JP2019038939A - プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents

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麻紀 永野
富岡 伸之
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Abstract

【課題】湿熱時圧縮強度を損なわずに高い層間靱性を安定して発現することができ、かつ層間剪断強度を確保した繊維強化複合材料が得られるプリプレグ、およびそれを用いた繊維強化複合材料を提供すること。
【解決手段】少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]と強化繊維を含んでなるプリプレグであって、かつ[C]の90質量%以上がプリプレグ表面からプリプレグの厚さの20%の深さの範囲内に存在していることを特徴とするプリプレグ。
[A]エポキシ樹脂
[B]硬化剤
[C][Cx]および[Cy]を含む熱可塑性樹脂粒子
【選択図】なし

Description

本発明は、航空宇宙用途に適した湿熱時圧縮強度と層間靱性を兼ね備え、かつ層間剪断強度を確保した繊維強化複合材料が得られるプリプレグ、およびそれを用いた繊維強化複合材料に関するものである。
繊維強化複合材料、中でも炭素繊維強化複合材料は、比強度や比剛性に優れていることから有用であり、航空機構造部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開され、その需要は年々増加しつつある。
炭素繊維強化複合材料は、強化繊維である炭素繊維とマトリックス樹脂を必須の構成要素とするプリプレグを成形してなる不均一材料であり、そのため強化繊維の配列方向の物性とそれ以外の方向の物性に大きな差が存在する。例えば、強化繊維層間破壊の進行しにくさを示す層間靱性は、強化繊維の強度を向上させるのみでは、抜本的な改良に結びつかないことが知られている。特に、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする炭素繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂の低い靭性を反映し、強化繊維の配列方向以外からの応力に対し、破壊されやすい性質を持っている。そのため、航空機構造材で必要となる高温高湿環境下での繊維方向に対する圧縮強度を確保しつつ、層間靭性を始めとする強化繊維の配列方向以外からの応力に対応することができる複合材料物性の改良を目的に、種々の技術が提案されている。
さらに近年、航空機構造材への繊維強化複合材料の適用部位が拡大している他、発電効率やエネルギー変換効率の向上を目指した風車ブレードや各種タービンへの繊維強化複合材料の適用も進んでおり、プリプレグの積層枚数の多い肉厚な部材、また3次元的な曲面形状を有する部材への適用検討が進められている。このような肉厚部材、あるいは曲面部材に引っ張りや圧縮の応力が負荷された場合、プリプレグ繊維層間への面外方向への引き剥がし応力が発生し、層間に開口モードによる亀裂が生じ、その亀裂の進展により部材全体の強度、剛性が低下し、全体破壊に到る場合がある。この応力に対抗するための、開口モード、すなわちモードIでの層間靱性が必要になる。
そこで、繊維層間領域に耐熱性の低い高靱性なポリアミドやゴム系の改質剤等を用いた粒子材料を配置する方法などが数多く試されてきた。しかし、かかる繊維強化複合材料では、耐湿熱性や層間剪断強度とトレードオフの関係に陥りやすいという課題があった。
これに対し、近年、複数種の粒子を併用して特性の両立を図るといった考え方が主流となってきている。例えば、繊維層間領域に高耐熱なポリエーテルスルホン粒子と高靱性なポリアミド粒子材料を配置することで、モードII層間靱性を高め、部材表面への落錘衝撃に対する損傷を抑える技術が提案されている(特許文献1参照)。また、別の手法として、粒子形態や熱力学特性の異なる2種のポリアミド粒子の組み合わせを用いることで、モードI層間靱性を安定して発現し、かつ湿熱時圧縮強度の高い材料が開示されている(特許文献2、3参照)。さらに、高耐熱なポリフタルアミド粒子とエポキシ樹脂に不溶な架橋型ポリエーテルスルホン粒子の組み合わせを用いることで、モードII層間靱性と圧縮強度の高い材料が開示されている(特許文献4、5参照)。
国際公開2008/133054号 特開平7−41576号 国際公開2013/015299号 国際公開2012/087602号 国際公開2014/099149号
特許文献1の技術を用いた場合、高耐熱な粒子はエポキシ樹脂に可溶となるため、層間粒子の溶融や変形により層間の形態が変動し、安定した層間靭性を発現できるものではなかった。また、特許文献2、3の方法では、モードI層間靱性と湿熱時圧縮強度のバランスは良好であるものの、近年の要求特性の高度化に伴い、湿熱時圧縮強度の更なる改善が必要であった。さらに、特許文献4,5の方法でも、安定したモードI層間靱性の十分な効果が得られるものではなく、また粒子とマトリックス樹脂との界面接着性が不十分であった。
そこで、本発明は、航空宇宙用途に適した湿熱時圧縮強度と層間靱性を兼ね備え、かつ層間剪断強度を確保した繊維強化複合材料が得られるプリプレグ、およびそれを用いた繊維強化複合材料に関するものである。
本発明は、上記目的を達成するために次のいずれかの構成を有するものである。すなわち、本発明は少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]と強化繊維を含んでなるプリプレグであって、かつ[C]の90質量%以上がプリプレグ表面からプリプレグの厚さの20%の深さの範囲内に存在していることを特徴とするプリプレグである。
[A]エポキシ樹脂
[B]硬化剤
[C][Cx]および[Cy]を含む熱可塑性樹脂粒子
[Cx]次の(Cx1)〜(Cx3)条件を満たす、前記[A]エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子
(Cx1)粒子を構成する素材が非晶性の熱可塑性樹脂と多官能化合物である
(Cx2)粒子のガラス転移温度が140℃超である
(Cx3)粒子の引張伸びが10〜200%の範囲である。
[Cy]次の(Cy1)〜(Cy3)条件を満たす、前記[A]エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子
(Cy1)粒子を構成する素材がポリアミドである
(Cy2)粒子のガラス転移温度が110〜180℃の範囲である
(Cy3)粒子の曲げ弾性率が1.5〜2.3GPaの範囲である。
本発明のプリプレグの好ましい態様によれば、[Cy]の粒子を構成する素材が、次の(Cy1−a)の条件を満たすポリアミドである。
(Cy1−a)ポリアミドが一般式(1)の化学構造を含む。
Figure 2019038939
(式中R、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、もしくはハロゲン元素を表わし、それぞれ同一でも異なっていても良い)
本発明のプリプレグの好ましい態様によれば、[Cx]を構成する非晶性の熱可塑性樹脂が、次の(Cx1−a)の条件を満たす非晶性の熱可塑性樹脂である。
(Cx1−a)非晶性の熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、またはそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である。
本発明のプリプレグの好ましい態様によれば、[Cx]を構成する多官能化合物が、次の(Cx1−a)の条件を満たす多官能化合物である。
(Cx1−b)多官能化合物が、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
本発明のプリプレグの好ましい態様によれば、[Cx]の粒子を構成する素材が、次の(Cx1−c)の条件を満たす非晶性の熱可塑性樹脂と多官能化合物の構成からなる。
(Cx1−c)非晶性の熱可塑性樹脂100質量部に対して、多官能化合物を0.01〜10質量部含有させて得られる素材である。
本発明のプリプレグの好ましい態様によれば、[Cx]は、粒子の平均粒子径が20〜30μm、粒子径分布指数が1〜2.5、真球度が96〜100の範囲であり、[Cy]は、粒子の平均粒子径が10〜20μm、粒子径分布指数が1〜2.2、真球度が96〜100の範囲である。
本発明のプリプレグの好ましい態様によれば、[A]が多官能アミン型エポキシ樹脂を含み、その配合量が、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量部に対して50質量部を超える。
本発明のプリプレグの好ましい態様によれば、[B]が芳香族アミンである。
本発明のプリプレグの好ましい態様によれば、強化繊維が炭素繊維である。
また、本発明においては、前記のプリプレグを硬化させて繊維強化複合材料とすることができる。
本発明によれば、湿熱時圧縮強度を損なわずに高い層間靱性を安定して発現することができ、かつ層間剪断強度を確保した繊維強化複合材料、およびそれを得るためのプリプレグが得られる。
以下、本発明のプリプレグ、および繊維強化複合材料について詳細に説明する。
本発明におけるエポキシ樹脂[A]は、一分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。
本発明におけるエポキシ樹脂[A]の具体例としては、水酸基を複数有するフェノールから得られる芳香族グリシジルエーテル、水酸基を複数有するアルコールから得られる脂肪族グリシジルエーテル、アミンから得られるグリシジルアミン、カルボキシル基を複数有するカルボン酸から得られるグリシジルエステル、オキシラン環を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
中でも、低粘度で強化繊維への含浸性に優れ、また繊維強化複合材料とした際の耐熱性と弾性率等の力学物性に優れることから、多官能アミン型エポキシ樹脂を好適に使用できる。さらに好ましい態様によれば、かかる多官能アミン型エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂[A]の総量100質量部に対して50質量部を超える範囲で含まれることである。
