JP2004043621A - 樹脂組成物、強化繊維基材およびこれらを用いた繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents
樹脂組成物、強化繊維基材およびこれらを用いた繊維強化複合材料の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
ガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂を用いながら、比較的低温で加工できるバインダーの機能をも兼ね備え、なおかつシェルフライフに優れ、経済的な調製が可能である、RTM法に適した高靭性化剤を提供することである。
【解決手段】
少なくとも下記2成分の均一な混合物からなり、ガラス転移温度が50〜120℃である樹脂組成物を繊維強化複合材料の高靭性化に用いる。
(1)ガラス転移温度が150℃以上の非晶質熱可塑性樹脂
(2)単独硬化性はもたず、熱硬化性樹脂との反応性をもつ可塑剤
【選択図】なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化複合材料に関し、より詳しくは耐衝撃性に優れた繊維強化複合材料を製造するための樹脂組成物および強化繊維基材並びにこれらを用いたレジントランスファーモールディング法(以下、RTM法という。)による繊維強化複合材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量で強度、剛性に優れる材料として、航空機部材、スポーツ用品など多くの分野で用いられている。マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂ともに用いられるが、低粘度で強化繊維への含浸が容易な熱硬化性樹脂が多く用いられる。典型的な熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂などが挙げられる。
【0003】
熱硬化性樹脂は、一般的に熱可塑性樹脂に対して靭性が劣る。熱硬化性樹脂を用いた繊維強化複合材料は、耐衝撃性をいかにして高めるかという課題をもつ。
【0004】
繊維強化複合材料の成形法の一つであるプリプレグ法では、熱可塑性樹脂を付与したプリプレグを積層し硬化させる手法でこの課題が解決された。プリプレグに付与する熱可塑性樹脂の形態には、様々な提案がなされている。具体的には、欧州特許出願公開第0366979A2号明細書に記載のフィルム、欧州特許出願公開第0496518A1号明細書に記載の多孔質フィルム、特開平01−320146号公報に記載の通孔フィルム、特開平05−287091号公報に記載のテープ、欧州特許出願公開第0274899A2号明細書、欧州特許出願公開第0707032A1号明細書に記載の粒子、米国特許第4874661号明細書に記載の短繊維、欧州特許出願公開第0488389A2号明細書に記載の長繊維、特開平08−176322号公報に記載の紡績糸、特開平02−032843号公報に記載の織物、欧州特許出願公開第0488389A2号明細書に記載の不織布、欧州特許出願公開第0657492A1号明細書に記載のニット、特開平08−048796号公報に記載の網状体を挙げることができる。
【0005】
近年の繊維強化複合材料の動向として、プリプレグのような中間体を経由せず、強化繊維基材に直接液状の熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化させるRTM法の適用拡大が挙げられる。RTM法は、成形コスト低減のポテンシャルを有するためである。RTM法において耐衝撃性を高めるために熱可塑性樹脂を用いる方法が開示されている。その一つとして、特開平08−300395号公報に、ガラス転移温度100℃以上、好ましくは150℃以上の熱可塑性樹脂で強化繊維基材の表面の少なくとも一部を被覆する方法が開示されている。被覆の方法としては、溶液被覆法、溶融液被覆法が挙げられている。さらに、国際公開第2000/58083A1号パンフレットには、熱可塑性樹脂からなる繊維を高靭性化成分としてプリフォームに付与する方法が開示されている。
【0006】
RTM法においては、強化繊維基材に少量のバインダー(加熱により軟化する樹脂)を付与して熱と圧力を加えて賦形するプリフォーミングの工程が含まれる。バインダーとしては、米国特許第4470862号、4988469号明細書に熱可塑性樹脂が、米国特許第4992228号明細書に、硬化剤を含まない熱硬化性樹脂が、国際公開第1994/26492A1号パンフレットに硬化性の熱硬化性樹脂が開示されている。
【0007】
以上から、バインダーとして適切な熱可塑性樹脂を用いると、賦形と高靭性化の両方の効果を共に実現できることが予想される。しかし、航空機部材など耐熱性が要求される用途では、複合材料の内部にガラス転移温度または融点の低い熱可塑性樹脂が含まれると高温時の機械物性が低下するため、ガラス転移温度または融点が高い、好ましくは150℃以上の、熱可塑性樹脂を選ぶ必要がある。しかし、そのような熱可塑性樹脂を用いるとプリフォーミングにおける加工温度が高くなるため、経済的に不利なプロセスになる。
