JP2004291132A - 把持装置およびこれを備える多関節ロボット - Google Patents

把持装置およびこれを備える多関節ロボット Download PDF

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Abstract

【課題】ワークの形状および収容状態が異なった場合でも、位置ずれを防いでワークを挟持可能な把持装置を提供する。
【解決手段】ワーク10を基準方向Aと交差する方向に係止する複数の爪部材9と、各爪部材9が設けられるチャック体7を基準方向Aに変位駆動するチャック体駆動モータ16と変位自在に保持される複数の吸着パッド4とロック機構とを備える。これによってワーク10の形状が異なる場合であっても、各爪部材9をワーク10に係止させた後、吸着パッド4をロックすることでワーク10の位置ずれを確実に防ぐことができる。また収容されるワーク10の姿勢が不安定な場合であっても、爪部材9がワーク10の吸着パッドとは反対側からワーク10を支持することによって、収容時の姿勢を保ったままワークを把持することができる。また爪部材9を移動させることができるので吸着動作を爪部材9が妨げることを防止することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークを把持する把持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術の把持装置は、予め定められる形状および寸法のワークを把持する。したがってワークの形状および寸法の種類が複数ある場合には、ワークの種類毎に個別に把持装置が設けられる。
【0003】
たとえば従来の技術の把持装置として、ハンド本体と、複数の吸着パッドと、ハンド本体に対してワークを前後方向および左右方向に位置決めする複数のクランパとを備える把持装置がある(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
また、形状の異なるワークを保持する従来の技術の把持装置として、先端に吸着パッドが固定された軸と、この軸を上下方向に摺動自在に保持する保持部と、この軸を任意の位置で固定するための固定部を有する吸着パッドを複数備える把持装置がある(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−120186号公報
【特許文献2】
特開平4−365578号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示される把持装置は、ワークを係止するクランパを備える。このクランパは、把持すべきワークに特化した形状に形成されて、把持すべきワークに特化した配置位置に固定される。したがって異なった形状および収容状態のワークを把持する場合には、クランパの形状および配置位置を変更する必要があり、汎用性が低いという問題がある。また、クランパ自体がワークの係止を妨げる障害物となるおそれがあり、この場合、ワークを確実に把持することができないという問題がある。
【0007】
特許文献2に開示される把持装置は、単に吸着パッドとワークとを吸着して保持する構成であるので、把持したワークに外力が与えられると、把持装置に対してワークがずれるおそれがある。たとえば、鉛直方向にワークを吸着した把持装置が水平方向に高速で移動すると、把持装置に対してワークが水平方向にずれる場合がある。特にワークの形状に起因して吸着パッドとワークとの吸着力が弱い場合には、把持装置に対するワークのずれがより顕著になる。
【0008】
また、特許文献1および特許文献2に開示される把持装置は、ワークに吸着パッドを押付けてワークを吸着する。したがって、ワークがハンガーに吊るされて収容される場合などには、吸着パッドをワークに押付けることでワークの姿勢が変化してしまう。すなわち、収容されるワークの姿勢が不安定な場合には、収容されるワークの姿勢でワークを把持することができない。
【0009】
したがって本発明の目的は、ワークの形状および収容状態が異なった場合でも、ワークの位置ずれを防いでワークを把持する把持装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ワークを把持する把持装置であって、
基体と、
基体に対して、予め定める基準方向に変位自在に設けられ、ワークの一表面を吸着する吸着手段と、
基体に対して基準方向に変位自在に設けられ、ワークを基準方向と交差する方向に係止する係止片と、
係止片を基準方向に変位駆動する係止片駆動手段とを備えることを特徴とする把持装置である。
【0011】
本発明に従えば、基体を基準方向に沿ってワークに近接させると、吸着手段がワークに当接する。吸着手段は、基準方向に変位自在であるので、ワークの外形形状に倣って変位する。この状態で吸着手段とワークとが吸着することによって、ワークを把持することができる。
【0012】
ワークを吸着するとともに、係止片を移動させて、基準方向に交差するワークの一表面に係止片を当接させる。係止片とワークとが当接することで、そのワークは、基準方向に垂直な垂直方向に移動することが阻止される。このように垂直方向のワークの移動を阻止することで、把持されたワークが基体に対してずれることを防止することができる。このように係止片を基準方向に変位駆動することで、ワークの形状および収容状態にかかわらず係止片をワークに確実に当接させることができる。
【0013】
また、吸着手段によるワークの吸着動作を行う前に、係止片が吸着動作を阻害しない位置に係止片を移動させる。または吸着手段が吸着動作を良好に行うことができる位置に係止片を移動させる。そして吸着動作後に係止片を移動させてワークを係止する。このように係止片を移動することによって、ワークの収容状態にかかわらず吸着動作を良好に行うことができる。
【0014】
以上のように、係止片を移動させることで、ワークの形状および収容状態にかかわらず、位置ずれを防止してワークを把持することができ、把持装置の汎用性を向上することができる。
【0015】
また本発明は、前記基準方向と交差する方向へ相対的に変位自在である複数の係止片が設けられ、
係止片駆動手段は、各係止片を前記基準方向と交差する方向へ相対的に変位駆動することを特徴とする。
【0016】
本発明に従えば、係止片駆動手段によって、各係止片を互いに離反する方向に変位させることによって、ワークの表面に複数の係止片を当接させることができる。これによってワークの形状が異なる場合であっても、把持したワークがずれることを確実に防止することができる。
【0017】
たとえばワークに設けられる凹所に、各係止片がそれぞれ挿入する場合、その凹所の形状が異なる場合であっても、各係止片を基準方向に交差する方向にそれぞれ変位駆動することで、各係止片をワークに確実に当接させることができる。
【0018】
また本発明は、係止片は、吸着手段が吸着するワークの一表面と反対側の他表面を支持可能に形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、係止片を移動させてワークの他表面を支持した後、吸着手段をワークに当接させる。係止片が吸着手段と反対側でワークを支持した状態で、吸着手段が基準方向にワークを押付けることで、ワークが変位することなく、保持されるワークの姿勢を保ってワークを把持することができる。したがって収容されるワークの姿勢が不安定な場合であっても、収容時の姿勢を保った状態で確実にワークを保持することができる。
【0020】
また本発明は、吸着手段は、可撓性および弾発性を有する材料から成り、筒状に形成される弾性部材を含み、吸引源によって弾性部材の内方の流体を吸引可能に構成されることを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、吸着部材がワークと当接して、吸着部材の内周面と、ワークの外表面とによって囲まれる空間内の流体が吸引される。これによって吸着手段は、ワークを引きつける吸引力を得ることができる。このように吸着手段がワークを吸引することによって、ワークの材質にかかわらず、ワークを把持することができる。
【0022】
また本発明は、吸着手段は、磁気吸引力を発生することを特徴とする。
本発明に従えば、吸着手段が、磁力吸引力を発生させることによって、磁性を有するワークを良好に吸着することができる。このように磁気吸引力によって、ワークを把持することによって、流体を吸引するための真空ポンプおよび流体が流れるホースなどを必要とせず、設備を単純化することができる。
【0023】
また本発明は、前記把持装置と、
把持装置の基体が固定されるロボットアームと、
ワークとロボットアームとの位置を検出する検出手段と、
