JP5617171B2 - 繊維強化複合材料およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素繊維、および熱硬化性樹脂硬化物を有してなる繊維強化複合材料およびその製造方法に関するものであり、より詳しくは、フィラメント数が6,000〜70,000本である炭素繊維束、熱硬化性樹脂硬化物、体積平均粒子径が1〜500nmであるコアシェルポリマー粒子、および分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有する非晶性熱可塑性樹脂を有してなる、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材および船舶部材などの構造部材に好適な繊維強化複合材料およびその製造方法に関するものである。
従来、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度や剛性などの力学特性や耐熱性、また耐食性に優れているため、航空機、宇宙機、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に応用されてきた。特に、高性能が要求される用途では、連続した強化繊維を用いた繊維強化複合材料が用いられ、強化繊維としては比強度、比弾性率に優れた炭素繊維が、そしてマトリクス樹脂としては力学特性や炭素繊維との接着性に優れたエポキシ樹脂が多く用いられている。
しかしながら、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化物は熱可塑性樹脂にくらべて破壊靭性が一般的に低い。それにより繊維強化複合材料の耐衝撃性が低下する問題が生じる。特に航空機用構造部材の場合、組立中の工具落下や運用中の雹の衝撃等に対して優れた耐衝撃性が要求されるため、耐衝撃性の向上は大きな課題であった。
繊維強化複合材料は一般に積層構造をとっており、これに衝撃が加わると層間に高い応力が発生し、面内剪断モード(開口モードII)による剥離損傷が生じる。
面内剪断モードにより生じる剥離損傷を抑制するためには、熱硬化性樹脂のモードII臨界エネルギー開放率(以下、GIICと略記することがある。)を向上させることが有効である。外部からの衝撃に対する耐衝撃性を向上させる場合は、特に繊維強化複合材料の層間を形成する樹脂層のGIICを向上させればよい。
熱硬化性樹脂のGIICを向上させるためには、熱硬化性樹脂の塑性変形能力を高めることが有効であり、その手段としては塑性変形能力に優れている熱可塑性樹脂を配合することである。
熱可塑性樹脂を配合する方法は、繊維強化複合材料の成形法の一つであるプリプレグ法では様々な検討がなされてきた。例えば、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を溶解させて高靭性化した高靭性熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として用いる方法がある(特許文献1〜2参照)。しかしながら、熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂に配合すると著しく粘度が上昇するため、熱可塑性樹脂の配合量に制限があり、そのため熱硬化性樹脂のGIICを一定以上向上させることは難しい。
そこで、繊維強化複合材料の層間に熱可塑性樹脂材料を局所的に加える検討がなされており、プリプレグ法では硬化前のプリプレグの表面に熱可塑性樹脂を配置して積層硬化させる手法で、繊維強化複合材料の層間を形成する熱硬化性樹脂のGIICを飛躍的に向上させた。プリプレグの表面に配置する熱可塑性樹脂の形態については、様々な提案がなされている(特許文献3〜11参照)。
一方、繊維強化複合材料には外部からの衝撃以外に、強化繊維と熱硬化性樹脂の硬化物の線膨張係数の違いにより発生する内部応力や荷重の繰り返し負荷(疲労)により、樹脂硬化物に開口モード(開口モードI)による損傷が生じうる。これにより、繊維強化複合材料の内部にクラックが発生して耐水性や機械物性を低下させるなどの問題が生じることもある。内部応力や繰り返し負荷による内部クラックの発生で特に注意すべきは、外部からの衝撃とは異なり層間以外にも損傷が発生することである。
開口モードにより生じる内部クラックを抑制するためには、熱硬化性樹脂のモードI臨界エネルギー開放率(GICと略記することがある。)を向上させることが有効である。
熱硬化性樹脂のGICを向上させる手法としては、前記した熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂を配合する方法があるが、前記したように粘度上昇の問題があるため熱可塑性樹脂の配合量に制限がある。
粘度上昇の少ない熱硬化性樹脂の靭性向上手段として、前記した熱可塑性樹脂を配合する方法以外に、コアシェル構造を有するポリマー粒子を配合する方法について提案がなされている(特許文献12〜13参照)。
しかしながら、コアシェル構造を有するポリマーを構成する成分の違いにより靭性向上効果の発現率が異なり、選択を失敗すると必要な靭性を達成するためには多量の配合量が必要となり、粘度の増加や弾性率、場合によっては耐熱性までも低下させてしまう問題がある。特に航空機用構造部材の場合、使用環境が−50℃を下回るような極低温域にまで達するため、極低温域における靭性発現と力学物性や耐熱性を両立させるためにはコアシェル構造を有するポリマーの成分選択が非常に重要になってくる。
また、近年において成形コスト低減のポテンシャルが高いために適用が拡大されている、強化繊維基材に直接液状の熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化させるレジン・トランスファー・モールディング(Resin Transfer Molding、以下、RTMと略記することがある。)法においては、熱硬化性樹脂は強化繊維からなる繊維基材を積層後に注入するため、熱硬化性樹脂を強化繊維基材に注入させる際に、低粘度の液状でなければならないという樹脂設計上の制約があり、さらには配合する粒子の粒子径をうまく設計しないと、積層した繊維基材の最表面で粒子が濾別される可能性があり、また粒子が熱硬化性樹脂の含浸流路を阻害してしまい、未含浸部分が発生し、得られた繊維強化複合材料の機会物性を低下させる可能性もある。
以上の様に、過去に繊維強化複合材料の耐衝撃性向上のための検討は様々に行われているが、繊維強化複合材料において外部からの衝撃および内部応力や繰り返し負荷に対応すべく、繊維強化複合材料内部において、層内においてはGICを、層間においてはGIICをそれぞれ独立させて向上させる思想および手法はなく、特にRTM法にて製造する繊維強化複合材料で実現することは非常に困難な課題であったため、これらの課題を解決することが望まれていた。
特開昭62−297314号公報 特開昭62−297315号公報 欧州公開特許第366979号明細書 欧州公開特許第496518号明細書 特開平1−320146号公報 欧州公開特許第274899号明細書 欧州公開特許第707032号明細書 欧州公開特許第488389号明細書 特開平2−32843号公報 欧州公開特許第657492号明細書 特開平8−48796号公報 特開平5−65391号公報 特開2003−277579号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、外部からの衝撃に強く、さらには使用環境の変化、具体的には温度変化や繰り返し負荷などの疲労特性に優れた繊維強化複合材料、特にレジン・トランスファー・モールディング法により成形され、航空機一次構造などの部材に最適な繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、少なくとも以下の構成要素[A]、[B]、[C]および[D]から構成されてなる繊維強化複合材料であって、少なくとも構成要素[A]、[B]および[C]から構成される複合層1と、少なくとも構成要素[B]、[C]および[D]から構成される複合層2が交互に層形成されており、複合層1には構成要素[D]を含まない領域があり、複合層2の平均層厚みが10〜50μmであることを特徴とする繊維強化複合材料である。
[A]フィラメント数が6,000〜70,000本である炭素繊維束、
[B]少なくとも以下の構成要素[B−1]および[B−2]を含む熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる硬化物、
[B−1]エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化可能な樹脂、
[B−2]構成要素[B−1]を硬化させうる成分、
[C]コア成分のガラス転移温度が−40℃以下であり、シェル成分に構成要素[B]の未硬化物と反応する官能基を有し、且つ、体積平均粒子径が1〜500nmであるコアシェルポリマー粒子、
[D]分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有し、且つ、ガラス転移温度が150℃以上である非晶性熱可塑性樹脂。
また、本発明の繊維強化複合材料の好ましい態様によれば、かかる構成要素[A]は炭素繊維束からなる経糸と、これに平行に配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸と、これらと直交するように配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸からなり、該補助経糸と該緯糸が互いに交差することにより、炭素繊維束が一体に保持されて織物が形成されているノンクリンプ構造の織物を成していることであり、より好ましくは、ガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸の繊度が、炭素繊維束からなる経糸の繊度の20%以下であり、ガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸の繊度が、炭素繊維束からなる経糸の繊度の10%以下である。
また、かかる構成要素[B]は、構成要素[B−1]がエポキシ樹脂で、構成要素[B−2]が芳香族ポリアミンであるエポキシ樹脂組成物を加熱硬化した硬化物であり、かかる構成要素[C]はコア成分が架橋ポリブタジエンであることも好ましい。
本発明の繊維強化複合材料は、構成要素[A]を含むシート状物の少なくとも片面に、構成要素[D]を含む繊維状、シート状、粒子状から選ばれる形態を成した組成物を付与した繊維基材を型内に配置し、構成要素[E]を注入して含浸させた後、加熱硬化させる、いわゆるレジン・トランスファー・モールディング(RTM)法により製造される。
[A]フィラメント数が6,000〜70,000本である炭素繊維束、
[E]少なくとも以下の構成要素[B−1]、[B−2]および[C]を含み、70℃の温度において、測定開始から5分以内の粘度が300mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物、
[B−1]エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンズオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化可能な樹脂、
[B−2]構成要素[B−1]を硬化させうる成分、
[C]コア成分のガラス転移温度が−40℃以下であり、シェル成分に構成要素[B]の未硬化物と反応する官能基を有し、且つ、体積平均粒子径が1〜500nmであるコアシェルポリマー粒子、
[D]分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有し、且つ、ガラス転移温度が150℃以上である非晶性熱可塑性樹脂。
本発明の繊維強化複合材料の製造方法の好ましい態様によれば、構成要素[E]が、少なくとも構成要素[B−1]および[C]からなる主剤と、少なくとも構成要素[B−2]からなる硬化剤とから構成される二液型エポキシ樹脂組成物であり、該主剤と該硬化剤を混合する工程を含むことである。
また、本発明の繊維強化複合材料の製造方法の好ましい態様によれば、構成要素[D]として、分子構造の末端または側鎖に構成要素[B−1]または[B−2]と反応可能な官能基を有するものを用いることである。
また、本発明の繊維強化複合材料の製造方法の好ましい態様によれば、炭素繊維を含むシート状物が、炭素繊維束からなる経糸と、これに平行に配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸と、これらと直交するように配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸からなり、該補助経糸と該緯糸が互いに交差することにより、炭素繊維束が一体に保持されて織物が形成されているノンクリンプ構造の織物を成している繊維基材であり、該繊維基材を剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置し、真空ポンプにて剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間を真空引きし、樹脂混合物を注入して含浸させた後、加熱硬化させる、いわゆるバキュームアシスト・レジン・トランスファー・モールディング(VaRTM)法であり、より好ましくは、ノンクリンプ構造の織物を成している繊維基材のガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸の繊度が、炭素繊維束からなる経糸の繊度の20%以下であり、ガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸の繊度が、炭素繊維束からなる経糸の繊度の10%以下である。
さらに、本発明の繊維強化複合材料の製造方法の好ましい態様によれば、構成要素[B]および構成要素[C]を含む樹脂混合物を注入後、50〜140℃の範囲の任意温度まで昇温して1次硬化を行い、次いで160〜180℃の範囲の任意温度まで昇温して2次硬化を行うことである。
本発明の繊維強化複合材料は、外部からの衝撃に対する耐衝撃性が優れており高い衝撃後圧縮強度(CAI)を有し、疲労に対する耐性が高いため、一定疲労付与後有孔板圧縮強度に優れており、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材および船舶部材などの構造部材に好適に使用することができる。
本発明の繊維強化複合材料は、少なくとも以下の構成要素[A]、[B]、[C]および[D]から構成される。
[A]フィラメント数が6,000〜70,000本である炭素繊維束、
[B]少なくとも以下の構成要素[B−1]および[B−2]を含む熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる硬化物、
[B−1]エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンズオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化可能な樹脂、
[B−2]構成要素[B−1]を硬化させうる成分、
[C]コア成分のガラス転移温度が−40℃以下であり、シェル成分に構成要素[B]の未硬化物と反応する官能基を有し、且つ、体積平均粒子径が1〜500nmであるコアシェルポリマー粒子、
[D]分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有し、且つ、ガラス転移温度が150℃以上である非晶性熱可塑性樹脂。
本発明の繊維強化複合材料に用いられる構成要素[A]である炭素繊維束を構成する炭素繊維とは、具体的にはアクリル系、ピッチ系およびレーヨン系等の炭素繊維が挙げられ、特に引張強度の高いアクリル系の炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸および無撚糸等を使用することができるが、繊維強化複合材料の成形性と強度特性のバランスが良いため、解撚糸または無撚糸が好ましく用いられる。
炭素繊維の引張弾性率は、成形された構造部材の特性と重量との観点から、200GPa〜400GPaの範囲であることが好ましい。弾性率がこの範囲より低いと、構造部材の剛性が不足し軽量化が不十分となる場合があり、逆に弾性率がこの範囲より高いと、一般に炭素繊維の強度が低下する傾向がある。より好ましい弾性率は、250GPa〜370GPaの範囲内であり、さらに好ましくは290GPa〜350GPaの範囲内である。ここで、炭素繊維の引張弾性率は、JIS R7601−2006に従い測定される。
本発明において構成要素[A]の炭素繊維束はシート状の繊維基材として用いられる。シート状繊維基材は炭素繊維単独または他の無機繊維および化学繊維などと組み合わせたものから成り、その形態としては、繊維方向がほぼ同方向に引き揃えられたものや、織物、ニット、ブレイドおよびマット等を使用することができるが、特に、高力学物性および強化繊維の体積含有率が高い繊維強化複合材料が得られるという点で、炭素繊維が実質的に一方向に配向されており、ガラス繊維または化学繊維で固定されたいわゆる一方向織物が好ましく用いられる。
