JP2010059300A - 炭素繊維強化複合材料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐久性を有し、航空機一次構造などの部材として最適な炭素繊維強化複合材料を提供すること。
【解決手段】少なくともマトリックス樹脂[A]、炭素繊維[B]、および該炭素繊維を横切り該炭素繊維からなる炭素繊維束を束ねる緯方向補助繊維糸条[C]を有してなる炭素繊維強化複合材料であって、該マトリックス樹脂[A]が所定の要件を満たしており、かつ、該炭素繊維強化複合材料内に以下に定義される樹脂リッチ部が存在していることを特徴とする炭素繊維強化複合材料。
【選択図】 なし

Description

本発明は、航空機部材および自動車部材などに好適に用いられる炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPと略することもある)に関するものであり、より詳しくは、レジントランスファー法(以下、RTM法と略することもある)により好適に成形でき、かつ、低温環境下においても微小なクラック(以下、マイクロクラックと略することもある)の発生を微少量に押さえ、優れた長期耐久性を備えた炭素繊維強化複合材料に関するものである。
軽量で、強度や剛性などの力学特性に優れ、かつ、耐熱性や耐食性に優れるCFRPは、航空機部材や自動車部材を始め数多くの分野に適用されてきた。特に軽量で高い力学特性が求められる航空機部材用途では、CFRPが積極的に採用されており、その成形方法はプリプレグ法が主に用いられてきた。
プリプレグ法とは、炭素繊維に、主にエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を未硬化の状態で一度含浸させてシート状の中間基材(以下、プリプレグと略することもある)を作製し、このプリプレグを所望の形状に裁断、積層、硬化することによりCFRPを得る手法である。この方法は、一度プリプレグを作製することによりある程度粘度の高い樹脂でも適用でき、高性能のCFRPを確実に成形できるメリットがあるものの、一度プリプレグという製造工程を介するため高コストになり易いというデメリットがあり、そのため、より低コストでCFRPを成形する手法が開発されて久しかった。
このような背景の中、近年注目されているのがRTM法である。RTM法とは強化繊維基材に直接液状の熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化させる方法であり、熱硬化性樹脂を強化繊維基材に注入させるため、プリプレグを作製するという製造工程を飛ばすことができ、そのため低コストでCFRPが成形できるというメリットがある。
しかしながら、RTM法では、熱硬化性樹脂を強化繊維基材に注入させる際に、低粘度の液状でなければならないという樹脂設計上の制約があるため、例えばCFRPに求められる力学特性としてマトリックス樹脂の靭性を向上させたいときに、プリプレグ法のように熱可塑性樹脂成分を加えて熱硬化性樹脂の靱性を高める手法は、粘度が著しく増加してしまうため適用することができない、このため、RTM法に適した樹脂の開発がこれまで進められてきた(例えば、特許文献1、特許文献2)。これらの樹脂は、RTM法で強化繊維機材に注入させる際に低粘度の液体でなければならないという制約がありながらも、同時に、CFRPの力学特性を発現させる弾性率や破壊靭性値も兼ね備えたものであると考えられていた。
しかしながら、CFRPが航空機部材に適用されてからすでに数十年の年月が経ち、長期間に使用されるようになったことで、例えば、特許文献3で記されているようにマイクロクラックという問題が浮上してきている。マイクロクラックとは数十μm程度の微小なクラックのことであり、特にCFRP内部に樹脂リッチ部が存在して、かつ、70℃程度の高温から−50℃程度の低温までの温度変化(以下熱サイクルと略することもある)が繰り返される環境に何度も暴露されると発生しやすいことが知られている(例えば、非特許文献1)。この温度変化は航空機の地上から上空1万メートルの飛行サイクルとも一致しており、マイクロクラックがあまりに多量に発生すると、例えばCFRPの力学特性が低下するなどの耐久性が懸念されている。
これまでCFRP部材の製造方法として主流だったプリプレグ法では、マトリックス樹脂がRTM法に用いられる樹脂と比べて高靭性であること、および、成形方法の特徴として樹脂リッチ部ができにくいことから、マイクロクラックの問題がそれほど注目を浴びていなかった。しかしながら、RTM法の場合、樹脂を高靭性化させようとすると粘度が上昇してしまい成形性に問題が生じる。また樹脂の流路を確保する必要があり、結果として成形後のCFRPに樹脂リッチ部ができることが避けられず、RTM法の今後の広範囲の適用において大きな障害となっている。
以上のような理由により、RTM法で成形でき、かつ、熱サイクル下でのマイクロクラック発生を押さえることのできる炭素繊維強化複合材料が望まれていた。
国際公開2003/040206号パンフレット 国際公開2000/053654号パンフレット 特許第4018164号 Journal of Advanced Materials(ジャーナル・オブ・アドバンスト・マテリアルズ)、26(4)、p48-62(1995)
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、特に極低温環境下におけるマイクロクラック発生を微少量におさえることができ、かつ、従来のRTM法で成形でき、結果として低コストですぐれた力学特性および耐久性を有し、航空機一次構造などの部材として最適な繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、少なくともマトリックス樹脂[A]、炭素繊維[B]、および該炭素繊維を横切り該炭素繊維からなる炭素繊維束を束ねる緯方向補助繊維糸条[C]を有してなる炭素繊維強化複合材料であって、該マトリックス樹脂[A]が以下の要件を満たしており、かつ、該炭素繊維強化複合材料内に以下に定義される樹脂リッチ部が存在していることを特徴とする炭素繊維強化複合材料。
マトリックス樹脂[A]:熱硬化性樹脂からなり、かつ、−54℃環境下での曲げ弾性率が3.6GPa以上4.6GPa以下であり、かつ、−54℃環境下での破壊靭性値が120J/m以上である。
樹脂リッチ部:図1に示すような炭素繊維強化複合材料の観察面において、緯方向補助繊維糸条の断面と同形の円を、それらが互いに外接するように3つ作成したときに、該3つの円の集合体が完全に含まれるマトリックス樹脂領域。
また、かかる炭素繊維強化複合材料は、炭素繊維[B]と、該炭素繊維を横切り該炭素繊維からなる炭素繊維束を束ねる緯方向補助繊維糸条[C]を有してなる繊維基材に、以下の要件を満たすマトリックス樹脂[A]を注入して含浸させた後、加熱硬化させることにより得られる。
本発明によれば、従来のRTM法で成形でき、かつ極低温環境化におけるマイクロクラック発生を微少量に押さえることができ、結果として低コストですぐれた力学特性および耐久性を有し、航空機一次構造などの部材として最適な繊維強化複合材料を提供することができる。
本発明の炭素繊維強化複合材料は、少なくともマトリックス樹脂[A]、炭素繊維[B]、および該炭素繊維を横切り該炭素繊維からなる炭素繊維束を束ねる緯方向補助繊維糸条[C]を有してなり、かつ、樹脂リッチ部が存在する。