ロボットアームを変位駆動するアーム駆動手段と、
検出手段の検出結果に基づいて、ワークと係止片との位置を算出し、アーム駆動手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする多関節ロボットである。
【0024】
本発明に従えば、制御手段が検出装置の検出結果に基づいてアーム駆動手段を制御し、把持装置をロボットアームによって変位駆動する。これによってワークの一表面に係止片を容易に当接させることができる。
【0025】
また本発明は、制御手段は、アーム駆動手段と、係止片駆動手段とを同期して制御することを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、アーム駆動手段による把持装置の移動と、係止片駆動手段による係止片の移動とを連動して行わせることができ、ワークが不安定な場合であっても、ワークを容易に把持することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態である把持装置1を示す断面図である。また図2は、把持装置1を示す側面図であり、図3は、把持装置1を示す平面図であり、図4は、把持装置1を示す底面図である。
【0028】
把持装置1は、多関節ロボット2のアーム先端部2aに連結される。多関節ロボット2は、把持装置1を変位駆動する変位駆動装置となる。把持装置1は、把持対象であるワーク10を着脱自在に把持し、把持装置1が変位駆動されることによって、予め定める収容位置に収容されるワーク10を、移動すべき移動先位置に搬送することができる。
【0029】
1つまたは複数個のワーク10が収容体に収容されている。この収容体は、予め定められる収容位置にある。ワーク10には、その厚み方向に挿通する挿通孔11が形成されている。ワーク10は、たとえばプレス板金によって成形される板金部品などであって、形状および寸法が多様であり、曲面形状を有するものも含む。たとえば把持装置1は、自動車などの組立て工程において、板金部品を搬送する搬送作業を行うために用いられる。
【0030】
把持装置1は、多関節ロボット2に固定される基体3と、ワーク10を吸着する複数の吸着パッド4と、基体3に対して予め定める基準方向Aに変位自在に設けられ、各吸着パッド4が基準方向一方側端部5aにそれぞれ固定される複数のパッド保持軸5と、ワーク10を係止する爪部材9を有する係止片の一例であるチャック体7と、チャック体7を基体3に対して基準方向Aに変位駆動するチャック体駆動機構8とを備える。
【0031】
吸着パッド4は、ワーク10の一表面を吸着する吸着手段となる。各パッド保持軸5は、軸状に形成されて基準方向Aに沿ってそれぞれ延びる。チャック体7の爪部材9は、基準方向Aと交差する方向にワーク10を係止する係止片となり、ワーク10を基準方向Aと垂直な垂直方向Bに係止する。チャック体駆動機構8は、爪部材9を基準方向Aに変位駆動する爪部材変位駆動手段となる。さらに、把持装置1は、各パッド保持軸5の基準方向Aの変位移動を許容する許容状態と、変位移動を阻止する阻止状態とを切り換える可動状態切換機構6を有する。
【0032】
把持装置1は、予め収容体に収容されるワーク10に向かって基準方向Aに向かって変位駆動されて、吸着パッド4がワーク10に当接する。このとき、パッド保持軸5がワーク10の外形形状に倣って基準方向Aに変位し、複数の吸着パッド4がワーク10の基準方向他方A2側の表面10aに当接する。この状態で吸着パッド4とワーク10とが吸着することで、ワーク10を把持することができる。
【0033】
把持装置1は、吸着パッド4がワーク10を吸着するとともに、チャック体7を基準方向Aに変位駆動することで、挿通孔11に臨むワーク10の内周面30に爪部材9を当接させる。これによってワーク10は、把持装置1に対して垂直方向Bにずれることが阻止される。
【0034】
チャック体7は、3つの爪部材9を有する3つ爪チャック12と、各爪部材9を変位駆動する爪部材駆動手段13とを備える。各爪部材9は、垂直方向Bに沿って変位自在に案内され、爪部材駆動手段13によって、互いに近接および離反する方向に変位駆動される。チャック体7は、たとえば電動チャックであって、後述する制御手段80からの指令によって、各爪部材9を互いに変位駆動する。把持装置1は、各爪部材9がワーク10の内周面30に当接したか否かを判定するチャック用センサ85を有する。また、チャック体7は、空気圧によって駆動するエアチャックであってもよい。
【0035】
チャック体7は、略円柱状に形成され、基準方向Aに沿って延びる。本実施の形態では、1つのチャック体7が設けられ、チャック体7の中心軸線Lまわりに複数のパッド保持軸5が等間隔に配置される。パッド保持軸5は、少なくとも3つ以上設けられることが好ましい。3つ以上設けられることによって、把持したワーク10が傾くことを防いで、ワーク10を安定して把持することができる。本実施の形態では、複数のパッド保持軸5が、偶数個設けられ、チャック体7の中心軸線Lに関して軸対称に配置される。
【0036】
基体3は、アーム先端部2aに固定されるアーム固定部材17と、各パッド保持軸5とチャック体7とを間接的に支持する支持部材18と、アーム固定部材17と支持部材18とを連結する連結部材19とを含む。支持部材18は板状に形成されて、垂直方向Bに延びる。パッド保持軸5は、支持部材18から基準方向一方A1に部分的に突出する。チャック体7は、支持部材18よりも基準方向一方A1に配置される。
【0037】
図5は、把持装置1のチャック体駆動機構8を拡大して示す断面図である。チャック体駆動機構8は、チャック体7を基準方向Aに変位駆動する。チャック体駆動機構8は、可動体14と、固定体15と、チャック体駆動モータ16とを含む。
【0038】
可動体14は、支持部材18に対して基準方向Aに変位自在に設けられて、チャック体7と一体に形成される。固定体15は、可動体14を基準方向Aに変位自在に案内する。チャック体駆動モータ16は、可動体14を基準方向Aに沿って変位駆動するための駆動源となる。固定体15およびチャック体駆動モータ16は、支持部材18に固定される。またチャック体駆動モータ16は、その回転軸16aの回転量を検出するエンコーダ39を有する。エンコーダ39は、基体3に対するチャック体7の基準方向Aの位置を検出するためのチャック体位置検出手段となる。
【0039】
可動体14は、チャック連結部20と、螺合部21と、案内部22とを含んで設けられる。チャック連結部20は、チャック体7の基準方向他方A2側端部7aに固定され、チャック体7から垂直方向Bに延びる。チャック連結部20は、チャック体7と、螺合部21および案内部22とを連結する。チャック連結部20は、垂直方向B一端部20aでチャック体7に連なり、垂直方向B他端部20bで、螺合部21および案内部22に連なる。
【0040】
螺合部21は、基準方向Aに挿通する貫通孔が形成されて、貫通孔に臨む内ねじが形成される。案内部22は、固定体15に形成される嵌合溝26に嵌合し、可動体14が基準方向A以外の方向に変位移動することを阻止する。
【0041】
固定体15は、嵌合部23と、ねじ軸体24と、ねじ軸体24を回転自在に支持するねじ軸体支持部25とを含んで設けられる。嵌合部23には、基準方向Aに延びる嵌合溝26が形成される。嵌合溝26は、可動体14の案内部22が嵌合し、案内部22を基準方向Aに変位自在に案内する。嵌合部23は、たとえばレールガイドによって実現される。
【0042】
ねじ軸体24は、基準方向Aに延びて軸線まわりに回転自在に設けられる。またねじ軸体24は、外周部に外ねじが形成されて、可動体14の螺合部21に螺合する。ねじ軸体支持部25は、ねじ軸体24を回転自在に支持する軸受25aを有する。
【0043】
可動体14の螺合部21と固定体15のねじ軸体24とが螺合し、可動体14の案内部22が固定体15の嵌合溝26に嵌合する。これによってねじ軸体24が回転すると、可動体14が基準方向Aに移動する。本実施の形態では、ねじ軸体24と螺合部21とは、ボールねじによって実現される。
【0044】
ねじ軸体24とチャック体駆動モータ16の回転軸には、垂直方向Bに並んでプーリ27,28がそれぞれ設けられる。プーリ27,28には、無端帯状のベルト29が巻掛けられる。ベルト29は、チャック体駆動モータ16の回転力をねじ軸体24に伝達する。したがってチャック体駆動モータ16の回転軸を回転させることによって、ねじ軸体24が回転し、可動体14に連結されるチャック体7を基準方向Aに変位駆動させることができる。またチャック体駆動モータ16の回転方向を切り換えることによって、チャック体7の移動方向を切り換えることができる。チャック体駆動モータ16は、たとえばサーボモータによって実現される。
