JP2004285148A - 繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料、および繊維強化複合材料の製造方法。 - Google Patents
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Abstract
【課題】注入温度では低粘度であり含浸性に優れ、得られる繊維強化複合材料が、高靭性、かつ高耐熱性である繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも、下記の構成要素A、Bからなる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
構成要素A:エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂。
構成要素B:ポリアミン。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも、下記の構成要素A、Bからなる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
構成要素A:エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂。
構成要素B:ポリアミン。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材などに好適に用いられる繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として用いられる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて得られる繊維強化複合材料、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
強化繊維とマトリックス樹脂の樹脂硬化物とからなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、優れた機械特性を有するため、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、鉄道車両部材、船舶部材、スポーツ用品などに広く用いられている。
【0003】
繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としては、高耐熱性、高弾性率、低硬化収縮率、高耐薬品性などの優れた特性を有するエポキシ樹脂がよく用いられている。
【0004】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、ポリアミン、酸無水物、イミダゾール類などが用いられるが、ポリアミンは種類が豊富であり、用途に応じた選択が容易であることから、繊維強化複合材料用によく用いられている。
【0005】
これらの繊維強化複合材料の製造には、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸されたシート状中間基材であるプリプレグが用いられることが多い。この方法では、プリプレグを複数枚積層した後、加熱することによって繊維強化複合材料としての成形物が得られる。ところが、この方法はプリプレグという中間基材を作らなければならないため、生産性は必ずしも優れないという問題がある。
【0006】
これに対して、型内に配置した強化繊維基材あるいはプリフォームに、液状の熱硬化性樹脂を注入し、加熱硬化して繊維強化複合材料を得るRTM(Resin Transfer Molding)法が、より生産性の優れる繊維強化複合材料の製造方法として、近年注目されている。RTM法では、複雑な形状を有する大型の部材を短時間で成形できるという利点がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
また、最近は航空機部材など高い性能が要求される分野にも適用されつつあり、その事例が紹介されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
航空機部材など高い性能が要求される分野では、マトリックス樹脂に高い靭性が要求される。このため、従来は、樹脂硬化物を高靭性化する1つの方法として、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂やゴム粒子などの高靭性高分子化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
ところが、高分子化合物の添加量を多くすると、靭性は高まるものの、マトリックス樹脂組成物の粘度が高くなるため、RTM法への適用は困難であった。
【0010】
マトリックス樹脂を高靭性化する別の方法として、高耐熱性を有する3官能以上のエポキシ樹脂に2官能エポキシ樹脂を配合し、樹脂硬化物を低架橋密度にする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
特許文献2には、2官能エポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂を用いる方法が提案されている。しかしながら、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂は、結晶性が高いために、配合量を多くした際に、液状の樹脂組成物中に結晶が析出し、結晶が強化繊維の束内へ含浸できないために、成分の不均一性を招くおそれがある。また、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、樹脂組成物に配合した際の粘度上昇が大きく、強化繊維への含浸性の低下を招くおそれがある。
【0012】
このため、マトリックス樹脂の高靭性化と樹脂組成物の低粘度化を両立する手法として、低粘度のネオペンチルグリコールジグリシジルエステルを配合したエポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0013】
しかしながら、ネオペンチルグリコールジグリシジルエステルのような脂肪族エポキシを配合して低粘度化を行うと、低粘度化と同時に耐熱性が大きく低下するトレードオフの問題がある。
【0014】
また、低粘度化と高耐熱性のトレードオフを解決するため、低粘度のエポキシ樹脂としてエポキシ当量200以下のビスフェノールF型エポキシを用い、これに常温で液体の酸無水物系硬化剤、およびイミダゾール化合物からなる常温で液体の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0015】
しかし、エポキシ当量が200以下であるビスフェノールF型エポキシを用いたとしても、例えば、エポキシ当量が170〜200であるビスフェノールF型エポキシは室温での粘度が3000〜4000cPであり、低粘度化の効果が不十分であった。また、該特許文献4では硬化剤として酸無水物が用いられているのであるが、このエポキシ樹脂と酸無水物からなるマトリックス樹脂は、強化繊維との接着性が低く、特に優れた機械特性が要求される航空機部材や宇宙機部材には適用できない問題があった。
【0016】
【非特許文献1】
”SAMPE Journal”, 1998, vol.34, No.6, p.7−19
【0017】
【非特許文献2】
”SAMPE Journal”, 1999, vol.35, No.3, p.58−63
【0018】
【特許文献1】
特開平8−27360号公報(第2頁)
【0019】
【特許文献2】
特開平8−3−1982号公報(第2−3頁)
【0020】
【特許文献3】
特開平4−268320号公報(第2−5頁)
【0021】
【特許文献4】
特開平7−268067号公報(第2−3頁)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは以上のことを鑑み、注入温度では低粘度であり含浸性に優れ、得られる繊維強化複合材料が、高靭性、かつ高耐熱性である繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の提供を課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するために、以下の手段をとる。すなわち本発明は、少なくとも、下記の構成要素A、Bからなる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物をその骨子とする。
構成要素A:エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂。
構成要素B:ポリアミン。
【0024】
また、本発明の繊維強化複合材料は、上記繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなるものである。
【0025】
