JP2004292608A - 硬化性組成物 - Google Patents

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Koji Fukui
弘司 福井
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Abstract

【課題】湿気により速やかに硬化し、柔軟性に富んだ硬化物を与える硬化性組成物であって、貯蔵性に優れており、さらにハネムーン接着方法に用いるのに適し、接着もしくはシーリング作業を容易に行うことができる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体(a)を含有するA液と、酸性リン酸基を有するビニル系重合体(b)を含有するB液とからなる二液型の硬化性組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性組成物、該硬化性組成物を用いた接着構造体、シーリング材、接着剤、シーリング方法及び接着方法に関し、特に、架橋可能な加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体を用いた硬化性組成物であって、貯蔵性に優れ、かつ接着作業性に優れた硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルコキシシリル基のような加水分解性シリル基を有する化合物と、該化合物を硬化させる架橋剤とからなる硬化組成物が種々提案されている(例えば、下記の特許文献1、特許文献2など)。
【0003】
加水分解性シリル基を有する化合物のシリル基を加水分解・脱水縮合し、架橋させる架橋剤は、空気中の湿気による架橋反応を触媒作用させるものである。このような架橋剤として、上記特許文献1,2には、有機錫や有機チタンのような有機金属触媒、あるいは酸もしくは塩基が記載されている。
【0004】
上記加水分解性シリル基を有する化合物を湿気により架橋することにより得られた硬化物は、柔軟性に優れている。従って、上記硬化性組成物は、歪みを吸収しなければならない接合箇所や歪みの履歴を受ける接合箇所、あるいは耐衝撃性または耐クリープ性が要求される接合箇所に接着剤として頻繁に利用されている。また、同様の応力を受けるシーリング箇所にも、上記硬化性組成物はシーリング材として多用されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭56−67366号公報
【特許文献2】
特開昭57−155250号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した加水分解性シリル基を有する化合物を用いた硬化性組成物は、実質的に空気中の湿気により架橋または硬化する。そのため、該硬化性組成物は、貯蔵時には湿気を遮断するように貯蔵されねばならない。ところが、空気中の湿気を目視により確認することは困難である。また、湿気を遮断する必要があるため、上記硬化性組成物は、気密容器などを用いて保管しなければならなかった。
【0007】
従って、上記硬化性組成物からなる接着剤やシーリング材は、現場での施工用として利用されることが多かった。すなわち、上記硬化性組成物を用いた接着剤やシーリング材を、長時間開放されている生産ラインなどで用いることは困難であった。
【0008】
他方、従来より、接合を速やかに完了し得る接着剤として、いわゆるハネムーン型接着剤が知られている。ハネムーン型接着剤は、主剤と硬化剤とを有する。主剤が一方の被着体に塗布され、硬化剤が他方の被着体に塗布される。しかる後、双方の基材が貼り合わされて、硬化が進行し、接合が完了される。
【0009】
しかしながら、加水分解性シリル基を有する化合物と、該化合物の架橋剤とを用いて上記ハネムーン型接着剤を構成した場合には、架橋剤が低分子架橋剤である場合、架橋剤と主剤が完全に混合しないために両剤が拡散する前に硬化皮膜が生成し、架橋剤が塗布された被着体との間に未架橋部分が残存する。従って、加水分解性シリル基を有する化合物に予め架橋剤を混合した後、接着剤として使用した場合に比べて、ハネムーン型接着剤として加水分解性シリル基を有する化合物と架橋剤とを用いた場合には、接着力が充分でなかった。すなわち、上記加水分解性シリル基含有化合物と、その架橋剤とからなる二液型の硬化性組成物は、ハネムーン型接着剤として用いるには充分ではなかった。
【0010】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、架橋可能な加水分解性シリル基を有するビニル系重合体と、該ビニル系重合体を硬化させる硬化剤とからなる硬化性組成物であって、二液型の硬化性組成物とすることにより貯蔵が容易であり、かつ上記ハネムーン型接着剤として好適に用いられ、優れた接着強度を発現し得る硬化性組成物、該硬化性組成物を用いた接着構造体、シーリング剤、接着剤、シーリング方法及び接着方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る硬化性組成物は、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体(a)を含有するA液と、酸性リン酸基を有するビニル系重合体(b)を含有するB液とからなる二液型の硬化性組成物である。
【0012】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、上記ビニル系重合体(a)に加えて、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(c)がさらにA液に配合されている。
【0013】
本発明に係る硬化性組成物では、好ましくは、A液及び/またはB液に層状珪酸塩がさらに配合される。
本発明に係る硬化性組成物では、上記架橋可能な加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体(a)及び/または酸性リン酸基を有するビニル系重合体(b)は、好ましくは、開始剤として有機過酸化物を用いたラジカル重合により得られた重合体により構成される。
【0014】
