JP4228740B2 - バインダー組成物、強化繊維基材、プリフォームおよび繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents

バインダー組成物、強化繊維基材、プリフォームおよび繊維強化複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化複合材料の製造方法、ならびにそれに用いるプリフォーム、該プリフォームの作成に用いる強化繊維基材およびバインダー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維と不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂などのマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度、剛性、耐衝撃性、耐疲労性などの機械物性に優れ、さらに耐食性に優れるため、航空機、宇宙機、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築、スポーツ用品などの数多くの分野に応用されてきた。特に高性能が要求される用途では、連続繊維を用いた繊維強化複合材料が用いられ、強化繊維としては炭素繊維が、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂、なかんずくエポキシ樹脂が多く用いられている。
【0003】
繊維強化複合材料は様々な方法で製造されるが、型内に配置した強化繊維基材に液状の熱硬化性樹脂組成物を注入し、加熱硬化して繊維強化複合材料を得るレジン・トランスファー・モールディング(Resin Transfer Molding、以下RTMと略記する。)が、生産性にすぐれた方法として近年注目されている。
【0004】
RTMで繊維強化複合材料を製造する場合、強化繊維基材を所望の製品と近い形状に加工したプリフォームを作成し、プリフォームを型内に設置して液状熱硬化性樹脂を注入することが多い。
【0005】
プリフォームの作成方法には、強化繊維から3次元ブレイドを作成する方法や、強化繊維織物を積層してステッチする方法など、いくつかの方法が知られているが、汎用性の高い方法として、ホットメルト性のバインダー(タッキファイアーとも呼ばれる)を用いて強化繊維織物などのシート状基材を積層、賦形する方法が知られている(例えば非特許文献1)。
【0006】
ホットメルト性のバインダーには、室温では粘着性を持たず高温で軟化して接着性を有するような樹脂組成物が用いられる。
【0007】
バインダーとしては、特許文献1で述べられているように、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂ともに適用可能である。
【0008】
熱可塑性樹脂を用いる場合は、ガラス転移温度または融点の高い熱可塑性樹脂を用いると、得られる繊維強化複合材料の耐熱性は優れるが、プリフォーム作成に高温を要するため生産性に劣り、ガラス転移温度または融点が比較的低い(およそ50〜120℃)熱可塑性樹脂を用いると、プリフォーム作成は容易だが、得られる繊維強化複合材料の耐熱性は高くないため用途が限定される。
【0009】
これに対し、熱硬化性樹脂からなり適度なガラス転移温度(およそ50〜120℃)をもつバインダーを用いると、プリフォーム作成の容易さと繊維強化複合材料の耐熱性を両立させることが可能である。
【0010】
かかる熱硬化性樹脂からなるバインダーとしては、バインダー単体で硬化性を開始するタイプのもの(特許文献3〜5参照。)と、硬化剤や硬化触媒を含まないため単体では硬化を開始せず硬化剤や硬化触媒を含む液状熱硬化性樹脂組成物の注入によって硬化を開始するタイプのもの(特許文献6,7参照。)とがある。前者は液状熱硬化性樹脂に依存せずに硬化可能である点で優れ、後者は保存安定性に優れるという点で優れる。
【0011】
熱硬化性樹脂は、通常は熱可塑性樹脂と比べると靭性に劣るため、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料には、耐衝撃性を高めるという一般的な課題がある。特に積層構造を持つ繊維強化複合材料は、衝撃によって内部、特に層間にクラックが発生し、強度(特に圧縮強度)が著しく低下するという問題があった。
【0012】
耐衝撃性向上の課題に対して例えば、熱硬化性樹脂自体を熱可塑性樹脂やエラストマーの添加などの手法によって改質する手段が知られている。しかしこの手段は、熱硬化性樹脂の粘度が著しく上昇するため、RTMには適さない。
【0013】
また耐衝撃性向上のための他の手段として、クラックの入りやすい層間に熱可塑性樹脂あるいはエラストマーを存在させる手法が知られている。この手法はバインダー技術の応用によりRTMにも適用可能である。強化繊維織物などのシート状基材同士をバインダーによって接着して得たプリフォームを用いて作成した繊維強化複合材料においては、バインダーあるいはバインダーの硬化物が層間に存在することになる。特許文献8,9、非特許文献2には、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂またはエラストマーを加えたバインダー組成物が開示されており、これを用いた繊維強化複合材料の耐衝撃性が改良されることが述べられている。また、高靭性化成分として熱可塑性樹脂とエラストマーを比較すると、弾性率が高い熱可塑性樹脂の方が優れていると考えられる。