【0045】
各パッド保持軸5は、チャック体7の中心軸線Lから半径方向に等しい距離に配置されている。またチャック体7の中心軸線Lからねじ軸体24までの垂直方向距離r2は、パッド保持軸5とチャック体の中心軸線Lまでの垂直方向距離r1よりも大きく設定される。チャック連結部材20には、1つまたは複数のパッド保持軸5が挿通する貫通孔が形成される孔部20cが設けられ、この孔部20cを1または複数のパッド保持軸5が挿通する。
【0046】
ねじ軸体24および嵌合部23は、支持部材18に間接的に固定されて、支持部材18を基準方向Aに挿通する。したがって支持部材18には、ねじ軸体24および嵌合部23が挿通する貫通孔が形成される孔部18aが設けられる。
【0047】
チャック連結部20によってチャック体7から離れた位置にチャック体駆動モータ16が配置されることで、チャック体7および吸着パッド付近に把持動作を阻害する障害物をなくすことができる。
【0048】
図6は、チャック体7の爪部材9を拡大して示す正面図である。各爪部材9は、チャック体7の残余の部分に対して、基準方向一方A1に突出する。各爪部材9は、略L字状にそれぞれ形成される。具体的には各爪部材9は、その基準方向一方A1側となる先端部分31が、基準方向他方A2側の基端部分32に比べて垂直方向Bに突出する。言換えると、基端部分32には、チャック体7の中心軸線Lに向かって陥没する凹所33が形成される。
【0049】
凹所33に爪部材9の基準方向一方A1側から臨む支持面34は、基準方向Aに略垂直に形成される。また爪部材9ごとの支持面34は、互いに略面一に設けられる。本発明において、略垂直は垂直を含み、略面一は面一を含む。各爪部材9は、チャック体7の中心軸線Lに近接した状態で、ワーク10の挿通孔11に挿通可能に形成される。また各爪部材9は、先端部分31は、基準方向一方A1に向かうにつれて、垂直方向寸法が先細状に形成される。また、各爪部材9は、凹所33の基準方向寸法D3がワーク10の厚み方向寸法D4よりも大きくなるように形成される。
【0050】
各爪部材9は、爪部材駆動手段13によって、垂直方向Bに互いに変位駆動される。具体的には、3つの爪部材9が、基準方向Aに垂直な断面で見たときに、それぞれ移動する方向に沿って延びる各仮想線がチャック体7の中心軸線Lで交わる。これらの各仮想線は、チャック体7の中心軸線Lまわりに周方向に120度の間隔をあけて等間隔に並ぶ。
【0051】
各爪部材9は、チャック体7の中心軸線Lに近接した状態で、ワーク10の挿通孔11に挿通される。この状態で、各爪部材9が互いに離反する方向に連動して変位駆動されることによって、ワーク10は、各爪部材9の凹所33に嵌り込む。図6には、ワーク10に当接した状態の爪部材9を想像線によって示す。凹所33に嵌り込んだワーク10は、凹所33から基準方向Aに抜け出ることが阻止され、各当接面35が挿通孔11に臨むワーク10の内周面30にそれぞれ当接する。またワーク10は、各爪部材9の支持面34に当接することによって、基準方向Aに支持される。
【0052】
ワーク10の挿通孔11の断面形状が真円および真円に近い状態である場合、3つの爪部材9がワーク10の内周面30にそれぞれ当接すると、チャック体7の中心軸線Lと挿通孔11の中心軸線とを同軸または略同軸にすることができ、把持装置1とワーク10との位置決めを容易に行うことができる。
【0053】
図7は、吸着パッド4を示す断面図である。吸着パッド4は、可撓性および弾発性を有する材料、たとえばゴムから成り、その軸線方向一方に開口43を有する円錐台筒状に形成される。吸着パッド4は、吸着金具42を介してパッド保持軸5に連結される。吸着金具42は、内部に連結孔100が形成されている。この連結孔100は、吸着パッド4の内部空間43と真空ポンプ40に接続されるホース41の内部空間とを連通する。吸着パッド4の開口側の縁辺部44がワーク10に当接して、吸着パッド4内の空間43が塞がれた状態で、真空ポンプ40が吸着パッド4内の流体を吸引することで、吸着パッド4とワーク10とが吸着する。
【0054】
図8は、把持装置1の可動状態切換機構6を拡大して示す断面図である。パッド保持軸5は、筒状の摺動部材45を基準方向Aに変位自在に挿通する。摺動部材45は、支持部材18に固定される。パッド保持軸5は、第1ばね力発生手段である第1圧縮コイルばね46によってばね力を与えられる。第1圧縮コイルばね46はパッド保持軸5の外周を覆い、その一端部46aがパッド保持軸5の一端部5aに当接し、他端部46bが摺動部材45に当接する。これによってパッド保持軸5は、基準方向Aに変位自在に弾発的に支持される。
【0055】
パッド保持軸5は、外力が与えられていない自然状態から、基準方向他方A2に押圧する外力が与えられた場合、基準方向他方A2に向かって変位するとともに、第1圧縮コイルばね46によって基準方向一方A1に押圧するばね力を与えられる。
【0056】
可動状態切換機構6は、パッド保持軸5を挟持および挟持解除して、基体3に対する各パッド保持軸5の基準方向Aの可動状態を切り換える。可動状態切換機構6は、パッド保持軸5を覆う可動片37を有する。この可動片37が基準方向一方A1に駆動されることによって、パッド保持軸5の変位移動が許容される。また可動片37が基準方向他方A2に変位駆動されることによって、パッド保持軸5の変位移動が阻止される。可動片37は、第2ばね力発生手段である第2圧縮コイルばね38によって、基準方向他方A2に向かうばね力を与えられる。
【0057】
可動状態切換機構6は、可動片37を有してパッド保持軸5の変位を阻止および許容する第1機構部6aと、可動片37を変位駆動する第2機構部6bとを含む。第1機構部6aは、パッド保持軸5ごとに複数設けられる。第2機構部6bは、1つ設けられて、各第1機構部6aの可動片37を同時に変位駆動する。
【0058】
第2機構部6bは、基準方向Aに変位自在に設けられて複数の可動片37を押圧する板状の押圧部材52と、押圧部材52を基準方向一方A1に変位駆動する押圧部材駆動手段54と、押圧部材駆動手段54を支持して支持部材18に固定される固定部材51と、押圧部材52を基準方向Aに変位自在に支持して支持部材18に固定される保持体53とを含む。
【0059】
押圧部材駆動手段54は、ロック用駆動モータ47と、回転自在に設けられる偏心回転体49とを有する。偏心回転体49は、カップリング48を介してロック用駆動モータ47の回転軸47aに連結され、ロック用駆動モータ47の回転軸47aの回転軸線に対して偏心して設けられる。偏心回転体49は、カップリング48と反対側に円板状に形成される当接体が嵌合する。当接体は、押圧部材52と当接する。
【0060】
本実施の形態では、偏心回転体49は、エキセントリックピンによって実現される。またロック用駆動モータ47は、DC(Direct Current)モータによって実現される。また当接体は、ベアリング50によって実現される。
【0061】
上述した固定部材51は、ロック用駆動モータ47を支持するとともに、ころがり軸受を有して偏心回転体49を回転自在に支持する。ベアリング50は、その外周面部が押圧部材52に部分的に接触する。偏心回転体49が偏心しているので、偏心回転体49を角変位することで、ベアリング50が基準方向Aに変位する。ベアリング50は、基準方向一方Aに変位することで、押圧部材52を基準方向一方A1に押圧し、基準方向他方A2に変位することで、押圧部材52の押圧を解除する。
【0062】
保持体53は、支持部材18と押圧部材52とを連結し、その基準軸線方向寸法D7が伸縮自在に設けられる。保持体53は、押圧部材52が基準方向Aと垂直な方向に変位することを防止して、確実に基準方向Aに変位自在に支持する。複数、たとえば2つの保持体53が設けられることによって、押圧部材52を基準方向Aに垂直に保持することができる。
【0063】
図9は、把持装置1の第1機構部6aを拡大して示す断面図である。パッド保持軸5は、押圧部材52および支持部材18を挿通する。第1機構部6aは、支持部材18と押圧部材52との間にわたってパッド保持軸5の外周を覆う円筒状のスリーブ部材60と、スリーブ部材60の外周部を部分的に覆う円筒状の可動片37と、スリーブ部材60の外周部を部分的に覆う円筒状の挟持片61と、スリーブ部材60を半径方向に挿通する挟持孔62に嵌り込む嵌合体とを含む。本実施の形態では、嵌合体は、球状の挟持球63によって実現される。
【0064】
