JP4796735B2 - シーリング材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、周囲の湿気により架橋し、耐久性に優れた硬化物を与える(メタ)アクリル酸エステル系重合体を用いたシーリング材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル重合体を主成分とする硬化性組成物が種々提案されている。(例えば、下記特許文献1〜3など)これらの硬化性組成物は、雰囲気の湿気により架橋し、耐久性、耐候性、透明性及び接着性に優れた硬化物を与える。そのため、上記硬化性組成物は、塗料、コーティング剤、接着剤、感圧接着剤、シーラント及びシーリング材などの様々な用途に用いられている。
【0003】
上記(メタ)アクリル重合体は、公知の方法により製造され得る。例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法及びリビングラジカル重合法などの様々な重合方法が、モノマーの重合性反応に応じて適宜選択される。
【0004】
また、アルコキシシリル基の導入法としては、アルコキシシリル基を有する開始剤により重合を開始する方法、アルコキシシリル基を有する連鎖移動剤を用いる方法、アルコキシシリル基を持つ共重合性モノマーを用いることにより、重合と同時にアルコキシシリル基を導入する方法(例えば、下記特許文献1,4〜6)、アルケニル基を有するビニル重合体を合成し、しかる後、ヒドロシリル化によってアルコキシシリル基を導入する方法(例えば、下記特許文献7,8)などが挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
特開昭57−179210号公報
【特許文献2】
特開平4−202585号公報
【特許文献3】
特開平11−43512号公報
【特許文献4】
特開昭54−123192号公報
【特許文献5】
特開昭59−78220号公報
【特許文献6】
特開昭60−23405号公報
【特許文献7】
特開昭54−40893号公報
【特許文献8】
特開平11−80571号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル重合体を得るにあたっては、フリーラジカル重合法が広く用いられてきている。しかしながら、フリーラジカル重合によりアルコキシシリル含有(メタ)アクリル重合体を得るに際しては、重合開始剤としてアゾ系開始剤が用いられていた。そのため、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル重合体に、充填材や顔料のような添加物を加えずに硬化させた場合には、目視的に透明な皮膜が得られるものの、シート状になってから長時間経過すると黄変するという問題があった。従って、顔料や着色剤を配合して淡色系の着色を施した場合、当初の色合いを長期間維持することが困難なことがあった。
【0007】
本発明の目的は、硬化物の経時による黄変が生じ難く、着色硬化物を得ようとした場合の着色の安定性に優れているアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体を用いたシーリング材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るシーリング材は、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを除く)と、メルカプトメチルトリメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランの内の少なくとも1種の連鎖移動剤とを含有するモノマー組成を、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類及びハイドロパーオキサイド類からなる群から選択された少なくとも1種の過酸化物を重合開始剤として用いた溶液重合法により重合することにより得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、有機金属化合物からなる硬化促進剤とを含むことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は、5000〜200000の範囲である。
本発明に係るシーリング材のある局面では、該シーリング材は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とすることを特徴とする。
【0013】
以下、本発明の詳細を説明する。
((メタ)アクリル酸エステル系重合体)
本発明に係るアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくともアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有するモノマー組成を、過酸化物を重合開始剤として用いたフリーラジカル重合法により重合することにより得られたものである。
【0014】
上記重合体は、少なくともアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有する重合体であれば、特に制限されるものではない。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は、凝集力と、接着性及び硬化物の伸びとのバランスに優れているため、数平均分子量が5000〜200000の範囲であることが望ましい。なお、(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルの双方を含む表現として用いられている。
【0015】
本発明において、上記アルコキシシリル基は、ケイ素原子に1〜3個のアルコキシ基が結合した官能基である。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などを挙げることができる。アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;メトキシジメトキシシリル基、エトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらの各アルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよし、異なるアルコキシ基を複数個組み合わせて用いてもよい。
【0016】
また、アルコキシシリル基の導入法としては、アルコキシシリル基を持つ開始剤による重合を開始する方法、アルコキシシリル基を持つ連鎖移動剤を用いる方法、アルコキシシリル基を持つ共重合性モノマーを用いる方法による重合と同時にシリル基を導入する方法があり、(メタ)アクリルモノマーを過酸化物系開始剤を用い重合させながら導入させることができる。
【0017】
