JP2004218017A - 水素吸蔵合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期特性が良好で、しかも電池の放電特性、特に低温ハイレート特性を向上させた水素吸蔵合金を提供すること。
【解決手段】下記一般式
MmNiaMnbAlcCodFee
(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.5、0<d<0.2、0≦e≦0.4、5.2≦a+b+c+d+e≦5.4)
で表され、かつc軸長が406.5pm以上であり、CaCu5型の結晶構造を有することを特徴とする水素吸蔵合金。
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式
MmNiaMnbAlcCodFee
(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.5、0<d<0.2、0≦e≦0.4、5.2≦a+b+c+d+e≦5.4)
で表され、かつc軸長が406.5pm以上であり、CaCu5型の結晶構造を有することを特徴とする水素吸蔵合金。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵合金に関し、詳しくは低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期活性が極めて良好で、しかも電池の放電特性に優れた水素吸蔵合金に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、ニッケル−カドミウム蓄電池に代わる高容量アルカリ蓄電池として、水素吸蔵合金を負極に用いたニッケル−水素蓄電池(二次電池)が注目されている。この水素吸蔵合金は、現在では希土類系の混合物であるMm(ミッシュメタル)とNi、Al、Mn、Coとの5元素の水素吸蔵合金が汎用されている。
【0003】
このMm−Ni−Mn−Al−Co合金は、La系のそれに比べて比較的安価な材料で負極を構成でき、サイクル寿命が長く、過充電時の発生ガスによる内圧上昇が少ない密閉型ニッケル水素蓄電池を得ることができることから、電極材料として広く用いられている。
【0004】
現在用いられているMm−Ni−Mn−Al−Co合金は、合金の微粉化を抑制してサイクル寿命を長くしているが、一般的にこの微粉化抑制のためには10重量%程度のCo(原子比で0.6〜1.0)を必要とすることが知られている。また、優れた水素吸蔵特性及び耐食性を得るためにも一定量のCoの含有は必要とされている。
【0005】
しかしながら、Coの含有率が高いとそれだけ原料コストが高くなり、原料コストの面から問題視されている。特に、電気自動車用電源(EV:Electric Vehicle)等の大型電池への適用やニッケル−水素蓄電池の更なる市場の増大に対しては、原料コストは、電極負極材料の選定において大きな割合を占め、このことが問題となっていた。
【0006】
このような問題を解決する一つの提案として、特許文献1には、Mm−Ni−Mn−Al−Co系合金の組成を特定し、特にCoを0.2〜0.4と減じた水素吸蔵合金が記載されている。この水素吸蔵合金は、水素吸蔵特性、微粉化特性に優れ、電池に用いたときに、良好な出力特性、初期特性を有し、しかも耐久性や保存性についても高い信頼性を有する。
【0007】
しかし、電気自動車用電源(EV)等の大型電池には、特許文献1に記載の水素吸蔵合金に比して、より低廉な材料が求められ、さらには初期活性が良好で、電池の放電特性、特に低温でのハイレート特性に優れた材料が求められている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−40442号公報
【0009】
従って、本発明の目的は、低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期特性が良好で、しかも電池の放電特性、特に低温ハイレート特性を向上させた水素吸蔵合金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は種々の研究を重ねた結果、従来に比べて微粉化抑制効果のあるコバルト量を低減し、その代わりに同様な効果のあるアルミニウムあるいは鉄を含有させ、かつニッケル及びマンガン量を増加させて組成を最適化することにより微粉化抑制につながることを知見し、併せてc軸長を特定することによって、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式
MmNiaMnbAlcCodFee
(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.5、0<d<0.2、0≦e≦0.4、5.2≦a+b+c+d+e≦5.4)
で表され、かつc軸長が406.5pm以上であり、CaCu5型の結晶構造を有することを特徴とする水素吸蔵合金を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の水素吸蔵合金は、下記一般式
MmNiaMnbAlcCodFee
(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.5、0<d<0.2、0≦e≦0.4、5.2≦a+b+c+d+e≦5.4)
