JP2004291304A - 繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】60〜90℃の範囲から選ばれる温度Tmに保持した型内に、強化繊維基材と熱可塑性樹脂からなるバインダーが交互に重なるように配置し、その後に液状熱硬化性樹脂を注入して硬化することからなり、用いるバインダーと液状熱硬化性樹脂が下記条件(A)を満たすことを特徴とする繊維強化複合材料の成形方法。条件(A):バインダー70重量部と液状熱硬化性樹脂30重量部を混合して温度Tmで保持した時、液状硬化性樹脂がゲル化するに至るまでバインダーが完全溶解しないこと。
【選択図】なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材などに好適に用いられる繊維強化複合材料に関し、詳しくはレジン・トランスファー・モールディング法による耐衝撃性に優れた繊維強化複合材料の製造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維と不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂などのマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度、剛性、耐衝撃性、耐疲労性などの機械物性に優れ、さらに耐食性に優れるため、航空機、宇宙機、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築、スポーツ用品などの数多くの分野に応用されてきた。これら用途のうち、特に高性能が要求される用途では、連続繊維を用いた繊維強化複合材料が用いられ、強化繊維としては炭素繊維が、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂、とりわけエポキシ樹脂が多く用いられている。
【0003】
ところで、繊維強化複合材料は様々な方法で製造することができるが、特に、型内に配置した強化繊維基材に液状の熱硬化性樹脂組成物を注入し、加熱硬化して繊維強化複合材料を得るレジン・トランスファー・モールディング法(Resin Transfer Molding Method、以下RTMと略記)が、生産性に優れ、かつ低コストな製造方法として近年注目されている。このRTM法で所定形状の繊維強化複合材料を製造する場合、強化繊維基材を目的とする製品と近い形状に予め加工したプリフォームを作製し、そのプリフォームを型内に設置して熱硬化性樹脂を注入することが多い。かかるプリフォームの作製方法には、強化繊維から3次元ブレイドを作製する方法や、強化繊維織物を積層してステッチする方法など、いくつかの方法が知られているが、汎用性の高い方法として、ホットメルト性のバインダー(タッキファイアーとも呼ばれる)を用いて強化繊維織物などの複数のシート状基材を接合、積層し、次いで上記所定形状に賦形する方法が知られている(例えば非特許文献1)。
【0004】
かかるバインダーは室温では粘着性を持たず、高温で軟化して接着性を有するような樹脂組成物が用いられる。バインダーを強化繊維基材に付与する方法としては、粒子または繊維を散布して熱により固定する方法(特許文献1)、溶液をスプレーした後乾燥する方法(非特許文献2)、水分散液を付与したのち乾燥する方法(特許文献2)等が知られている。
【0005】
バインダーとしては、特許文献1で述べられているように、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂ともに適用可能である。熱硬化性樹脂は、通常は熱可塑性樹脂と比べると靭性に劣るため、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料には、耐衝撃性を高めるという一般的な課題がある。特に積層構造を持つ繊維強化複合材料は外観に影響しない程度の衝撃によっても内部、特に層間にクラックが発生し、強度(特に圧縮強度)が著しく低下するという問題があった。
【0006】
この課題に対して、熱硬化性樹脂自体を熱可塑性樹脂やエラストマーの添加などの手法によって改質する方法、およびクラックの入りやすい層間に熱可塑性樹脂もしくはエラストマーを存在させる手法が有効であることが知られている。
【0007】
前者の方法は、熱硬化性樹脂の粘度が著しく上昇するため、RTMには適さない。ところが、後者の手法はバインダー技術の応用によりRTMにも比較的容易に適用可能である。
【0008】
強化繊維織物などのシート状基材同士をバインダーによって接着して得たプリフォームを用いて作製した繊維強化複合材料においては、バインダーもしくはバインダーの硬化物が層間に存在することになる。特許文献3,4,非特許文献2には、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂またはエラストマーを加えたバインダー組成物が開示されており、それにより耐衝撃性が改良されることが述べられている。
【0009】
