JP2004292494A - アスファルト改質材、該アスファルト改質材の製造方法、およびアスファルトの改質方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アスファルトを改質するためのゴムや熱可塑性エラストマーと併用された際に、アスファルトへの溶解性が良好であり、骨材密着性の確保と改質アスファルトの相分離抑制を高度に達成し得るアスファルト改質材と、該アスファルト改質材の製造方法、並びに該アスファルト改質材を用いたアスファルトの改質方法を提供する。
【解決手段】必須成分として、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを含み、該(メタ)アクリル系ポリマーが該オイルに溶解または分散しており、JIS K 2283の規定に準じて測定される100℃での動粘度が、15mm2/sec以上であることを特徴とするアスファルト改質材である。
【解決手段】必須成分として、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを含み、該(メタ)アクリル系ポリマーが該オイルに溶解または分散しており、JIS K 2283の規定に準じて測定される100℃での動粘度が、15mm2/sec以上であることを特徴とするアスファルト改質材である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アスファルトの機能を高めるための改質材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の交通量の増加、特に重量車両の増加により、アスファルト舗装道路は過酷な使用状況となっており、これに起因して、重交通路部や交差点流入部のアスファルト舗装路面では変形が生じ、わだち掘れやコルゲーションといった所謂流動現象が発生している。これは、対向車や歩行者への撥水、ハンドル捉られ、滑り止め効果の減少や、走行感の悪化といった交通安全上無視できない諸問題の原因となっている。
【0003】
アスファルト舗装路面での上記流動現象は、アスファルトの力学的強度、例えばタフネス(把握力)不足が原因となることが知られており、また、アスファルト−骨材間での剥離現象が多発するようなアスファルト舗装では、かかる流動現象も頻発することが知られている。
【0004】
このような事情から、アスファルトの力学的強度および骨材密着性を高めて、上記の流動現象を抑制すべく、種々の改質が試みられている。
【0005】
アスファルトの改質法としては、ゴムや熱可塑性エラストマーを添加し、アスファルトの流動性を低減させてタフネスを改善する方法が一般的である。例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などを添加した改質アスファルトI型、スチレン−ブタジエン−スチレンエラストマー(SBS)などを添加した改質アスファルトII型、SBSなどを多量に添加した高粘度改質アスファルトなどが知られている。
【0006】
しかしながら、これらのアスファルト改質法では、力学的強度の向上は達成されるものの、骨材密着性の改善には、あまり効果はなかった。また、アスファルトの改質に用いられている上記のゴムや熱可塑性エラストマーといった改質材は、アスファルトとの相溶性が低い。よって、これらの改質材をアスファルト中に均一に分散させることは困難である。また、こうした相溶性の低さから、改質アスファルトを比較的高温下で長期間保存した場合には相分離が生じ易い。このような相分離の生じた改質アスファルトを道路舗装に用いる場合には、予め機械的撹拌などによって均一性を確保する必要がある。
【0007】
こうした諸問題を解決するに当たり、本発明者らは、上記の如きゴムや熱可塑性エラストマーに加えて、特定の(メタ)アクリル系ポリマーを改質材に用いることで、骨材密着性の向上や、改質アスファルトの相分離抑制が良好に達成できることを見出し、特許出願をしてきた(例えば、特許文献1、2)。
【0008】
ところが、これらの技術では、以下のような点に、未だ改善の余地を残していた。アスファルトに固体状の(メタ)アクリル系ポリマーを添加するが、(メタ)アクリル系ポリマーのアスファルトへの溶解性・分散性は、該ポリマーの組成および分子量によっては必ずしも良好ではなく、均一な組成の改質アスファルトを得るには十分な混合操作が必要となり、他方、こうした均一組成が達成されていないときには、(メタ)アクリル系ポリマーの機能を十分に引き出すことができないことがあった。特に改質アスファルトの高温下での長期保存時の相分離抑制の面で不十分となるおそれがあった。
【0009】
また一方で、アスファルトの添加剤として、所謂プロセスオイルなどのオイルも知られており、例えば、アスファルトとゴムや熱可塑性エラストマーとの相溶化剤などとして使用されているが、このオイルも、高温での粘度がアスファルトと著しく異なることに起因して、アスファルトに均一に混合するには必ずしも容易でない、といった事情があった。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−31873号公報
【特許文献2】
特開2002−114910号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アスファルトを改質するためのゴムや熱可塑性エラストマーと併用された際に、アスファルトへの溶解性が良好であり、骨材密着性の確保と改質アスファルトの相分離抑制を高度に達成し得るアスファルト改質材と、該アスファルト改質材の製造方法、並びに該アスファルト改質材を用いたアスファルトの改質方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明のアスファルト改質材は、必須成分として、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを含み、該(メタ)アクリル系ポリマーが該オイルに溶解または分散しており、JIS K 2283の規定に準じて測定される100℃での動粘度(以下、単に「動粘度」という場合がある)が、15mm2/sec以上であるところに要旨を有するものである。
【0013】
上記オイルとしては、ナフテン系オイルまたはパラフィン系オイルが推奨される。
【0014】
上記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有するものや、多価メルカプタン残基が核となっている星型ポリマーが好適である。
【0015】
また、オイル中で(メタ)アクリル系モノマーを重合する上記アスファルト改質材の製造方法と、上記アスファルト改質材をアスファルトに添加するアスファルトの改質方法も、本発明に包含される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のアスファルト改質材は、必須成分の一つである(メタ)アクリル系ポリマーが、もう一つの必須成分であるオイル中に溶解または分散しており、且つ上記動粘度が、15mm2/sec以上であるところに最大の特徴を有している。
【0017】
上記の通り、アスファルトの改質に優れた効果を発揮するものとして本発明者等が提案してきた(メタ)アクリル系ポリマーは、その組成および分子量によっては、アスファルトへの溶解性・分散性が必ずしも良好とはいえず、その機能を十分に引き出すためには、アスファルトとの混合の際に、均一性を確保すべく細心の注意を必要としていた。
【0018】
また、アスファルトの添加剤として、オイル(プロセスオイルなど)も一般的であるが、このようなオイルについても、例えば100℃での動粘度で比較すると、ストレートアスファルトでは1000〜3000mm2/secであるのに対し、一般的なナフテン系オイルでは1〜14mm2/secというように、高温での粘度がアスファルトとは著しく異なるため、アスファルトと均一に混合することは必ずしも容易ではなく、均一性の確保にはやはり細心の注意を要していた。
【0019】
本発明者等は、上記オイルに(メタ)アクリル系ポリマーを予め溶解または分散させることで増粘させて、特定の動粘度を有するアスファルト改質材とすれば、該ポリマーおよびオイルを簡易且つ良好にアスファルト中に溶解または分散させることができ、該ポリマーおよびオイルの機能を高度に引き出し得ることを見出した。
【0020】
さらに、詳細は後述するが、上記アスファルト改質材を製造するに当たっては、公知の重合法により得られた固体状の(メタ)アクリル系ポリマーを、上記オイルに溶解または分散させる方法の他、該オイル中で(メタ)アクリル系ポリマーを重合する方法が採用可能であり、後者の方法を採用した場合には、アスファルト改質材の生産性を格段に高めることが可能であることを見出した。以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明のアスファルト改質材の必須成分であるオイルとしては、各種の鉱物油、動物油、植物油を用いることができるが、鉱物油を用いることが一般的である。
【0022】
鉱物油は、その組成面からナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル(芳香族系オイル)に分類され、他方、用途面からは原料油(またはプロセスオイル)、燃料油、潤滑油、加工油、工業用揮発油、ミネラルスピリッツ、ワセリン、グリース、パラフィン、ワックスなどに分類されるが、本発明では、これらのいずれも用いることができる。
【0023】
中でも、(メタ)アクリル系ポリマーの溶解性・分散性やアスファルトへの溶解性を考慮すると、ナフテン系、パラフィン系、アロマ系の原料油(またはプロセスオイル)が好ましい。さらには、ナフテン系およびパラフィン系の原料油(またはプロセスオイル)が、アスファルト改質材の常温での粘度を取り扱い可能な範囲に低く保ち得ることから推奨される。(メタ)アクリル系ポリマーの溶解性・分散性が最も良好である点で、ナフテン系原料油(またはプロセスオイル)が特に好ましい。
【0024】
また、オイル中で(メタ)アクリル系ポリマーを重合することによりアスファルト改質材を製造する場合には、ナフテン系およびパラフィン系のオイル[原料油(またはプロセスオイル)]が好ましい。アロマ系オイルを用いた場合には、(メタ)アクリル系ポリマーの重合反応速度が低下し、重合度が低くなる傾向にある。これは、上述の各種オイルには、(メタ)アクリル系ポリマーの重合時に連鎖移動反応し得る芳香族成分が含まれているが、アロマ系オイルではこうした芳香族成分の比率が高いため、該連鎖移動反応が多くなるためではないかと推測される。
【0025】
なお、本発明で使用する上記オイルは、上記動粘度が1mm2/sec以上、より好ましくは2mm2/sec以上、さらに好ましくは3mm2/sec以上であって、100mm2/sec以下、より好ましくは50mm2/sec以下、さらに好ましくは14mm2/sec以下であることが推奨される。上記オイルの動粘度が上記範囲を下回ると、アスファルト改質材の動粘度が低くなるおそれがあり、アスファルトと均一に混合することが困難となる傾向にある。他方、上記オイルの動粘度が上記範囲を超えると、アスファルト改質材の常温での粘度が増大して、アスファルトに添加する際の取り扱い性が低下する傾向にある。
【0026】
なお、ここでいう上記オイルの動粘度は、後述するアスファルト改質材の動粘度と同じ方法で測定して得られる値である。
【0027】
上記アスファルト改質材に係る(メタ)アクリル系ポリマーは、アスファルトとゴムまたは熱可塑性エラストマー(以下、ゴムと熱可塑性エラストマーをまとめて、単に「エラストマー」と称す)との相溶化剤としての役割を果たすと共に改質アスファルトの特性向上(特に、タフネスや骨材密着性の向上に寄与する成分であり、(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物[(メタ)アクリル系モノマー単独の場合を含む]により形成されるポリマーを意味する。上記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、アスファルトに溶解するものであれば特に限定されず、目的に応じて種々の物性を有するものを用いることができるが、上記相溶化剤としての効果、および改質アスファルトの骨材密着性およびタフネスを向上させる効果が大きくなることから、アスファルトに相溶するものであることが好ましい。また、例えば、JISK 7113「プラスチックの引張試験方法」の規定に準じて、23℃で引張試験を行った際に、伸び率が600%未満である(メタ)アクリル系ポリマーを用いることが好ましい。より好ましくは500%未満、さらに好ましくは400%未満である。このような(メタ)アクリル系ポリマーは比較的硬質であるため、改質アスファルトのタフネスを向上させる効果が大きくなる。
【0028】
上記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するための(メタ)アクリル系モノマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、(エチル)メタアクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル−(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、などの炭素数1〜30エステル基を有する(メタ)アクリレート類;テトラエチレンジ(メタ)アクリレート、などのジ(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド類;などが挙げられる。本発明に係る(メタ)アクリル系ポリマーでは、これら例示のモノマーを1種単独で用いて合成してもよく、2種以上を用いて合成しても構わない。
