JP2004292616A - (メタ)アクリル酸エステル系重合体、硬化性組成物、シーリング材及び接着剤 - Google Patents

(メタ)アクリル酸エステル系重合体、硬化性組成物、シーリング材及び接着剤 Download PDF

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Abstract

【課題】雰囲気中の湿気により硬化し、弾力性に優れ、透明性及び接着性に優れた加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体と併用されて、硬化物の長期間にわたる耐候性を高め得る(メタ)アクリル酸エステル系重合体、並びに該重合体を用いた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1つを有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、有機過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)、並びに該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)とを含む硬化性組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体並びに該重合体を含む硬化性組成物、シーリング材及び接着剤に関し、より詳細には、雰囲気中の湿気により硬化し、耐久性及び弾力性に優れた硬化物を与える加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と併用して用いられ、経時による黄変を抑制し得る(メタ)アクリル酸エステル系重合体、並びに該重合体を含む硬化性組成物、シーリング材及び接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルコキシシリル基を有するビニル重合体が、例えば、下記の特許文献1〜3に開示されている。アルコキシシリル基を有するビニル重合体は、雰囲気中の湿気により架橋し、耐久性、耐候性、透明性及び接着性に優れた硬化物を与える。従って、アルコキシシリル基含有ビニル重合体は、塗料、コーティング剤、接着剤、感圧接着剤、シーリング材、シーラントなどの広い用途に使用されている。
【0003】
上記ビニル重合体を含む接着剤やシーリング材は、露出される部分に用いられた場合、太陽光による紫外線や雨水により硬化物が劣化し、耐候性が低下することがあった。従来、耐候性を高めるために、紫外線吸収剤や酸化防止剤が上記シーリング材や接着剤に添加されていた。しかしながら、ビニル重合体の種類によっては、紫外線吸収剤や酸化防止剤が経時により硬化物からブリードアウトし、耐候性が低下することがあった。
【0004】
他方、下記の特許文献4には、耐候性を高めるために、加水分解性シリル基含有ビニル重合体の主鎖に紫外線吸収剤を共重合した構成が開示されている。しかしながら、特許文献4に記載の主鎖に紫外線吸収剤が共重合されている加水分解性シリル基含有ビニル重合体では、硬化物が経時により黄変するという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭57−179210号公報
【特許文献2】
特開平4−202585号公報
【特許文献3】
特開平11−43512号公報
【特許文献4】
特開平7−26155号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、雰囲気中の湿気により硬化する硬化性組成物において硬化物の耐候性を高めることを可能とする(メタ)アクリル酸エステル系重合体、並びに該重合体を含む硬化性組成物、シーリング材及び接着剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1つを有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、有機過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られたことを特徴とする。
【0008】
本発明の上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)と併用された場合、雰囲気中の湿気により硬化し、耐久性、透明性、接着剤に優れた硬化物を与え、該硬化物の耐候性をより一層高めることができる。
【0009】
本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)では、好ましくは、架橋可能な加水分解性シリル基を有するモノマーがさらに共重合され、それによって上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)自身が雰囲気中の湿気により硬化する。
【0010】
本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の数平均分子量は、好ましくは、5000〜20000の範囲とされる。
本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)のある特定の局面では、上記光安定性官能基がヒンダードアミン系官能基である。
【0011】
本発明に係る硬化性組成物は、本発明に従って構成された上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る硬化性組成物では、好ましくは、有機金属化合物からなる硬化促進剤がさらに含まれる。
本発明に係る硬化性組成物では、好ましくは、層状珪酸塩がさらに含有される。
【0013】
本発明に係る硬化性組成物のさらに他の特定の局面では、加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(c)がさらに含まれる。
本発明に係るシーリング材及び接着剤は、本発明に従って構成された硬化性組成物からなることを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の詳細を説明する。
((メタ)アクリル酸エステル系重合体(a))
本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1つを有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、有機過酸化物を重合開始剤して用いたラジカル重合により得られたものである限り、特に限定されるものではない。
【0015】
このような(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を得るに際しては、下記の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、還元性官能基、紫外線吸収性官能基、光安定性官能基の少なくとも1つを有し、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと共重合し得る下記の共重合性モノマーとをラジカル重合すればよい。
【0016】
本発明において、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されるわけではないが、下記の化合物を挙げることができる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸、