【0014】
バインダーを強化繊維基材に付与する手段としては、粒子状または繊維状のバインダー組成物を強化繊維に散布して熱により固定する方法や(特許文献1参照。)、バインダー組成物の溶液をスプレーした後乾燥する方法や(特許文献8非特許文献2参照。)、バインダー組成物の水分散液を付与したのち乾燥する方法(特許文献2参照。)が知られている。
【0015】
これらのうち、溶液や水分散液を用いる方法では、排気設備や加熱乾燥の設備が必要になる。従ってこの点では、溶液や水分散液の状態でなく、固相状態における粒子状または繊維状の形態で付与し熱により固着させる方法が望ましい。しかし、固相状態で付与した場合には、十分な耐衝撃性向上の効果が得られていなかった。
【0016】
【特許文献1】
米国特許第4988469号明細書(第3−4頁)
【0017】
【特許文献2】
欧州特許第0759842号明細書(第2−6頁)
【0018】
【特許文献3】
米国特許第5427725号明細書(第6頁)
【0019】
【特許文献4】
米国特許第5698318号明細書(第5頁)
【0020】
【特許文献5】
米国特許第5369192号明細書(第9頁)
【0021】
【特許文献6】
米国特許第4992228号明細書(第5頁)
【0022】
【特許文献7】
米国特許第5217766号明細書(第9頁)
【0023】
【特許文献8】
国際公開第98/50211号パンフレット(第20頁)
【0024】
【特許文献9】
国際公開第02/42376号パンフレット(第31頁)
【0025】
【非特許文献1】
ビッキ・P・マコネル(Vicki P. McConnell), SAMPEジャーナル(SAMPE Journal), (米国),1998年,第34巻, 第6号, p.37-43
【0026】
【非特許文献2】
エドアルド・P・デパーセ(Edoardo P. Depase), ブライアン・S・ヘイズ(Brian S. Hayes), ジェームズ・C・セフェリス(James C. Seferis), 第33回国際SAMPE技術会議予稿集(Proceeding of 33rd International SAMPE Technical Conference), (米国),2001年,p.1379-1387
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、コスト面や環境配慮の点で優れたバインダー組成物の固相状態での強化繊維への付与によっても、RTMに適し、耐衝撃性、特に衝撃後圧縮強度に優れた繊維強化複合材料を得られるような、プリフォーム作成用のバインダー組成物を提供することである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、繊維強化複合材料のプリフォームを作成するために用いられる、硬化剤または硬化触媒を実質的に含まないバインダー組成物であって、トリグリシジルイソシアヌレートを1〜15wt%、ポリエーテルスルホンを80〜10wt%含有し、ガラス転移温度が50〜120℃であることを特徴とするバインダー組成物である。
【0029】
また本発明は、本発明のバインダー組成物を付与したことを特徴とする強化繊維基材である。
【0030】
また本発明は、本発明のバインダー組成物と強化繊維とからなることを特徴とするプリフォームである。
【0031】
また本発明は、本発明のプリフォームに、硬化剤または硬化触媒が含まれている液状熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、バインダー組成物と液状熱硬化性樹脂組成物を硬化させることを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法である。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、固相状態でのバインダー組成物の強化繊維への付与では耐衝撃性が向上しにくいという従来技術の問題点に鑑みて鋭意検討を行ったところ、固相状態でバインダー組成物を付与した場合には、強化繊維への密着性が不十分であり脱落しやすいことがわかり、本発明に至った。
【0033】
本発明のバインダー組成物は、窒素原子と隣接したカルボニル基を少なくとも1個有するエポキシ化合物を1〜15wt%含有することが重要である。当該化合物を1wt%以上含有することにより、強化繊維との界面における密着性が向上し、固相状態での強化繊維への付与によってもバインダー組成物が脱落しにくく、繊維強化複合材料としたときの耐衝撃性も向上する。1wt%より少ない含有量の場合、強化繊維との密着性が得られない。一方、窒素原子と隣接したカルボニル基は、その濃度が高くなると吸水性を高める副作用をしばしばもつため、当該化合物の配合量は、15wt%以下とする。当該化合物の含有量として好ましくは2〜10wt%である。
