JP2004285406A - 水素吸蔵合金及びそれを用いたニッケル−水素電池用電極 - Google Patents

水素吸蔵合金及びそれを用いたニッケル−水素電池用電極 Download PDF

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Shigeo Hirayama
成生 平山
Koichi Numata
幸一 沼田
Shinya Kagei
慎也 蔭井
Hidetoshi Inoue
秀利 井上
Minoru Sakai
実 酒井
Takashi Okifuji
貴嗣 沖藤
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Abstract

【課題】電池性能が均質化すると共に,初期段階での活性が良好となる水素吸蔵合金及びそれを用いたニッケル−水素二次電池を提供することを課題とする。
【解決手段】CaCu型の結晶構造を有するAB型水素吸蔵合金であって、一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、MはCu,Ti,V,Cr,Znの何れか一種、4.8≦a+b+c+d≦5.4、但し、3.5≦a≦4.5、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.4、0.1≦d≦0.8、0≦e≦0.2、4.80≦a+b+c+d+e≦5.40、a〜eはいずれもMm1モルに対するモル数)で表される組成であると共に、合金中の炭素の含有量が300ppm以下、鉄の含有量が0.5重量%以下とする。これにより、初期段階での活性が良好な水素吸蔵合金を提供でき、ニッケル−二次電池の負極として用いて好適なものとなる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル−水素二次電池の負極として用いられる水素吸蔵合金及びそれを用いたニッケル−水素電池用電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
負極に水素吸蔵合金を配したニッケル−水素二次電池(以下「二次電池」という。)は、多孔質ニッケルまたは繊維状金属ニッケルに水酸化ニッケルを充填した正極と、ニッケルメッキした鉄のパンチプレートや多孔質金属ニッケル等に水素吸蔵合金粉末を導電剤、バインダー(結着剤)とともに固着した負極と、ポリプレン等で形成されたセパレーター等を有し、これらは電解液とともに鋼製容器に収納されて構成されている。
【0003】
この二次電池は従来ポータブル機器を中心に使用されていたが、近年において、電動工具や電気自動車等に使用することが提案され、大電流での放電が必要となってきた。
【0004】
また、電気自動車用や一般民生用の電池は、使用者がすぐに使用できる状態(活性な状態)にするため、二次電池製造工場において電池を組立てた後、充放電処理を多く実施する必要があり、電池製造のコスト向上につながっている。よって、充放電処理の回数を低減させて製造コストの低廉を図るために、初期段階での活性の良好な水素吸蔵合金の出現が望まれている。
【0005】
このため従来では、水素吸蔵合金中の希土類金属であるLaを77重量%以上含有させることで、高容量、サイクル寿命を良好とし、さらに微量のMgを添加することで、高効率放電、低温放電に優れた二次電池負極用合金とすることの提案がある(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−217641号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1記載の合金のように、Laが77重量%以上であると共に微量のMg(0.05重量%以下)を添加する場合には、上記Mgは揮発元素であるために、品位のコントロールが難しく、また、揮発したMgは操業上において、作業性及び装置に悪影響を及ぼすという、問題がある。また、特許文献1記載の合金では初期特性は向上するものの、寿命特性が劣化するという問題がある。また、寿命特性を向上させた合金では、初期特性(活性)が劣るものが多いという問題がある。
また、水素吸蔵合金の原料である希土類金属の溶融塩電解品は、99〜99.9%程度の品位のものが多く、FeやCのバラツキが大きい場合もある。このFeやCが電池の初期特性、出力活性を大きくばらつかせる要因となっている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、電池性能が均質化すると共に,初期段階での活性が良好となる水素吸蔵合金及びそれを用いたニッケル−水素電池用電極を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第1の発明は、CaCu型の結晶構造を有するAB型水素吸蔵合金であって、一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、MはCu,Ti,V,Cr,Znの何れか一種、4.8≦a+b+c+d≦5.4、但し、3.5≦a≦4.5、