アルコキシリル基を導入する為の、連鎖移動剤や共重合性モノマーとしては、例えば、メルカプトメチルトリメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどの連鎖移動性の高い官能基を有するアルコキシシラン;N−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロペニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビンルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルジメチルイソペンテニルオキシシラン、ビニルジメチル−2−((2−エトキシエトキシ)エトキシ)シラン、ビニルトリス(1−メチルビニルオキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、フェニルビニルジエトキシシラン、ジフェニルビニルエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、オクタ−7−エニルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシランなどの重合性不飽和基を有するアルコキシシランなどを挙げることができる。
【0018】
本発明において、上記アルコキシシリル基が導入される(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されるわけではないが、下記の化合物を挙げることができる。
【0019】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸、
[化合物1]
CH2=CH−C(O)O−CH2CH2O−[C(O)CH2CH2CH2CH2CH2O]n−H
(n=1〜10)
[化合物2]
CH2=C(CH3)−C(O)O−CH2CH2O−[C(O)CH2CH2CH2CH2CH2O]n−H
(n=1〜10)
[化合物3]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−H
(n=1〜12)
[化合物4]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−H
(n=1〜12)
[化合物5]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−H
(n=1〜12)
[化合物6]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−H
(n=1〜12)
[化合物7]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−[CH2CH(CH3)O]m−H
(m,n=1〜12)
[化合物8]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−[CH2CH(CH3)O]m−H
(m,n=1〜12)
[化合物9]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−(CH2CH2CH2CH2O)mH
(m,n=1〜12)
[化合物10]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−(CH2CH2CH2CH2O)mH
(m,n=1〜12)
[化合物11]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−CH3
(n=1〜10)
[化合物12]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−CH3
(n=1〜30)
[化合物13]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−CH3
(n=1〜10)
[化合物14]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−CH3
(n=1〜10)
[化合物15]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−[CH2CH(CH3)O]m−H
(m,n=1〜10)
[化合物16]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−[CH2CH(CH3)O]m−H
(m,n=1〜10)
[化合物17]
CH2=CH−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−C(O)−CH=CH2
(n=1〜20)
[化合物18]
CH2=C(CH3)−C(O)O−[CH2CH(CH3)O]n−C(O)−C(CH3)=CH2
(n=1〜20)
[化合物19]
CH2=CH−C(O)O−(CH2CH2O)n−C(O)−CH=CH2
(n=1〜20)
[化合物20]
CH2=C(CH3)−C(O)O−(CH2CH2O)n−C(O)−C(CH3)=CH2
(n=1〜20)
などを挙げることができる。
【0020】
また、本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るにあたって用いられるモノマーとしは、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーだけでなく、下記の共重合性モノマーを併用し、共重合してもよい。このような共重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物;n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシル、ビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物を挙げることができる。
【0021】
アルコキシシリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量は、重合性モノマー100重量部に対し、0.01〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0022】
本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、過酸化物を重合開始剤として用いたフリーラジカル重合法により得られるが、この重合開始剤としての過酸化物としては、下記の化合物を用いることができる。なお、過酸化物は、1種のみが用いられてもよく、複数種併用されてもよい。さらに、過酸化物は、逐次添加されてもよい。
【0023】
ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、イソノナノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパージカーボネート、ジ−sec−ブチルパージカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパージカーボネート、ジ−1−メチルヘプチルパージカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパージカーボネート、ジシクロヘキシルパージカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーアセテート、tert−ブチルパー−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーイソブチレート、tert−ブチルパーピバレート、tert−ブチルジパーアジペート、キュミルパーネオデカノエートなどのパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、tert−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド類;キュメンヒドロキシパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;
【0024】
(硬化性組成物)
本発明に係る硬化性組成物は、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とする硬化性組成物である。速やかな硬化を得るために、有機金属化合物からなる硬化促進剤をさらに加えてもよい。
【0025】
好適に用いることの出来る有機金属化合物としては、ゲルマニウム、錫、鉛、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属元素と有機基を置換してなる有機金属化合物を挙げることが出来る。例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物、これらは単独または2種以上を併用して使用することが出来る。
【0026】
上記硬化促進剤の配合割合は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量部に対し、0.01〜10重量部の範囲である。0.01重量部未満では、硬化促進効果が十分でなく、10重量部を越えると硬化が速くなりすぎることがあり、均一な硬化皮膜を得ることが困難となることがある。
【0027】
本発明に係る硬化性組成物では、耐候性を高めるために層状珪酸塩が配合されてもよい。
本発明で好ましくは用いられる層状珪酸塩とは、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。本発明で用いられる層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。中でも、モンモリロナイト、膨潤性マイカが好ましい。上記層状珪酸塩は天然物または合成物のいずれであってもよく、これらの1種または2種以上を用い得る。
【0028】
上記層状珪酸塩としては、下記式により定義される形状異方性効果が大きいスメクタイト類や膨潤性マイカを用いることが、硬化性組成物の機械強度向上やガスバリヤ性向上の点からより好ましい。なお、層状珪酸塩の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を図1に模式的に示す。
【0029】
形状異方性効果=結晶表面(A)の面積/結晶端面(B)の面積
図2に示すように、上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンとは、結晶表面上のナトリウム、カルシウム等のイオンであり、これらのイオンは、カチオン性物質とイオン交換性を有するので、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に捕捉(インターカレート)することができる。
【0030】
上記層状珪酸塩の陽イオン交換容量としては特に限定されないが、50〜200ミリ等量/100gであるのが好ましい。50ミリ等量/100g未満であると、イオン交換により結晶層間に捕捉(インターカレート)できるカチオン性界面活性剤の量が少なくなるので、層間が十分に非極性化されないことがある。一方、200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の層間の結合力が強固となり、層状珪酸塩の各層を構成している結晶薄片間の距離を増大し難くなることがある。
【0031】
上記層状珪酸塩は、ベース樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部配合され、さらに好ましくは0.5〜50重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。0.1重量部未満では硬化物の耐候性向上や難燃化などの作用が発現され難く、10重量部を越えると、硬化性組成物の粘度が高くなり作業性、生産性が低下することがある。
【0032】
なお、ベース樹脂とは、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体、あるいは上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体と必要に応じて添加される後述のポリエーテル系有機重合体の合計である。
【0033】
上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で存在しているものを含んで分散しているものが好ましい。平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で分散していると、硬化性組成物の耐候性、難燃性の性能発現に有利となる。
【0034】
なお、本明細書において、層状珪酸塩の平均層間距離とは、微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離であり、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影により、すなわち、広角X線回折測定法により算出できるものである。3nm以上に層間が開裂し、5層以下で存在しているものを含んで分散している状態は、層状珪酸塩の積層体の一部または全てが分散していることを意味しており、層間の相互作用が弱まっていることによる。
【0035】
さらに、層状珪酸塩の平均層間距離が6nm以上であると、難燃性、機械物性、耐熱性等の機能発現に特に有利である。平均層間距離が6nm以上であると、層状珪酸塩の結晶薄片層が層毎に分離し、層状珪酸塩の相互作用がほとんど無視できるほどに弱まるので、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の樹脂中での分散状態が剥離安定化の方向に進行する。すなわち、層状珪酸塩が1枚づつ薄片状に乖離した状態で硬化性組成物中に安定化されて存在することとなる。