本発明に係る接着構造体は、一方の被着体の接着面にA液が塗布され、他方の被着体の接着面に上記B液が塗布され、双方の被着体が貼り合わされて構成されている。
【0015】
本発明に係るシーリング材は、本発明に従って構成された硬化性組成物からなることを特徴とするシーリング材であり、本発明に係る接着剤は、本発明に従って構成された硬化性組成物からなることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るシーリング方法は、本発明の硬化性組成物の上記B液をシーリング部分に塗布した後、上記A液をシーリング部分に充填することを特徴とする。
本発明に係る接着方法のある特定の局面では、一方の被着体に上記硬化性組成物の上記A液が塗布され、他方の被着体に上記B液が塗布され、しかる後A液とB液とが接触するように双方に被着体が貼り合わされる。すなわち、本発明の硬化性組成物を用いてハネムーン接着方法により接着が行われる。
【0017】
もっとも、本発明では、上記A液とB液とが予め混合され、しかる後混合されたA液及びB液が貼り合わされるべき被着体の少なくとも一方に塗布された後、双方の被着体が貼り合わされてもよい。
【0018】
以下、本発明の詳細を説明する。
(ビニル系重合体(a))
本発明で用いられる少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)は、加水分解性シリル基を有する限り、特に制限されるものではない。上記加水分解性シリル基は、珪素原子に1〜3個のシリル基が結合した官能基であり、シリル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができる。アルコキシ基の結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基等のジメトキシシリル基;メトキシジメトキシシリル基、エトキシジメチルシリル基等の単官能の加水分解性シリル基を挙げることができる。これらを複数個組み合わせて用いてもよく、異なる加水分解性シリル基を複数個組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記ビニル系重合体を構成しているビニル重合体部分としては、ビニルモノマーを重合して得られる重合体であれば良く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル等を挙げることができる。また、これらビニル重合体部分を有する共重合体であっても良い。好適には、凝集力や接着性とのバランスの良い数平均分子量10000以上のポリ(メタ)アクリレートやその共重合体が良い。ここで、(メタ)アクリルとはメタクリルとアクリルをまとめて示した表現である。
【0020】
ポリ(メタ)アクリレートやその共重合体を得るためのモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2ーブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシー3ーメチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3ーフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸、
Figure 2004292608
Figure 2004292608
Figure 2004292608
等を挙げることができる。
【0021】
その他のビニルモノマーとして、例えば、スチレン、インデン、αーメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニル等のビニルエステル基を持つ化合物;無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等のビニロキシ基を持つ化合物を挙げることができる。
【0022】
ビニル重合体の製法は、公知の方法を用いることができる。例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等を用いることができ、かつモノマーの重合性反応に応じて適宜重合法を選択すればよい。
【0023】
また、架橋可能な加水分解性シリル基の導入法としては、架橋可能な加水分解性シリル基を持つ開始剤による重合を開始する方法、架橋可能な加水分解性シリル基を持つ連鎖移動剤を用いる方法、架橋可能な加水分解性シリル基を持つ共重合性モノマーを用いる方法による重合と同時にシリル基を導入する方法(例えば、特開昭54−123192号公報、特開昭57−179210号公報、特開昭59−78220号公報、特開昭60−23405号公報)や、アルケニル基の持ったビニル重合体を合成し、その後、ヒドロシリル化によってアルコキシシリル基を導入する方法(例えば、特開昭54−40893号公報、特開平11−80571号公報)がある。本発明を構成するビニル系重合体(a)の製造方法は、ビニル系重合体(a)が得られる限り何等問題なく、上述の様な公知の製造技術を用いることができる。
【0024】
架橋可能な加水分解性シリル基を導入する為の、連鎖移動剤や共重合性モノマーとしては、例えば、メルカプトメチルトリメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、等の連鎖移動性の高い官能基を有するアルコキシシラン;N−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロペニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビンルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルジメチルイソペンテニルオキシシラン、ビニルジメチル−2−((2−エトキシエトキシ)エトキシ)シラン、ビニルトリス(1−メチルビニルオキシ)シラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、フェニルビニルジエトキシシラン、ジフェニルビニルエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、オクタ−7−エニルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、等の重合性不飽和基を有するアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0025】
