JP5034176B2 - プリフォーム用バインダー組成物、プリフォーム用強化繊維基材、プリフォームの製造方法および繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents

プリフォーム用バインダー組成物、プリフォーム用強化繊維基材、プリフォームの製造方法および繊維強化複合材料の製造方法 Download PDF

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本発明は、強化繊維の体積含有率が高く、且つ、衝撃後圧縮強度に優れた繊維強化複合材料に用いるためのプリフォーム用バインダー組成物およびそれを用いてなるプリフォーム用強化繊維基材に関する。
ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維と不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂などのマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度、剛性、耐衝撃性、耐疲労性などの機械物性に優れ、さらに耐食性に優れるため、航空機、宇宙機、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築、スポーツ用品などの数多くの分野に応用されてきた。特に高性能が要求される用途では、連続繊維を用いた繊維強化複合材料が用いられ、強化繊維としては炭素繊維が、マトリックス樹脂としては熱硬化性樹脂、なかでもエポキシ樹脂が多く用いられている。
近年、繊維強化複合材料の製造方法として、プリプレグのような中間体を経由せず、強化繊維基材に直接液状の熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化させるレジン・トランスファー・モールディング(Resin Transfer Molding、以下RTMと略記)法が成形コスト低減のポテンシャルを有するために広く採用されている。他面、かかるRTM法においては、樹脂を注入させる際に、低粘度の液状でなければならないという樹脂設計上の制約があり、このためプリプレグに比べて耐衝撃性に関して特に重要な物性である衝撃後圧縮強度(Compression After Impact、以下CAIと略記)が一般に低くなってしまう傾向があった。かかるCAIの低下が著しいと、構造材料として用いることができなくなるため、特に重視される特性となっており、RTM法においてCAIを大きく向上させる技術が望まれていた。また、特に航空機用途としては、主翼、尾翼、胴体などのいわゆる一次構造材への繊維強化複合材料の適用が進んでおり、力学物性の向上、あるいは部材の軽量化のためのVf向上などの面から、強化繊維としては実質的に一方向に引き揃えた一方向材料が多く採用されているが、RTM法で強化繊維を実質的に一方向に引き揃えた基材を使用する場合、強化繊維の体積含有率を高めるほどマトリックス樹脂の含浸性が乏しくなり、また、CAIが設計上の制約となることが特に多いため、液状熱硬化性樹脂の含浸性を保ちつつ、強化繊維の体積含有率およびCAIを高める技術が望まれていた。その一つとして、ガラス転移温度100℃以上、好ましくは150℃以上のゴム成分あるいは熱可塑性樹脂を溶液被覆法または溶融被覆法により強化繊維基材の表面の少なくとも一部を被覆する方法(特許文献1参照)が開示されている。しかしながら、開示されているバインダー成分では、構造部材に必要なCAIが得られるバインダー量で被覆した場合、バインダーの剪断粘度が高いため強化繊維の体積含有率が高い複合材料を得るのは困難である。
また、バインダーとして、硬化剤を含まない熱硬化性樹脂(特許文献2参照)が、硬化剤を含む熱硬化性樹脂(特許文献3参照)が開示されている。しかしながら、熱硬化性樹脂をバインダーとした場合、剪断粘度が低いためにプリフォーミング時あるいは液状熱硬化性樹脂注入時にバインダーが潰れすぎ、含浸経路を遮断してしまうことから、未含浸部分の多い繊維強化複合材料となることが多かった。
更には、ガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂と硬化性の熱硬化性樹脂からなり、比較的低温で軟化するバインダー組成物(特許文献4参照)が開示されている。この方法は高靭性化剤である熱可塑性樹脂にガラス転移温度の高いものを用いることと、経済的に有利な比較的低温での加工を両立したという点で優れた方法であるが、硬化性の熱硬化性樹脂を成分として含むため、実用上好ましくない点があった。その一つは、保管中にバインダーの軟化温度が徐々に高くなり、ついには使用不可になるというシェルフライフの問題であった。もう一つは、バインダー組成物の作製を高温で行えないため、押出機やニーダなど溶剤不要で生産性のよい調製方法を用いるのが困難な点があった。
この様に、RTM法による繊維強化複合材料のCAIを熱可塑性樹脂のような高靱性化材付与により向上する方法として様々な手法が提案されているが、いずれも強化繊維の体積含有率および液状熱硬化性樹脂の含浸性などに課題を有しているうえに、CAI自体の向上も必ずしも十分とはいえなかった。
特開平08−300395号公報 米国特許第4992228号明細書 国際公開第1994/26492A1号パンフレット 国際公開第2002/042376A1号パンフレット
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、強化繊維の体積含有率が高く、且つ、衝撃後圧縮強度に優れた繊維強化複合材料のレジン・トランスファー・モールディングによる製造方法に用いるプリフォーム用バインダー組成物およびそれからなるプリフォーム用強化繊維基材を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のプリフォーム用バインダー組成物は、ガラス転移温度が150℃以上である非晶質熱可塑性樹脂としてポリエーテルスルホンを20〜90重量%、可塑剤としてエポキシ樹脂を10〜80重量%含有してなるバインダー組成物であって、該組成物が、温度200℃、剪断速度1000s−1における剪断粘度が200〜1000Pa・sの範囲内であることを特徴とするものである。また、本発明のプリフォーム用強化繊維基材は、かかるプリフォーム用バインダー組成物を炭素繊維およびガラス繊維に付与してなることを特徴とするものである。