【0036】
層状珪酸塩の分散状態としては、ベースとなる樹脂中において層状珪酸塩の薄片状結晶が高度に分散していることが好ましい。より具体的には、層状珪酸塩の10重量%以上が5層以下で存在している状態に分散されていることが好ましく、より好ましくは、層状珪酸塩の20重量%以上が5層以下の状態で存在していることが望ましい。さらに、分散している薄片状結晶の積層数が5層以下であれば、層状珪酸塩の添加による効果が良好に得られるが、3層以下であればより好ましく、単層状に分散していることがさらに望ましい。
【0037】
本発明の層状珪酸塩は、4級アンモニウム塩で処理されてなる層状珪酸塩であることが好ましい。4級アンモニウム塩で処理することにより、層状珪酸塩の上記ベース樹脂中への分散性を向上させることができるからである。また、4級アンモニウム塩は上記有機重合体の架橋反応に対する触媒作用があることが知られており、層状珪酸塩と共に上記ベース樹脂中に分散することにより分散性の向上と共に硬化速度を促進させることも可能となる。
【0038】
上記4級アンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。上記の中でも、良好な分散性が得られることから、炭素数6以上のアルキル鎖またはポリオキシアルキレン鎖を有する4級アルキルアンモニウムイオン塩が好ましい。
【0039】
層状珪酸塩の分散には各種攪拌機を用いることができるが、分散しにくい場合には3本ロール等の高剪断がかかる装置を用いて分散を行うと所望の分散状態を得やすい場合がある。
【0040】
本発明に係る硬化性組成物では、主鎖が本質的にポリエーテル系重合体からなり、架橋可能な加水分解性のシリル基を有する有機重合体が配合されてもよい。ポリエーテル系重合体としては、主鎖が本質的にポリエーテル重合体からなるもの、主鎖がポリエーテルと(メタ)アクリル酸エステルとからなる重合体等が挙げられる。この有機重合体を配合することにより、硬化物の耐水性を高めたり、シーリング材を構成した場合のゴム弾性を高めることができる。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、上記ポリエーテル系の有機重合体と併用する場合、その配合割合は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量部に対し、ポリエーテル系の有機重合体を0.1〜100重量部の割合で添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜100重量部である。
【0041】
ポリエーテル系の有機重合体の配合割合が0.1重量部未満では、接着性改善効果が小さくなることがあり、200重量部を越えると、耐候性が低くなることがあり、かつ接着性向上効果がそれほど高くならないことがある。
【0042】
上記ポリエーテル系の有機重合体とは、主鎖が本質的に、一般式〔−(R−O)n−、式中のRは炭素数1〜4であるアルキレン基を示す。〕で表される化学的に結合された繰り返し単位を含み、かつ末端に架橋可能な加水分解性シリル基を含有する重合体をさす。
【0043】
上記重合体は、例えば、末端にアリル基を有するポリアルキレンオキサイドをVIII族遷移金属の存在化で下記化学式(1)により表されるヒドロシラン化合物を反応させることによって合成される。
【0044】
【化1】
【0045】
(式中R1は1価の炭化水素基及びハロゲン化された1価の炭化水素基から選択される基、aは0、1または2の整数、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基及びケトキシメート基より選択される原子または基を意味する。)
上記重合体の主鎖であるポリアルキレンオキサイドとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等が挙げられるが、室温硬化性組成物の硬化物が耐水性に優れ、かつシーリング材としての弾性を確保できるという点でポリプロピレンオキサイドが好ましい。
【0046】
上記架橋可能な加水分解性シリル基としては、反応後有害な副生成物を生成しない物が好ましく、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基等のアルコキシシリル基が挙げられる。
【0047】
有機重合体の数平均分子量が小さくなると、硬化物の伸びが十分でなくなり、目地面に対する追従性が低下し、大きくなると硬化前の粘度が高くなり、配合工程の作業性が悪くなる。従って、好ましくは、数平均分子量は、4000〜30000であり、さらに好ましくは10000〜30000であり、かつ分子量分布は1.6以下が望ましい。
【0048】
上記有機重合体としては、例えば、商品名「MSポリマー」(鐘淵化学工業社製)として、MSポリマーS−203、S−303など、商品名「サイリルポリマー」(鐘淵化学工業社製)として、サイリルSAT−200、SAT−350、SAT−400や、商品名「エクセスター」(旭硝子社製)として、エクセスターESS−3620、ESS−3430、ESS−2420、ESS−2410などが市販されている。
【0049】
本発明に係る硬化性組成物では、さらに、本発明の目的及び効果を阻害しない限り、硬化触媒、硬化助触媒、増粘剤、チキソトロープ材、物性調整剤、増量剤、補強剤、可塑剤、着色剤、難燃剤、タレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、溶剤、香料、顔料、染料などを添加してもよい。
【0050】
硬化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物;ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のアミン塩;及び、その他の酸性触媒や塩基性触媒が挙げられる。また、硬化速度を調整するために、硬化速度の比較的速い2価の有機カルボン酸錫を用いてもよく、これらとしては、ステアリン酸錫、スタナスオクトエート、ジオクチル系の錫化合物が挙げられる。
【0051】
増粘剤としては、例えば、アルコキシシリル基を有する実質(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとする繰り返し単位から成る重合体との相溶性の良い高分子化合物から選ばれ、配合される化合物から適宜選択される。例えば、アクリル系高分子、メタクリル系高分子、ポリビニルアルコール誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、NBR、SBS、SIS、SEBS、水添NBR、水添SBS、水添SIS、水添SEBSなどを挙げることができる。また、これら共重合体、官能基変成体を挙げることができし、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0052】