上記加水分解性シリル基を導入するための連鎖移動剤や共重合性モノマーの配合量は、ビニル系の重合性モノマー100重量部に対し、0.01〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0026】
(酸性リン酸基を有するビニル系重合体(b))
本発明において、上記B液を構成する、酸性リン酸基を有するビニル系重合体(b)は、前述したビニル系重合体(a)と同様の製造方法により得ることができるものである。もっとも、ビニル系重合体(b)は、シリル基を有しないビニルモノマーと、酸性リン酸基含有モノマーとの共重合により得られる。
【0027】
ビニル系重合体(b)中の酸性リン酸基当量(ポリスチレン換算の重合体数平均分子量/酸性リン酸基の個数)は、500〜50000の範囲が好ましい。500未満の場合には、リン酸基による極性が極めて高くなり、ビニル系重合体(a)との相溶性が著しく低下することがある。また、酸性リン酸基当量が50000を超えると、リン酸基の数が著しく少なくなるため、速やかに硬化しないことがある。より好ましくは、酸性リン酸基当量は1000〜30000の範囲である。
【0028】
上記ビニル系重合体(b)を得るにあたって用いられる酸性リン酸基含有モノマーとしては、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学社製、商品名:ライトエステルP−1M)、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(共栄社化学社製、商品名:ライトエステルP−2M)、あるいは他の市販のモノマーとして、日本化薬社製、KAYAMERPM−2、KAYAMER PM−21などが挙げられる。
【0029】
また、シリル基を有しないビニルモノマーとしては、上述したビニル系重合体(a)を得るのに用いられたビニルモノマーの内、シリル基を有しない適宜のビニルモノマーを用いることができる。
【0030】
上記ビニル系重合体(b)の分子量は、数平均分子量で、2000〜50000の範囲が好ましい。2000未満では、重合体(b)の凝集力が著しく低くなり、50000を超えると凝集力が著しく増し、重合体(a)との拡散が困難となることがある。
【0031】
本発明において、上記ビニル系重合体(a)及び/または上記ビニル系重合体(b)は、好ましくは、過酸化物を重合開始剤として用いたフリーラジカル重合法により得られる。このビニル系重合体(a)を重合する場合には、硬化物の黄変を、アゾ化合物を用いた場合に比べて抑制することができるため特に好ましい。
【0032】
上記重合開始剤としての過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、イソノナノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパージカーボネート、ジ−sec−ブチルパージカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパージカーボネート、ジ−1−メチルヘプチルパージカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパージカーボネート、ジシクロヘキシルパージカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーアセテート、tert−ブチルパー−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーイソブチレート、tert−ブチルパーピバレート、tert−ブチルジパーアジペート、キュミルパーネオデカノエートなどのパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、tert−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド類;キュメンヒドロキシパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類などが挙げられる。
【0033】
上記重合開始剤としての過酸化物は、1種のみが用いられてもよく、複数種併用されてもよい。さらに、上記過酸化物は、一度に添加されてもよく、複数回に渡って逐次添加されてもよい。
【0034】
(少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するポリエーテル系重合体(c))
本発明では、好ましくは、ポリエーテル系重合体(c)をA液及び/またはB液に添加することにより、硬化物の耐水性を高めたり、シーリング材を構成した場合のゴム弾性を高めることができる。
【0035】
ビニル系重合体(a)及び/またはビニル系重合体(b)とポリエーテル系重合体(c)を併用する場合、その配合割合は、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、ポリエーテル系重合体(c)0.1〜200重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜100重量部である。
【0036】
ポリエーテル系重合体(c)の配合割合が0.1重量部未満では、接着性改善効果が小さくなることがあり、200重量部を越えると、耐候性が低くなることがあり、かつ接着性向上効果がそれ程高くならないからである。
【0037】
ポリエーテル系重合体(c)とは、主鎖が本質的にポリエーテル系重合体であり、かつ末端に架橋可能な加水分解性シリル基を含有するポリエーテル系重合体(c)であって、主鎖が本質的に、一般式〔−(R−O)−、式中のRは炭素数1〜4であるアルキレン基を示す。〕で表される化学的に結合された繰り返し単位を含み、かつ末端に架橋可能な加水分解性シリル基を含有する重合体をさす。またポリエーテル系重合体(c)は、主鎖が本質的にポリエーテルと(メタ)アクリル酸エステルとからなる共重合体であってもよい。
【0038】