また、本発明のプリフォームの製造方法は、かかるプリフォーム用強化繊維基材を積層後、加熱、加圧して形態を固定することを特徴とするものである。
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、かかるプリフォームを剛体型内に配置して、該プリフォームに液状熱硬化性樹脂を含浸させた後、加熱硬化させることを特徴とするものである。
本発明によれば、強化繊維の体積含有率が高く、軽量化を実現することができるとともに、衝撃後圧縮強度であるCAIに優れる繊維強化複合材料を提供することができ、かかる繊維強化複合材料は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材および船舶部材などの構造部材に好適に使用することができる。
本発明は、前記課題、つまり強化繊維の体積含有率が高く、且つ、衝撃後圧縮強度に優れた繊維強化複合材料のレジン・トランスファー・モールディングによる製造方法に用いるプリフォーム用バインダー組成物について、鋭意検討の結果、繊維強化複合材料中の強化繊維の体積含有率(以下、Vfと略記)およびマトリックス樹脂の含浸性コントロールの一因となるプリフォーミング工程における加熱、加圧によるプリフォーム用バインダー組成物の変形性、およびプリフォーム用バインダー組成物と強化繊維との接着性がプリフォーム用バインダー組成物の200℃における剪断粘度との間に相関があることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明のプリフォーム用バインダー組成物は、温度200℃、剪断速度1000s−1における、該バインダー組成物の剪断粘度が200〜1000Pa・sであることが重要である。
かかる特定な剪断粘度の範囲内にあるプリフォーム用バインダー組成物を用いて、強化繊維基材、プリフォームを作製することにより、RTMにおいて、液状熱硬化性樹脂の流路を確保しつつ、真空引きによりプリフォームの見かけ厚みをコントロールすることができるため、高Vfな繊維強化複合材料を得ることができる。
しかし、かかる剪断粘度が、200Pa・s未満であると、プリフォームにおける強化繊維間の空隙の保持能力が不十分であり、RTMにおいて液状熱硬化性樹脂の流路が確保できなくなるため、得られる繊維強化複合材料に未含浸部分が生じ易くなり好ましくない。また、強化繊維基材同士が接着しやすくなることから、強化繊維基材をロールに巻いたり、重ねたりして保管できないなど、取扱い性にも問題を生じやすくなる。
一方、剪断粘度が1000Pa・sを超えると、プリフォームにおける強化繊維間の空隙の保持性能が強固なものになりすぎて、真空引きをしてもプリフォームの見かけ厚みを減らすことができず、高Vfな強化繊維複合材料を得ることができなくなる。また、強化繊維に固着しにくくなるため、強化繊維基材やプリフォームの製造において温度のみならず圧力もかけなければならず、コストが高くなる傾向にある。また、バインダー組成物が強化繊維基材から脱落しやすくなるという問題が生じる場合もある。
かかるバインダー組成物の剪断粘度は、より好ましくは250〜900Pa・s、さらに好ましくは300〜800Pa・sである。
ここで剪断粘度とは、島津フローテスタ(CFT−500D/100D、スタンドアロンタイプ)(あるいはこれと同等の測定結果が得られる装置)を用い、所定の温度において、5〜20kgの範囲で数種の荷重をかけて溶融樹脂をキャピラリーダイから押し出し、その樹脂を押し出すピストンの所定距離の移動に要した時間から、まずは試験時の剪断速度と剪断粘度をもとめ、剪断粘度=剪断応力/剪断速度の関係により剪断速度1000s−1における剪断粘度を算出したものである。本発明においては、測定温度200℃、使用するダイのサイズは直径1mm、長さ1mmの条件で測定し、算出した値である。
また、本発明のプリフォーム用バインダー組成物は、ガラス転移温度が35〜90℃であることが好ましく、より好ましくは40〜85℃である。かかるガラス転移温度が35℃未満では、保管中にバインダー組成物同士が融着などの不都合を生じ、繊維強化複合材料の耐熱性を向上させることができない。また、逆にかかるガラス転移温度が90℃を超えると、低温での加工性を向上させることができない。
本発明のプリフォーム用バインダー組成物は、熱安定性がよく様々な形態に加工できる。例えば、通孔を設けたフィルム、テープ、長繊維、短繊維、紡績糸、織物、ニット、不織布、網状体、粒子など得られる形態としては種々の公知の調整方法によって様々である。最も経済的な方法は、各成分を150〜200℃程度の高温で、押出機やニーダなどを用いて混練する方法であり、得られた混練物は、粉砕して粒子にしたり、口金より押し出して繊維やフィルムの形態に加工したりすることができる。
本発明のプリフォーム用バインダー組成物は、繊維強化複合材料製造時に、その層間に液状熱硬化性樹脂の流動を妨げることなく均一に付与することができるため、粒子として採取することが好ましい。
その際、かかるプリフォーム用バインダー組成物からなる粒子の平均粒子径(球相当径)は50〜150μmであることが好ましい。かかる平均粒径(球相当径)が50μm未満では、繊維強化複合材料の製造時に強化繊維束中に粒子が入り込み過ぎ、強化繊維束の表面に十分な量の粒子を残すことができず、少量のバインダー組成物では、強化繊維基材を結着させる効果を発現させることができなくなる。また、流動性を十分なものとすることができず、バインダー組成物の取扱い性が悪くなる。一方、かかる平均粒径(球相当径)が150μmを超えると、プリフォームとしたときに、うねりが生じて繊維強化複合材料の物性に悪影響を及ぼすようになる。