チキソトロープ材としては、組成物がチキソトロピー性を発現するような物質から適宜選ばれる。例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等を挙げることができる。チキソトロープ剤の選択については、アルコキシシリル基を有する実質(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとする繰り返し単位から成る重合体との親和性の高い表面を有することが望ましい。
【0053】
引っ張り特性等を改善する物性調整剤としては、各種シランカップリング剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N′−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N′−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N′−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン、N,N′−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミンなどを挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0054】
増量剤としては、本発明に係る組成物中に添加してチキソトロープ性を発現しないものが好適に利用でき、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラックなどを挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0055】
可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル類、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル類、グリセリンモノオレイル酸エステルなどの脂肪酸−塩基酸エステル類、アジピン酸ジオクチルなどの脂肪酸二塩基酸エステル類、ポリプロピレングリコール類などを挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0056】
本発明に係る硬化性組成物は、雰囲気中の湿気と反応して硬化し、ゴム弾性を有する硬化物を与える。そして、後述の実施例からも明らかなように、上記特定の繰り返し単位からなり、過酸化物を重合開始剤として用いたフリーラジカル重合法により得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とするため、硬化物の経時による黄変が生じ難い。従って、本発明に係る硬化性組成物を用いて、黄変が生じ難く、かつ着色状態が経時により変化し難い、シーリング材や接着剤を提供することができる。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[参考例1]
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた2Lのセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート100g、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、品番:KBM−503)0.5g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、品番:KBM−803)0.2g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.1g及び酢酸エチル100gを投入して、混合した。モノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら環流に達するまでに昇温した。
【0059】
環流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。1時間後、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.036gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。さらに、重合開始後、2、3及び4時間後に、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g,0.12g,及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液をそれぞれ投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。数平均分子量約5万(ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる、分子量はポリスチレン換算)のアルコキシシリル基含有アクリル重合体の酢酸エチル溶液を得た。
【0060】
[参考例2]
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた2Lのセパラブルフラスコに、酢酸エチル100gを投入し、撹拌・窒素パージしながら、還流するまで昇温した後、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル0.2gを5gの酢酸エチルに溶解した溶液を添加し、n−ブチルアクリレート100g、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、品番:KBM−503)5.0g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)5.0gの混合液を、2時間掛けて滴下し重合させた。滴下終了後3時間後に、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル0.2gを5gの酢酸エチルに溶解した溶液をさらに滴下し、その後、更に2時間、還流させた。その後、室温まで冷却し重合を終了させた。数平均分子量約5万(ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる、分子量はポリスチレン換算)のアルコキシシリル基含有反応性希釈剤の酢酸エチル溶液を得た。
【0061】
[実施例1]