上記ポリエーテル系重合体(c)は、例えば、末端にアリル基を有するポリアルキレンオキサイドをVIII族遷移金属の存在化で下記化学式(1)により表されるヒドロシラン化合物を反応させることによって合成される。
【0039】
【化1】
Figure 2004292608
【0040】
(式中Rは1価の炭化水素基及びハロゲン化された1価の炭化水素基から選択される基、aは0、1または2の整数、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基及びケトキシメート基より選択される原子または基を意味する。)
上記ポリエーテル系重合体(c)の主鎖であるポリアルキレンオキサイドとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等が挙げられるが、室温硬化性組成物の硬化物が耐水性に優れ、かつシーリング材としての弾性を確保できるという点でポリプロピレンオキサイドが好ましい。
【0041】
上記架橋可能な加水分解性シリル基としては、反応後有害な副生成物を生成しない物が好ましく、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基等のアルコキシシリル基が挙げられる。
【0042】
ポリエーテル系重合体(c)の数平均分子量が小さくなると、硬化物の伸びが十分でなくなり、目地面に対する追従性が低下し、大きくなると硬化前の粘度が高くなり、配合工程の作業性が悪くなる。従って、好ましくは、数平均分子量は、4000〜30000であり、さらに好ましくは10000〜30000であり、かつ分子量分布は1.6以下が望ましい。
【0043】
上記ポリエーテル系重合体(c)としては、例えば、商品名「MSポリマー」(鐘淵化学工業社製)として、MSポリマーS−203、S−303など、商品名「サイリルポリマー」(鐘淵化学工業社製)として、サイリルSAT−200、SAT−350、SAT−400や、商品名「エクセスター」(旭硝子社製)として、エクセスターESS−3620、ESS−3430、ESS−2420、ESS−2410などが市販されている。
【0044】
(層状珪酸塩)
本発明で好ましくは用いられる層状珪酸塩とは、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。本発明で用いられる層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。中でも、モンモリロナイト、膨潤性マイカが好ましい。上記層状珪酸塩は天然物または合成物のいずれであってもよく、これらの1種または2種以上を用い得る。
【0045】
上記層状珪酸塩としては、下記式により定義される形状異方性効果が大きいスメクタイト類や膨潤性マイカを用いることが、硬化性組成物の機械強度向上やガスバリヤ性向上の点からより好ましい。なお、層状珪酸塩の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を図1に模式的に示す。
【0046】
形状異方性効果=結晶表面(A)の面積/結晶端面(B)の面積
図2に示すように、上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンとは、結晶表面上のナトリウム、カルシウム等のイオンであり、これらのイオンは、カチオン性物質とイオン交換性を有するので、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に捕捉(インターカレート)することができる。
【0047】
上記層状珪酸塩の陽イオン交換容量としては特に限定されないが、50〜200ミリ等量/100gであるのが好ましい。50ミリ等量/100g未満であると、イオン交換により結晶層間に捕捉(インターカレート)できるカチオン性界面活性剤の量が少なくなるので、層間が十分に非極性化されないことがある。一方、200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の層間の結合力が強固となり、層状珪酸塩の各層を構成している結晶薄片間の距離を増大し難くなることがある。
【0048】
上記層状珪酸塩は、上記A液及び/またはB液に好ましくは配合される。すなわち、層状珪酸塩はA液のみに配合されてもよく、B液のみに配合されてもよく、A液及びB液の双方に配合されてもよい。
【0049】
上記層状珪酸塩の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは、上記ビニル系重合体(a)及びビニル系重合体(b)の合計100重量部に対し、0.1〜100重量部の割合で配合されることが望ましく、より好ましくは、0.5〜50重量部、特に好ましくは、1〜10重量部である。0.1重量部未満では、硬化物の耐候性向上や難燃性などの作用が発現され難く、10重量部を超えると、硬化性組成物全体の粘度が高くなり、作業性、生産性が低下することがある。
【0050】
上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で存在しているものを含んで分散しているものが好ましい。平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で分散していると、硬化性組成物の耐候性、難燃性の性能発現に有利となる。
【0051】
なお、本明細書において、層状珪酸塩の平均層間距離とは、微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離であり、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影により、すなわち、広角X線回折測定法により算出できるものである。3nm以上に層間が開裂し、5層以下で存在しているものを含んで分散している状態は、層状珪酸塩の積層体の一部または全てが分散していることを意味しており、層間の相互作用が弱まっていることによる。
【0052】
さらに、層状珪酸塩の平均層間距離が6nm以上であると、難燃性、機械物性、耐熱性等の機能発現に特に有利である。平均層間距離が6nm以上であると、層状珪酸塩の結晶薄片層が層毎に分離し、層状珪酸塩の相互作用がほとんど無視できるほどに弱まるので、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の樹脂中での分散状態が剥離安定化の方向に進行する。すなわち、層状珪酸塩が1枚づつ薄片状に乖離した状態で硬化性組成物中に安定化されて存在することとなる。