また、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、型内に配置した強化繊維からなる基材に、上記繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を注入し、含浸させた後、加熱して硬化させることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明において、エポキシ樹脂とは、分子内に複数の1,2−エポキシ基を有する樹脂を言う。また、エポキシ樹脂組成物とは、該エポキシ樹脂を含む組成物を言い、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤、適宜、さらに他の添加剤を含む組成物を意味する。
【0027】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に用いられる構成要素Aは、エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂であることが必要である。構成要素Aのエポキシ当量は165以下でなければならず、165よりも大きいと粘度が高くなるため不適である。エポキシ当量は、好ましくは155〜165の範囲である。この範囲のものであれば、本発明の効果が顕著であることに加え、入手が容易だからである。エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、ジャパン・エポキシ・レジン社製のエピコート1750(エポキシ当量:156〜163、25℃での粘度:1000〜1500cP)、東都化成社製のYDF−8170C(エポキシ当量:155〜165、25℃での粘度:1000〜2000cP)、等がある。
【0028】
構成要素Aの粘度は特に限定されないが、25℃で1500cP以下であることが好ましい。より好ましくは、入手の容易性から、1000cP〜1500cPの範囲である。粘度が1500cP以下であることにより、繊維への含浸が容易になる。
【0029】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に用いられる構成要素Aの配合量は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物中に含まれる全エポキシ樹脂100重量%に対して、10〜50重量%であることが好ましい。配合量が10重量%未満であると低粘度化の効果が小さくなり、一方、50重量%を越えると得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
【0030】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、さらに構成要素Cとして、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂を含むことが好ましい。多くのエポキシ樹脂が工業的に用いられているが、高いガラス転移温度と弾性率をもつ硬化物を得るためには、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂が有効である。
【0031】
好ましい3官能以上の芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、等がある。
【0032】
N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンの市販品としては、住友化学工業社製の”スミエポキシ”ELM434、Vantico社製の”アラルダイト”MY−720、”アラルダイト”MY−721、等がある。
【0033】
N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノールの市販品としては、住友化学工業製の”スミエポキシ”ELM120、また、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノールの市販品としては、Vantico社製の”アラルダイト”MY0500、”アラルダイト”MY0510、ジャパン・エポキシ・レジン社製の”エピコート”630、等がある。
【0034】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、上記した他に、さらに他のエポキシ樹脂を配合することもできる。構成要素A,Cと併用し得る他のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量が165よりも大きいビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの変性物を使用することもできる。これらは、単独あるいは2種以上をを用いることができる。本発明のエポキシ樹脂には、室温で固体のエポキシ樹脂を含んでもよいが、混合物が室温で液体であることが好ましい。
【0035】
ここで、室温は25℃と定義する。以下の記述では、液体、固形という用語は特にことわりのない限り25℃における性状を示すものとする。
【0036】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、芳香族エポキシ樹脂の他に、脂肪族エポキシ樹脂を任意成分として含むことができる。
【0037】
本発明に用いられる構成要素Bのポリアミンとは、分子内に複数のアミン性窒素原子を有し、かつ複数の活性水素を有する化合物を意味する。ここで、活性水素とはアミン性窒素原子に結合した水素原子をいう。 本発明において、構成要素Bの作用は特に限定されないが、主に、エポキシ樹脂の硬化剤としての働きを有している。
【0038】
構成要素Bのポリアミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、鎖状脂肪族ポリアミンであるところの、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、脂環式ポリアミンである、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、4、4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、芳香族ポリアミンである、m−キシリレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモ−6−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−シクロヘキシリデンジアニリン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス(N−メチルアニリン)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−オキシジアニリン、2,4−ビス(4−アミノフェニルメチル)アニリン、4−メチル−m−フェニレンジアミン、2−メチル−m−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、2,4,6−トリメチル−m−フェニレンジアミン、2,4−ジエチル−6−メチル−m−フェニレンジアミン、4,6−ジエチル−2−メチル−m−フェニレンジアミン、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)などがある。これらポリアミンのうち、耐熱性に優れる点で芳香族ポリアミンが好ましい。
【0039】
ここで、芳香族ポリアミンは、室温で液体であることが好ましい。室温で液体の芳香族ポリアミンは、室温で液体である単一の成分を用いてもよく、また混合物を用いてもよい。混合物の場合、室温で固体の芳香族アミンを含んでもよいが、混合物は室温で液体であることが好ましい。
【0040】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に好適に用いられる室温で液体の芳香族ポリアミンの例としては、例えば、ジエチルトルエンジアミン(2,4−ジエチル−6−メチル−m−フェニレンジアミンと4,6−ジエチル−2−メチル−m−フェニレンジアミンを主成分とする混合物)、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、2,2’−ジイソプロピル−6,6’−ジメチル−4,4’−メチレンジアニリン、2,2’,6,6’−テトライソプロピル−4,4’−メチレンジアニリン、2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、ポリオキシテトラメチレンビス(p−アミノベンゾエート)などを挙げることができる。これらの中で、低粘度でかつガラス転移温度などの硬化物物性も優れる点から、ジエチルトルエンジアミンが最も好ましい。ジエチルトルエンの市販品としては、”エピキュア”W(ジャパンエポキシレジン社製)等がある。
【0041】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、任意成分として、硬化促進剤を配合することも可能である。ポリアミンを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物の硬化促進剤には、酸型と塩基型があるが、一般的に、芳香族ポリアミンを硬化剤とする場合は、イミダゾール誘導体や尿素誘導体などの塩基型促進剤は有効ではなく、酸型の硬化促進剤が有効に用いられる。
【0042】
好ましい硬化促進剤の例としては、強酸アルキルエステル、オニウム塩、ルイス酸アミン錯体、ポリフェノール等を挙げることができる。
【0043】
