、その何れのタイプのものについても有効であり、また、これらをブレンドしたものも用いることができる。
さらに、比較的低分子量の線状ポリマーを、酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも使用できる。
【0009】
本発明で使用する、好ましいPASは、繰り返し単位として、パラフェニレンスルフィド単位を70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有するホモポリマー又はコポリマーである。
共重合構成単位としては、例えばメタフェニレンスルフィド単位、オルソフェニレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンケトンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンスルホンスルフィド単位、p,p’−ビフェニレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンエーテルスルフィド単位、2,6−ナフタレンスルフィド単位等が挙げられる。
好ましくは、PPSは、直鎖型で、樹脂温度310℃、せん断速度1200/sでの溶融粘度が、80PaS以上である。このPPSを使用すると、高い靭性を得ることができる。
ここで、溶融粘度とは、キャピラリーレオメーターを使用して、樹脂温度310℃、せん断速度1200/sの条件で測定した値である。
【0010】
PASは、アルカリ金属硫化物とハロゲン化芳香族化合物とを反応させて製造する。好ましくは、PASを硫化リチウムと塩化芳香族化合物から製造する。
具体的には、特願平6−44892公報に記載されているように、非プロトン性有機溶媒と、水酸化リチウム(LiOH)又はN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)とが存在する系に、液状又は気体状の硫黄化合物を投入する。このとき、脱水することが好ましい。この後、硫黄分の調整後、塩化芳香族化合物を投入し、重縮合させる。
尚、溶融粘度は、重合時に重合時間、反応温度等を調整することにより制御できる。
【0011】
(B)成分であるエラストマーは、特に制限はなく、例えば、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ビニル共重合体系エラストマー、ジエン系エラストマー、シリコン系エラストマー等を挙げることができる。
【0012】
オレフィン系エラストマーとしては、α−オレフィン幹ポリマーに不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト共重合させたものも挙げることができる。α−オレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、等の重合体あるいはこれらの共重合体が挙げられ、不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水メチルマレイン酸、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。具体的には、その単量体成分がエチレン、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、及び無水マレイン酸の共重合体であって、各々繰り返し単位の含有割合が、50〜90重量%、5〜49重量%、0.5〜10重量%、好ましくは、60〜85重量%、7〜45重量%、1〜8重量%のエチレン系共重合体を挙げることができる。α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、炭素数が3〜8の不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルであって、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル等が挙げられる。このエチレン系共重合体ついては、MI(190℃、2.16kgの条件下での測定値)が、0.1〜1000のものが望ましい。好ましくは0.2〜500、さらに好ましくは1〜100である。
【0013】
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミドハードセグメントと他のソフトセグメントが結合したポリアミド系ブロック共重合体である。このようなソフトセグメントとしては、例えば、ポリアルキレンオキシド(アルキル基の炭素数2〜6)が代表的なものである。ハードセグメントとしてのポリアミド成分としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミドが挙げられ、ソフトセグメントとしてのポリエーテル成分としてはポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
ポリエステル系エラストマーとしては、ハードセグメントに高結晶性の芳香族ポリエステルを、ソフトセグメントに非晶性ポリエーテル又は脂肪族ポリエステルを使用したマルチブロックポリマーが用いられる。このようなハードセグメントとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のテレフタル酸系結晶性ポリエステルが挙げられ、ソフトセグメントとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の脂肪族ポリエーテル、又はシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピロメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等のグリコール類とから得られる脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0015】
ジエン系エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB、SEBC)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、又はエチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、又はこれらを変性したゴム等が挙げられる。