【0053】
層状珪酸塩の分散状態としては、ベースとなる樹脂中において層状珪酸塩の薄片状結晶が高度に分散していることが好ましい。より具体的には、層状珪酸塩の10重量%以上が5層以下で存在している状態に分散されていることが好ましく、より好ましくは、層状珪酸塩の20重量%以上が5層以下の状態で存在していることが望ましい。さらに、分散している薄片状結晶の積層数が5層以下であれば、層状珪酸塩の添加による効果が良好に得られるが、3層以下であればより好ましく、単層状に分散していることがさらに望ましい。
【0054】
(ビニル系重合体(a)とビニル系重合体(b)との割合)
本発明に係る硬化性組成物は、上記A液と、B液とからなる二液型の硬化性組成物である。二液を混合して用いる場合、A液に含まれるビニル系重合体(a)と、B液に含まれるビニル系重合体(b)との割合は、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、ビニル系重合体(b)は、1〜30重量部の割合とすることが望ましい。1重量部未満では、もはや硬化しなくなることがあり、30重量部を超えると、著しく硬化が早くなり、混合する前に硬化してしまう場合がある。より好ましくは、5〜20重量部の範囲である。
【0055】
(その他の添加物)
本発明の硬化性組成物には、本発明の目的より効果を阻害しない限り、ビニル系重合体(a)の硬化促進剤、組成物の粘性特性を調整する粘度調整剤、チキソトロープ剤、引張特性などを改善する物性調整剤、増量剤、補強剤、可塑剤、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、たれ防止剤、老化防止剤、溶剤、香料、顔料、染料、脱水剤などを添加してもよい。
【0056】
ビニル系重合体(a)の硬化促進剤としては、例えば、有機金属化合部を用いることができる。好適に用いることの出来る有機金属化合物として、ゲルマニウム、錫、鉛、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属元素と有機基を置換してなる有機金属化合物を挙げることが出来る。例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物、これらは単独または2種以上を併用して使用することが出来る。
【0057】
粘度調整剤としては、例えば、ビニル系重合体(a)との相溶性の良い高分子化合物から選ばれ、配合される化合物から適宜選択される。例えば、アクリル系高分子、メタクリル系高分子、ポリビニルアルコール誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン誘導体、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリイソブテン、ポリオレフィン類、ポリアルキレンオキシド類、ポリウレタン類、ポリアミド類、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、NBR、SBS、SIS、SEBS、水添NBR、水添SBS、水添SIS、水添SEBS等を挙げることができる。また、これら共重合体、官能基変成体を挙げることができし、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0058】
チキソトロープ剤としては、組成物がチキソトロピー性を発現するような物質から適宜選ばれる。例えば、コロイダルシリカ、ポリビニルピロリドン、疎水化炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ等を挙げることができる。チキソトロープ剤の選択については、ビニル系重合体(a)親和性の高い表面を有することが望ましい。
【0059】
引っ張り特性等を改善する物性調整剤としては、各種シランカップリング剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン、N,N’−ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサエチレンジアミン等を挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0060】
増量剤としては、本発明に係る組成物中に添加してチキソトロープ性を発現しないものが好適に利用でき、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0061】
可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類、グリセリンモノオレイル酸エステル等の脂肪酸−塩基酸エステル類、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル類、ポリプロピレングリコール類等を挙げられ、これらは単独または2種以上併用してもかまわない。
【0062】
(紫外線吸収剤及び光安定剤)
本発明の硬化性組成物には、耐候性を向上させるために各種紫外線吸収剤や光安定剤を配合することが好ましい。層状珪酸塩との併用により、層状珪酸塩が各種紫外線吸収剤や光安定剤のブリードアウトを抑制するように作用するため、硬化物中にこれらが長期にわたって保持されるためである。
【0063】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の公知の紫外線吸収剤が挙げられ、中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が紫外線吸収性能が高いので好ましい。上記紫外線吸収剤を配合する場合には、上記有機重合体、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及び/または変性ポリサルファイド樹脂からなるベース樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部、より好ましくは、0.5〜10重量部配合されているのが好ましい。0.1重量部よりも少ないと耐候性の向上効果が不十分であることがあり、20重量部を越えると、呈色によりシーリング材としての外観を損なう等の問題を生じる。