マトリックス樹脂[A]に用いられる樹脂は、少なくともエポキシ樹脂の主剤と該エポキシ樹脂を硬化させる成分を含む硬化剤とからなる二液型エポキシ樹脂組成物が好ましく用いられる。
本発明に好ましく使用されるエポキシ樹脂組成物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有していることが好ましい。1分子中にエポキシ基が2個未満の場合、主剤と硬化剤を混合した混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度が低くなるため好ましくない。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテルなどのビスフェノール型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等を1種または複数種を混合して使用することができる。
また、かかるエポキシ樹脂組成物は、主剤と硬化剤を混合した混合物を硬化して得られる硬化物のガラス転移温度を高めるため、主剤100重量部中に、1分子中にエポキシ基を3個以上、かつフェニル基を1個以上有するエポキシ樹脂を20〜70重量部配合することが好ましく、より好ましくは30〜65重量部配合することである。かかるエポキシ樹脂の配合量を主剤100重量部中に20重量部以上とすることにより、得られる硬化物のガラス転移温度を高くすることができ、さらにかかるエポキシ樹脂の配合量を主剤100重量部中に70重量部以下とすることにより、主剤の粘度が高くなることを抑え、強化繊維に注入、含浸するレジン・トランスファー・モールディング成形により適したものとなる。
かかるエポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂等を1種または複数種を混合して使用することができる。特に、窒素原子を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂が粘度、得られる硬化物の力学物性や耐熱性に優れているため好ましい。
本発明で好ましく使用されるエポキシ樹脂には、耐熱性や機械物性に対し著しい低下を及ぼさない範囲で1分子中にフェニル基を有さない脂肪族エポキシ樹脂や1分子中に1個のエポキシ基しか有していないモノエポキシ化合物、脂環式エポキシ樹脂などを適宜配合することができる。
また、本発明ではマトリックス樹脂[A]中にコアシェルポリマーを好適に使用できる。使用されるコアシェルポリマーとは架橋されたゴム状ポリマーまたはエラストマーを主成分とする粒子状コア成分の表面にコア成分とは異種のシェル成分ポリマーをグラフト重合することで粒子状コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆したものである。
本発明で好ましく使用されるコアシェルポリマーを構成するコア成分としては、共役ジエン系モノマー、アクリル酸および/またはメタクリル酸エステル系モノマーより選ばれる1種または複数種から重合されたポリマーまたはシリコーン樹脂などを使用することができる。
本発明のマトリックス樹脂[A]を使用した繊維強化複合材料は構造部材、特に航空機用途に好適に用いることができる。航空機用途で用いる繊維強化複合材料は多くの場合、耐熱性が要求される。エポキシ樹脂の硬化物は非晶性でありガラス転移温度をもつ。ガラス転移温度以上の温度雰囲気下ではエポキシ樹脂の硬化物は剛性が大幅に低下し、これにともなって繊維強化複合材料の機械物性も低下する。したがって、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は繊維強化複合材料の耐熱性の指標とされる。エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は硬化プロセスの熱履歴における最高温度に相関する。航空機用途では硬化プロセスの最高温度は約180℃が選ばれることが多い。そのため本発明のマトリックス樹脂組成物を、最終的に180℃の温度下で2時間加熱硬化した硬化物のガラス転移温度は180℃以上が好ましく、190℃以上であればさらに好ましい。ただし、エポキシ樹脂の熱分解温度は未硬化および硬化の状態に関わらず約240℃と言われており、実質的にガラス転移温度の上限は熱分解温度以下となる。
一方、航空機用途に使用されるCFRPは、特に高い高度で飛行する航空機の場合、−50℃以下という非常に低温の雰囲気下にさらされる。このとき、CFRP内のマトリックス樹脂はガラス転移温度から低温の雰囲気下にさられるためマトリックス樹脂自身が収縮しようとする。しかしながら、マトリックス樹脂は周囲をほとんど収縮しない炭素繊維によって囲まれているため収縮することができず、結果としてマトリックス樹脂自身内部に引張の応力(以下、残留熱応力と略することもある)が内在することとなる。そのため、繊維強化複合材料には前述したガラス転移温度から極低温下まで繰り返し残留熱応力が発生し(以下、環境疲労と略することもある)、この環境疲労が蓄積すると、繊維強化複合材料の内部にマイクロクラックが発生する場合がある。この現象は特に樹脂リッチ部において顕著であり、マイクロクラックも樹脂リッチ部に発生することが多い。マイクロクラックが発生したまま、更なる環境疲労が加わると、マイクロクラックはより巨大なクラックへとさらに成長し、最後にはその巨大なクラックにより繊維強化複合材料の力学特性を低下させてしまう可能性がある。RTM法の制約上、成形時に樹脂の流路が必要となるため、樹脂リッチ部を全くなくCFRPを成形することは困難であるため、環境疲労により発生するマイクロクラックを防止するためにはマトリックス樹脂硬化物の破壊靭性を高めること、および、マトリックス樹脂に発生する残留熱応力が高くなりすぎないように弾性率を適度に押さえることが効果的である(このために必要な具体的な値は後述する)。そのため、特に極低温下での破壊靭性値を高めるために、本発明のマトリックス樹脂に使用されるコアシェルポリマーのコア成分としては、該エポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物のガラス転移温度より210℃以上、好ましくは220℃以上低いガラス転移温度を有していることが必要であり、具体的にはコア成分のガラス転移温度が−30℃以下、好ましくは−40℃以下であり、共役ジエン系モノマーより構成される架橋ゴムが最適である。コア成分のガラス転移温度はコアシェルポリマー化した後では測定することが困難である場合、コア成分だけで重合体を作製し、得られた重合体についてDSC等の熱分析機器によってガラス転移温度を予め測定しても良い。
かかる共役ジエン系モノマーとしては、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができ、用いられるコア成分としては、これらを単独でもしくは複数種用いて構成される架橋ゴムであることが好ましいが、得られる重合体の性質が良好であり、重合が容易であることからかかる共役ジエン系モノマーとしてブタジエンを用いること、すなわち、コア成分として架橋ポリブタジエンを用いることが特に好ましい。