好ましい強酸アルキルエステルの例としては、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸プロピル等を挙げることができる。
【0044】
また、好ましいオニウム塩のとしては、p−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−アセトキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート等を挙げることができる。
【0045】
また、好ましいルイス酸アミン錯体の例としては、BF3ピペリジン錯体を挙げることができる。
【0046】
また、好ましいポリフェノールの例としては、カテコールの置換基誘導体、具体的には、4−tert−ブチルカテコールや没食子酸プロピル等を挙げることができる。
【0047】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、比較的低温で良好な含浸性を得るために、80℃での粘度が1〜1000mPa・sであることが好ましい。80℃での粘度が1〜1000mPa・sである繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、例えば、構成要素Aと構成要素Bを上述した中から適宜組み合わせることにより、容易に得ることができる。なお、80℃での粘度は、製造の容易さから、1〜500mPa・sの範囲であることがより好ましい。
【0048】
本発明の目的の一つは、硬化物が十分高いガラス転移温度を持ち、さらに十分高い伸度を持つことである。伸度の高い材料は、一般的に靭性が高い。
【0049】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、180℃で2時間硬化して得た硬化物のガラス転移温度が170℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。また、180℃で2時間硬化して得た硬化物の引張伸度が3%以上であることが好ましい。なお、ここで記載したようなエポキシ樹脂組成物は、構成要素Aと構成要素Bを上述した中から適宜組み合わせることにより、容易に得ることができる。
【0050】
本発明の繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなる材料である。本発明の繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維からのみなるものであっても良いし、それ以外の材料を適宜含むものであってもかまわない。
【0051】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、液状エポキシ樹脂組成物を用いる繊維強化複合材料の製造方法であれば、RTM法、、フィラメントワインディング、プルトルージョン、ハンドレイアップなどを用いることができる。好ましくは、型内に配置した強化繊維からなる基材に繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を注入し、含浸させた後、加熱して硬化させる方法、すなわちRTM(Resin Transfer Molding)法である。
【0052】
強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維など、あるいはこれらを組合せたものが使用される。航空機、宇宙機部材には、炭素繊維が特に好ましく使用される。
【0053】
強化繊維からなる基材としては、例えば、強化繊維の織物、ブレイド、マットなどが用いられ、さらに、これらを積層、賦形し、結着剤やステッチなどの手段で形態を固定しプリフォームとしたものも好ましく使用される。
【0054】
型としては、剛体からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛体のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いる方法も可能である。後者の場合、強化繊維からなる基材は、剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置する。
【0055】
剛体からなる型の素材としては、例えば、金属(スチール、アルミニウム、INVARなど)、FRP、木材、石膏など既存の各種のものが用いられる。また、可撓性のフィルムの材料としては、ナイロン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが用いられる。
【0056】
剛体からなるクローズドモールドを用いる場合、加圧して型締めし、エポキシ樹脂組成物を加圧して注入することが、通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプなどの手段により吸引することも可能である。吸引を行い、特別な加圧手段を用いずに、大気圧のみでエポキシ樹脂を注入することも可能である。
【0057】
剛体のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、通常、吸引口を設け真空ポンプなどの手段により吸引し、大気圧による注入を用いるVaRTM法を用いる。ここで、国際公開第01/41993号に引用されるCAPRI法のごとく、大気圧より低い圧力に注入圧力を調整する方法も可能である。大気圧あるいはそれ以下の圧力による注入で、良好な含浸を実現するためには、米国特許第4902215号明細書に示されるような、樹脂拡散媒体を用いることも有効である。
【0058】
また、型内には、強化繊維からなる基材以外に、フォームコア、ハニカムコア、金属部品などを設置し、これらと一体化した複合材料を得ることも可能である。特にフォームコアやハニカムコアの両面に強化繊維からなる基材を配置して成型して得られるサンドイッチ構造体は、軽量で大きな曲げ剛性を持つことから、有用性が高い。
【0059】
さらに、強化繊維からなる基材の型内への配置に先立って、剛体型の表面にゲルコートを塗布することも可能である。
【0060】
繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、全成分をバッチで混合した単一の液体を単一の容器から型に注入することも、A液とB液を別々の容器に格納し、混合器を経由して型に注入することも、構成成分Aを含む液と構成成分Bを含む液を別々の容器に格納し、混合器を経由して容器注入しながら、容器から大気圧で型に注入することも可能である。
【0061】
樹脂の粘度特性は温度に敏感に依存するため、樹脂注入工程では、エポキシ樹脂組成物の容器、型ともにそれぞれ一定の温度に保持されることが好ましい。構成要素Aを含む液および構成要素Bを含む液の容器の温度は、25〜90℃であることが好ましく、注入工程における型の温度、すなわち注入温度は40〜90℃であることが好ましい。
【0062】
エポキシ樹脂組成物注入完了後、型内で熱硬化が行われる。型内の熱硬化は、注入時の型の温度のまま一定時間保持して行う方法、注入時の型の温度と最高硬化温度の中間の温度まで昇温し一定時間保持した後、再度昇温し、最高硬化温度に達した後、一定時間保持して硬化させる方法、最高硬化温度まで昇温し一定時間保持して硬化させる方法のいずれも用いることが可能である。型内での硬化における最高硬化温度の保持時間は0.5〜12時間が好ましく、1〜4時間であることがより好ましい。
【0063】
脱型後、型内の最高硬化温度より高い温度でアフターキュアすることも可能である。この場合、型内の硬化はプリキュアになる。アフターキュアの時間は、0.5〜12時間が好ましく、1〜4時間であることがより好ましい。
【0064】
航空機部材など耐熱性が要求される繊維強化複合材料を製造する場合は、最終的に、170〜190℃の温度で硬化することが好ましくおこなわれる。
【0065】
一般的に、アフターキュアを行わない場合は、型内の最高硬化温度を170〜190℃とし、アフターキュアを行う場合は、アフターキュアの温度を170〜190℃とする。
【0066】
170〜190℃でアフターキュアする場合、プリキュア温度、すなわちプリキュアにおける最高温度は80℃〜140℃であることが好ましい。
【0067】
80℃〜140℃でプリキュアする方法は、型の材質、副資材、熱源に安価なものを使用できるので、経済的に有利である。
【0068】
本発明の繊維強化複合材料は、高い比強度、非剛性を得るために、強化繊維の体積含有率が50〜85%の範囲内であることが好ましい。
【0069】
本発明により得られた繊維強化複合材料の用途は特に限定されないが、例えば、航空機の胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドアなど、宇宙機のモーターケース、主翼など、人工衛星の構体などに適している。さらに自動車のシャシー、鉄道車両の構体などにも、特に好適に用いることができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。実施例および比較例中の化合物の略号、および試験法は以下の通りである。
MY0500:N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール(バンティコ社製、エポキシ当量97.5)