【0064】
上記光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤が用いられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、一般に紫外線吸収剤と併用すると優れた効果を発揮する。上記ヒンダードアミン系光安定剤(以下、光安定剤)の中でも、下記一般式(A)で示される構造を有する基を分子中に有するものが、層状珪酸塩と併用すると特に著しい効果がある。このようヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0065】
層状珪酸塩との併用による耐候性効果は、光安定剤のブリードアウト防止効果が主であると考えられる。すなわち層状珪酸塩が組成物中で光安定剤と相互作用し、光安定剤が系から散逸するのを防いでいる為であると考えられる。また、相互作用の中でも層状珪酸塩がブリードアウトを阻害する板のように作用することにより、光安定剤のブリードアウトが抑制されると考えられる。光安定剤の中でも下記一般式(A)で示される構造を有する基を分子中に有するものが特にその効果が著しいのは、N原子に結合したH原子が関与しているものと推察される。
【0066】
【化2】
Figure 2004292608
【0067】
上記光安定剤を配合する場合には、上記有機重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部配合されているのが好ましい。0.1重量部よりも少ないと、耐候性の向上効果が不十分であることがあり、20重量部を越えると着色の問題が生じ、シーリング材としての外観を損なうことがある。
【0068】
(接着剤及びシーリング材としての応用)
本発明に係る硬化性組成物は、上記A液と、B液とからなる二液型の接着剤またはシーリング材として好適に用いられる。
【0069】
本発明に係る硬化性組成物をシーリング材として用いる場合、A液とB液のそれぞれの塗布される順番は特に限定されず、好ましくは、B液がシーリング部分に塗布された後、A液がシーリング部分に充填される。B液を先に塗布し、A液をその後に充填することにより、全体を均一に硬化することができ、望ましい。
【0070】
また、A液を充填した後、表面にB液をスプレー等で塗布することもできる。
本発明に係る硬化性組成物を接着剤として用いた場合には、好ましくは、ハネムーン接着方法により接着が行われる。すなわち、一方の被着体にA液が塗布され、他方の被着体にB液が塗布され、しかる後、A液とB液とが接触するように双方の被着体が貼り合わされる。
【0071】
本発明に係る接着剤は、このようなハネムーン接着剤として好適に用いられる。
もっとも、本発明に係る接着剤は、ハネムーン接着方法以外の接着方法に用いられてもよい。すなわち、A液とB液とが予め混合された後、貼り合わされるべき双方の被着体の少なくとも一方に混合された接着剤を塗布し、双方の被着体を貼り合わせてもよい。
【0072】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
(重合体(a)の調製)
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)100g、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名:KBM−503)0.5g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名:KBM−803)0.2g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.3g及び酢酸エチル100gを投入して、混合した。モノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら環流に達するまでに昇温した。
【0074】
環流後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。1時間後、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.036gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。さらに、重合開始後、2、3及び4時間後、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g,0.12g及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し、重合を終了させた。数平均分子量約3万(ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる、分子量はポリスチレン換算)のアルコキシシリル基含有アクリル重合体の酢酸エチル溶液を得た。
【0075】
(ビニル系重合体(b)の調製)
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、n−ブチルアクリレート(日本触媒社製)95g、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学社製、商品名:ライトエステルP−1M)5.0g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)0.3g及び酢酸エチル100gを投入して、混合した。モノマー混合溶液を窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら環流に達するまでに昇温した。
【0076】