かかる多官能アミン型エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂1分子内に3つ以上のエポキシ基を含むアミン型エポキシを指す。かかる多官能アミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルキシリレンジアミン、ジグリシジルアニリンや、これらのハロゲン置換体、アルキル置換体、アラルキル置換体、アリル置換体、アルコキシ置換体、アラルコキシ置換体、アリロキシ置換体、水添品などを使用することができる。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学工業(株)製)、YH434L(新日鉄住金化学(株)製)、“jER(登録商標)”604(三菱化学(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY720、“アラルダイド(登録商標)”MY721(以上、ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)等を使用することができる。トリグリシジルアミノフェノール又はトリグリシジルアミノクレゾールの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100、“スミエポキシ(登録商標)”ELM120(以上、住友化学工業(株)製)、“アラルダイド(登録商標)”MY0500、“アラルダイド(登録商標)”MY0510、“アラルダイド(登録商標)”MY0600(以上、ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ社製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)等を使用することができる。ジグリシジルアニリンの市販品としては、GAN(日本化薬(株)製)などが挙げられる。ジグリシジルトルイジンの市販品としては、GOT(日本化薬(株)製)等を使用することができる。テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水素添加品の市販品としては、“TETRAD(登録商標)”−X、“TETRAD(登録商標)”−C(以上、三菱ガス化学(株)製)等を使用することができる。
本発明におけるエポキシ樹脂[A]は、グリシジルアミン以外のエポキシ樹脂や、エポキシ樹脂と熱硬化性樹脂の共重合体等を含んでも良い。エポキシ樹脂と共重合させて用いられる上記の熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂組成物や化合物は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。
グリシジルアミン以外のエポキシ樹脂として用いられるエポキシ樹脂のうち、2官能のエポキシ樹脂としては、フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型およびレゾルシノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明のプリプレグは、硬化剤[B]を配合して用いる。ここで説明される硬化剤は、本発明におけるエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂[A]の硬化剤であり、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物である。硬化剤としては、具体的には、例えば、ジシアンジアミド、芳香族アミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。
芳香族アミンを硬化剤[B]として用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。特に、芳香族アミンの中でも、ジアミノジフェニルスルホンもしくはその誘導体、またはその各種異性体は、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物を得るため最も適している硬化剤である。
また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。酸無水物を用いてエポキシ樹脂を硬化することは、アミン化合物硬化に比べ吸水率の低い硬化物を与える。その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。
硬化剤の添加量の最適値は、エポキシ樹脂と硬化剤の種類により異なる。例えば、芳香族アミン硬化剤では、化学量論的に当量となるように添加することが好ましいが、エポキシ樹脂のエポキシ基量に対する芳香族アミン硬化剤の活性水素量の比を0.7〜0.9付近とすることにより、当量で用いた場合より高弾性率樹脂が得られることがあり、これも好ましい態様である。これらの硬化剤は、単独で使用しても複数を併用してもよい。
芳香族アミンの市販品としては、セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(三菱化学(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学(株)製)、Lonzacure(登録商標)M−DEA(Lonza(株)製)、Lonzacure(登録商標)M−DIPA(Lonza(株)製)、Lonzacure(登録商標)M−MIPA(Lonza(株)製)およびLonzacure(登録商標)DETDA 80(Lonza(株)製)などが挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と硬化剤、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
本発明におけるエポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子[C]は、下記[Cx]および[Cy]のいずれも含む必要がある。
[Cx]次の(Cx1)〜(Cx3)条件を満たす、前記[A]エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子
(Cx1)粒子を構成する素材が非晶性の熱可塑性樹脂と多官能化合物である
(Cx2)粒子のガラス転移温度が140℃超である
(Cx3)粒子の引張伸びが10〜200%の範囲である。
[Cy]次の(Cy1)〜(Cy3)条件を満たす、前記[A]エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子
(Cy1)粒子を構成する素材がポリアミドである
(Cy2)粒子のガラス転移温度が110〜180℃の範囲である
(Cy3)粒子の曲げ弾性率が1.5〜2.3GPaの範囲である。
ここで、エポキシ樹脂に不溶であるとは、かかる熱可塑性樹脂粒子(以下、熱可塑性樹脂粒子を粒子と略記することがある。)を分散したエポキシ樹脂を加熱硬化した際に、粒子がエポキシ樹脂中に実質的に溶解しないことを意味しており、例えば透過型電子顕微鏡を用い、エポキシ樹脂硬化物の中で、粒子が元のサイズから実質的に縮小することなく、粒子とマトリックス樹脂の間に明確な界面をもって観察できるものであることを指す。かかる[Cx]および[Cy]をエポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子とすることで、加熱硬化の際に粒子の溶解や大幅な変形が起こらず、繊維層間領域に一定の空間を確保することができる。その結果、安定した層間厚みが形成され、層間靭性に優れる繊維強化複合材料を得ることが可能となる。
本発明における粒子[Cx]を構成する熱可塑性樹脂の特性としては、非晶性である必要がある。非晶性とは、熱可塑性樹脂の内部の結晶相と非晶相のうち、結晶部分の割合がないか、少ないものを指す。なお、非晶相とは、不規則な分子形態あるいは分子集合状態によって構成される相を含むものである。これらは示差走査熱量測定法(DSC法)や動的粘弾性測定法(DMA法)により判別することができる。すなわち、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて測定したとき、融解熱量が観測されないか、5J/g以上の結晶融解熱を示さないものをいう。この際、DSC測定では、30℃から当該の熱可塑性樹脂の融点よりも30℃を超える温度までの温度範囲を20℃/分の昇温速度で1回昇温させた後に、1分間保持した後、20℃/分で0℃まで降温させ、1分間保持した後、再度20℃/分で昇温させる方法で測定し、2回目の昇温時に測定される融解熱量を結晶融解熱量とする。2回目の昇温時に結晶化発熱が観測されたときは、融解熱量から結晶化熱量を差し引いたものを、ここでいう融解熱量と定義する。
かかる非晶性の熱可塑性樹脂としては、例えば、非晶性のポリエステル、非晶性のポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネートそれらの共重合体またはオリゴマーなどが挙げられる。これらの中で、耐熱性、靭性、および熱硬化性樹脂との接着性が高いことから、非晶性のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、またはそれらの共重合体が好ましく、ポリエーテルスルホンまたはその共重合体がさらに好ましい。
非晶性のポリエステルの市販品としては、“U−ポリマー(登録商標)”U−100−などが挙げられる。
非晶性のポリアミドの市販品としては、3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとイソフタル酸と12−アミノドデカン酸の共重合体(例えば、“グリルアミド(登録商標)” TR55、エムスケミー・ジャパン(株)社製)、3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(例えば、“ グリルアミド(登録商標)” TR90、エムスケミー・ジャパン(株)社製)などが挙げられる。