【0017】
Figure 2004292616
Figure 2004292616
Figure 2004292616
などを挙げることができる。
【0018】
また、本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を得るにあたって用いられるモノマーとしては、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーだけでなく、下記の共重合性モノマーを併用し、共重合してもよい。このような共重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物;n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシル、ビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物を挙げることができる。
【0019】
上記還元性、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1つを有する共重合性モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、もしくはポリ(メタ)アクリル酸エステルに(メタ)アクリルロイルオキシエチルイソシアン酸を反応させた化合物と、活性水素を有する水酸基もしくはアミノ基と還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び/または光安定性官能基とを有する化合物とのエステル化、アミド化、ウレタン化またはウレア化反応により得ることができる。また、市販の化合物としては、例えば、紫外線吸収性官能基を有する大塚化学社製、品番:RUVA−93[(2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール)]などを挙げることができる。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を得る別の方法として、(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸エステルに、(メタ)アクリルロイルオキシエチルイソシアン酸を共重合した後、活性水素を有する水酸基やアミノ基と、還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性基の少なくとも1種とを併せ持つ化合物とをエステル化、アミド化、ウレタン化またはウレア化反応させる方法が挙げられる。
【0021】
上記エステル化、アミド化、ウレタン化またはウレア化反応に用いる化合物としては、下記の化合物が挙げられる。
例えば、還元性官能基を有する化合物として、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオールビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、2,2−チオ−エチレンビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、N,N’−ヘキサメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0022】
紫外線吸収性官能基を有する化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)フェノール、2−エトキシ−2’−エチル−オキサリック酸ビスアニリド、2−ヒドロキシ−4−n−オクチル起オキシベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル フェニル ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等を挙げることができる。
【0023】
光安定性官能基を有する化合物としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−6−クロロ−1.3.5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を挙げることができる。
【0024】
好ましくは、上記光安定性官能基としてヒンダードアミン系官能基が用いられ、それによって紫外線等による硬化物の黄変をより一層確実に抑制することができる。
【0025】
アルコキシシリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量は、重合性モノマー100重量部に対し、0.01〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、有機過酸化物を重合開示剤として用いたラジカル重合法により得られる。有機過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合法により得られた上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、後述の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)と併用された際に、硬化物の黄変を抑制する。
【0027】
なお、上記有機過酸化物は、1種のみが用いられてもよく、複数種併用されてもよい。さらに、有機過酸化物は、逐次添加されてもよい。
上記有機過酸化物系重合系開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、イソノナノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパージカーボネート、ジ−sec−ブチルパージカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパージカーボネート、ジ−1−メチルヘプチルパージカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパージカーボネート、ジシクロヘキシルパージカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーアセテート、tert−ブチルパー−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーイソブチレート、tert−ブチルパーピバレート、tert−ブチルジパーアジペート、キュミルパーネオデカノエートなどのパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、tert−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド類;キュメンヒドロキシパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類などが挙げられる。
【0028】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)には、架橋可能な加水分解性シリル基を有するモノマーがさらに共重合されてもよい。架橋可能な加水分解性シリル基としては、アルコキシシリル基などを挙げることができる。
【0029】