環流後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。1時間後、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.036gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。さらに、重合開始後、2、3及び4時間後、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048g,0.12g及び0.36gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し、重合を終了させた。数平均分子量約3万(ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる、分子量はポリスチレン換算)の酸性リン酸含有重合体の酢酸エチル溶液を得た。
【0077】
(A液及びB液の調製)
(参考例1)
A液…上記ビニル系重合体(a)の調製で得られた酢酸エチルを除去する前の重合体溶液80gとポリプロピレングリコール(和光純薬社製、分子量3000)20gとを混合した後、ロータリーエバポレターを用いて酢酸エチルを除いて、粘調な液状にした後、重質炭酸カルシウム40g、脂肪酸処理炭酸カルシウム10g、硬化促進剤(ジブチル錫ジラウリレート)3gを加え、密封した攪拌機で均一になるまで混合し、その後、10分間減圧脱泡し、白色状ペーストのA液を得た。
【0078】
(参考例2)
B液の調製…上記ビニル系重合体(b)の調製で得られた酢酸エチルを除去する前の重合体溶液80gとポリプロピレングリコール(和光純薬社製、分子量3000)20gとを混合した後、ロータリーエバポレターを用いて酢酸エチルを除いて、粘調な液状にした後、重質炭酸カルシウム30g、脂肪酸処理炭酸カルシウム10gを加え、密封した攪拌機で均一になるまで混合し、その後、10分間減圧脱泡し、白色状ペーストのB液を得た。
【0079】
(実施例1)
参考例1で得られたA液を、ペンタイトN鋼板(150mm×30mm×2mm)の端部に、25mm×25mmの面積で塗布厚みが0.3mmとなるように塗布した被塗物Aを作成した。他方、別のスレート板(150mm×30mm×5mm)に参考例2で得られたB液を25mm×25mmの面積で塗布厚みが0.1mmとなるように塗布した被塗物Bを作成した。被塗物Aと被塗物BをA液とB液とを介して貼り合わせた。貼り合わせ10分後の引張り剪断接着力(JIS K 6852、試験速度5mm/分)を評価したところ、0.28N/mmであった。また貼り合わせ7日後の接着力は0.33N/mmであった。
【0080】
(比較例1)
実施例1と同じ被塗物Aを作成し、スレート板(150mm×30mm×5mm)に2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学社製、商品名:ライトエステルP−1M)を25mm×25mmの面積で塗布厚みが0.05mmとなるように塗布した被塗物B1を作成した。被塗物Aと被塗物B1を塗布面が重なるように貼り合わせた。貼り合わせ10分後の引張り剪断接着力(JIS K 6852、試験速度5mm/分)を評価したところ0.07N/mmであった。貼り合わせ7日後の接着力は0.15N/mmであった。
【0081】
(実施例2)
図3の様な目地構造1をスレートで作成し、目地部1aに参考例2で得られたB液を塗布した。その上から参考例1で得られたA液を塗布して目地部1aのシーリング試験を行った。タックフリー時間は4時間であったが、シーリング材が全体的に硬化しており、深部硬化性に優れていた。
【0082】
(比較例2)
実施例2と同じ目地構造体1を用いて、B液を塗布せずに、直接Aを目地部1aに充填した。タックフリー時間は4時間であったが、シーリング材表面から皮膜部分を剥がすことができ、深部は未硬化のままであった。
【0083】
(実施例3)
参考例1で得られた酢酸エチルを除去する前の重合体(a)80gとポリエーテル系重合体(c)(鐘淵化学工業社製、末端アルコキシシリル基含有ポリプロピレングリコール、S−303)20gを混合した後、ロータリーエバポレターを用いて酢酸エチルを除いて、粘調な液状にした後、重質炭酸カルシウム40g、脂肪酸処理炭酸カルシウム10g、硬化促進剤(ジブチル錫ジラウリレート)3gを加え、密封した攪拌機で均一になるまで混合し、その後、10分間減圧脱泡して白状のペーストのA液を得た。
【0084】
他方、B液は、参考例2で得られた酢酸エチルを除去する前の重合体(b)80gとポリプロピレングリコール(和光純薬社製、分子量3000)20gを混合した後、ロータリーエバポレターを用いて酢酸エチルを除いて、粘調な液状にした後、重質炭酸カルシウム30g、脂肪酸処理炭酸カルシウム10gを加え、密封した攪拌機で均一になるまで混合し、その後、10分間減圧脱泡して白状のペーストのB液を得た。
【0085】
上記で得られたA液を、ペンタイトN鋼板(150mm×30mm×2mm)の端部に、25mm×25mmの面積で塗布厚みが0.3mmとなるように塗布した被塗物Aを作成した。他方、別のスレート板(150mm×30mm×5mm)に参考例2で得られたB液を25mm×25mmの面積で塗布厚みが0.1mmとなるように塗布した被塗物Bを作成した。被塗物Aと被塗物Bを接着剤を介して貼り合わせた。貼り合わせ10分後の引張り剪断接着力(JIS K 6852、試験速度5mm/分)を評価したところ、0.33N/mmであった。また貼り合わせ7日後の接着力は0.35N/mmであった。
【0086】
図1の様な目地構造をスレートで作成し、目地部に参考例2で得られたB液を塗布した。その上から参考例1で得られたA液を塗布して目地部のシーリング試験を行った。タックフリー時間は3.5時間であったが、シーリング材が全体的に硬化しており、深部硬化性に優れていた。
【0087】
(実施例4)
A液及びB液調製の際、それぞれの溶液に、層状珪酸塩ソマシフMPE−100(ポリオキシプロピレンジエチル4級アンモニウム塩で有機処理した膨潤性フッ素雲母、コープケミカル社製)5g、チヌビン770(ヒンダードアミン系光安定剤、チバスペシャリティーケミカルズ社製)5g、チヌビン327(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チバスペシャリティーケミカルズ社製)5gを加えたこと以外は参考例1、参考例2と同様にしてA液及びB液を得た。さらに、A液10gとB液10gとを均一に混合し、硬化性組成物を調整した。
【0088】
(比較例3)