ポリエーテルスルホンの市販品としては、 “スミカエクセル(登録商標)”PES3600P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P、“スミカエクセル(登録商標)”PES5200P、“スミカエクセル(登録商標)”PES7600P(以上、住友化学工業(株)製)、“Ultrason(登録商標)”E2020P SR、“Ultrason(登録商標)”E2021SR(以上、BASF(株)製)、“GAFONE(登録商標)”3600RP、“GAFONE(登録商標)” 3000RP(以上、Solvay Advanced Polymers(株)製)などを使用することができ、また、特表2004-506789号公報に記載されるようなポリエーテルスルホンとポリエーテルエーテルスルホンの共重合体オリゴマー、が挙げられる。
ポリスルホンの市販品としては、 “UDEL(登録商標)”P−1700、“UDEL(登録商標)”P−3500(以上、帝人アモコ社製)、“Virantage(登録商標)”VW−30500RP(Solvay Advanced Polymers社製)などが挙げられる。
ポリアミドイミドの市販品としては、“TPS(登録商標)”TI−5000(以上、東レプラスチック精工株式会社製)などが挙げられる。
ポリエーテルイミドの市販品としては、 “ウルテム(登録商標)”1000、“ウルテム(登録商標)”1010、“ウルテム(登録商標)”1040(以上、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製)などが挙げられる。オリゴマーとは10個から100個程度の有限個のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。
ポリカーボネートの市販品としては、“パンライト(登録商標)”K1300Y(帝人化成(株)製)等が挙げられる。
本発明における粒子[Cx]を構成する素材は、熱可塑性樹脂と多官能化合物を含んでなるものである。
本発明において、熱可塑性樹脂とは前述した非晶性の熱可塑性樹脂であり、熱可塑性樹脂の末端あるいは骨格の一部に反応されうる官能基を有することが好ましい。かかる官能基は、多官能化合物の官能基と反応可能な官能基を意味する。例えば、カルボキシル基、アミノ基または水酸基等の官能基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明において、多官能化合物としては、一分子内に2個以上の反応基を有する化合物を意味する。かかる多官能化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート、カルボジイミド、アルデヒド、マレイミド、ピリジンやヒドラジドなどのアミン類、エステルが挙げられ、これらは1種類だけでなく、複数種組み合わせて添加しても良い。中でも、繊維強化複合材料とした際の耐熱性や接着性に優れることから、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネートが好ましく、より好ましくはエポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネートが挙げられる。
かかる熱可塑性樹脂と多官能化合物の組み合わせにより、共有結合やセミIPN化した粒子が得られ耐湿熱性やエポキシ樹脂に対する耐溶解性を得られやすくなり、繊維強化複合材料とした際にも湿熱時圧縮強度の発現や安定した層間厚みの形成が可能となる。ここで、IPNとは相互侵入高分子網目(インターペネトレーティングポリマーネットワーク)の略で、セミIPNとは直鎖状高分子(ここでは熱可塑性樹脂に相当する)と架橋高分子(ここでは多官能化合物が架橋した樹脂に相当する)との相互侵入高分子網目構造をいう。
本発明における粒子[Cx]においては、製造方法に特に制限はなく、例えばWO2010/136772公報に記載の方法で製造することが可能であり、当該文献によれば、熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、触媒存在下、水と非相溶である溶媒に溶解させ、乳濁液方法で得ることができる。また、別の手法として、WO2014/184351公報に記載の方法でも製造することが可能であり、該文献によれば、熱可塑性樹脂、イソシアネート、触媒存在下、溶媒中で加熱することにより得ることができる。
本発明の粒子[Cx]は、非晶性の熱可塑性樹脂100質量部に対して、多官能化合物を0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部含有してなる。多官能化合物の含有量が0.01質量%未満の場合は、[Cx]の弾性率や耐熱性が向上しない場合がある。一方、10質量%を上回る場合には、伸度や耐衝撃性などの機械的特性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明における粒子[Cx]の引張伸びが10〜200%の範囲である。優れた靭性を得るためには層間に配置した粒子を引き伸ばしながらクラックを進展させることが重要であることから、粒子[Cx]の引張伸びが少なくとも10%超えであり、50%以上であることが好ましい。かかる粒子[Cx]の引張伸びが25%に満たない場合、層間靭性が不十分な繊維強化複合材料となる。一方、200%を上回る場合には、繊維強化複合材料の圧縮強度が低下し、層間靭性と層間剪断強度のバランスが悪化する。
引張伸びが10〜200%の範囲である粒子[Cx]の例としては、非晶性のポリエステル(引張伸び:10〜20%)、非晶性のポリアミド(引張伸び:50〜200%)、ポリエーテルスルホン(引張伸び:70%)、特定のポリアミドイミド(引張伸び:〜25%)、ポリエーテルイミド(引張伸び:60%)などが挙げられる。
本発明における粒子[Cx]のガラス転移温度(以下、ガラス転移温度をTgと略記することがある。)が140℃超である必要がある。ガラス転移温度が140〜420℃の範囲にあることが好ましく、180〜300℃の範囲にあることがより好ましく、210〜240℃の範囲にあることがさらに好ましい。[Cx]を高いガラス転移温度とすることで、加熱硬化の際に粒子の変形が起こらず、安定した層間厚みが形成され、層間靭性に優れるとともに、湿熱時圧縮強度を安定して確保できる繊維強化複合材料を得ることが可能となる。かかるガラス転移温度が140℃に満たない場合、湿熱時圧縮強度が不足した繊維強化複合材料となる。
ガラス転移温度が140℃超である粒子[Cx]の例としては、非晶性のポリエステル(Tg:160℃)、非晶性のポリアミド(Tg:140〜160℃)、ポリエーテルスルホン(Tg:225℃)、ポリスルホン(Tg:190℃)、ポリアミドイミド(Tg:280℃)、ポリエーテルイミド(Tg:215℃)、ポリカーボネート(Tg:150℃)などが挙げられる。
本発明における粒子[Cy]を構成する素材としては、ポリアミドを含んでなる必要がある。かかるポリアミドとしては、3員環以上のラクタム、重合可能なアミノカルボン酸、二塩基酸とジアミンまたはそれらの塩、あるいはこれらの混合物の重縮合によって得られるポリアミドが挙げられる。中でも、繊維強化複合材料とした際の耐衝撃性、層間靭性に加えて、耐湿熱性、耐溶剤性にも優れた繊維強化複合材料が得られる点で、本発明における粒子[Cy]は、一般式(1)の化学構造を含むポリアミドであることが好ましい。
Figure 2019038939
(式中R、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、もしくはハロゲン元素を表わし、それぞれ同一でも異なっていても良い)。
本発明における粒子[Cy]のガラス転移温度は110℃〜180℃の範囲である必要がある。ガラス転移温度が110〜180℃の範囲にあることが好ましく、130〜170℃の範囲にあることがより好ましく、135〜165℃の範囲にあることがさらに好ましい。[Cy]を比較的高いガラス転移温度とすることで、湿熱時圧縮強度を保持しながら、[Cx]と同じく加熱硬化の際に粒子の変形が起こらず、安定した層間厚みが形成され、層間靭性に優れる繊維強化複合材料を得ることが可能となる。かかるガラス転移温度が110℃に満たない場合、層間靭性および湿熱時圧縮強度のバランスの不十分な繊維強化複合材料となる。一方、かかるガラス転移温度が180℃を上回る場合、粒子自身の靱性が不足する傾向があるとともに、粒子とマトリックス樹脂の界面接着性が不十分となり、層間靭性や層間剪断強度が不十分な繊維強化複合材料となる。
ガラス転移温度が110〜180℃の範囲にある粒子[Cy]の例としては、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T、Tg:135℃)、ポリノナンテレフタルアミド(ナイロン9T、Tg:160℃)、3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとイソフタル酸と12−アミノドデカン酸の共重合体(Tg:160℃)、3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(Tg:152℃)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(Tg:137℃)などが挙げられる。
本発明における粒子[Cy]の曲げ弾性率は1.5〜2.3GPaの範囲である必要がある。[Cy]を低弾性率な粒子とすることで、繊維層間領域に配置した粒子にクラックを誘導することができ、層間靭性に優れる繊維強化複合材料を得ることが可能となる。かかる曲げ弾性率が1.5GPaに満たない場合、層間靭性および湿熱時圧縮強度のバランスの不十分な繊維強化複合材料となる。一方、かかる曲げ弾性率が2.3GPaを上回る場合、クラックが強化繊維やマトリックス樹脂へ進展することになり、粒子自身の靱性を十分に発揮できず、層間靭性が不十分な繊維強化複合材料となる。
かかる粒子[Cy]の例としては、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T、Tg:135℃)、ポリノナンテレフタルアミド(ナイロン9T、Tg:160℃)、3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとイソフタル酸と12−アミノドデカン酸の共重合体(Tg:160℃)、3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(Tg:152℃)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(Tg:137℃)などが挙げられる。