本発明で好ましく使用されるコアシェルポリマーを構成するシェル成分は、前記したコア成分にグラフト重合されており、コア成分を構成するポリマーと化学結合していることが好ましい。かかるシェル成分を構成する成分としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物等から選ばれた1種または複数種から重合された重合体である。
また、該シェル成分には分散状態を安定化させるために、本発明のマトリックス樹脂と反応する官能基が導入されていることが好ましい。かかる官能基としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基が挙げられる。
本発明で好ましく使用されるコアシェルポリマーは、平均粒子径が体積平均粒子径で1〜500nmであることが好ましく、3〜300nmであればさらに好ましい。なお、体積平均粒子径はナノトラック粒度分布測定装置(日機装(株)製)を用いて測定することができる。本発明で使用されるコアシェルポリマーの体積平均粒子径が1nm以下では製造することが困難であり実質的に使用することができず、体積平均粒子径が500nm以上では繊維強化複合材料の成形プロセスにおけるエポキシ樹脂組成物を注入、含浸させる工程において強化繊維で濾別され、繊維強化複合材料中において分散状態が不均一になる場合があるので好ましくない。
本発明で好ましく使用されるコアシェルポリマーの製造については特に制限はなく、周知の方法で製造されたものを使用できる。しかしながら、通常コアシェルポリマーは塊状で取り出されたものを粉砕して粉体として取り扱われており、粉体状コアシェルポリマーを再度エポキシ樹脂中に分散させることが多いが、この方法では、一次粒子の状態で安定に分散させることが難しい。よって、コアシェルポリマーの製造過程から一度も塊状で取り出すことなく、最終的にはエポキシ樹脂中に一次粒子で分散したマスターバッチの状態で取り扱うことができるものが好ましく、例えば、特開2004−315572号公報に記載の方法、すなわち、コアシェルポリマーを乳化重合、分散重合、懸濁重合に代表される水媒体中で重合する方法で重合を行い、コアシェルポリマーが分散した懸濁液を得て、得られた懸濁液に水と部分溶解性を示す有機溶媒、例えばアセトンやメチルエチルケトンなどのエーテル系溶媒を混合後、水溶性電解質、例えば塩化ナトリウムや塩化カリウムを接触させ、有機溶媒層と水層を相分離させ、水層を分離除去して得られたコアシェルポリマー分散有機溶媒に適宜エポキシ樹脂を混合した後、有機溶媒を蒸発除去する方法などが使用できる。該製造方法で製造されたコアシェルポリマー分散エポキシマスターバッチとしては、株式会社カネカ社から市販されている“カネエース(登録商標)”を好適に使用できる。
本発明で好ましく使用されるコアシェルポリマーは、本発明のレジン・トランスファー・モールディング用二液型エポキシ樹脂組成物の主剤100重量部中に0.5〜10重量部配合されることが好ましく、より好ましくは1〜8重量部配合することである。配合量が0.5重量部以上であれば、成形後の繊維強化複合材料に必要とされる破壊靭性が得られやすく、さらに、配合量が10重量部以下であれば、得られる主剤しいては主剤と硬化剤を混合した混合物の粘度が高くなることを抑え、強化繊維に注入、含浸するレジン・トランスファー・モールディング成形により適したものとなる。
本発明において、好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物の主剤は、70℃における粘度が500mPa・s以下であり、好ましい粘度は400mPa・s以下である。なお、粘度の測定はJIS Z8803(1991)における「円すい−板形回転粘度計による粘度測定方法」に従い、標準コーンローター(1°34’×R24)を装備したE型粘度計((株)トキメック製、TVE−30H)を使用して、回転速度50回転/分で測定する。70℃における粘度が500mPa・sより高い場合は、容器からの取り出し、計量、硬化剤との混合、あるいは脱気処理などの作業性が悪くなることがある。主剤の70℃における粘度の下限は特に制限なく、粘度が低いほどマトリックス樹脂組成物の注入含浸が容易になり好ましい。該主剤の70℃における粘度を500mPa・s以下にするためには、分子量が500以上のエポキシ樹脂を、主剤100重量部中に好ましくは30重量部以上配合せず、前述したしたようにコアシェルポリマーを15重量部以上配合しないことである。なお、主剤の70℃における粘度の下限は特に制限なく、粘度が低いほど後述する硬化剤との混合物の粘度が低くなり、RTM成形における本発明のマトリックス樹脂の注入含浸が容易になる。
本発明に好ましく用いられるエポキシ樹脂の硬化剤は、上述のとおり、該エポキシ樹脂の主剤を構成するエポキシ樹脂を硬化させる成分より構成されることが好ましく、かかるエポキシ樹脂を硬化させる成分としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ヒドラジド、酸無水物、ポリメルカプタン、ポリフェノールなど、量論的反応を行う化合物と、イミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩のように触媒的に作用する化合物がある。量論的反応を行う化合物を用いる場合には、硬化促進剤、例えばイミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩、ホスフィンなどを配合する場合がある。特に耐熱性に優れた構造材の製造を目的とする場合は、芳香族ポリアミンが硬化剤として最も適している。
本発明に好ましく用いられるエポキシ樹脂の硬化剤は、70℃における粘度が500mPa・s以下であり、好ましい粘度は400mPa・s以下である。なお、粘度の測定は前述した主剤粘度の測定方法と同様である。硬化剤の70℃における粘度が500mPa・sより高い場合は、容器からの取り出し、計量、主剤との混合、あるいは脱気処理などの作業性が悪くなることがある。70℃における粘度の下限は特に制限なく、粘度が低いほどマトリックス樹脂組成物の注入含浸が容易になり好ましい。該硬化剤の70℃における粘度を500mPa・s以下にするためには、70℃において液状の芳香族ポリアミンを硬化剤100重量部中に40〜90重量部配合することが好ましく、50〜85重量部であればさらに好ましい。70℃において液状の芳香族ポリアミンとしてはジエチルトルエンジアミン(2,4−ジエチル−6−メチル−m−フェニレンジアミンと4,6−ジエチル−2−メチル−m−フェニレンジアミンを主成分とする混合物)や2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、2,2’−イソプロピル−6,6’−ジメチル−4,4’−メチレンジアニリン、2,2’、6,6’テトライソプロピル−4,4’−メチレンジアニリン等のジアミノジフェニルメタンのアルキル基誘導体およびポリオキシテトラメチレンビス(p−アミノベンゾエート)を挙げることができる。中でも、低粘度でガラス転移温度などの硬化物としての物性に優れるジエチルトルエンジアミンが好ましく使用できる。なお、硬化剤の70℃における粘度の下限は特に制限なく、粘度が低いほど前述した主剤との混合物の粘度が低くなり、RTM成形における本発明のマトリックス樹脂の注入含浸が容易になる。