高靭性化成分として熱可塑性樹脂とエラストマーを比較すると、弾性率が高い熱可塑性樹脂の方が優れていると考えられる。
【0010】
しかし、特に強化繊維の体積分率が高い繊維強化複合材料をRTMにて製造する場合、これらの技術を用いても耐衝撃性の改良は必ずしも十分ではない。
【0011】
一般に繊維強化複合材料は強化繊維の体積分率が高いほど機械物性に優れ、さらに軽量化が可能になるため、特に航空機部材、宇宙機部材では強化繊維の体積分率が55%以上要求されることが多い。このような強化繊維の体積分率の高い繊維強化複合材料をRTMで得るには、先ずバインダーを含んだプリフォームをバインダーのガラス転移温度より高い温度まで加熱し圧力をかけてプリフォームの見かけ厚みを薄くし、さらに液状熱硬化性樹脂注入後にバインダー成分を該樹脂に溶解させることにより強化繊維基材間の厚みを実質的に消失させていた。
【0012】
しかしながら、この様な方法で得られた繊維強化複合材料は、強化繊維基材間の厚みが極端に薄くなるため層間樹脂の塑性変形領域が確保されず、たとえ高靱性化成分としての熱硬化性樹脂やエラストマーを含むバインダーを用いても、繊維強化複合材料の耐衝撃性を向上させることには限界があり、さらに進歩した技術が望まれていた。
【0013】
【特許文献1】
米国特許第4988469号明細書(第3−4頁)
【0014】
【特許文献2】
欧州特許第0759842号明細書(第 2−6頁)
【0015】
【特許文献3】
国際公開第98/50211号パンフレット(第20頁)
【0016】
【特許文献4】
国際公開第02/42376号パンフレット(第 31頁)
【0017】
【非特許文献1】
ビッキ・P・マコネル(Vicki P. McConnell), SAMPEジャーナル(SAMPE Journal), (米国),1998年,第34巻, 第6号, p.37−43
【0018】
【非特許文献2】
エドアルド・P・デパーセ(Edoardo P. Depase), ブライアン・S・ヘイズ(Brian S. Hayes), ジェームズ・C・セフェリス(James C. Seferis), 第33回国際SAMPE技術会議予稿集(Proceeding of 33rd International SAMPE Technical Conference), (米国),2001年,p.1379−1387
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、強化繊維の体積分率が高く、且つ耐衝撃性、特に衝撃後圧縮強度に優れた繊維強化複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、本発明のRTM成形法は60〜90℃の範囲内の任意温度Tmに保持した型内に、強化繊維基材と熱可塑性樹脂からなるバインダーを交互に重なるように配置し、その後に液状熱硬化性樹脂を注入して硬化させる繊維強化複合材料の製造方法であって、前記バインダーと液状熱硬化性樹脂との混合状態が下記条件(A)を満たすことを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法。
【0021】
条件(A):バインダー60〜80重量部と、液状熱硬化性樹脂20〜40重量 部を混合して上記温度Tmで保持した時、液状熱硬化性樹脂がゲル 化するに至るまでバインダーが溶解しないこと。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の繊維強化複合材料製造方法の好ましい実施の形態を、成形法としてRTM法を採用した場合を例にとって、製造工程順に沿って説明する。
1.<成形型の準備工程>
成形型は、例えば、鋼製の上型と下型とからなるクローズドモールドを用いてもよく、鋼製の平板状オープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いる方法も可能であるが、後者の場合、型作製費が安価ですむので経済的に有利である。剛体のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いる方法の場合、強化繊維基材は剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置する。
【0023】
剛体材料としては、スチールやアルミニウムなどの金属の他、FRP、木材、石膏など既存のものが用いられる。可撓性フィルムの材料としては、ナイロン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが用いられる。
2.<強化繊維基材の準備工程>
本発明で言う強化繊維基材とは、液状熱硬化性樹脂を含浸させるための物であり、その形状としては、強化繊維の長繊維の束であるストランドや、これを用いて作製できる織物などのシート状あるいはテープ状の布帛やニット、ブレイド、マットなどに加工したものであり、強化繊維としては炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維など、あるいはこれらを組み合わせたものを使用できる。