スリーブ部材60は、挿通するパッド保持軸5が摺動自在に設けられて、支持部材18および押圧部材52に固定される。可動片37と挟持片61とは、基準方向Aに並び、ともにスリーブ部材60を摺動して基準方向Aに変位自在に設けられる。可動片37は、パッド保持軸5の基準方向他方A2側端部に配置され、押圧部材52の基準方向一方A1側の表面に当接する。挟持片61は、可動片37よりも基準方向一方A1側に配置され、第2圧縮コイルばね38からばね力を与えられて、可動片37を基準方向他方A2に押圧する。
【0065】
スリーブ部材60は、本体部65と、本体部65よりも外周径が大きい拡径部64とが形成される。拡径部64は、本体部65よりも基準方向一方A1側に設けられる。挟持片61および可動片37は、スリーブ部材60の本体部65のうち、基準方向他方A2側の外周部を部分的に覆う。第2圧縮コイルばね38は、スリーブ部材60の本体部65のうち、基準方向一方A1側の外周を覆う。第2圧縮コイルばね38の一端部38aは、スリーブ部材60の拡径部64の基準方向他方側端部64aに当接する。また第2圧縮コイルばね38の他端部38bは、挟持片61の基準方向一端部61aに当接する。これによって挟持片61は、基準方向Aに変位自在に弾発的に支持される。挟持片61は、外力が与えられていない自然状態から、基準方向一方A1に押圧する外力が与えられた場合、基準方向一方A1に向かって変位するとともに、第2圧縮コイルばね38によって基準方向他方A2に押圧するばね力を与える。
【0066】
可動片37は、基準方向一方A1に開口を有する開口形成部37aが設けられる。この可動片37の開口に挟持片61が嵌り込むことによって、可動片37と挟持片61とが相対的に垂直方向Bにずれることが防止される。またスリーブ部材60の本体部65には、本体部65の外周面から陥没し、基準方向Aに延びる長孔66が設けられる。可動片37は、着脱自在に設けられるボルト部材67が螺通され、ボルト部材67が長孔66に嵌り込む。これによって可動片37を基準方向Aに変位自在にしたうえで、可動片37がスリーブ部材60まわりに回転することを防止するとともに、組立、分解時に可動片37が脱落することを防止することができる。
【0067】
またパッド保持軸5の基準方向他方A2の端部には、残余の部分に対して垂直方向Bに突出する突出片68が設けられる。また突出片68とスリーブ部材60との間には、可撓性および弾発性を有する材料、たとえばゴムなどから成る衝撃吸収部材69が配置される。
【0068】
図10は、自然状態における挟持孔62付近を拡大して示す断面図であり、図11は、外力が与えられた状態における挟持孔62付近を拡大して示す断面図である。挟持球63の直径D9は、挟持孔62の基準方向長さD8よりも小さく、スリーブ部材5の厚み方向寸法D10よりも大きく形成される。また挟持球63がパッド保持軸5に当接した状態で、スリーブ部材60から突出する垂直方向Bの寸法D12は、スリーブ部材60と挟持片61との間の垂直方向Bの隙間D13よりも大きく、スリーブ部材60と可動片37との間の垂直方向Bの隙間D11よりも小さい。
【0069】
また挟持片61は、基準方向他方A2に進むにつれて、スリーブ部材60から半径方向に遠ざかるように傾斜する傾斜面70が基準方向他端部61aに設けられる。傾斜面70は、挟持孔62に臨み、自然状態で挟持球63に当接する。
【0070】
図10に示すように、自然状態では挟持片61は、第2圧縮コイルばね38によって、基準方向他方A2に向かう外力F1を与えられている。このとき挟持片61の傾斜面70が挟持球63に当接することで、基準方向他方A2に向かうとともに、パッド保持軸5に向かう外力F2を挟持球63に与える。
【0071】
挟持球63は、挟持片61から外力F2が与えられて、垂直方向Bにパッド保持軸5を押圧する外力F3を与えるとともに、基準方向Aにスリーブ部材60を押圧する外力F4を与える。挟持球63に押圧されたパッド保持軸5は、挟持球63とパッド保持軸5との間で摩擦抵抗力が生じる。これによってパッド保持軸5の基準方向Aの変位移動が阻止される。
【0072】
挟持球63および挟持孔61は、複数たとえば、パッド保持軸5の周方向に等間隔に3つ設けられる。これによって、複数の挟持球63が協働してパッド保持軸5を挟持し、より確実にパッド保持軸5の基準方向Aの変位移動が阻止される。
【0073】
また図11に示すように、上述したロック用駆動モータ47を駆動して押圧部材52を基準方向他方A2に変位駆動すると、押圧部材52から可動片37に基準方向一方A1に向かう外力F5が与えられる。押圧部材52は、第2圧縮コイルばね38から与えられるばね力F1に抗して、可動片37を基準方向一方A1に押圧する。可動片37および挟持片61は、基準方向一方A1に変位する。
【0074】
これによって、挟持片61と挟持球63との当接状態が解除されて、パッド保持軸5は、挟持球63から垂直方向Bに押付ける力F3を受けることがなく、パッド保持軸5は、基準方向Aの変位が許容される。このように押圧部材52を変位駆動することによって、各パッド保持軸5の変位状態を許容および阻止する状態にそれぞれ同時に切り換えることができる。このように機械的に許容時容態を切り換えることによって、可動状態切換機構6を軽量化および小型化することができる。
【0075】
また、把持装置1は、パッド保持軸5の変位阻止状態および変位許容状態を検出するパッド保持軸状態検出手段71を有する。パッド保持軸状態検出手段71は、押圧部材52に当接するベアリング50の端面に対向して設けられる偏心体位置センサ72a,72bと、固定部材71と偏心体位置センサ72a,72bとを連結する取付部材73とを含む。
【0076】
偏心体位置センサ72a,72bは、2つ設けられて、ロック用駆動モータ47の回転軸47aの回転軸線を挟んで両側に配置される。偏心体位置センサ72a,72bは、ベアリング50の角変位状態を検出する。ベアリング50の位置を検出することによって、パッド保持軸5の変位状態を知ることができる。
偏心体位置センサ72a,72bは、ベアリング50の位置を検出すればよく、種々のセンサによって実現される。たとえば簡単な近接センサやリミットスイッチなどによって実現可能である。
【0077】
また図12に示すように、把持装置1は、パッド用圧力制御部58と、パッド用圧力センサ86とを含む。パッド用圧力制御部58は、真空ポンプ40と吸着パッド4との間に設けられ、吸着パッド内の圧力を制御する。またパッド用圧力センサ86は、吸着パッド4内の圧力を検出する。たとえばパッド用圧力制御部58は、圧力を調整するための電磁制御弁を備える。
【0078】
また把持装置1を変位駆動する変位手段である多関節ロボットのロボットアーム2は、収容されるワーク10と把持装置1の予め定められる基準位置との位置関係を検出するワーク検出装置82が設けられる。
【0079】
ワーク検出装置82は、たとえばCCDカメラなどを用いて得られるワーク10の画像に基づいて、ロボットアーム2の基準位置と、ワーク10の挿通孔11などとの相対的な位置および姿勢を3次元的に検出する。
【0080】
図12は、把持装置1の電気的構成を示すブロック図である。把持装置1は、制御手段80を有する。制御手段80は、入力部から与えられる情報に基づいて、把持装置1の各駆動部を駆動する。さらに本実施の形態では、制御手段80は、ワーク検出装置82によってワーク10とロボットアーム2との位置関係を与えられて、ロボットアーム2を駆動するアーム駆動手段81を制御する。また制御手段80は、アーム用エンコーダ301によるエンコーダ値に基づいて、アーム駆動手段81を制御する。
【0081】
上述したように把持装置1は、駆動部として爪部材駆動手段13と、チャック体駆動モータ16と、ロック用駆動モータ47と、パッド用圧力制御部58とを有する。また把持装置1は、入力部としてチャック用センサ85と、エンコーダ39と、偏心体位置センサ72a,72bと、パッド用圧力センサ86とを有する。
【0082】
ワーク検出装置82は、ワーク10の位置とロボットアーム2との位置関係を制御手段80に知らせる。制御手段80は、ワーク検出装置82から与えられた情報に基づいて、アーム先端部2aの移動量を演算し、ロボットアーム2を3次元的に変位駆動する。
【0083】
またチャック用センサ85は、各爪部材9がワーク10の内周面30に当接したことを制御手段80に知らせる。制御手段80は、チャック用センサ85から与えられた情報に基づいて、爪部材9がワーク10に当接したか否かを判断する。爪部材駆動手段13は、制御手段80から指令を受けて、各爪部材9を互いに近接および離反する方向に変位駆動する。
【0084】
エンコーダ39は、チャック体駆動モータ16の回転軸16aの回転量を検出し、その回転量を制御手段80に知らせる。制御手段80は、エンコーダ39から与えられた情報に基づいて、チャック体7の位置を演算する。また制御手段80は、チャック体7の移動すべき量をチャック体駆動モータ16に与える。チャック体駆動モータ16は、制御手段80からの指令を受けて、チャック体7を基準方向一方A1および他方A2に変位駆動する。