一方向織物としては、例えば、炭素繊維束を経糸として一方向に互いに平行に配置し、それと直交するガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸とが、互いに交差して平織組織をなしたものや、炭素繊維束からなる経糸とこれに平行に配列された炭素繊維より繊度の小さいガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸と、これらと直交するように配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸からなり、該補助経糸と該緯糸が互いに交差することにより、炭素繊維束が一体に保持されて織物が形成されているノンクリンプ構造の織物等が挙げられる。
ここで、繊度とは繊維束1000m当たりの重量(以下、texと言う)を指す。本発明において、炭素繊維束は6,000〜70,000フィラメントで構成され、繊度が400〜5,000texの範囲であることが好ましく、より好ましくは12,000〜25,000フィラメントで構成され、繊度が800〜1,800texである。炭素繊維フィラメント数および繊度がかかる範囲より小さいと、織物での交錯点が多すぎ、力学物性が低下する場合があり、逆に炭素繊維フィラメント数および繊度が係る範囲より大きいと、織物での交錯点が少なすぎ、織物の形態安定性、取扱い性が低下する場合があるため好ましくない。
平織組織をなした織物の場合、炭素繊維束と緯糸が直交するため、炭素繊維束が屈曲するが、ノンクリンプ構造の織物の場合、直交するのは炭素繊維束より繊度の小さいガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸とガラス繊維または化学繊維からなる緯糸であり、該補助経糸は炭素繊維束より変形しやすいため、炭素繊維束は屈曲し難くなる。補助経糸を形成するガラス繊維または化学繊維の繊維束の繊度は炭素繊維束の繊度20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。補助経糸の繊度を炭素繊維束の繊度の20%以下とすることで、補助経糸が炭素繊維束より変形しやすくなり、炭素繊維束を屈曲させることなく織物を形成することができる。補助経糸の繊度の下限は特になく、小さければ小さいほどよいが、織物の形態安定性、製造安定性の面から、0.05%以上であるのが一般的である。
また、織り組織を形成する緯糸の繊度が大きすぎると、炭素繊維束の屈曲を促す場合がある。そのため、緯糸を形成するガラス繊維または化学繊維の繊維束の繊度は炭素繊維束の繊度10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。緯糸の繊度の下限は特になく、小さければ小さいほどよいが、織物の形態安定性、製造安定性の面から、0.05%以上であるのが一般的である。
炭素繊維束が屈曲した場合、繊維束内において炭素繊維が占める体積分布のムラが生じ、炭素繊維の単糸同士の接触が発生する可能性がある。炭素繊維の単糸同士の接触が発生した場合、その部分には熱硬化性樹脂が含浸しないため欠陥となり接着性や力学物性を低下させる可能性がある。よって、炭素繊維束が屈曲し難いノンクリンプ構造の織物を成している繊維基材を特に好ましく用いることができる。
本発明の繊維強化複合材料に用いられる構成要素[B]である熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる硬化物とは、熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化したものである。
構成要素[B]を構成する構成要素[B−1]としては、具体的にはエポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂が好ましく用いられる。これらのうち、価格と性能のバランスや、市販原料が豊富で設計の自由度が高いという点でエポキシ樹脂がもっとも好ましい。
ここで、本発明において、エポキシ樹脂とは1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を指す。また、エポキシ樹脂組成物とはエポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させる成分(一般的には硬化剤、硬化触媒または硬化促進剤という。)および必要に応じて適宜添加される改質剤(可塑剤、染料、有機顔料や無機充填材、高分子化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カップリング剤、界面活性剤など)を含んだ未硬化状態の混合物を指し、エポキシ樹脂硬化物あるいは硬化物とはエポキシ樹脂組成物を加熱して架橋反応させ、ガラス転移温度が少なくとも50℃以上を有するまで高分子量化した高分子量体を指す。
本発明において、構成要素[B−1]を構成するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N−グリシジルフタルイミド、5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンイソシアネートの付加により得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
特に、多官能エポキシ樹脂であるN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリンは耐熱性を高める効果が高く、硬化物の耐薬品性に優れており、また、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノールは耐熱性を高める効果があるエポキシ樹脂の中で粘度が非常に低く、エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させる効果があるので好ましく用いることができる。かかるエポキシ樹脂は全エポキシ樹脂100重量部中に40〜85重量部が好ましく、より好ましくは45〜75重量部配合することである。かかるエポキシ樹脂の配合量を全エポキシ樹脂100重量部中に40重量部以上とすることにより、得られる硬化物、ひいては該エポキシ樹脂硬化物を含む繊維強化複合材料のガラス転移温度を高くすることができ、さらにかかるエポキシ樹脂が全エポキシ樹脂100重量部に対し85重量部以下とすることにより、エポキシ樹脂硬化物の破壊靭性の低下を抑え、繊維強化複合材料に適したものとなる。
また、前記エポキシ樹脂以外で、ジグリシジルアニリン骨格を有するN,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジンは低粘度であり、樹脂硬化物中における自由体積を低減し弾性率を向上させる効果が高いため好ましく用いることができる。かかるエポキシ樹脂は全エポキシ樹脂100重量部中に10〜55重量部が好ましく、より好ましくは15〜50重量部配合することである。かかるエポキシ樹脂の配合量を全エポキシ樹脂100重量部中に10部以上とするにより、得られるエポキシ樹脂組成物の粘度を下げ、加熱硬化して得られる硬化物の弾性率を高め、ひいては該エポキシ樹脂硬化物を含む繊維強化複合材料の圧縮特性を向上することができ、さらにかかるエポキシ樹脂が全エポキシ樹脂100重量部に対し55重量部以下とすることにより、樹脂硬化物の耐熱性、破壊靭性の低下を抑え繊維強化複合材料に適したものとなる。
本発明において、構成要素[B]を構成する構成要素[B−2]としては、アミン化合物、フェノール化合物、ポリオール化合物、酸無水物などを、構成要素[B−1]で使用した成分により適宜使用することができ、特に構成要素[B−1]としてエポキシ樹脂を使用した場合は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ヒドラジド、酸無水物、ポリメルカプタン、ポリフェノールなど、量論的反応を行う化合物と、イミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩のように触媒的に作用する化合物を硬化剤として使用することができる。量論的反応を行う化合物を用いる場合には、硬化促進剤、例えばイミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩、ホスフィンなどを配合する場合がある。RTM成形により繊維強化複合材料を成形する場合は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、イミダゾールが適しており、特に耐熱性に優れた構造材の製造を目的とする場合は、芳香族ポリアミンが最も適している。
RTM成形にて繊維強化複合材料を成形する場合は、芳香族ポリアミンのなかでも、液状のものが使用される。液状芳香族ポリアミンとしては、例えば、ジエチルトルエンジアミン(2,4−ジエチル−6−メチル−m−フェニレンジアミンと4,6−ジエチル−2−メチル−m−フェニレンジアミンを主成分とする混合物)や2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、2,2’−イソプロピル−6,6’−ジメチル−4,4’−メチレンジアニリン、2,2’、6,6’テトライソプロピル−4,4’−メチレンジアニリン等のジアミノジフェニルメタンのアルキル基誘導体およびポリオキシテトラメチレンビス(p−アミノベンゾエート)を挙げることができる。中でも、低粘度でガラス転移温度などの硬化物としての物性に優れるジエチルトルエンジアミンが好ましく使用できる。
液状芳香族ポリアミンには結晶が析出しない程度で固形の芳香族ポリアミンを配合することができる。固形の芳香族ポリアミンとしては3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンが耐熱性、弾性率に優れた硬化物が得られ、さらに線膨張係数および吸湿による耐熱性の低下が小さいので好ましく使用できる。一般に、ジアミノジフェニルスルホンは結晶性が強く、液状芳香族ポリアミンと高温で混合して液体としても、冷却過程で結晶として析出しやすいが、ジアミノジフェニルスルホンの2種の異性体と液状芳香族ポリアミンを混合した場合、単一のジアミノジフェニルスルホンと液状芳香族ポリアミンの混合物より遙かに結晶の析出を抑制でき、ジアミノジフェニルスルホンの配合量を多くできるため好ましい。ジアミノジフェニルスルホンの配合量は、全芳香族アミン100重量部中に10〜40重量部が好ましく、20〜35重量部であればさらに好ましい。配合量が10重量部以上であれば前述したような硬化物の効果が得られやすく、さらに配合量が40重量部以下であれば結晶の析出を抑制しやすくなり好ましい。3,3’−ジアミノジフェニルスルホンと4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを、結晶の析出を抑制するために併用する場合は、両者の重量比は10:90〜90:10であることが好ましく、両者の比率が近いほど、結晶析出の抑制効果は高くなる。
本発明において、構成要素[B−1]としてエポキシ樹脂、構成要素[B−2]としてポリアミン系硬化剤を使用する場合、エポキシ樹脂と硬化剤の配合量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1個に対し、硬化剤中の活性水素が0.7〜1.3個の範囲になる量であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2個になるように配合することである。活性水素とは有機化合物において窒素、酸素、硫黄と結合していて、反応性の高い水素原子をいう。エポキシ基と活性水素の比率が前記範囲を外れた場合、得られた樹脂硬化物の耐熱性や弾性率が低下する可能性がある。
本発明において、構成要素[B−2]として芳香族ポリアミンを用いる場合、芳香族ポリアミンは、一般的に架橋反応の進行が遅いことが知られているため、反応を促進するため硬化促進剤を配合することができる。硬化促進剤としては、例えば、三級アミン、ルイス酸錯体、オニウム塩、イミダゾール、フェノール化合物などの硬化促進剤を配合することができる。
RTM成形にて繊維強化複合材料を製造する場合は、炭素繊維束の中にまで硬化促進剤の濃度が均一のまま含浸できるほど形状が小さいことが好ましい。具体的には体積平均粒子径で0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下であり、もっとも好ましくは、液状芳香族ポリアミンに固形分が存在しないまで完全に溶解した状態であることである。前記要件を満たすことにより、安定な機械物性を示す繊維強化複合材料を得ることができる。ここで、完全に溶解した状態とは、溶解して固形成分を有せず、濃度分布が無い液状物を形成し、さらには該液状物を25℃で1ヶ月以上静置保管した場合でも結晶が析出しない状態に保たれていることを意味する。
RTM成形にて繊維強化複合材料を製造する場合、樹脂を注入する間の粘度増加を抑えなければならない。t−ブチルカテコールは樹脂注入時の温度(50〜80℃)では反応促進効果は少なく、100℃以上の温度域で促進効果が増加する特徴があるのでRTM法に適しているため好ましく用いることができる。
硬化剤に硬化促進剤を配合する場合の配合量は全エポキシ樹脂100重量部に対し、0.5〜3重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜2.5重量部配合することである。硬化促進剤の配合量がこの範囲から外れると、未硬化時の取扱時間と高温時の反応速度のバランスが崩れるので好ましくない。
本発明の繊維強化複合材料に用いられる構成要素[C]であるコアシェルポリマー粒子とは、架橋されたゴム状ポリマーまたはエラストマーを主成分とする粒子状コア成分の表面にコア成分とは異種のシェル成分ポリマーをグラフト重合することで粒子状コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆したものであり、少量添加で硬化物の破壊靭性を大きく向上することが可能である。
コアシェルポリマーを構成するコア成分としては、共役ジエン系モノマー、アクリル酸および/またはメタクリル酸エステル系モノマーより選ばれる1種または複数種から重合されたポリマーまたはシリコーン樹脂などを使用することができる。
繊維強化複合材料を構造部材、特に航空機用途に用いる場合、高い耐熱性が要求される。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂組成物を用いた場合、その硬化物は非晶性でありガラス転移温度をもつ。ガラス転移温度以上の温度雰囲気下ではエポキシ樹脂の硬化物は剛性が大幅に低下し、これにともなって繊維強化複合材料の機械物性も低下する。したがって、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は繊維強化複合材料の耐熱性の指標とされる。エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は硬化プロセスの熱履歴における最高温度に相関する。航空機用途では硬化プロセスの最高温度は約180℃が選ばれることが多い。そのため、繊維強化複合材料を製造する工程では最終的に180℃の温度下で2時間加熱硬化した硬化物のガラス転移温度は180℃以上が好ましく、190℃以上であればさらに好ましい。ただし、エポキシ樹脂の熱分解温度は未硬化および硬化の状態に関わらず約240℃と言われており、実質的にガラス転移温度の上限は熱分解温度以下となる。
一方、航空機用途に使用される繊維強化複合材料は、特に高い高度で飛行する航空機の場合、−50℃以下という非常に低温の雰囲気下にさらされる。そのため、繊維強化複合材料には前述したガラス転移温度から極低温下までの環境疲労が蓄積し、さらに繰り返し負荷による機械疲労が加わると繊維強化複合材料の内部に樹脂硬化物に開口モード(亀裂開口モードI)によるクラックが発生する場合がある。クラックが発生したまま、更なる環境疲労および繰り返し負荷が加わると、クラックはより成長し、最後には繊維強化複合材料の機械物性を低下させてしまう可能性がある。環境疲労および繰り返し負荷により発生するクラックを防止するためには樹脂硬化物のモードI臨界エネルギー開放率(GICと略記する。)を高めることが効果的であり、特に極低温下におけるGICが重要になる。そのため、コア成分のガラス転移温度が−40℃以下であることが必要であり、共役ジエン系モノマーより構成される架橋ゴムが最適である。コア成分のガラス転移温度はコアシェルポリマー化した後では測定することが困難である場合、コア成分だけで重合体を作製し、得られた重合体についてDSC等の熱分析機器によってガラス転移温度を予め測定しても良い。