航空機、宇宙機部材には炭素繊維が特に好ましく使用される。
3.<バインダーの準備工程>
成形型と強化繊維基材の準備ができたら、次に基材にバインダーを賦与する。
【0024】
ここで、本発明で言うバインダーとは、熱可塑性樹脂を主成分とするホットメルト性物質を意味する。本発明に用いるバインダーとしては、ガラス転移温度が150℃以上の非晶質熱可塑樹脂からなることが好ましい。150℃未満のガラス転移温度の低い非晶質熱可塑性樹脂を用いると、得られた繊維強化複合材料の耐熱性が不十分になる恐れがある。かかる条件を満足する非晶質熱可塑性樹脂としては、例えばポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホンなど、いわゆるエンジニアリングプラスチックスに属する熱可塑性樹脂が好ましく用いることができる。また、かかる非晶質熱可塑性樹脂は、末端または側鎖にRTM成形に用いる液状熱硬化性樹脂と反応しうる官能基、例えばカルボキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基、エポキシ基などを有することが好ましい。反応しうる官能基を有することで、硬化時に熱硬化性樹脂と化学結合し、熱硬化性樹脂と該バインダーの界面接着強度が向上することで繊維強化複合材料の耐衝撃性の向上効果が増大する。
【0025】
さらに、本発明に用いるバインダーは非晶質熱可塑性樹脂とともに適切な可塑剤成分を配合してバインダーのガラス転移温度を任意の範囲、具体的には50〜120℃に調整することが好ましい。ガラス転移温度が50℃より低いと保管中にバインダー同士が融着するなどの不都合が起こる恐れがあり、120℃よりも高いと低温での加工性が得られない、また繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度が低下すると行った問題を生ずることがある。ここで可塑剤成分は液状熱硬化性樹脂と反応しうる化合物を選ぶ必要がある。かかる可塑剤成分としては、特にエポキシ樹脂が好ましい。可塑剤成分として用いるエポキシ樹脂は特に限定されないが、具体例としてビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N−グリシジルフタルイミド、5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンイソシアネートの付加により得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂およびフェノールアラルキル型エポキシなどを挙げることができる。
【0026】
エポキシ樹脂以外の可塑剤成分としては、ポリフェノール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、ポリアクリレート、スルホンアミドなどが好ましく用いられる。例えば、ポリフェノールとしては、4−tert−ブチルカテコール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、リモネン1分子とフェノール2分子の縮合に得られるビスフェノールなどを例示することができる。
また、ポリアミンとしては、ジエチルトルエンジアミンを例示することができる。ポリカルボン酸としては、5−tert−ブチルイソフタル酸を例示することができる。
【0027】
また、ポリカルボン酸無水物としては、メチルフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物を例示することができる。ポリアクリレートとしては、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを例示することができる。スルホンアミドとしては、ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミドを例示することができる。
【0028】
このような反応性可塑剤は、複数種組み合わせて用いることができるが、その場合は同系の化合物、たとえばエポキシ樹脂同士、あるいは互いに反応しない組み合わせ、あるいはエポキシ樹脂とポリアクリレートを選ぶ必要がある。エポキシ樹脂とポリアミンのように容易に反応する組み合わせは長期保管した場合に反応が進行してバインダーのガラス転移温度が上昇してしまい、バインダーとして使用できなくなる恐れがあるので好ましくない。
【0029】