該硬化剤には前述した粘度を超えない範囲で固形の芳香族ポリアミンを配合することができる。固形の芳香族ポリアミンとしては3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンが耐熱性、弾性率に優れた硬化物が得られ、さらに線膨張係数および吸湿による耐熱性の低下が小さいので好ましく使用できる。一般に、ジアミノジフェニルスルホンは結晶性が強く、液状芳香族ポリアミンと高温で混合して液体としても、冷却過程で結晶として析出しやすいが、ジアミノジフェニルスルホンの2種の異性体と液状芳香族ポリアミンを混合した場合、単一のジアミノジフェニルスルホンと液状芳香族ポリアミンの混合物より遙かに結晶の析出が起こりにくく好ましい。
ジアミノジフェニルスルホンの配合量は、該硬化剤100重量部中に10〜40重量部が好ましく、20〜35重量部であればさらに好ましい。配合量が10重量部以上であれば前述したような硬化物の効果が得られやすく、さらに配合量が40重量部以下であれば結晶の析出を抑制しやすくなり好ましい。3,3’−ジアミノジフェニルスルホンと4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを、結晶の析出を抑制するために併用する場合は、両者の重量比は10:90〜90:10であることが好ましい。
本発明に好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物の主剤および硬化剤にはその他の成分として、可塑剤、染料、有機顔料や無機充填材、高分子化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カップリング剤、界面活性剤などを適宜配合することもできる。
このようなエポキシ樹脂組成物は、主剤と硬化剤を好適な所定の割合で混合することにより、加熱硬化可能となる。
主剤と硬化剤の混合比は、使用するエポキシ樹脂およびそれ以外のエポキシ化合物とエポキシ樹脂を硬化させる成分の種類によって決定される。具体的には主剤中の全エポキシ化合物に含まれるエポキシ基の数と硬化剤中の全アミン化合物に含まれる活性水素(活性水素とは、有機化合物において窒素、酸素、硫黄などと結合していて、反応性が高い水素原子である)の数の比率を好ましくは0.7〜1.3、より好ましくは0.8〜1.2になるように混合する。エポキシ基と活性水素の比率が前記範囲を外れた場合、得られた樹脂硬化物の耐熱性や弾性率が低下する可能性がある。
本発明のマトリックス樹脂の硬化物は、硬化剤を構成するエポキシ樹脂を硬化させる成分の活性に応じて、好適には50〜200℃の範囲の任意温度で好適には0.5〜10時間の範囲の任意時間で加熱硬化することにより得られる。
加熱条件は1段階でも良く、複数の加熱条件を組み合わせた多段階条件でも良い。硬化温度が高い方が繊維強化複合材料の耐熱性が高くなるが、成形において型内での加熱温度が高いと、設備・熱源等のコストが高くなり、また型の占有時間が長くなるため経済性が悪くなる。そのため、初期硬化は50〜140℃の範囲の任意温度で行った後、成形物を型から脱型し、オーブンなどの装置を用いて比較的高温で最終硬化を行うことが好ましい。
そして、本発明のマトリックス樹脂は、その硬化物が−54℃環境下での曲げ弾性率が3.6GPa以上4.6GPa以下であり、かつ、−54℃環境下での破壊靭性値が120J/m以上である。上述したように、本発明の炭素繊維複合材料は特に航空機部材に好適に用いられるが、航空機用途に使用される繊維強化複合材料は、特に高い高度で飛行する航空機の場合、−50℃以下という非常に低温の雰囲気下にさらされる。そのため、繊維強化複合材料には、硬化温度との差による残留熱応力が発生し、繊維強化複合材料の内部にマイクロクラックが発生する場合がある。マイクロクラックが発生したまま、更なる環境疲労が加わると、クラックはどんどん成長し、最後には繊維強化複合材料の機械物性を低下させてしまう可能性がある。後述するが、発明者らはこのマイクロクラックの発生の主要因が、樹脂リッチ部の存在、特に、緯方向補助繊維糸条[C]まわりに存在する樹脂リッチ部の存在と、緯方向補助繊維糸条[C]とマトリックス樹脂[A]との界面剥離に起因する物であり、この界面剥離を抑制するためにはマトリックス樹脂[A]の弾性率を適度な範囲に収めることが有効であることを見出し、本発明に至ったものである。具体的には−54℃環境下での曲げ弾性率が3.6GPa以上4.6GPa以下である。3.6GPa以下であると、マトリックス樹脂としての弾性率が足りずに例えば圧縮強度など他の力学特性を損なってしまうおそれがある。また4.6GPa以上であると、−50℃以下の極低温下で発生する残留熱応力が大きくなり、よこ糸とマトリックス樹脂との界面剥離が発生し、結果としてマイクロクラックを十分に抑制できないおそれがある。好ましくは3.7GPa以上4.2GPa以下の範囲である。
また、マトリックス樹脂には緯方向補助繊維糸条の界面剥離を抑制するのみならず、万が一剥離したあとのクラックの進展を防ぐために破壊靭性値が高いことが求められる。具体的には−54℃環境下での破壊靭性値が120J/m以上である必要であり、この値以下であるとマイクロクラックの進展を防ぐに十分ではない。好ましくは150J/m以上である。なお、マトリックス樹脂の曲げ弾性率、破壊靭性値はそれぞれJIS K7171−1994、ASTM D5045−99に記載の方法で測定できる。
本発明では補強繊維として炭素繊維[B]を用いる。炭素繊維としては、具体的にはアクリル系、ピッチ系およびレーヨン系等の炭素繊維が挙げられ、特に引張強度の高いアクリル系の炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸および無撚糸等を使用することができるが、繊維強化複合材料の成形性と強度特性のバランスが良いため、解撚糸または無撚糸が好ましく用いられる。
炭素繊維の弾性率は、成形された構造部材の特性と重量との観点から、200GPa以上400GPa以下の範囲であることが好ましい。弾性率がこの範囲より低いと、構造部材の剛性が不足し軽量化が不十分となる場合があり、逆に弾性率がこの範囲より高いと、一般に炭素繊維の強度が低下する傾向がある。より好ましい弾性率は、250GPa以上370GPa以下の範囲内であり、さらに好ましくは290GPa〜350GPaの範囲内である。
本発明で用いられる緯方向補助繊維糸条[C]は、本発明のCFRPを成形する際において使用する、炭素繊維からなる繊維基材を作製するのに用いられる。また、必要に応じて経方向補助繊維糸条[D]を併用しても良い。
かかる緯方向補助繊維糸条[C]は、該炭素繊維を横切り該炭素繊維からなる炭素繊維束を束ねるために設けられており、さらに実質的に該炭素繊維と直行していると好ましい。また、かかる経方向補助繊維糸条[D]は、炭素繊維束と炭素繊維束との間に並んでおり、さらに実質的に該炭素繊維と平行に設けられていると好ましい。ここで、「実質的に直交」しているとは、互いの繊維方向が90度±5度の範囲内に収まっていることを意味し、「実質的に平行」に設けられているとは、互いの繊維方向が0度±5度の範囲内に収まっていることを意味する。