本発明において、上記アルコキシシリル基は、ケイ素原子に1〜3個のアルコキシ基が結合した官能基である。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;メトキシジメトキシシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
【0030】
このようなアルコキシシリル基を有するモノマーとしては、アルコキシシリル基が導入された(メタ)アクリル酸エステルモノマーを挙げることができ、この場合アルコキシシリル基が導入される(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては特に限定されず、上述した還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1つが導入される(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして例示された化合物を用いることができる。
【0031】
架橋可能な加水分解性シリル基を有するモノマーがさらに共重合されている場合には、さらに、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)自身が、雰囲気中の湿気により硬化し、耐久性、透明性及び接着剤に優れた硬化物を与える。しかも、上記還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1種を有するため、また有機過酸化物を重合開始剤としてラジカル重合により得られたものであるため、耐候性が優れており、かつ硬化物の黄変を抑制することができる。
【0032】
((メタ)アクリル酸エステル系重合体(b))
本発明に係る硬化性組成物は、上述した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)とを含むことを特徴とする。架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)は、雰囲気中の湿気により架橋し、硬化し、耐久性、接着性及び弾力性に優れた硬化物を与える。また、本発明に係る硬化組成物では、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が含まれているので、還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の作用、並びに有機過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られたもののであるため、耐候性に優れかつ、黄変が生じ難い硬化物が得られる。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)は、加水分解性シリル基、例えばアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体であれば特に限定されない。好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)もまた、有機過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られたものが望ましく、それによって硬化物の黄変をより一層確実に抑制することができる。重合開始剤としての有機過酸化物としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の説明で例示した有機過酸化物を同様に用いることができる。
【0034】
また、アルコキシシリル基の導入法としては、アルコキシシリル基を持つ開始剤により重合を開始する方法、アルコキシシリル基を持つ連鎖移動剤を用いる方法、アルコキシシリル基を持つ共重合性モノマーを用いる方法による重合と同時にシリル基を導入する方法があり、(メタ)アクリルモノマーを過酸化物系開始剤を用い重合させながら導入させることができる。
【0035】
アルコキシリル基を導入する為の、連鎖移動剤や共重合性モノマーとしては、例えば、メルカプトメチルトリメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどの連鎖移動性の高い官能基を有するアルコキシシラン;N−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロペニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビンルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルジメチルイソペンテニルオキシシラン、ビニルジメチル−2−((2−エトキシエトキシ)エトキシ)シラン、ビニルトリス(1−メチルビニルオキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、フェニルビニルジエトキシシラン、ジフェニルビニルエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、オクタ−7−エニルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシランなどの重合性不飽和基を有するアルコキシシランなどを挙げることができる。
【0036】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)において上記アルコキシシリル基が導入される(メタ)アクリル酸エステルモノマーについては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)において還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1種が導入される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと同様のものを用いることができる。
【0037】
また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)を得るにあったて用いられるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーだけでなく、適宜の共重合性モノマーを併用し、共重合してもよい。このような共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)において用いられ得る前述の共重合性モノマーを用いることができる。
【0038】
アルコキシシリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量は、重合性モノマー100重量部に対し、0.01〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0039】
本発明に係る硬化性組成物では、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)とが含まれるが、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)100重量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、10〜1000重量部の割合で配合される。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の配合割合が10重量部未満では、耐候性を高める作用が充分でないことがあり、1000重量部を超えると還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の凝集力のため、もはや弾性を示さない場合がある。