そのほか、用途によっては一度溶液を調製し、しかる後に溶剤を除去する方法も可能である。さらに、有機溶剤溶液を水中に分散させエマルジョンとし、そのエマルジョンを加熱して溶媒を揮発させ、ディスパーションを調製する方法がある。ディスパーションは、そのまま強化繊維の加工に用いることもでき、濾過して粒子をとりだし、その粒子を用いることもできる。
本発明のプリフォーム用バインダー組成物は、ガラス転移温度が150℃以上である非晶質熱可塑性樹脂としてポリエーテルスルホンを20〜90重量%含有する。かかる非晶質熱可塑性樹脂を含有させることで、繊維強化複合材料中のマトリックス樹脂の靭性が向上し、耐衝撃性に優れる繊維強化複合材料を得ることができ、また、かかる非晶質熱可塑性樹脂として、ガラス転移温度が150℃以上のものを使用することにより、前述のような押出機、ニーダなどを用いて混練する製造方法から得られるバインダー組成物の加工形態を多様なものに成形することができる成形性を付与することができる。また、優れた保存安定性を付与することができる。非晶質熱可塑性樹脂の含有量を20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上とすることにより、靭性向上効果を得ることができ、また剪断粘度が小さくなりすぎるのを防ぐことができる。また非晶質熱可塑性樹脂の含有量を90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下とすることにより、剪断粘度が大きくなりすぎるのを防ぐことができる。
ガラス転移温度が150℃以上である非晶質熱可塑性樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホンなど、いわゆるエンジニアリングプラスチックスに属する樹脂が挙げられるが、これらの中でも本発明ではポリエーテルスルホンを用いる必要がある。
また、かかるポリエーテルスルホンとしては、構成分子内に少なくとも1つ以上、エポキシ基と反応する官能基を有することが好ましい。かかる官能基を有するポリエーテルスルホンは、RTM成形に用いる液状熱硬化性樹脂と反応し、得られる繊維強化複合材料の靱性を大幅に向上する効果を奏する。
かかるエポキシ基と反応する官能基としては、例えばカルボキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基、エポキシ基などのうち一つ以上該当するものが好ましい。
本発明のプリフォーム用バインダー組成物は、前記ポリエーテルスルホンとともに、可塑剤としてエポキシ樹脂を10〜80重量%含有させる。かかる可塑剤により、前記ガラス転移温度のプリフォーム用バインダー組成物の調整を容易にすることができる。
塑剤としては、液状熱硬化性樹脂がアミン硬化型エポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂、ポリフェノール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、ポリアクリレート、スルホンアミドなどが挙げられるが、これらの中でも本発明ではエポキシ樹脂を用いる必要がある。エポキシ樹脂は比較的安価で、組成設計の自由度が高い。
かかるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N−グリシジルフタルイミド、5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンイソシアネートの付加により得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂およびフェノールアラルキル型エポキシなどを挙げることができる。
また、前記ポリアミンとしては、ジエチルトルエンジアミンを例示することができる。
また、前記ポリカルボン酸としては、5−tert−ブチルイソフタル酸を例示することができる。
また、前記ポリカルボン酸無水物としては、メチルフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物を例示することができる。
また、前記ポリアクリレートとしては、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを例示することができる。
また、前記スルホンアミドとしては、ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミドを例示することができる。
このような反応性可塑剤は、エポキシ樹脂に組み合わせて用いることができるが、その場合は同系の化合物、たとえばエポキシ樹脂同士、あるいは互いに反応しない組み合わせ、例えばエポキシ樹脂とポリアクリレートなどを選ぶのが好ましく、エポキシ樹脂とポリアミンのように容易に反応する組み合わせは好ましくない。容易に反応する組み合わせを行った場合、長期保管時に反応が進行してバインダー組成物のガラス転移温度が上昇し、ついにはバインダーとして使用できなくなる恐れがある。また加熱して無溶剤で調製する方法、例えば押出機やニーダなどを用いる方法が使用できなくなるため、経済的に不利になる恐れがある。
かかる可塑剤としては、液状熱硬化性樹脂と2箇所以上で化学結合を形成しうる化合物であるのが好ましい。1箇所でのみ化学結合を形成する化合物を用いた場合、熱硬化性樹脂の硬化物の耐熱性を低下させる恐れがある。ただし、1箇所でのみ化学結合を形成する化合物であっても、添加量が少量である場合や、前述のように環状構造を含む化合物である場合、2箇所以上で化学結合を形成しうる化合物と共に用いる場合などは問題なく使用することができる。
本発明のプリフォーム用バインダー組成物において、上記非晶質熱可塑性樹脂と反応性可塑剤は均一な混合物をなしている必要がある。かかる均一に混合物であることにより、本来高いガラス転移温度をもつ非晶質熱可塑性樹脂を低温で加工することができるようになる利点がある。