【0034】
かかる窒素原子と隣接したカルボニル基を少なくとも1個有するエポキシ化合物としては、密着性向上効果に優れるトリグリシジルイソシアヌレートが用いられる
【0035】
また、本発明のバインダー組成物は、上記のようなエポキシ化合物以外に、窒素原子と隣接したカルボニル基を含まないエポキシ化合物を含んでいることも好ましい。そうすることで、バインダー組成物のガラス転移温度を後述する範囲内に収めることができる。かかるエポキシ化合物としては例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6-ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p-ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0036】
本発明のバインダー組成物は、さらに、ガラス転移温度が150℃以上の非晶質熱可塑性樹脂を10〜80wt%含有し、好ましくは20〜75wt%である。10wt%以上、好ましくは20wt%以上とすることで、耐衝撃性向上効果が得られ、80wt%以下、好ましくは75wt%以下とすることで、バインダー組成物のガラス転移温度が高くなりすぎて低温での加工性や強化繊維との密着性が低下するのを防ぐことができる。
【0037】
かかる非晶質熱可塑性樹脂としてはポリエーテルスルホンが用いられる
【0038】
また、かかる非晶質熱可塑性樹脂は、末端または側鎖にRTM成形に用いる液状熱硬化性樹脂と反応しうる官能基、例えばカルボキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基、エポキシ基などを有することが好ましい。反応しうる官能基を有することで、硬化時に液状エポキシ樹脂組成物と化学結合し、液状エポキシ樹脂とバインダー組成物の界面接着強度が向上することで繊維強化複合材料の耐衝撃性の向上効果が増大する。
【0039】
インダー組成物としては、硬化剤あるいは硬化触媒を含有する、単体で硬化を開始するタイプのものと、硬化剤や硬化触媒を実質的に含有せず、液状熱硬化性樹脂の硬化剤または硬化触媒により硬化を開始するタイプのものがあるが、本発明のバインダー組成物は後者のタイプ(すなわち、硬化剤や硬化触媒を実質的に含有しないタイプ)のものを採用する
【0041】
後者のタイプのものは、硬化剤や硬化触媒を実質的に含有しないことにより、長期保管した場合にも、反応が進行しないのでバインダー組成物のガラス転移温度の上昇等の変質を起こさず、長期保存性に優れる。また、バインダー組成物の製造においても、加熱して無溶剤で調製する方法、例えば押出機やニーダーなどを用いる方法を使用できるので経済的にも有利である
【0042】
本発明のバインダー組成物は、上記以外の他の成分をさらに含んでいても良い。例えば酸化防止剤、非溶解性の有機粒子、無機粒子等を挙げることができる。特に有機粒子のうち、架橋ゴム粒子や非溶解性の熱可塑性樹脂粒子は、高靭性化効果を向上させるのに有効である。
【0043】
また、本発明のバインダー組成物は、ガラス転移温度が50〜120℃であることが必要である。ガラス転移温度が50℃より低いと保管中に粒子状等のバインダー組成物同士が融着するなどの不都合が起こる恐れがあり、120℃よりも高いと低温での加工性が得られない、また繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度が低下するといった問題があり、好ましくは80℃以下である。バインダー組成物のガラス転移温度を所望の範囲内の値とする手段としては、前述のような窒素原子と隣接したカルボニル基を含まないエポキシ化合物樹脂や非晶質熱可塑性樹脂の選択と配合量の調節が有効である。
【0044】
本発明のバインダー組成物の形態としては、通孔を設けたフィルム、テープ、長繊維、短繊維、紡績糸、織物、ニット、不織布、網状体、粒子などを採用することができる。
【0045】
例えば粒子形態を用いる場合、その平均粒径は30〜200μmが好ましい。平均粒径を30μm以上とすることで、粒子が強化繊維基材の中に入り込み過ぎず、少量のバインダー組成物でも強化繊維基材を結着させる効果を効率よく発現させることができ、また、粒子の流動性を十分なものとし、バインダー組成物の取扱いを容易にすることができる。一方、平均粒径を200μm以下とすることにより、プリフォームとしたときにうねりが生じて繊維強化複合材料の物性に悪影響を及ぼすのを防ぐことができ、また、後述するような硬化前の液状熱硬化樹脂組成物への溶解をし易くすることができる。所望の繊維強化複合材料がシート状またはテープ状の強化繊維基材を積層してなるタイプのもので層間を集中的に高靭性化したい場合には、特にこの態様のバインダー組成物が好ましい。
【0046】
あるいは、粒子のディスパーションとすることも本発明のバインダー組成物の好ましい態様の一つである。ディスパーションは、強化繊維基材に含浸させることにより、強化繊維の収束を強化したり繊維強化複合材料を高靭性化することができる。ディスパーションとして用いる場合、粒子の平均粒径は0.1〜10μmであることが好ましい。10μm以下とすることで効率良く強化繊維基材の中に含浸させることができる。また、同効果を得る上では、下限値としては0.1μm程度でよい。複合材料全体を高靭性化したい場合には、特にこの態様のバインダー組成物が好ましい。