Ep1750:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エポキシ当量156〜163)
Ep825:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エポキシ当量175)
GAN:ジグリシジルアニリン(日本化薬社製、エポキシ当量125)
”ヘロキシ”68:ネオペンチレングリコールジグリシジルエーテル(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エポキシ当量135)
エピキュアW:ジエチルトルエンジアミン(ジャパンエポキシレジン社製、活性水素当量45)
3,3’−DAS:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン社製、活性水素当量62)。
“スミキュア”S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、住友化学工業社製、活性水素当量62)。
TBC(4−tert−ブチルカテコール、宇部興産社製)。
【0071】
<エポキシ樹脂組成物の粘度測定>
エポキシ樹脂組成物の80℃における粘度は、次のようにして測定した。装置は東機産業製の回転粘度計TVE−30Hを用いた。ここで、ローターは1°34’×R24、回転数は50rpmとし、サンプル量は1cm3とした。粘度計のカップ温度を80℃に設定し、エポキシ樹脂組成物1cm3をカップに注入し粘度を測定した。
【0072】
<エポキシ樹脂組成物の硬化物の作成>
エポキシ樹脂組成物を厚さ2mmの板状キャビティーを備えた型内に注入し、次の条件でオーブン中にて加熱硬化して樹脂硬化板を得た。
(1)30℃から180℃まで、速度1.5℃/minで昇温する。
(2)180℃で2時間保持する。
(3)180℃から30℃まで、速度2.5℃/minで降温する。
【0073】
<エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度の測定>
上述の方法により得られた樹脂硬化板から幅12.7mm、長さ55mmの試験片を切り出し、SACMA SRM18R−94に準拠して、DMA法によりガラス転移温度を測定した。貯蔵弾性率G’曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点温度値をガラス転移温度とした。
ここでは、Rheometric Scientific社製粘弾性測定システム拡張型”ARES”を用い、昇温速度5℃/分、周波数1Hzで測定した。
【0074】
<エポキシ樹脂組成物の硬化物の引張伸度の測定>
上記の方法により得られた樹脂硬化板から、JIS K7113に準拠し、小型1(1/2)号試験片を作製し、引張伸度を測定した。装置はインストロン社製の4201型テンシロンを用いた。ここで、クロスヘッドスピードは2.5mm/min、測定温度を23℃とした。
【0075】
<繊維強化複合材料の作成>
400mm×400mm×4.8mmの板状キャビティーを有する金型に、395mm×395mmに切り出した炭素繊維一方向織物(炭素繊維:T800S、目付:191g/m2、東レ(株)製)を、炭素繊維方向を0°として、(45°/0°/−45°/90°)を3回繰り返して12枚積層した上に、(90°/−45°/0°/45°)を3回繰り返して12枚積層したものをセットし、型締めを行った。続いて、金型を80℃に加温した後、予め別途80℃に加温したエポキシ樹脂組成物を、樹脂注入装置を用い、注入圧0.2MPaで型内に注入し、強化繊維基材に含浸させた。含浸後、金型を速度1.5℃/minで130℃まで昇温し、130℃で2時間保持した後、30℃にまで降温し、脱型した。脱型後、次の条件でオーブン中にて後硬化を行い、繊維強化複合材料を得た。
(1)30℃から180℃まで、速度1.5℃/minで昇温する。
(2)180℃で2時間保持する。
(3)180℃から30℃まで、速度2.5℃/minで降温する。
【0076】
<繊維強化複合材料のCAI測定>
上記の方法で得た繊維強化複合材料から、幅101.6mm、長さ152.4mmの試験片を、0°方向と長さ方向が同じになるように作成し、ボーイング社試験法BMS7260に準拠し、CAIを測定した。装置はインストロン社製の1128型テンシロンを用いた。ここで、落錘衝撃のエネルギーは6.7J/mm、クロスヘッドスピードは1.27mm/min、測定温度を23℃とした。
【0077】
実施例1、2
構成要素AとしてEp1750、構成要素CとしてMY0500を表1に示す組成(数値は重量部)で混合し、エポキシ樹脂を得た。また、構成要素Bとして”エピキュア”W、3,3’−DAS、4,4’−DDS、および硬化促進剤としてTBCを表1に示す組成で混合し、硬化剤を得た。次に、エポキシ樹脂と硬化剤とを表1に示す組成で混合してエポキシ樹脂組成物を得て、上述の方法で80℃での粘度測定を行った。結果を表1に示す。エポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は十分に低粘度であった。さらに得られたエポキシ樹脂組成物からなる硬化物の物性を測定した結果、表1に示す通り、高い耐熱性と引張伸度を示した。つぎに、実施例1、および実施例2で用いたエポキシ樹脂組成物を用い、それぞれ繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の体積繊維含有率はそれぞれ58%、および57%であった。また、得られた繊維強化複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果、未含浸部などが見られず良好な外観であり、含浸性に優れるものであった。
さらに、上述の方法によりCAIを測定した結果、それぞれ193MPa、213MPaであり高い靭性を有していた。結果をまとめて表1に示す。
【0078】
比較例1
構成要素Aを含まないエポキシ樹脂組成物として表1に示す組成のエポキシ樹脂を得た。このエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は53cPであり高い粘度であった。また、得られた硬化物のガラス転移温度は219℃と高いものの、引張伸度は2.5%と低いものであった。
つぎに、このエポキシ樹脂組成物を用い、上述の方法により繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の体積繊維含有率は57%であった。また、得られた繊維強化複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果、一部に未含浸部が見られ、含浸性の劣るものであった。
さらに上述の方法によりCAIを測定した結果、158MPaであり靭性の低いものであった。
【0079】
比較例2
構成要素Aの代わりにEp825を用い、表1に示す組成でエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は54cPであり、高い粘度であった。
つぎにこのエポキシ樹脂組成物を用い、上述の方法により繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の体積繊維含有率は56%であった。また、得られた繊維強化複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果、一部に未含浸部が見られ、含浸性の劣るものであった。
さらに上述の方法によりCAIを測定した結果、195MPaであり靭性に関しては優れていた。
【0080】
比較例3,4
構成要素Aの代わりにGAN、および”ヘロキシ”68を用いて、表1に示す配合量でエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂の80℃での粘度は十分に低いものの、硬化物の耐熱性が劣るものであった。
つぎに比較例3、および4で用いたエポキシ樹脂組成物を用い、上述の方法によりそれぞれ繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の体積繊維含有率はそれぞれ57%、および58%であった。また、得られた繊維強化複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果、未含浸部などは見られず、含浸性には問題は無かった。さらに上述の方法によりCAIを測定した結果、それぞれ195MP、および198MPaであり、靭性に関しては問題なかった。したがって、本比較例の問題点は、耐熱性であった。これらの結果は、まとめて表1に示した。
【0081】
【表1】
【0082】
【発明の効果】
本発明により、高靭性、高耐熱性、かつ均質性に優れた繊維強化複合材料を提供でき、その有用性は多大である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材などに好適に用いられる繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として用いられる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて得られる繊維強化複合材料、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