本発明のプリフォーム用バインダー組成物には、上記した以外の成分を適宜添加することができる。相溶系の任意成分としては、酸化防止剤や液状エポキシ樹脂に対する触媒などがある。これらは前記バインダー組成物の官能基と実質的に反応しないものを選ぶと良い。相溶系の任意成分の配合量としては、プリフォーム用バインダー組成物に対し、10重量%以下とすることが好ましい。また非相溶系の任意成分としては、非溶解性の有機粒子、無機粒子を挙げることができる。特に有機粒子として架橋ゴム粒子や非溶解性の熱可塑性樹脂粒子は、高靭性化効果を向上させるために有効である。
本発明の強化繊維基材は、本発明のプリフォーム用バインダー組成物を強化繊維に付与して構成されるものである。
かかる強化繊維としては、炭素繊維およびガラス繊維を組み合わせたものを使用する
本発明において強化繊維基材とは、強化繊維として炭素繊維およびガラス繊維を用い、必要に応じて化学繊維など組み合わせたものから成り、繊維方向がほぼ同方向に引き揃えられたものや、織物、ニット、ブレイド、マットなどが使用できるが、特に炭素繊維が実質的に一方向に配向されており、ガラス繊維で固定された、いわゆる一方向織物が高力学物性および強化繊維の体積含有率が高い繊維強化複合材料が得られるので好ましく採用される。
かかる一方向織物としては、例えば炭素繊維からなるストランドを一方向に互いに平行に配置し、それと直交するガラス繊維からなるヨコ糸とが、互いに交差して平織組織をなしたものや、炭素繊維のストランドからなるタテ糸とこれに平行に配列されたガラス繊維からなる繊維束の補助タテ糸と、これらと直交するように配列されたガラス繊維からなるヨコ糸からなり、該補助タテ糸と該ヨコ糸が互いに交差することにより、炭素繊維ストランドを一体に保持されて織物が形成されているノンクリンプ構造の織物等がある。
かかる強化繊維基材に対する、本発明のプリフォーム用バインダー組成物の付与量は、5〜50g/mの目付とすることが好ましい。5g/m未満では、効率よく形態固定を達成することができず、プリフォームを形成することができないし、液状熱硬化性樹脂の流路を確保することができず、繊維強化複合材料に未含浸部分ができてしまい、また層間高靭性化により繊維強化複合材料として十分な耐衝撃性を得ることができない。また、50g/mを超えると、強化繊維基材のみかけ厚みが大きくなりすぎ、強化繊維の体積含有率の大きい繊維強化複合材料を製造することができず、また液状熱硬化性樹脂を効率よく含浸させることができないという問題もある。
かかるプリフォーム用バインダー組成物を強化繊維に付与する方法としては、粒子または繊維状のバインダー組成物を、強化繊維に散布して熱により固定する方法、バインダー組成物の溶液を強化繊維にスプレーした後乾燥する方法、バインダー組成物の水分散液を強化繊維に付与したのち乾燥する方法等を採用することができる。環境やコスト面からみると、バインダーを直接熱により固定する方法が溶媒回収のステップも必要なく低コストであるため好ましく、汎用性も高い。
かかる熱により固定するときの温度としては、60〜180℃が好ましい。60℃未満では、バインダー組成物が強化繊維基材に融着し、バインダー組成物が強化繊維基材から脱落するという問題がある。また180℃を超えると、バインダー組成物の嵩が適度に保つことできず、後に液状熱硬化性樹脂を注入するときの流路を確保することができない。
本発明のプリフォームは、本発明のバインダー組成物と強化繊維とからなる強化繊維基材を積層した後、加熱、加圧して形態を固定して製造することができる。本発明のプリフォーム用バインダー組成物を層間に集中的に存在させると、高靭性化することができるので、耐衝撃性等、構造材に必要な高い機械物性を得やすく、また、構造材によく見られる複雑な形状や大型な形状のプリフォームが作製しやすくなるという利点がある。
プリフォームを製造するときの加圧の手段はプレスを用いることもできるし、バギングして内部を真空ポンプで吸引して大気圧によって加圧する方法を用いることもできる。具体的には、型内を−0.09MPa以下になるまで真空引きしたまま5〜120分保持した状態で加熱するのが好ましい。真空圧を−0.09MPa以下とすることで、プリフォームの見かけ厚みを小さくでき、Vfが高い繊維強化複合材料を得ることが出来る。
本発明のプリフォームには、強化繊維と本発明のプリフォーム用バインダー組成物の他にフォームコア、ハニカムコア、金属部品などを入れても良い。
本発明のプリフォーム用バインダー組成物およびそれから構成された強化繊維基材ならびにこれらから形成されるプリフォームは、RTMに好適なものである。
すなわち、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、前記のようにして形成されたプリフォームを剛体型に配置して、このプリフォームに液状熱硬化性樹脂を含浸させ、当該プリフォーム用バインダー組成物と液状熱硬化性樹脂を、加熱硬化させて製造するものである。
RTMにおいて用いる剛体型としては、クローズドモールドでもオープンモールドのいずれでを用いてもよいし、さらにかかるオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いたものでも良い。後者の場合、強化繊維基材あるいはプリフォームは剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置する。
かかる剛体型の材料としては、金属(スチール、アルミニウム、インバー合金など)、FRP、木材、石膏などを用いることができる。可撓性のフィルムの材料としては、ナイロン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。
RTMの具体的な手順としては、剛体のクローズドモールドを用いる場合は、加圧して型締めし、液状熱硬化性樹脂を加圧して注入すると良い。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引しても良い。あるいは、吸引を行いながら、加圧手段は特に用いず大気圧で液状熱硬化性樹脂を注入しても良い。