【0016】
また、ポリオルガノシロキサン系ゴムも挙げることができ、ポリオルガノシロキサンと架橋剤を共重合させたものが好ましい。ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられ、架橋剤としては、3官能性又は4官能性のシロキサン系架橋剤、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
好ましくは、オレフィン系エラストマーであり、特に好ましくは、無水マレイン酸変性したものである。
【0018】
PASとエラストマーの相溶性を改善するため、(C)成分として相溶化剤を配合する。相溶化剤としては、シラン化合物、エポキシ樹脂等がある。
シラン化合物としては、特に限定されないが、好ましくはエポキシシランエポキシ基を有するシラン化合物である。中でも、1分子中にエポキシ基を1個以上、かつSi−OR基(Rはアルキル基を示す)を1個以上有するシラン化合物が好適である。ここでRとしては、炭素数が1〜20のアルキル基が挙げられ、中でも炭素数が1〜10のものが好ましい。エポキシシランとしては、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を1個又は2個以上含むものであり、液体又は固体状のものを用いことができる。例えば、ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、等のビスフェノールのクリシジルエーテルや、ビスフェノールのかわりにハロゲン化ビスフェノールブタンジオールのジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系等のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、またジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロロヒドリンを反応させて得られるノボラック型エポキシ樹脂、或いは、これらに塩素、臭素等のハロゲン基、アルコキシ基、カルボキシル基、水酸基等が置換したものが挙げられる。上記ノボラック型フェノール樹脂としてはフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られるものが好適である。
シラン化合物、エポキシ樹脂は1種のみで使用してもよく、また複数を混合して用いることもできる。
その他、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等、反応性若しくは相溶性の高い官能基を複数含んでなる、PASとエラストマーを相溶化する効果のある物質であればよい。
【0020】
耐熱性、機械特性、寸法安定性等を改善するため、(D)成分として充填材を配合することが好ましい。充填材には目的に応じて繊維状、粉粒状、板状のものが用いられる。
繊維状充填材としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等、金属の繊維状物等の無機質繊維状物質を挙げることができる。特に代表的な繊維状充填材はガラス繊維、又はカーボン繊維である。尚、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機質繊維状物質も使用することができる。好ましくはガラス繊維である。
【0021】
一方、粉粒状充填物としてはカーボンブラック、溶融又は結晶シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、硅藻土、ウォラストナイトのような硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナのような金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属の硫酸塩、その他炭化珪素、窒化硼素、各種金属粉末を挙げることができる。
また、板状充填材としてはマイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等を挙げることができる。
【0022】
これらの充填材は、一種又は二種以上併用することができる。繊維状充填材、特にガラス繊維又は炭素繊維と粒状及び/又は板状充填材の併用は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。
これらの充填材の使用にあたっては、樹脂との接着性を良好にするために、カップリング剤等で表面処理を施したものを用いてもよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤の他、従来公知のカップリング剤の中から任意に選択して用いることができる。その他の成分の含有量は、この発明の目的を害しない範囲において適宜選択することができる。
【0023】
PAS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を添加してもよい。例えば、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、着色剤、可塑剤、導電性付与剤等の各種の添加剤、ポリアミド、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、種々の官能基を導入したシリコーンオイル、ポリオレフィン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、顔料等を挙げることができる。
【0024】
本発明における各成分の組成割合について、PASである(A)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計量中、95重量%より大きく、好ましくは、97重量%以上である。
エラストマーである(B)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計量中、5重量%未満、好ましくは、3重量%以下である。また、好ましくは1重量%以上である。5重量%以上では、耐熱性、弾性率、難燃性のようなPASを特徴づける性質が著しく低下し、1重量%未満では、耐衝撃、靱性の改良効果が不十分となる恐れがある。