かかる共役ジエン系モノマーとしては、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができ、用いられるコア成分としては、これらを単独でもしくは複数種用いて構成される架橋ゴムであることが好ましいが、得られる重合体の性質が良好であり、重合が容易であることからかかる共役ジエン系モノマーとしてブタジエンを用いること、すなわち、コア成分として架橋ポリブタジエンを用いることが特に好ましい。
コアシェルポリマーを構成するシェル成分は、前記したコア成分にグラフト重合されており、コア成分を構成するポリマーと化学結合していることが好ましい。かかるシェル成分を構成する成分としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物等から選ばれた1種または複数種から重合された重合体である。
また、該シェル成分には分散状態を安定化させるために、本発明の熱硬化性樹脂組成物と反応する官能基が導入されている必要がある。かかる官能基としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基が挙げられる。
本発明で使用されるコアシェルポリマーは平均粒子径が体積平均粒子径で1〜500nmであることが好ましく、3〜300nmであればさらに好ましい。なお、体積平均粒子径はナノトラック粒度分布測定装置(日機装(株)製、動的光散乱法)を用いて測定することができる。本発明で使用されるコアシェルポリマーの体積平均粒子径が1nm以下では製造することが困難であり実質的に使用することができず、体積平均粒子径が500nm以上では繊維強化複合材料の成形プロセスにおけるエポキシ樹脂組成物を注入、含浸させる工程において強化繊維で濾別され、繊維強化複合材料中において分散状態が不均一になる場合があるので好ましくない。
本発明で使用されるコアシェルポリマーの製造方法には特に制限はなく、周知の方法で製造されたものを使用できる。しかしながら、通常コアシェルポリマーは塊状で取り出されたものを粉砕して粉体として取り扱われており、粉体状コアシェルポリマーを再度エポキシ樹脂中に分散させることが多いが、この方法では、一次粒子の状態で安定に分散させることが難しい。よって、コアシェルポリマーの製造過程から一度も塊状で取り出すことなく、最終的にはエポキシ樹脂中に一次粒子で分散したマスターバッチの状態で取り扱うことができるものが好ましく、例えば、特開2004−315572号公報に記載の方法、すなわち、コアシェルポリマーを乳化重合、分散重合、懸濁重合に代表される水媒体中で重合する方法で重合を行い、コアシェルポリマーが分散した懸濁液を得て、得られた懸濁液に水と部分溶解性を示す有機溶媒、例えばアセトンやメチルエチルケトンなどのエーテル系溶媒を混合後、水溶性電解質、例えば塩化ナトリウムや塩化カリウムを接触させ、有機溶媒層と水層を相分離させ、水層を分離除去して得られたコアシェルポリマー分散有機溶媒に適宜エポキシ樹脂を混合した後、有機溶媒を蒸発除去する方法などが使用できる。エポキシ樹脂中に一次粒子で分散したコアシェルポリマー分散エポキシマスターバッチとしては、株式会社カネカ社から市販されている“カネエース(登録商標)”を好適に使用できる。
本発明の繊維強化複合材料に用いられる構成要素[D]である熱可塑性樹脂は、非晶性の熱可塑性樹脂であり、ガラス転移温度が150℃以上である必要があり、好ましくは160℃以上である。なお、非晶性熱可塑性樹脂は分子内に結晶構造を有さないため融点は示さず、ガラス転移温度を示す。
また、本発明の繊維強化複合材料に用いられる構成要素[D]である熱可塑性樹脂は、分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有している。なお、かかる構成要素[D]は、繊維強化複合材料を成形する前の加熱硬化させる過程において、分子構造の末端または側鎖に構成要素[B−1]または[B−2]と反応可能な官能基、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基などを有していることが好ましい。構成要素[D]が、成形前にかかる構造を備えていることにより、成形後の繊維強化複合材料中では、構成要素[B]の熱硬化性樹脂硬化物と結合しており、構成要素[B]と[D]の界面接着強度が向上するため、層間におけるモードII臨界エネルギー開放率(以下、GIICと略記する。)がより向上し、層間クラックの伝播抑制効果が高まることとなる。
かかる熱可塑性樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、グリルアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルスルホンなど、いわゆるエンジニアリングプラスチックスに属する樹脂が好ましく用いられ、特に水酸基末端ポリエーテルスルホン、グリルアミドは耐熱性、耐薬品性に優れるため好ましく用いることができる。
本発明の繊維強化複合材料に用いられる構成要素[D]である熱可塑性樹脂の形態は特に制限はなく、粒子、繊維、フィルム、多孔性膜、ニット、不織布、織物など使用できるが、特に粒子形態が繊維基材のドレープ性に優れるため好ましく用いることができる。
本発明の繊維強化複合材料は、その内部において少なくとも構成要素[A]、[B]および[C]から構成される複合層1と少なくとも構成要素[B]、[C]および[D]から構成される複合層2が交互に形成されていることが特徴である。ただし、各層は必ずしも均一に繊維強化複合材料中の全体に分布している必要はなく、部分的に不均一な部分や層が欠落している箇所があってもよい。
本発明の繊維強化複合材料の複合層1は、構成要素[D]を実質的に含まない領域があることが特徴である。より好ましくは、複合層1を構成する構成要素[A]である炭素繊維束の外周から20μm以上の内部領域に構成要素[D]が含まれていないことである。
本発明の構成要素[D]である熱可塑性樹脂は、外部からの衝撃に対して耐衝撃性を向上させるために用いる。耐衝撃性を向上させるためには繊維強化複合材料において、炭素繊維を含む層と層の間にある炭素繊維を含まないそう、本発明においては複合層2のモードII臨界エネルギー開放率(GIIC)を向上させることが重要であり、炭素繊維層内部のGIICは耐衝撃性の向上にはほとんど寄与しない。
熱可塑性樹脂はエポキシ樹脂に溶解すると著しく粘度が上昇することが知られている。特に前記した分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有する熱可塑性樹脂の場合、粘度増加は非常に大きいか、またはエポキシ樹脂に溶解しない。そのため、本発明の繊維強化複合材料を成形するにあたり、構成要素[D]を繊維基材の少なくとも片面上に予め配置し、RTM成形にて熱硬化性樹脂を注入、含浸させた後、熱硬化すれば、構成要素[D]が複合層2に重点的に配置され、耐衝撃性が向上される。
また、複合層2のみ構成要素[D]を配置することは、繊維強化複合材料全体を熱可塑性樹脂によって高靭性化させて耐衝撃性を向上させる場合に比べて、熱可塑性樹脂の使用量が少なくてすむ利点がある。
得られた繊維強化複合材料内の構成要素[D]である熱可塑性樹脂の分布は、繊維強化複合材料の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて反射電子像を解析する方法や飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)により繊維強化複合材料表面の元素をマッピングすることで解析する方法などで確認することができる。
本発明の繊維強化複合材料において、外部からの衝撃に対して耐衝撃性を有するには、複合層2の平均層厚みが10〜50μmであることを必要とし、好ましくは15〜30μmである。複合層2の平均層厚みが10μmに満たない場合は構成要素[D]である熱可塑性樹脂の塑性変形領域が十分確保されないため、層間におけるGIICが向上しないため衝撃後圧縮強度が発現せず、平均層厚みが50μmを超えると強化繊維を含む複合層の強化繊維の体積分率が高くなりすぎ応力集中の影響でかえって強度が低下することがある。ここで、平均層厚みとは研磨した繊維強化複合材料の断面を実体蛍光顕微鏡システム((株)キーエンス製)にて観察し、解析ソフトウェア上で計算して求める。具体的には研磨した繊維強化複合材料の断面にUV励起光を照射し、吸収フィルター(BFP:励起波長387/28nm、吸収波長430nm)を装着した実体蛍光顕微鏡システムにて蛍光モードにて観察すると、層間部分の樹脂成分が青色に観察される。解析ソフトウェアにて2値化を行った後、層間部分のみを抜き出して面積を計算する。得られた面積を観察範囲にある繊維強化複合材料中の複合層2の層数で割り返した値を平均層厚みとする。
本発明の繊維強化複合材料は熱硬化性樹脂のモードI臨界エネルギー開放率(GIC)を向上させ、耐疲労特性を向上させるため、構成要素[C]のコアシェルポリマー粒子を配合する。
疲労により発生するクラックは、外部からの衝撃とは異なり層間以外にも発生することが特徴である。しかしながら、弾性率および線膨張係数の差が大きい炭素繊維と熱硬化性樹脂が混在している複合層1がクラックの発生源となることが多い。また、複合層2は構成要素[D]の熱可塑性樹脂が重点配合されているため、GIICだけではなくGICも少なからず向上している。よって、構成要素[C]のコアシェルポリマー粒子によりGICを改善するのは複合層1を重点的に行えばよい。
本発明の繊維強化複合材料において複合層2は、前記したように構成要素[D]である熱可塑性樹脂が重点配合され、成形中でも構成要素[D]が拡散しない設計となっていることが望ましい。この場合、構成要素[C]であるコアシェルポリマー粒子を配合した熱硬化性樹脂を含浸させても、複合層2においては構成要素[D]の熱可塑性樹脂の分だけコアシェルポリマー粒子が少なくなる。すなわち、前記複合層2を構成する構成要素[B]中の構成要素[C]含有量は、前記複合層1中を構成する構成要素[B]中の構成要素[C]含有量より少ないことが好ましいと言える。なお、ここで説明される[C]含有量とは、コアシェルポリマー粒子の個数を意味する。
得られた繊維強化複合材料内の構成要素[C]であるコアシェルポリマー粒子の分布は、繊維強化複合材料の表面をオスミウム染色によりコアシェルポリマー粒子を染色して後、集束イオンビーム(FIB)装置により薄膜化し、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察して単位面積当たりのコアシェルポリマー粒子の個数を複合層1および2で比較することによって確認できる。
繊維強化複合材料の製造方法としては、例えばハンドレイアップ法、ホットメルト含浸プリプレグ法、ウェット含浸プリプレグ法、レジン・トランスファー・モールディング(RTM)法など、様々な方法を使用できるが、なかでも成形コスト低減のポテンシャルが高く、比較的高品位な繊維強化複合材料を得ることができるRTM法を本発明では好ましく用いることができる。
本発明の繊維強化複合材料をRTM法にて製造する場合は、構成要素[A]を含むシート状物の少なくとも片面に、構成要素[D]を含む繊維状、シート状、粒子状から選ばれる形態を成した組成物を付与した繊維基材を型内に配置し、構成要素[E]を注入して含浸させた後、加熱硬化させることを特徴とする。
[A]フィラメント数が6,000〜70,000本である炭素繊維束、
[E]少なくとも以下の構成要素[B−1]、[B−2]および[C]を含み、70℃の温度において、測定開始から5分以内の粘度が300mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物、
[B−1]エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンズオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化可能な樹脂、
[B−2]構成要素[B−1]を硬化させうる成分、
[C]コア成分のガラス転移温度が−40℃以下であり、シェル成分に構成要素[B]の未硬化物と反応する官能基を有し、且つ、体積平均粒子径が1〜500nmであるコアシェルポリマー粒子、
[D]分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有し、且つ、ガラス転移温度が150℃以上である非晶性熱可塑性樹脂。
RTM法の場合、構成要素[A]である炭素繊維単独または複数種、さらには必要に応じ他の化学繊維などと組み合わせた繊維基材を積層後、構成要素[E]を注入含浸するため、構成要素[D]である熱可塑性樹脂は未含浸状態の繊維基材の少なくとも片面に予め付着させておく必要がある。
繊維基材上に構成要素[D]である熱可塑性樹脂を付着、固定する方法としては、熱可塑性樹脂を有機溶媒に溶解させた溶液を、繊維基材に噴霧した後、乾燥して有機溶媒を除去する方法がある。
しかしながら、この方法では多量の有機溶媒を使用するため作業環境が悪くなる。そのため、有機溶媒の回収装置などが別途必要になり設備コストが高くなる。
繊維基材上に熱可塑性樹脂を適宜加工した粒子、繊維、フィルム、多孔性膜、ニット、織物など配置し、加熱により熱可塑性樹脂を融解させ固定する方法もあるが、前記したように本発明に用いる構成要素[D]である熱可塑性樹脂はガラス転移温度が150℃以上のため、繊維基材に固定可能な流動性を示すまで融解させるためには200℃以上の温度が必要になる。そのような高温下で構成要素[A]を構成している炭素繊維を処理すると炭素繊維のサイジング剤が熱分解し、接着性が低下することがあるため好ましくない。
よって、本発明の繊維強化複合材料をRTM法にて製造する場合、構成要素[D]である熱可塑性樹脂は可塑剤を配合して適切なガラス転移温度に調整し、スペーサー効果のあるバインダー組成物(タッキファイヤーと呼ばれることもある。)とすることが有効である。ガラス転移温度は、具体的には40〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃である。ガラス転移温度が40℃より低いと、成形時にすぐに軟化するため繊維強化複合材料の層間厚みを適切な安易に保つことができず、100℃より高いと繊維基材に融着させる際に高温が必要になるため好ましくない。
また、バインダー組成物とする場合、構成要素[D]である熱可塑性樹脂の配合量はバインダー組成物100重量部中に50〜95重量部が好ましく、より好ましくは55〜85重量部である。構成要素[D]である熱可塑性樹脂の配合量が50重量部より少ない場合は得られる繊維強化複合材料中の複合層2において適切なGIICを得るためには多量のバインダー組成物が必要になり、複合層2の平均層厚みが厚くなりすぎてかえって強度が低下する場合がある。また、95重量部より多い場合は得られるバインダー組成物のガラス転移温度が高くなりすげることがある。
ここで可塑剤成分は、構成要素[B−1]あるいは[B−2]と反応しうる化合物を選ぶことが好ましい。かかる可塑剤成分としては、特にエポキシ樹脂が好ましい。可塑剤成分として用いるエポキシ樹脂は特に限定されないが、具体例として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N−グリシジルフタルイミド、5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンイソシアネートの付加により得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂およびフェノールアラルキル型エポキシなどを挙げることができる。
可塑剤成分としてエポキシ樹脂以外では、ポリフェノール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、ポリアクリレート、スルホンアミドなどが好ましく用いられる。
例えば、ポリフェノールとしては、4−tert−ブチルカテコール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、リモネン1分子とフェノール2分子の縮合に得られるビスフェノールなどを例示することができる。
ポリアミンとしては、ジエチルトルエンジアミンを例示することができる。
ポリカルボン酸としては、5−tert−ブチルイソフタル酸を例示することができる。
ポリカルボン酸無水物としては、メチルフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物を例示することができる。
ポリアクリレートとしては、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを例示することができる。
スルホンアミドとしては、ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミドを例示することができる。