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.4、0.2≦d≦0.8、0≦e≦0.2、4.80≦a+b+c+d+e≦5.40、a〜eはいずれもMm1モルに対するモル数)で表される組成であると共に、合金中の炭素の含有量が300ppm以下、鉄の含有量が0.5重量%以下であることを特徴とする水素吸蔵合金にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記合金中の炭素の含有量が10〜300ppm、鉄の含有量が0.01〜0.5重量%であることを特徴とする水素吸蔵合金にある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、上記ミッシュメタル中のランタン(La)が30〜80重量%であることを特徴とする水素吸蔵合金にある。
【0012】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明の水素吸蔵合金を用いたことを特徴とするニッケル−水素電池用電極にある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を発明の実施形態により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
本発明の水素吸蔵合金は、一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、MはCu,Ti,V,Cr,Znの何れか一種、4.8≦a+b+c+d≦5.4、但し、3.5≦a≦4.5、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.4、0.2≦d≦0.8、0≦e≦0.2、4.80≦a+b+c+d+e≦5.40、a〜eはいずれもMm1モルに対するモル数)で表される組成であると共に、炭素の含有量が300ppm以下、鉄の含有量が0.5重量%のCaCu型の結晶構造を有するAB型の水素吸蔵合金である。
【0015】
ここで、MmはLa、Ce、Pr、Nd、Sm等の希土類系の混合物であるミッシュメタルである。上記ミッシュメタル中に含まれるランタン(La)の含有率は、水素吸蔵合金中に好ましくは80重量%以下、更に好ましくは30〜80重量%としている。
【0016】
この水素吸蔵合金において、MmNiMnAlCoの組成割合(Mm1モルに対するモル数)は、下記の関係を有するものである。
すなわち、Niの割合は3.5≦a≦4.5であり、Mnの割合は0.2≦b≦0.7であり、Alの割合は0.1≦c≦0.4であり、Coの割合は0.1≦d≦0.8であり、M(Cu,Ti,V,Cr,Znの何れか一種)の割合は0≦e≦0.2であり、かつa+b+c+d+eが4.8から5.4の範囲にある。
【0017】
このような水素吸蔵合金組成において、調合した原料を例えば誘導炉等の原料溶解手段にて溶解し、得られた合金を結晶の均質化が生じる適正な温度で熱処理を施し、機械的粉砕手段で粉砕し、所定の粒度に調整することで、そのままニッケル−水素二次電池の負極活物質として用いてもサイクル特性等の良好な電池特性が得られる。次に、各元素の組成割合について言及する。
【0018】
上記のように、Niの割合aは3.5〜4.5であり、aが3.5未満では水素吸蔵量が損なわれ、4.5を超えると微粉化や寿命特性劣化が認められ、またプラトー圧が上昇する。
【0019】
Mnの割合bは0.2〜0.7であり、bが0.2未満ではプラトー圧力が高くなり、かつ水素吸蔵量が損なわれ、0.7を超えると合金の腐食が激しくなり、合金の早期劣化が認められる。
【0020】
Alの割合cは0.1〜0.4であり、cが0.1未満では水素吸蔵合金放出圧力であるプラトー圧力が高くなり、充放電のエネルギー効率が悪くなり、0.4を超えると水素吸蔵量が少なくなる。
【0021】
Coの割合dは0.2〜0.8であり、dが0.2未満ではサイクル寿命が悪くなり、0.8を超えるとCoの割合が多くなり、コストの低減が図れない。
【0022】
Cu,Ti,V,Cr,Znの何れか一種の割合eは0〜0.2であり、eが0.2を超えると微粉化特性が損なわれる。
【0023】
一般式MmNiMnAlCoにおいて、a+b+c+d+e(以下、場合によってxと総称する)は4.8〜5.4であり、xが4.8未満では電池寿命や微粉化特性が損なわれ、xが5.4を超えた場合には、水素吸蔵特性が損なわれる。
【0024】
また、本発明では、水素吸蔵合金中の炭素(C)の含有割合を300ppm以下、好ましくは10〜300ppm、更に好ましくは10〜200ppmとしている。これは、水素吸蔵合金中の炭素の割合が10ppm未満では材料の精錬を充分にする必要があり、製造費用が嵩むので、好ましくないからである。また、水素吸蔵合金中の炭素の含有割合が300ppmを超える場合には、水素と炭素とが反応してメタンガスとなり、合金表面を被毒し、その結果水素吸蔵能力が低減し、好ましくないからである。
【0025】