強化繊維とマトリックス樹脂の樹脂硬化物とからなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、優れた機械特性を有するため、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、鉄道車両部材、船舶部材、スポーツ用品などに広く用いられている。
【0003】
繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としては、高耐熱性、高弾性率、低硬化収縮率、高耐薬品性などの優れた特性を有するエポキシ樹脂がよく用いられている。
【0004】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、ポリアミン、酸無水物、イミダゾール類などが用いられるが、ポリアミンは種類が豊富であり、用途に応じた選択が容易であることから、繊維強化複合材料用によく用いられている。
【0005】
これらの繊維強化複合材料の製造には、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸されたシート状中間基材であるプリプレグが用いられることが多い。この方法では、プリプレグを複数枚積層した後、加熱することによって繊維強化複合材料としての成形物が得られる。ところが、この方法はプリプレグという中間基材を作らなければならないため、生産性は必ずしも優れないという問題がある。
【0006】
これに対して、型内に配置した強化繊維基材あるいはプリフォームに、液状の熱硬化性樹脂を注入し、加熱硬化して繊維強化複合材料を得るRTM(Resin Transfer Molding)法が、より生産性の優れる繊維強化複合材料の製造方法として、近年注目されている。RTM法では、複雑な形状を有する大型の部材を短時間で成形できるという利点がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
また、最近は航空機部材など高い性能が要求される分野にも適用されつつあり、その事例が紹介されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
航空機部材など高い性能が要求される分野では、マトリックス樹脂に高い靭性が要求される。このため、従来は、樹脂硬化物を高靭性化する1つの方法として、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂やゴム粒子などの高靭性高分子化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
ところが、高分子化合物の添加量を多くすると、靭性は高まるものの、マトリックス樹脂組成物の粘度が高くなるため、RTM法への適用は困難であった。
【0010】
マトリックス樹脂を高靭性化する別の方法として、高耐熱性を有する3官能以上のエポキシ樹脂に2官能エポキシ樹脂を配合し、樹脂硬化物を低架橋密度にする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
特許文献2には、2官能エポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂を用いる方法が提案されている。しかしながら、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂は、結晶性が高いために、配合量を多くした際に、液状の樹脂組成物中に結晶が析出し、結晶が強化繊維の束内へ含浸できないために、成分の不均一性を招くおそれがある。また、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、樹脂組成物に配合した際の粘度上昇が大きく、強化繊維への含浸性の低下を招くおそれがある。
【0012】
このため、マトリックス樹脂の高靭性化と樹脂組成物の低粘度化を両立する手法として、低粘度のネオペンチルグリコールジグリシジルエステルを配合したエポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0013】
しかしながら、ネオペンチルグリコールジグリシジルエステルのような脂肪族エポキシを配合して低粘度化を行うと、低粘度化と同時に耐熱性が大きく低下するトレードオフの問題がある。
【0014】
また、低粘度化と高耐熱性のトレードオフを解決するため、低粘度のエポキシ樹脂としてエポキシ当量200以下のビスフェノールF型エポキシを用い、これに常温で液体の酸無水物系硬化剤、およびイミダゾール化合物からなる常温で液体の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0015】
しかし、エポキシ当量が200以下であるビスフェノールF型エポキシを用いたとしても、例えば、エポキシ当量が170〜200であるビスフェノールF型エポキシは室温での粘度が3000〜4000cPであり、低粘度化の効果が不十分であった。また、該特許文献4では硬化剤として酸無水物が用いられているのであるが、このエポキシ樹脂と酸無水物からなるマトリックス樹脂は、強化繊維との接着性が低く、特に優れた機械特性が要求される航空機部材や宇宙機部材には適用できない問題があった。
【0016】
【非特許文献1】
”SAMPE Journal”, 1998, vol.34, No.6, p.7−19
【0017】
【非特許文献2】
”SAMPE Journal”, 1999, vol.35, No.3, p.58−63
【0018】
【特許文献1】
特開平8−27360号公報(第2頁)
【0019】
【特許文献2】
特開平8−3−1982号公報(第2−3頁)
【0020】
【特許文献3】
特開平4−268320号公報(第2−5頁)
【0021】
【特許文献4】
特開平7−268067号公報(第2−3頁)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは以上のことを鑑み、注入温度では低粘度であり含浸性に優れ、得られる繊維強化複合材料が、高靭性、かつ高耐熱性である繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の提供を課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するために、以下の手段をとる。すなわち本発明は、少なくとも、下記の構成要素A、Bからなる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物をその骨子とする。
構成要素A:エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂。
構成要素B:ポリアミン。
【0024】
また、本発明の繊維強化複合材料は、上記繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなるものである。
【0025】
また、本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、型内に配置した強化繊維からなる基材に、上記繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を注入し、含浸させた後、加熱して硬化させることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明において、エポキシ樹脂とは、分子内に複数の1,2−エポキシ基を有する樹脂を言う。また、エポキシ樹脂組成物とは、該エポキシ樹脂を含む組成物を言い、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤、適宜、さらに他の添加剤を含む組成物を意味する。
【0027】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に用いられる構成要素Aは、エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂であることが必要である。構成要素Aのエポキシ当量は165以下でなければならず、165よりも大きいと粘度が高くなるため不適である。エポキシ当量は、好ましくは155〜165の範囲である。この範囲のものであれば、本発明の効果が顕著であることに加え、入手が容易だからである。エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、ジャパン・エポキシ・レジン社製のエピコート1750(エポキシ当量:156〜163、25℃での粘度:1000〜1500cP)、東都化成社製のYDF−8170C(エポキシ当量:155〜165、25℃での粘度:1000〜2000cP)、等がある。
【0028】
構成要素Aの粘度は特に限定されないが、25℃で1500cP以下であることが好ましい。より好ましくは、入手の容易性から、1000cP〜1500cPの範囲である。粘度が1500cP以下であることにより、繊維への含浸が容易になる。
【0029】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に用いられる構成要素Aの配合量は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物中に含まれる全エポキシ樹脂100重量%に対して、10〜50重量%であることが好ましい。配合量が10重量%未満であると低粘度化の効果が小さくなり、一方、50重量%を越えると得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