また剛体のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、通常は、吸引と大気圧による注入を採用できる。大気圧による注入で、良好な含浸を実現するためには、特許文献6に示されるような、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。また、強化繊維基材あるいはプリフォームの設置に先立って、剛体型の表面にゲルコートを塗布することも好ましい。
本発明に用いる液状熱硬化性樹脂の型内の25〜90℃の範囲内の任意の温度における初期粘度は、400mPa・s以下であることが好ましい。初期粘度が400mPa・s以下であることにより、減圧下で液状熱硬化性樹脂を注入するVaRTM(Vacuum assist RTMの略記)においても、該液状熱硬化性樹脂の十分な含浸を得ることができる。初期粘度400mPa・s以下は、例えば低粘度な液状熱硬化性樹脂を配合したり、型内の温度を調節することで達成することができる。尚、かかる態様に適応するように熱硬化性樹脂の保温温度を調整した場合には、液状熱硬化性樹脂のポットライフも向上する。
液状熱硬化性樹脂としては、バインダー組成物中の樹脂と反応しうるものであれば良いが、比較的安価で組成設計の自由度が高く、様々な官能基との反応が可能であるエポキシ樹脂をもっとも好適に用いることができる。
かかるエポキシ樹脂とは、エポキシ基を分子内に複数含む化合物であり、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N−グリシジルフタルイミド、5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンイソシアネートの付加により得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
かかる液状熱硬化性樹脂は、硬化剤と組み合わせて用いられる。かかる硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ヒドラジド、酸無水物、ポリメルカプタン、ポリフェノールなどの量論的反応を行う硬化剤と、イミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩などの触媒的に作用する硬化剤とがある。
かかる量論的反応を行う硬化剤を用いる場合には、その反応を触媒する硬化促進剤、例えばイミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩、ホスフィンなどを配合する場合がある。RTM成形に用いる液状熱硬化性樹脂の硬化剤には、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、イミダゾールが好ましく、特に耐熱性に優れた構造材の製造を目的とする場合は、芳香族アミンが硬化剤として最も好ましく使用される。
前記加熱硬化の過程において、本発明のプリフォーム用バインダー組成物は、一旦液状熱硬化性樹脂に溶解させることが好ましい。それにより液状熱硬化性樹脂の流路を確保していたバインダー組成物が溶解するので、プリフォームの見かけ厚みがさらに薄くなり、高Vfな強化繊維複合材料を得ることができる。また、本発明のプリフォーム用バインダー組成物が、液状熱硬化性樹脂に溶解した後は、バインダー組成物に含まれる可塑剤は、液状熱硬化性樹脂と反応し、ガラス転移温度を低下させる作用を失うので、繊維強化複合材料の中にガラス転移温度の低い相が残存しないということにもなり、高温時の機械物性を向上させることができる。
このように硬化の前に、一旦溶解させるというバインダー組成物の使用の態様は、バインダー組成物と液状熱硬化性樹脂の組み合わせや、バインダー組成物中の熱可塑性樹脂、また加熱温度条件を適宜選択することにより達成される。
尚、本発明のプリフォーム用バインダー組成物に由来する熱可塑性樹脂は、硬化が完了した時点では、熱硬化性樹脂と均一な固溶体を形成していても、スピノーダル分解によって相分離していてもよい。いずれの場合も高靭性で耐熱性に優れた樹脂硬化物となる。
かかる液状熱硬化性樹脂を、剛体型に配置したプリフォームに注入した後に、加熱硬化を行う。かかる加熱硬化の条件としては、80〜180℃で、0.5〜12時間行うのが好ましい。80℃未満では、硬化時間がかかりすぎるし、180℃を超えると、液状熱硬化性樹脂が分解してしまう。
かかる加熱硬化の後、脱型して繊維強化複合材料となるものを取り出すが、その後、さらにかかる繊維強化複合材料を、前記硬化温度より高い温度でさらに加熱して、さらに硬化させてもよい。かかる後硬化の温度は150〜250℃が好ましく、時間は1〜4時間が好ましい。かかる後硬化を施すことで、繊維強化複合材料の耐熱性が上がり、機械物性を向上させることもできる。
本発明において、繊維強化複合材料は、強化繊維の体積含有率が50〜60%であることが好ましく、53〜60%であればより好ましい。かかる体積含有率が上記範囲より少ないと、繊維強化複合材料の重量が重くなり、また、応力集中の影響でCAIが低下することがあるため好ましくなく、また、強化繊維の体積含有率が、上記範囲より大きいと、繊維強化複合材料内部に未含浸部分やボイドといった欠陥部分が発生することが非常に多く物性低下を起こしてしまうことがあるため好ましくない。
ここで、CAIはJIS K 7089(1996)に従って、試験片の中心に試験厚み1mmあたり6.76Jの落錘衝撃を与えた後、衝撃後圧縮強度を測定するものであるが、具体的に構造材料としての耐久性を保持するためにはその値として225MPa以上であることが好ましく、より好ましくは240MPa以上である。
前述のように本発明のプリフォーム用バインダー組成物等はRTM法に特に適したものであるが、RTM法以外の成形法にも好適に用いることができる。
例えば本発明の繊維強化基材としてストランドは、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、プリプレグ法にも適しており、またシート状のものはハンドレイアップ法、プリプレグ法にも適している。