本発明に用いるバインダーには、非晶質熱可塑性樹脂を10〜80%含むことが好ましい。非晶質熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲より少ないと耐衝撃向上効果の発現が少なくなる恐れがあり、多いとバインダーのガラス転移温度が高くなる。本発明に用いるバインダーが可塑剤成分を含む場合は、20〜90%含むことが好ましい。バインダーにはその他の任意成分として酸化防止剤、非溶解性の有機粒子、無機粒子などを配合することができる。特に有機粒子として架橋ゴム粒子や非溶解性の熱可塑性樹脂粒子は、高靭性化効果を向上させるために有効である。バインダーの形態については通孔を設けたフィルム、テープ、長繊維、短繊維、紡績糸、織物、ニット、不織布、粒子など特に制限なく使用できるが、低コストで製造可能なことから粒子形状が好ましい。粒子形状を用いた場合は平均粒径が30〜200μmの粒子が好ましい。平均粒径を30μm以上とすることで、バインダーが強化繊維基材の中に埋没することを防ぎ、スムーズに液状熱硬化性樹脂を含浸することができる。(また、バインダー組成物の)一方、平均粒径を200μm以下とすることにより、バインダーを付与した強化繊維基材を複数枚積層したときにうねりが生じ、繊維強化複合材料の物性に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
4.<強化繊維基材とバインダーの配置工程>
本発明においては、型内に強化繊維基材を配置する際、強化繊維基材とバインダーが交互に重なるように配置する。
【0030】
このような強化繊維基材およびバインダーの配置の具体的方法としては、次に述べるいくつかの実施方法があるが、いずれの方法を用いても良い。
【0031】
まず、第1の実施形態は、強化繊維基材を型内に配置し、その上にバインダーをキャスター装置やスプレー装置をなどを用いて散布することにより、5〜50g/m2の目付で付与し、さらに強化繊維基材をその上に配置する操作を繰り返す方法である。この場合、後工程の液状熱硬化性樹脂注入に先立って、型内にて加熱、加圧を行うことが可能である。この操作は強化繊維基材の見掛け密度を高める効果があり、強化繊維含有率の高い繊維強化複合材料を得るために有効である。
【0032】
第2の実施形態は、少なくとも片面に5〜50g/m2の目付でバインダーを予め付与したシート状またはテープ状の強化繊維基材を複数層、順次積層して型内に配置する方法である。この場合も後工程の液状熱硬化性樹脂注入に先立って、型内にて加熱加圧を行うことが可能である。
【0033】
第3の実施形態は、強化繊維基材の表面にバインダーを上記方法により5〜50g/m2の目付で散布し、強化繊維基材を重ねる操作を繰り返して強化繊維基材を積層し、加熱、加圧して得たプリフォームを型内に配置する方法である。なお、プリフォームを作製する場合は、成形に用いる型とは別のプリフォーム型を用いる。
【0034】
第4の実施形態は、少なくとも片面に5〜50g/m2の目付でバインダーを予め付与したシート状またはテープ状の強化繊維基材を予め作製し、これを成形型とは別に設けたプリフォーム型内に積層して加熱、加圧して得たプリフォームを型内に配置する方法である。なお、型内には、強化繊維基材以外にフォームコア、ハニカムコア、金属部品などを設置し、これらと一体化した複合材料を得ることも可能である。特にフォームコアの両面に強化繊維基材を配置して成形して得られるサンドイッチ構造体は、軽量で大きな曲げ剛性を持つので、例えば航空機や自動車などの外板材料として有用である。上述したように、強化繊維基材の表面に付与するバインダーの量は少なくとも片面に5〜50g/m2の目付で付着していることが好ましい。目付を5g/m2以上とすることで、効率よく形態固定を達成し、また高靭性化の効果を得ることができる。一方、目付を50g/m2以下とすることで、強化繊維基材のみかけ体積が大きくなることを防ぎ、強化繊維の体積含有率の大きい繊維強化複合材料の製造が可能となり、また、熱硬化性樹脂を効率よく含浸させることができる。
5.<液状熱硬化性樹脂の注入工程>
強化繊維基材とバインダーの配置が終わったら、次に液状熱硬化性樹脂を注入する。成形型としてクローズドモールドを使用する場合、通常の注入方法としては、送液ポンプを使用し圧力をかけて液状熱硬化性樹脂を注入する。また、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続してモールド内を予め真空引きしてから送液ポンプに液状熱硬化性樹脂を注入しても良い。成形型としてオープンモールドと可撓性フィルムを使用する場合は、通常は吸引と大気圧による注入を採用できる。大気圧による注入で良好な含浸を実現するためには、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。オープンモールドと可撓性フィルムからなる成形型はクローズドモールドより低コストで型を作製できる利点があり、この方法を採用した場合には、型内に強化繊維基材とバインダーを配置した後、ピールプライと樹脂拡散媒体をその上に重ねて配置し、可撓性フィルムを用いてバギングして型の温度を60〜90℃の範囲、好ましくは65〜80℃の範囲内の任意温度Tmに保持した後、型内を−90kPa以下になるまで真空引きして5〜120分保持することで強化繊維の体積分率を適当な高さに保ち、見かけ厚みを小さくすることができる。上記温度Tmの設定は、比較的安価な熱源、具体的には熱水や熱風が利用できるため経済的に有利であり、また高性能の発現しやすい比較的粘度の高い熱硬化性樹脂の使用が可能になるので高性能の繊維強化複合材料を得るために有利である。
【0035】