このような反応性可塑剤は、複数種組み合わせて用いることができるが、その場合は同系の化合物、たとえばエポキシ樹脂同士、あるいは互いに反応しない組み合わせ、あるいはエポキシ樹脂とポリアクリレートを選ぶ必要がある。エポキシ樹脂とポリアミンのように容易に反応する組み合わせは長期保管した場合に反応が進行してバインダーのガラス転移温度が上昇してしまいバインダーとして使用できなくなる恐れがあるので好ましくない。
本発明の構成要素[D]である熱可塑性樹脂を用いたバインダー組成物の調製は、熱的に安定なため特に大きな制限がなく、様々な公知の方法を使用できる。最も経済的な方法は、各成分を150〜220℃程度の比較的高温で、押出機、ニーダーなどを用いて混練する方法である。得られたバインダー組成物は、粉砕して粒子にしたり、口金から溶融押出することにより繊維やフィルムの形態に加工したりすることもできる。
得られたバインダー組成物は繊維基材上に配置され、脱落を防止するため加熱融着させる。この時の温度は60〜200℃が好ましく、より好ましくは80〜180℃。加熱温度が60℃より低いとバインダー組成物が繊維基材に充分に融着されず、200℃より高いと炭素繊維のサイジング剤が熱分解する可能性があるので好ましくない。
本発明の繊維強化複合材料をRTM法にて製造する方法としては、前記したバインダー組成物を融着させた構成要素[A]の炭素繊維単独または複数種、さらには必要に応じ他の化学繊維などと組み合わせた繊維基材、特に好ましいのは構成要素[A]からなる経糸とこれに平行に配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸と、これらと直交するように配列されたガラス繊維または化学繊維からなる緯糸からなり、該補助経糸と該緯糸が互いに交差することにより、炭素繊維束が一体に保持されて織物が形成されているノンクリンプ構造の織物を形成してなる繊維基材を所定枚数積層してなるプリフォームに、構成要素[E]を好適には40〜90℃の範囲での任意温度において注入する。ここで、ノンクリンプ構造の織物を構成しているガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸の繊度は前記したように炭素繊維束の繊度の20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。
また、バインダー組成物の融着量は目付で1〜50g/mであることが好ましく、より好ましくは5〜40g/mである。融着量が1g/mより少ないと得られる繊維強化複合材料中の複合層2に必要なGIICが得られず、50g/mより多い場合は複合層2の平均層厚みが厚くなりすぎてかえって強度が低下する場合がある。
プリフォームを作製する具体的方法は、前記したバインダー組成物を融着させた繊維基材を所定の形状に切り出し、型の上で積層し、適切な熱と圧力を加えてプリフォームを作製するために用いることができる。加圧の手段はプレスを用いることもできるし、バギングして内部を−90kPa以下まで真空ポンプで吸引して大気圧により加圧する方法を用いることもできる。プリフォームを作製するときの加熱の温度は、60〜150℃であることが好ましい。加熱温度が60℃以下の場合はプリフォームを形成する各層の固定が充分されていない場合があり、150℃以上の場合はバインダー組成物がつぶれすぎて熱硬化性樹脂の流路を塞ぎ、得られる繊維強化複合材料中に未含浸部分が発生する場合がある。
RTM法に用いられる型は、剛体からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛体のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いることも可能である。後者の場合、繊維基材は剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置することができる。
剛体型の材料としては、スチールやアルミニウム等の金属、繊維強化プラスチック(FRP)、木材および石膏など既存の各種のものが用いられる。可撓性のフィルムの材料には、ナイロン、フッ素樹脂およびシリコーン樹脂等が用いられる。
剛体のクローズドモールドを用いる場合は、加圧して型締めし、前記混合物を加圧して注入することが通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引することも可能である。吸引を行い、かつ、特別な加圧手段を用いることなく、大気圧のみで前記混合物を注入することも可能である。この場合、真空度は−90kPa以下まで真空にすることが好ましい。真空度が−90kPa以上だと得られる繊維強化複合材料中にボイドが発生し、機械物性が低下する場合がある。
剛体のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、通常、吸引と大気圧による注入を用いる。この場合、真空度は−90kPa以下まで真空にすることが好ましい。真空度が−90kPa以上だと得られる繊維強化複合材料中にボイドが発生し、機械物性が低下する場合がある。大気圧による注入で、良好な含浸を実現するためには、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。さらに、繊維基材あるいはプリフォームの設置に先立って、剛体型の表面にゲルコートを塗布することも好ましく行われる。
繊維基材あるいはプリフォームの設置が完了した後、型締めあるいはバギングが行われ、続いて構成要素[E]の注入が行われる。
本発明において、構成要素[C]であるコアシェルポリマー粒子は、構成要素[B−1]に予め配合して使用される。また、構成要素[B−2]に配合されていても良い。構成要素[B−1]としてエポキシ樹脂組成物を用いる場合、コアシェルポリマー粒子の配合量は構成要素[B−1]中の全エポキシ樹脂100重量部中に0.5〜10重量部配合されることが好ましく、より好ましくは1〜8重量部配合することである。配合量が0.5重量部以上であれば、成形後の繊維強化複合材料に必要とされるGICが得られやすく、さらに、配合量が10重量部以下であれば、樹脂硬化物の弾性率の低下を抑え、得られる繊維強化複合材料の圧縮特性の低下を最小限にすることができる。
エポキシ樹脂組成物には一般に、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂を硬化させうる成分である硬化剤を予め配合している一液型のものと、エポキシ樹脂と硬化剤を別々に保管し、使用直前に両者を混合して使用する二液型のものが存在する。
一液型のエポキシ樹脂組成物の場合、保管中にも硬化反応が進行するため硬化剤成分は反応性の低く、固形状のものを選択する場合が多い。しかしながら、室温中では少しずつ硬化反応が進行するため冷凍保管が必要になるため、管理費用が増加する。また、固形状の硬化剤を使用するため、強化繊維に一液型エポキシ樹脂組成物を含浸させるためにはプレスロールを使用して高い圧力で押し込む必要があり製造コストも増加する。
一方、二液型のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂から構成される主剤と硬化剤を別々に保管するため、保管条件に特に制限なく長期保管も可能である。また、主剤および硬化剤とも液状のものとすることで、該主剤と該硬化剤を混合した混合物も低粘度な液状とすることができ、RTM法などの簡便な方法強化繊維に含浸、成形まで行うことができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は一液型および二液型に特に限定されるものではないが、前述した利点から二液型が推奨される。
本発明において構成要素[E]を二液型とする場合、構成要素[B−1]および[C]を混合したものを主剤とし、構成要素[B−2]を硬化剤とすることが好ましい。
本発明において、構成要素[E]を二液型とする場合、主剤の粘度は70℃において300mPa・s以下であり、好ましい粘度は200mPa・s以下である。なお、粘度の測定はJIS Z8803(1991)における「円すい−板形回転粘度計による粘度測定方法」に従い、標準コーンローター(1°34’×R24)を装備したE型粘度計((株)トキメック製、TVE−30H)を使用して、回転速度50回転/分で測定する。70℃における粘度が300mPa・sより高い場合は、容器からの取り出し、計量、硬化剤との混合、あるいは脱気処理などの作業性が悪くなることがある。該主剤の70℃における粘度を300mPa・s以下にするためには、分子量が500以上のエポキシ樹脂を、構成要素[B−1]中の全エポキシ樹脂100重量部中に好ましくは30重量部以上配合せず、構成要素[C]のような粒子状添加剤を15重量部以上配合しないことである。主剤の70℃における粘度の下限は特に制限なく、粘度が低いほどRTM法におけるエポキシ樹脂組成物の注入含浸が容易になり好ましい。
また、本発明の構成要素[E]を二液型とする場合、硬化剤の粘度は70℃において300mPa・s以下であり、好ましい粘度は200mPa・s以下である。なお、粘度の測定は前述した主剤粘度の測定方法と同様である。硬化剤の70℃における粘度が300mPa・sより高い場合は、容器からの取り出し、計量、主剤との混合、あるいは脱気処理などの作業性が悪くなることがある。70℃における粘度の下限は特に制限なく、粘度が低いほどRTM法におけるエポキシ樹脂組成物の注入含浸が容易になり好ましい。該硬化剤の70℃における粘度を300mPa・s以下にするためには、前述したように本発明に使用する構成要素[B−2]において、ジアミノジフェニルスルホンのような固形成分の配合量を全芳香族ポリアミン100重量部中に40重量部以上配合せず、構成要素[C]のような粒子状添加剤を15重量部以上配合しないことである。
さらに、本発明の構成要素[E]測定開始から5分以内の粘度が70℃において300mPa・s以下であることが好ましく、より好ましい粘度は200mPa・s以下である。なお、粘度の測定は前述した主剤および硬化剤粘度の測定方法と同様である。測定開始から5分以内の粘度が上記の範囲より高いと構成要素[E]の含浸性が不十分になることがある。70℃における粘度の下限は特に制限なく、粘度が低いほどRTM法において構成要素[E]の注入含浸が容易になる。
本発明の構成要素[E]を二液型とする場合、注入作業の2時間前、好ましくは1時間前に主剤と硬化剤を混合することが好ましい。混合後は必要により、減圧機器により真空度が−90kPa以下になるまで真空引きを行い、主剤と硬化剤を混合する工程で混ざった気泡や予め成分に溶存していた酸素や揮発性不純物を取り除く工程が合っても良い。
注入温度において、構成要素[E]の反応性が高いと、前記した気泡や溶存する不純物を取り除く工程や注入工程で粘度が増加してしまい成形が困難になる場合がある。そのため、構成要素[E]の粘度が70℃の温度において1000mPa・sに達する時間が60分以上であることが好ましく、より好ましくは90分以上である。70℃の温度で1000mPa・sに達する時間の上限に制限はなく、時間が長いほど繊維強化複合材料の成形性に優れる。本発明の反応性の制御は、構成要素[B−2]で使用する成分を適宜選択するか、構成要素[B−2]に配合される硬化促進剤の配合量の規定で行う。
構成要素[E]の注入、含浸が行われた後に50〜200℃の範囲の任意温度で0.5〜10時間の範囲の任意時間で加熱硬化が行われる。加熱条件は1段階でも良く、複数の加熱条件を組み合わせた多段階条件でも良い。硬化温度が高い方が繊維強化複合材料の耐熱性が高くなるが、成形において型内での加熱温度が高いと、設備・熱源等のコストが高くなり、また型の占有時間が長くなるため経済性が悪くなる。また、一気に高温まで加熱して硬化させると、構成要素[D]が速く軟化、または構成要素[E]に溶解し、複合層1を構成する構成要素[A]の中に浸透し、複合層1中の構成要素[D]の含有量が低下して、得られた繊維強化複合材料が外部からの衝撃に弱くなる可能性もある。さらには、構成要素[D]が構成要素[E]に溶解し、複合層1を構成する構成要素[A]の中に浸透すると、構成要素[C]が繊維強化複合材料中において分布が均一化され、複合層1に必要な含有量が保てなくなり、疲労特性も低下する可能性もある。そのため、初期硬化は50〜140℃の範囲の任意温度、特に130℃付近の温度で行った後、成形物を型から脱型し、オーブンなどの装置を用いて比較的高温で最終硬化を行うことが好ましい。
航空機用の構造部材を想定した場合は、最終硬化条件は、例えば、160〜180℃の範囲の任意温度で1〜10時間硬化の範囲で硬化することにより所望する樹脂硬化物を得ることができる。
なお、構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]および[B−2]は、前記した硬化条件で硬化することで、本発明の繊維強化複合材料の構成要素である構成要素[B]へと変化する。
本発明の繊維強化複合材料は、強化繊維の体積含有率が50〜65%であることが好ましく、体積含有率はより好ましくは53〜60%である。体積含有率が上記範囲より少ないと繊維強化複合材料の重量が重くなり、また、応力集中の影響で強度が低下する傾向がある。また、強化繊維の体積含有率が上記範囲より多いと繊維強化複合材料内部に未含浸部分やボイドのような欠陥部分が発生することが非常に多く、物性低下を起こしてしまうことがある。
本発明の繊維強化複合材料は外部からの衝撃に対する耐衝撃性に優れており、特に衝撃後圧縮強度(CAI)が高い。
本発明の繊維強化複合材料を航空機用の構造部材として使用するためには、CAIが200MPa以上であることが好ましく、より好ましくは230MPa以上である。なお、繊維強化複合材料のCAI測定はJIS K 7089(1996)に従い行う。CAIが200MPaより低いと、構造部材として使用するためには積層厚みが厚くなり、そのため重量が増加する。重量が増加すると航空機の燃費が悪くなるため好ましくない。
また、本発明の繊維強化複合材料は、疲労に対する耐性が高いため、一定疲労付与後有孔板圧縮強度に優れている。具体的には 交差積層されたプリフォームから得られる厚さ1〜3mmの該繊維強化複合材料について、ASTM D6484に準拠し、23℃条件下において測定された、有孔板試験片の長手方向に最大荷重150MPa、最小荷重15MPa、応力比R=10、周波数5Hzの正弦波によって、繰り返し定荷重圧縮負荷を試験片に10回付与した後の有孔板圧縮強度が210MPa以上であることが好ましく、より好ましくは240MPa以上である。一定疲労付与後有孔板圧縮強度が210MPaより低いと、構造部材として使用するためには積層厚みが厚くなり、そのため重量が増加するため好ましくない。一定疲労付与後有孔板圧縮強度に上限は特に設定されないが、300MPa以上である場合、例えば強化繊維の体積含有率制御により達成しようとすると、前記炭素繊維複合材料の強化繊維の体積含有率を少なくとも65%以上にする必要があり、そのため繊維強化複合材料内部に未含浸部分やボイドといった欠陥部分が非常に多く発生し物性低下を招いてしまうことがある。
本発明の繊維強化複合材料は炭素繊維の体積含有率が高いため軽く、外部からの衝撃および環境温度の変化や繰り返し負荷による疲労に対し優れた耐性を有しているため、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席および内装材などの航空機部材、モーターケースおよび主翼などの宇宙機部材、構体およびアンテナなどの人工衛星部材、外板、シャシー、空力部材および座席などの自動車部材、構体および座席などの鉄道車両部材、船体および座席などの船舶部材など多くの構造材料に好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り重量部を意味する。
<樹脂粘度測定>
実施例で得られた熱硬化性樹脂組成物において、該熱硬化性樹脂組成物を構成する主剤、硬化剤およびそれらを混合した混合物の粘度は、JIS Z8803(1991)における「円すい−板形回転粘度計による粘度測定方法」に従い、標準コーンローター(1°34’×R24)を装備したE型粘度計((株)トキメック製、TVE−30H)を使用して、回転速度50回転/分にて所定温度の粘度を測定した。なお、主剤と硬化剤を混合してから5分以内に測定した測定値を初期粘度とした。
<樹脂硬化物の破壊靱性(GIC)の測定方法>
実施例で得られた熱硬化性樹脂組成物の主剤と硬化剤を混合した混合物を所定の型枠内に注入し、熱風オーブン中で室温から130℃の温度まで1分間に1.5℃ずつ昇温した後、130℃の温度下で2時間保持し、次いで180℃の温度まで1分間に1.5℃ずつ昇温した後、180℃の温度下で2時間保持して6mm厚の樹脂硬化板を作製した。得られた樹脂硬化板を、ASTM D5045−99に記載の試験片形状に加工を行った後、ASTM D5045−99に従ってGIC試験を行った。
<樹脂硬化物のガラス転移温度の測定方法>
得られた樹脂硬化板の小片(5〜10mg)をJIS K7121−1987に従い、DSC法で中間点ガラス転移温度を求めた。測定装置にはPyris1 DSC(Perkin Elmer社製)を用いて窒素ガス雰囲気下において昇温速度40℃/分で測定した。