【0040】
(粘度)
本発明の硬化性組成物を、液状あるいはペースト状組成物として用いるためには、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)または(b)のいずれかの25℃での粘度が10〜500000cpsであることが好ましい。双方が10cps未満の場合、取り扱い性に優れた液状組成物となるが、粘性調整によるチキソ性の付与が困難な場合がある。双方の粘度が500000cpsを越える場合、コールドフロー性を示す場合はあるが、塗布が困難となり、取り扱いの難しい組成物となる場合がある。従って、本発明の硬化性組成物を液状あるいはペースト状として用いる場合は、上記粘度範囲が好ましい。取り扱い易さの観点から、より好ましくは、いずれかの粘度が100〜50000cps、さらに好ましくは、1000〜30000cpsであることが好ましい。また、本発明の硬化性組成物において塗工性が良好な粘度範囲は、50〜500000cpsであり、好ましくは、100〜100000cpsである。
【0041】
((メタ)アクリル酸エステル系重合体(a),(b)の分子量)
本発明の硬化性組成物を、硬化物の伸びに優れ、糸引きのしにくい液状あるいはペースト状組成物として用いる為には、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a),(b)のいずれかの数平均分子量(GPCより求めたポリスチレン換算分子量)が、5000〜100000であることが望ましい。両者の数平均分子量が5000未満の場合、取り扱い易い液状組成物とはなるが、硬化物の伸びが十分得られないことがある。両者の分子量が100000を越える場合、硬化物の伸び物性に優れた組成物を容易に得ることは出来るが、糸引きの生じやすい液状組成物となる場合がある。
【0042】
従って、硬化物の伸びを高め、かつ糸引きのし難い液状あるいはペースト状組成物を得るには、上記数平均分子量の範囲が好ましい。硬化物の伸びに優れ、糸引きのしにくい液状を得るためには、より好ましくは、いずれかの数平均分子量が1000〜30000、さらに好ましくは、5000〜30000であることが好ましい。
【0043】
(硬化促進剤)
本発明に係る硬化性組成物では、硬化速度を高めるために、有機金属化合物からなる硬化促進剤を添加してもよい。
【0044】
好適に用いることの出来る有機金属化合物としては、ゲルマニウム、錫、鉛、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属元素と有機基を置換してなる有機金属化合物を挙げることが出来る。例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物などが挙げられ、これらは単独または2種以上を併用して使用することが出来る。
【0045】
上記硬化促進剤の配合割合は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)100重量部、または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が加水分解性シリル基を有する場合には(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a),(b)の合計100重量部に対し、0.01〜10重量部の範囲である。0.01重量部未満では、硬化促進効果が十分でなく、10重量部を越えると硬化が速くなりすぎることがあり、均一な硬化皮膜を得ることが困難となることがある。
【0046】
(層状珪酸塩)
本発明に係る硬化性組成物では、耐候性を高めるために層状珪酸塩が配合されてもよい。
【0047】
本発明で好ましくは用いられる層状珪酸塩とは、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。本発明で用いられる層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。中でも、モンモリロナイト、膨潤性マイカが好ましい。上記層状珪酸塩は天然物または合成物のいずれであってもよく、これらの1種または2種以上を用い得る。
【0048】
上記層状珪酸塩としては、下記式により定義される形状異方性効果が大きいスメクタイト類や膨潤性マイカを用いることが、硬化性組成物の機械強度向上やガスバリヤ性向上の点からより好ましい。なお、層状珪酸塩の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を図1に模式的に示す。
【0049】
形状異方性効果=結晶表面(A)の面積/結晶端面(B)の面積
【0050】
図2に示すように、上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンとは、結晶表面上のナトリウム、カルシウム等のイオンであり、これらのイオンは、カチオン性物質とイオン交換性を有するので、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に捕捉(インターカレート)することができる。
【0051】
上記層状珪酸塩の陽イオン交換容量としては特に限定されないが、50〜200ミリ等量/100gであるのが好ましい。50ミリ等量/100g未満であると、イオン交換により結晶層間に捕捉(インターカレート)できるカチオン性界面活性剤の量が少なくなるので、層間が十分に非極性化されないことがある。一方、200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の層間の結合力が強固となり、層状珪酸塩の各層を構成している結晶薄片間の距離を増大し難くなることがある。
【0052】
上記層状珪酸塩は、ベース樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部配合され、さらに好ましくは0.5〜50重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。0.1重量部未満では硬化物の耐候性向上や難燃化などの作用が発現され難く、10重量部を越えると、硬化性組成物の粘度が高くなり作業性、生産性が低下することがある。
【0053】
なお、ベース樹脂とは、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)及び(b)の合計、あるいは上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a),(b)と必要に応じて添加される後述のポリエーテル系重合体(c)の合計である。
【0054】
上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で存在しているものを含んで分散しているものが好ましい。平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で分散していると、硬化性組成物の耐候性、難燃性の性能発現に有利となる。
【0055】
なお、本明細書において、層状珪酸塩の平均層間距離とは、微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離であり、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影により、すなわち、広角X線回折測定法により算出できるものである。3nm以上に層間が開裂し、5層以下で存在しているものを含んで分散している状態は、層状珪酸塩の積層体の一部または全てが分散していることを意味しており、層間の相互作用が弱まっていることによる。