【0030】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、さらに構成要素Cとして、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂を含むことが好ましい。多くのエポキシ樹脂が工業的に用いられているが、高いガラス転移温度と弾性率をもつ硬化物を得るためには、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂が有効である。
【0031】
好ましい3官能以上の芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、等がある。
【0032】
N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンの市販品としては、住友化学工業社製の”スミエポキシ”ELM434、Vantico社製の”アラルダイト”MY−720、”アラルダイト”MY−721、等がある。
【0033】
N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノールの市販品としては、住友化学工業製の”スミエポキシ”ELM120、また、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノールの市販品としては、Vantico社製の”アラルダイト”MY0500、”アラルダイト”MY0510、ジャパン・エポキシ・レジン社製の”エピコート”630、等がある。
【0034】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、上記した他に、さらに他のエポキシ樹脂を配合することもできる。構成要素A,Cと併用し得る他のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量が165よりも大きいビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの変性物を使用することもできる。これらは、単独あるいは2種以上をを用いることができる。本発明のエポキシ樹脂には、室温で固体のエポキシ樹脂を含んでもよいが、混合物が室温で液体であることが好ましい。
【0035】
ここで、室温は25℃と定義する。以下の記述では、液体、固形という用語は特にことわりのない限り25℃における性状を示すものとする。
【0036】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、芳香族エポキシ樹脂の他に、脂肪族エポキシ樹脂を任意成分として含むことができる。
【0037】
本発明に用いられる構成要素Bのポリアミンとは、分子内に複数のアミン性窒素原子を有し、かつ複数の活性水素を有する化合物を意味する。ここで、活性水素とはアミン性窒素原子に結合した水素原子をいう。 本発明において、構成要素Bの作用は特に限定されないが、主に、エポキシ樹脂の硬化剤としての働きを有している。
【0038】
構成要素Bのポリアミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、鎖状脂肪族ポリアミンであるところの、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、脂環式ポリアミンである、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、4、4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、芳香族ポリアミンである、m−キシリレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモ−6−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−シクロヘキシリデンジアニリン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス(N−メチルアニリン)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−オキシジアニリン、2,4−ビス(4−アミノフェニルメチル)アニリン、4−メチル−m−フェニレンジアミン、2−メチル−m−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、2,4,6−トリメチル−m−フェニレンジアミン、2,4−ジエチル−6−メチル−m−フェニレンジアミン、4,6−ジエチル−2−メチル−m−フェニレンジアミン、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)などがある。これらポリアミンのうち、耐熱性に優れる点で芳香族ポリアミンが好ましい。
【0039】
ここで、芳香族ポリアミンは、室温で液体であることが好ましい。室温で液体の芳香族ポリアミンは、室温で液体である単一の成分を用いてもよく、また混合物を用いてもよい。混合物の場合、室温で固体の芳香族アミンを含んでもよいが、混合物は室温で液体であることが好ましい。
【0040】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物に好適に用いられる室温で液体の芳香族ポリアミンの例としては、例えば、ジエチルトルエンジアミン(2,4−ジエチル−6−メチル−m−フェニレンジアミンと4,6−ジエチル−2−メチル−m−フェニレンジアミンを主成分とする混合物)、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、2,2’−ジイソプロピル−6,6’−ジメチル−4,4’−メチレンジアニリン、2,2’,6,6’−テトライソプロピル−4,4’−メチレンジアニリン、2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、ポリオキシテトラメチレンビス(p−アミノベンゾエート)などを挙げることができる。これらの中で、低粘度でかつガラス転移温度などの硬化物物性も優れる点から、ジエチルトルエンジアミンが最も好ましい。ジエチルトルエンの市販品としては、”エピキュア”W(ジャパンエポキシレジン社製)等がある。
【0041】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物には、任意成分として、硬化促進剤を配合することも可能である。ポリアミンを硬化剤とするエポキシ樹脂組成物の硬化促進剤には、酸型と塩基型があるが、一般的に、芳香族ポリアミンを硬化剤とする場合は、イミダゾール誘導体や尿素誘導体などの塩基型促進剤は有効ではなく、酸型の硬化促進剤が有効に用いられる。
【0042】
好ましい硬化促進剤の例としては、強酸アルキルエステル、オニウム塩、ルイス酸アミン錯体、ポリフェノール等を挙げることができる。
【0043】
好ましい強酸アルキルエステルの例としては、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸プロピル等を挙げることができる。
【0044】
また、好ましいオニウム塩のとしては、p−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−アセトキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート等を挙げることができる。
【0045】
また、好ましいルイス酸アミン錯体の例としては、BF3ピペリジン錯体を挙げることができる。
【0046】
また、好ましいポリフェノールの例としては、カテコールの置換基誘導体、具体的には、4−tert−ブチルカテコールや没食子酸プロピル等を挙げることができる。
【0047】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、比較的低温で良好な含浸性を得るために、80℃での粘度が1〜1000mPa・sであることが好ましい。80℃での粘度が1〜1000mPa・sである繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、例えば、構成要素Aと構成要素Bを上述した中から適宜組み合わせることにより、容易に得ることができる。なお、80℃での粘度は、製造の容易さから、1〜500mPa・sの範囲であることがより好ましい。
【0048】
本発明の目的の一つは、硬化物が十分高いガラス転移温度を持ち、さらに十分高い伸度を持つことである。伸度の高い材料は、一般的に靭性が高い。
【0049】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、180℃で2時間硬化して得た硬化物のガラス転移温度が170℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。また、180℃で2時間硬化して得た硬化物の引張伸度が3%以上であることが好ましい。なお、ここで記載したようなエポキシ樹脂組成物は、構成要素Aと構成要素Bを上述した中から適宜組み合わせることにより、容易に得ることができる。