【0085】
偏心体位置センサ72a,72bは、ベアリング50の角変位位置を検出し、角変位位置を制御手段80に知らせる。制御手段80は、偏心体位置センサ72a,72bから与えられた情報に基づいて、パッド保持軸5の変位状態を判断する。ロック用駆動モータ47は、制御手段80からの指令を受けて、その回転軸47aを一方向および他方向に角変位させて、パッド保持軸5の変位状態を切換える。
【0086】
またパッド用圧力センサ86は、吸着パッド4内の圧力を検出して制御手段80に知らせる。制御手段80は、パッド用圧力センサ86から与えられた情報に基づいて、吸着パッド4とワーク10とが吸着したか否かを判断する。吸着パッド駆動手段となるパッド用圧力制御部58は、制御手段80から指令を受けて、吸着パッド内の空気を吸引して吸着状態にするとともに吸着パッド内に空気を供給して吸着状態を解除する。
【0087】
図13は、制御手段80の構成を示すブロック図である。制御手段80は、たとえばロボットコントローラによって実現される。制御手段80は、ROM(
Read Only Memory)91と、CPU(Central Processing Unit)92と、RAM(Random Access Memory)93と、インターフェース94と、ティーチペンダント95とを含む。
【0088】
ROM91は、予め実行する動作プログラムが記憶される記憶手段である。またCPU92は、ROM91と、ROMに記憶される動作プログラムを実行し、必要な指令を導出する。インターフェース94は、各入力部85,39,72a,72b,86,301およびワーク検出装置82から与えられる情報およびCPU92が導出した情報を記憶する。入力部には、アーム用エンコーダ301も含む。インターフェース94は、各入力部85,39,72a,72b,86およびワーク検出装置82から与えられる情報をCPU92、ROM91およびRAM93に与えるとともに、CPU92によって導出された指令を各出力部83,16,47,85およびアーム駆動手段81に知らせる。ティーチングペンダント101は、ロボットアームの位置を作業者が入力するためなどの教示手段であって、ロボットアームにワーク10が収容される収容位置、ワーク10を移動させる移動先位置などを作業者がロボットに教示することができる。
【0089】
図14は、ワーク10の収容状態を説明するための図である。図14(1)は、ワーク10がフック96に吊られた第1の収容状態を示す。フック96は、フック支持体95に支持され、フック支持体95は、床から上方に離れた位置に設けられる。ワーク10は、その一端部がフック96に係止され、水平方向に揺動自在に支持される。
【0090】
図14(2)は、ワーク10がラック97に収容された第2の収容状態を示す。ラック97は、複数のワーク10を予め定められる姿勢に保った状態で収容可能な収容体である。ラック97は、ワーク10の形状に応じて形成される。ラック97に収容される各ワーク10は、同じ姿勢に保たれる。
【0091】
図14(3)は、ワーク10が複数枚重ねられてガイド体98に案内されて収容される第3の収容状態を示す。ガイド体98は、各ワーク10を同じ姿勢に保って案内するとともに、各ワーク10を重ねた状態で案内する収容体である。ガイド体98に案内される各ワーク10は、互いに重なり合って、同じ姿勢に保たれる。
【0092】
図14(4)は、複数のワーク10が収容箱99に乱雑に積載された第5の収容状態を示す。収容箱99は、各ワーク10を複数収容する収容体であって、ワーク10よりも十分大きな容積を有する。収容箱99に収容される各ワーク10は、不規則に収容される。言換えると各ワーク10は、互いに姿勢がそろっておらず、不安定な状態で収容される。
【0093】
図15は、把持装置1による第1の把持動作を示す図であり、図16は、第1の把持動作における制御手段80の動作を示すフローチャートである。ワーク10が図14(2)に示すラック97および図14(3)に示すようなガイド体98に収容されて、その姿勢が安定した状態で保持される場合、把持装置1は、第1の把持動作を行う。
【0094】
ステップa0では、制御手段80が、収容される各ワーク10の収容状態および収容位置の把持動作を行うために必要な情報を、予め教示しておいた位置情報およびワーク検出装置82からの情報から取得する。制御手段80は、把持動作を行うために必要な情報を取得し、把持動作を開始する命令が与えられるとステップa1に進み、把持動作を開始する。
【0095】
ステップa1では、制御手段80がアーム駆動手段81に指令を与え、把持装置1を、把持すべきワーク10に対して基準方向他方A2側に離れた把持準備位置に移動させる。このとき制御手段80は、挿通孔11の中心軸線と、チャック体7の中心軸線Lとが同軸となるようにアーム駆動手段81を制御する。アーム駆動手段81に設けられるエンコーダによって、把持装置1が把持準備位置に移動したことを示す情報が与えられると、ステップa2に進む。
【0096】
ステップa2では、制御手段80が、チャック体駆動モータ16に指令を与えて、チャック体7を吸着パッド4に対して基準方向一方A1に移動させる。移動が完了した状態で吸着パッド4は、チャック体7に対して基準方向Aに同じ位置かまたは基準方向一方A1に突出した位置に配置される。
【0097】
また、ロック用駆動モータ47に指令を与える。指令を与えられたロック用駆動モータ47は、偏心回転体49を角変位させて、押圧部材52によって可動片37を押圧する。これによって吸着パッド4の基準方向Aの移動が許容される状態、いわゆるフローティング状態に保つ。
【0098】
制御手段80は、チャック体駆動モータ16に設けられるエンコーダ39によって、チャック体7の爪部材9が吸着パッド4よりも基準方向他方A2側であることを示す情報が与えられる。また制御手段80は、偏心体位置センサ72a,72bによって、吸着パッド4がフローティング状態であることを示す情報が与えられる。このような2つの情報が制御手段80に与えられると、ステップa3に進む。
【0099】
ステップa3では、図15(1)に示すように、制御手段80がアーム駆動手段81に指令を与え、把持装置1を、予め定める速度でワーク10に向かって基準方向Aに移動させる。このときアーム駆動手段81は、把持準備位置に移動する速度よりも、低速度で把持装置1を変位駆動する。把持装置1がワーク10に向かって移動すると、図15(2)に示すように、各吸着パッド4がワーク10の基準方向他方側の一表面10aに当接する。このときフローティング状態でワーク10に向かうので、各吸着パッド4は、ワーク10の外形形状に倣って基準方向Aに変位する。これと同時に各爪部材9は、ワーク10の挿通孔11に挿通する。制御手段80は、アーム駆動手段81に設けられるアーム用エンコーダ301によって、各吸着パッド4がワーク10の一表面10aに当接したことを示す情報が与えられると、ステップa4に進む。
【0100】
ステップa4では、制御手段80が、爪部材駆動手段13に指令を与え、爪部材駆動手段13によって、各爪部材9を互いに離反する方向に変位駆動させる。これによって各爪部材9は、ワーク10の挿通孔11に臨む内周面30に当接し、ワーク10を確実に把持することができる。ワーク10は、把持時に変位し、ロボットに対して位置合わせされる。制御手段80は、チャック用センサ85によって、各爪部材9がワーク10の内周面30に当接したことを示す情報が与えられると、ステップa5に進む。
【0101】
ステップa5では、制御手段80が、パッド用圧力制御部85に指令を与え、パッド内の流体を吸引して、各吸着パッド4とワーク10の一表面10aとを吸着させる。制御手段80は、パッド用圧力センサ86によって、吸着パッド内の圧力が予め定める圧力となることを示す情報が与えられると、吸着パッド4とワーク10とが吸着されたことを判断し、ステップa6に進む。
【0102】
ステップa6では、制御手段80が、ロック用駆動モータ47に指令を与える。指令を与えられたロック用駆動モータ47は、偏心回転体49を角変位させて、押圧部材52による可動片37の押圧を解除する。これによって吸着パッド4の基準方向Aの移動が阻止される状態、いわゆるロック状態に保つ。各吸着パッド4は、ワーク10の一表面10aの外形形状に倣って変位した状態で変位が阻止されることで、収容状態におけるワーク10の姿勢を保って把持することができる。制御手段80は、偏心体位置センサ72a,72bによって、吸着パッド4がロック状態であることを示す情報が与えられると、ステップa7に進む。
【0103】