【0025】
また、相溶化剤である(C)成分の添加量は、(A)成分と(B)成分との合計((A)+(B))100重量部に対して、好ましくは0.3〜3重量部、特に好ましくは、0.5〜1重量部である。
(C)成分の割合が、0.3重量部未満であると、相溶化剤としての働きが不十分であり、3重量部を超えると、粘度上昇、耐熱性や耐衝撃性の低下につながる場合がある。
【0026】
さらに、充填材である(D)成分の添加量は、組成物全体((A)+(B)+(C)+(D))中、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。10重量%より小さいと、機械的強度、弾性率等の改良効果が乏しく、50重量%より大きいと、流動性や成形性の低下を引き起こす場合がある。
【0027】
PAS樹脂組成物を製造する方法としては、特に制限はない。例えば、(A)、(B)及び(C)成分、さらに必要に応じて(D)成分等を、ヘンシェルミキサーのような混合機で、均一に混合したのち、一軸又は二軸混練押出機に供給し、280〜340℃の温度範囲下で溶融混練し、ペレットとして樹脂組成物を得ることができる。
このペレットを押出成形機、射出成形機等の樹脂成形機に供給し、各種樹脂成形品を製造することができる。
尚、(A)、(B)及び(C)成分、さらに必要に応じて(D)成分等を、直接、上記の成形機に投入して、樹脂成形品を得ることもできる。
【0028】
[第二の態様]
本発明の第二の態様である樹脂組成物は、第1のPASと第2のPASを含む樹脂組成物である。
第1のPASの樹脂温度310℃、せん断速度1200/sにおける溶融粘度が、500PaS以上、好ましくは600PaS以上である。溶融粘度が、500PaS未満では、高いウェルド強度が発現しない。
第2のPASは、特に限定されないが、好ましくは、樹脂温度310℃、せん断速度1200/sにおける溶融粘度は、10PaS〜200PaSである。
尚、この樹脂組成物は、第1のPASのみから構成されていてもよく、また、第1のPASと第2のPASの他に、複数種のPASを含有してもよい。
このようなPASは、前述の方法と同様にして重合できる。
【0029】
耐熱性、機械特性、寸法安定性等を改善するため、(D)成分として、第一の態様と同様の充填材を配合することが好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、第一の態様と同様の各種添加材等を含有させることもできる。
【0030】
第1のPASの添加量は、PASの合計量中、20重量%以上であり、好ましくは30重量%以上である。また、好ましくは90重量%以下である。20重量%未満では、高いウェルド強度を発現しない。
第2のPASの添加量は、PASの合計量中、80重量%以下であり、好ましくは70重量%以下である。また、好ましくは、10重量%以上である。
【0031】
また、充填材である(D)成分の添加量は、組成物全体(PAS+(D))中、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。10重量%より小さいと、機械的強度、弾性率等の改良効果が乏しく、50重量%より大きいと、流動性や成形性の低下を引き起こす場合がある。
樹脂組成物を製造する方法としては、第一の態様と同様の方法を使用できる。
【0032】
上記、第一の態様及び第二の態様のPAS樹脂組成物は、エラストマーを添加しないか、又は添加しても量が少ないため、PASの有する耐熱性、耐薬品性等の特性を保持している。また、静的な強度の低下や、エラストマーに起因する、ガスの発生、ウェルド強度の低下、成形性の低下もない。さらに、高いウェルド強度と、伸び・靭性を兼ね備え、加えて離型抵抗が少ない等、成形性にも優れている。
よって、具体的には、フィルム、シート、ロッド、電線被覆、ギヤ、カム、軸受け、ベアリング、バッキング、ガスケット、Oリング、ファスナー等の用途に使用でき、特に、バルブ、ジョイント、チューブ、ホース、パイプ、風呂関連部品、給水・給湯器関連部品等の水廻り部品に好適に使用できる。
【0033】
[第三の態様]
次に、本発明の第三の態様である水廻り部品について説明する。
上記、第一の態様又は第二の態様の樹脂組成物を成形加工して、水廻り部品を製造する。
成形機としては、特に限定されないが、例えば、押出成形機、射出成形機等が利用できる。
例えば、パイプやホース等を成形するときは、押出成形機を使用でき、各種ジョイント部等、複雑な形状を有する部品の成形には射出成形機を使用できる。
また、水廻り部品に要求される特性に応じて、発泡成形や、他の樹脂又は金属等とのインサート成形、多層成形、多色成形等の成形法も利用できる。
水廻り部品は、内部を通る水等の液体から受ける内圧に耐える耐水圧性が要求されるため、用いる樹脂組成物は、好ましくは、ウェルド強度が68MPa以上又は耐水圧性が85kg/cm2以上、より好ましくは、ウェルド強度が70MPa以上又は耐水圧性が90kg/cm2以上であることが好ましい。
本発明の水廻り部品は、上記の性質を有する樹脂組成物からなり、十分な耐水耐久性を有する。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
尚、各例で得られた樹脂組成物の評価は下記の通りである。
(1)引張り伸び
ASTM D638に従い、引張破壊伸びを測定した。
(2)曲げ試験
ASTM 790に従い測定した。
(3)アイゾット衝撃試験
ASTM D256に従い、ノッチあり及びノッチなしの試験片について行った。
(4)ウェルド強度
ASTM D638準拠の、引張ダンベル形状成形金型の両端にゲートを設け、中央部でウェルドを形成するようにした金型を用い、強度評価用成形品を作製した。得られた成形品を、ASTM D638に準拠し引張試験を行い、破断荷重をウェルド強度とした。
(5)耐水圧試験
図1は耐水圧試験の試験方法を説明するための図である。特定形状に成形した樹脂組成物の、各配管接続部1、3、5を真鍮7、9、11で栓をし、加圧ポンプ13で水を注入して徐々に内圧をかけて、成形品が破壊した際の圧力(kg/cm2)で評価した。圧力はブルトン管15にて測定した。