【0047】
本発明のバインダー組成物の調製は、硬化剤や硬化触媒を含まず、熱的に安定なため特に大きな制限がなく、様々な公知の方法を用いることができる。
【0048】
最も経済的な方法は、各成分を150〜220℃程度で、押出機、ニーダーなどを用いて混練する方法である。得られたバインダー組成物は、粉砕して粒子にしたり、口金から溶融押出することにより繊維やフィルムの形態に加工したりすることもできる。
【0049】
また、一度溶液を調製し、しかる後に、溶剤を除去する方法も可能である。あるいは前述のようなディスパーションを作製する場合には、バインダー組成物を溶解させた有機溶剤溶液を水中に分散させエマルジョンとし、そのエマルジョンを加熱して溶媒を揮発させ、ディスパーションとすることができる。ディスパーションは、前述のようにそのまま強化繊維の加工に用いても良いし、濾過して粒子を取り出し、その粒子を用いても良い。
【0050】
次に、本発明の強化繊維基材は、本発明のバインダー組成物を付与したものである。
【0051】
本発明のバインダー組成物を付与する強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維など、あるいはこれらを組合せたものを好適に使用することができる。
【0052】
本発明の強化繊維基材とは液状熱硬化性樹脂を含浸・固化させてプリフォームとするための物であり、その形状としては、強化繊維の長繊維の束であるストランドや、これを用いて作製できる織物などのシート状あるいはテープ状の布帛やブレイドなどを採用することができる。
【0053】
本発明の強化繊維基材の形状が織物、ニット、マット、扁平ストランド、扁平なブレイドなどのシートまたはテープ状である場合の本発明のバインダー組成物の付与量は、目付としては5〜50g/m2とすることが好ましい。5g/m2以上とすることで、効率よく形態固定を達成してプリフォームを形成でき、また高靭性化の効果を得ることができる。また50g/m2以下とすることで、特に本発明のバインダー組成物が前述のような平均粒径30〜200μmの粒子の形態である場合、強化繊維基材のみかけ体積が大きくなりすぎず、強化繊維の体積含有率の大きい繊維強化複合材料の製造が可能となり、また液状熱硬化性樹脂を効率よく含浸させることができる。
【0054】
また本発明の強化繊維基材に対する本発明のバインダー組成物の付与量は、重量分率としては強化繊維に対して3〜25wt%が好ましい。3wt%以上とすることで、形態固定や高靭性化の効果を効率よく得ることができ、25wt%以下とすることで、強化繊維基材のみかけ体積が大きくなりすぎず、強化繊維の体積含有率の大きい繊維強化複合材料の製造が可能になり、また液状熱硬化性樹脂の含浸性も良好となる。
【0055】
本発明のバインダー組成物を強化繊維に付与する手段としては、粒子状または繊維状のバインダー組成物を固相状態で強化繊維に散布して熱により固定する方法や、バインダー組成物の溶液をスプレーした後乾燥する方法や、バインダー組成物の水分散液あるいはディスパーションを付与したのち乾燥する方法などを採用することができる。
【0056】
特に固相状態でのバインダー組成物の付与は、溶媒等を乾燥したり回収したりする設備や工程を要さないので、コスト面や環境配慮の点で好ましい。また前述のように、本発明のバインダー組成物は固相状態での付与において特に、脱落しにくいという効果を発揮するものである。
【0057】
強化繊維基材に本発明のバインダー組成物を付与する手順としては、基材の製造時に付与しても良い。
【0058】
また基材に後加工として付与しても良い。例えば基材をシート状やテープ状とした後に付与しても良いし、あるいは、強化繊維ストランドの表面に本発明のバインダー組成物を付与する方法も可能である。具体的には、強化繊維ストランドの表面に本発明のバインダー組成物の粒子を付着させ加熱により固定する方法や、強化繊維ストランドの外周に本発明のバインダー組成物の繊維を巻き付ける方法を採用しても良い。
【0059】
また、後述のプリフォーム作製時に基材の積層と本発明のバインダー組成物の付与を交互に行っても良い。
【0060】
本発明のバインダー組成物を強化繊維に付与したら、脱落を防止するために、好ましくは60〜160℃で加熱して粒子を強化繊維に融着させることが好ましい。
【0061】
次に、本発明のプリフォームは、本発明のバインダー組成物と強化繊維とからなる。
【0062】
特に、シート状またはテープ状の強化繊維基材を積層してなり、層間に本発明のバインダー組成物を存在させて形態を固定した態様のものが好ましい。この形態は、所望の形状に自由且つ簡単に後加工ができ、強度を発現せるため位相積層が可能なため、宇宙機、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材に特に好適に用いることができる。
【0063】