【0056】
さらに、層状珪酸塩の平均層間距離が6nm以上であると、難燃性、機械物性、耐熱性等の機能発現に特に有利である。平均層間距離が6nm以上であると、層状珪酸塩の結晶薄片層が層毎に分離し、層状珪酸塩の相互作用がほとんど無視できるほどに弱まるので、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の樹脂中での分散状態が剥離安定化の方向に進行する。すなわち、層状珪酸塩が1枚づつ薄片状に乖離した状態で硬化性組成物中に安定化されて存在することとなる。
【0057】
層状珪酸塩の分散状態としては、ベースとなる樹脂中において層状珪酸塩の薄片状結晶が高度に分散していることが好ましい。より具体的には、層状珪酸塩の10重量%以上が5層以下で存在している状態に分散されていることが好ましく、より好ましくは、層状珪酸塩の20重量%以上が5層以下の状態で存在していることが望ましい。さらに、分散している薄片状結晶の積層数が5層以下であれば、層状珪酸塩の添加による効果が良好に得られるが、3層以下であればより好ましく、単層状に分散していることがさらに望ましい。
【0058】
本発明の層状珪酸塩は、4級アンモニウム塩で処理されてなる層状珪酸塩であることが好ましい。4級アンモニウム塩で処理することにより、層状珪酸塩の上記ベース樹脂中への分散性を向上させることができるからである。また、4級アンモニウム塩は上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)の架橋反応に対する触媒作用があることが知られており、層状珪酸塩と共に上記ベース樹脂中に分散することにより分散性の向上と共に硬化速度を促進させることも可能となる。
【0059】
上記4級アンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。上記の中でも、良好な分散性が得られることから、炭素数6以上のアルキル鎖またはポリオキシアルキレン鎖を有する4級アルキルアンモニウムイオン塩が好ましい。
【0060】
層状珪酸塩の分散には各種攪拌機を用いることができるが、分散しにくい場合には3本ロール等の高剪断がかかる装置を用いて分散を行うと所望の分散状態を得やすい場合がある。
【0061】
(ポリエーテル系重合体(c))
本発明に係る硬化性組成物では、主鎖が本質的にポリエーテル系重合体からなり、架橋可能な加水分解性のシリル基を有するポリエーテル系重合体(c)が配合されてもよい。ポリエーテル系重合体(c)としては、主鎖が本質的にポリエーテル重合体からなるもの、主鎖がポリエーテルと(メタ)アクリル酸エステルとからなる重合体等が挙げられる。このポリエーテル系重合体を配合することにより、硬化物の耐水性を高めたり、シーリング材を構成した場合のゴム弾性を高めることができる。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a),(b)と、上記ポリエーテル系重合体(c)と併用する場合、その配合割合は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a),(b)の合計100重量部に対し、ポリエーテル系重合体(c)を0.1〜100重量部の割合で添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜100重量部である。
【0062】
ポリエーテル系重合体(c)の配合割合が0.1重量部未満では、接着性改善効果が小さくなることがあり、200重量部を越えると、耐候性が低くなることがあり、かつ接着性向上効果がそれほど高くならないことがある。
【0063】
上記ポリエーテル系重合体(c)とは、主鎖が本質的に、一般式〔−(R−O)−、式中のRは炭素数1〜4であるアルキレン基を示す。〕で表される化学的に結合された繰り返し単位を含み、かつ末端に架橋可能な加水分解性シリル基を含有する重合体をさす。
【0064】
上記重合体は、例えば、末端にアリル基を有するポリアルキレンオキサイドをVIII族遷移金属の存在化で下記化学式(1)により表されるヒドロシラン化合物を反応させることによって合成される。
【0065】
【化1】
Figure 2004292616
【0066】
(式中Rは1価の炭化水素基及びハロゲン化された1価の炭化水素基から選択される基、aは0、1または2の整数、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基及びケトキシメート基より選択される原子または基を意味する。)
上記重合体の主鎖であるポリアルキレンオキサイドとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等が挙げられるが、室温硬化性組成物の硬化物が耐水性に優れ、かつシーリング材としての弾性を確保できるという点でポリプロピレンオキサイドが好ましい。
【0067】
上記架橋可能な加水分解性シリル基としては、反応後有害な副生成物を生成しない物が好ましく、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基等のアルコキシシリル基が挙げられる。
【0068】
ポリエーテル系重合体(c)の数平均分子量が小さくなると、硬化物の伸びが十分でなくなり、目地面に対する追従性が低下し、大きくなると硬化前の粘度が高くなり、配合工程の作業性が悪くなる。従って、好ましくは、数平均分子量は、4000〜30000であり、さらに好ましくは10000〜30000であり、かつ分子量分布は1.6以下が望ましい。
【0069】
上記ポリエーテル系重合体(c)としては、例えば、商品名「MSポリマー」(鐘淵化学工業社製)として、MSポリマーS−203、S−303など、商品名「サイリルポリマー」(鐘淵化学工業社製)として、サイリルSAT−200、SAT−350、SAT−400や、商品名「エクセスター」(旭硝子社製)として、エクセスターESS−3620、ESS−3430、ESS−2420、ESS−2410などが市販されている。
【0070】
(紫外線吸収剤及び光安定剤)
本発明の硬化性組成物には、より耐候性を向上させるためにさらに各種紫外線吸収剤や光安定剤を配合することが好ましい。さらに添加される、紫外線吸収剤や光安定剤と、本発明の硬化性組成物中の紫外線吸収性官能基、光安定性官能基との構造が似ている場合には、これらが相互作用することにより、後に添加される紫外線吸収剤や光安定剤のブリードアウト速度が抑制される。そして、さらに層状珪酸塩との併用により、層状珪酸塩が各種紫外線吸収剤や光安定剤のブリードアウトを抑制するように作用するため、硬化物中にこれらが長期にわたって保持されるためである。
【0071】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系等の公知の紫外線吸収剤が挙げられ、中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が紫外線吸収性能が高いので好ましい。上記紫外線吸収剤を配合する場合には、上記ベース樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部、より好ましくは、0.5〜10重量部配合されているのが好ましい。0.1重量部よりも少ないと耐候性の向上効果が不十分であることがあり、20重量部を越えると、呈色によりシーリング材としての外観を損なう等の問題を生じる。