ところで、上述したように本発明に用いるバインダーは、バインダー60〜80重量部と成形に用いる液状熱硬化性樹脂20〜40重量部を混合して上記温度Tmで保持した時、液状熱硬化性樹脂がゲル化するに至るまでに、バインダーが液状熱硬化性樹脂に溶解しないことが必要であり、できれば完全に液状熱硬化性樹脂に溶解しないことが好ましい。ここで、バインダーと液状熱硬化性樹脂の上記配合比は実際の成形における層間部分を模擬的に再現したものである。
【0036】
溶解の定量方法としては、例えば、上記配合比の混合物を少量カバーガラスに挟み、顕微鏡用冷却・加熱装置(例えばジャパンハイテック(株)製TH−600PM)の熱セル部にセットして上記温度Tmに加熱、保持し、一定時間ごとに顕微鏡にてバインダー形状を観察して面積減少量を算出する方法がある。この方法のバインダーの初期面積に対して、面積低下率は40%以下、より好ましくは35%以下であることが好ましい。
【0037】
液状熱硬化性樹脂がゲル化するに至るまでにバインダーが上記条件および測定方法で初期面積に対して、面積低下率が40%以上の場合、溶解したバインダーは熱硬化性樹脂と共に流動し、層間に残存しないため得られた繊維強化複合材料に充分な層間厚みが得られず、耐衝撃性、特に衝撃後圧縮強度の向上効果がほとんど得られないので好ましくない。上記条件においてバインダーの一部が液状熱硬化性樹脂に溶解すること、および溶解しなかったバインダーが液状熱硬化性樹脂により膨潤することはかまわない。
【0038】
本発明に用いる液状熱硬化性樹脂としては、耐熱性が高く、硬化時に揮発分をほとんど生じない熱硬化性樹脂が好ましい。具体的にはエポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンズオキサジン樹脂が好ましく用いられる。これらのうち、価格と性能のバランスや、市販原料が豊富で設計の自由度が高いという点でエポキシ樹脂がもっとも好ましい。エポキシ樹脂とは、エポキシ基を分子内に複数含む化合物であり、具体的にはビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N−グリシジルフタルイミド、5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンイソシアネートの付加により得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、何らかの硬化剤と組み合わせて用いられる。
【0039】
硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ヒドラジド、酸無水物、ポリメルカプタン、ポリフェノールなど、量論的反応を行う硬化剤と、イミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩のように触媒的に作用する硬化剤がある。量論的反応を行う硬化剤を用いる場合には、硬化促進剤、例えばイミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩、ホスフィンなどを配合する場合がある。RTM成形に用いるエポキシ樹脂の硬化剤には、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、イミダゾールが適しており、特に耐熱性に優れた構造材の製造を目的とする場合は、芳香族アミンが硬化剤として最も適している。
【0040】
液状熱硬化性樹脂を貯めておく容器の温度は、比較的粘度の高い熱硬化性樹脂が十分流動するように、型の温度と近いことが重要である。即ち、本発明のRTM成形法においては、前記の型温度をTmとすると、熱硬化性樹脂の容器の温度はTm−20〜Tm+20℃の範囲とする。好ましくはTm−10〜Tm+10℃である。前記数値範囲の下限値を下回ると容器中の熱硬化性樹脂の粘度が高くなるため送液に不利になる。また、型に注入した熱硬化性樹脂の温度が型の温度まで上がるまで粘度が高い状態にあるため、強化繊維への含浸が不利になる。一方、上限値を上回るとポットライフが短くなるため好ましくない。
【0041】
熱硬化性樹脂は、単一の液体を注入する場合と、2乃至3の容器に異なる液体を保持し、これらを一定比率で混合しながら注入する場合がある。複数の容器に異なる液体を保持する場合は、すべての容器の温度が上記の範囲であることが好ましい。このような注入を可能にするためには、温度Tmにおける初期粘度が400mPa・s以下である液状熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。該初期粘度が、200mPa・s以下であればさらに好ましい。初期粘度が上記の範囲より高いと含浸性が不十分になる。
【0042】