【0008】
ガラス転移点あるいは融点の高い熱可塑性樹脂を用い、なおかつ比較的低温でのプリフォームの加工を可能にするための一つの提案として、国際公開第1998/50211A1号パンフレットでは、ガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂と硬化性の熱硬化性樹脂からなり、比較的低温で軟化するバインダー組成物が開示されている。
この方法は高靭性化剤である熱可塑性樹脂にガラス転移温度の高いものを用いることと、経済的に有利な比較的低温での加工を両立したという点で優れた方法であるが、硬化性の熱硬化性樹脂を成分として含むため、実用上好ましくない点があった。その一つは、保管中にバインダーの軟化温度が徐々に高くなり、ついには使用不可になるというシェルフライフの問題である。もう一つは、樹脂組成物の調製を高温で行えないため、押出機やニーダーなど溶剤不要で生産性のよい調製方法を用いるのが困難な点である。なお、該公報中の実施例では一度溶液を調製し、その後溶剤を除去する方法が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂を用いながら、比較的低温で加工できるバインダーの機能をも兼ね備え、なおかつシェルフライフに優れ、経済的な調製が可能である、RTM法に適した高靭性化剤である樹脂組成物、繊維強化基材およびこれらを用いた繊維強化複合材料の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するための、本発明の高靭性化剤は、少なくとも下記2成分を含む均一な混合物からなり、ガラス転移温度が50〜120℃である繊維強化複合材料の高靭性化に用いる樹脂組成物である。
【0011】
(1)ガラス転移温度が150℃以上の非晶質熱可塑性樹脂
(2)単独硬化性はもたず、熱硬化性樹脂との反応性をもつ可塑剤
この場合、前記(1)成分と前記(2)成分の重量比は、55:45〜80:20の範囲にするのが好ましい。また、平均粒径は、0.01〜500μmの範囲にするのが好ましい。上記樹脂組成物の製造方法は、溶剤を用いずに前記(1)および(2)成分を150〜200℃の温度範囲で加熱しつつ、混練する。
【0012】
本発明の繊維およびフィルムは、いずれも上記樹脂組成物を含むものである。
【0013】
また、本発明の強化繊維ストランドおよび強化繊維基材は、いずれも上記樹脂組成物を1〜15重量%の範囲で付与したものである。
【0014】
また、本発明のシート状強化繊維基材は、上記樹脂組成物を少なくとも片面に1〜50g/m2付着させたものである。
【0015】
また、本発明のプリフォームは、上記樹脂組成物を付与した強化繊維ストランドまたは強化繊維基材を加熱によって賦形して得られる。
【0016】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、上記樹脂組成物を1〜15重量%付与した強化繊維ストランドもしくは強化繊維基材に、またはこれらを加熱して得られるプリフォームに、液状熱硬化性樹脂をレジントランスファーモールディング法により含浸させ、熱硬化するものである。この場合、硬化中に樹脂組成物を液状熱硬化性樹脂に溶解させるのが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物の第1の成分はガラス転移温度が150℃以上の非晶質熱可塑性樹脂である。
【0018】
かかる非晶質熱可塑性樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホンなど、いわゆるエンジニアリングプラスチックスに属する樹脂が好ましく用いられる。
【0019】
かかる非晶質熱可塑性樹脂は、末端または側鎖にRTM成形に用いる液状熱硬化性樹脂と反応しうる官能基を有することが好ましい。
【0020】
液状熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ベンズオキサジン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が用いられるが、特に耐熱性と機械物性に優れるエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂が好ましい。中でも、比較的安価で組成設計の自由度が高く、様々な官能基との反応が可能であるエポキシ樹脂が最も好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂とは、エポキシ基を分子内に複数含む化合物であり、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp−アミノフェノールなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、単独ではほとんど硬化性をもたず、何らかの硬化剤と組み合わせて用いられる。硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ヒドラジド、酸無水物、ポリメルカプタン、ポリフェノールなど、量論的反応を行う硬化剤と、イミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩のように触媒的に作用する硬化剤がある。量論的反応を行う硬化剤を用いる場合には、その反応を触媒する硬化促進剤、例えばイミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩、ホスフィンなどを配合する場合がある。RTM成形に用いるエポキシ樹脂の硬化剤には、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、イミダゾールが適しており、特に耐熱性に優れた構造材の製造を目的とする場合は、芳香族アミンが硬化剤として最も適している。
【0022】
本発明の樹脂組成物の第2の成分は単独硬化性はもたず、熱硬化性樹脂との反応性をもつ可塑剤である。
【0023】
かかる反応性可塑剤は、比較的低分子量であり、液状熱硬化性樹脂とその硬化条件において反応しうる化合物が選択される。これらは単独硬化性をもたない必要がある。ここで、単独硬化性を持つとは、温度100〜200℃、2〜3時間程度の条件でガラス状の3次元架橋ポリマーを得ることができる、換言すれば熱硬化性樹脂として使用できることを意味する。加熱により若干の反応がおこり、粘度などが変化することは意味しない。
【0024】
単独硬化性をもつと、長期保管した場合、反応が進行して樹脂組成物のガラス転移温度が上昇し、ついににはバインダーとして使用できなくなる恐れがある。
また、単独硬化性をもつと、加熱して無溶剤で調製する方法、例えば押出機やニーダーなどを用いる方法が使用できなくなるため、経済的に不利である。さらに、単独硬化性をもたない成分を用いるため、樹脂組成物を繊維やフィルムなど様々な形態に加工できる利点がある。
【0025】
反応性可塑剤としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環などの環状構造を有する化合物を用いることが好ましい。鎖状構造のみを有する化合物には、熱硬化性樹脂の硬化物の耐熱性を低下させる恐れがある。
【0026】
かかる反応性可塑剤は、液状熱硬化性樹脂と2箇所以上で化学結合を形成しうる化合物が好ましい。1箇所でのみ化学結合を形成する化合物を用いた場合、熱硬化性樹脂の硬化物の耐熱性を低下させる恐れがある。ただし、1箇所でのみ化学結合を形成する化合物であっても、添加量が少量である場合や、前述のように環状構造を含む化合物である場合、2箇所以上で化学結合を形成しうる化合物と共に用いる場合などは問題なく使用することができる。
【0027】
かかる反応性可塑剤は、液状熱硬化性樹脂がアミン硬化型エポキシ樹脂である場合には、低分子量エポキシ樹脂、ポリフェノール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、ポリアクリレート、スルホンアミドなどが好ましく用いられる。
【0028】
低分子量エポキシ樹脂としては、フタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、レゾルシノールジグリシジルエーテルを例示することができる。
【0029】
ポリフェノールとしては、4−tert−ブチルカテコール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、リモネン1分子とフェノール2分子の縮合に得られるビスフェノールなどを例示することができる。
【0030】
ポリアミンとしては、ジエチルトルエンジアミンを例示することができる。
【0031】
ポリカルボン酸としては、5−tert−ブチルイソフタル酸を例示することができる。
【0032】
ポリカルボン酸無水物としては、メチルフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物を例示することができる。
【0033】
ポリアクリレートとしては、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを例示することができる。
【0034】
スルホンアミドとしては、ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミドを例示することができる。
【0035】