【0072】
上記光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤が用いられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、一般に紫外線吸収剤と併用すると優れた効果を発揮する。上記ヒンダードアミン系光安定剤(以下、光安定剤)の中でも、下記一般式(A)で示される構造を有する基を分子中に有するものが、層状珪酸塩と併用すると特に著しい効果がある。このようヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0073】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)や、層状珪酸塩との併用による耐候性効果は、光安定剤のブリードアウト防止効果が主であると考えられる。すなわち(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)や、層状珪酸塩が組成物中で光安定剤と相互作用し、光安定剤が系から散逸するのを防いでいる為であると考えられる。また、相互作用の中でも層状珪酸塩がブリードアウトを阻害する板のように作用することにより、光安定剤のブリードアウトが抑制されると考えられる。光安定剤の中でも下記一般式(A)で示される構造を有する基を分子中に有するものが特にその効果が著しいのは、N原子に結合したH原子が関与しているものと推察される。
【0074】
【化2】
Figure 2004292616
【0075】
上記光安定剤を配合する場合には、上記ベース樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部配合されているのが好ましい。0.1重量部よりも少ないと、耐候性の向上効果が不十分であることがあり、20重量部を越えると着色の問題が生じ、シーリング材としての外観を損なうことがある。
【0076】
(他の成分)
本発明に係る硬化性組成物では、さらに、本発明の目的及び効果を阻害しない限り、硬化触媒、硬化助触媒、粘度調整剤、チキソトロープ剤、物性調整剤、増量剤、補強剤、可塑剤、着色剤、難燃剤、タレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、溶剤、香料、顔料、染料、脱水剤などを添加してもよい。
【0077】
硬化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物;ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のアミン塩;及び、その他の酸性触媒や塩基性触媒が挙げられる。また、硬化速度を調整するために、硬化速度の比較的速い2価の有機カルボン酸錫を用いてもよく、これらとしては、ステアリン酸錫、スタナスオクトエート、ジオクチル系の錫化合物が挙げられる。
【0078】
粘度調整剤としては、例えば、アルコキシシリル基を有する実質(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとする繰り返し単位から成る重合体との相溶性の良い高分子化合物から選ばれ、配合される化合物から適宜選択される。例えば、アクリル系高分子、メタクリル系高分子、ポリビニルアルコール誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、NBR、SBS、SIS、SEBS、水添NBR、水添SBS、水添SIS、水添SEBSなどを挙げることができる。また、これら共重合体、官能基変成体を挙げることができし、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0079】
チキソトロープ剤としては、組成物がチキソトロピー性を発現するような物質から適宜選ばれる。例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等を挙げることができる。チキソトロープ剤の選択については、アルコキシシリル基を有する実質(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとする繰り返し単位から成る重合体との親和性の高い表面を有することが望ましい。
【0080】
引っ張り特性等を改善する物性調整剤としては、各種シランカップリング剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N′−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N′−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N′−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン、N,N′−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミンなどを挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0081】
増量剤としては、本発明に係る組成物中に添加してチキソトロープ性を発現しないものが好適に利用でき、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラックなどを挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0082】
可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル類、グリセリンモノオレイル酸エステルなどの脂肪酸−塩基酸エステル類、アジピン酸ジオクチルなどの脂肪酸二塩基酸エステル類、ポリプロピレングリコール類などを挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0083】
本発明に係る硬化性組成物は、雰囲気中の湿気と反応して硬化し、ゴム弾性を有する硬化物を与える。そして、後述の実施例からも明らかなように、上記特定の繰り返し単位からなり、過酸化物を重合開始剤として用いたフリーラジカル重合法により得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とするため、硬化物の耐候性に優れており、かつ黄変も生じ難い。従って、本発明に係る硬化性組成物を用いて、耐候性に優れ、着色状態が経時により変化し難い、シーリング材や接着剤を提供することができる。
【0084】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
(参考例1、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の調製)
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)95g、メタクリルロイルオキシエチルイソシアン酸(昭和電工社製)5.0g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)5.0g及び酢酸エチル100gを投入して、混合した。モノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら環流に達するまでに昇温した。