<繊維強化複合材料の層間厚み測定方法>
研磨した繊維強化複合材料の断面にUV励起光を照射し、吸収フィルター(BFP:励起波長387/28nm、吸収波長430nm)を装着した実体蛍光顕微鏡システムVB−6000/6010((株)キーエンス製)にて蛍光モードにて観察すると、層間部分の樹脂成分が青色に観察される。解析ソフトウェアVH Analyzer((株)キーエンス製)にて2値化を行った後、層間部分のみを抜き出して面積を計算する。得られた面積を観察範囲にある繊維強化複合材料中の複合層2の層数で割り返した値を平均層厚みとした。
<繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定>
得られた疑似等方、24層積層の繊維強化複合材料から6×6×6mmの小片を切り出し、断面部分を研磨後、ドラフト内にて25℃の温度下で24時間オスミウム染色を行った。
得られた小片の断面部分を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)JSM−6340F(日本電子(株)製)を用い、加速度電圧20.0kV、倍率を1000倍にて反射電子組成像の観察を、複合層1および2で各3箇所について行った。
得られたFE−SEMの反射電子組成像には明部と暗部が層ではっきり分かれており、明暗部について、FE−SEMで用いた小片の断面部分をミクロトームにて再断面出しを行った後、飛行時間型二次イオン質量分析装置TOF.SIMS5(ION−TOF社製)を用い、1次イオンBi ++、1次イオンエネルギー25kV、パルス幅100ns、2次イオン極性;負にて測定を行ったところ、明部において熱可塑性樹脂に由来する負2次イオンを観測した。よって、FE−SEMの反射電子組成像の明部が熱可塑性樹脂を含む部分とし、暗部が熱可塑性樹脂を含まない部分とした。
<繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定>
得られた疑似等方、24層積層の繊維強化複合材料から6×6×6mmの小片を切り出し、断面部分を研磨後、ドラフト内にて25℃の温度下で24時間オスミウム染色を行った。
オスミウム染色した小片を集束イオンビーム加工観察装置(FIB)Strata400S(FEI Company製)にて断面部分を薄片加工し、透過電子顕微鏡(TEM)H−9000UHRII((株)日立ハイテクノロジーズ製)にて観察を行った。
観察範囲は3×3μmとし、複合層1および2で各3箇所の観察を行い、コアシェルポリマー粒子の個数を比較した。
<繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)の測定>
得られた疑似等方、24層積層の繊維強化複合材料から、試験片の長手方向を炭素繊維配向角0度として縦150mm、横100mmの矩形試験片を切り出し、その矩形試験片の中心に、JIS K 7089(1996)に従って試験片の厚さ1mmあたり20Jの落錘衝撃を与えた後、JIS K 7089(1996)に従い残存圧縮強度(CAI)を測定した。サンプル数は5とした。
<繊維強化複合材料の一定疲労付与後有孔板圧縮試験方法>
得られた疑似等方、16層積層の繊維強化複合材料から、試験片の長手方向を炭素繊維配向角0度として縦305mm、横38.1mmの矩形試験片を切り出し、試験片にASTM D6484に従い、直径6.35mmの孔をドリルとリーマーを用いて有孔加工した。
得られた有孔板試験片に、MTS810疲労試験器(MTS社製)によって、試験片の長手方向に最大荷重150MPa、最小荷重15MPa、応力比R=10、周波数5Hzの正弦波によって、繰り返し定荷重圧縮負荷を試験片に10回付与した。
得られた一定疲労付与有孔板試験片に、ASTM D6484に従い、試験速度1.27mm/minで有孔板圧縮試験を実施した。この試験によって得られた強度を、一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度と略記する。)と呼ぶこととする。
<実施例1>
「繊維基材の製造」
構成要素[A]として、炭素繊維束“トレカ(登録商標)”T800S−24K−10E(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:24,000本、繊度:1,033tex、引張弾性率:294GPa)を経糸として1.8本/cmの密度で引き揃えて一方向性シート状強化繊維束群を形成した。緯糸としてガラス繊維E−glassヤーンECE−225−1/0−1.0Z(日東紡(株)製、フィラメント数:200本、繊度:22.5tex)を用い、前記一方向性シート状強化繊維束群に直交する方向に3本/cmの密度で配列し、織機を用いて該経糸と該緯糸が互いに交差するように織り込み、実質的に炭素繊維が一方向に配列された平織組織の繊維基材1を作製した。なお、経糸繊度に対する緯糸の繊度割合は2.2%である。
「バインダー付き繊維基材の製造」
構成要素[D]として、水酸基末端ポリエーテルスルホン“スミカエクセル(登録商標)”5003P(住友化学工業(株)製)60部と、可塑剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂“EPON(登録商標)”825(ジャパンエポキシレジン(株)製)4部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂“jER(登録商標)”806(ジャパンエポキシレジン(株)製)4部、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール“jER(登録商標)”630(ジャパンエポキシレジン(株)製)14部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂NC−3000(日本化薬(株)製)10部およびヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルAK−601(日本化薬(株)製)8部を二軸押出機にて210℃で溶融混練し、得られた組成物を冷凍粉砕後に分級して、体積平均粒子径92μm、ガラス転移温度45℃のバインダー粒子1を得た。なお、体積平均粒子径はJIS K5600−9−3(2006)に従い、レーザー回析・散乱式粒度分布測定器(LMS−24、(株)セイシン企業製)を用いて測定し、ガラス転移温度は前記した樹脂硬化物のガラス転移温度の測定方法と同様に測定した。
得られたバインダー粒子1を前記の繊維基材1の片側表面にエンボスロールとドクターブレードにて計量しながら自然落下させ、振動ネットを介して均一分散させながら、バインダー目付が27g/mとなるように散布した。その後、200℃、0.3m/分の条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、バインダーを繊維基材1の片側全面に融着させてバインダー付き繊維基材1を作製した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール“jER(登録商標)”630(ジャパンエポキシレジン(株)製)26部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂“EPON(登録商標)”825(ジャパンエポキシレジン(株)製)10部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂“jER(登録商標)”806(ジャパンエポキシレジン(株)製)10部、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルAK−601(日本化薬(株)製)20部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂NC−3000(日本化薬(株)製)25部および“カネエース(登録商標)”MX416(“アラルダイト”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン):75部/コアシェルポリマー(体積平均粒子径:100nm、コア成分:架橋ポリブタジエン(ガラス転移温度:−70℃)、シェル:PMMA/グリシジルメタクリレート/スチレン共重合物):25部のマスターバッチ)12部を70℃の温度下で混合し主剤1を得た。得られた主剤1を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、162mPa・sであった。
別に、構成要素[B−2]として、ジエチルトルエンジアミン“jERキュア(登録商標)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製)19.8部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン3,3’−DAS(小西化学工業(株)製)7.9部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン“セイカキュア(登録商標)”S(セイカ(株)製)7.9部を130℃の温度下で攪拌しながら混合し、固形物が存在しない状態になったら70℃の温度まで冷却してt−ブチルカテコールTBC(大日本インキ化学工業(株)製)1.0部を添加して、さらに70℃の温度下で攪拌しながら固形物が存在しない状態まで混合して硬化剤1を得た。得られた硬化剤1を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、70mPa・sであった。
得られた主剤1が103部に対して硬化剤1が36.6部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、145mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果190℃、樹脂破壊靭性GICは107J/mであり、RTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していた。
「プリフォームの作製」
得られたバインダー付き繊維基材1を所定の大きさにカットした後、炭素繊維の長手方向を0度とし、[+45°/0°/−45°/90°]を基本として3回繰り返したものを90度層が重なるよう対称に積層し、合計24層の繊維基材1を得た。かかる積層した繊維基材1を成形型の面上に配置し、バッグ材(ポリアミドフィルム)とシーラントにて密閉したキャビティを真空にして大気圧を加えた後、成形型を熱風乾燥機に移し、室温から80℃の温度まで、1分間に3℃ずつ昇温して80℃の温度下で1時間加熱した。その後、キャビティの真空状態を保ちながら大気中にて60℃以下に冷却し、大気解放してプリフォームを得た。また、同様に炭素繊維の長手方向を0度とし、[+45°/0°/−45°/90°]を基本として2回繰り返したものを90度層が重なるよう対称に積層し、合計16層の繊維基材1についてもプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラにならず、運搬の際にも形態安定性が高く、取り扱い性に優れたものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを成形型の面上に配置し、その上にピールプライとして離型処理を施したポリエステル布帛、樹脂拡散媒体としてアルミ製金網を順に配置し、それらをバッグ材とシーラントにて樹脂注入口と減圧吸引口を設けて密閉してキャビティを形成した。そして、減圧吸引口から真空ポンプによってキャビティ内を吸引して、真空度を−90kPa以下になるよう調整した後、成形型およびプリフォームを70℃に温度調節した。温度調整には熱風乾燥機を使用した。
別途、前記で得られた熱硬化性樹脂組成物の主剤と硬化剤を所定の割合で混合し、70℃に温度下で30分間予備加熱を行い、真空脱気処理を行った。
予備加熱、脱気処理を行った熱硬化性樹脂組成物を成形型の樹脂注入口にセットし、大気圧によって真空キャビティ内に熱硬化性樹脂組成物を注入した。熱硬化性樹脂組成物が減圧吸引口に到達したら樹脂注入口を閉じ、減圧吸引口から吸引を継続したまま1時間保持した後、減圧吸引口を閉じた。
次いで、1分間に1.5℃ずつ130℃の温度まで昇温して130℃の温度下で2時間予備硬化する。予備硬化品を型から取り出し、ピールプライ等の各副資材を除去した後に熱風乾燥機中で1分間に1.5℃ずつ、180℃の温度まで昇温して180℃の温度下で2時間硬化して繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層および16層共に58%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが21μm、16層のものが24μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を前記したようにFE−SEMにて熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から5μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層1に含まれるコアシェルポリマー粒子の数が複合層2より多かった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、CAIを測定した結果、228MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、220MPaであり、構造部材に適していた。
<実施例2>
「繊維基材の製造」
構成要素[A]として、炭素繊維束“トレカ(登録商標)”T800S−24K−10E(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:24,000本、繊度:1,033tex、引張弾性率:294GPa)を経糸として1.8本/cmの密度で引き揃えて一方向性シート状強化繊維束群を形成した。緯糸としてポリアミド繊維束(ポリアミド66、東レ(株)製:フィラメント数:7本、繊度:1.7tex)を用い、前記一方向性シート状強化繊維束群に直交する方向に3本/cmの密度で配列し、織機を用いて該経糸と該緯糸が互いに交差するように織り込み、実質的に炭素繊維が一方向に配列された平織組織の繊維基材2を作製した。なお、経糸繊度に対する緯糸の繊度割合は0.2%である。
「バインダー付き繊維基材の製造」
構成要素[D]として、水酸基末端ポリエーテルスルホン“スミカエクセル(登録商標)”5003P(住友化学工業(株)製)60部と、可塑剤としてビスフェノールF型エポキシ樹脂“jER(登録商標)”806(ジャパンエポキシレジン(株)製)23.5部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂NC−3000(日本化薬(株)製)12.5部およびトリグリシジルイソシアヌレート“TEPIC(登録商標)”−P(日産化学化学工業)4部を二軸押出機にて210℃で溶融混練し、得られた組成物を冷凍粉砕後に分級して、体積平均粒子径105μm、ガラス転移温度72℃のバインダー粒子2を得た。なお、体積平均粒子径およびガラス転移温度の測定は実施例1と同様にして測定した。
得られたバインダー粒子2を実施例1と同様にして繊維基材2の片側全面に融着させてバインダー目付が27g/mのバインダー付き繊維基材2を作製した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスド・ケミカルス社製)25部、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール“jER(登録商標)”630(ジャパンエポキシレジン(株)製)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂“EPON(登録商標)”825(ジャパンエポキシレジン(株)製)35部、ジグリシジルアニリンGAN(日本化薬(株)製)15部および“カネエース(登録商標)”MX416(“アラルダイト”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン):75部/コアシェルポリマー(体積平均粒子径:100nm、コア成分:架橋ポリブタジエン(ガラス転移温度:−70℃)、シェル:PMMA/グリシジルメタクリレート/スチレン共重合物):25部のマスターバッチ)20部を70℃の温度下で混合し主剤2を得た。得られた主剤2を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、143mPa・sであった。