また、本発明のバインダー組成物は、従来の熱硬化性樹脂を付与したプリプレグにさらに散布して、バインダー組成物としての従来の熱可塑性樹脂の代わりに適用することも可能である。
本発明のプリフォーム用バインダー組成物等を用いて製造した繊維強化複合材料は、生産性がよく、靭性に優れるため、宇宙機、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などの構造材料に好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。尚、「部」等の組成比は、特に注釈のない限り重量比を意味する。
<測定方法>
剪断粘度
島津製作所製フローテスタ(CFT−500D/100D、スタンドアロンタイプ)を用い、温度200℃で測定した。尚、ダイのサイズは直径1.0mm、長さ1.0mmとし、おもりは試料に加わる総荷重が5、10、15、20kgとなるよう順次変更して使用した。
計算方法は限定法で、ピストンの所定移動距離の計算開始位置を3mm、終了位置を7mmとし時間を測定した。各総荷重より得られる測定時の剪断速度と剪断粘度から、剪断粘度=剪断応力/剪断速度の関係式を用いて剪断速度1000s−1における剪断粘度を算出した。
同一水準についてn数は4とした。
ガラス転移温度
Perkin−Elmer社製示差走査熱量計(Pylis 1 DSC)を用い、JIS K7121(1987)に従い測定した。
同一水準についてn数は2とした。
平均粒径
セイシン企業製レーザー回析・散乱式粒度分布測定機(LMS−24)を用いて球相当径を測定した。
同一水準についてn数は1とした。
(4)維強化複合材料の衝撃後圧縮強度
繊維強化複合材料板から炭素繊維の配向角が0°である方向を試験片の長手方向として縦152.4mm、横101.6mmの矩形試験片を切り出し、試験片の中心にJIS K 7089(1996)に従って試験片の厚さ1mmあたり6.76Jの落錘衝撃を与えた後、JIS K 7089(1996)に従って衝撃後圧縮強度を測定した。同一水準についてn数は5とした。
(5)強化繊維の体積含有率Vf
マイクロメータを用いて繊維強化複合材料板の任意の3点の板厚を0.01mmまで測定し、その平均値を用い、以下の方法によって算出した。なお、3点とは繊維強化複合材料板の縁から30mm内側で、かつお互いが充分に離れた地点とする。
Vf(%)=[FAW×PLY/(ρ×t)]/10
FAW:強化繊維基材を構成する強化繊維の目付(g/m
PLY:強化繊維基材の積層数
ρ:強化繊維の密度(g/cm
t:硬化後の繊維強化複合材料の板厚(cm)。
<実施例1>
[炭素繊維織物の製造]
繊維密度1.8g/cmの炭素繊維T800S−24K−10C(東レ(株)製)をタテ糸とし、ガラス繊維ECE225 1/0 1Z(日東紡(株)製)をヨコ糸として、実質的に炭素繊維が一方向に配列された平織組織の織物を作製した。タテ糸密度は7.2本/25mmとし、ヨコ糸密度は7.5本/25mmとした。織物の炭素繊維目付は190g/mであった。
[液状熱硬化性樹脂の作製]
以下の処方により主剤と硬化剤とを別個に調製し、使用直前にこれらを混合して液状熱硬化性樹脂組成物とした。
(主剤成分)
・“エピコート(R)”630 (ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:10部
・“エピコート”825(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:35部
・“アラルダイト(R)”MY−721(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ(株)製エポキシ樹脂)
:40部
・GAN(日本化薬(株)製エポキシ樹脂)
:15部
(硬化剤成分)
・“エピキュア(R)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製芳香族ポリアミン)
:27部
・3,3’−DAS(三井化学(株)製芳香族ポリアミン)
: 7部
・4,4’−DDS(和歌山精化(株)製芳香族ポリアミン)
: 4部
・TBC(宇部興産(株)製t−ブチルカテコール)
: 1部
[プリフォーム用バインダー組成物の作製]
以下の処方により樹脂等を混合してスラリーとし、2軸押出機S−1KRCニーダ((株)栗本鐵工所製)により200℃で混練、カットして本発明のプリフォーム用バインダー組成物のペレットを得た。
・“スミカエクセル(R)”PES5003P(住友化学(株)製ポリエーテルスルホンを凍結粉砕して得た粉末。ガラス転移温度230℃の非晶質熱可塑性樹脂。)
:60部
・“エピコート”806(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:20部
・NC−3000(日本化薬(株)製エポキシ樹脂)
:10部
・“エピコート”630 (ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:10部
得られたプリフォーム用バインダー組成物の剪断粘度は350Pa・sであった。また、ガラス転移温度は75℃であった。
次に、このペレットを液体窒素を用いてハンマーミル(PULVERIZER、ホリカワミクロン(株)製)にて凍結粉砕した後、目開きサイズ210μmの篩いにて分級して、粒子状プリフォーム用バインダー組成物を得た。得られた粒子の平均粒径を測定したところ約100μmであった。
[強化繊維基材の作製]
得られた粒子状バインダー組成物を前記炭素繊維織物の片面に30g/mの散布量で散布した後、表面温度が160℃になるように遠赤ヒーターを用いて加熱し、プリフォーム用バインダー組成物を付着した強化繊維基材を得た。この強化繊維基材の粒子付着面を指で擦っても、粒子の脱落は起こらなかった。
[プリフォームの作製]
得られた強化繊維基材を切り出し、炭素繊維の配向角が0°である方向を基準として[+45゜/0゜/−45゜/90゜]となるように積層し、これを3回繰り返したものを対象に積層し、これをバギングして80℃に加熱したプレスにて0.1MPaで1時間かけて基材同士を固着させ、プリフォームを形成した。