このような反応性可塑剤は、複数種組み合わせて用いることができるが、その場合は同系の化合物、たとえば低分子量エポキシ樹脂同士、あるいは互いに反応しない組合せ、例えば低分子量エポキシ樹脂とポリアクリレート、を選ぶ必要がある。低粘度エポキシ樹脂とポリアミンのように容易に反応する組み合わせは好ましくない。
【0036】
本発明の樹脂組成物において上記非晶質熱可塑性樹脂と反応性可塑剤は均一な混合物をなしている必要がある。均一に混合することにより、本来高いガラス転移温度をもつ非晶質熱可塑性樹脂が低温で加工が可能になるためである。
【0037】
本発明の高靭性化剤は、低温での加工を可能にするため、ガラス転移温度が50〜120℃であることが必要である。ガラス転移温度が50〜80℃であれば、さらに好ましい。このようなガラス転移温度を実現するためには、非晶質熱可塑性樹脂と反応性可塑剤の重量比が55:45〜80:20であることが好ましく、55:45〜70:30であればさらに好ましい。
反応性可塑剤の配合量が多すぎるとガラス転移温度が低くなりすぎ、保管中に粒子同士が融着するなどの不都合が起こる恐れがあり、反応性可塑剤の配合量が少なすぎるとガラス転移温度が高くなりすぎ、低温での加工が困難になるためである。
【0038】
本発明の樹脂組成物には、任意の成分として、これら以外の成分を含むことが可能であるが、その場合は非晶質熱可塑性樹脂と反応性可塑剤と均一に混合されていても、異なる相をなしていてもよい。
【0039】
非晶質熱可塑性樹脂と反応性可塑剤と均一に混合させる任意成分としては、酸化防止剤、液状熱硬化性樹脂に対する触媒などがある。だだし、これらは反応性可塑剤と実質的に反応しないものを選ぶ必要がある。均一に混合させる成分の配合量は非晶質熱可塑性樹脂と反応性可塑剤の混合物に対し、10重量%以下であることが好ましい。
【0040】
非晶質熱可塑性樹脂と反応性可塑剤と異なる相をなす任意成分としては、非溶解性の有機粒子、無機粒子を挙げることができる。特に有機粒子として架橋ゴム粒子や非溶解性の熱可塑性樹脂粒子は、高靭性化効果を向上させるために有効である。
【0041】
本発明の樹脂組成物の調製は、熱的に安定な成分のみを用いるため、特に大きな制限がなく、様々な公知な方法が用いられる。
【0042】
最も経済的な方法は、各成分を150〜200℃程度の比較的高温で、押出機、ニーダーなどを用いて混練する方法である。得られた樹脂組成物は、粉砕して粒子としたり、繊維やフィルムの形態に加工することもできる。
【0043】
もちろん、一度溶液を調製し、しかる後に、溶剤を除去する方法も可能である。さらに、有機溶剤溶液を水中に分散させエマルジョンとし、そのエマルジョンを加熱して溶媒を揮発させ、ディスパーションを調製する方法がある。ディスパーションは、そのまま強化繊維の加工に用いることもでき、濾過して粒子をとりだし、その粒子を用いることもできる。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、強化繊維または強化繊維基材に付与して用いられる。
強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維など、あるいはこれらを組合せたものが好適に使用される。本発明の樹脂組成物の複合材料製造への適用には2つのケースがある。複合材料全体を高靭性化するケースと、層間を集中的に高靭性化するケースである。これらのケースに応じて強化繊維への本発明の樹脂組成物の付与の形態が異なる。
【0045】
複合材料全体を高靭性化するケースでは、本発明の樹脂組成物の粒子またはそのディスパーションを強化繊維のストランドあるいは織物やブレイドなどの強化繊維基材に含浸させる方法があげられる。ディスパーションを用いた場合は、その後分散媒を加熱により除去する。本発明の樹脂組成物の粒子を付与した強化繊維ストランドまたは強化繊維基材は、脱落を防止するために、適切な温度で加熱して粒子を強化繊維に融着することが好ましい。このときの温度は60〜140℃である。含浸後適切な加熱を行い、本発明の樹脂組成物あるいは、本発明の樹脂組成物を繊維に加工し、強化繊維と混繊する方法も可能である。
【0046】
層間を高靭性化するケースでは、織物などのシート状基材の表面に適切な形態に加工した本発明の樹脂組成物を付与し、熱により固定する方法が好ましく用いられる。この場合の形態は、本発明の樹脂組成物は熱安定性がよく、様々な形態に加工できるため、通孔を設けたフィルム、テープ、長繊維、短繊維、紡績糸、織物、ニット、不織布、網状体、粒子などがいずれも適用可能である。熱固定するときの温度は、60〜150℃であることが好ましい。シート状基材への本発明の樹脂組成物の付与は、基材の製造時に付与することも可能であり、既存の基材に後加工として付与することもできるし、後述のプリフォーム作成時に基材の積層と本発明の樹脂組成物の付与を交互に行うこともできる。
【0047】