【0029】
また、本発明の(メタ)アクリル系ポリマーでは、上記の(メタ)アクリル系モノマーに加えて、他の重合性モノマーを共重合することもできる。(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他の重合性モノマーとしては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレン、などのスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、などのビニルエーテル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸のジアルキルエステル、などの不飽和カルボン酸およびそのエステル;(メタ)アクリロニトリル;ブタジエン;イソプレン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルケトン;ビニルピリジン;ビニルピロリドン;ビニルカルバゾール;などが挙げられる。これら他の重合性モノマーは、1種単独で、あるいは2種以上を同時に使用することができる。
【0030】
なお、(メタ)アクリル系ポリマーは、アスファルトの相溶性向上の観点からは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー組成物100質量%中、(メタ)アクリル系モノマーを90質量%以上とすることが望ましい。中でも、炭素数6以上のエステル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを10質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上とする態様である。
【0031】
他方、アスファルトの改質に用いられるエラストマーとしては、SBRやSBSが一般的であるが、これらのエラストマーとの親和性向上の観点からは、(メタ)アクリル系ポリマーがシクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有することが望ましい。SBRやSBSがアスファルト中に存在する場合、ブタジエン部分はアスファルトと相溶するが、スチレン部分はアスファルトに相溶せずに凝集する傾向にある。このことがSBRやSBSとアスファルトとの相溶性の悪さの要因となっているが、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有する(メタ)アクリル系ポリマーの共存下では、該(メタ)アクリル系ポリマーのシクロヘキシル基とSBRやSBSのスチレン部分との親和性が良好であることから、該スチレン部分の凝集が抑制され、アスファルト中に良好に分散・溶解するようになる。
【0032】
さらに、アスファルトおよびエラストマー(SBRやSBS)両者との相溶性の更なる向上を考慮すると、且つ炭素数が多いエステル基を有するモノマー[例えば炭素数11以上のエステル基を有する(メタ)アクリル系モノマー]を使用することが推奨される。例えば、上記(メタ)アクリル系ポリマーの重合に当たり、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む炭素数10以下のエステル基を有するモノマーを、95質量%以下とすることが好ましく、90質量%以下とすることがより好ましく、70質量%以下とすることがさらに好ましい。かかる場合に用いる炭素数11以上のエステル基を有するモノマーとしては、例えばステアリル(メタ)アクリレートが好適である。
【0033】
この他、上記(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を有するものであることが好ましい。かかるカルボキシル基の作用によって、改質アスファルトの骨材密着性およびタフネスを向上させる効果が増大する。
【0034】
(メタ)アクリル系ポリマーが分子内に有するカルボキシル基量は、該ポリマーの酸価によって評価することができる。具体的には、(メタ)アクリル系ポリマーの酸価としては、例えば、10mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が上記下限値を下回ると、カルボキシル基の存在による改質アスファルトの骨材密着性およびタフネスの向上効果が十分に確保できない場合がある。また、上記酸価は、300mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が上記上限値を超えると、アスファルトに対する溶解性が低下するおそれがある。より好ましい酸価は、10〜200mgKOH/gであり、更に好ましくは、15〜100mgKOH/gである。
【0035】
このような観点から、(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を有するモノマーも用いて得られるものであることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸の使用が推奨される。
【0036】
以上の点から、本発明で使用する(メタ)アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびステアリル(メタ)アクリレートを主成分とするモノマー組成物、すなわち全モノマー組成物100質量%中、これらのモノマーの合計量が50質量%以上であるモノマー組成物から形成されるポリマーが最も好適である。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマーの立体構造は特に限定されず、直鎖状、分岐型(側鎖型)、星型、グラフト体のいずれの構造であってもよい。中でも、星型ポリマーが、改質アスファルトの粘度を不必要に増大させることなく、良好な作業性を保持しつつ特性改善を図り得ると共に、SBRやSBSといったエラストマーのゲル化を抑制し得る(後述する)ことから好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリマーを星型ポリマーとする場合の手法は特に限定されず、例えば、3個以上のメルカプト基を有する多価メルカプタンの存在下で、上記のモノマー組成物をラジカル重合させる方法が挙げられる。上記多価メルカプタンとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオプロピオネート、などの3〜6価のメルカプタンが好適であり、これらの1種または2種以上を使用することができる。このような多価メルカプタンを用いて得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、多価メルカプタン残基が核となっている星型ポリマーとなる。
【0039】
また、(メタ)アクリル系ポリマーの分子量は特に限定されないが、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定(ポリスチレン換算)による重量平均分子量が1000〜100万であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲を下回ると、アスファルト改質材を増粘させる効果が不十分となるおそれがあり、他方、上記範囲を超えると、上記オイルに溶解しなくなるおそれがある。より好ましい重量平均分子量は5000〜20万であり、さらに好ましくは1万〜10万である。
【0040】
(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの通常のラジカル重合方法が採用できる。なお、重合後の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常の溶媒などの媒体を使用した重合方法で得たものの場合、該媒体を除去して固体状とした後にオイルに溶解・分散させて使用されるが、本発明の製造方法、すなわち、上記オイルを溶媒とし、該オイル中で重合を行えば、重合溶液(分散液)をそのまま、あるいはさらに上記オイルを添加して、本発明のアスファルト改質材とすることができる。
【0041】
よって、前者の場合では、重合溶媒などの媒体除去・回収工程が必要であり、また、かかる媒体の種類によっては、人体や環境に悪影響を及ぼす場合もあるため、このような工程に要する装置も安全性確保が可能なものとする必要がある。これに対し、後者の場合では、上記の媒体除去・回収工程を省略できるため、媒体の除去・回収に伴うエネルギー消費量をカットすることができ、高機能な装置を必要とすることもなく、また、(メタ)アクリル系ポリマーの重合で得られた重合反応物(オイルを含む)をほぼロスなく利用できるため、アスファルト改質材の生産性を格段に高めることができる。
【0042】
ラジカル重合を実施する際の重合温度は特に限定されず、例えば30〜200℃とすることが一般的であり、60〜150℃とすることがより好ましい。ラジカル重合開始剤も特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカーボニトリルなどのアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイルなどの過酸化物系重合開始剤;など、一般的に使用されているものが採用可能である。
【0043】
上記オイルを重合溶媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合した場合には、重合溶液をそのまま本発明のアスファルト改質材とすることができる。また、この場合、動粘度調節などを目的として、重合溶媒オイルの一部を除去して濃縮するか、さらに上記オイルを添加して希釈してもよい。この他、他の溶媒・分散媒といった媒体を使用するなどして重合した場合には、得られた(メタ)アクリル系ポリマーを上記オイルに溶解または分散させて本発明のアスファルト改質材とすればよい。上記オイルに(メタ)アクリル系ポリマーを溶解または分散させる方法やその条件は特に限定されないが、例えば、上記オイルを60〜90℃に加熱し、撹拌しながら(メタ)アクリル系ポリマーを添加し、30分以上混合すればよい。
【0044】
このようにして得られる本発明のアスファルト改質材は、上記動粘度が、15mm2/sec以上である。このような動粘度を有するアスファルト改質材であれば、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを、従来よりも簡易且つ良好にアスファルト中に溶解・分散させることが可能であり、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルの機能を極めて高度に引き出すことができる。
【0045】
すなわち、(メタ)アクリル系ポリマーは、元々アスファルトへの溶解性があまり良好ではないため、アスファルトに均一に溶解・分散させるには、比較的厳しい条件での混合操作が必要である。また、オイルは、上述したように、通常、アスファルトよりもかなり粘度が小さいため、この粘度差に起因して、アスファルトへの均一に溶解・分散させることが困難である。本発明の改質材では、オイル中へ(メタ)アクリル系ポリマーを溶解または分散させ且つ上記動粘度を確保することで、(メタ)アクリル系ポリマーについては、該ポリマー分子をできるだけ微細にばらした状態としてアスファルトへの溶解性・分散性を高め、オイルについては、(メタ)アクリル系ポリマーの増粘効果によって改質材全体の粘度を増大させることでアスファルトとの粘度差を小さくさせ、これによりアスファルトへの溶解性・分散性を向上させることができる。これにより、従来は細心の注意を払って均一性を確保していたアスファルト/(メタ)アクリル系ポリマー/オイルの混合を、極めて容易なものとすることが可能となる。こうしてアスファルト中での溶解・分散の均一性を高度に確保することで、(メタ)アクリル系ポリマー、オイル両者の有する機能を、極めて高度に引き出すことができるのである。
【0046】
よって、上記動粘度が上記下限値を下回ると、特にオイルのアスファルトへの溶解性・分散性が低下してしまう。また、このような場合には、通常、(メタ)アクリル系ポリマーの添加効果を十分に保持できる程度の該ポリマーの添加量が確保できない。より好ましくは30mm2/sec以上である。他方、アスファルト改質材の取り扱い性の面では、上記動粘度の上限は700mm2/sec以下であることが好ましく、特に常温での取り扱い性を考慮すると、上記動粘度は400mm2/sec以下であることがより好ましく、200mm2/sec以下であることがさらに好ましい。
【0047】
なお、本発明でいう100℃の動粘度は、JIS K 2283「原油および石油製品−動粘度試験方法および粘度指数算出方法」の規定に準じて、キャノン・フェンスケ不透明液用粘度計を用いて測定される値である。
【0048】
また、上記アスファルト改質材について、B型粘度計[例えば、株式会社東京計器製のB型粘度計(BM型およびBH型)]を用い、25℃で測定される粘度としては、100万mPa・s以下であることが好ましく、常温で取り扱いを可能とする点では、30万mPa・s以下であることがより好ましく、さらに常温での取り扱いを容易とする点では、10万mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0049】