ステップa7では、制御手段80の把持動作を終了する。また、この状態で制御手段80がアーム駆動手段81に指令を与えることによって、把持したワーク10を、予め定める移動経路に沿って移動させることができる。
【0104】
図17は、ワーク10の特殊な収容状態を示す断面図である。図17(1)は、重なり合う一方のワーク10と重なり合う他方のワーク10との間に基準方向Aに十分な隙間がない収容状態を示す。図17(2)は、ワーク10と、そのワーク10を保持する収容体とが接している収容状態を示す。このような収容状態であっては、ワーク10の軸線方向一方側に隙間がなく、第1の把持動作では爪部材9をワーク10の挿通孔11に十分に挿通させることができないので、制御手段80は、後述する第2の把持動作を行う。
【0105】
図18は、把持装置1による第2の把持動作を示す図であり、図19は、第2の把持動作における制御手段80の動作を示すフローチャートである。
【0106】
制御手段80は、ステップb0〜b1で、前述したステップa0〜a1と同様の動作を行い、ステップb2に進む。ステップb2では、制御手段80が、チャック体駆動モータ16に指令を与え、吸着パッド4よりも基準方向他方A2にチャック体7を移動させて保持する。これによって吸着パッド4がチャック体7よりも基準方向一方A1に突出した状態となる。また制御手段80は、吸着パッド4をフローティング状態に保ち、ステップb3に進む。ステップb3では、前述したステップa3と同様の動作を行い、吸着パッド4がワーク10に当接し、ステップb4に進む。ステップb4では、前述したステップa5と同様の動作を行い、吸着パッド4とワーク10とを吸着させ、ステップb5に進む。
【0107】
ステップb5では、前述したステップa6と同様の動作を行い、各吸着パッド4を、ワーク10の一表面10aの外形形状に倣って変位した状態でロックする。制御手段80は、偏心体位置センサ72a,72bによって、吸着パッド4がロック状態であることを示す情報が与えられると、ステップb6に進む。
【0108】
ステップb6では、図18(1)に示すように、制御手段80が、アーム駆動手段81に指令を与える。これによって把持装置1は、基準方向他方A2に沿って変位駆動される。把持装置1に吸着されたワーク10もまた、基準方向他方A2に向かって変位移動され、把持すべきワーク10の基準方向一方A1側に空間が形成される。制御手段80は、予め定める距離だけ把持装置1を変位すると、ステップb7に進む。
【0109】
ステップb7では、図18(2)に示すように、制御手段80が、チャック体駆動モータ16に指令を与えて、チャック体7を基準方向一方A1に移動させる。このとき、チャック体7の各爪部材9は、爪部材駆動手段13によって互いに近接した位置に配置されている。
【0110】
各爪部材9は、基準方向A1に移動することによって、ワーク10の挿通孔11に挿通する。ワーク10を収容位置から移動することで、爪部材9のワークへの挿通が残余のワーク10および収容箱などによって阻害されることがない。アーム駆動手段81に設けられるエンコーダ39およびワーク検出装置82などによって、各爪部材9が挿通孔11に通過したことを示す情報が与えられると、ステップb8に進む。
【0111】
ステップb8では、制御手段80が、爪部材駆動手段13に指令を与え、各爪部材9を互いに離反する方向に変位駆動させる。これによって各爪部材9は、ワーク10の挿通孔11に臨む内周面30に当接し、ワーク10をより確実に把持することができる。制御手段80は、チャック用センサ85によって、各爪部材9がワーク10の内周面30に当接したことを示す情報が与えられると、その状態を保ち、ステップb9に進む。
【0112】
ステップb9では、制御手段80の把持動作を終了する。また、この状態で制御手段80がアーム駆動手段81に指令を与えることによって、ワーク10を予め定める移動経路に沿って移動させることができる。
【0113】
図20は、把持装置1による第3の把持動作を示す図であり、図21は、第3の把持動作における制御手段80の動作を示すフローチャートである。フック96に吊りさげられる場合および収容箱99に乱雑に積載される場合など、収容時の姿勢が不安定な場合においては、制御手段80は、第3の把持動作を行う。
【0114】
第3の把持動作は、第1の把持動作と類似している。制御装置80は、図17に示すステップa0と同様の動作であるステップc0の動作を行う。
【0115】
ステップc1において、制御手段80が、把持装置1を把持すべきワーク10に対して基準方向他方A2側に離れた把持準備位置に移動させる。アーム駆動手段81に設けられるエンコーダ39およびワーク検出装置82などによって、把持装置1が把持準備位置に移動したことを示す情報が与えられると、ステップc2に進む。
【0116】
ステップc2では、図20(1)に示すように、制御手段80が、チャック体駆動モータ16に指令を与えて、吸着パッド4よりも基準方向一方A1にチャック体7を移動させて保持する。これによって吸着パッド4からチャック体7が基準方向一方A1に突出した状態となる。
【0117】
制御手段80は、チャック体駆動モータ16に設けられるエンコーダ39によって、各爪部材9が吸着パッド4よりも基準方向一方A1側であることを示す情報が与えられる。また制御手段80は、偏心体位置センサ72a,72bによって、吸着パッド4がフローティング状態であることを示す情報が与えられる。このような2つの情報が制御手段80に与えられると、ステップc3に進む。
【0118】
ステップc3では、図20(2)に示すように、制御手段80がアーム駆動手段81に指令を与え、把持装置1を、予め定める速度で把持装置1に向かって基準方向Aに移動させる。このときアーム駆動手段81は、把持準備位置に移動する速度よりも、低速度で把持装置1を変位駆動する。
【0119】
チャック体7の各爪部材9は、爪部材駆動手段13によって互いに近接した位置に変位駆動されており、把持装置1がワーク10に向かって移動すると、各爪部材9がワーク10の挿通孔11に挿通する。アーム駆動手段81に設けられるエンコーダ39およびワーク検出装置82などによって、各爪部材9が挿通孔11に挿通したことを示す情報が与えられると、ステップc4に進む。
【0120】
ステップc4では、制御手段80が、ステップa4と同様の動作を行い、爪部材9の当接面35をワーク10の内周面30に当接する。また、各爪部材9の支持面34をワーク10の基準方向一方A1側に配置する。制御手段80は、チャック用センサ85から、爪部材9が内周面30に当接したことを示す情報が与えられると、ステップc5に進む。
【0121】
ステップc5では、図20(3)に示すように、制御手段80がアーム駆動手段81およびチャック体駆動モータ16に指令を与える。把持装置1を、予め定める速度でワーク10に向かって基準方向一方A1に移動させるとともに、チャック体7を予め定める速度で基準方向他方A2に移動させる。
【0122】
このときアーム駆動手段81は、把持準備位置に移動する速度よりも、低速度で把持装置1を変位駆動する。把持装置1がワーク10に向かって移動すると、各吸着パッド4がワーク10の基準方向他方側の表面10aを押付ける。
【0123】
ワーク10は、その基準方向一方A1側の表面10bと爪部材の支持面34とが当接して、爪部材34よりも基準方向一方A1の移動が阻止されて支持される。したがって、吸着パッド4がワーク10を基準方向一方A1に押付けたとしても、ワーク10が爪部材34よりも基準方向一方A1に変位することが防止される。
【0124】
したがって上述したように把持装置1とチャック体7とを連動して互いに反対方向に移動させることによって、ステップc4とステップc5の終了時において、収容されるワーク10の姿勢を変えることなく、各爪部材9の支持面34と吸着パッド4とでワーク10を挟持することができる。また、アーム駆動手段81とチャック体駆動モータ16を同一の制御手段で制御することによってステップc4からc5への途中経過においてもワークの姿勢を変えることなく把持できる。アーム駆動手段81に設けられるエンコーダによって、吸着パッド4がワーク10に当接したことを示す情報が与えられると、ステップc6に進む。
【0125】
ステップc6では、ステップa5と同様の動作を行い、ワーク10と吸着パッド4とを吸着させ、ステップc7に進む。ステップc7では、ステップa6と同様の動作を行い、吸着パッド4をロック状態に保ち、ステップc8に進んで、制御手段80の把持動作を終了する。
【0126】
以上のように、種々の収容状態に収容されたワーク10を把持した把持装置1は、アーム駆動手段81によって、予め定める移動経路を通過して、把持したワーク10の移動先位置に向かって変位駆動される。
【0127】