尚、図中の寸法の単位はミリメートルである。
【0035】
[製造例]
ポリアリーレンスルフィドの重合法
・直鎖型PPS(PPS−A)
攪拌機を備えた重合槽に含水硫化ナトリウム(NA2S・5H2O)8.3キロモル,塩化リチウム(LiCl)8.3キロモルとNMP5,000リットルを加え、減圧下で145℃に保ちながら1時間脱水処理をした。ついで反応系を45℃に冷却後パラジクロルベンゼン(DCB)8.3キロモルを加え、260℃で3時間重合した。内容物を熱水で5回、170℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で1回、水で3回洗い185℃で乾燥してPPSを得た。
得られたPPSの310℃、1,200/sにおける溶解粘度は700PaSであった。
・セミリニア型PPS(PPS−B)
ディーアイシー・イーピー社製のT−2を使用した。
・直鎖型PPS(PPS−C)
パラジクロロベンゼンを8.80キロモルに変えた以外は、PPS−Aと同じ条件で実施した。
【0036】
実施例1
製造例で重合したPPS−A79重量部と、同PPS−B21重量部、及びガラス繊維(旭ファイバーグラス製、JAFT591)を、PPS総量70重量%、ガラス繊維30重量%となるように、射出成形機(日本製鋼所製、型締力50トン、J50E−P)に投入し、樹脂組成物の成形品を作製した。
各種金型を使用して、ウェルド強度用成形品、耐水圧性試験用の成形品及びその他物性試験用成形品を作製した。
成形条件は、シリンダの設定温度320℃、金型温度は、キャビティー表面温度の測定値が135℃で行った。また、射出速度を30%設定とし、ストロークを調整、保圧は最少充填後にかかるよう設定し、設定値は充填圧の70%とした。
この成形品の引張伸び、曲げ試験、アイゾット衝撃試験、ウェルド強度及び耐水圧性試験の結果を表1に示す。
尚、以下の実施例及び比較例で、作製した樹脂組成物の配合、物性試験の結果も表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例2
PPS−AとPPS−Bの配合比を表1の通りに変更した他は、実施例1と同様にして各成形品を得た。
【0039】
実施例3
PPS−A50重量部、PPS−B47重量部、エラストマーとして、SEBS(旭化成製、タフテックM1943)3重量部及び相溶化剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3重量部を、これらの総量70重量%、ガラス繊維30重量%となるように、射出成形機に投入した他は、実施例1と同様にして、各成形品を得た。
【0040】
実施例4
PPS−A及びPPS−Bを、PPS−Cに変更した他は、実施例3と同様にして、各成形品を得た。
【0041】
実施例5
PPS−AとPPS−Bの配合比を表1の通りに変更し、相溶化剤(東亞合成株式会社製、レゼダGP−505)0.7重量部添加した他は、実施例3と同様にして各成形品を得た。
【0042】
実施例6
オレフィン系エラストマー(住友化学工業製、ボンダインAX8390)3重量部及び相溶化剤として、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(チバガイギー製、ECN1299)1重量部を使用した他は、実施例3と同様にして各成形品を得た。
【0043】
比較例1〜6
表1に示す配合比で、射出成形機に投入した他は、実施例1と同様にして各成形品を得た。
【0044】
実施例の樹脂組成物は、比較例と同程度の耐衝撃性を有し、かつ靭性、剛性、耐水圧性及びウェルド強度が優れていることが確認できた。測定結果からアイゾット衝撃値と、ウェルド強度又は耐水圧性は必ずしも相関するとは言えないことが分かった。
従って、実施例の樹脂組成物が、靭性、剛性、耐水圧性及びウェルド強度に優れ、水廻り部品用途に適していることが分かった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、耐水耐久性に優れるPAS樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐水圧試験の試験方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1、3、5 各配管接続部
7、9、11 真鍮栓
13 加圧ポンプ
15 ブルトン管
Claims (7)
- 以下に示す(A)、(B)及び(C)成分を含有し、前記(A)成分と前記(B)成分の総重量に占める前記(B)成分の量が、5重量%未満であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
(A)ポリアリーレンスルフィド
(B)エラストマー
(C)相溶化剤 - 前記ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記ポリフェニレンスルフィドが、直鎖型ポリフェニレンスルフィドであり、かつ前記直鎖型ポリフェニレンスルフィドの樹脂温度310℃、せん断速度1200/sにおける溶融粘度が、80PaS以上である請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- 第1のポリアリーレンスルフィドと第2のポリアリーレンスルフィドを含み、
前記第1のポリアリーレンスルフィドの樹脂温度310℃、せん断速度1200/sにおける溶融粘度が、500PaS以上であり、
前記第1のポリアリーレンスルフィドと前記第2のポリアリーレンスルフィドの総重量に占める、前記第1のポリアリーレンスルフィドの量が、20重量%以上であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。 - さらに、(D)充填剤を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- ウェルド強度が68MPa以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物よりなる水廻り部品。
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