本発明のプリフォームを得る手段としては例えば、本発明のバインダー組成物を付与した強化繊維基材が3次元ブレイドの場合には、そのままプリフォームとして用いることもできる。
【0064】
また、本発明のバインダー組成物を付与した強化繊維基材がストランドの場合には、マンドレルに捲回した後加熱して強化繊維ストランド同士を接着し、プリフォームとすることができる。
【0065】
また、シート状またはテープ状の強化繊維基材を積層してなり、層間に本発明のバインダー組成物を存在させて形態を固定した態様のものについては、本発明のバインダー組成物を既に付与した本発明の強化繊維基材のうちシート状またはテープ状のものを、所定の形状に切り出し、型の上で積層し、適切な熱と圧力を加えてプリフォームとすることができる。あるいは、プリフォームとしての所望の形状を形成する際に、強化繊維基材の積層と本発明のバインダー組成物の付与とを交互に行い、前述と同様、適切な熱と圧力を加えるという方法を採用しても良い。
【0066】
加圧の手段はプレスを用いることもできるし、バギングして内部を好ましくは−90kPa以下程度にまで真空ポンプで吸引して大気圧により加圧する方法を用いることもできる。プリフォームを作製するときの加熱の温度としては、60〜150℃が好ましい。
【0067】
本発明のプリフォームには、強化繊維と本発明のバインダー組成物の他にフォームコア、ハニカムコア、金属部品などを入れても良い。
【0068】
本発明のプリフォームは、RTM成形に好適に用いられる。
【0069】
すなわち、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、本発明のプリフォームに、硬化剤または硬化触媒が含まれている液状熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、バインダー組成物と液状熱硬化性樹脂組成物を硬化させることを特徴とするものである。
【0070】
RTMにおいてプリフォームを設置する型としては、剛体からなるクローズドモールドを用いてもよいし、剛体のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いてもよい。後者の場合、プリフォームは剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置する。
【0071】
剛体型の材料としては、金属(スチール、アルミニウムなど)、FRP、木材、石膏などを用いることができる。可撓性のフィルムの材料としては、ナイロン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。
【0072】
RTMの具体的な手順としては、剛体のクローズドモールドを用いる場合は、加圧して型締めし、液状熱硬化性樹脂組成物を加圧して注入すると良い。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引しても良い。あるいは、吸引を行いながら、加圧手段は特に用いず大気圧で液状熱硬化性樹脂組成物を注入しても良い。
【0073】
また、剛体のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、通常は、吸引と大気圧による注入を採用できる。大気圧による注入で、良好な含浸を実現するためには、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。また、プリフォームの設置に先立って、剛体型の表面にゲルコートを塗布することも好ましい。
【0074】
プリフォームを設置した後、型締めあるいはバギングを行い、続いて液状熱硬化性樹脂組成物の注入を行う。
【0075】
液状熱硬化性樹脂組成物は、主にモノマー成分からなる液状樹脂とモノマー成分を3次元架橋させてポリマー化する硬化剤あるいは硬化触媒とからなる。
【0076】
該液状樹脂としては、本発明のバインダー組成物との反応性や相溶性などの点からエポキシ樹脂が好ましい。
【0077】
かかる液状エポキシ樹脂としては、、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6-ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p-ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N−グリシジルフタルイミド、5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンイソシアネートの付加により得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシなどが挙げられる。
【0078】
硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、イミダゾール、ルイス酸錯体等が適しており、特に耐熱性に優れた繊維強化複合材料の製造を目的とする場合には、芳香族アミンが最も適している。
【0079】
液状熱硬化性樹脂組成物の注入の際、バインダー組成物の溶解やその後の硬化が円滑に行われるよう、40〜90℃程度に型を加熱しながら注入を行うと良い。