以上のような把持装置1の動作は、本発明の一例であってワーク10の形状および収容状態によって、他の把持動作を行ってもよい。たとえば図22は、他の把持動作を示す図である。たとえばワーク10が、挿通孔11が形成される挿通孔部分と、チャック体4によって吸着される吸着面とを有し、吸着面が挿通孔部分に対して陥没している場合がある。この場合、図22(1)に示すように、チャック体4よりも吸着パッド4を基準方向一方A1に突出した状態にして、図22(2)に示すように、保持装置1を基準方向A1に移動させてワーク10に吸着パッド4を押付けて、吸着パッド4をワーク10に沿わせて変位させ、次に、図22(3)に示すように、ワーク10を変位させずに、チャック体4を変位させてワーク10を保持してもよい。すなわち、チャック体4と吸着パット4の相対位置は、保持するワークの形状に応じて、ワーク10を保持しやすい適切な位置に設定される。
【0128】
図23は、ワーク10を移動先に配置した状態を示す断面図である。図24は、把持したワーク10を離脱する動作を示すフローチャートである。把持装置1は、把持したワーク10を離脱可能に設けられる。把持装置1は、ワーク10を離脱する場合には、離脱動作を行う。
【0129】
まず、ステップd0では、制御手段80が、把持したワーク10を移動すべき移動先位置の情報を取得したうえで、上述する把持動作が行われて各吸着パッド4にワーク10が吸着されると、ステップd1に進み、ワーク10の離脱動作を開始する。
【0130】
制御手段80は、アーム駆動手段81に指令を与え、ワーク10を移動すべき移動先位置に対して、基準方向他方A2側に離れた離脱準備位置に、把持装置1を移動させる。把持装置1が離脱準備位置に移動すると、ステップd2に進む。
【0131】
ステップd2では、制御手段80がアーム駆動手段81に指令を与え、把持装置1を、予め定める速度で移動先位置に向かって基準方向Aに移動させる。このときアーム駆動手段81は、離脱準備位置に達するまでの移動速度よりも、低速度で把持装置1を変位駆動する。図23(1)に示すように、把持装置1が移動先位置に移動し、ワーク10が移動先の収容体102に当接すると、ステップd3に進む。
【0132】
ステップd3では、制御手段80が、爪部材駆動手段13に指令を与え、各爪部材9を互いに近接する方向に変位駆動させる。これによって各爪部材9は、ワーク10の内周面30から離れる。制御手段80は、チャック用センサ85によって、ワーク10の内周面30から十分離れたことを確認すると、ステップd4に進む。
【0133】
ステップd4では、制御手段80は、チャック体駆動モータ16に指令を与えて、チャック体7を基準方向他方A2に移動させる。制御手段80は、エンコーダ39によって、各爪部材9がワーク10の挿通孔11から離脱したことを確認する。
【0134】
ステップd5では、制御手段80が、パッド用圧力制御部85に指令を与え、吸着パッド4とワーク10との吸着状態を解除する。吸着状態を解除すると、ステップd6に進む。なおステップd4とステップd5とは、同時に行ってもよい。同時に行うことによって短時間で動作を行うことができる。
【0135】
ステップd6では、制御手段80が、アーム駆動手段に指令を与え、把持装置1をワークから退避させ、退避が完了するとステップd7に進み動作を終了する。
【0136】
なお、ワーク10を移動先位置に配置するにあたって、図23(2)に示すように、たとえば収容体側に位置合わせ用のピン300がある場合、各爪部材9と収容体102とが接触するなどして、各爪部材9がワーク10の配置動作を阻害するおそれがあると、ワーク10を収容体に当接させる前に、各爪部材9をワーク体7の挿通孔11から離脱させておいてもよい。
【0137】
以上のように、本実施の形態の把持装置1によれば、ワーク10に形成される凹所に対して基準方向に交差する方向に爪部材9を係止させることで、把持したワーク10の位置ずれを防止することができる。また、チャック体7を基準方向Aに変位駆動することができるので、ワーク10の形状が異なる場合であっても爪部材9をワーク10に確実に係止させることができ、汎用性を向上させることができる。
【0138】
また爪部材9は、爪部材駆動手段13によって、垂直方向Bに互いに変位駆動される。各爪部材9を垂直方向Bに変位駆動することで、ワーク10の挿通孔11の形状が異なる場合であっても、各爪部材9を確実にワーク10の内周面30に当接させることができる。これによって、ワーク10の挿通孔11の形状にかかわらず各爪部材9によって、ワーク10を係止することができ、汎用性を向上させることができる。
【0139】
また各爪部材9は、L字状に形成されることで、ワーク10の吸着パッド4と反対側であって基準方向一方A1側の表面10bに当接して、ワーク10を支持することができる。ワーク10の基準方向一方側A1を支持することによって、ワーク10が把持装置1から基準方向一方に脱落することを防止することができる。また、ワーク10の挿通孔11に挿通した各爪部材9を互いに離反させることによって、ワーク10に各爪部材9を押付けることができ、ワーク10をさらに確実に把持することができる。このようにワーク10を確実に把持することによって、ワーク10が把持装置1からずれることを防止して、把持装置1とともにワーク10を高速で搬送することができる。
【0140】
また吸着パッド4が基準方向Aに変位自在に設けられることによって、ワーク10の外形形状が異なる場合であっても、その外形形状に倣って吸着パッド4を変位させることができる。これによって吸着パッドを確実にワーク10に当接させることができる。さらにワーク10に倣って吸着パッド4を変位させた後、吸着パッド4をロック状態に保持することで、収容されたワーク10の姿勢を保って、ワーク10を保持することができる。たとえば収容体に収容されるワーク10を把持して、次の加工を行うための治具に押付けて取り付ける場合、吸着パッド4をロック状態にして、ワーク10の姿勢を保った状態で、治具に押し込むことができ、ワーク10を確実に治具に押付けることができる。
【0141】
また、チャック体駆動モータ16によって、吸着パッド4に対して各爪部材9を基準方向Aに突出させることができるとともに、吸着パッド4に対して各爪部材9を基準方向Aに没入させることができる。各爪部材9を基準方向Aに移動させることで、ワーク10を把持する把持動作およびワーク10を離脱する離脱動作を各爪部材9が阻害することを防止して、ワーク10の把持および離脱動作を確実に行うことができる。たとえば、把持したワーク10を治具に装着するにあたって、各爪部材9が治具への装着を阻害する場合には、爪部材9を移動させて爪部材9によるワーク10の係止を解除してから、ワーク10を治具に押し込むことができる。特に、本実施の形態に示すように、各爪部材9の先端部分31がワーク10の厚み方向に突出する場合であっても、各爪部材9が変位駆動されることによって、把持装置1の把持動作および離脱動作の障害となることを防いで、ワーク10の確実な把持を行うことができる。
【0142】
また、ワーク10がフック96に吊り下げられた場合、乱雑に積載された状態など収容時のワーク10の姿勢が不安定な場合、各爪部材9を移動させて、各吸着パッド4がワーク10に当接するよりも先に、吸着パッド4と反対側のワーク10の表面部を各爪部材9によって支持する。この後、吸着パッド4をワーク10に対して基準方向一方A1に押付けることで、収容時のワーク10の姿勢を保って把持することができる。
【0143】
また図3に示すように、押圧部材52は、各第1機構部6aに設けられる複数の可動片37に対してともに当接する板状に設けられる。したがって1つのロック用駆動モータ47によって各パッド保持軸5のフローティング状態と変位阻止状態とを切り換えることができ、把持装置1を小型化および簡略化することができる。
【0144】
また、押圧部材52を変位自在に支持する保持体53が複数設けられることによって、押圧部材52を基準方向Aに対して垂直に保ち、パッド保持軸5の変位阻止状態および変位許容状態の切換不良を防ぐことができる。また衝撃吸収部材69が配置されることによって、変位阻止状態が解除された場合であっても、パッド保持軸5が急激に軸線方向一方A1側に移動したときの衝撃を和らげることができる。
【0145】
上述した本発明の実施の形態は、発明の一例示に過ぎず、発明の範囲内において、構成を変更することができる。たとえば吸着手段として吸着パッド4について示したが、吸着手段は、吸着パッド4以外の構成であってもよい。たとえばワーク10が磁性を有する場合、磁気吸引力を発生して、ワーク10を磁気吸着する吸着手段を有していてもよい。この場合、真空ポンプなどの空気吸引手段を必要とせず、構成を簡略化することができる。