【0086】
環流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。1時間後、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.036gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。さらに、重合開始後、2、3及び4時間後、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g,0.12g,及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(チバスペシャリティーケミカル、IRGANOX 1010)2g、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チバスペシャリティーケミカル、TINUVIN 327)2g、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバスペシャリティーケミカル、TINUVIN770)2gを添加し、更に3時間反応後、室温まで冷却し反応を終了させた。数平均分子量約3000(ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる、分子量はポリスチレン換算)の還元性官能基と、紫外線吸収性官能基と、光安定性官能基とを含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を得た。
【0087】
(参考例2、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)の調製)
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)100g、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−503)0.5g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−803)0.2g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.2g及び酢酸エチル100gを投入して、混合した。モノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら環流に達するまでに昇温した。環流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。1時間後、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.036gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。さらに、重合開始後、2、3及び4時間後、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g,0.12g,及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。数平均分子量約3万(ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる、分子量はポリスチレン換算)のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)の酢酸エチル溶液を得た。
【0088】
(参考例3、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a1)の調製)
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)95g、メタクリルロイルオキシエチルイソシアン酸(昭和電工社製)5.0g、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−503)0.5g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−803)0.2g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.2g及び酢酸エチル100gを投入して、混合した。モノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら環流に達するまでに昇温した。
【0089】
環流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。1時間後、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.036gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。さらに、重合開始後、2、3及び4時間後、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g,0.12g, 及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。
【0090】
一回目の重合開始剤投入から7時間後、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(チバスペシャリティーケミカル、IRGANOX 1010)2g、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チバスペシャリティーケミカル、TINUVIN 327)2g、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバスペシャリティーケミカル、TINUVIN770)2gを添加し、更に3時間反応後、室温まで冷却し反応を終了させた。数平均分子量約3万(ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる、分子量はポリスチレン換算)の還元性官能基と、紫外線吸収性官能基と光安定性官能基と、アルコキシシリル基とを含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a1)の酢酸エチル溶液を得た。
【0091】
(実施例1)
上記参考例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)60gと、参考例2で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)140gとを混合した後、ロータリーエバポレターを用いて酢酸エチルを除去し、下記の表1に示す組成の硬化性組成物得た。この硬化性組成物に、さらに、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名:ホワイトンP−30)80gと、脂肪酸処理炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名:ビスコライトU)20gと、酸化チタン(和光純薬社製)10gとを加え、硬化促進剤(和光純薬社製、ジブチル錫ジラウリレート)2gとを加え、密封した攪拌機で均一になるまで混合し、しかる後、10分間減圧脱泡することにより白色ペースト状の硬化性組成物を得た。このようにして得られた硬化性組成物の耐候性時間及び伸び物性を以下の要領で評価した。結果を下記の表1に示す。