別に、構成要素[B−2]として、ジエチルトルエンジアミン“jERキュア(登録商標)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製)26.6部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン3,3’−DAS(小西化学工業(株)製)7.6部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン“セイカキュア(登録商標)”S(セイカ(株)製)3.8部を130℃の温度下で攪拌しながら混合し、固形物が存在しない状態になったら70℃の温度まで冷却してt−ブチルカテコールTBC(大日本インキ化学工業(株)製)1.0部を添加して、さらに70℃の温度下で攪拌しながら固形物が存在しない状態まで混合して硬化剤2を得た。得られた硬化剤2を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、72mPa・sであった。
得られた主剤2が105部に対して硬化剤2が36.6部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、120mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果207℃、樹脂破壊靭性GICは122J/mであり、RTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していた。
「プリフォームの作製」
得られたバインダー付き繊維基材2を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラにならず、運搬の際にも形態安定性が高く、取り扱い性に優れたものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが57%、16層のものが56%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが18μm、16層のものが20μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から10μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層1に含まれるコアシェルポリマー粒子の数が複合層2より多かった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、241MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、215MPaであり、構造部材に適していた。
<実施例3>
「繊維基材の製造」
構成要素[A]として、炭素繊維束“トレカ(登録商標)”T800S−24k−10E(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:24,000本、繊度:1,033tex、引張弾性率:294GPa)を経糸として1.8本/cmの密度で引き揃え、これに平行、かつ交互に配列された補助経糸としてガラス繊維束ECE225 1/0 1Z(日東紡(株)製、フィラメント数:200本、繊度:22.5tex)を1.8本/cmの密度で引き揃えて一方向性シート状強化繊維束群を形成した。緯糸としてガラス繊維束ECE225 1/0 1Z(日東紡(株)製、フィラメント数:200本、繊度:22.5tex)ポリアミド繊維束を用い、前記一方向性シート状強化繊維束群に直交する方向に3本/cmの密度で配列し、織機を用いて該補助経糸と該緯糸が互いに交差するように織り込み、実質的に炭素繊維が一方向に配列されクリンプがない、一方向性ノンクリンプ織物を作製し、繊維基材3とした。なお、経糸繊度に対する緯糸および補助経糸の繊度割合はそれぞれ2.2%である。
「バインダー付き繊維基材の製造」
実施例2で得られたバインダー粒子2を使用し、実施例1と同様にして繊維基材3の片側全面に融着させてバインダー目付が27g/mのバインダー付き繊維基材3を作製した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
実施例2で得られた主剤2および硬化剤2を使用した。混合比は主剤2が105部に対して硬化剤2が39部となるように混合した。
「プリフォームの作製」
得られたバインダー付き繊維基材3を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラにならず、運搬の際にも形態安定性が高く、取り扱い性に優れたものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが58%、16層のものが56%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが22μm、16層のものが21μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から10μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層1に含まれるコアシェルポリマー粒子の数が複合層2より多かった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、242MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、217MPaであり、構造部材に適していた。
<実施例4>
「繊維基材の製造」
実施例3で得られた繊維基材3を使用した。
「バインダー付き繊維基材の製造」
実施例3で得られたバインダー付き繊維基材3を使用した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスド・ケミカルス社製)51部、ジグリシジルアニリンGAN(日本化薬(株)製)40部および“カネエース(登録商標)”MX416(“アラルダイト”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン):75部/コアシェルポリマー(体積平均粒子径:100nm、コア成分:架橋ポリブタジエン(ガラス転移温度:−70℃)、シェル:PMMA/グリシジルメタクリレート/スチレン共重合物):25部のマスターバッチ)12部を70℃の温度下で混合し主剤3を得た。得られた主剤3を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、105mPa・sであった。
別に、構成要素[B−2]として、ジエチルトルエンジアミン“jERキュア(登録商標)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製)29.3部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン3,3’−DAS(小西化学工業(株)製)8.4部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン“セイカキュア(登録商標)”S(セイカ(株)製)4.2部を130℃の温度下で攪拌しながら混合し、固形物が存在しない状態になったら70℃の温度まで冷却してt−ブチルカテコールTBC(大日本インキ化学工業(株)製)1.0部を添加して、さらに70℃の温度下で攪拌しながら固形物が存在しない状態まで混合して硬化剤3を得た。得られた硬化剤3を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、70mPa・sであった。
得られた主剤3が103部に対して硬化剤3が42.9部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、90mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果185℃、樹脂破壊靭性GICは100J/mであり、RTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していた。
「プリフォームの作製」
実施例3で得られたプリフォームを使用した。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層および16層共に57%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが20μm、16層のものが19μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から10μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層1に含まれるコアシェルポリマー粒子の数が複合層2より多かった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、242MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、241MPaであり、構造部材に適していた。
<実施例5>
「繊維基材の製造」
構成要素[A]として、炭素繊維束“トレカ(登録商標)”T800S−24K−10E(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:24,000本、繊度:1,033tex、引張弾性率:294GPa)を経糸として1.8本/cmの密度で引き揃え、これに平行、かつ交互に配列された補助経糸としてガラス繊維束ECDE−75−1/0−1.0Z(日東紡(株)製、フィラメント数:800本、繊度:67.5tex)を1.8本/cmの密度で引き揃えて一方向性シート状強化繊維束群を形成した。緯糸としてガラス繊維束E−glassヤーンECE−225−1/0−1.0Z(日東紡(株)製、フィラメント数:200本、繊度:22.5tex)を用い、前記一方向性シート状強化繊維束群に直交する方向に3本/cmの密度で配列し、織機を用いて該補助経糸と該緯糸が互いに交差するように織り込み、実質的に炭素繊維が一方向に配列されクリンプがない、一方向性ノンクリンプ織物を作製し、繊維基材4とした。なお、経糸繊度に対する緯糸の繊度割合は2.2%、補助経糸の繊度割合は6.5%である。
「バインダー付き繊維基材の製造」
実施例2で得られたバインダー粒子2を使用し、前記の繊維基材4の片側表面にエンボスロールとドクターブレードにて計量しながら自然落下させ、振動ネットを介して均一分散させながら、バインダー目付が13.5g/mとなるように散布した。その後、200℃、0.3m/分の条件にて遠赤外線ヒーターを通過させてバインダー粒子と繊維基材4を融着させた。次いでバインダー粒子が融着していない面に同様にしてバインダー粒子2をバインダー目付が13.5g/mとなるように散布した後、融着してバインダー付き繊維基材4を作製した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスド・ケミカルス社製)43部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂“jER(登録商標)”806(ジャパンエポキシレジン(株)製)18部、ジグリシジル−o−トルイジンGON(日本化薬(株)製)10部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂NC−3000(日本化薬(株)製)14部および“カネエース(登録商標)”MX416(“アラルダイト”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン):75部/コアシェルポリマー(体積平均粒子径:100nm、コア成分:架橋ポリブタジエン(ガラス転移温度:−70℃)、シェル:PMMA/グリシジルメタクリレート/スチレン共重合物):25部のマスターバッチ)20部を70℃の温度下で混合し主剤4を得た。得られた主剤4を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、141mPa・sであった。
別に、構成要素[B−2]として、ジエチルトルエンジアミン“jERキュア(登録商標)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製)26.1部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン3,3’−DAS(小西化学工業(株)製)5.6部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン“セイカキュア(登録商標)”S(セイカ(株)製)5.6部を130℃の温度下で攪拌しながら混合し、固形物が存在しない状態になったら70℃の温度まで冷却してt−ブチルカテコールTBC(大日本インキ化学工業(株)製)2.0部を添加して、さらに70℃の温度下で攪拌しながら固形物が存在しない状態まで混合して硬化剤4を得た。得られた硬化剤4を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、70mPa・sであった。
得られた主剤4が105部に対して硬化剤4が39.2部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、120mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果190℃、樹脂破壊靭性GICは149J/mであり、RTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していた。
「プリフォームの作製」
得られたバインダー付き繊維基材4を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラにならず、運搬の際にも形態安定性が高く、取り扱い性に優れたものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが56%、16層のものが57%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが24μm、16層のものが23μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から5μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層1に含まれるコアシェルポリマー粒子の数が複合層2より多かった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、235MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、224MPaであり、構造部材に適していた。
<実施例6>
「繊維基材の製造」
実施例5で得られた繊維基材4を使用した。
「バインダー付き繊維基材の製造」
実施例2で得られたバインダー粒子2を使用し、実施例1と同様にして繊維基材4の片側全面に融着させてバインダー目付が27g/mのバインダー付き繊維基材5を作製した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスド・ケミカルス社製)51部、ジグリシジル−o−トルイジンGON(日本化薬(株)製)40部および“カネエース(登録商標)”MX416(“アラルダイト”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン):75部/コアシェルポリマー(体積平均粒子径:100nm、コア成分:架橋ポリブタジエン(ガラス転移温度:−70℃)、シェル:PMMA/グリシジルメタクリレート/スチレン共重合物):25部のマスターバッチ)12部を70℃の温度下で混合し主剤5を得た。得られた主剤5を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、82mPa・sであった。
別に、構成要素[B−2]として、ジエチルトルエンジアミン“jERキュア(登録商標)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製)28.5部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン3,3’−DAS(小西化学工業(株)製)8.1部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン“セイカキュア(登録商標)”S(セイカ(株)製)4.1部を130℃の温度下で攪拌しながら混合し、固形物が存在しない状態になったら70℃の温度まで冷却してt−ブチルカテコールTBC(大日本インキ化学工業(株)製)1.0部を添加して、さらに70℃の温度下で攪拌しながら固形物が存在しない状態まで混合して硬化剤5を得た。得られた硬化剤5を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、74mPa・sであった。
得られた主剤5が103部に対して硬化剤5が41.7部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、76mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果188℃、樹脂破壊靭性GICは118J/mであり、RTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していた。