[繊維強化複合材料の作製]
離型剤(“ダイフリー(R)”、ダイキン工業(株)製)を付与したステンレス板上に得られたプリフォームを設置し、ピールプライ(ピールプライB−4444、リッチモンド(株)製)と樹脂拡散媒体(TSX−400P、日本ネトロン(株)製)をその上に重ねて、ナイロン製フィルム(VACPAK HS8171 6/66SHEETING、AIR CRAFT PRODUCTS.INC)を用いてバギングして、熱風オーブンにて型内を70℃に加熱し、プリフォーム内部を真空ポンプで真空圧が−0.1MPa以下になるように吸引して60分間保持した後、樹脂拡散媒体を通じて70℃に保った前記液状熱硬化性樹脂を注入した。
注入終了後、温度を1分間に1.5℃ずつ130℃まで昇温し、次いで130℃で2時間加熱し硬化した。その後、脱型して繊維強化複合材料の板を取り出し、熱風オーブンにて30℃から180℃まで1分間に1.5℃ずつ昇温し、180℃で2時間加熱し後硬化した。
繊維強化複合材料の表面には、未含浸部分は見られなかった。また繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度は250MPaと高い値であり、Vfは58%であった。
<実施例2>
[プリフォーム用バインダー組成物の作製]
以下の処方により樹脂等を混合してスラリーとし、2軸押出機S−1KRCニーダ((株)栗本鐵工所製)により200℃で混練、カットして本発明のプリフォーム用バインダー組成物のペレットを得た。
・“スミカエクセル”PES5003P(住友化学(株)製ポリエーテルスルホンを凍結粉砕して得た粉末。ガラス転移温度230℃の非晶質熱可塑性樹脂。)
:60部
・“エピコート”806(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:25部
・TEPIC(日産化学(株)製トリグリシジルイソシアヌレート)
:5部
・NC−3000(日本化薬(株)製エポキシ樹脂)
:10部
得られたプリフォーム用バインダー組成物の剪断粘度は400Pa・sであった。また、ガラス転移温度は80℃であった。
次にこのペレットを実施例1と同様にして凍結粉砕し、得られた粒子の平均粒径を測定したところ約90μmであった。
[強化繊維基材の作製]
得られた粒子状バインダー組成物を用いて、その他は実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製した。この強化繊維基材の粒子付着面を指で擦っても、粒子の脱落は起こらなかった。
[プリフォームの作製]
得られた強化繊維基材を用いて、その他は実施例1と同様にして本発明のプリフォームを作製した。
[繊維強化複合材料の作製]
実施例1と同様にして、繊維強化複合材料を作製した。
繊維強化複合材料の表面には、未含浸部分は見られなかった。また繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度は280MPaと高い値であり、Vfは56%であった。
<実施例3>
[プリフォーム用バインダー組成物の作製]
以下の処方により樹脂等を混合してスラリーとし、2軸押出機S−1KRCニーダ((株)栗本鐵工所製)により200℃で混練、カットして本発明のプリフォーム用バインダー組成物のペレットを得た。
・“スミカエクセル”PES5003P(住友化学(株)製ポリエーテルスルホンを凍結粉砕して得た粉末。ガラス転移温度230℃の非晶質熱可塑性樹脂。)
:70部
・“エピコート”806(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:5部
・“エピコート”630 (ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:10部・AK−601(日本化薬(株)製エポキシ樹脂)
:5部
・NC−3000(日本化薬(株)製エポキシ樹脂)
:10部
得られたプリフォーム用バインダー組成物の剪断粘度は950Pa・sであった。また、ガラス転移温度は80℃であった。
次にこのペレットを実施例1と同様にして凍結粉砕し、得られた粒子の平均粒径を測定したところ約100μmであった。
[強化繊維基材の作製]
得られた粒子状バインダー組成物を用いて、その他は実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製した。この強化繊維基材の粒子付着面を指で擦っても、粒子の脱落は起こらなかった。
[プリフォームの作製]
得られた強化繊維基材を用いて、その他は実施例1と同様にして、プリフォームを作製した。
[繊維強化複合材料の作製]
実施例1と同様にして、繊維強化複合材料を作製した。
繊維強化複合材料の表面には、未含浸部分は見られなかった。また繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度は230MPaと高い値であり、Vfは58%であった。
<比較例1>
[プリフォーム用バインダー組成物の作製]
以下の処方により樹脂等を混合粉末とし、2軸押出機S−1KRCニーダ((株)栗本鐵工所製)により200℃で混練、カットして本発明のプリフォーム用バインダー組成物のペレットを得た。
・“スミカエクセル”PES5003P(住友化学(株)製ポリエーテルスルホンを凍結粉砕して得た粉末。ガラス転移温度230℃の非晶質熱可塑性樹脂。)
:60部
・ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製)
:40部
得られたプリフォーム用バインダー組成物の剪断粘度は105Pa・sであった。また、ガラス転移温度は80℃であった。
次にこのペレットを実施例1と同様にして凍結粉砕し、得られた粒子の平均粒径を測定したところ約90μmであった。
[強化繊維基材の作製]
得られた粒子状バインダー組成物を用いて、その他は実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製した。この強化繊維基材の粒子付着面を指で擦っても、粒子の脱落は起こらなかった。