参考例1で得られた過酸化物系開始剤により得られた重合体の酢酸エチル溶液100gからロータリーエバポレターを用いて酢酸エチルを除いて、粘調な液状の硬化性組成物を得た。得られた液状の硬化性組成物に、硬化促進剤(ジブチル錫ジラウリレート)2gを加え、密封した攪拌・脱泡機で均一になるまで混合し、透明で粘調な室温硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物をポリエチレン板上に、膜厚が1.0mmとなるように塗工し、その後、20℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生して、ゴム状のシート皮膜を得た。シート皮膜のゴム物性は、破断伸びで350%と破断応力で0.157N/mm2であった。下記に示した方法で、黄変を観察したところ、硬化前の重合体及び養生後のシート皮膜のいずれにおいても、黄変を認めることはできなかった。
【0062】
[比較例1]
参考例2で得られたアゾ系開始剤により得られた重合体の酢酸エチル溶液100gからロータリーエバポレターを用いて酢酸エチルを除いて、粘調な液状の硬化性組成物を得た。得られた液状の硬化性組成物に、硬化促進剤(ジブチル錫ジラウリレート)2gを加え、密封した攪拌・脱泡機で均一になるまで混合し、透明で粘調な室温硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物をポリエチレン板上に、膜厚が1.0mmとなるように塗工し、その後、20℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生して、ゴム状のシート皮膜を得た。シート皮膜のゴム物性は、破断伸びで330%と破断応力で0.118N/mm2であった。下記に示した方法で、黄変を観察したところ、硬化前の重合体及び養生後のシート皮膜のいずれもにおいても、黄変していた。
【0063】
評価方法
[ゴム物性]
20℃、相対湿度50%雰囲気下で7日間養生させた実施例及び比較例で得られたゴム状シートをJIS K 6301に準じて、3号ダンベル形状でクロスヘッドスピード500mm/分で引っ張り試験を行い、破断伸び(%)と破断応力(N/mm2)を評価した。
【0064】
[黄変性評価1]
溶剤を除去した参考例1及び2で得られた重合体を、100mLのガラス瓶にいれ、30℃で180日間養生した後、目視で色具合を見た。
【0065】
[黄変性評価2]
硬化したシート皮膜を、100℃のオーブン中で、30日間養生した後の外観を目視観察した。
【0066】
【発明の効果】
本発明に係る(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくともアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有するモノマー組成を、過酸化物を重合開始剤として用いたフリーラジカル重合法により重合することにより得られたものであるため、硬化物が経時により黄変し難い。従って、透明性に優れ、あるいは着色安定性に優れた硬化物を与えることができる。
【0067】
本発明に係る上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、雰囲気中の湿気と反応して硬化し、弾性を有する硬化物を与える。従って、上記黄変の経時による着色の変化が生じ難い、一液型の湿気硬化型の室温硬化性組成物として好適に用いられる。
【0068】
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量が5000〜200000の場合には、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の凝集力と、接着性及び硬化物の伸びとのバランスが高められる。
【0069】
本発明に係る硬化性組成物は、本発明の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とするため、透明性に優れ、あるいは着色安定性に優れた硬化物を得ることができる。また、有機基を有する有機金属化合物からなる硬化促進剤が含まれている場合には、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体が硬化促進剤の作用により速やかに雰囲気中の湿気と反応して硬化し、弾性を有する硬化物を与える。しかも、上記のように該硬化物の経時による黄変や着色の変化が生じ難い。
【0070】
本発明に係る硬化性組成物において、層状珪酸塩がさらに配合されている場合には、硬化物の耐候性を効果的に高めることができる。特に、紫外線吸収剤や光安定剤がさらに配合されている場合には、層状珪酸塩自体の耐候性向上効果に加えて、層状珪酸塩が光安定剤や紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制するため、光安定剤及び紫外線吸収剤作用による耐候性向上効果が高められ、耐候性が著しく高められる。
【0071】
主鎖が本質的にポリエーテル系重合体からなり、架橋可能な加水分解性シリル基を有する有機重合体がさらに配合されている場合は、硬化物の耐水性や伸びを高めることができる。
【0072】
本発明に係るシーリング材及び接着剤は、本発明に係る硬化性組成物からなるため、硬化後の経時による黄変が生じ難く、かつ着色の変化が生じ難い。従って、本発明に係るシーリング材及び接着剤は、特に、外部に露出する部分に適用される用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】層状珪酸塩の薄片状結晶の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を説明するための模式図。
【図2】層状珪酸塩の層間の交換性陽イオンを説明するための模式図。
Claims (3)
- 少なくともアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを除く)と、メルカプトメチルトリメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランの内の少なくとも1種の連鎖移動剤とを含有するモノマー組成を、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類及びハイドロパーオキサイド類からなる群から選択された少なくとも1種の過酸化物を重合開始剤として用いた溶液重合法により重合することにより得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、
有機金属化合物からなる硬化促進剤とを含む、シーリング材。 - 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、数平均分子量が5000〜200000の範囲にある請求項1に記載のシーリング材。
- 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のシーリング材。
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