「プリフォームの作製」
得られたバインダー付き繊維基材5を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラにならず、運搬の際にも形態安定性が高く、取り扱い性に優れたものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが59%、16層のものが57%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが20μm、16層のものが22μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から12μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層1に含まれるコアシェルポリマー粒子の数が複合層2より多かった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、238MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、227MPaであり、構造部材に適していた。
<実施例7>
「繊維基材の製造」
実施例3で得られた繊維基材3を使用した。
「バインダー付き繊維基材の製造」
構成要素[D]として、透明ナイロン“グリルアミド(登録商標)”TR55(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製)70部と、可塑剤としてビスフェノールA型エポキシ樹脂“EPON(登録商標)”825(ジャパンエポキシレジン(株)製)30部を二軸押出機にて210℃で溶融混練し、得られた組成物を冷凍粉砕後に分級して、体積平均粒子径95μm、ガラス転移温度51℃のバインダー粒子3を得た。なお、体積平均粒子径およびガラス転移温度の測定は実施例1と同様にして測定した。
得られたバインダー粒子3を実施例1と同様にして繊維基材3の片側全面に融着させてバインダー目付が23g/mのバインダー付き繊維基材6を作製した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスド・ケミカルス社製)34部、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール“jER(登録商標)”630(ジャパンエポキシレジン(株)製)10部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂“jER(登録商標)”806(ジャパンエポキシレジン(株)製)35部、ジグリシジルアニリンGAN(日本化薬(株)製)15部および“カネエース(登録商標)”MX416(“アラルダイト”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン):75部/コアシェルポリマー(体積平均粒子径:100nm、コア成分:架橋ポリブタジエン(ガラス転移温度:−70℃)、シェル:PMMA/グリシジルメタクリレート/スチレン共重合物):25部のマスターバッチ)8部を70℃の温度下で混合し主剤6を得た。得られた主剤6を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、134mPa・sであった。
別に、構成要素[B−2]として、ジエチルトルエンジアミン“jERキュア(登録商標)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製)27.1部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン3,3’−DAS(小西化学工業(株)製)7.7部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン“セイカキュア(登録商標)”S(セイカ(株)製)3.9部を130℃の温度下で攪拌しながら混合し、固形物が存在しない状態になったら70℃の温度まで冷却してt−ブチルカテコールTBC(大日本インキ化学工業(株)製)0.8部を添加して、さらに70℃の温度下で攪拌しながら固形物が存在しない状態まで混合して硬化剤6を得た。得られた硬化剤6を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、72mPa・sであった。
得られた主剤6が102部に対して硬化剤6が39.5部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、110mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果196℃、樹脂破壊靭性GICは132J/mであり、RTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していた。
「プリフォームの作製」
得られたバインダー付き繊維基材6を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラにならず、運搬の際にも形態安定性が高く、取り扱い性に優れたものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層および16層共に57%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが20μm、16層のものが21μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から10μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層1に含まれるコアシェルポリマー粒子の数が複合層2より多かった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、236MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、216MPaであり、構造部材に適していた。
<実施例8>
「バインダー付き繊維基材の製造」
実施例6で得られた繊維基材5を使用した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
実施例6で得られた主剤5および硬化剤5を使用した。混合比は主剤5が103部に対して硬化剤5が41.7部となるように混合した。
「プリフォームの作製」
実施例6で得られたプリフォームを使用した。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを成形型の面上に配置し、その上にピールプライとして離型処理を施したポリエステル布帛、樹脂拡散媒体としてアルミ製金網を順に配置し、それらをバッグ材とシーラントにて樹脂注入口と減圧吸引口を設けて密閉してキャビティを形成した。そして、減圧吸引口から真空ポンプによってキャビティ内を吸引して、真空度を−90kPa以下になるよう調整した後、成形型およびプリフォームを70℃に温度調節した。温度調整には熱風乾燥機を使用した。
別途、前記で得られた熱硬化性樹脂組成物の主剤と硬化剤を所定の割合で混合し、70℃に温度下で30分間予備加熱を行い、真空脱気処理を行った。
予備加熱、脱気処理を行った熱硬化性樹脂組成物を成形型の樹脂注入口にセットし、大気圧によって真空キャビティ内に熱硬化性樹脂組成物を注入した。熱硬化性樹脂組成物が減圧吸引口に到達したら樹脂注入口を閉じ、減圧吸引口から吸引を継続したまま1時間保持した後、減圧吸引口を閉じた。
次いで、1分間に1.5℃ずつ180℃の温度まで昇温して180℃の温度下で2時間硬化して繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが59%、16層のものが60%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが12μm、16層のものが10μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1は明暗部が混在、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層1にも浸透していた。複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から40μmまで熱硬化性樹脂(構成要素[D])が含まれていた。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層1と複合層2に含まれるコアシェルポリマー粒子の数はほぼ同じであった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、200MPaと高い値であり、構造部材に適していたが実施例6より低い値であった。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、210MPaであり、構造部材に適していたが実施例6より低い値であった。
<比較例1>
「繊維基材の製造」
実施例1で得られた繊維基材1を使用した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
実施例1で得られた主剤1および硬化剤1を使用した。混合比は主剤1が103部に対して硬化剤1が36.6部となるように混合した。
「プリフォームの作製」
得られたバインダーが付いていない繊維基材1を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラになり、運搬の際の形態安定性が非常に低く、取り扱い性に劣るものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが60%、16層のものが61%であり、断面を観察した結果、複合層2がほとんど存在しなかった。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが5μm、16層のものが2μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、熱可塑性樹脂を配合していないので、複合層1および複合層2共に暗部であった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層2がほとんど存在しないため観察できなかった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、124MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、215MPaであり、構造部材に適していた。
<比較例2>
「バインダー付き繊維基材の製造」
実施例2で得られたバインダー付き繊維基材2を使用した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスド・ケミカルス社製)40部、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール“jER(登録商標)”630(ジャパンエポキシレジン(株)製)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂“EPON(登録商標)”825(ジャパンエポキシレジン(株)製)35部およびジグリシジルアニリンGAN(日本化薬(株)製)15部を70℃の温度下で混合し主剤7を得た。得られた主剤7を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、124mPa・sであった。
硬化剤は実施例2で得られた硬化剤2を使用した。
得られた主剤8が100部に対して硬化剤2が39.0部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、100mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果198℃、樹脂破壊靭性GICは60J/mであり、粘度はRTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していたが、破壊靭性が低い値であった。
「プリフォームの作製」
得られたバインダー付き繊維基材2を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラにならず、運搬の際にも形態安定性が高く、取り扱い性に優れたものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが56%、16層のものが57%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが18μm、16層のものが19μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から10μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、コアシェルポリマー粒子を配合していないので観察されなかった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、234MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、190MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。
<比較例3>
「繊維基材の製造」
実施例3で得られた繊維基材3を使用した。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスド・ケミカルス社製)60部およびジグリシジルアニリンGAN(日本化薬(株)製)40部を70℃の温度下で混合し主剤8を得た。得られた主剤2を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、88mPa・sであった。
硬化剤は実施例4で得られた硬化剤3を使用した。
得られた主剤9が100部に対して硬化剤3が42.9部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、76mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果186℃、樹脂破壊靭性GICは58J/mであり、RTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していたが、破壊靭性が低い値であった。
「プリフォームの作製」
得られたバインダーが付いていない繊維基材3を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラになり、運搬の際の形態安定性が非常に低く、取り扱い性に劣るものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものおよび16層のもの共に60%であり、断面を観察した結果、複合層2がほとんど存在しなかった。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものおよび16層のもの共に3μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、熱可塑性樹脂を配合していないので、複合層1および複合層2共に暗部であった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、コアシェルポリマー粒子を配合していないので観察されなかった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、110MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、192MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。
<比較例4>
「繊維基材の製造」
構成要素[A]として、炭素繊維束トレカ“(登録商標)”T800S−24K−10E(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:24,000本、繊度:1,033tex、引張弾性率:294GPa)を経糸として1.8本/cmの密度で引き揃え、これに平行、かつ交互に配列された補助経糸として炭素繊維束“トレカ(登録商標)”T300−6000(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:6,000本、繊度:396tex、引張弾性率:230GPa)を1.8本/cmの密度で引き揃えて一方向性シート状強化繊維束群を形成した。緯糸としてガラス繊維束E−glassヤーンECE−225−1/0−1.0Z(日東紡(株)製、フィラメント数:200本、繊度:22.5tex)を用い、前記一方向性シート状強化繊維束群に直交する方向に3本/cmの密度で配列し、織機を用いて該補助経糸と該緯糸が互いに交差するように織り込み、実質的に炭素繊維が一方向に配列されクリンプがない、一方向性ノンクリンプ織物を作製し、繊維基材5とした。なお、経糸繊度に対する緯糸の繊度割合は2.2%、補助経糸の繊度割合は38.3%である。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