【0080】
液状熱硬化性樹脂組成物の注入の後に、加熱硬化を行う。加熱硬化時の型の温度は、液状熱硬化性樹脂組成物の注入時における型の温度よりも高い温度を選ぶと良く、80〜180℃が好ましい。また、加熱硬化の時間は1〜20時間が好ましい。
【0081】
加熱硬化の過程において、本発明のバインダー組成物は一旦、液状熱硬化性樹脂組成物に溶解させるか、あるいは液状熱硬化性樹脂組成物により膨潤させることが好ましい。そうすることで、加熱硬化後に未反応の樹脂を残存させず、繊維強化複合材料の靭性等の機械物性や、耐熱性、耐薬品性等を良好なものとすることができる。
【0082】
このように硬化の前に一旦バインダー組成物を溶解させる、あるいは膨潤させるといった態様は、バインダー組成物の形状や、バインダー組成物と液状熱硬化性樹脂組成物の樹脂の組み合わせや、バインダー組成物中の熱可塑性樹脂、また加熱温度条件を適宜選択することにより達成される。
【0083】
加熱硬化の後、脱型して繊維強化複合材料を取り出す。
【0084】
その後、繊維強化複合材料を硬化温度よりも高い温度で加熱する、後硬化を行ってもよい。後硬化の温度は150〜200℃が好ましく、時間は1〜4時間が好ましい。
【0085】
前述のように本発明のバインダー組成物等はRTM法に特に適したものであるが、RTM法以外の成形法にも好適に用いることができる。
【0086】
例えば、本発明のバインダー組成物を付与した強化繊維基材の形状がストランドやテープ状の場合にはフィラメントワインディング法、プルトルージョン法、プリプレグ法等にも適しており、シート状の場合にはハンドレイアップ法、プリプレグ法等にも適している。
【0087】
本発明のバインダー組成物等を用いて製造した繊維強化複合材料は、生産性がよく、靭性に優れるため、宇宙機、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材料に好適に用いることができる。
【0088】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。尚、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り重量部を意味する。
【0089】
<炭素繊維織物の製造>
実施例で用いた炭素繊維織物は以下のように作成した。
【0090】
炭素繊維T800S−24K−10C(東レ(株)製)を経糸とし、ガラス繊維ECE225 1/0 1Z(日東紡(株)製)を緯糸として平織の織物を作成した。縦糸密度は7.2本/25mmとし、横糸密度は7.5本/25mmとした。織物の炭素繊維目付は295g/m2であった。
【0091】
<液状熱硬化性樹脂組成物>
以下の実施例では、2液型のアミン硬化型エポキシ樹脂を用いた。
【0092】
まず以下の処方により主剤液と硬化剤液とを別個に調製し、使用直前にこれらの液体を混合して液状熱硬化性樹脂組成物とした。下記の組成は、混合液中の組成比である。
【0093】
(主剤液成分)
・“エピコート”630(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:35部
・“エピコート”825(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:10部
・“エピコート”806(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:10部
・AK−601(日本化薬(株)製エポキシ樹脂)
:20部
・NC−3000(日本化薬(株)製エポキシ樹脂)
:25部。
【0094】
(硬化剤成分)
・“エピキュア”W(ジャパンエポキシレジン(株)製芳香族ポリアミン)
:20部
・“スミキュア”S(住友化学(株)製芳香族ポリアミン)
: 8部
・3,3’−DAS(三井化学(株)製芳香族ポリアミン)
: 8部
・t−ブチルカテコール(宇部興産(株)製)
: 1部。
【0095】
<繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度の測定>
SACMA SRM 2R−94に準じて行った。繊維強化複合材料板から、疑似等方構成における0°方向を縦、90°方向を横とし、縦152.4mm(6インチ)、横101.6mm(4インチ)の短形試験片を切り出し、試験片中心に640kJ/mの落錘衝撃を与えた後、衝撃後圧縮強度を測定した。
【0096】
<実施例1>
以下の処方により、樹脂等を混合してスラリーとし、2軸押出機により210℃で混練して、本発明のバインダー組成物のペレットを得た。
・ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製を凍結粉砕して得た粉末。ガラス転移温度220℃の非晶質熱可塑性樹脂として。)
:60部
・トリグリシジルイソシアヌレート(TEPIC、日産化学(株)製)
: 5部
・液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピコート”806、ジャパンエポキシレジン(株)製)
:35部。
【0097】
得られたバインダー組成物のガラス転移温度をDSC法で求めたところ、58℃であった。