【0146】
また基準方向Aは、鉛直方向でなくてもよく、任意の一方向であってもよい。すなわち、多関節ロボット2によって把持装置1の位置および姿勢が変えられて、把持装置1がワーク10を把持する方向を任意に設定することができる。また、多関節ロボット2によって、把持装置1を変位駆動するとしたが、多関節ロボット2以外の他の駆動装置であってもよい。
【0147】
また多関節ロボット2に設けられるロボット用制御手段が、把持装置1の制御手段80とは別に設けられてもよい。把持装置1の制御手段80は、アーム駆動手段81を制御しなくてもよい。この場合、ロボット用制御手段は、アーム駆動部を制御し、把持装置1の制御手段80は、ロボット用制御手段から与えられる把持指令に応じて、上述した把持動作および離脱動作を行う。
【0148】
また、把持するワーク10の形状または重量のいずれかが大きい場合には、本発明の把持装置1を備えた、複数の多関節ロボット2を用いてワーク10を把持してもよい。このように本発明の把持装置1を複数備えることによって、大型形状または大きい重量のワークをバランスよく保持できる。また各爪部材9は、ワーク10の凹所33に嵌り込む形状であればよく、把持可能なワーク10は、挿通孔11が形成されるワーク10に限定するものではない。
【0149】
また可動状態切換機構6についても、上述した構成でなくてもよく、圧力エネルギを用いてパッド保持軸5を挟持してもよい。たとえば、パッド保持軸5を周方向に覆うリング状変形体を用いてもよい。リング状変形体は、内部空間に空気が供給されることによって膨張する。このようなリング状変形体を膨張させてパッド保持軸5を圧迫することで、パッド保持軸5を固定してもよい。
【0150】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の本発明によれば、係止片が基準方向に変位駆動されることで、ワークの形状および把持前の収容状態にかかわらず、位置ずれを防止してワークを把持することができる。ワークの形状および収容状態ごとに吸着手段および係止片を変更する必要がなく、汎用性を向上することができる。したがって、把持するワークごとに異なる把持装置を設ける必要がなく、設備費を低減することができる。またワークの変更による把持装置の調整を短時間で行うことができ、生産性を向上することができる。
【0151】
また請求項2記載の本発明によれば、各係止片を互いに離反する方向に変位させることによって、各係止片を基準方向に交差するワークの表面に複数の係止片を当接させることができる。これによってワークの形状が異なる場合であっても、複数の係止片をワークの表面に当接させることができ、基体に対して把持したワークがずれることを確実に防止することができる。これによって汎用性をさらに向上することができる。
【0152】
また請求項3記載の本発明によれば、係止片が吸着手段と反対側でワークを支持した状態で、吸着手段が基準方向にワークを押付けることで、ワークが変位することなく、保持されるワークの姿勢を保ってワークを把持することができる。したがって収容されるワークの姿勢が不安定な場合であっても、収容時の姿勢を保った状態で確実にワークを保持することができる。
【0153】
また請求項4記載の本発明によれば、流体を吸引してワークを吸着手段に引きつけることによって、ワークの材質にかかわらず、ワークを把持することができる。これによってワークの材質にかかわらず、ワークを把持することができる。
【0154】
また請求項5記載の本発明によれば、磁気吸引力によって、ワークを把持することによって、流体を吸引するための真空ポンプを必要とせず、設備を単純化することができる。
【0155】
また請求項6記載の本発明によれば、制御手段が検出装置の検出結果に基づいてアーム駆動手段を制御し、把持装置の基体をロボットアームによって変位駆動する。これによってワークに予め設けられる当接すべき位置に係止片を容易に当接させることができる。またアーム駆動手段による基体の移動と、係止片駆動手段による係止片の移動とを連動して動作させることができる。
【0156】
また請求項7記載の本発明によれば、アーム駆動手段による把持装置の移動と、係止片駆動手段による係止片の移動とを連動して行わせることができ、ワークが不安定な場合であっても、ワークを容易に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である把持装置1を示す断面図である。
【図2】把持装置1を示す側面図である。
【図3】把持装置1を示す平面図である。
【図4】把持装置1を示す底面図である。
【図5】把持装置1のチャック体駆動機構8を拡大して示す断面図である。
【図6】チャック体7の爪部材9を拡大して示す正面図である。
【図7】吸着パッド4を示す断面図である。
【図8】把持装置1の可動状態切換機構6を拡大して示す断面図である。
【図9】把持装置1の可動片機構6aを拡大して示す断面図である。
【図10】自然状態における挟持孔62付近を拡大して示す断面図である。
【図11】外力が与えられた状態における挟持孔62付近を拡大して示す断面図である。
【図12】把持装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図13】制御装置80の構成を示すブロック図である。
【図14】ワーク10の収容状態を説明するための図である。
【図15】把持装置1による第1の把持動作を示す図である。
【図16】第1の把持動作における制御手段80の動作を示すフローチャートである。
【図17】ワーク10の特殊な収容状態を示す断面図である。
【図18】把持装置1による第2の把持動作を示す図である。
【図19】第2の把持動作における制御手段80の動作を示すフローチャートである。
【図20】把持相違1による第3の把持動作を示す図である。
【図21】第3野把持動作における制御装置80の動作を示すフローチャートである。
【図22】他の把持動作を示す図である。
【図23】ワーク10を移動先に配置した状態を示す断面図である。
【図24】把持したワークを離脱する動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 把持装置
2 多関節ロボット
3 基体
4 吸着パッド
5 パッド保持軸
6 可動状態切換機構
7 チャック体
8 チャック体駆動機構
9 爪部材
10 ワーク
11 挿通孔
13 爪部材駆動手段
16 チャック体駆動モータ
71 固定軸状態検出手段
80 制御手段

Claims (7)

  1. ワークを把持する把持装置であって、
    基体と、
    基体に対して、予め定める基準方向に変位自在に設けられ、ワークの一表面を吸着する吸着手段と、
    基体に対して基準方向に変位自在に設けられ、ワークを基準方向と交差する方向に係止する係止片と、
    係止片を基準方向に変位駆動する係止片駆動手段とを備えることを特徴とする把持装置。
  2. 前記基準方向と交差する方向へ相対的に変位自在である複数の係止片が設けられ、
    係止片駆動手段は、各係止片を前記基準方向と交差する方向へ相対的に変位駆動することを特徴とする請求項1記載の把持装置。
  3. 係止片は、吸着手段が吸着するワークの一表面と反対側の他表面を支持可能に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の把持装置。
  4. 吸着手段は、可撓性および弾発性を有する材料から成り、筒状に形成される弾性部材を含み、吸引源によって弾性部材の内方の流体を吸引可能に構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の把持装置。
  5. 吸着手段は、磁気吸引力を発生することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の把持装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の把持装置と、
    把持装置の基体が固定されるロボットアームと、
    ワークとロボットアームとの位置を検出する検出手段と、
    ロボットアームを変位駆動するアーム駆動手段と、
    検出手段の検出結果に基づいて、ワークと係止片との位置を算出し、アーム駆動手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする多関節ロボット。
  7. 制御手段は、アーム駆動手段と、係止片駆動手段とを同期して制御することを特徴とする請求項6記載の多関節ロボット。
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