さらに温度Tmにおいて十分なポットライフを持つ、具体的には調合した液状熱硬化性樹脂を温度Tmに保ったときのゲル化時間が1〜12時間であることが好ましい。ゲル化時間が1.5〜8時間であればより好ましい。ゲル化時間が上記範囲より短いと、強化繊維体積含有率の高い(具体的には50%以上)繊維強化複合材料、あるいは大型の繊維強化複合材料(具体的には最長寸法が2m以上)の成形を行う場合に含浸が不十分になるなど不利になる。ゲル化時間が上記範囲より長いと成形サイクルが非常に長くなり、コスト面で不利になり、また、長時間バインダーと接触することでバインダーが液状熱硬化性樹脂に完全溶解してしまい、得られた繊維強化複合材料の耐衝撃性が充分得られないといった問題を生じる恐れがある。
6.<液状熱硬化性樹脂の硬化工程>
液状熱硬化性樹脂の注入が完了した後、型内で硬化が行なわれる。この時の硬化温度は、注入時の型温Tmとの差が小さいほど、昇温に要する時間が少ないため好ましい。具体的にはTm〜Tm+80℃の範囲から選ばれる温度であることが好ましく、Tm〜Tm+50℃の範囲から選ばれる温度であることが更に好ましい。この温度を保持する時間、すなわち硬化時間は、0.5〜12時間の範囲から選ばれる時間であることが好ましく、0.5〜5時間の範囲から選ばれる時間であることが型占有時間を短くするためさらに好ましい。
【0043】
バインダーに含まれる可塑剤成分が未反応のまま大量に残存すると繊維強化複合材料中にガラス転移温度の低い相が含まれることになり、繊維強化複合材料の耐熱性、すなわち高温時の機械物性が損なわれる。これを避けるためには加熱硬化の過程において、バインダーの中に液状熱硬化性樹脂が浸透し膨潤させること、もしくはバインダー中の可塑剤成分が液状熱硬化性樹脂中に移行することが好ましい。バインダーの中に液状熱硬化性樹脂が浸透した場合、バインダー組成物に含まれる可塑剤成分(好ましくはエポキシ樹脂)が熱硬化性樹脂中の硬化剤と反応し、バインダー中の可塑剤成分が液状熱硬化性樹脂に移行した場合は、可塑剤成分と液状熱硬化性樹脂が反応するため耐熱性の著しい低下はおこらない。
7.<脱型・後硬化工程>
型内での硬化が終了した後、脱型して繊維強化複合材料を取り出す。脱型の温度は硬化温度から室温までの任意の温度で良い。
【0044】
脱型した繊維強化複合材料は、それ以上の熱処理をせずに製品とすることも可能であるが、150〜250℃の範囲から選ばれる温度で後硬化することが好ましい。特に高度な耐熱性が要求される場合以外は、150〜190℃の範囲から選ばれる温度で後硬化することが、経済的であるためより好ましい。前記後硬化温度に保持する時間は、0.5〜4時間の範囲から選ばれる時間であることが好ましい。
【0045】
以上で本発明の製造方法が完了するが、本発明の製造方法は、特に液状熱硬化性樹脂の注入液状熱硬化性樹脂の注入工程において、液状熱硬化性樹脂がゲル化に至るまでにバインダーが溶解しない条件を採用しているので
、得られた繊維強化複合材料の力学物性、特に衝撃後圧縮強度に優れており、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材などの航空機部材、モーターケース、主翼などの宇宙機部材、構体、アンテナなどの人工衛星部材、外板、シャシー、空力部材、座席などの自動車部材、構体、座席などの鉄道車両部材、船体、座席などの船舶部材など多くの部材の製造に好適に用いることができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する
<炭素繊維織物の製造>
実施例で用いた炭素繊維織物は以下のように作成した。
【0047】
炭素繊維T800S−24K−10C(東レ(株)製)を経糸とし、ガラス繊維ECE225 1/0 1Z(日東紡(株)製)を緯糸として平織の織物を作成した。縦糸密度は7.2本/25mmとし、横糸密度は7.5本/25mmとした。織物の炭素繊維目付は285g/m2であった。
<熱硬化性樹脂>
以下の実施例では、2液型のアミン硬化型エポキシ樹脂を用いた。
【0048】
樹脂組成は以下の通り。一旦主剤液と硬化剤液の2つの組成物を調製し、使用直前にこれらの液体を混合した。混合物の80℃における初期粘度は100mPa・sであり、ゲル化時間は2.5時間である。下記の組成は、混合液中の組成比であり、単位は重量部である。
(主剤液成分)
・“エピコート”630 (ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂) :35部
・“エピコート”825(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂) :10部
・“エピコート”806(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂) :10部
・AK−601(日本化薬(株)製エポキシ樹脂) :20部
・NC−3000(日本化薬(株)製エポキシ樹脂) :25部
(硬化剤成分)
・“エピキュア”W(ジャパンエポキシレジン(株)製芳香族ポリアミン) :20部
・“スミキュア”S(住友化学(株)製芳香族ポリアミン) :8部
・3,3’−DAS(三井化学(株)製芳香族ポリアミン) :8部
・t−ブチルカテコール(宇部興産(株)製) :1部
<繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度の測定>