【0098】
このペレットをハンマーミル(PULVERIZER、ホリカワミクロン(株)製)にて液体窒素を用いて凍結粉砕して平均粒径約130μmの粒子を得た。
【0099】
この粒子を前記の炭素繊維織物の片面に40g/m2の散布量で散布した後、表面温度が160℃になるように遠赤ヒーターを用いて加熱してバインダー組成物を付与した本発明の強化繊維基材を得た。この基材の粒子付着面を指で擦っても、粒子の脱落は起こらなかった。
【0100】
得られた強化繊維基材を切り出し、疑似等方構成(+45゜/0゜/−45゜/90゜)3Sで積層し、これをバギングして100℃のプレスを用いて基材同士を固着させ、本発明のプリフォームを得た。
【0101】
離型剤(“ダイフリー”、ダイキン工業(株)製)を付与したステンレス板上に上記プリフォームを設置し、ピールプライ(ピールプライB−4444、リッチモンド(株)製)と樹脂拡散媒体(TSX−400P、日本ネトロン(株)製)をその上に重ねてナイロン製フィルム(VACPAK HS8171 6/66SHEETING、AIR CRAFT PRODUCTS.INC)を用いてバギングして全体を70℃に加熱しプリフォーム内部を真空ポンプで−94kPa以下になるよう吸引しながら、樹脂拡散媒体を通じて上記液状熱硬化性樹脂組成物を注入した。
【0102】
注入完了後、130℃のオーブン中で2時間硬化を行った。その後、脱型して繊維強化複合材料の板を取り出し、180℃のオーブン中で2時間、後硬化を行った。
【0103】
繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度を測定したところ、241MPaであり、後述の基材に本発明のバインダー組成物を付与しない比較例と比べると極めて高い値であった。
【0104】
<実施例2>
以下の処方により、実施例1と同様にして本発明のバインダー組成物のペレットを得た。
・ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製を凍結粉砕して得た粉末)
:70部
・トリグリシジルイソシアヌレート(TEPIC、日産化学(株)製)
: 2部
・液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピコート”806、ジャパンエポキシレジン(株)製)
:38部。
【0105】
得られたバインダー組成物のガラス転移温度をDSC法で求めたところ、110℃であった。
【0106】
このペレットを実施例1と同様に凍結粉砕して平均粒径約120μmの粒子を得た。
【0107】
この粒子を用いて、実施例1と同様の条件で本発明の強化繊維基材を作製した。この基材の粒子付着面を指で擦っても、粒子の脱落は起こらなかった。
【0108】
さらに、得られた強化繊維基材を用いて実施例1と同様に繊維強化複合材料を作製し、衝撃後圧縮強度を測定したところ、255MPaであり、後述の基材に本発明のバインダー組成物を付与しない比較例と比べると極めて高い値であった。
【0109】
<実施例3>
以下の処方により、実施例1と同様にして本発明のバインダー組成物のペレットを得た。
・ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製を凍結粉砕して得た粉末)
:60部
・トリグリシジルイソシアヌレート(TEPIC、日産化学(株)製)
: 4部
・液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピコート”806、ジャパンエポキシレジン(株)製)
:23部
・フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000、日本化薬(株)製)
:13部。
【0110】
得られたバインダー組成物のガラス転移温度をDSC法で求めたところ、70℃であった。
【0111】
このペレットを実施例1と同様に凍結粉砕して平均粒径約100μmの粒子を得た。
【0112】
この粒子を用いて、実施例1と同様の条件で本発明の強化繊維基材を作製した。この基材の粒子付着面を指で擦っても、粒子の脱落は起こらなかった。
【0113】
さらに、得られた強化繊維基材を用いて実施例1と同様に繊維強化複合材料を作製し、衝撃後圧縮強度を測定したところ、270MPaであり、後述の基材に本発明のバインダー組成物を付与しない比較例と比べると極めて高い値であった。
【0119】
<比較例1>
上記の炭素繊維を、バインダー組成物を付与しないでそのまま切り出し、疑似等方構成(+45゜/0゜/−45゜/90゜)3Sで積層し、バギングした。100℃のプレスは施さなかった。
【0120】
以降は実施例1と同様にして、繊維強化複合材料を作製した。
【0121】
繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度を測定したところ、いずれの実施例よりも低い138MPaであった。この値は特別な高靭性化を行っていない繊維強化複合材料としては妥当な値である。
【0122】
<比較例2>