このような粒子[Cy]の市販品としては、3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(例示するならば、“グリルアミド(登録商標)” TR90、エムザベルケ社製)、3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとイソフタル酸と12−アミノドデカン酸の共重合体と3,3’-ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体との混合物(例示するならば、“ グリルアミド(登録商標)”TR70LX、エムザベルケ社製)、 4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸の共重合体(例示するならば、“トロガミド(登録商標)”CX7323 、デグサ社製)などが挙げられる。
本発明における粒子[Cx]は、平均粒子径が1〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは15〜35μmの範囲にあることさらに好ましくは20〜30μmの範囲にあることである。さらに、[Cy]は、平均粒子径が1〜40μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲にあること、さらに好ましくは10〜20μmの範囲にあることである。かかる平均粒子径は、数平均粒子径を指す。平均粒子径がこのような範囲にあることで、かかる樹脂粒子を分散したエポキシ樹脂組成物と強化繊維を組み合わせたプリプレグを積層し、加熱硬化して得られる繊維強化複合材料において、強化繊維層内に樹脂粒子が入り込むことなく、また、粗大な粒子の存在により層間厚みの過大な領域が発生することなく、均一な層間厚みを有する繊維強化複合材料を得ることが出来、その結果、層間靭性が安定して高いものとなる。
かかる粒子の個々の粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)にて、粒子を1000倍で観察し、測長した。尚、粒子が真円でない場合は、長径をその粒子径として測定した。
平均粒子径は、写真から任意の100個の粒子直径を測長し、その算術平均を求めることにより算出した。ここでいう平均粒子径は、数平均粒子径を意味する。
本発明における粒子[Cx]および[Cy]は、真球度が80〜100であることが好ましく、96〜100であることがより好ましい。このような高い真球度とすることで、かかる粒子を分散したエポキシ樹脂組成物の粘度を低く抑えることが出来、その分、粒子の配合量を増やすことが可能となるとともに、[Cx]および[Cy]とを組み合わせた際に、粒子の充填率を高めることができる。かかる真球度が80に満たない場合、エポキシ樹脂組成物の粘度上昇により粒子の配合量が制限されるとともに、[Cx]および[Cy]とを組み合わせた際の粒子の充填化効果が小さいものとなる。
かかる真球度は、走査型電子顕微鏡にて、粒子を観察し、短径と長径を測定し、任意粒子30個の平均より、下記数値変換式に従い算出されるものである。
Figure 2019038939
尚、n:測定数30とする。
また、本発明における粒子[Cx]は、粒子径分布指数が1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜3.5であり、さらに好ましくは1〜2.5である。さらに、[Cy]は、粒子径分布指数が1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2.2である。このような比較的狭い粒子径分布とすることで、かかる熱可塑性樹脂粒子を分散したエポキシ樹脂組成物と強化繊維を組み合わせたプリプレグを積層し、加熱硬化して得られる繊維強化複合材料において、[Cx]および[Cy]とを組み合わせた際に、層間領域での粒子の充填率を効果的に高めることができる傾向にある。また一部の粗大な粒子の存在により層間厚みの過大な領域が発生することなく、均一な層間厚みを有する繊維強化複合材料を得ることが出来る傾向にある。かかる粒子径分布指数が特定の範囲を上回る場合、それぞれを組み合わせた際に、層間領域での粒子の充填率が向上しにくい上、層間厚みのムラ発生に起因して、これらの特性のばらつきの大きな材料となる傾向にある。
かかる粒子径分布指数は、後述の方法で得られた粒子直径の値を、下記数値変換式に基づき、決定されるものである。
Figure 2019038939
尚、Ri:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
[Cx]と[Cy]の各々の条件を満たすことで、繊維強化複合材料の発現し得る理想的な層間剪断強度と熱時圧縮強度を確保でき、極めて高い層間靱性を安定して発現することができる。かかる[Cx]と[Cy]の質量含有比率([Cx]/[Cy])が1/9〜9/1の範囲にあることが好ましく、より好ましくは2/8〜7/3の範囲内にあることが好ましい。がかかる範囲内にあることで、樹脂組成物の粘度上昇を極力抑えつつ、層間領域での粒子の充填率を効果的に高めることができる。
本発明のプリプレグは、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、[C]以外の熱硬化性樹脂粒子、エポキシ樹脂に溶解可能な熱可塑性樹脂、あるいはシリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、金属粉体といった無機フィラー等を配合することができる。
本発明のプリプレグは、上記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるものである。本発明のプリプレグに用いられる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維などを用いることができる。これらの繊維を、2種類以上混合して用いても構わない。強化繊維の形態や配列については限定されず、例えば、一方向に引き揃えられた長繊維、単一のトウ、織物、ニット、不織布、マットおよび組紐などの繊維構造物が用いられる。
特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においては、その優れた比弾性率と比強度のため、炭素繊維を好適に用いることができる。
本発明で好ましく用いられる炭素繊維は、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、層間靭性や耐衝撃性の点から高くとも400GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、強度の観点からは、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が好ましくは4.4〜6.5GPaの炭素繊維が用いられる。また、引張伸度も重要な要素であり、1.7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。従って、引張弾性率が少なくとも230GPaであり、引張強度が少なくとも4.4GPaであり 、引張伸度が少なくとも1.7%であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、 “トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T700S−12K(以上東レ(株)製)などが挙げられる。
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。
本発明において用いられる炭素繊維束は、単繊維繊度が0.2〜2.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.8dtexである。単繊維繊度が0.2dtex未満では、撚糸時においてガイドローラーとの接触による炭素繊維束の損傷が起こり易くなることがあり、また樹脂組成物の含浸処理工程においても同様の損傷が起こることがある。単繊維繊度が2.0dtexを超えると炭素繊維束に樹脂組成物が充分に含浸されないことがあり、結果として耐疲労性が低下することがある。
本発明において用いられる炭素繊維束は、一つの繊維束中のフィラメント数が2500〜50000本の範囲であることが好ましい。フィラメント数が2500本を下回ると繊維配列が蛇行しやすく強度低下の原因となりやすい。また、フィラメント数が50000本を上回るとプリプレグ作製時あるいは成形時に樹脂含浸が難しいことがある。フィラメント数は、より好ましくは2800〜40000本の範囲である。
本発明のプリプレグは、エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸したものであることが好ましく、そのプリプレグの炭素繊維質量分率は好ましくは40〜90質量%であり、より好ましくは50〜80質量%である。炭素繊維質量分率が低すぎると、得られる複合材料の質量が過大となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が損なわれることがあり、また、炭素繊維質量分率が高すぎると、樹脂組成物の含浸不良が生じ、得られる複合材料がボイドの多いものとなり易く、その力学特性が大きく低下することがある。
本発明のプリプレグは、粒子に富む層、すなわち、その断面を観察したときに、前記した粒子[C]が局在して存在している状態が明瞭に確認しうる層(以下、粒子層と略記することがある。)が、プリプレグの表面付近部分に形成されている構造であることが好ましい。
このような構造をとることにより、プリプレグを積層してエポキシ樹脂を硬化させて繊維強化複合材料とした場合は、プリプレグの層、即ち強化繊維の層の間で樹脂の層が形成され易く、それにより、強化繊維の層相互の接着性や密着性が高められ、得られる繊維強化複合材料に高度の層間靭性や耐衝撃性が発現されるようになる。
このような観点から、前記の粒子層は、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から、表面を起点として厚さ方向に好ましくは20%の深さ、より好ましくは10%の深さの範囲内に存在していることが好ましい。また、粒子層は、片面のみに存在させても良いが、プリプレグに表裏ができるため、注意が必要となる。プリプレグの積層を間違えて、粒子のある層間とない層間が存在すると、層間靭性の低い複合材料となる。表裏の区別をなくし、積層を容易にするため、粒子層はプリプレグの表裏両面に存在する方がよい。