【0050】
本発明の繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなる材料である。本発明の繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維からのみなるものであっても良いし、それ以外の材料を適宜含むものであってもかまわない。
【0051】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、液状エポキシ樹脂組成物を用いる繊維強化複合材料の製造方法であれば、RTM法、、フィラメントワインディング、プルトルージョン、ハンドレイアップなどを用いることができる。好ましくは、型内に配置した強化繊維からなる基材に繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を注入し、含浸させた後、加熱して硬化させる方法、すなわちRTM(Resin Transfer Molding)法である。
【0052】
強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維など、あるいはこれらを組合せたものが使用される。航空機、宇宙機部材には、炭素繊維が特に好ましく使用される。
【0053】
強化繊維からなる基材としては、例えば、強化繊維の織物、ブレイド、マットなどが用いられ、さらに、これらを積層、賦形し、結着剤やステッチなどの手段で形態を固定しプリフォームとしたものも好ましく使用される。
【0054】
型としては、剛体からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛体のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いる方法も可能である。後者の場合、強化繊維からなる基材は、剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置する。
【0055】
剛体からなる型の素材としては、例えば、金属(スチール、アルミニウム、INVARなど)、FRP、木材、石膏など既存の各種のものが用いられる。また、可撓性のフィルムの材料としては、ナイロン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが用いられる。
【0056】
剛体からなるクローズドモールドを用いる場合、加圧して型締めし、エポキシ樹脂組成物を加圧して注入することが、通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプなどの手段により吸引することも可能である。吸引を行い、特別な加圧手段を用いずに、大気圧のみでエポキシ樹脂を注入することも可能である。
【0057】
剛体のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、通常、吸引口を設け真空ポンプなどの手段により吸引し、大気圧による注入を用いるVaRTM法を用いる。ここで、国際公開第01/41993号に引用されるCAPRI法のごとく、大気圧より低い圧力に注入圧力を調整する方法も可能である。大気圧あるいはそれ以下の圧力による注入で、良好な含浸を実現するためには、米国特許第4902215号明細書に示されるような、樹脂拡散媒体を用いることも有効である。
【0058】
また、型内には、強化繊維からなる基材以外に、フォームコア、ハニカムコア、金属部品などを設置し、これらと一体化した複合材料を得ることも可能である。特にフォームコアやハニカムコアの両面に強化繊維からなる基材を配置して成型して得られるサンドイッチ構造体は、軽量で大きな曲げ剛性を持つことから、有用性が高い。
【0059】
さらに、強化繊維からなる基材の型内への配置に先立って、剛体型の表面にゲルコートを塗布することも可能である。
【0060】
繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は、全成分をバッチで混合した単一の液体を単一の容器から型に注入することも、A液とB液を別々の容器に格納し、混合器を経由して型に注入することも、構成成分Aを含む液と構成成分Bを含む液を別々の容器に格納し、混合器を経由して容器注入しながら、容器から大気圧で型に注入することも可能である。
【0061】
樹脂の粘度特性は温度に敏感に依存するため、樹脂注入工程では、エポキシ樹脂組成物の容器、型ともにそれぞれ一定の温度に保持されることが好ましい。構成要素Aを含む液および構成要素Bを含む液の容器の温度は、25〜90℃であることが好ましく、注入工程における型の温度、すなわち注入温度は40〜90℃であることが好ましい。
【0062】
エポキシ樹脂組成物注入完了後、型内で熱硬化が行われる。型内の熱硬化は、注入時の型の温度のまま一定時間保持して行う方法、注入時の型の温度と最高硬化温度の中間の温度まで昇温し一定時間保持した後、再度昇温し、最高硬化温度に達した後、一定時間保持して硬化させる方法、最高硬化温度まで昇温し一定時間保持して硬化させる方法のいずれも用いることが可能である。型内での硬化における最高硬化温度の保持時間は0.5〜12時間が好ましく、1〜4時間であることがより好ましい。
【0063】
脱型後、型内の最高硬化温度より高い温度でアフターキュアすることも可能である。この場合、型内の硬化はプリキュアになる。アフターキュアの時間は、0.5〜12時間が好ましく、1〜4時間であることがより好ましい。
【0064】
航空機部材など耐熱性が要求される繊維強化複合材料を製造する場合は、最終的に、170〜190℃の温度で硬化することが好ましくおこなわれる。
【0065】
一般的に、アフターキュアを行わない場合は、型内の最高硬化温度を170〜190℃とし、アフターキュアを行う場合は、アフターキュアの温度を170〜190℃とする。
【0066】
170〜190℃でアフターキュアする場合、プリキュア温度、すなわちプリキュアにおける最高温度は80℃〜140℃であることが好ましい。
【0067】
80℃〜140℃でプリキュアする方法は、型の材質、副資材、熱源に安価なものを使用できるので、経済的に有利である。
【0068】
本発明の繊維強化複合材料は、高い比強度、非剛性を得るために、強化繊維の体積含有率が50〜85%の範囲内であることが好ましい。
【0069】
本発明により得られた繊維強化複合材料の用途は特に限定されないが、例えば、航空機の胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドアなど、宇宙機のモーターケース、主翼など、人工衛星の構体などに適している。さらに自動車のシャシー、鉄道車両の構体などにも、特に好適に用いることができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。実施例および比較例中の化合物の略号、および試験法は以下の通りである。
MY0500:N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール(バンティコ社製、エポキシ当量97.5)
Ep1750:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エポキシ当量156〜163)
Ep825:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エポキシ当量175)
GAN:ジグリシジルアニリン(日本化薬社製、エポキシ当量125)
”ヘロキシ”68:ネオペンチレングリコールジグリシジルエーテル(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エポキシ当量135)
エピキュアW:ジエチルトルエンジアミン(ジャパンエポキシレジン社製、活性水素当量45)
3,3’−DAS:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン社製、活性水素当量62)。
“スミキュア”S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、住友化学工業社製、活性水素当量62)。
TBC(4−tert−ブチルカテコール、宇部興産社製)。
【0071】
<エポキシ樹脂組成物の粘度測定>
エポキシ樹脂組成物の80℃における粘度は、次のようにして測定した。装置は東機産業製の回転粘度計TVE−30Hを用いた。ここで、ローターは1°34’×R24、回転数は50rpmとし、サンプル量は1cm3とした。粘度計のカップ温度を80℃に設定し、エポキシ樹脂組成物1cm3をカップに注入し粘度を測定した。
【0072】
<エポキシ樹脂組成物の硬化物の作成>
エポキシ樹脂組成物を厚さ2mmの板状キャビティーを備えた型内に注入し、次の条件でオーブン中にて加熱硬化して樹脂硬化板を得た。
(1)30℃から180℃まで、速度1.5℃/minで昇温する。
(2)180℃で2時間保持する。
(3)180℃から30℃まで、速度2.5℃/minで降温する。
【0073】
<エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度の測定>