本発明のアスファルト改質材は、(メタ)アクリル系ポリマーが、上記オイル中に微粒子状に分散している態様でもよいが、(メタ)アクリル系ポリマーが上記オイル中に溶解している態様、すなわち、(メタ)アクリル系ポリマーのオイル溶液であることが、より好ましい。
【0050】
上記アスファルト改質材における(メタ)アクリル系ポリマーとオイルの組成は、上記動粘度が上述の範囲内であれば特に限定されず、任意の組成とすることが可能であるが、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーとオイルの合計100質量%中、(メタ)アクリル系ポリマーが10質量%以上80質量%以下とすることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー量が上記範囲を下回ると、(メタ)アクリル系ポリマーを用いることによる効果を十分に確保できない場合がある。他方、(メタ)アクリル系ポリマー量が上記範囲を超えると、上記動粘度が増大する傾向にあり、上述の上限値を超える場合がある。(メタ)アクリル系ポリマー使用の効果をより有効に確保するためには、(メタ)アクリル系ポリマー量を20質量%以上とすることがより好ましく、30質量%以上とすることがさらに好ましい。また、アスファルト改質材の取り扱いの容易さを考慮すると、(メタ)アクリル系ポリマー量は70質量%以下とすることがより好ましい。
【0051】
さらに、本発明のアスファルト改質材は、他の成分として、ゴムまたは熱可塑性エラストマー(SBRやSBSなど)、石油樹脂、テルペン樹脂、その他ワックス類など、他のアスファルト改質材を含有していてもよい。なお、これらのアスファルト改質材を含有させる場合には、上記動粘度が上述の好適範囲内となるようにその添加量を調節することが好ましい。
【0052】
本発明のアスファルトの改質方法は、上記本発明のアスファルト改質材をアスファルトに添加し、混合するというものである。上記アスファルト改質材が適用可能なアスファルトは特に限定されず、レイクアスファルト、ギルソナイトなどの天然アスファルト;ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルトなどの石油アスファルト;などが挙げられる。一般に、アスファルトの特性は針入度で示されるが、例えば、該針入度が40〜200のものが好適である。
【0053】
上記アスファルト改質材をアスファルトに添加して、改質アスファルトとするが、該改質アスファルトには、他の公知のアスファルト改質材や添加剤も添加される。このような他のアスファルト改質材としては、例えば上記例示のエラストマー(SBRやSBSなど)、石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、その他ワックス類などが挙げられる。その他、各種酸化防止剤、分散剤、剥離防止剤などの添加剤が使用される場合もある。
【0054】
これらの改質材や添加剤をアスファルトに添加する方法や添加順序は特に限定されないが、本発明のアスファルト改質材に予め他の改質材・添加剤を添加しておき、これをアスファルトに添加、混合するか、本発明のアスファルト改質材をアスファルトに添加、混合する操作において、他の改質材・添加剤も添加する方法が一般的であり、後者の場合、本発明のアスファルト改質材と、他の改質材・添加剤の添加順序は特に限定されない。ただし、下記の理由から、本発明のアスファルト改質材がアスファルト中に存在しない状態で、上記エラストマーとアスファルトとを混合する時間は、できるだけ短くすることが望ましい。
【0055】
アスファルトにSBRやSBSを添加、混合する際には、通常150〜200℃程度の温度で撹拌する方法が採用されるため、これらのエラストマーが有するブタジエン成分の二重結合が開裂して架橋反応が進行し、該エラストマーがゲル化してアスファルト中に均一分散させることが困難または不可能となる場合がある。しかし、本発明のアスファルト改質材の有する(メタ)アクリル系ポリマーが、例えば上記の多価メルカプタン残基が核になっている星型ポリマーである場合は、重合時に消費されずに残存しているメルカプト基が連鎖移動剤としての役割を果たすため、上記のようなエラストマーのゲル化を防止し得る。よって、上記エラストマーをアスファルトに添加する際には、本発明のアスファルト改質材がアスファルト中に存在していることが推奨されるのである。
【0056】
上記アスファルト改質材をアスファルトに添加する際の量は、目的とする効果の程度、該アスファルト改質材の組成、動粘度、他に使用する改質材・添加剤の種類・量などによって変動し得るが、例えば、アスファルト100質量部に対し、0.1質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上5質量部以下とすることが推奨される。このような使用量とすることで、改質材であるエラストマーが通常の添加量(例えば、アスファルト100質量部に対し、4〜10質量部程度)で使用されている場合に、アスファルトとエラストマーとの相分離を高いレベルで抑制することができ、改質アスファルトのタフネスや骨材密着性を向上させることもできる。
【0057】
アスファルト改質材をアスファルトに混合する際の条件も、該アスファルト改質材がアスファルト中に均一に分散または溶解できれば特に限定されないが、例えば、80〜200℃で、5〜60分程度撹拌することが好ましい。混合に用いる装置も、上記条件が採用可能なものであれば特に限定されず、通常、アスファルトにエラストマーなどの改質材を添加、混合するために使用されている装置を用いればよい。
【0058】
本発明の改質方法によって得られた改質アスファルトは、通常の改質アスファルトと同様に骨材などと混合してアスファルト混合物とし、道路舗装などに使用できる。
【0059】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0060】
実施例1
<アスファルト改質材No.1の製造>
ナフテン系プロセスオイル(新日本石油株式会社製「クリセフオイルF22」):30.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):0.6部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0061】
容量2Lのフラスコに、ナフテン系プロセスオイル「クリセフオイルF22」:270.0部、シクロヘキシルメタクリレート:285.0部、2−エチルヘキシルアクリレート:15.0部、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(多価メルカプタン):6.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から30分後および60分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から180分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が22300の(メタ)アクリル系ポリマーがナフテン系プロセスオイルに溶解したアスファルト改質材No.1を得た。アスファルト改質材No.1の(メタ)アクリル系ポリマー濃度は50%である。
【0062】
上記アスファルト改質材No.1について、100℃の動粘度測定、および25℃の粘度測定を下記方法により行った。結果を表1に示す。
【0063】
[100℃の動粘度]
キャノン・フェンスケ不透明液用粘度計を用い、JIS K 2283の規定に準じて測定した。
【0064】
[25℃の粘度]
BH型粘度計(株式会社東京計器製)を用いて測定した。
【0065】
<改質アスファルトNo.1の製造>
容量500mLのフラスコに、アスファルト改質材No.1:8.4部と、ストレートアスファルト(コスモ石油株式会社四日市製油所製、針入度:150〜200):300部を仕込み、窒素雰囲気下で、190℃のオイルバスで加熱しながら、特殊機化工業株式会社製ホモミキサー「T.K.オートホモミクサーM型」を用い、回転数:8000rpmで撹拌しつつ、SBS(クレイトンポリマージャパン社の「クレイトンD−1101」):24.0部を添加して1時間混合し、改質アスファルトNo.1を得た。この改質アスファルトNo.1について、下記の加熱安定性試験を実施した。結果を表2に示す。この試験は、アスファルトとエラストマー(SBS)との相分離の程度を評価するものである。
【0066】
[加熱安定性試験]
容量350mLのブリキ缶(高さ110mm)に改質アスファルトNo.1を入れ、180℃で保存し、3日後に改質アスファルトの上部および下部の軟化点を測定し、その差(上部軟化点−下部軟化点)を求めた。この軟化点差が大きいほど、上部と下部で組成が異なっていること、すなわち相分離が生じていることを示している。ここで、「上部」とは、ブリキ缶底面からの高さ40〜60mmの間の厚さ20mmの部分を、「下部」とは、ブリキ缶底面からの高さ0〜20mmの間の厚さ20mmの部分を意味している。なお、上記保存前の軟化点(初期軟化点)も測定した。
【0067】
軟化点の測定は、JIS K 2207[石油アスファルト]に規定の環球法に準拠して実施した。昇温速度:5℃/分で常温から昇温を開始して測定した。
【0068】
実施例2〜4
改質アスファルトNo.1にナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22)を添加して、(メタ)アクリル系ポリマーの濃度が表1に示す値となるようにし、アスファルト改質材No.2〜4を調製した。得られたアスファルト改質材No.2〜4について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.2〜4を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0069】
実施例5
ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):30.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):0.6部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0070】
容量2Lのフラスコに、ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):270.0部、シクロヘキシルメタクリレート:195.0部、ステアリルアクリレート:105.0部、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から30分後および60分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から180分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が20400の(メタ)アクリル系ポリマーがナフテン系プロセスオイルに溶解したアスファルト改質材No.5を得た。アスファルト改質材No.5の(メタ)アクリル系ポリマー濃度は50%である。
【0071】
このアスファルト改質材No.5について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.5を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0072】
実施例6
ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):1.2部、および酢酸エチル:30.0部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0073】
容量2Lのフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート:195.0部、ステアリルアクリレート:105.0部、およびシクロヘキサン:270.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から50分後および90分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から240分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が25200の(メタ)アクリル系ポリマーのシクロヘキサン溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマーのシクロヘキサン溶液を180℃の減圧乾燥機で乾燥させてシクロヘキサンを除去し、さらに冷却した後に破砕して、フレーク状の(メタ)アクリル系ポリマーを得た。
【0074】
得られた(メタ)アクリル系ポリマーのフレーク:30部を、ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):120部に溶解させて、(メタ)アクリル系ポリマー濃度が20%のアスファルト改質材No.6を得た。なお、上記の溶解は、フラスコ中で、上記(メタ)アクリル系ポリマーフレークと上記ナフテン系プロセスオイルとを、60℃で1時間混合することにより行った。このアスファルト改質材No.6について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.6を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0075】