で表されるCaCu5型の結晶構造を有するAB5型水素吸蔵合金である。
【0013】
ここで、MmはLa、Ce、Pr、Nd、Sm等の希土類系の混合物であるミッシュメタルである。Mm中のLaの含有量は、水素吸蔵合金に対して18〜30重量%)であることが望ましい。Laの含有量が、水素吸蔵合金に対して18重量%未満では、充分な容量が得られず、30重量%を超えると、寿命特性の低下を招く。また、この水素吸蔵合金は、CaCu5型の結晶構造を有するAB5型水素吸蔵合金であり、Bサイトが5.2〜5.4のBサイトリッチの非化学量論組成である。
【0014】
この水素吸蔵合金において、NiaMnbAlcCodFeeの組成割合(原子比)は、下記の関係を有するものである。すなわち、Niの割合は4.0≦a≦4.7であり、Mnの割合は0.2≦b≦0.7であり、Alの割合は0.2≦c≦0.5であり、Coの割合は0<d<0.2であり、Feの割合は0≦e≦0.4であり、かつa+b+c+d+eが5.2〜5.4の範囲にある。
【0015】
水素吸蔵合金中のNiは、電池の出力特性の向上に効果があり、その割合aは、4.0〜4.7、好ましくは4.2〜4.7、さらに好ましくは4.2〜4.5である。aが4.0未満では、電池としての出力特性及び初期活性が良好でない。また、aが4.7を超えると、微粉化が激しく、電池としての寿命特性が悪くなる。
【0016】
水素吸蔵合金中のMnは、自己放電抑制に効果があり、その割合bは、0.2〜0.7、好ましくは0.3〜0.6、さらに好ましくは0.4〜0.6である。bが0.2未満では、自己放電特性が良好であるための保護膜形成が充分でなく、電池としての寿命特性が悪くなる。また、bが0.7を超えると、保護膜形成割合が逆に多すぎて寿命特性が悪くなる。
【0017】
水素吸蔵合金中のAlは、特に微粉化抑制に効果があり、その割合cは、0.2〜0.5、好ましくは0.3〜0.5、さらに好ましくは0.3〜0.4である。cが0.2未満では、微粉化特性及び出力、活性特性が悪い。また、cが0.5を超えると、微粉化が激しく、電池としての寿命が悪くなる。
【0018】
水素吸蔵合金中のCoは、電池の寿命特性の向上に効果があり、その割合dは0.2未満、好ましくは0.1以下である。dが0.2以上では、電池としての出力、活性効果が悪くなる。
【0019】
水素吸蔵合金中のFeは、特に微粉化抑制に効果があり、その割合eは、0〜0.4であり、eが0.4を超えると、微粉化及び活性、出力特性が悪くなる。
【0020】
本発明の水素吸蔵合金において、上記a+b+c+d+e(以下、場合によってxと総称する)は5.2〜5.4である。xが5.2未満では、微粉化が激しく、電池としての寿命が悪くなる。また、xが5.4を超えると、電池としての活性及び出力特性が悪くなる。
【0021】
本発明の水素吸蔵合金は、c軸長が406.5pm以上であり、この範囲で良好な電池の放電特性が得られる。c軸長が406.5pm未満では、出力、活性、容量、寿命特性を満足することができない。
【0022】
次に、本発明の水素吸蔵合金の好ましい製造方法について説明する。
先ず、上記で示したような範囲の合金組成となるように、水素吸蔵合金原料を秤量、混合し、例えば誘導加熱による高周波加熱溶解炉を用いて、上記水素吸蔵合金原料を溶解して溶湯となす。これを鋳型、例えば水冷型の鋳型に流し込んで水素吸蔵合金を1350〜1600℃で鋳造する。また、この際の鋳湯温度は1200〜1500℃である。
【0023】
次に、得られた水素吸蔵合金を不活性ガス雰囲気中、例えばアルゴンガス中で熱処理する。熱処理条件は1000〜1100℃、1〜6時間である。このような熱処理を行うのは、鋳造された合金の組織には通常Mn主体の微細な粒界偏析が認められるが、これを加熱することによって均質化するためである。
【0024】
このようにして、本発明の水素吸蔵合金が得られる。この水素吸蔵合金は、粗粉砕、微粉砕後、高出力用アルカリ二次電池の負極として好適に用いられる。本発明の水素吸蔵合金は、低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期特性が良好で、しかも電池の放電特性(レート特性)、特に−40℃〜0℃の低温ハイレート特性(1−10C)を向上させることができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例等に基づき具体的に説明する。
【0026】
[実施例1]
表1に示したように、Mm、Ni、Mn、Al及びCoを合金組成でそれぞれMm(La20重量%)Ni4.35Mn0.5Al0.35Co0.1 (AB5.30)となるように、各水素吸蔵合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10−4Torr以下まで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後、水冷式銅鋳型に流し込み、1430℃(鋳湯温度1330℃)で鋳造を行い、合金を得た。さらに、この合金をアルゴンガス雰囲気中で、1060℃、3時間熱処理を行い、水素吸蔵合金を得た。
【0027】
[実施例2〜8及び比較例1〜8]
合金組成を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして水素吸蔵合金を得た。
【0028】
[特性及び物性評価]