実施例6で得られた主剤5および硬化剤5を使用した。混合比は主剤1が103部に対して硬化剤1が41.7部となるように混合した。
「プリフォームの作製」
得られたバインダーが付いていない繊維基材5を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラになり、運搬の際の形態安定性が非常に低く、取り扱い性に劣るものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが62%、16層のものが61%であり、断面を観察した結果、複合層2がほとんど存在しなかった。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが3μm、16層のものが2μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、熱可塑性樹脂を配合していないので、複合層1および複合層2共に暗部であった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層2がほとんど存在しないため観察できなかった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、115MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、193MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。
<比較例5>
「繊維基材の製造」
構成要素[A]として、炭素繊維束トレカ“(登録商標)”T800S−24K−10E(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:24,000本、繊度:1,033tex、引張弾性率:294GPa)を経糸として1.8本/cmの密度で引き揃え、これに平行、かつ交互に配列された補助経糸としてガラス繊維束E−glassヤーンECE−225−1/0−1.0Z(日東紡(株)製、フィラメント数:200本、繊度:135tex)を1.8本/cmの密度で引き揃えて一方向性シート状強化繊維束群を形成した。緯糸としてガラス繊維束E−glassヤーンECG−37−1/0−1.0Z(日東紡(株)製、フィラメント数:800本、繊度:22.5tex)を用い、前記一方向性シート状強化繊維束群に直交する方向に3本/cmの密度で配列し、織機を用いて該補助経糸と該緯糸が互いに交差するように織り込み、実質的に炭素繊維が一方向に配列されクリンプがない、一方向性ノンクリンプ織物を作製し、繊維基材6とした。なお、経糸繊度に対する緯糸の繊度割合は13.1%、補助経糸の繊度割合は2.2%である。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
実施例8で得られた主剤7および硬化剤7を使用した。混合比は主剤1が103部に対して硬化剤1が42.9部となるように混合した。
「プリフォームの作製」
得られたバインダーが付いていない繊維基材5を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラになり、運搬の際の形態安定性が非常に低く、取り扱い性に劣るものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが61%、16層のものが62%であり、断面を観察した結果、複合層2がほとんど存在しなかった。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが4μm、16層のものが5μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、熱可塑性樹脂を配合していないので、複合層1および複合層2共に暗部であった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、複合層2がほとんど存在しないため観察できなかった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、117MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、202MPaと高い値であり、構造部材に適していた。
<比較例6>
「繊維基材の製造」
構成要素[A]として、炭素繊維束トレカ“(登録商標)”T800S−24K−10E(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:24,000本、繊度:1,033tex、引張弾性率:294GPa)を経糸として1.8本/cmの密度で引き揃え、これに平行、かつ交互に配列された補助経糸として炭素繊維束“トレカ(登録商標)”T300−6000(東レ(株)製、PAN系炭素繊維、フィラメント数:6,000本、繊度:396tex、引張弾性率:230GPa)を1.8本/cmの密度で引き揃えて一方向性シート状強化繊維束群を形成した。緯糸としてガラス繊維束E−glassヤーンECG−37−1/0−1.0Z(日東紡(株)製、フィラメント数:800本、繊度:22.5tex)を用い、前記一方向性シート状強化繊維束群に直交する方向に3本/cmの密度で配列し、織機を用いて該補助経糸と該緯糸が互いに交差するように織り込み、実質的に炭素繊維が一方向に配列されクリンプがない、一方向性ノンクリンプ織物を作製し、繊維基材7とした。なお、経糸繊度に対する緯糸の繊度割合は13.1%、補助経糸の繊度割合は38.3%である。
「熱硬化性樹脂組成物の製造」
構成要素[E]を構成する構成要素[B−1]として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂“EPON(登録商標)”825(ジャパンエポキシレジン(株)製)70部およびヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルAK−601(日本化薬(株)製)30部を70℃の温度下で混合し主剤9を得た。得られた主剤9を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における粘度を測定した結果、40mPa・sであった。
ジエチルトルエンジアミン“jERキュア(登録商標)”W(ジャパンエポキシレジン(株)製)100部を硬化剤7とした。
得られた主剤10が100部に対して硬化剤8が27.0部を混合した混合物(構成要素[E])の粘度を前記した樹脂粘度測定方法にて70℃における初期粘度を測定した結果、45mPa・sであった。
得られた混合物を用いて、前記した方法にて樹脂硬化物を作製し、ガラス転移温度を測定した結果162℃と低く、樹脂破壊靭性GICは63J/mであり、RTM成形繊維強化複合材料のマトリックス樹脂に適していたが、ガラス転移温度および破壊靭性共に低い値であった。
「バインダー付き繊維基材の製造」
実施例7で得られたバインダー粒子3を実施例1と同様にして繊維基材7の片側全面に融着させてバインダー目付が23g/mのバインダー付き繊維基材8を作製した。
「プリフォームの作製」
得られたバインダー付き繊維基材8を使用し、実施例1と同様に疑似等方、24層および16層のプリフォームを作製した。かかるプリフォームは、各層がバラバラにならず、運搬の際にも形態安定性が高く、取り扱い性に優れたものであった。
「繊維強化複合材料の成形」
得られたプリフォームを使用し、実施例1と同様にして繊維強化複合材料を得た。
得られた繊維強化複合材料の炭素繊維の体積含有率は疑似等方24層のものが57%、16層のものが58%であり、炭素繊維束を含む複合層1と含まない複合層2が交互に層形成していた。複合層2の平均層厚みを前記した方法にて測定した結果、疑似等方24層のものが18μm、16層のものが20μmであった。
「繊維強化複合材料中の熱可塑性樹脂の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にして熱可塑性樹脂(構成要素[D])の分布を分析した結果、複合層1が暗部、複合層2が明部であり、熱可塑性樹脂は複合層2に集中配置されていた。また、複合層1の炭素繊維束の内部は束外周から15μm以上内部領域では熱可塑性樹脂は含まれていなかった。
「繊維強化複合材料中のコアシェルポリマー粒子の分布測定」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にしてコアシェルポリマー粒子(構成要素[C])の分布を解析した結果、コアシェルポリマー粒子を配合していないので観察されなかった。
「繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度(CAI)」
得られた繊維強化複合材料を実施例1と同様にCAIを測定した結果、107MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。
「一定疲労付与後有孔板圧縮強度(OHC疲労強度)」
得られた繊維強化複合材料を前記した方法にて試験片を作製し、OHC疲労強度を測定した結果、193MPaと低い値であり、構造部材に不適であった。

Claims (15)

  1. 少なくとも以下の構成要素[A]、[B]、[C]および[D]から構成されてなる繊維強化複合材料であって、少なくとも構成要素[A]、[B]および[C]から構成される複合層1と、少なくとも構成要素[B]、[C]および[D]から構成される複合層2が交互に層形成されており、複合層1には構成要素[D]を含まない領域があり、複合層2の平均層厚みが10〜50μmであることを特徴とする繊維強化複合材料。
    [A]フィラメント数が6,000〜70,000本である炭素繊維束、
    [B]少なくとも以下の構成要素[B−1]および[B−2]を含む熱硬化性樹脂組成物が硬化されてなる硬化物、
    [B−1]エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化可能な樹脂、
    [B−2]構成要素[B−1]を硬化させうる成分、
    [C]コア成分のガラス転移温度が−40℃以下であり、シェル成分に構成要素[B]の未硬化物と反応する官能基を有し、且つ、体積平均粒子径が1〜500nmであるコアシェルポリマー粒子、
    [D]分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有し、且つ、ガラス転移温度が150℃以上である非晶性熱可塑性樹脂。
  2. 前記複合層1内において、構成要素[A]の外周から20μm以上の内部領域に構成要素[D]が含まれていない、請求項1に記載の繊維強化複合材料
  3. 構成要素[B]は、構成要素[B−1]がエポキシ樹脂で、構成要素[B−2]が芳香族ポリアミンであるエポキシ樹脂組成物を加熱硬化した硬化物である、請求項1または2に記載の繊維強化複合材料。
  4. 構成要素[C]のコア成分が架橋ポリブタジエンである、請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化複合材料
  5. 構成要素[D]が水酸基末端ポリエーテルスルホンまたはグリルアミドである、請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化複合材料。
  6. 構成要素[A]が、炭素繊維束からなる経糸と、これに平行に配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸と、これらと直交するように配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸からなり、該補助経糸と該緯糸が互いに交差することにより、炭素繊維束が一体に保持されて織物が形成されているノンクリンプ構造の織物を成している、請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化複合材料。
  7. ガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸の繊度が、炭素繊維束からなる経糸の繊度の20%以下である、請求項に記載の繊維強化複合材料。
  8. ガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸の繊度が、炭素繊維束からなる経糸の繊度の10%以下である、請求項またはに記載の繊維強化複合材料。
  9. 構成要素[A]を含むシート状物の少なくとも片面に、構成要素[D]を含む繊維状、シート状、粒子状から選ばれる形態を成した組成物を付与した繊維基材を型内に配置し、構成要素[E]を注入して含浸させた後、加熱硬化させる、繊維強化複合材料の製造方法。
    [A]フィラメント数が6,000〜70,000本である炭素繊維束、
    [E]少なくとも以下の構成要素[B−1]、[B−2]および[C]を含み、70℃の温度において、測定開始から5分以内の粘度が300mPa・s以下である熱硬化性樹脂組成物、
    [B−1]エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンズオキサジン樹
    脂から選ばれる少なくとも1種を含む熱硬化可能な樹脂、
    [B−2]構成要素[B−1]を硬化させうる成分、
    [C]コア成分のガラス転移温度が−40℃以下であり、シェル成分に構成要素[B]の未硬化物と反応する官能基を有し、且つ、体積平均粒子径が1〜500nmであるコアシェルポリマー粒子、
    [D]分子内にアミド基、スルホニル基、イミド基から選ばれる結合基を1種以上含有し、且つ、ガラス転移温度が150℃以上である非晶性熱可塑性樹脂。
  10. 構成要素[E]が、少なくとも構成要素[B−1]および[C]からなる主剤と、少なくとも構成要素[B−2]からなる硬化剤とから構成される二液型エポキシ樹脂組成物であり、該主剤と該硬化剤を混合する工程を含む、請求項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  11. 構成要素[D]が、分子構造の末端または側鎖に構成要素[B−1]または[B−2]と反応可能な官能基を有している、請求項または10に記載の繊維強化複合材料の製造方法
  12. 構成要素[A]を含むシート状物が、炭素繊維束からなる経糸と、これに平行に配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸と、これらと直交するように配列されたガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸からなり、該補助経糸と該緯糸が互いに交差することにより、炭素繊維束が一体に保持されて織物が形成されているノンクリンプ構造の織物を成している繊維基材であり、該繊維基材を剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置し、真空ポンプにて剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間を真空引きし、樹脂混合物を注入して含浸させた後、加熱硬化させる、請求項11のいずれかに記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  13. ガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の補助経糸の繊度が、炭素繊維束からなる経糸の繊度の20%以下である、請求項12に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  14. ガラス繊維または化学繊維からなる繊維束の緯糸の繊度が、炭素繊維束からなる経糸の繊度の10%以下である、請求項12または13に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
  15. 構成要素[B]および構成要素[C]を含む樹脂混合物を注入後、50〜140℃の範囲の任意温度まで昇温して1次硬化を行い、次いで160〜180℃の範囲の任意温度まで昇温して2次硬化を行う、請求項14のいずれかに記載の繊維強化複合材料の製造方法。
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