さらに本発明で好ましく使用できる繊維基材の形態としては、繊維方向がほぼ同方向に引き揃えられたものや、織物、ニット、ブレイドおよびマット等を使用することができるが、特に、高力学物性および強化繊維の体積含有率が高い繊維強化複合材料が得られるという点で、強化繊維が実質的に一方向に配向されており、ガラス繊維または化学繊維を緯経方向補助糸条[C]として用いて固定されたいわゆる一方向織物が好ましく用いられる。化学繊維としては、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、フェノール繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維などがあげられるが、特にポリアミド66繊維は適度に柔軟性があり、賦形性を損なうこともなく好ましく用いられる。
そして緯方向補助繊維糸条[C]の−54℃下での経方向弾性率は、2GPa以上2.8GPa以下であることが好ましい。この範囲内であると、CFRPが熱サイクル下にさらされたときに、マトリックス樹脂と緯方向補助繊維糸条との界面に発生する残留熱応力がそれほど大きくならずに界面が剥離するおそれが軽減されると共に、室温時の弾性率が適度に柔軟性に富み、基材の賦形性を損なうことが無い。
一方向織物としては、例えば、炭素繊維からなるストランドを経糸として一方向に互いに平行に配置し、それと直交するガラス繊維または化学繊維からなる緯糸とが、互いに交差して平織組織をなしたものや、炭素繊維のストランドからなる経糸とこれに平行に配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の経方向補助繊維糸条(以下たて糸[D]と略することがある)と、これらと直交するように配列されたガラス繊維または化学繊維からなる緯方向補助繊維糸条からなり、該経方向補助繊維糸条と該緯方向補助繊維糸条が互いに交差することにより、炭素繊維ストランドが一体に保持されて織物が形成されているノンクリンプ構造の織物等が挙げられる。経方向補助繊維糸条としてはガラス繊維または化学繊維が用いられるが、ガラス繊維は機材の形態を安定させる上で好ましく用いられる。
本発明のCFRPは、内部に樹脂リッチ部を有する。樹脂リッチ部を有するということは、RTM法で成型する際に樹脂の流路としての役割を果たした箇所が存在したことを意味し、成形性に優れ、結果として未含浸部分やボイドなどの初期欠陥を内在していないCFRPである可能性が高いことを示している。ここで、本発明で規定する樹脂リッチ部とは以下の方法で判定する。
本発明で得られたCFRP板を、補強繊維方向を0度方向(以下縦方向と略することもある)として、75mm×50mmの寸法にダイヤモンドカッターで切断した。得られた試験片の縦方向の中央から±10mmの領域から幅25mmを切り出し、切り出し面を観察面として研磨し(以後、この観察面全体を、後述する200倍で一度に観察できる範囲と区別するために全観察面と表記し、200倍で一度に観察できる範囲を単に観察面と表記する。)、市販の顕微鏡を用いて200倍で観察し以下に述べるように樹脂リッチ部が存在するかを判定する。図1は樹脂リッチ部が存在している箇所の観察面を模擬的に示したものである。ここで観察面をCFRP層(ここでは炭素繊維が紙面に平行方向に揃っている層と紙面に垂直方向に揃っている層とが存在する)、経方向補助繊維糸条群(ここではたていとが紙面に垂直方向に揃っている)、緯方向補助繊維糸条群(ここではよこいとが紙面に垂直方向に揃っている)、マトリックス樹脂とに分類する。この観察面を市販の顕微鏡に付属の画像計測ソフト、あるいは観察面を画像ファイルとして抜き出したとえばマイクロソフト社製パワーポイントなどを用いて、緯方向補助繊維糸条の断面と同形の円を3つ作成しそれらを互いに外接させて、図1に示すように円の中心が正三角形をなすように揃える。この3つの円が完全に含まれるマトリックス樹脂領域が存在する場合、そこを樹脂リッチ部と定義し、この定義に沿う樹脂リッチ部が全観察面に1つ以上存在している場合、このCFRPには樹脂リッチ部が存在していると定義する。図2は樹脂リッチ部が存在している別の箇所の観察面を模擬的に示したものである。CFRP層、経方向補助繊維糸条群、緯方向補助繊維糸条群の配置は図1と異なるが、上記の判定方法に従うと、この観察面には樹脂リッチ部が存在していると判定される。一方で図3はマトリックス樹脂が存在するが緯方向補助繊維糸条の断面と同形の円を3つ正三角形状に配列したものが完全に含まれるマトリックス樹脂領域が存在しないため、この観察面では樹脂リッチ部は存在しないと判定される。このように判定していく樹脂リッチ部は、その大きさに関わらず、上述したように樹脂リッチ部判定用の3つの円が含まれさえすれば1つと数えることとする。図4は樹脂リッチ部が全観察面に何個存在するかの判定方法を示すための模式図であり、点線で囲まれた領域はそれぞれ図1、図2に相当する、200倍で観察される範囲である。図4から分かるとおり、この断面を本発明で定義するように樹脂リッチ部の個数を数えると、樹脂リッチ部が3個存在すると定義できる。
本発明のCFRPにおいて、樹脂リッチ部はRTM法による成形時にマトリックス樹脂の流路が存在していたことを意味する。マトリックス樹脂の流路が存在することで成形時にマトリックス樹脂が短時間で基材の隅々まで行き渡り、未含浸やそれに伴うボイドが存在しない良質なCFRPが得られる。好ましい樹脂リッチ部の数は全観察面あたり5個以上20個未満であり、これより多い場合は樹脂リッチ部が多すぎて全体としてCFRPの炭素繊維体積含有率(以下Vfと略することもある)が下がってしまい、CFRPの力学特性を損なうおそれがある。また5カ所未満であるとマトリックス樹脂が基材の隅々まで行き渡ることが困難になり未含浸やそれに伴うボイドなどが内在しやはりCFRPの力学特性を損なってしまう。
上述したように、樹脂リッチ部はRTM成形の過程で樹脂の流路としての役割を果たし、良質なCFRPを成形可能とする役割を担う一方で、樹脂リッチ部はマイクロクラック発生の一因となり易いという側面も持っている。このメカニズムを図5に模式的に示す。図5は本発明のCFRPにおいて、樹脂リッチ部とその中に存在する緯方向補助繊維糸条を模式的に示した図である。CFRPが高温から低温にさらされると、マトリックス樹脂は縮もうとするが、前述したようにマトリックス樹脂は周囲が炭素繊維で拘束されているため収縮することができずに、結果として全体を引っ張るような残留熱応力が発生する。同時に緯方向補助繊維糸条も低温になることで収縮しようとするが、その収縮量がマトリックス樹脂よりも大きいときは、やはり緯方向補助繊維糸条の周囲が拘束されていると同じことになり、緯方向補助繊維糸条内部にも経方向に残留熱応力が発生する。この残留熱応力の差が大きくなりマトリックス樹脂と緯方向補助繊維糸条との界面の強度を超えると界面で剥離が発生する。この剥離が基点となりやがてマイクロクラックが発生する。ここでマイクロクラックの発生を抑制するには、まず界面での剥離を抑制することであり、それにはマトリックス樹脂の残留熱応力を低減することが重要である。残留熱応力はマトリックス樹脂の線膨張係数、弾性率および熱サイクルの最高温度と最低温度との温度差に比例するため、弾性率を最適に押さえることで残留熱応力を低減させ、界面の剥離を抑制することができる。また、界面剥離が生じてしまったあとでもマイクロクラックの発生を抑制するにはマトリックス樹脂の靭性が重要である。以上の2点から、低温状態でのマトリックス樹脂の弾性率と破壊靭性値の重要性を鑑みて本発明に至ったのである。