さらに、粒子層内に存在する粒子の存在割合は、プリプレグ中、粒子の全量100質量%に対して好ましくは90〜100質量%であり、より好ましくは95〜100質量%である。
この粒子の存在率は、例えば、下記の方法で評価することができる。すなわち、プリプレグを2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板の間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に硬化温度まで温度を上昇させてゲル化、硬化させて板状のプリプレグ硬化物を作製する。このプリプレグ硬化物の両面に、プリプレグ硬化物の表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの表面と平行な線を2本引く。次に、プリプレグの表面と上記線との間に存在する粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡って存在する粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率を計算する。ここで、粒子の合計面積は、断面写真から粒子部分を刳り抜き、その質量から換算して求める。樹脂中に分散する粒子の写真撮影後の判別が困難な場合は、粒子を染色する手段も採用できる。
本発明のプリプレグは、特開平1−26651号公報、特開昭63−170427号公報または特開昭63−170428号公報に開示されているような方法を応用して製造することができる。具体的には、本発明のプリプレグは、炭素繊維に代表される強化繊維とマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂からなる一次プリプレグの表面に、粒子を粒子の形態のまま塗布する方法、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂中にこれらの粒子を均一に混合した混合物を調整し、この混合物を強化繊維に含浸させる過程において強化繊維でこれら粒子の侵入を遮断せしめてプリプレグの表面部分に粒子を局在化させる方法、または予めエポキシ樹脂を強化繊維に含浸させて一次プリプレグを作製しておき、一次プリプレグ表面に、これらの粒子を高濃度で含有する熱硬化性樹脂のフィルムを貼付する方法等で製造することができる。粒子が、プリプレグの厚み20%の深さの範囲に均一に存在することで、層間靭性の高い繊維複合材料用のプリプレグが得られる。
本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ樹脂組成物を、メチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、強化繊維に含浸させるウェット法と、エポキシ樹脂組成物を加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法等によって好適に製造することができる。
ウェット法は、強化繊維をエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発せしめ、プリプレグを得る方法である。
ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、またはエポキシ樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングした樹脂フィルムを作製しておき、次に強化繊維の両側または片側からその樹脂フィルムを重ね、加熱加圧することによりエポキシ樹脂組成物を転写含浸せしめ、プリプレグを得る方法である。このホットメルト法では、プリプレグ中に残留する溶媒が実質的に皆無となるため好ましい態様である。
また、本発明の繊維強化複合材料は、このような方法により製造された複数のプリプレグを積層後、得られた積層体に熱および圧力を付与しながらエポキシ樹脂を加熱硬化させる方法等により製造することができる。
熱および圧力を付与する方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法等が使用される。特にスポーツ用品の成形には、ラッピングテープ法と内圧成形法が好ましく用いられる。
ラッピングテープ法は、マンドレル等の芯金にプリプレグを捲回して、繊維強化複合材料製の管状体を成形する方法であり、ゴルフシャフトや釣り竿等の棒状体を作製する際に好適な方法である。より具体的には、マンドレルにプリプレグを捲回し、プリプレグの固定および圧力付与のため、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからなるラッピングテープを捲回し、オーブン中でエポキシ樹脂を加熱硬化させた後、芯金を抜き去って管状体を得る方法である。
また、内圧成形法は、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いでその内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、管状体を成形する方法である。この内圧成形法は、ゴルフシャフト、バット、およびテニスやバトミントン等のラケットのような複雑な形状物を成形する際に、特に好ましく用いられる。
本発明の繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグを所定の形態で積層し、加圧・加熱してエポキシ樹脂を硬化させる方法を一例として製造することができる。
以下、実施例によって、本発明のプリプレグと繊維強化複合材料について、より具体的に説明する。実施例で用いた樹脂原料、プリプレグおよび繊維強化複合材料の作製方法および評価法を、次に示す。実施例のプリプレグの作製環境および評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。
<強化繊維(炭素繊維)>
・“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31E(フィラメント数24,000本、引張強度5.9GPa、引張弾性率294GPa、引張伸度2.0%の炭素繊維、東レ(株)製)。
<エポキシ樹脂[A]>
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ(株)社製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0510(p−アミノフェノール型エポキシ樹脂、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ(株)社製)
・“エピクロン(登録商標)”830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC(株)製)。
<硬化剤[B]>
・3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)。
<その他の成分>
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)。
<熱可塑性樹脂粒子[C]>
・粒子×1(平均粒子径 24μm、粒子径分布 2.5、真球度 96の粒子)
(粒子×1の製造方法:特開2009/221360号を参考とした。)
非晶性の熱可塑性樹脂としてポリアミド(エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標)”−TR90)96質量部、多官能化合物としてエポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)社製“エポトート(登録商標)”YD−128)3質量部、および硬化剤(三井武田ケミカル(株)社製“MDA(登録商標)”220)1質量部を、クロロホルム300質量部とメタノール100質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を450rpmで攪拌しながらポリビニルアルコール(関東化学(株)製)を6質量%溶解させた水溶液185質量部を徐々に滴下し、該溶液を分散媒中に粒子分散させ、溶媒を除去したのちに微粒子を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平均粒子径 24μm、粒子径分布指数 2.5、真球度 96の粒子であった。
・粒子×2(平均粒子径 23μm、粒子径分布 1.9、真球度 96の粒子)
(粒子×2の製造方法:国際公開2009/142231号パンフレットや特開昭63−210120を参考とした。)
非晶性の熱可塑性樹脂として(東レ(株)社製“TI(登録商標)”5013)94質量部、多官能化合物としてエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)社製“jER(登録商標)”154)4質量部、アミン系の硬化触媒2質量部、N−メチル−2−ピロリドン1700質量、ポリビニルアルコール100質量部(日本合成化学工業株式会社製 “ゴーセノール(登録商標)”GL−05)を加え加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒としてイオン交換水を、送液ポンプを経由して滴下した。イオン交換水を加えた時点で、系が白色に変化した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水で洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径 23μm、粒子径分布指数 1.9、真球度 96の粒子であった。
・粒子×3(平均粒子径 23μm、粒子径分布 1.8、真球度 97の粒子)
(粒子×3の製造方法)
非晶性の熱可塑性樹脂としてポリエーテルスルホン(住友化学工業(株)製“スミカエクセル(登録商標)”5003P)100質量部、多官能化合物としてメラミン樹脂(東京化成工業(株)社製2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン)4質量部、N−メチル−2−ピロリドン1900質量部、ポリビニルアルコール110質量部(日本合成化学工業株式会社製 “ゴーセノール(登録商標)”GL−05)を加え加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒としてイオン交換水を、送液ポンプを経由して、滴下した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水で洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径 23μm、粒子径分布指数 1.8、真球度 97の粒子であった。