また、本発明では水素吸蔵合金中の鉄の含有割合を0.5重量%以下、好ましくは0.01〜0.50重量%、更に好ましくは0.01〜0.3重量%としている。これは水素吸蔵合金中の鉄の含有量が多いと、アルカリ溶液中に溶出した鉄が水酸化物となり、水素吸蔵合金の表面を被覆する結果、抵抗が上昇して好ましくないからである。よって、鉄の添加量を0.5重量%以下とすることで、初期の放電特性を向上させるようにしている。
【0026】
本発明の水素吸蔵合金は、粗粉砕、微粉砕後、ニッケル−水素二次電池の負極活物質として用いられ、上記したような良好な電池特性を有する。また、電極材料以外には、例えばヒートポンプ等の貯蔵手段等の公知の水素吸蔵合金の部材としても用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の効果を示す好適な実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
[実施例1〜10、比較例1,2]
調合した原料を誘導炉にて溶解(溶解は不活性雰囲気中で行った。)し、その合金を1000℃以上の温度で1時間以上熱処理をして、その後冷却し、機械的手段により粉砕して、「表1」に示すMmNi4.1Mn0.4Al0.3Co0.4組成で22〜53μmの粒度の水素吸蔵合金粉を調整した。
なお、水素吸蔵合金中の炭素及び鉄の量は、原料中の炭素及び鉄含有量を計測し、「表1」の配合となるように、各々調整した。
【0029】
上記得られた水素吸蔵合金粉1gに対し、ニッケル(Ni)粉3gとポリエチレン(PE)粉末0.12gを各々秤量して添加し、混合水素吸蔵合金粉が0.3gとなるように分取し、該分取物を真空加熱処理した。
ペレットを負極とし、開放型セルを組立、KOHを注入して充放電を開始した。
【0030】
4サイクル目までは室温の条件で0.2C,120%充電と、0.2C,0.7V−Cut放電を実施した。
5サイクル目に0℃の条件で1C,120%充電と、1C,0.7V−Cut放電を実施し、初期低温放電容量とした。
【0031】
0.2C,120%充電後、2C放電時の0.1秒後の放電電圧を初期低温放電位とした。
【0032】
この結果を、「表1」に示す。
【0033】
【表1】
Figure 2004285406
【0034】
「表1」に示すように、比較例1にかかる炭素が500ppmで、鉄が0.5重量%のものの0℃、1C容量の計測結果を100とした場合、実施例1〜10にかかるものは約1.3〜2.6倍と高く、極めて良好な結果を示した。
また、比較例1にかかる炭素が500ppmで、鉄が0.5重量%のものの0℃、パルス放電の計測結果を100とした場合、実施例1〜10にかかるものは約1.1〜1.3倍と高く、極めて良好な結果を示した。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の水素吸蔵合金は、CaCu型の結晶構造を有するAB型水素吸蔵合金であって、一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、MはCu,Ti,V,Cr,Znの何れか一種、4.8≦a+b+c+d≦5.4、但し、3.5≦a≦4.5、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.4、0.1≦d≦0.8、0≦e≦0.2、4.80≦a+b+c+d+e≦5.40、a〜eはいずれもMm1モルに対するモル数)で表される組成であると共に、合金中の炭素の含有量が300ppm以下、鉄の含有量が0.5重量%以下としたので、初期段階での活性が良好な水素吸蔵合金を提供でき、ニッケル−二次電池の負極として用いて好適なものとなる。
【0036】
また、電池製造工程において、電池を組立てた後に行う充放電処理の回数を低減することができ、電池製造のコスト低廉化を図ることができる。

Claims (4)

  1. CaCu型の結晶構造を有するAB型水素吸蔵合金であって、
    一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、MはCu,Ti,V,Cr,Znの何れか一種、4.8≦a+b+c+d≦5.4、但し、3.5≦a≦4.5、0.2≦b≦0.7、0.1≦c≦0.4、0.2≦d≦0.8、0≦e≦0.2、4.80≦a+b+c+d+e≦5.40、a〜eはいずれもMm1モルに対するモル数)で表される組成であると共に、
    合金中の炭素の含有量が300ppm以下、鉄の含有量が0.5重量%以下であることを特徴とする水素吸蔵合金。
  2. 請求項1において、
    上記合金中の炭素の含有量が10〜300ppm、鉄の含有量が0.01〜0.5重量%であることを特徴とする水素吸蔵合金。
  3. 請求項1又は2において、
    上記ミッシュメタル中のランタン(La)が30〜80重量%であることを特徴とする水素吸蔵合金。
  4. 請求項1乃至3の何れか1つに記載の水素吸蔵合金を用いたことを特徴とするニッケル−水素電池用電極。
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