[プリフォームの作製]
得られた強化繊維基材を用いて、その他は実施例1と同様にして、プリフォームを作製した。
[強化繊維基材の作製]
得られた粒子状バインダー組成物を用いて、その他は実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製した。この強化繊維基材の粒子付着面を指で擦ったところ、粒子の脱落は起こらなかった。
[プリフォームの作製]
得られた強化繊維基材を用いて、その他は実施例1と同様にしてプリフォームを作製した。
[繊維強化複合材料の作製]
実施例1と同様にして、繊維強化複合材料を作製した。
繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度は、いずれの実施例よりも低い148MPaであった。Vfも62%と高い値であり、これらはプリフォーム用バインダー組成物の剪断粘度が本発明の示す範囲より低いことに由来するものである。
<比較例2>
[プリフォーム用バインダー組成物の作製]
以下の粉体を用いた。
・“スミカエクセル”PES5003P(住友化学(株)製ポリエーテルスルホンを凍結粉砕して得た粉末。)
:100部
この粉体の剪断粘度は、前記測定条件では流動しない程高いため測定不可能であった。また、ガラス転移温度は230℃である。
また、この粒子の平均粒径を測定したところ約55μmであった。
[強化繊維基材の作製]
得られた粒子状バインダー組成物を用いて、その他は実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製した。この強化繊維基材の粒子付着面を指で擦ったところ、粒子の脱落が起こり、付着していなかった。
[プリフォームの作製]
得られた強化繊維基材を用いて、その他は実施例1と同様にして、プリフォームを作製した。
[繊維強化複合材料の作製]
実施例1と同様にして、繊維強化複合材料を作製した。液状熱硬化性樹脂の注入にはいずれの実施例よりも時間がかかった。
繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度は、いずれの実施例よりも低い165MPaであった。Vfも48%と低い値であり、これらはプリフォーム用バインダー組成物の剪断粘度が本発明の示す範囲より高すぎることに由来するものである。
<比較例3>
[プリフォーム用バインダー組成物の作製]
以下の処方により樹脂等を混合してスラリーとし、2軸押出機S−1KRCニーダ((株)栗本鐵工所製)により200℃で混練、カットして本発明のプリフォーム用バインダー組成物のペレットを得た。
・“スミカエクセル”PES5003P(住友化学(株)製ポリエーテルスルホンを凍結粉砕して得た粉末。)
:10部
・“エピコート”806(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:30部
・NC−3000(日本化薬(株)製エポキシ樹脂)
:20部
・“エピコート”1004AF(ジャパンエポキシレジン(株)製エポキシ樹脂)
:40部
得られたバインダー組成物の剪断粘度は50Pa・sであった。また、ガラス転移温度は50℃であった。
次にこのペレットを実施例1と同様にして凍結粉砕し、得られた粒子の平均粒径を測定したところ約70μmであった。
[強化繊維基材の作製]
得られた粒子状バインダー組成物を用いて、その他は実施例1と同様の条件で強化繊維基材を作製した。この強化繊維基材の粒子付着面を指で擦ったところ、粒子の脱落は起こらなかった。
[プリフォームの作製]
得られた強化繊維基材を用いて、その他は実施例1と同様にしてプリフォームを作製した。
[繊維強化複合材料の作製]
実施例1と同様にして、繊維強化複合材料を作製した。
しかしプリフォーム用バインダー組成物の剪断粘度が本発明の示す範囲より低いため、繊維強化複合材料には未含浸部分が多く衝撃後圧縮強度を測定できなかった。

Claims (9)

  1. ガラス転移温度が150℃以上である非晶質熱可塑性樹脂としてポリエーテルスルホンを20〜90重量%、可塑剤としてエポキシ樹脂を10〜80重量%含有してなるバインダー組成物であって、該組成物が、温度200℃、剪断速度1000s−1における剪断粘度が200〜1000Pa・sの範囲内であることを特徴とするプリフォーム用バインダー組成。
  2. 前記バインダー組成物のガラス転移温度が35〜90℃の範囲内である、請求項1に記載のプリフォーム用バインダー組成物。
  3. 請求項1または2に記載のプリフォーム用バインダー組成物を、炭素繊維およびガラス繊維に付与してなるプリフォーム用強化繊維基材。
  4. 前記強化繊維基材を構成する強化繊維が実質的に一方向に配向されてなる、請求項3に記載のプリフォーム用強化繊維基材。
  5. 請求項3または4に記載のプリフォーム用強化繊維基材を、積層後、加熱、加圧して形態を固定するプリフォームの製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法によって得られたプリフォームを、剛体型内に配置して、該プリフォームに液状熱硬化性樹脂を含浸させた後、加熱硬化させる繊維強化複合材料の製造方法。
  7. 前記液状熱硬化性樹脂の、25〜90℃の範囲内の任意の温度における前記剛体型内での初期粘度が400mPa・s以下である、請求項6に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  8. 前記液状熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項6または7に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法によって得られる繊維強化複合材料中の強化繊維基材の体積分率が50〜60%の範囲内である繊維強化複合材料。
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