上述の方法により得られた樹脂硬化板から幅12.7mm、長さ55mmの試験片を切り出し、SACMA SRM18R−94に準拠して、DMA法によりガラス転移温度を測定した。貯蔵弾性率G’曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点温度値をガラス転移温度とした。
ここでは、Rheometric Scientific社製粘弾性測定システム拡張型”ARES”を用い、昇温速度5℃/分、周波数1Hzで測定した。
【0074】
<エポキシ樹脂組成物の硬化物の引張伸度の測定>
上記の方法により得られた樹脂硬化板から、JIS K7113に準拠し、小型1(1/2)号試験片を作製し、引張伸度を測定した。装置はインストロン社製の4201型テンシロンを用いた。ここで、クロスヘッドスピードは2.5mm/min、測定温度を23℃とした。
【0075】
<繊維強化複合材料の作成>
400mm×400mm×4.8mmの板状キャビティーを有する金型に、395mm×395mmに切り出した炭素繊維一方向織物(炭素繊維:T800S、目付:191g/m2、東レ(株)製)を、炭素繊維方向を0°として、(45°/0°/−45°/90°)を3回繰り返して12枚積層した上に、(90°/−45°/0°/45°)を3回繰り返して12枚積層したものをセットし、型締めを行った。続いて、金型を80℃に加温した後、予め別途80℃に加温したエポキシ樹脂組成物を、樹脂注入装置を用い、注入圧0.2MPaで型内に注入し、強化繊維基材に含浸させた。含浸後、金型を速度1.5℃/minで130℃まで昇温し、130℃で2時間保持した後、30℃にまで降温し、脱型した。脱型後、次の条件でオーブン中にて後硬化を行い、繊維強化複合材料を得た。
(1)30℃から180℃まで、速度1.5℃/minで昇温する。
(2)180℃で2時間保持する。
(3)180℃から30℃まで、速度2.5℃/minで降温する。
【0076】
<繊維強化複合材料のCAI測定>
上記の方法で得た繊維強化複合材料から、幅101.6mm、長さ152.4mmの試験片を、0°方向と長さ方向が同じになるように作成し、ボーイング社試験法BMS7260に準拠し、CAIを測定した。装置はインストロン社製の1128型テンシロンを用いた。ここで、落錘衝撃のエネルギーは6.7J/mm、クロスヘッドスピードは1.27mm/min、測定温度を23℃とした。
【0077】
実施例1、2
構成要素AとしてEp1750、構成要素CとしてMY0500を表1に示す組成(数値は重量部)で混合し、エポキシ樹脂を得た。また、構成要素Bとして”エピキュア”W、3,3’−DAS、4,4’−DDS、および硬化促進剤としてTBCを表1に示す組成で混合し、硬化剤を得た。次に、エポキシ樹脂と硬化剤とを表1に示す組成で混合してエポキシ樹脂組成物を得て、上述の方法で80℃での粘度測定を行った。結果を表1に示す。エポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は十分に低粘度であった。さらに得られたエポキシ樹脂組成物からなる硬化物の物性を測定した結果、表1に示す通り、高い耐熱性と引張伸度を示した。つぎに、実施例1、および実施例2で用いたエポキシ樹脂組成物を用い、それぞれ繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の体積繊維含有率はそれぞれ58%、および57%であった。また、得られた繊維強化複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果、未含浸部などが見られず良好な外観であり、含浸性に優れるものであった。
さらに、上述の方法によりCAIを測定した結果、それぞれ193MPa、213MPaであり高い靭性を有していた。結果をまとめて表1に示す。
【0078】
比較例1
構成要素Aを含まないエポキシ樹脂組成物として表1に示す組成のエポキシ樹脂を得た。このエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は53cPであり高い粘度であった。また、得られた硬化物のガラス転移温度は219℃と高いものの、引張伸度は2.5%と低いものであった。
つぎに、このエポキシ樹脂組成物を用い、上述の方法により繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の体積繊維含有率は57%であった。また、得られた繊維強化複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果、一部に未含浸部が見られ、含浸性の劣るものであった。
さらに上述の方法によりCAIを測定した結果、158MPaであり靭性の低いものであった。
【0079】
比較例2
構成要素Aの代わりにEp825を用い、表1に示す組成でエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物の80℃での粘度は54cPであり、高い粘度であった。
つぎにこのエポキシ樹脂組成物を用い、上述の方法により繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の体積繊維含有率は56%であった。また、得られた繊維強化複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果、一部に未含浸部が見られ、含浸性の劣るものであった。
さらに上述の方法によりCAIを測定した結果、195MPaであり靭性に関しては優れていた。
【0080】
比較例3,4
構成要素Aの代わりにGAN、および”ヘロキシ”68を用いて、表1に示す配合量でエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂の80℃での粘度は十分に低いものの、硬化物の耐熱性が劣るものであった。
つぎに比較例3、および4で用いたエポキシ樹脂組成物を用い、上述の方法によりそれぞれ繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の体積繊維含有率はそれぞれ57%、および58%であった。また、得られた繊維強化複合材料の断面を光学顕微鏡で観察した結果、未含浸部などは見られず、含浸性には問題は無かった。さらに上述の方法によりCAIを測定した結果、それぞれ195MP、および198MPaであり、靭性に関しては問題なかった。したがって、本比較例の問題点は、耐熱性であった。これらの結果は、まとめて表1に示した。
【0081】
【表1】
【0082】
【発明の効果】
本発明により、高靭性、高耐熱性、かつ均質性に優れた繊維強化複合材料を提供でき、その有用性は多大である。
Claims (14)
- 少なくとも、下記の構成要素A、Bからなる繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
構成要素A:エポキシ当量165以下のビスフェノールF型エポキシ樹脂。
構成要素B:ポリアミン。 - 構成要素Aの粘度が25℃で1500cP以下である請求項1に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物中に含まれる全エポキシ樹脂100重量%に対して、構成要素Aの配合量が10〜50重量%である請求項1または2に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 構成要素Bが芳香族ポリアミンである請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 芳香族ポリアミンが室温で液体である請求項4に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンである請求項5に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- さらに、構成要素Cとして、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂を含む請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 80℃での粘度が1〜1000mPa・sである請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 180℃で2時間硬化して得られる硬化物のガラス転移温度が170℃以上である請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 180℃で2時間硬化して得られる硬化物の引張伸度が3%以上である請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなる繊維強化複合材料。
- 強化繊維が炭素繊維である請求項11記載の繊維強化複合材料。
- 強化繊維の体積含有率が45〜85%の範囲内である請求項11または12に記載の繊維強化複合材料。
- 型内に配置した強化繊維からなる基材に、請求項1〜10のいずれかに記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を注入し、含浸させた後、加熱して硬化させることを特徴とする繊維強化複合材料の製造方法。
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