さらに別の方法として、強化繊維ストランドの表面に本発明の樹脂組成物を付与する方法も可能である。具体的には、強化繊維ストランドの表面に本発明の樹脂組成物の粒子を付着させ、加熱により固定する方法、強化繊維ストランドの表面に本発明の樹脂組成物の繊維を巻き付ける方法も使用することができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物を強化繊維ストランドあるいは織物やブレイド教科繊維基材に付与する場合、均一に付与する場合であれ、表面に付与する場合であれ、その付与量が強化繊維に対し請求項1の樹脂組成物を1〜15重量%であることが好ましい。付着量が上記範囲より少ないと、高靭性化の効果が少なく、付着量が多いと、強化繊維ストランドあるいは強化繊維基材のみかけ体積が大きくなるため、強化繊維の体積含有率の大きい繊維強化複合材料の製造が困難になる。
【0049】
織物などのシート状基材の表面に本発明の樹脂組成物を付与する場合は、少なくとも片面に1〜50g/m2付着させることが好ましい。付着量が上記範囲より少ないと、層間高靭性化の効果が少なく、付着量が多いと、強化繊維基材のみかけ厚みが大きくなるため、強化繊維の体積含有率の大きい繊維強化複合材料の製造が困難になる、あるいは熱硬化性樹脂の含浸性が乏しくなるなどの不利が生じる。
【0050】
本発明の樹脂組成物を付与したストランドは、これをもちいて織物やブレイドなどの強化繊維基材を作成し、これを用いてプリフォームを作成することができる。3次元ブレイドなどの基材はそのままプリフォームとして用いることもできる。本発明の樹脂組成物を付与したストランドは、マンドレルに捲回した後加熱して強化繊維ストランド同士を接着し、プリフォームを作成する方法にも用いられる。
【0051】
本発明の強化繊維を付与したシート状強化繊維基材は、所定の形状に切り出し、型の上で積層し、適切な熱と圧力を加えてプリフォームを作成するために用いることができる。加圧の手段はプレスを用いることもできるし、バギングして内部を真空ポンプで吸引して大気圧による加圧する方法を用いることもできる。プリフォームを作成するときの加熱の温度は、60〜150℃であることが好ましい
プリフォームには、強化繊維と本発明の樹脂組成物の他にフォームコア、ハニカムコア、金属部品などを一体化させることも可能である。
【0052】
上記のようにして得られた、強化繊維と本発明の樹脂組成物からなるプリフォームは、RTM成型に好適に用いられる。本発明においてRTM法とは、型内に設置した強化繊維基材あるいはプリフォームに液状熱硬化性樹脂を注入し、硬化して繊維強化複合材料を得る方法を意味する。
【0053】
型は、剛体からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛体のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いる方法も可能である。後者の場合、強化繊維基材は剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置する。
【0054】
剛体型の材料としては、金属(スチール、アルミニウムなど)、FRP、木材、石膏など既存の各種のものが用いられる。可撓性のフィルムの材料にはナイロン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが用いられる。
【0055】
剛体のクローズドモールドを用いる場合は、加圧して型締めし、エポキシ樹脂組成物を加圧して注入することが通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引することも可能である。吸引を行い、かつ、特別な加圧手段を用いず、大気圧のみでエポキシ樹脂を注入することも可能である。
【0056】
剛体のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、通常、吸引と大気圧による注入を用いる。大気圧による注入で、良好な含浸を実現するためには、米国特許第4902215号明細書に示されるような、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。さらに、強化繊維基材あるいはプリフォームの設置に先立って、剛体型の表面にゲルコートを塗布することも好ましく行われる。
【0057】
強化繊維基材あるいはプリフォームの設置が完了した後、型締めあるいはバギングが行われ、続いて液状熱硬化性樹脂の注入が行われ、液状熱硬化性樹脂の注入が完了した後に加熱硬化が行われれる。加熱硬化時の型の温度は、通常液状熱硬化性樹脂の注入時の型の温度より高い温度が選ばれる。加熱硬化時の型の温度は80〜180℃であることが好ましい。加熱硬化の時間は1〜20時間が好ましい。
【0058】
加熱硬化の過程において、本発明の樹脂組成物は一旦液状熱硬化性樹脂に溶解することが必要である。もし溶解せず、本発明の樹脂組成物が硬化後も残存すると繊維強化複合材料中にガラス転移温度の低い相が含まれることになり