・粒子×4(平均粒子径 41μm、粒子径分布 3.6、真球度 84の粒子)
(粒子×4の製造方法)
非晶性の熱可塑性樹脂としてポリアミド(エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標)”−TR90)96質量部、多官能化合物としてエポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)社製“エポトート(登録商標)”YD−128)3質量部、および硬化剤(三井武田ケミカル(株)社製“MDA(登録商標)”220)1質量部を、クロロホルム300質量部とメタノール100質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、よく撹拌した2800質量部のn−ヘキサンの液面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。析出した固体を濾別し、n−ヘキサンでよく洗浄した後、100℃24時間の真空乾燥を行い、白色固体を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平均粒子径 41μm、粒子径分布指数 3.6、真球度 84の粒子であった。
・粒子×5(平均粒子径 13μm、粒子径分布 2.1、真球度 96の粒子)
(粒子×5の製造方法)
4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタンを構成成分として含有するポリアミド(エムザベルケ(株)社製“グリルアミド(登録商標)”TR−55)100質量部を、クロロホルム300質量部とメタノール100質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を450rpmで攪拌しながらポリビニルアルコール(関東化学(株)製)を6質量%溶解させた水溶液200質量部を徐々に滴下し、該溶液を分散媒中に粒子分散させ、溶媒を除去したのちにポリアミド微粒子を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平均粒子径 13μm、粒子径分布指数 2.1、真球度 96の粒子であった。
・粒子×6(平均粒子径 18μm、粒子径分布 1.2、真球度 98の粒子)
(粒子×6の製造方法:国際公開2009/142231号パンフレットを参考とした。)
4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとドデカ二酸を構成成分とするポリアミド(デグザ社製 “トロガミド(登録商標)”CX7323)100質量部を、N−メチル−2−ピロリドン1850質量部、ポリビニルアルコール100質量部(日本合成化学工業株式会社製 “ゴーセノール(登録商標)”GM−14)を加え、180℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで2時間攪拌を行った。その後、貧溶媒としてイオン交換水を、送液ポンプを経由して滴下した。イオン交換水を加えた時点で、系が白色に変化した。全量の水を入れ終わった後、攪拌したまま降温させ、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水を加えてリスラリー洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、灰色に着色した固体を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径 18μm、粒子径分布指数 1.2、真球度 98の粒子であった。
・粒子×7(平均粒子径 18μm、粒子径分布 1.2、真球度 98の粒子)
(粒子×7の製造方法)
4, 4’−ジアミノ−3, 3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンと1,12−ドデカンジカルボン酸を必須構成成分とするポリアミド(エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標)”−TR90)22質量部を、クロロホルム225質量部とメタノール75質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を450rpmで攪拌しながらポリビニルアルコール(関東化学(株)製)を2質量%溶解させた水溶液185質量部を徐々に滴下し、該溶液を分散媒中に粒子分散させ、溶媒を除去したのちにポリアミド微粒子を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径 18μm、粒子径分布指数 1.2、真球度 98の粒子であった。
・粒子×8(平均粒子径 18μm、粒子径分布 1.5、真球度 85の粒子)
(粒子×8の製造方法)
4, 4’−ジアミノ−3, 3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンと1,12−ドデカンジカルボン酸を必須構成成分とするポリアミド(エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標)”−TR70LX)20質量部をクロロホルム225質量部とメタノール75質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を450rpmで攪拌しながらポリビニルアルコール(関東化学(株)製)を2質量%溶解させた水溶液を徐々に滴下し、該溶液を分散媒中に粒子分散させ、溶媒を除去したのちにポリアミド微粒子を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径 18μm、粒子径分布指数 1.5、真球度 85の粒子であった。
・粒子×9(平均粒子径 18μm、粒子径分布 1.5、真球度 96の粒子)
(粒子×9の製造方法)
4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタンを構成成分として含有するポリアミド(エムザベルケ(株)社製“グリルアミド(登録商標)”TR−55)94質量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)社製“jER(登録商標)”154)1質量部、別のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)社製“jER(登録商標)”828)3質量部および硬化剤(三井武田ケミカル(株)社製“MDA(登録商標)”220)1質量部を、N−メチル−2−ピロリドン1900質量部、ポリビニルアルコール100質量部(日本合成化学工業株式会社製 “ゴーセノール(登録商標)”GL−05)を加え加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒としてイオン交換水を、送液ポンプを経由して、滴下した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水で洗浄し、濾別したものを、80℃10時間真空乾燥を行い、白色固体を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平均粒子径 18μm、粒子径分布指数 1.5、真球度 96の粒子であった。
・粒子×10(平均粒子径 33μm、粒子径分布 3.1、真球度 82の粒子)
(粒子×10の製造方法)
4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタンを構成成分として含有するポリアミド(エムザベルケ(株)社製“グリルアミド(登録商標)”TR−55)100質量部を、クロロホルム300質量部とメタノール100質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、よく撹拌した3000質量部のn−ヘキサンの液面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。析出した固体を濾別し、n−ヘキサンでよく洗浄した後、100℃24時間の真空乾燥を行い、白色固体を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平均粒子径 33μm、粒子径分布指数 3.1、真球度 82の粒子であった。
・粒子×11(平均粒子径 19μm、粒子径分布 1.7、真球度 96の粒子)
(粒子×11の製造方法)
ポリエーテルスルホン(住友化学工業(株)製“スミカエクセル(登録商標)”5003P)100質量部を、N−メチル−2−ピロリドン1800質量部、ポリビニルアルコール100質量部(日本合成化学工業株式会社製 “ゴーセノール(登録商標)”GL−05)を加え加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒としてイオン交換水を、送液ポンプを経由して、滴下した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水で洗浄し、濾別したものを、80℃10時間真空乾燥を行い、白色固体を2.0g得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径 19μm、粒子径分布指数 1.7、真球度 96の粒子であった。
・粒子×12(平均粒子径 27μm、粒子径分布 2.3、真球度 96の粒子)
(粒子×12の製造方法)
非晶性の熱可塑性樹脂としてポリアミド(エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標)”−TR55LX)96質量部、多官能化合物としてエポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)社製“エポトート(登録商標)”YD−128)3質量部、および硬化剤(三井武田ケミカル(株)社製“MDA(登録商標)”220)1質量部を、クロロホルム280質量部とメタノール80質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を450rpmで攪拌しながらポリビニルアルコール(関東化学(株)製)を6質量%溶解させた水溶液185質量部を徐々に滴下し、該溶液を分散媒中に粒子分散させ、溶媒を除去したのちに微粒子を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平均粒子径 27μm、粒子径分布指数 2.3、真球度 96の粒子であった。