【0092】
(耐候性)
硬化性組成物を50mm×厚み1mmのステンレス板に0.5mmの厚みで塗布し、20℃及び相対湿度50%の雰囲気下で7日間養生した後、下記の条件で耐候促進試験を行い、表面状態を目視で確認した。クラックが観察される至った時間を耐候性時間として評価した。
【0093】
耐候促進試験条件:
試験装置、岩崎電気株式会社製 アイスーパーUVテスター(SUV−F11型)
照射強度、100mW/cm
限定波長、295nm 450nm
照射距離、235mm(光源と試料間)
ブラックパネル温度、63℃
【0094】
(伸び物性)
硬化性組成物をポリエチレン板上に塗布厚み2mmになるように塗工し、20℃及び相対湿度50%の雰囲気下で7日間養生させた後、得られたゴム状のシートをJIS K 6301に準じ、3号ダンベル形状でクロスヘッド速度500mm/分で引っ張り試験を行い、破断伸び(%)と破断応力(N/mm)を評価した。
【0095】
(実施例2,3及び比較例1,2)
実施例1と同様の操作により、下記の表1に示す組成となるように各成分を配合し、溶剤を除去した後、さらに、実施例1の場合と同様に、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名:ホワイトンP−30)80gと、脂肪酸処理炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名:ビスコライトU)20gと、酸化チタン(和光純薬社製)10gとを加え、さらに硬化促進剤(和光純薬社製、ジブチル錫ジラウリレート)2gとを加え、密封された攪拌機で均一になるまで混合し、しかる後、10分間減圧脱泡し、白色ペースト状の硬化性組成物を得た。このようにして得られた硬化性組成物について実施例1と同様にして評価した。結果を下記の表1に示す。
【0096】
【表1】
Figure 2004292616
【0097】
(実施例4)
硬化性組成物調製の際に、層状珪酸塩ソマシフMPE−100(ポリオキシプロピレンジエチル4級アンモニウム塩で有機処理した膨潤性フッ素雲母、コープケミカル社製)10g、チヌビン770(ヒンダードアミン系光安定剤、チバスペシャリティーケミカルズ社製)5g、チヌビン327(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チバスペシャリティーケミカルズ社製)5gを加えたこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0098】
〔層状珪酸塩の平均層間距離の測定〕
実施例4で得られた硬化性組成物における層状珪酸塩の平均層間距離を以下のようにして測定した。
【0099】
X線回折測定装置(リガク社製、RINT1100)により、層状珪酸塩の積層面の回折により得られる回折ピークの2θを測定し、下記のブラックの回折式を用いて層状珪酸塩の(001)面間隔を算出した。以下のdを平均層間距離とし、平均層間距離が3nm以上と良好に分散していた。
【0100】
λ=2dsinθ
なお、式中において、λ(nm)=0.154、d(nm)二層状珪酸塩の面間隔、θ(度)は回折角である。
【0101】
〔層状珪酸塩の分散状態の確認〕
透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製「JEM−1200EX II」)写真により、硬化物中の層状珪酸塩の分散状態を観察して、5層以下で存在していた。
【0102】
耐候性評価
〔評価〕
上記実施例4で得られた硬化性組成物の耐候性を実施例1と同様にして評価した結果、500時間経過した時点でもクラックは発生しなかった。
【0103】
【発明の効果】
本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)では、還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1つが含有されており、かつ有機過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られているため、架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)と併用された場合、硬化性組成物は雰囲気中の湿気により速やかに硬化し、弾力性、耐久性及び接着性に優れているだけでなく、硬化物の耐候性を効果的に高めることができる。
【0104】
すなわち、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)とを含む硬化性組成物では、硬化物が弾力性、耐久性、透明性及び接着性に優れているだけでなく、長期間にわたる耐候安定性が効果的に得られるため、耐候性に優れたシーリング材、接着剤あるいはコーティング剤を本発明に従って提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】層状珪酸塩の薄片状結晶の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を説明するための模式図。
【図2】層状珪酸塩の層間の交換性陽イオンを説明するための模式図。

Claims (10)

  1. 還元性官能基、紫外線吸収性官能基及び光安定性官能基の少なくとも1つを有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、有機過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られたことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル系重合体。
  2. 架橋可能な加水分解性シリル基を有するモノマーがさらに共重合されている請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル系重合体。
  3. 数平均分子量5000〜20000の範囲にある請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸エステル系重合体。
  4. 前記光安定性官能基がヒンダードアミン系官能基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステル系重合体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、架橋可能な加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(b)とを含むことを特徴とする硬化性組成物。
  6. 有機金属化合物からなる硬化促進剤をさらに含む、請求項5に記載の硬化性組成物。
  7. 層状珪酸塩をさらに含むことを特徴とする請求項5または6に記載の硬化性組成物。
  8. 加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(c)をさらに含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
  9. 請求項5〜8のいずれかに記載の硬化性組成物からなるシーリング材。
  10. 請求項5〜8のいずれかに記載の硬化性組成物からなる接着剤。
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