、高温時の機械物性が損なわれる。本発明の樹脂組成物が液状熱硬化性樹脂に溶解した後は、反応性可塑剤は液状熱硬化性樹脂と反応し、ガラス転移温度を低下させる作用を失う。硬化が完了した時点では、本発明の樹脂組成物に由来する熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と均一な固溶体を形成してもよく、スピノーダル分解によって相分離してもよい。いずれの場合も高靭性で耐熱性に優れた樹脂硬化物となる。
【0059】
加熱硬化が完了した後、脱型して繊維強化複合材料を取り出す。その後繊維強化複合材料を硬化温度より高い温度で加熱する後硬化を行ってもよい。後硬化の温度は150〜200℃が好ましく、時間は1〜4時間が好ましい。
【0060】
本発明の樹脂組成物を付与した強化繊維ストランドあるいは強化繊維基材は、RTM法以外の成形法にも好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物を付与した強化繊維ストランドは、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、プリプレグ法に、本発明の樹脂組成物を付与した織物などの強化繊維基材はハンドレイアップ法、プリプレグ法に適する。
【0061】
また、本発明の樹脂組成物は、従来の熱硬化性樹脂を付与したプリプレグに、従来の熱可塑性樹脂の代わりに適用することも可能である。
【0062】
本発明の樹脂組成物を用いて製造した繊維強化複合材料は、生産性がよく、靭性に優れるため、宇宙機、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材料に好適に用いることができる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する
<炭素繊維織物の製造>
実施例で用いた炭素繊維織物は以下のように作成した。
【0064】
炭素繊維T800S−24K−10C(東レ(株)製)を経糸とし、ガラス繊維ECE225 1/0 1Z(日東紡(株)製)を緯糸として平織の織物を作成した。縦糸密度は7.2本/25mmとし、横糸密度は7.5本/25mmとした。織物の炭素繊維目付は295g/m2であった。
<液状熱硬化性樹脂>
以下の実施例では、2液型のアミン硬化型エポキシ樹脂を用いた。
【0065】
樹脂組成は以下のとおり。一旦主剤液と硬化剤液の2つの組成物を調製し、使用直前にこれらの液体を混合した。下記の組成は、混合液中の組成比であり、単位は重量部である。
(主剤液成分)
“アラルダイト”MY−721 (Vantico製エポキシ樹脂) 30部
AK−601(日本化薬(株)製エポキシ樹脂) 20部
“エピコート825”(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)20部
“エピクロン”HP7200L(大日本インキ(株)製エポキシ樹脂) 30部(硬化剤成分)
“エピキュア”W(ジャパンエポキシレジン(株)製芳香族ポリアミン)18部
“スミキュア”S(住友化学(株)製芳香族ポリアミン) 7.2部
3,3’−DAS(三井化学(株)製芳香族ポリアミン) 7.2部
p−トルエンスルホン酸プロピル(和光純薬(株)製) 1.8部
<繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度の測定>
繊維強化複合材料板から縦150mm、横100mmの矩形試験片を切り出し、試験片の中心にASTM D695に従い、640kJ/mの落錘衝撃を与えた後、衝撃後圧縮強度を測定した。
<実施例1>
ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製)のペレットを凍結粉砕して得た粉末60部とAK−601(ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、日本化薬(株)製)40部を混合したスラリーを2軸押出機で200℃で混練して、樹脂組成物のペレットを得た。
【0066】
樹脂組成物のガラス転移温度をTMA法で求めたところ、68℃であった。
このペレットを凍結粉砕して平均粒径約100μmの粒子を得た。
【0067】
この粒子を前記の炭素繊維織物の片面に40g/m2の散布量で散布し、つづいて120℃のカレンダーロールを用いて加圧し、樹脂組成物を付与した強化繊維基材を得た。
【0068】
えられた基材を切り出し、疑似等方構成(+45゜/0゜/−45゜/90゜)3Sで積層した。これをバギングし、120℃のプレスを用いて基材同士を固着させプリフォームを得た。
【0069】
このプリフォームに前記の液状熱硬化性樹脂を含浸させた。具体的には、離型剤を付与したステンレス板上にプリフォームを設置し、ピールプライと樹脂拡散媒体をその上に重ねてナイロン製フィルムを用いてバギングし、全体を70℃に加熱し、プリフォーム内部を真空ポンプで吸引しながら、樹脂拡散媒体を通じて液状熱硬化性樹脂組成物を注入した。