・粒子×13(平均粒子径 30μm、粒子径分布 2.7、真球度 96の粒子)
(粒子×13の製造方法)
非晶性の熱可塑性樹脂として(東レ(株)社製“TI(登録商標)”5031)94質量部、多官能化合物としてエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)社製“jER(登録商標)”154)4質量部、アミン系の硬化触媒2質量部を、N−メチル−2−ピロリドン1700質量の溶媒中に添加して均一溶液を得た。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒としてイオン交換水を、送液ポンプを経由して滴下した。イオン交換水を加えた時点で、系が白色に変化した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水で洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて、観察したところ、平均粒子径 30μm、粒子径分布指数 2.7、真球度 96の粒子であった。
・粒子×14(平均粒子径 28μm、粒子径分布 2.7、真球度 96の粒子)
(粒子×14の製造方法)
ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とテレフタル酸を構成成分とするポリアミド(ダイセル・エボニック社製“Vestamid HT(登録商標)”)25質量部を、クロロホルム225質量部とメタノール75質量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を450rpmで攪拌しながらポリビニルアルコール(関東化学(株)製)を2質量%溶解させた水溶液を徐々に滴下し、該溶液を分散媒中に粒子分散させ、溶媒を除去したのちにポリアミド微粒子を得た。
・粒子×15 SP−500(東レ(株)製、平均粒子径 5.0μm、粒子径分布 1.1、真球度 96の粒子)
(1)熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径、粒子径分布指数、真球度の測定
粒子の個々の粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)にて、粒子を1000倍で観察し、測長した。尚、粒子が真円でない場合は、長径をその粒子径として測定した。
平均粒子径は、写真から任意の100個の粒子直径を測長し、その算術平均を求めることにより算出した。ここでいう平均粒子径は、数平均粒子径を指す。粒子径分布を示す粒子径分布指数は、上記で得られた個々の粒子直径の値を、下記数値変換式に基づき算出した。
Figure 2019038939
尚、Ri:粒子個々の粒子直径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。
真球度は、写真から任意の30個の短径と長径を測定し、その平均より下記数式に従い、算出されるものである。
Figure 2019038939
尚、n:測定数30とする。
(2)熱可塑性樹脂粒子[C]のガラス転移温度(Tg)測定
粒子を、示差走査熱量測定法(DSC法)を用いて、30℃から、予測されるガラス転移温度よりも30℃高い温度以上まで、昇温速度、20℃/分の昇温条件で昇温し、1分間保持した後、20℃/分の降温条件で0℃まで一旦冷却し、1分間保持した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観察されるガラス転移温度(Tg)を指す。
具体的には、得られたDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度とした。測定装置として、TA Instruments社製の示差走査型熱量計2910を使用した。
(3)エポキシ樹脂組成物の調製
実施例1〜9、比較例1〜7のエポキシ樹脂組成物は次の方法で作製した。すなわち、ニーダー中に、エポキシ樹脂として、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434を10質量部、“アラルダイト(登録商標)”MY0600を70質量部、“エピクロン(登録商標)”830を20質量部、および“スミカエクセル(登録商標)”5003Pを15質量部投入し、混練しつつ、160℃まで昇温し、160℃、1時間混練することで、透明な粘調液を得た。混練しつつ80℃まで降温させた後、3,3’−DASを40質量部、粒子[C]を表1の配合組成で合計74質量部添加し、さらに混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
実施例10は次の方法で作製した。すなわち、ニーダー中に、エポキシ樹脂として、“アラルダイト(登録商標)”MY0510を50質量部、 “エピクロン(登録商標)”830を50質量部、および“スミカエクセル(登録商標)”5003Pを15質量部投入し、混練しつつ、160℃まで昇温し、160℃、1時間混練することで、透明な粘調液を得た。混練しつつ80℃まで降温させた後、3,3’−DASを40質量部、粒子[C]を表1の配合組成で合計74質量部添加し、さらに混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
(4)プリプレグの作製
(3)で作製したエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を炭素繊維に含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m、マトリックス樹脂の質量分率が35.5%の一方向プリプレグを得た。その際、以下の2段含浸法を適用し、粒子が表層に高度に局在化したプリプレグを作製した。
1次プリプレグ用樹脂フィルムを作製するために、粒子[C]以外の組成は(4)の記載と同一であり、かつ粒子[C]を含まないエポキシ樹脂組成物を、(4)の手順で調製した。このエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の60質量%の目付となる30g/mの樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね合せてヒートロールを用い、温度100℃、気圧1気圧で加熱加圧しながら、樹脂を炭素繊維に含浸させ、1次プリプレグを得た。
さらに、2段含浸用樹脂フィルムを作製するために、(3)で調製した粒子[C]を含むエポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の40質量%の目付となる20g/mの樹脂フィルムを作製した。これを1次プリプレグの両面から重ね合せてヒートロールを用い、温度80℃、気圧1気圧で加熱加圧することで、粒子が表層に高度に局在化したプリプレグを得た。かかる2段含浸法を用いることで、かかるプリプレグを構成する全エポキシ樹脂組成物中に含まれる粒子量は、表1記載の粒子配合量と同一でありながら、粒子が表層に高度に局在化したプリプレグとすることができる。
(5)プリプレグの厚み20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率
(4)で作製した一方向プリプレグを、2枚の表面の平滑なポリ四フッ化エチレン樹脂板間に挟持して密着させ、7日間かけて徐々に150℃迄温度を上昇させてゲル化、硬化させて板状の樹脂硬化物を作製する。硬化後、密着面と垂直な方向から切断し、その断面を研磨後、光学顕微鏡で200倍以上に拡大しプリプレグの上下面が視野内に納まるようにして写真撮影した。同様な操作により、断面写真の横方向の5ヵ所でポリ四フッ化エチレン樹脂板間の間隔を測定し、その平均値(n=5)をプリプレグの厚さとした。プリプレグの両面について、プリプレグの表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの表面と平行な線を2本引く。次に、プリプレグの表面と上記線との間に存在する粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡って存在する粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率を計算した。ここで、微粒子の合計面積は、断面写真から粒子部分を刳り抜き、その質量から換算して求めた。
(6)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作成とGIC測定
JIS K7086(1993)に従い、次の(a)〜(e)の操作によりGIC試験用複合材料製平板を作製した。
(a)(4)で作製した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて20ply積層した。ただし、積層中央面(10ply目と11ply目の間)に、繊維配列方向と直角に、幅40mm、厚み12.5μmのフッ素樹脂製フィルムをはさんだ。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブ中で、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で、180℃の温度で2時間硬化し、一方向繊維強化複合材料を成形した。
(c)(b)で得た一方向繊維強化複合材料を、幅20mm、長さ195mmにカットした。繊維方向は、サンプルの長さ側と平行になるようにカットした。
(d)JIS K7086(1993)に従い、ピン負荷用ブロック(長さ25mm、アルミ製)を試験片端(フィルムをはさんだ側)に接着した。
(e)亀裂進展を観察しやすくするため、試験片の両側面に白色塗料を塗った。
作製した複合材料製平板を用いて、以下の手順により、GIC測定を行った。