さらに、コアシェルポリマーを用いてマトリックス樹脂の弾性率、破壊靭性値を調整した場合に、マイクロクラックの発生をより効果的に抑制できることを発明者らは見出した。このメカニズムは完全には明らかではないが、マトリックス樹脂注入時に、コアシェルポリマーが樹脂リッチ部に局所的に存在することにより、樹脂リッチ部が他のマトリックス樹脂領域と比べて若干ながら低弾性率化し、かつ、高破壊靭性化することによりマイクロクラックの発生を抑制できるものと考えられる(ただし、全体としてのマトリックス樹脂の弾性率、破壊靭性値には大きくは影響を与えない程度の局在化であると推定される)。
以上のように、発明者らは樹脂リッチ部が成形時のマトリックス樹脂流路としての役割を果たし、かつ、マイクロクラックの発生を押さえることのできる構成に至ったのである。
本発明において、繊維強化複合材料は、強化繊維の体積含有率が50〜65%であることが好ましく、体積含有率はより好ましくは53〜60%である。体積含有率が上記範囲より少ないと繊維強化複合材料の重量が重くなり、また、応力集中の影響で強度が低下する傾向がある。また、強化繊維の体積含有率が上記範囲より多いと繊維強化複合材料内部に未含浸部分やボイドのような欠陥部分が発生することが非常に多く、物性低下を起こしてしまうことがある。
本発明における繊維強化複合材料の好ましい成形方法としては、型内に配置した強化繊維基材からなるプリフォームに、本発明で好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物を好適には40〜90℃の範囲での任意温度において注入する。そのため、該エポキシ樹脂組成物の主剤と硬化剤を混合してから5分以内の粘度は70℃において500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましい粘度は300mPa・s以下である。尚、本発明において粘度測定にはJIS Z8803(1991)における「円すい−板形回転粘度計による粘度測定方法」に従い、標準コーンローター(1°34’×R24)を装備したE型粘度計((株)トキメック製、TVE−30H)を使用して、回転速度50回転/分にて測手下粘度である。混合開始から5分以内の粘度が上記の範囲より高いとエポキシ樹脂組成物の含浸性が不十分になることがある。70℃における粘度の下限は特に制限なく、粘度が低いほどRTM成形における該二液型エポキシ樹脂組成物の注入含浸が容易になる。
また、注入温度において該エポキシ樹脂組成物の反応性が高いと、注入過程で粘度が増加してしまい成形が困難になる場合がある。そのため、該二液型エポキシ樹脂組成物の粘度が70℃の温度において1000mPa・sに達する時間が60分以上であることが好ましく、より好ましくは90分以上である。70℃の温度で1000mPa・sに達する時間の上限に制限はなく、時間が長いほど繊維強化複合材料の成形性に優れる。
本発明において、RTM成形に用いられる型は、剛体からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛体のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いることも可能である。後者の場合、強化繊維からなる繊維基材は、剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置することができる。
剛体型の材料としては、スチールやアルミニウム等の金属、繊維強化プラスチック(FRP)、木材および石膏など既存の各種のものが用いられる。可撓性のフィルムの材料には、ナイロン、フッ素樹脂およびシリコーン樹脂等が用いられる。
剛体のクローズドモールドを用いる場合は、加圧して型締めし、該二液型エポキシ樹脂組成物を加圧して注入することが通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引することも可能である。吸引を行い、かつ、特別な加圧手段を用いることなく、大気圧のみで該二液型エポキシ樹脂組成物を注入することも可能である。
剛体のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、通常、吸引と大気圧による注入を用いる。大気圧による注入で、良好な含浸を実現するためには、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。さらに、強化繊維からなる繊維基材あるいはプリフォームの設置に先立って、剛体型の表面にゲルコートを塗布することも好ましく行われる。
強化繊維からなる繊維基材あるいはプリフォームの設置が完了した後、型締めあるいはバギングが行われ、続いて該エポキシ樹脂組成物の注入が行われた後に、加熱硬化が行われる。加熱硬化時の型の温度は、通常、該エポキシ樹脂組成物の注入時における型の温度より高い温度が選ばれる。加熱硬化時の型の温度は、80〜180℃であることが好ましい。加熱硬化の時間は、1〜20時間が好ましい。加熱硬化が完了した後、脱型して繊維強化複合材料を取り出す。その後、得られた繊維強化複合材料を、硬化温度より高い温度で加熱する後硬化を行ってもよい。後硬化の温度は150〜200℃が好ましく、時間は1〜4時間が好ましい。
本発明の繊維強化複合材料は、強化繊維の体積含有率が高いため軽く、機械物性に優れており、特に環境疲労に対する耐性が非常に高いため、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席および内装材などの航空機部材、モーターケースおよび主翼などの宇宙機部材、構体およびアンテナなどの人工衛星部材、外板、シャシー、空力部材および座席などの自動車部材、構体および座席などの鉄道車両部材、船体および座席などの船舶部材など多くの構造材料に好適に用いることができる。
以下、実施例によって、本発明のCFRPについて具体的に説明する。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り「重量部」を意味する。
<樹脂硬化物の曲げ弾性率、曲げ強度の測定方法>
実施例で得られたマトリックス樹脂の主剤と硬化剤を混合した混合物を所定の型枠内に注入し、熱風オーブン中で室温から130℃の温度まで1分間に1.5℃ずつ昇温した後、130℃の温度で2時間保持し、次いで180℃の温度まで1分間に1.5℃ずつ昇温した後、180℃の温度で2時間保持して2mm厚の樹脂硬化板を作製した。作製した樹脂硬化板から幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、試験速度2.5mm/分、支点間距離32mmで3点曲げ試験を行い、JIS K7171−1994に従い、曲げ弾性率、曲げ強度を測定した。試験環境は測定器に設置されている恒温槽に液体窒素を導入し−54℃に調整した。
<樹脂硬化物の破壊靱性(GIc)の測定方法>
実施例で得られたマトリックス樹脂の主剤と硬化剤を混合した混合物を所定の型枠内に注入し、熱風オーブン中で室温から130℃の温度まで1分間に1.5℃ずつ昇温した後、130℃の温度で2時間保持し、次いで180℃の温度まで1分間に1.5℃ずつ昇温した後、180℃の温度で2時間保持して6mm厚の樹脂硬化板を作製した。得られた樹脂硬化板を、ASTM D5045−99に記載の試験片形状に加工を行った後、ASTM D5045−99に従ってGIc試験を行った。試験環境は測定機に設置されている恒温槽に液体窒素を導入し、−54℃に調整した。