【0070】
注入完了後、130℃のオーブン中で2時間硬化を行った。硬化完了後、脱型して繊維強化複合材料の板を取り出し、180℃のオーブン中で2時間後硬化を行った。
【0071】
繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度を測定したところ、290MPaであり、後述の基材に本発明の樹脂組成物を付与しない比較例1と比べると極めて高い値であった。
<実施例2>
ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製)のペレットを凍結粉砕して得た粉末70部と4−tert−ブチルカテコール(宇部興産製、結晶)30部の混合物を2軸押出機で200℃で混練して、樹脂組成物のペレットを得た。
【0072】
樹脂組成物のガラス転移温度をTMA法で求めたところ、61℃であった。
このペレットを凍結粉砕して平均粒径約100μmの粒子を得た。
【0073】
この粒子を用いて、散布量を34.3g/m2とした以外は、実施例1と同様の条件で繊維強化複合材料を作成した。衝撃後圧縮強度を測定したところ、252MPaであり、かなり高い値であった。
<実施例3>
ポリフェニレンオキシド(SA120、GEプラスチック製)の粉末70部と4−tert−ブチルカテコール(宇部興産(株)製)30部の混合物を2軸押出機で200℃で混練して、樹脂組成物のペレットを得た。
【0074】
樹脂組成物のガラス転移温度をTMA法で求めたところ、52℃であった。
このペレットを凍結粉砕して平均粒径約100μmの粒子を得た。
【0075】
この粒子を用いて、散布量を30g/m2とした以外は、実施例1と同様の条件で繊維強化複合材料を作成した。衝撃後圧縮強度を測定したところ、242MPaであり、かなり高い値であった。
<比較例1>
樹脂組成物を付与しない炭素繊維織物を切り出し、疑似等方構成で積層し、プリフォーム化せずに、直接バギングして、液状熱硬化性樹脂を注入し、加熱硬化、後硬化を行って繊維強化複合材料を得た。注入温度、硬化条件、後硬化条件は実施例1と同一である。
【0076】
繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度を測定したところ、いずれの実施例よりも低い152MPaであった。この値は特別な高靭性化を行っていない繊維強化複合材料では妥当な値である。
【0077】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物を繊維、フィルム、強化繊維ストランドあるいは強化繊維基材等に付与すれば、加熱により容易にプリフォーム化できるバインダーとしても作用し、さらに繊維強化複合材料の高靭性化にも優れた効果を発揮する。加えて本発明の樹脂組成物は、熱安定性が良いため、調製や加工が容易であり、シェルフライフも長い。
Claims (12)
- 少なくとも下記2成分を含む均一な混合物からなり、ガラス転移温度が50〜120℃である繊維強化複合材料の高靭性化に用いる樹脂組成物。
(1)ガラス転移温度が150℃以上の非晶質熱可塑性樹脂
(2)単独硬化性はもたず、熱硬化性樹脂との反応性をもつ可塑剤 - 前記(1)成分と前記(2)成分の重量比が55:45〜80:20である請求項1の樹脂組成物。
- 平均粒径が0.01〜500μmの範囲からなる請求項1または2の樹脂組成物。
- 溶剤を用いずに前記(1)および(2)成分を150〜200℃の温度範囲で加熱しつつ、混練する請求項1の樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1の樹脂組成物を含む繊維。
- 請求項1の樹脂組成物を含むフィルム。
- 請求項1の樹脂組成物を1〜15重量%付与した、強化繊維からなるストランド。
- 請求項1の樹脂組成物を1〜15重量%付与した強化繊維基材。
- 請求項1の樹脂組成物を少なくとも片面に1〜50g/m2付着させたシート状の強化繊維基材。
- 請求項1の樹脂組成物を付与した強化繊維ストランドまたは強化繊維基材を、加熱によって賦形して得られるプリフォーム。
- 請求項1の樹脂組成物を1〜15重量%付与した強化繊維ストランドもしくは強化繊維基材に、またはこれらを加熱して得られるプリフォームに、液状熱硬化性樹脂をレジントランスファーモールディング法により含浸させ、熱硬化することを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法。
- 硬化中に請求項1の樹脂組成物を液状熱硬化性樹脂に溶解させることを特徴とする請求項11の繊維強化複合材料の製造方法。
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