成形した繊維強化複合材料板から縦152.4mm、横101.6mmの矩形試験片を切り出し、試験片の中心にSACMA SRM 2R−94に従い、640kJ/mの落錘衝撃を与えた後、衝撃後圧縮強度を測定した。
<実施例1>
ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製)60部、トリグリシジルイソシアヌレート(TEPIC、日産化学(株)製)4部、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピコート”806、ジャパンエポキシレジン(株)製)23部およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000、日本化薬(株)製)13部を2軸押出機にて210℃で混練した後、得られたペレットを凍結粉砕して平均粒径100μmのバインダーを得た。得られたバインダーのガラス転移温度をDSCで測定したところ66℃であった。得られたバインダー70重量部と前記の熱硬化性樹脂30重量部を混合し、少量をカバーガラスに挟み、顕微鏡用冷却・加熱装置TH−600PM(ジャパンハイテック(株)製)の熱セル部にセットし、80℃(Tm)における溶解性を顕微鏡を用いてバインダー形状の変化にて確認したところ、熱硬化性樹脂のゲル化時間である2.5時間後においてバインダーの面積減少率は35%であり、完全に溶解していなかった。
【0049】
このバインダーを前記の炭素繊維織物の片側表面に40g/m2の目付で散布し、遠赤ヒーターを用いて160℃加熱してバインダーを融着させてバインダー付強化繊維基材を得た。得られた基材を所定の寸法に切り出し、成形型内に疑似等方構成(+45゜/0゜/−45゜/90゜)3Sで積層し、さらに積層した基材の上にピールプライと樹脂拡散媒体を重ねてナイロン製フィルムを用いてバギングし、−90kPa以下まで真空引きした後、型全体を80℃(Tm)に加熱して積層した基材の見掛け密度を高めた。
【0050】
次にこの型内に80℃に調整した前記の液状熱硬化性樹脂を樹脂拡散媒体を通じて注入、含浸させた。注入完了後、オーブン内で130℃まで加熱して2時間硬化を行った。硬化完了後、脱型して繊維強化複合材料の板を取り出し、180℃のオーブン中で2時間後硬化を行った。
【0051】
得られた繊維強化複合材料の強化繊維の体積含有率は58%、衝撃後圧縮強度は270MPaであり、極めて高い値の満足すべきものであった。
<実施例2>
ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製)70部と4−tert−ブチルカテコール(宇部興産製、結晶)30部を2軸押出機にて200℃で混練した後、得られたペレットを凍結粉砕して平均粒径100μmのバインダーを得た。
【0052】
得られたバインダーのガラス転移温度をDSCで測定したところ、63℃であった。
【0053】
得られたバインダー70重量部と前記の熱硬化性樹脂30重量部を混合し、80℃における溶解性を実施例1と同様の手法で確認したところ、熱硬化性樹脂のゲル化時間である2.5時間後における面積減少率は38%でありバインダーは完全に溶解していなかった。このバインダーを用いて、散布量を35g/m2とした以外は実施例1と同様の条件でバインダー付強化繊維基材を作製した。得られた基材を所定の寸法に切り出し、プリフォーム型内に実施例1と同様に疑似等方構成で積層し、これをバギングして150℃のプレスを用いて基材同士を固着させプリフォームを得た。得られたプリフォームを成形型内に移し、ピールプライと樹脂拡散媒体をその上に重ねてバギングした後、実施例1同条件にて硬化して繊維強化複合材料を得た。
【0054】
得られた繊維強化複合材料の強化繊維の体積含有率は56%、衝撃後圧縮強度は252MPaであり極めて高い値であった。
<比較例1>
バインダーを含浸しない炭素繊維織物を切り出し、実施例1と同様の条件にて繊維強化複合材料を得た。
【0055】
得られた繊維強化複合材料の強化繊維含有率は63%、衝撃後圧縮強度は138MPaであり、いずれの実施例よりも低い値であった。この値は特別な高靭性化を行っていない繊維強化複合材料としては妥当な値である。
<比較例2>
熱硬化性樹脂として、前記の熱硬化性樹脂の硬化剤成分からt−ブチルカテコール(宇部興産(株)製)を抜いた樹脂組成物を使用した。この熱硬化性樹脂の80℃における初期粘度は100mPa・sであり、ゲル化時間は5時間であった。
【0056】
実施例1と同様のバインダー70重量部と、該熱硬化性樹脂30重量部を混合し、80℃におけるバインダーの溶解性を実施例1と同様の手法で確認したところ、熱硬化性樹脂のゲル化時間である5時間後において面積減少率は80%以上であり、バインダーはほぼ完全に溶解していた。
【0057】