以下の処方により、また混練温度を200℃とした以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物のペレットを得た。
・ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製を凍結粉砕して得た粉末)
:60部
・液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピコート”806、ジャパンエポキシレジン(株)製)
:40部。
【0123】
得られたバインダー組成物のガラス転移温度をDSC法で求めたところ、53℃であった。
【0124】
このペレットを実施例1と同様に凍結粉砕して平均粒径約130μmの粒子を得た。
【0125】
この粒子を用いて、実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製した。この基材の粒子付着面を指で擦ったところ、粒子の脱落が起こった。
【0126】
さらに、得られた強化繊維基材を用いて実施例1と同様に繊維強化複合材料を作製し、衝撃後圧縮強度を測定したところ、207MPaであった。
【0127】
<比較例3>
以下の処方により、実施例1と同様にしてバインダー組成物のペレットを得た。
・ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製を凍結粉砕して得た粉末)
:60部
・トリグリシジルイソシアヌレート(TEPIC、日産化学(株)製)
:20部
・液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピコート”806、ジャパンエポキシレジン(株)製)
:20部
得られたバインダー組成物のガラス転移温度をDSC法で求めたところ、140℃であった。
【0128】
このペレットを実施例1と同様に凍結粉砕して平均粒径約90μmの粒子を得た。
【0129】
この粒子を用いて、実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製した。この基材の粒子付着面を指で擦ったところ、粒子の脱落が起こった。
【0130】
さらに、得られた強化繊維基材を用いて実施例1と同様に繊維強化複合材料を作製し、衝撃後圧縮強度を測定したところ、172MPaであった。
【0131】
<比較例4>
以下の処方により、また混練温度を230℃とした以外は実施例1と同様にしてバインダー組成物のペレットを得た。
・ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル”PES5003P、住友化学(株)製を凍結粉砕して得た粉末)
:90部
・トリグリシジルイソシアヌレート(TEPIC、日産化学(株)製)
: 5部
・液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(“エピコート”806、ジャパンエポキシレジン(株)製)
: 5部。
【0132】
得られたバインダー組成物のガラス転移温度をDSC法で求めたところ、170℃であった。
【0133】
このペレットを実施例1と同様に凍結粉砕して平均粒径約150μmの粒子を得た。
【0134】
この粒子を用いて、実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製したが、粒子は融着しておらず強化繊維基材から簡単に脱落した。
【0135】
さらに、得られた強化繊維基材を用いて実施例1と同様に繊維強化複合材料を作製し、衝撃後圧縮強度を測定したところ、130MPaであった。
【0136】
【発明の効果】
本発明のバインダー組成物は、固相状態での強化繊維への付与によっても、RTMに適し、耐衝撃性、特に衝撃後圧縮強度に優れた繊維強化複合材料を得ることができる。

Claims (7)

  1. 繊維強化複合材料のプリフォームを作成するために用いられる、硬化剤または硬化触媒を実質的に含まないバインダー組成物であって、トリグリシジルイソシアヌレートを1〜15wt%、ポリエーテルスルホンを80〜10wt%含有し、ガラス転移温度が50〜120℃であることを特徴とするバインダー組成物。
  2. 平均粒径が0.1〜200μmの粒子である、請求項1に記載のバインダー組成物。
  3. 請求項1または2に記載のバインダー組成物を付与した強化繊維基材。
  4. シート状またはテープ状の形状を有し、バインダー組成物の付与量が目付で5〜50g/mである、請求項3に記載の強化繊維基材。
  5. 請求項1または2に記載のバインダー組成物と強化繊維とからなるプリフォーム。
  6. シート状またはテープ状の強化繊維基材を積層してなり、層間にバインダー組成物を存在させて形態を固定した、請求項5に記載のプリフォーム。
  7. 請求項5または6に記載のプリフォームに、硬化剤または硬化触媒が含まれている液状熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、バインダー組成物と液状熱硬化性樹脂組成物を硬化させる、繊維強化複合材料の製造方法。
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