実施例7
実施例6で得られた(メタ)アクリル系ポリマー:30部を、パラフィン系プロセスオイル(新日本石油株式会社製「スーパーオイルE」):120部に溶解させて(メタ)アクリル系ポリマー濃度が20%のアスファルト改質材No.7を得た。なお、上記の溶解は実施例6と同様にして行った。このアスファルト改質材No.7について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.7を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0076】
実施例8
実施例6で得られた(メタ)アクリル系ポリマー:30部を、アロマ系プロセスオイル(新日本石油株式会社製「コウモレックス700」):120部に溶解させて(メタ)アクリル系ポリマー濃度が20%のアスファルト改質材No.8を得た。なお、上記の溶解は実施例6と同様にして行った。このアスファルト改質材No.8について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.8を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0077】
実施例9
ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):30.0部、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート:1.8部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0078】
容量2Lのフラスコに、ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):270.0部、シクロヘキシルメタクリレート:195.0部、共栄社化学株式会社製「ライトエステルL−8」(炭素数12〜15のアルキルエステル基を有するメタクリレートモノマー):105.0部、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下し、重合を開始させた。重合開始から30分後および60分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から180分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が22500の(メタ)アクリル系ポリマーがナフテン系プロセスオイルに溶解したアスファルト改質材No.9を得た。
【0079】
このアスファルト改質材No.9について実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.9を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表3および4に示す。
【0080】
実施例10
<アスファルト改質材No.10の製造>
ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF8):30.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):0.6部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0081】
容量2Lのフラスコに、ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF8):270.0部、シクロヘキシルメタクリレート:180.0部、ステアリルアクリレート:105.0部、アクリル酸:15.0部、およびペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:3.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から30分後および60分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から180分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が41000の(メタ)アクリル系ポリマーがナフテン系プロセスオイルに溶解したアスファルト改質材No.10を得た。アスファルト改質材No.10の(メタ)アクリル系ポリマー濃度は50%である。このアスファルト改質材No.10について、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。また、アスファルト改質材No.10中の(メタ)アクリル系ポリマーについて、下記の理論酸価の計算方法に従って算出した理論酸価は、下記の通り38.9mgKOH/gであった。
[理論酸価の計算]
理論酸価(mgKOH/g)
=1×アクリル酸含有割合÷100÷アクリル酸分子量×56×1000
=1×5÷100÷72×56×1000
=38.9
ここで、1はアクリル酸1分子当たりのカルボキシル基数(1個)、56はKOHの分子量、1000はグラムをミリグラムに変換するための係数である。
【0082】
<改質アスファルトNo.10の製造>
容量500mLのフラスコに、アスファルト改質材No.10:6.0部と、ストレートアスファルト(コスモ石油株式会社四日市製油所製、針入度:60〜80):300部を仕込み、窒素雰囲気下で、190℃のオイルバスで加熱しながら、特殊機化工業株式会社製ホモミキサー「T.K.オートホモミクサーM型」を用い、回転数:4000rpmで撹拌して1時間混合し、改質アスファルトNo.10を得た。この改質アスファルトNo.10について、下記の剥離抵抗性試験を実施した。
【0083】
[剥離抵抗性試験]
改質アスファルトの骨材密着性を評価するため、該改質アスファルト被膜の骨材からの剥離面積率の測定を、石油学会規格、JPI−5S−27「アスファルト被膜のはく離試験方法」に準じて行った。ただし、この試験方法では目視で剥離面積率を判定するとされているが、評価の精度を高めるため、試験後の骨材の写真をコンピューターで読み込み、画像処理ソフトを用いて骨材全体および剥離部分の面積を夫々求めることによって剥離面積率を算出した。結果を表5に示す。
【0084】
実施例11
ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):1.2部、および酢酸エチル:30.0部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0085】
容量2Lのフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート:180.0部、ステアリルアクリレート:105.0部、アクリル酸:15.0部、および酢酸エチル:270.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から40分後および90分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から240分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が30000の(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を180℃の減圧乾燥機で乾燥させて酢酸エチルを除去し、さらに冷却した後に破砕して、フレーク状の(メタ)アクリル系ポリマーを得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマーについて、実施例10と同様にして算出した理論酸価は38.9mgKOH/gであった。
【0086】
上記(メタ)アクリル系ポリマー:20部を、アロマ系プロセスオイル(新日本石油株式会社製「コウモレックス700」):120部に溶解させて(メタ)アクリル系ポリマー濃度が14%のアスファルト改質材No.11を得た。なお、上記の溶解は実施例6と同様にして行った。
【0087】
このアスファルト改質材No.11について、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。また、さらに実施例10と同様にして改質アスファルトNo.11を製造し、実施例10と同じ評価を行った。結果を表5に示す。
【0088】
比較例1
アスファルト改質材No.1を使用しない他は、実施例1と同様にして改質アスファルトNo.12を得た。この改質アスファルトNo.12について、実施例1と同じ評価を行った。結果を表4に示す。
【0089】
比較例2
ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):0.60部、および酢酸エチル:30.0部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0090】
容量2Lのフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート:285.0部、2−エチルヘキシルアクリレート:15.0部、および酢酸エチル:270.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から50分後および90分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から240分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が22400の(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を180℃の減圧乾燥機で乾燥させて酢酸エチルを除去し、さらに冷却した後に破砕して、フレーク状の(メタ)アクリル系ポリマーを得た。
【0091】
容量500mLの金属製釜に、得られた(メタ)アクリル系ポリマー:4.2部およびストレートアスファルト(コスモ石油株式会社四日市製油所製、針入度:150〜200):300部を仕込み、窒素雰囲気下で、190℃のオイルバスで加熱しながら、特殊機化工業株式会社製ホモミキサー「T.K.オートホモミクサーM型」を用い、回転数:8000rpmで撹拌しつつ、SBS(クレイトンD−1101):24.0部を添加して1時間混合し、改質アスファルトNo.13を得た。この改質アスファルトNo.13について、実施例1と同じ評価を行った。結果を表3および4に示す。
【0092】
比較例3
実施例6で得られたアスファルト改質材No.6:30部にナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):120部を添加して、(メタ)アクリル系ポリマー濃度が5%のアスファルト改質材No.14を得た。このアスファルト改質材No.14について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.14を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表3および4に示す。
【0093】
比較例4
ストレートアスファルト(コスモ石油株式会社四日市製油所製、針入度:60〜80)について、実施例11と同様にして剥離抵抗性試験を行った。結果を表5に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
なお、表1および表3において、CHMA:シクロヘキシルメタクリレート、2EHA:2−エチルヘキシルメタクリレート、STA:ステアリルアクリレート、AA:アクリル酸、ライトエステル:共栄社化学株式会社製「ライトエステルL−8」を意味する。
【0100】
表1〜5から以下のことが分かる。実施例1〜11のアスファルト改質材は上記動粘度が良好であり、このうち、改質アスファルトにおいて、アスファルトとSBSの相分離の程度を評価した実施例1〜9では、該相分離を高度に抑制できている。また、骨材密着性を評価した実施例10および11では、剥離面積率が小さく、改質されていないストレートアスファルト(比較例4)に比べ、良好な骨材密着性を有している。
【0101】
これに対し、アスファルト改質材を用いずに改質アスファルトを得た比較例1、(メタ)アクリル系ポリマーのみを用い、オイルは使用せずに改質アスファルトを得た比較例2、上記動粘度が低いアスファルト改質材を用いて改質アスファルトを得た比較例3では、これらの改質アスファルトにおいて、軟化点差が大きく、アスファルトとSBSの相分離が十分に抑制されていない。
【0102】
【発明の効果】
本発明のアスファルト改質材およびアスファルトの改質方法によれば、優れたアスファルト特性向上機能を有する(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを、簡易且つ良好にアスファルト中に溶解または分散させ得るため、エラストマーを含む改質アスファルトにおけるアスファルトとエラストマーとの相分離抑制や、アスファルトの骨材密着性向上を高いレベルで達成できる。
【0103】
また、本発明のアスファルト改質材の製造方法によれば、上記本発明のアスファルト改質材の生産性を格段に高めることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アスファルトの機能を高めるための改質材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の交通量の増加、特に重量車両の増加により、アスファルト舗装道路は過酷な使用状況となっており、これに起因して、重交通路部や交差点流入部のアスファルト舗装路面では変形が生じ、わだち掘れやコルゲーションといった所謂流動現象が発生している。これは、対向車や歩行者への撥水、ハンドル捉られ、滑り止め効果の減少や、走行感の悪化といった交通安全上無視できない諸問題の原因となっている。