実施例1と同様の条件でバインダー付強化繊維基材を作製し、さらに実施例1と同様の条件にて成形型内に疑似等方構成に積層して、バギングし、真空引き後80℃に加熱した。この型内に80℃に調整し該液状熱硬化性樹脂を樹脂拡散媒体を通じて注入、含浸させた。注入完了後、140℃まで加熱して2.5時間硬化を行った。硬化完了後、脱型して繊維強化複合材料の板を取り出し、180℃のオーブン中で2時間後硬化を行った。
【0058】
得られた繊維強化複合材料の強化繊維の体積含有率は58%、衝撃後圧縮強度は200MPaであり、いずれの実施例よりも低い値であった。
<比較例3>
ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製)50部と液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピコート”806、ジャパンエポキシレジン(株)製)50部を2軸押出機にて200℃で混練した後、得られたペレットを凍結粉砕して平均粒径90μmのバインダーを得た。得られたバインダーのガラス転移温度をDSCで測定したところ、45℃であった。得られたバインダー70重量部と実施例で使用した前記熱硬化性樹脂30重量部を混合し、80℃におけるバインダーの溶解性を実施例1と同様の手法で確認したところ、熱硬化性樹脂のゲル化時間である2.5時間後において面積減少率は90%以上でありバインダーはほぼ完全に溶解していた。
【0059】
得られたバインダーを用い、散布量を40g/m2とした以外は実施例2と同様の条件でバインダー付強化繊維基材を作製し、その後プリフォームを作製した。得られたプリフォームを用い、実施例2と同様の条件で繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の強化繊維の体積含有率は58%、衝撃後圧縮強度は193MPaであり、いずれの実施例よりも低い値であった。
【0060】
【発明の効果】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法によれば、バインダーと液状熱硬化性樹脂との混合状態が下記条件(A)を満たすことにより、強化繊維の体積分率が高く、且つ耐衝撃性、特に衝撃後圧縮強度に優れた繊維強化複合材料を製造することができ、宇宙機、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材料の製造に好適に用いることができる。
【0061】
条件(A):バインダー60〜80重量部と液状熱硬化性樹脂20〜40重量部を混合して60〜90℃の範囲内の任意温度(Tm)に保持した時、液状熱硬化性樹脂がゲル化するに至るまでバインダーが溶解しないこと。
Claims (9)
- 60〜90℃の範囲内の任意温度Tmに保持した型内に、強化繊維基材と熱可塑性樹脂からなるバインダーを交互に重なるように配置し、その後に液状熱硬化性樹脂を注入して硬化させる繊維強化複合材料の製造方法であって、前記バインダーと液状熱硬化性樹脂との混合状態が下記条件(A)を満たすことを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法。
条件(A):バインダー60〜80重量部と、液状熱硬化性樹脂20〜40重量 部を混合して上記温度Tmで保持した時、液状熱硬化性樹脂がゲル 化するに至るまでバインダーが溶解しないこと。 - ガラス転移温度が150℃以上の非晶質熱可塑性樹脂からなるバインダーを用いることを特徴とする請求項1の繊維強化複合材料の製造方法。
- 熱可塑性樹脂と共に可塑剤成分を含むバインダーを用いることを特徴とする請求項1の繊維強化複合材料の製造方法。
- 可塑剤成分がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項3の繊維強化複合材料の製造方法。
- ガラス転移温度が50〜70℃であるバインダーを用いることを特徴とする請求項1の繊維強化複合材料の製造方法。
- 液状熱硬化性樹脂の注入に先立って、型内で強化繊維基材とバインダーを加熱、加圧することを特徴する請求項1記載の繊維強化複合材料の製造方法。
- 強化繊維基材の型内への配置方法として、少なくとも片面に5〜50g/m2の目付でバインダーを予め付与したシート状またはテープ状の強化繊維基材を積層して型内に配置することを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合材料の製造方法。
- 強化繊維の型内への配置方法として、強化繊維基材の表面にバインダーを散布し、強化繊維基材を重ねる操作を繰り返して強化繊維基材を積層し、加熱、加圧して得たプリフォームを型内に配置することを特徴とする請求項1の繊維強化複合材料の製造方法。
- 強化繊維の型内への配置方法として、少なくとも片面に5〜50g/m2の目付でバインダーを予め付与したシート状またはテープ状の強化繊維基材を予め作製し、これを積層して加熱、加圧して得たプリフォームを型内に配置することを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合材料の製造方法。
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