JIS K7086(1993)附属書1に従い、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて試験を行った。クロスヘッドスピードは、亀裂進展が20mmに到達するまでは0.5mm/分、20mm到達後は1mm/分とした。JIS K7086(1993)にしたがって、荷重、変位、および、亀裂長さから、亀裂進展初期の限界荷重のモードI層間破壊靭性値(亀裂進展初期のGIC)およびき裂進展過程のモードI層間破壊靭性値を算出した。亀裂進展初期のGICとき裂進展量10mmから60mmにおける5点以上の測定値、計6点以上の測定値の平均をGICとして比較した。
(7)繊維強化複合材料の湿熱時圧縮強度測定
(4)で作製した一方向プリプレグを、繊維方向を圧縮方向と平行に揃えて12プライ積層し、オートクレーブ中で、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で、180℃の温度で2時間硬化して積層体を作製した。この積層体から厚み2mm、幅15mm、長さ78mmのタブ付き試験片を作成し、71℃の温水に14日間浸漬した。この試験片を、JIS K7076(1991)に従い、恒温槽付き万能試験機を用いて、82℃における0°圧縮強度を測定した。サンプル数はn=5とした。
(8)繊維強化複合材料の 層間剪断強度測定
(4)で作製した一方向プリプレグを、繊維方向を揃えて14ply積層した。積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブにて、180℃の温度で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成型し、積層体を作製した。この成形品を、ASTM D2344に従い、測定した。
(実施例1)
ニーダーを用い、(3)の手順でエポキシ樹脂組成物を作製し、(4)の手順で、粒子[C]が表層に高度に局在化したプリプレグを得た。得られたプリプレグを用い、上記の(5)プリプレグの厚み20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率(粒子表層存在率)、(6)モードI層間靭性(GIC)試験用複合材料製平板の作成とGIC測定、(7)繊維強化複合材料の湿熱時圧縮強度測定、(8)繊維強化複合材料の層間剪断強度測定を実施した。
結果を表1に示す。
プリプレグの含浸状態や表面品位に問題はなく、またプリプレグ表面から20%の深さの範囲に存在する粒子の存在率は98%と、粒子が表層に局在したプリプレグが得られた。その結果、繊維強化複合材料のGICおよび湿熱時圧縮強度は許容できるレベルであり、層間剪断強度の発現も十分なものであった。
(実施例2〜9)
粒子[C]を表1に記載した種類、配合とした以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。繊維強化複合材料のGICに優れ、また湿熱時圧縮強度や層間剪断強度をいずれも満足するものであった。
(実施例10)
エポキシ樹脂処方を(3)に記載した配合とし、さらに粒子[C]を表1に記載した種類、配合とした以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。繊維強化複合材料のGICに優れ、また湿熱時圧縮強度や層間剪断強度も許容できるレベルであった。
(比較例1)
粒子[Cx]のみを含む以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物とプリプレグを作製した。その結果、層間厚みの安定性が悪く、繊維強化複合材料のGICが不十分なものとなった。
(比較例2)
粒子[Cy]のみを含む以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物とプリプレグを作製した。その結果、層間剪断強度が不足し、繊維強化複合材料のGICが不十分なものとなった。さらに、湿熱時圧縮強度も低下した。
(比較例3)
比較例3は特許文献1(国際公開2008/133054号)の実施例に記載のポリアミド粒子とポリエーテルスルホン粒子を含む組成である。その結果、粒子×11がエポキシ樹脂に相溶してしまうため、層間厚みの安定性が悪くなり、繊維強化複合材料のGICが不十分なものとなった。
(比較例4)
比較例4は特許文献4(国際公開2012/087602号)の実施例に記載のポリフタルアミド粒子と架橋型ポリエーテルスルホン粒子を含む組成である。その結果、粒子×12の曲げ弾性率が高く、繊維強化複合材料のGICが不十分なものとなった。
(比較例5)
粒子[Cx]以外の粒子と粒子[Cy]を含む以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物とプリプレグを作製した。その結果、層間剪断強度が不足し、繊維強化複合材料のGICおよび湿熱時圧縮強度が不十分なものとなった。
(比較例6)
粒子[Cx]以外の粒子と粒子[Cy]を含む以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物とプリプレグを作製した。その結果、繊維強化複合材料のGICが不十分なものとなった。
(比較例7)
粒子[Cy]以外の粒子と粒子[Cx]を含む以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物とプリプレグを作製した。その結果、繊維強化複合材料のGICおよび湿熱時圧縮強度のバランスの不十分な繊維強化複合材料となった。
Figure 2019038939
本発明によれば、層間靭性、湿熱時圧縮強度を高いレベルで兼ね備え、かつ層間剪断強度を確保した繊維強化複合材料が得られ、特に構造材料に好適に用いられる。例えば、航空宇宙用途では主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。また一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、各種タービン、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。さらにスポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。

Claims (10)

  1. 少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]と強化繊維を含んでなるプリプレグであって、かつ[C]の90質量%以上がプリプレグ表面からプリプレグの厚さの20%の深さの範囲内に存在していることを特徴とするプリプレグ。
    [A]エポキシ樹脂
    [B]硬化剤
    [C][Cx]および[Cy]を含む熱可塑性樹脂粒子
    [Cx]次の(Cx1)〜(Cx3)条件を満たす、前記[A]エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子
    (Cx1)粒子を構成する素材が非晶性の熱可塑性樹脂と多官能化合物である。
    (Cx2)粒子のガラス転移温度が140℃超である。
    (Cx3)粒子の引張伸びが10〜200%の範囲である。
    [Cy]次の(Cy1)〜(Cy3)条件を満たす、前記[A]エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子
    (Cy1)粒子を構成する素材がポリアミドである。
    (Cy2)粒子のガラス転移温度が110〜180℃の範囲である。
    (Cy3)粒子の曲げ弾性率が1.5〜2.3GPaの範囲である。
  2. [Cy]の粒子を構成する素材が、次の(Cy1−a)の条件を満たすポリアミドである、請求項1に記載のプリプレグ。
    (Cy1−a)ポリアミドが一般式(1)の化学構造を含む。
    Figure 2019038939
  3. [Cx]を構成する非晶性の熱可塑性樹脂が、次の(Cx1−a)の条件を満たす非晶性の熱可塑性樹脂である、請求項1または2に記載のプリプレグ。
    (Cx1−a)非晶性の熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、またはそれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である。
  4. [Cx]を構成する多官能化合物が、次の(Cx1−b)の条件を満たす多官能化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
    (Cx1−b)多官能化合物が、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
  5. [Cx]の粒子を構成する素材が、次の(Cx1−c)の条件を満たす非晶性の熱可塑性樹脂と多官能化合物の構成からなる、請求項1〜4いずれかに記載のプリプレグ。
    (Cx1−c)非晶性の熱可塑性樹脂100質量部に対して、多官能化合物を0.01〜10質量部含有させて得られる素材である。
  6. [Cx]は、熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径が20〜30μm、粒子径分布指数が1〜2.5、真球度が96〜100の範囲であり、[Cy]は、熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径が10〜20μm、粒子径分布指数が1〜2.2、真球度が96〜100の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
  7. [A]が多官能アミン型エポキシ樹脂を含み、その配合量が、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂[A]の総量100質量部に対して50質量部を超える、請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグ。
  8. [B]が芳香族アミンである、請求項1〜7のいずれかに記載のプリプレグ。
  9. 強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜8のいずれか記載のプリプレグ。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のプリプレグを硬化させてなる、繊維強化複合材料。
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