【0003】
アスファルト舗装路面での上記流動現象は、アスファルトの力学的強度、例えばタフネス(把握力)不足が原因となることが知られており、また、アスファルト−骨材間での剥離現象が多発するようなアスファルト舗装では、かかる流動現象も頻発することが知られている。
【0004】
このような事情から、アスファルトの力学的強度および骨材密着性を高めて、上記の流動現象を抑制すべく、種々の改質が試みられている。
【0005】
アスファルトの改質法としては、ゴムや熱可塑性エラストマーを添加し、アスファルトの流動性を低減させてタフネスを改善する方法が一般的である。例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などを添加した改質アスファルトI型、スチレン−ブタジエン−スチレンエラストマー(SBS)などを添加した改質アスファルトII型、SBSなどを多量に添加した高粘度改質アスファルトなどが知られている。
【0006】
しかしながら、これらのアスファルト改質法では、力学的強度の向上は達成されるものの、骨材密着性の改善には、あまり効果はなかった。また、アスファルトの改質に用いられている上記のゴムや熱可塑性エラストマーといった改質材は、アスファルトとの相溶性が低い。よって、これらの改質材をアスファルト中に均一に分散させることは困難である。また、こうした相溶性の低さから、改質アスファルトを比較的高温下で長期間保存した場合には相分離が生じ易い。このような相分離の生じた改質アスファルトを道路舗装に用いる場合には、予め機械的撹拌などによって均一性を確保する必要がある。
【0007】
こうした諸問題を解決するに当たり、本発明者らは、上記の如きゴムや熱可塑性エラストマーに加えて、特定の(メタ)アクリル系ポリマーを改質材に用いることで、骨材密着性の向上や、改質アスファルトの相分離抑制が良好に達成できることを見出し、特許出願をしてきた(例えば、特許文献1、2)。
【0008】
ところが、これらの技術では、以下のような点に、未だ改善の余地を残していた。アスファルトに固体状の(メタ)アクリル系ポリマーを添加するが、(メタ)アクリル系ポリマーのアスファルトへの溶解性・分散性は、該ポリマーの組成および分子量によっては必ずしも良好ではなく、均一な組成の改質アスファルトを得るには十分な混合操作が必要となり、他方、こうした均一組成が達成されていないときには、(メタ)アクリル系ポリマーの機能を十分に引き出すことができないことがあった。特に改質アスファルトの高温下での長期保存時の相分離抑制の面で不十分となるおそれがあった。
【0009】
また一方で、アスファルトの添加剤として、所謂プロセスオイルなどのオイルも知られており、例えば、アスファルトとゴムや熱可塑性エラストマーとの相溶化剤などとして使用されているが、このオイルも、高温での粘度がアスファルトと著しく異なることに起因して、アスファルトに均一に混合するには必ずしも容易でない、といった事情があった。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−31873号公報
【特許文献2】
特開2002−114910号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アスファルトを改質するためのゴムや熱可塑性エラストマーと併用された際に、アスファルトへの溶解性が良好であり、骨材密着性の確保と改質アスファルトの相分離抑制を高度に達成し得るアスファルト改質材と、該アスファルト改質材の製造方法、並びに該アスファルト改質材を用いたアスファルトの改質方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明のアスファルト改質材は、必須成分として、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを含み、該(メタ)アクリル系ポリマーが該オイルに溶解または分散しており、JIS K 2283の規定に準じて測定される100℃での動粘度(以下、単に「動粘度」という場合がある)が、15mm2/sec以上であるところに要旨を有するものである。
【0013】
上記オイルとしては、ナフテン系オイルまたはパラフィン系オイルが推奨される。
【0014】
上記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有するものや、多価メルカプタン残基が核となっている星型ポリマーが好適である。
【0015】
また、オイル中で(メタ)アクリル系モノマーを重合する上記アスファルト改質材の製造方法と、上記アスファルト改質材をアスファルトに添加するアスファルトの改質方法も、本発明に包含される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のアスファルト改質材は、必須成分の一つである(メタ)アクリル系ポリマーが、もう一つの必須成分であるオイル中に溶解または分散しており、且つ上記動粘度が、15mm2/sec以上であるところに最大の特徴を有している。
【0017】
上記の通り、アスファルトの改質に優れた効果を発揮するものとして本発明者等が提案してきた(メタ)アクリル系ポリマーは、その組成および分子量によっては、アスファルトへの溶解性・分散性が必ずしも良好とはいえず、その機能を十分に引き出すためには、アスファルトとの混合の際に、均一性を確保すべく細心の注意を必要としていた。
【0018】
また、アスファルトの添加剤として、オイル(プロセスオイルなど)も一般的であるが、このようなオイルについても、例えば100℃での動粘度で比較すると、ストレートアスファルトでは1000〜3000mm2/secであるのに対し、一般的なナフテン系オイルでは1〜14mm2/secというように、高温での粘度がアスファルトとは著しく異なるため、アスファルトと均一に混合することは必ずしも容易ではなく、均一性の確保にはやはり細心の注意を要していた。
【0019】
本発明者等は、上記オイルに(メタ)アクリル系ポリマーを予め溶解または分散させることで増粘させて、特定の動粘度を有するアスファルト改質材とすれば、該ポリマーおよびオイルを簡易且つ良好にアスファルト中に溶解または分散させることができ、該ポリマーおよびオイルの機能を高度に引き出し得ることを見出した。
【0020】
さらに、詳細は後述するが、上記アスファルト改質材を製造するに当たっては、公知の重合法により得られた固体状の(メタ)アクリル系ポリマーを、上記オイルに溶解または分散させる方法の他、該オイル中で(メタ)アクリル系ポリマーを重合する方法が採用可能であり、後者の方法を採用した場合には、アスファルト改質材の生産性を格段に高めることが可能であることを見出した。以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明のアスファルト改質材の必須成分であるオイルとしては、各種の鉱物油、動物油、植物油を用いることができるが、鉱物油を用いることが一般的である。
【0022】
鉱物油は、その組成面からナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル(芳香族系オイル)に分類され、他方、用途面からは原料油(またはプロセスオイル)、燃料油、潤滑油、加工油、工業用揮発油、ミネラルスピリッツ、ワセリン、グリース、パラフィン、ワックスなどに分類されるが、本発明では、これらのいずれも用いることができる。
【0023】
中でも、(メタ)アクリル系ポリマーの溶解性・分散性やアスファルトへの溶解性を考慮すると、ナフテン系、パラフィン系、アロマ系の原料油(またはプロセスオイル)が好ましい。さらには、ナフテン系およびパラフィン系の原料油(またはプロセスオイル)が、アスファルト改質材の常温での粘度を取り扱い可能な範囲に低く保ち得ることから推奨される。(メタ)アクリル系ポリマーの溶解性・分散性が最も良好である点で、ナフテン系原料油(またはプロセスオイル)が特に好ましい。
【0024】
また、オイル中で(メタ)アクリル系ポリマーを重合することによりアスファルト改質材を製造する場合には、ナフテン系およびパラフィン系のオイル[原料油(またはプロセスオイル)]が好ましい。アロマ系オイルを用いた場合には、(メタ)アクリル系ポリマーの重合反応速度が低下し、重合度が低くなる傾向にある。これは、上述の各種オイルには、(メタ)アクリル系ポリマーの重合時に連鎖移動反応し得る芳香族成分が含まれているが、アロマ系オイルではこうした芳香族成分の比率が高いため、該連鎖移動反応が多くなるためではないかと推測される。
【0025】
なお、本発明で使用する上記オイルは、上記動粘度が1mm2/sec以上、より好ましくは2mm2/sec以上、さらに好ましくは3mm2/sec以上であって、100mm2/sec以下、より好ましくは50mm2/sec以下、さらに好ましくは14mm2/sec以下であることが推奨される。上記オイルの動粘度が上記範囲を下回ると、アスファルト改質材の動粘度が低くなるおそれがあり、アスファルトと均一に混合することが困難となる傾向にある。他方、上記オイルの動粘度が上記範囲を超えると、アスファルト改質材の常温での粘度が増大して、アスファルトに添加する際の取り扱い性が低下する傾向にある。
【0026】
なお、ここでいう上記オイルの動粘度は、後述するアスファルト改質材の動粘度と同じ方法で測定して得られる値である。
【0027】
上記アスファルト改質材に係る(メタ)アクリル系ポリマーは、アスファルトとゴムまたは熱可塑性エラストマー(以下、ゴムと熱可塑性エラストマーをまとめて、単に「エラストマー」と称す)との相溶化剤としての役割を果たすと共に改質アスファルトの特性向上(特に、タフネスや骨材密着性の向上に寄与する成分であり、(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー組成物[(メタ)アクリル系モノマー単独の場合を含む]により形成されるポリマーを意味する。上記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、アスファルトに溶解するものであれば特に限定されず、目的に応じて種々の物性を有するものを用いることができるが、上記相溶化剤としての効果、および改質アスファルトの骨材密着性およびタフネスを向上させる効果が大きくなることから、アスファルトに相溶するものであることが好ましい。また、例えば、JISK 7113「プラスチックの引張試験方法」の規定に準じて、23℃で引張試験を行った際に、伸び率が600%未満である(メタ)アクリル系ポリマーを用いることが好ましい。より好ましくは500%未満、さらに好ましくは400%未満である。このような(メタ)アクリル系ポリマーは比較的硬質であるため、改質アスファルトのタフネスを向上させる効果が大きくなる。
【0028】
上記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するための(メタ)アクリル系モノマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、(エチル)メタアクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル−(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、などの炭素数1〜30エステル基を有する(メタ)アクリレート類;テトラエチレンジ(メタ)アクリレート、などのジ(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド類;などが挙げられる。本発明に係る(メタ)アクリル系ポリマーでは、これら例示のモノマーを1種単独で用いて合成してもよく、2種以上を用いて合成しても構わない。
【0029】
また、本発明の(メタ)アクリル系ポリマーでは、上記の(メタ)アクリル系モノマーに加えて、他の重合性モノマーを共重合することもできる。(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他の重合性モノマーとしては、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレン、などのスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、などのビニルエーテル系単量体;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸のジアルキルエステル、などの不飽和カルボン酸およびそのエステル;(メタ)アクリロニトリル;ブタジエン;イソプレン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルケトン;ビニルピリジン;ビニルピロリドン;ビニルカルバゾール;などが挙げられる。これら他の重合性モノマーは、1種単独で、あるいは2種以上を同時に使用することができる。
【0030】