<緯方向補助繊維糸条の経方向弾性率の測定方法>
実施例で用いる緯方向補助繊維糸条をドラムワインド法を用いて190g/m2となるように一方向に引き揃え、約30cm角の緯方向補助繊維糸条基材を作成した。この基材を繊維方向を同一にして12枚積層したのちに、実施例で得られたマトリックス樹脂を用い、RTM法を用いてVf約65%の緯方向補助繊維糸条コンポジットを作成した。このコンポジットを繊維方向を0度として、90度方向が長手方向になるように幅約15mm、長さ60mmの短冊状に切り出した。この短冊状試験片を試験速度2.5mm/分、支点間距離40mmで3点曲げ試験を行い、JIS K7171−1994に従い、曲げ弾性率を測定した。測定した弾性率をEcと、マトリックス樹脂の弾性率をEmとして、緯方向補助繊維糸条の経方向弾性率Efを式(1)から求めた。
1/Ec=(1/Ef)×Vf+(1/Em)×(1−Vf)(1)
試験環境は測定機に設置されている恒温槽に液体窒素を導入し、−54℃に調整した。
<樹脂リッチ部の測定方法>
実施例で得られたCFRP板を、補強繊維方向を0度方向(以下縦方向と略することもある)として、75mm×50mmの寸法にダイヤモンドカッターで切断した。得られた試験片の縦方向の中央から±10mmの領域から幅25mmを切り出し、切り出し面を全観察面として研磨し、市販の顕微鏡を用いて200倍で観察し樹脂リッチ部が存在するかを判定した。なお、樹脂リッチ部が存在するか否かの判定は、図1〜3を用いて説明した上述のとおりである。また樹脂リッチ部の個数は、全観察面において上述したように200倍で樹脂リッチ部が存在するかを判定していき、その総数を樹脂リッチ部の個数とした。
<CFRPのマイクロクラックの測定方法>
実施例で得られたCFRP板を、補強繊維方向を0度方向(以下縦方向と略することもある)として、75mm×50mmの寸法にダイヤモンドカッターで切断した。得られた試験片を市販の恒温恒湿槽と環境試験機を用いて以下a.b.cの手順に示すような環境条件にさらした。
a.市販の恒温恒湿槽を用い49℃、95%/RHの環境に12時間暴露する。
b.暴露後に、市販の環境試験機に移し、まず−54℃の環境下に1時間暴露する。その後71℃まで10℃±2℃/分の昇温速度で71℃まで昇温させる。昇温後71℃で5分±1分保持した後、10℃±2℃/分で−54℃まで降温させ、−54℃で5分±1分保持する。この−54℃から71℃まで昇温しまた−54℃まで降温させるサイクルを1サイクルと定義し、このサイクルを200回繰り返す。
c.上記の恒温恒湿槽での環境暴露および環境試験機でのサイクルをあわせて1ブロックと定義し、5ブロック繰り返す。
上記の環境暴露を行ったCFRP試験片の縦方向の中央から±10mmの領域から幅25mmを切り出し、切り出し面を観察面として研磨し、市販の顕微鏡を用いて200倍の倍率で観察面を観察し発生しているクラックの数を計測した。
<CFRPの0度圧縮強度の測定方法>
実施例で得られた基材を150×150mmの大きさにカットして、0°方向に6層積層した。これを実施例で得られた樹脂を用いRTM法を用いて樹脂を注入し、熱風オーブン中で130℃の温度まで1分間に1.5℃ずつ昇温した後、130℃の温度で2時間保持し、次いで180℃の温度まで1分間に1.5℃ずつ昇温した後、180℃の温度で2時間保持し試験用材料を得た。同様にしてつくったCFRPを45×150mmの大きさに4枚カットしタブを作成した、このタブを130℃硬化用の接着フィルムを用いて、片面に2枚ずつ両側で同じ位置にタブ間が2.5mmになるように試験用材料に張り合わせ、130℃の温度で2時間で加熱し接着フィルムを硬化させた。この試験用材料をJIS K7076(1991)に従い切断し、試験片を作成した。試験片を例えばインストロン社製の万能試験機を用いて0°圧縮強度を測定した。
以下に本発明で用いた材料の作成方法およびその原料を記す。
A.マトリックス樹脂原料
以下の樹脂原料を適用した。
1.エポキシ樹脂
(1)“アラルダイト(登録商標)”MY721:ハンツマン・ジャパン製、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
(2)“jER(登録商標)”630:ジャパンエポキシレジン製、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール
(3)“EPON(登録商標)”825:ジャパンエポキシレジン製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(4)“jER(登録商標)”806:ジャパンエポキシレジン製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
(5)GAN:日本化薬製、ジグリシジルアニリン
2.コアシェルゴム(コアシェルゴムを含むエポキシマスター)
(1)“カネエース(登録商標)”MX−416:カネカ製、コアシェルゴム(粒径:0.1μm)
コアシェルゴムを25質量%、“アラルダイト(登録商標)”MY721 75質量%からなるエポキシマスター。
3.硬化剤
(1)“jERキュア(登録商標)”W:ジャパンエポキシレジン製、ジエチルトルエンジアミン
(2)3,3’DAS:三井化学ファイン製、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン
(3)セイカキュア−S:セイカ製、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン。
4.硬化促進剤
(1)DIC−TBC:大日本インキ化学工業製、4−t−ブチルカテコール。
B.マトリックス樹脂組成物A〜F
表1の処方により樹脂組成物A〜Fを得た。
C.補強繊維
炭素繊維A:PAN系炭素繊維T800S(東レ(株)製、24,000フィラメント、繊度:1.030tex、引張強度5.9GPa、引張弾性率295GPa、破断伸度:2.0%)
D.補助繊維糸条:
補助繊維糸条A:ポリアミド66繊維、7フィラメント、繊度:1.7tex、融点:255℃、油分:0.6%
補助繊維糸条B:ガラス繊維、ECE225 1/0 1.0Z、繊度:22.5tex、伸度:3%以上、バインダータイプ“DP”(日東紡績(株)製)
F.粒子状の樹脂原料
ポリエーテルスルフォン樹脂(住友化学工業(株)製“スミカエクセル(登録商標)”5003P)60重量%(主成分)と次のエポキシ樹脂組成物40重量%(副成分)とを2軸押出機にて溶融混煉して装用させた樹脂組成物を、冷凍粉砕して粒子にした。平均粒子径D50(レーザー回析・散乱法を用いた(株)セイシン企業製LMS−24にて測定):15μm、ガラス転移点:92℃。
G.基材A、B
基材Aの作製:184本の炭素繊維Aをお互いに平行に引き揃え、1.8本/cmの密度で一方向に配列し、1m幅のシート状の強化繊維糸条群を形成した。また、補助繊維糸条Bを、お互いが平行に引き揃え、1.8本/cmの密度で、炭素繊維Aと同じ方向で、かつ、炭素繊維Aと交互に一方向に配列し、経方向補助繊維糸条群を形成した。両者を用いてシート状の経方向糸条群を形成した。次に補助繊維糸条Aをお互いに平行に引き揃え、3本・cmの密度で、経方向糸条群と直行する方向(以下緯方向と略することもある)に配列し、上記補助繊維糸条Aと補助繊維糸条Bとを織機を用いて平織組織に交錯させ、一方向性ノンクリンプ織物を形成した。かかる1方向性ノンクリンプ織物に、粒子状の樹脂材料を、ノードソン(株)製トリボllガンにて均一分散させながら、表面に26g/m(14重量%)塗布し、185℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、樹脂材料を基材方表面に接着し、最終的に基材Aを得た