参考例1で得られたA液10gと、参考例2で得られたB液10gとを均一に混合し、硬化性組成物を調製した。
【0089】
〔層状珪酸塩の平均層間距離の測定〕
実施例4で得られた硬化性組成物の層状珪酸塩の平均層間距離を以下のようにして測定した。
【0090】
X線回折測定装置(理学社製、RINT1100)により、層状珪酸塩の積層面の回折により得られる回折ピークの2θを測定し、下記のブラックの回折式を用いて層状珪酸塩の(001)面間隔を算出した。以下のdを平均層間距離とし、平均層間距離が3nm以上の場合を○と判定した。
【0091】
λ=2dsinθ
なお、式中において、λ(nm)=0.154、d(nm)二層状珪酸塩の面間隔、θ(degree)は回折角である。
【0092】
〔層状珪酸塩の分散状態の確認〕
透過型電子顕微鏡(TEM 日本電子社製「JEM−120EX II」)写真により、硬化物中の層状珪酸塩の分散状態を観察して、5層以下で存在しているものを○と判定した。
【0093】
〔耐候性評価〕
(評価)
上記実施例4及び比較例3で得られた硬化性組成物を下記の方法で耐候性を評価した。
【0094】
各配合組成物を50mm×150mm(厚み1mm)のステンレス板に0.5mm厚みで塗布し、20℃×60%RHの雰囲気下で7日間(144時間)放置して養生硬化させた後、下記条件で、150時間及び400時間光照射を行い、表面状態を目視で確認し、クラックの無いものを○と判定した。結果を下記の表1に示す。
【0095】
・光照射条件
試験装置:アイスーパーUVテスター(SUV−F11型)、岩崎電気株式会社製
照射強度:100mW/cm
限定波長:295nm〜450nm
ブラックパネル温度:63℃
照射距離:235mm(光源と試料間)
(なお、アイスーパーUVテスターによる光照射評価は、材料系や試験条件によっても変動するので一概にはいえないが、通常サンシャインウエザオメーターによる評価よりも、10倍程度の過酷な促進効果があるとされている。)
【0096】
【表1】
Figure 2004292608
【0097】
【発明の効果】
本発明に係る硬化性組成物は、架橋可能な加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体(a)を含有するA液と、酸性リン酸基を有するビニル系重合体(b)を含有するB液とを有する二液型の硬化性組成物であるため、室温で速やかに架橋し、得られた硬化物が柔軟性に優れている。従って、本発明に係る硬化性組成物は、応力や歪みを受ける部分に用いるのに適した接着剤やシーリング材として好適に用いられる。しかも、二液型であるため貯蔵性に優れている。
【0098】
また、本発明に係る硬化性組成物は、いわゆるハネムーン硬化型接着剤として好適に用いられ、従って、現場での施工用に優れているだけでなく、長時間の開放系部分、例えば生産ラインにおいても好適に用いることができ、しかも良好な接着強度を発現する。従って、接着作業の作業性を効果的に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】層状珪酸塩の薄片状結晶の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を説明するための模式図。
【図2】層状珪酸塩の層間の交換性陽イオンを説明するための模式図。
【図3】実施例2及び比較例2で行われたシーリング試験を説明するためのシーリング部分を示す略図的側面断面図。
【符号の説明】
1…目地構造
1a…目地

Claims (10)

  1. 少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体(a)を含有するA液と、酸性リン酸基を有するビニル系重合体(b)を含有するB液とからなることを特徴とする二液型の硬化性組成物。
  2. 前記ビニル系重合体(a)に加えて、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(c)がさらにA液に配合されている請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 層状珪酸塩がA液及び/またはB液にさらに配合されている請求項1または2に記載の硬化性組成物。
  4. 前記少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を含有するビニル系重合体(a)及び/または酸性リン酸基を有するビニル系重合体(b)が、有機過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合により得られた重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
  5. 一方の被着体の接着面にA液が塗布され、他方の被着体の接着面にB液が塗布された後、双方の被着体が貼り合わされて構成されていることを特徴とする接着構造体。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物からなることを特徴とするシーリング材。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物からなることを特徴とする接着剤。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物を用いたシーリング方法であって、上記B液をシーリング部分に塗布した後、上記A液を該シーリング部分に充填することを特徴とするシーリング方法。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物を用いた接着方法であって、一方の被着体にA液を塗布し、他方の被着体にB液を塗布し、しかる後、A液とB液とが接触するように双方の被着体を貼り合わせることを特徴とする接着方法。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物を用いた接着方法であって、
    A液とB液とを混合し、混合された組成物を貼り合わされるべき被着体の少なくとも一方に塗布した後、双方の被着体を貼り合わせることを特徴とする、接着方法。
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