なお、(メタ)アクリル系ポリマーは、アスファルトの相溶性向上の観点からは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー組成物100質量%中、(メタ)アクリル系モノマーを90質量%以上とすることが望ましい。中でも、炭素数6以上のエステル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを10質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上とする態様である。
【0031】
他方、アスファルトの改質に用いられるエラストマーとしては、SBRやSBSが一般的であるが、これらのエラストマーとの親和性向上の観点からは、(メタ)アクリル系ポリマーがシクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有することが望ましい。SBRやSBSがアスファルト中に存在する場合、ブタジエン部分はアスファルトと相溶するが、スチレン部分はアスファルトに相溶せずに凝集する傾向にある。このことがSBRやSBSとアスファルトとの相溶性の悪さの要因となっているが、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有する(メタ)アクリル系ポリマーの共存下では、該(メタ)アクリル系ポリマーのシクロヘキシル基とSBRやSBSのスチレン部分との親和性が良好であることから、該スチレン部分の凝集が抑制され、アスファルト中に良好に分散・溶解するようになる。
【0032】
さらに、アスファルトおよびエラストマー(SBRやSBS)両者との相溶性の更なる向上を考慮すると、且つ炭素数が多いエステル基を有するモノマー[例えば炭素数11以上のエステル基を有する(メタ)アクリル系モノマー]を使用することが推奨される。例えば、上記(メタ)アクリル系ポリマーの重合に当たり、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む炭素数10以下のエステル基を有するモノマーを、95質量%以下とすることが好ましく、90質量%以下とすることがより好ましく、70質量%以下とすることがさらに好ましい。かかる場合に用いる炭素数11以上のエステル基を有するモノマーとしては、例えばステアリル(メタ)アクリレートが好適である。
【0033】
この他、上記(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を有するものであることが好ましい。かかるカルボキシル基の作用によって、改質アスファルトの骨材密着性およびタフネスを向上させる効果が増大する。
【0034】
(メタ)アクリル系ポリマーが分子内に有するカルボキシル基量は、該ポリマーの酸価によって評価することができる。具体的には、(メタ)アクリル系ポリマーの酸価としては、例えば、10mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が上記下限値を下回ると、カルボキシル基の存在による改質アスファルトの骨材密着性およびタフネスの向上効果が十分に確保できない場合がある。また、上記酸価は、300mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が上記上限値を超えると、アスファルトに対する溶解性が低下するおそれがある。より好ましい酸価は、10〜200mgKOH/gであり、更に好ましくは、15〜100mgKOH/gである。
【0035】
このような観点から、(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を有するモノマーも用いて得られるものであることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸の使用が推奨される。
【0036】
以上の点から、本発明で使用する(メタ)アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびステアリル(メタ)アクリレートを主成分とするモノマー組成物、すなわち全モノマー組成物100質量%中、これらのモノマーの合計量が50質量%以上であるモノマー組成物から形成されるポリマーが最も好適である。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマーの立体構造は特に限定されず、直鎖状、分岐型(側鎖型)、星型、グラフト体のいずれの構造であってもよい。中でも、星型ポリマーが、改質アスファルトの粘度を不必要に増大させることなく、良好な作業性を保持しつつ特性改善を図り得ると共に、SBRやSBSといったエラストマーのゲル化を抑制し得る(後述する)ことから好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリマーを星型ポリマーとする場合の手法は特に限定されず、例えば、3個以上のメルカプト基を有する多価メルカプタンの存在下で、上記のモノマー組成物をラジカル重合させる方法が挙げられる。上記多価メルカプタンとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオプロピオネート、などの3〜6価のメルカプタンが好適であり、これらの1種または2種以上を使用することができる。このような多価メルカプタンを用いて得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、多価メルカプタン残基が核となっている星型ポリマーとなる。
【0039】
また、(メタ)アクリル系ポリマーの分子量は特に限定されないが、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定(ポリスチレン換算)による重量平均分子量が1000〜100万であることが好ましい。重量平均分子量が上記範囲を下回ると、アスファルト改質材を増粘させる効果が不十分となるおそれがあり、他方、上記範囲を超えると、上記オイルに溶解しなくなるおそれがある。より好ましい重量平均分子量は5000〜20万であり、さらに好ましくは1万〜10万である。
【0040】
(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの通常のラジカル重合方法が採用できる。なお、重合後の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常の溶媒などの媒体を使用した重合方法で得たものの場合、該媒体を除去して固体状とした後にオイルに溶解・分散させて使用されるが、本発明の製造方法、すなわち、上記オイルを溶媒とし、該オイル中で重合を行えば、重合溶液(分散液)をそのまま、あるいはさらに上記オイルを添加して、本発明のアスファルト改質材とすることができる。
【0041】
よって、前者の場合では、重合溶媒などの媒体除去・回収工程が必要であり、また、かかる媒体の種類によっては、人体や環境に悪影響を及ぼす場合もあるため、このような工程に要する装置も安全性確保が可能なものとする必要がある。これに対し、後者の場合では、上記の媒体除去・回収工程を省略できるため、媒体の除去・回収に伴うエネルギー消費量をカットすることができ、高機能な装置を必要とすることもなく、また、(メタ)アクリル系ポリマーの重合で得られた重合反応物(オイルを含む)をほぼロスなく利用できるため、アスファルト改質材の生産性を格段に高めることができる。
【0042】
ラジカル重合を実施する際の重合温度は特に限定されず、例えば30〜200℃とすることが一般的であり、60〜150℃とすることがより好ましい。ラジカル重合開始剤も特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカーボニトリルなどのアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイルなどの過酸化物系重合開始剤;など、一般的に使用されているものが採用可能である。
【0043】
上記オイルを重合溶媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合した場合には、重合溶液をそのまま本発明のアスファルト改質材とすることができる。また、この場合、動粘度調節などを目的として、重合溶媒オイルの一部を除去して濃縮するか、さらに上記オイルを添加して希釈してもよい。この他、他の溶媒・分散媒といった媒体を使用するなどして重合した場合には、得られた(メタ)アクリル系ポリマーを上記オイルに溶解または分散させて本発明のアスファルト改質材とすればよい。上記オイルに(メタ)アクリル系ポリマーを溶解または分散させる方法やその条件は特に限定されないが、例えば、上記オイルを60〜90℃に加熱し、撹拌しながら(メタ)アクリル系ポリマーを添加し、30分以上混合すればよい。
【0044】
このようにして得られる本発明のアスファルト改質材は、上記動粘度が、15mm2/sec以上である。このような動粘度を有するアスファルト改質材であれば、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを、従来よりも簡易且つ良好にアスファルト中に溶解・分散させることが可能であり、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルの機能を極めて高度に引き出すことができる。
【0045】
すなわち、(メタ)アクリル系ポリマーは、元々アスファルトへの溶解性があまり良好ではないため、アスファルトに均一に溶解・分散させるには、比較的厳しい条件での混合操作が必要である。また、オイルは、上述したように、通常、アスファルトよりもかなり粘度が小さいため、この粘度差に起因して、アスファルトへの均一に溶解・分散させることが困難である。本発明の改質材では、オイル中へ(メタ)アクリル系ポリマーを溶解または分散させ且つ上記動粘度を確保することで、(メタ)アクリル系ポリマーについては、該ポリマー分子をできるだけ微細にばらした状態としてアスファルトへの溶解性・分散性を高め、オイルについては、(メタ)アクリル系ポリマーの増粘効果によって改質材全体の粘度を増大させることでアスファルトとの粘度差を小さくさせ、これによりアスファルトへの溶解性・分散性を向上させることができる。これにより、従来は細心の注意を払って均一性を確保していたアスファルト/(メタ)アクリル系ポリマー/オイルの混合を、極めて容易なものとすることが可能となる。こうしてアスファルト中での溶解・分散の均一性を高度に確保することで、(メタ)アクリル系ポリマー、オイル両者の有する機能を、極めて高度に引き出すことができるのである。
【0046】
よって、上記動粘度が上記下限値を下回ると、特にオイルのアスファルトへの溶解性・分散性が低下してしまう。また、このような場合には、通常、(メタ)アクリル系ポリマーの添加効果を十分に保持できる程度の該ポリマーの添加量が確保できない。より好ましくは30mm2/sec以上である。他方、アスファルト改質材の取り扱い性の面では、上記動粘度の上限は700mm2/sec以下であることが好ましく、特に常温での取り扱い性を考慮すると、上記動粘度は400mm2/sec以下であることがより好ましく、200mm2/sec以下であることがさらに好ましい。
【0047】
なお、本発明でいう100℃の動粘度は、JIS K 2283「原油および石油製品−動粘度試験方法および粘度指数算出方法」の規定に準じて、キャノン・フェンスケ不透明液用粘度計を用いて測定される値である。
【0048】
また、上記アスファルト改質材について、B型粘度計[例えば、株式会社東京計器製のB型粘度計(BM型およびBH型)]を用い、25℃で測定される粘度としては、100万mPa・s以下であることが好ましく、常温で取り扱いを可能とする点では、30万mPa・s以下であることがより好ましく、さらに常温での取り扱いを容易とする点では、10万mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0049】
本発明のアスファルト改質材は、(メタ)アクリル系ポリマーが、上記オイル中に微粒子状に分散している態様でもよいが、(メタ)アクリル系ポリマーが上記オイル中に溶解している態様、すなわち、(メタ)アクリル系ポリマーのオイル溶液であることが、より好ましい。
【0050】
上記アスファルト改質材における(メタ)アクリル系ポリマーとオイルの組成は、上記動粘度が上述の範囲内であれば特に限定されず、任意の組成とすることが可能であるが、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーとオイルの合計100質量%中、(メタ)アクリル系ポリマーが10質量%以上80質量%以下とすることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマー量が上記範囲を下回ると、(メタ)アクリル系ポリマーを用いることによる効果を十分に確保できない場合がある。他方、(メタ)アクリル系ポリマー量が上記範囲を超えると、上記動粘度が増大する傾向にあり、上述の上限値を超える場合がある。(メタ)アクリル系ポリマー使用の効果をより有効に確保するためには、(メタ)アクリル系ポリマー量を20質量%以上とすることがより好ましく、30質量%以上とすることがさらに好ましい。また、アスファルト改質材の取り扱いの容易さを考慮すると、(メタ)アクリル系ポリマー量は70質量%以下とすることがより好ましい。
【0051】
さらに、本発明のアスファルト改質材は、他の成分として、ゴムまたは熱可塑性エラストマー(SBRやSBSなど)、石油樹脂、テルペン樹脂、その他ワックス類など、他のアスファルト改質材を含有していてもよい。なお、これらのアスファルト改質材を含有させる場合には、上記動粘度が上述の好適範囲内となるようにその添加量を調節することが好ましい。