基材Bの作製:基材Aで緯方向補助繊維糸条として、補助繊維糸条Bのかわりに補助繊維糸条Aを用いた以外は全く同じ方法で基材Bを作製した。
基材Cの作製:基材Aを作成した後、基材Aから経方向捕縄糸条を取り除き、その隙間を隣接していた炭素繊維A糸条を拡げることによりふさいで基材Cを作製した。
<実施例1>
使用したマトリックス樹脂、基材は以下のとおりである。
「マトリックス樹脂」: マトリックス樹脂A
「基材」:基材A
前記方法にてマトリックス樹脂の−54℃下での曲げ弾性率と破壊靭性値を測定した結果、3.9GPa、150J/mであった。また前記の方法で緯方向補助糸条の弾性率を測定した結果−2.5GPaであった。得られたコンポジットのマイクロクラックを前記の方法で測定したところ発生したマイクロクラックはわずかに1個のみであった。また、観察した範囲で複数の樹脂リッチ部が確認され、これがマトリックス樹脂の流路として働いたために成形性は良好であった。また、緯方向補助糸条として弾性率の低いナイロンを用いたため賦形時の取り扱いも良好であった。また0度圧縮強度も十分高い値を示した。
<実施例2〜4>
マトリックス樹脂、基材をそれぞれ表2に記載されているとおりに変更した以外は全て実施例1と同じ方法でCFRPを成形した。それぞれの樹脂リッチ部の存在、マイクロクラックの発生数、0度圧縮強度、成形性、賦形性を同じく表2に示すが、例えば実施例2では緯方向補助繊維糸条が突っ張って、若干賦形性が損なわれ、また、実施例4ではマイクロクラックが4個と若干数増えたがいずれも問題の無いレベルであり、良好なCFRPが得られた。
<比較例1、2>
マトリックス樹脂を表2のとおり変更した以外は全て実施例1に記載の方法でCFRPを成形した。えられたCFRPのマイクロクラック発生数は表2のとおり実施例1〜4の数十倍程度にのぼり耐久性に大きな不安の残る結果となった。
<比較例3>
マトリックス樹脂を表2のとおり変更した以外は全て実施例1に記載の方法でCFRPを成形したが、樹脂の粘度が高かったためマトリックス樹脂を注入する際に倍以上の時間がかかり、成形の途中で樹脂の硬化が始まり未含浸の部分が存在した。また、得られたCFRPの0度圧縮強度は実施例に比べて10%程度低い値となった。
<比較例4>
基材Aを基材Cに変更した以外は全て実施例1に記載の方法でCFRPを成形した。しかし実際は経方向補助繊維糸条がないため樹脂の流路が確保されずに得られたCFRPには未含浸の部分が数多く存在し、RTM成形法には不向きであった。
樹脂リッチ部の一例を示す概略図である。 樹脂リッチ部の別の一例を示す概略図である。 樹脂リッチ部でない部分の一例を示す概略図である。 全観察面に樹脂リッチ部が何個存在するかのカウント方法を示すための模式図である。 マイクロクラック発生メカニズムを示す模式図である。
符号の説明
1 よこいと群(紙面に垂直によこいとが配列)
2 たていと群(紙面に垂直にたていとが配列)
3 CFRP層(紙面に平行に炭素繊維が配列)
4 CFRP層(紙面に垂直に炭素繊維が配列)
5 マトリックス樹脂
6 樹脂リッチであるかを判別するためのよこいとと同形の判定基準
7a 観察倍率を200倍にしたときの範囲の例(図1に相当)
7b 観察倍率を200倍にしたときの範囲の例(図2に相当)
8 緯方向補助繊維糸条
9 マトリックス樹脂に発生する残留熱応力
10 緯方向補助繊維糸条に発生する残留熱応力
11 界面剥離
12 マイクロクラック

Claims (11)

  1. 少なくともマトリックス樹脂[A]、炭素繊維[B]、および該炭素繊維を横切り該炭素繊維からなる炭素繊維束を束ねる緯方向補助繊維糸条[C]を有してなる炭素繊維強化複合材料であって、該マトリックス樹脂[A]が以下の要件を満たしており、かつ、該炭素繊維強化複合材料内に以下に定義される樹脂リッチ部が存在していることを特徴とする炭素繊維強化複合材料。
    マトリックス樹脂[A]:熱硬化性樹脂からなり、かつ、−54℃環境下での曲げ弾性率が3.6GPa以上4.6GPa以下であり、かつ、−54℃環境下での破壊靭性値が120J/m以上である。
    樹脂リッチ部:図1に示すような炭素繊維強化複合材料の観察面において、緯方向補助繊維糸条の断面と同形の円を、それらが互いに外接するように3つ作成したときに、該3つの円の集合体が完全に含まれるマトリックス樹脂領域。
  2. マトリックス樹脂[A]の−54℃環境下での曲げ弾性率が3.7GPa以上4.2GPa以下である、請求項1記載の炭素繊維強化複合材料。
  3. マトリックス樹脂[A]の−54℃環境下での破壊靭性値が150J/m以上である、請求項1または2に記載の炭素繊維強化複合材料。
  4. 緯方向補助繊維糸条[C]の−54℃環境下での経方向弾性率が2GPa以上2.8GPa以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
  5. マトリックス樹脂[A]がコアシェルポリマーを含んでいる、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維複合材料。
  6. 炭素繊維[B]の弾性率が250GPa以上370GPa以下の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維複合材料。
  7. さらに経方向補助繊維糸条[D]が、炭素繊維束と炭素繊維束との間に並んで設けられている、請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
  8. 経方向補助繊維糸条[D]がガラス繊維である、請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
  9. 炭素繊維強化複合材料の全観察面に樹脂リッチ部が5個以上20個未満存在している、請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
  10. 炭素繊維[B]と、該炭素繊維を横切り該炭素繊維からなる炭素繊維束を束ねる緯方向補助繊維糸条[C]を有してなる繊維基材に、以下の要件を満たすマトリックス樹脂[A]を注入して含浸させた後、加熱硬化させることを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法。
    マトリックス樹脂[A]:熱硬化性樹脂からなり、かつ、−54℃環境下での曲げ弾性率が3.6GPa以上4.6GPa以下であり、かつ、−54℃環境下での破壊靭性値が120J/m以上である。
  11. 前記繊維基材には、さらに経方向補助繊維糸条[D]が、炭素繊維束と炭素繊維束との間に並んで設けられている、請求項10に記載の炭素繊維強化複合材料の製造方法。
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