【0052】
本発明のアスファルトの改質方法は、上記本発明のアスファルト改質材をアスファルトに添加し、混合するというものである。上記アスファルト改質材が適用可能なアスファルトは特に限定されず、レイクアスファルト、ギルソナイトなどの天然アスファルト;ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルトなどの石油アスファルト;などが挙げられる。一般に、アスファルトの特性は針入度で示されるが、例えば、該針入度が40〜200のものが好適である。
【0053】
上記アスファルト改質材をアスファルトに添加して、改質アスファルトとするが、該改質アスファルトには、他の公知のアスファルト改質材や添加剤も添加される。このような他のアスファルト改質材としては、例えば上記例示のエラストマー(SBRやSBSなど)、石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、その他ワックス類などが挙げられる。その他、各種酸化防止剤、分散剤、剥離防止剤などの添加剤が使用される場合もある。
【0054】
これらの改質材や添加剤をアスファルトに添加する方法や添加順序は特に限定されないが、本発明のアスファルト改質材に予め他の改質材・添加剤を添加しておき、これをアスファルトに添加、混合するか、本発明のアスファルト改質材をアスファルトに添加、混合する操作において、他の改質材・添加剤も添加する方法が一般的であり、後者の場合、本発明のアスファルト改質材と、他の改質材・添加剤の添加順序は特に限定されない。ただし、下記の理由から、本発明のアスファルト改質材がアスファルト中に存在しない状態で、上記エラストマーとアスファルトとを混合する時間は、できるだけ短くすることが望ましい。
【0055】
アスファルトにSBRやSBSを添加、混合する際には、通常150〜200℃程度の温度で撹拌する方法が採用されるため、これらのエラストマーが有するブタジエン成分の二重結合が開裂して架橋反応が進行し、該エラストマーがゲル化してアスファルト中に均一分散させることが困難または不可能となる場合がある。しかし、本発明のアスファルト改質材の有する(メタ)アクリル系ポリマーが、例えば上記の多価メルカプタン残基が核になっている星型ポリマーである場合は、重合時に消費されずに残存しているメルカプト基が連鎖移動剤としての役割を果たすため、上記のようなエラストマーのゲル化を防止し得る。よって、上記エラストマーをアスファルトに添加する際には、本発明のアスファルト改質材がアスファルト中に存在していることが推奨されるのである。
【0056】
上記アスファルト改質材をアスファルトに添加する際の量は、目的とする効果の程度、該アスファルト改質材の組成、動粘度、他に使用する改質材・添加剤の種類・量などによって変動し得るが、例えば、アスファルト100質量部に対し、0.1質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上5質量部以下とすることが推奨される。このような使用量とすることで、改質材であるエラストマーが通常の添加量(例えば、アスファルト100質量部に対し、4〜10質量部程度)で使用されている場合に、アスファルトとエラストマーとの相分離を高いレベルで抑制することができ、改質アスファルトのタフネスや骨材密着性を向上させることもできる。
【0057】
アスファルト改質材をアスファルトに混合する際の条件も、該アスファルト改質材がアスファルト中に均一に分散または溶解できれば特に限定されないが、例えば、80〜200℃で、5〜60分程度撹拌することが好ましい。混合に用いる装置も、上記条件が採用可能なものであれば特に限定されず、通常、アスファルトにエラストマーなどの改質材を添加、混合するために使用されている装置を用いればよい。
【0058】
本発明の改質方法によって得られた改質アスファルトは、通常の改質アスファルトと同様に骨材などと混合してアスファルト混合物とし、道路舗装などに使用できる。
【0059】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0060】
実施例1
<アスファルト改質材No.1の製造>
ナフテン系プロセスオイル(新日本石油株式会社製「クリセフオイルF22」):30.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):0.6部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0061】
容量2Lのフラスコに、ナフテン系プロセスオイル「クリセフオイルF22」:270.0部、シクロヘキシルメタクリレート:285.0部、2−エチルヘキシルアクリレート:15.0部、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(多価メルカプタン):6.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から30分後および60分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から180分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が22300の(メタ)アクリル系ポリマーがナフテン系プロセスオイルに溶解したアスファルト改質材No.1を得た。アスファルト改質材No.1の(メタ)アクリル系ポリマー濃度は50%である。
【0062】
上記アスファルト改質材No.1について、100℃の動粘度測定、および25℃の粘度測定を下記方法により行った。結果を表1に示す。
【0063】
[100℃の動粘度]
キャノン・フェンスケ不透明液用粘度計を用い、JIS K 2283の規定に準じて測定した。
【0064】
[25℃の粘度]
BH型粘度計(株式会社東京計器製)を用いて測定した。
【0065】
<改質アスファルトNo.1の製造>
容量500mLのフラスコに、アスファルト改質材No.1:8.4部と、ストレートアスファルト(コスモ石油株式会社四日市製油所製、針入度:150〜200):300部を仕込み、窒素雰囲気下で、190℃のオイルバスで加熱しながら、特殊機化工業株式会社製ホモミキサー「T.K.オートホモミクサーM型」を用い、回転数:8000rpmで撹拌しつつ、SBS(クレイトンポリマージャパン社の「クレイトンD−1101」):24.0部を添加して1時間混合し、改質アスファルトNo.1を得た。この改質アスファルトNo.1について、下記の加熱安定性試験を実施した。結果を表2に示す。この試験は、アスファルトとエラストマー(SBS)との相分離の程度を評価するものである。
【0066】
[加熱安定性試験]
容量350mLのブリキ缶(高さ110mm)に改質アスファルトNo.1を入れ、180℃で保存し、3日後に改質アスファルトの上部および下部の軟化点を測定し、その差(上部軟化点−下部軟化点)を求めた。この軟化点差が大きいほど、上部と下部で組成が異なっていること、すなわち相分離が生じていることを示している。ここで、「上部」とは、ブリキ缶底面からの高さ40〜60mmの間の厚さ20mmの部分を、「下部」とは、ブリキ缶底面からの高さ0〜20mmの間の厚さ20mmの部分を意味している。なお、上記保存前の軟化点(初期軟化点)も測定した。
【0067】
軟化点の測定は、JIS K 2207[石油アスファルト]に規定の環球法に準拠して実施した。昇温速度:5℃/分で常温から昇温を開始して測定した。
【0068】
実施例2〜4
改質アスファルトNo.1にナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22)を添加して、(メタ)アクリル系ポリマーの濃度が表1に示す値となるようにし、アスファルト改質材No.2〜4を調製した。得られたアスファルト改質材No.2〜4について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.2〜4を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0069】
実施例5
ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):30.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):0.6部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0070】
容量2Lのフラスコに、ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):270.0部、シクロヘキシルメタクリレート:195.0部、ステアリルアクリレート:105.0部、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から30分後および60分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から180分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が20400の(メタ)アクリル系ポリマーがナフテン系プロセスオイルに溶解したアスファルト改質材No.5を得た。アスファルト改質材No.5の(メタ)アクリル系ポリマー濃度は50%である。
【0071】
このアスファルト改質材No.5について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.5を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0072】
実施例6
ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):1.2部、および酢酸エチル:30.0部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0073】
容量2Lのフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート:195.0部、ステアリルアクリレート:105.0部、およびシクロヘキサン:270.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から50分後および90分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から240分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が25200の(メタ)アクリル系ポリマーのシクロヘキサン溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマーのシクロヘキサン溶液を180℃の減圧乾燥機で乾燥させてシクロヘキサンを除去し、さらに冷却した後に破砕して、フレーク状の(メタ)アクリル系ポリマーを得た。
【0074】
得られた(メタ)アクリル系ポリマーのフレーク:30部を、ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):120部に溶解させて、(メタ)アクリル系ポリマー濃度が20%のアスファルト改質材No.6を得た。なお、上記の溶解は、フラスコ中で、上記(メタ)アクリル系ポリマーフレークと上記ナフテン系プロセスオイルとを、60℃で1時間混合することにより行った。このアスファルト改質材No.6について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.6を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0075】
実施例7
実施例6で得られた(メタ)アクリル系ポリマー:30部を、パラフィン系プロセスオイル(新日本石油株式会社製「スーパーオイルE」):120部に溶解させて(メタ)アクリル系ポリマー濃度が20%のアスファルト改質材No.7を得た。なお、上記の溶解は実施例6と同様にして行った。このアスファルト改質材No.7について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.7を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0076】
実施例8
実施例6で得られた(メタ)アクリル系ポリマー:30部を、アロマ系プロセスオイル(新日本石油株式会社製「コウモレックス700」):120部に溶解させて(メタ)アクリル系ポリマー濃度が20%のアスファルト改質材No.8を得た。なお、上記の溶解は実施例6と同様にして行った。このアスファルト改質材No.8について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.8を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0077】
実施例9
ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):30.0部、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート:1.8部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0078】
容量2Lのフラスコに、ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):270.0部、シクロヘキシルメタクリレート:195.0部、共栄社化学株式会社製「ライトエステルL−8」(炭素数12〜15のアルキルエステル基を有するメタクリレートモノマー):105.0部、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下し、重合を開始させた。重合開始から30分後および60分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から180分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が22500の(メタ)アクリル系ポリマーがナフテン系プロセスオイルに溶解したアスファルト改質材No.9を得た。
【0079】
このアスファルト改質材No.9について実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.9を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表3および4に示す。
【0080】
実施例10
<アスファルト改質材No.10の製造>
ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF8):30.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):0.6部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0081】
容量2Lのフラスコに、ナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF8):270.0部、シクロヘキシルメタクリレート:180.0部、ステアリルアクリレート:105.0部、アクリル酸:15.0部、およびペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:3.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から30分後および60分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から180分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が41000の(メタ)アクリル系ポリマーがナフテン系プロセスオイルに溶解したアスファルト改質材No.10を得た。アスファルト改質材No.10の(メタ)アクリル系ポリマー濃度は50%である。このアスファルト改質材No.10について、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。また、アスファルト改質材No.10中の(メタ)アクリル系ポリマーについて、下記の理論酸価の計算方法に従って算出した理論酸価は、下記の通り38.9mgKOH/gであった。
[理論酸価の計算]
理論酸価(mgKOH/g)
=1×アクリル酸含有割合÷100÷アクリル酸分子量×56×1000
=1×5÷100÷72×56×1000
=38.9
ここで、1はアクリル酸1分子当たりのカルボキシル基数(1個)、56はKOHの分子量、1000はグラムをミリグラムに変換するための係数である。
【0082】
<改質アスファルトNo.10の製造>
容量500mLのフラスコに、アスファルト改質材No.10:6.0部と、ストレートアスファルト(コスモ石油株式会社四日市製油所製、針入度:60〜80):300部を仕込み、窒素雰囲気下で、190℃のオイルバスで加熱しながら、特殊機化工業株式会社製ホモミキサー「T.K.オートホモミクサーM型」を用い、回転数:4000rpmで撹拌して1時間混合し、改質アスファルトNo.10を得た。この改質アスファルトNo.10について、下記の剥離抵抗性試験を実施した。
【0083】
[剥離抵抗性試験]
改質アスファルトの骨材密着性を評価するため、該改質アスファルト被膜の骨材からの剥離面積率の測定を、石油学会規格、JPI−5S−27「アスファルト被膜のはく離試験方法」に準じて行った。ただし、この試験方法では目視で剥離面積率を判定するとされているが、評価の精度を高めるため、試験後の骨材の写真をコンピューターで読み込み、画像処理ソフトを用いて骨材全体および剥離部分の面積を夫々求めることによって剥離面積率を算出した。結果を表5に示す。
【0084】
実施例11
ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):1.2部、および酢酸エチル:30.0部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0085】
容量2Lのフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート:180.0部、ステアリルアクリレート:105.0部、アクリル酸:15.0部、および酢酸エチル:270.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から40分後および90分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から240分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が30000の(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を180℃の減圧乾燥機で乾燥させて酢酸エチルを除去し、さらに冷却した後に破砕して、フレーク状の(メタ)アクリル系ポリマーを得た。得られた(メタ)アクリル系ポリマーについて、実施例10と同様にして算出した理論酸価は38.9mgKOH/gであった。
【0086】
上記(メタ)アクリル系ポリマー:20部を、アロマ系プロセスオイル(新日本石油株式会社製「コウモレックス700」):120部に溶解させて(メタ)アクリル系ポリマー濃度が14%のアスファルト改質材No.11を得た。なお、上記の溶解は実施例6と同様にして行った。
【0087】
このアスファルト改質材No.11について、実施例1と同様にして各評価を行った。結果を表3に示す。また、さらに実施例10と同様にして改質アスファルトNo.11を製造し、実施例10と同じ評価を行った。結果を表5に示す。
【0088】
比較例1
アスファルト改質材No.1を使用しない他は、実施例1と同様にして改質アスファルトNo.12を得た。この改質アスファルトNo.12について、実施例1と同じ評価を行った。結果を表4に示す。
【0089】
比較例2
ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート:6.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル):0.60部、および酢酸エチル:30.0部を混合して開始剤溶液を調製した。
【0090】
容量2Lのフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート:285.0部、2−エチルヘキシルアクリレート:15.0部、および酢酸エチル:270.0部を仕込み、これを窒素雰囲気下で撹拌しながら90℃の湯浴で加熱した。系内の温度がほぼ一定になった時点で、この系内に、上記の開始剤溶液の3分の1量を滴下ロートを用いて滴下して重合を開始させた。重合開始から50分後および90分後に、上記開始剤溶液の3分の1量ずつを滴下し、さらに重合を進行させた。重合開始から240分後に系内を冷却して重合を終了させ、重量平均分子量が22400の(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。この(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を180℃の減圧乾燥機で乾燥させて酢酸エチルを除去し、さらに冷却した後に破砕して、フレーク状の(メタ)アクリル系ポリマーを得た。
【0091】
容量500mLの金属製釜に、得られた(メタ)アクリル系ポリマー:4.2部およびストレートアスファルト(コスモ石油株式会社四日市製油所製、針入度:150〜200):300部を仕込み、窒素雰囲気下で、190℃のオイルバスで加熱しながら、特殊機化工業株式会社製ホモミキサー「T.K.オートホモミクサーM型」を用い、回転数:8000rpmで撹拌しつつ、SBS(クレイトンD−1101):24.0部を添加して1時間混合し、改質アスファルトNo.13を得た。この改質アスファルトNo.13について、実施例1と同じ評価を行った。結果を表3および4に示す。
【0092】
比較例3
実施例6で得られたアスファルト改質材No.6:30部にナフテン系プロセスオイル(クリセフオイルF22):120部を添加して、(メタ)アクリル系ポリマー濃度が5%のアスファルト改質材No.14を得た。このアスファルト改質材No.14について、実施例1と同様にして各評価を行い、さらに実施例1と同様にして改質アスファルトNo.14を製造し、実施例1と同じ評価を行った。結果を表3および4に示す。
【0093】
比較例4
ストレートアスファルト(コスモ石油株式会社四日市製油所製、針入度:60〜80)について、実施例11と同様にして剥離抵抗性試験を行った。結果を表5に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
なお、表1および表3において、CHMA:シクロヘキシルメタクリレート、2EHA:2−エチルヘキシルメタクリレート、STA:ステアリルアクリレート、AA:アクリル酸、ライトエステル:共栄社化学株式会社製「ライトエステルL−8」を意味する。
【0100】
表1〜5から以下のことが分かる。実施例1〜11のアスファルト改質材は上記動粘度が良好であり、このうち、改質アスファルトにおいて、アスファルトとSBSの相分離の程度を評価した実施例1〜9では、該相分離を高度に抑制できている。また、骨材密着性を評価した実施例10および11では、剥離面積率が小さく、改質されていないストレートアスファルト(比較例4)に比べ、良好な骨材密着性を有している。
【0101】
これに対し、アスファルト改質材を用いずに改質アスファルトを得た比較例1、(メタ)アクリル系ポリマーのみを用い、オイルは使用せずに改質アスファルトを得た比較例2、上記動粘度が低いアスファルト改質材を用いて改質アスファルトを得た比較例3では、これらの改質アスファルトにおいて、軟化点差が大きく、アスファルトとSBSの相分離が十分に抑制されていない。
【0102】
【発明の効果】
本発明のアスファルト改質材およびアスファルトの改質方法によれば、優れたアスファルト特性向上機能を有する(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを、簡易且つ良好にアスファルト中に溶解または分散させ得るため、エラストマーを含む改質アスファルトにおけるアスファルトとエラストマーとの相分離抑制や、アスファルトの骨材密着性向上を高いレベルで達成できる。
【0103】
また、本発明のアスファルト改質材の製造方法によれば、上記本発明のアスファルト改質材の生産性を格段に高めることができる。
Claims (6)
- 必須成分として、(メタ)アクリル系ポリマーおよびオイルを含み、該(メタ)アクリル系ポリマーが該オイルに溶解または分散しており、JIS K 2283の規定に準じて測定される100℃での動粘度が、15mm2/sec以上であることを特徴とするアスファルト改質材。
- 上記オイルは、ナフテン系オイルまたはパラフィン系オイルである請求項1に記載のアスファルト改質材。
- 上記(メタ)アクリル系ポリマーは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構造単位を有するものである請求項1または2に記載のアスファルト改質材。
- 上記(メタ)アクリル系ポリマーは、多価メルカプタン残基が核となっている星型ポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載のアスファルト改質材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のアスファルト改質材を製造する方法であって、オイル中で(メタ)アクリル系モノマーを重合することを特徴とするアスファルト改質材の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のアスファルト改質材を、アスファルトに添加することを特徴とするアスファルトの改質方法。
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JP2007277994A (ja) * | 2006-04-10 | 2007-10-25 | Nippon Road Co Ltd:The | 路面表面の施工方法 |
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2003
- 2003-03-25 JP JP2003083385A patent/JP2004292494A/ja not_active Withdrawn
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