実施例1〜8及び比較例1〜8で得られた水素吸蔵合金について、下記に示す方法によって軸長、PCT容量、微粉化特性、単極特性及びニッケル磁化率上昇率を測定した。結果を表2に示す。
【0029】
<軸長>
X線回折により測定
【0030】
<PCT容量(H/M)>
ジーベルツPCT装置によって、PCT曲線を測定した時の、0.5MPaの時の水素吸蔵量、PCT測定温度:45℃
【0031】
<微粉化特性(微粉化残存率)>
水素吸蔵合金粉末を所定の粒度で分級し、平均粒径(D50)となるように調整し、この粉末をPCT装置にて水素吸脱10回あるいは50回を繰り返した後、回収して、再び平均粒径(D50)を測定した時に、次式から算出される値。
(微粉化残存率)=[D50(10サイクルあるいは50サイクル後)/D50(10サイクルあるいは50サイクル前)]×100
【0032】
<試験セルの作製>
平均粒径45ミクロンに調整した水素吸蔵合金粉末を、ニッケル粉末及びポリエチレン粉末と共に所定量混合し、得られた混合粉をプレスして直径15mmのペレット電極を作製して負極とし、開放型試験セルを作製し、充放電装置に接続した。
【0033】
<単極特性評価>
1)初期容量
充電0.2C−120%;放電0.2C−0.7Vカット、温度25℃で充放電試験を行い、1サイクル目の放電容量を初期容量とし、初期活性を示す指標とした。
2)活性化試験
充電0.2C−120%;放電0.2C−0.7Vカット、サイクル:20サイクル、温度:25℃
3)出力特性1
活性化試験後、充電0.2C−120%;放電1C−0.7Vカット時の放電容量、温度:0℃
4)出力特性2(パルス放電特性)
活性化試験終了20サイクル後、充電0.2C−120%;放電 放電深度50%0.5h休止後、2C−10Sの電圧値、温度:0℃
5)活性度
開放型セルにおいて、活性化試験中の4〜5、16〜17サイクル目に低温負荷(0℃、1C)を与えた時の放電容量から算出される値。
充電1C−120%;放電1C−0.7Cカット、温度0℃
サイクル:100サイクル
(活性度)=(5サイクル目の放電容量/17サイクル目の放電容量)×100
6)寿命試験
充電:1C−120%;放電1C−0.7Cカット、温度25℃
サイクル:100サイクル
・電極寿命(残存率) 上記寿命試験後、充電0.2C−120%;放電0.2C−0.7Vカット時の放電容量を測定し、活性化試験後の放電容量に対する比を容量残存率とした。
(容量残存率)=(100サイクル後放電容量/20サイクル後放電容量)×100
【0034】
<Ni磁化率の上昇度:腐食の指標>
水素吸蔵合金粉末2gを適当量のKOH(比重1.3)の溶液中にて、80℃高温保存した時の下記の計算式で求められる値。
(Ni磁化率上昇度)=[(3週間保存後Ni磁化率)/(1週間保存後Ni磁化率)]×
100
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜8の水素吸蔵合金は、コバルトを含有しない比較例1〜4の水素吸蔵合金に比べて、概ね微粉化特性、単極特性及び耐腐食性に優れている。また、実施例1〜8の水素吸蔵合金は、コバルトを比較的多量に含有する比較例5〜8の水素吸蔵合金と比べても同等に近い又はそれ以上の特性を有し、特に、従来より実績のある比較例7〜8の水素吸蔵合金と比べても、遜色のない特性を有している。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の水素吸蔵合金は、従来の水素吸蔵合金に比べてコバルト量を低減し、かつニッケル及びマンガン量を増加させ、またc軸長を特定することによって、低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期特性が良好で、しかも電池の放電特性、特に低温ハイレート特性を向上させることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵合金に関し、詳しくは低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期活性が極めて良好で、しかも電池の放電特性に優れた水素吸蔵合金に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、ニッケル−カドミウム蓄電池に代わる高容量アルカリ蓄電池として、水素吸蔵合金を負極に用いたニッケル−水素蓄電池(二次電池)が注目されている。この水素吸蔵合金は、現在では希土類系の混合物であるMm(ミッシュメタル)とNi、Al、Mn、Coとの5元素の水素吸蔵合金が汎用されている。
【0003】
このMm−Ni−Mn−Al−Co合金は、La系のそれに比べて比較的安価な材料で負極を構成でき、サイクル寿命が長く、過充電時の発生ガスによる内圧上昇が少ない密閉型ニッケル水素蓄電池を得ることができることから、電極材料として広く用いられている。
【0004】
現在用いられているMm−Ni−Mn−Al−Co合金は、合金の微粉化を抑制してサイクル寿命を長くしているが、一般的にこの微粉化抑制のためには10重量%程度のCo(原子比で0.6〜1.0)を必要とすることが知られている。また、優れた水素吸蔵特性及び耐食性を得るためにも一定量のCoの含有は必要とされている。
【0005】
しかしながら、Coの含有率が高いとそれだけ原料コストが高くなり、原料コストの面から問題視されている。特に、電気自動車用電源(EV:Electric Vehicle)等の大型電池への適用やニッケル−水素蓄電池の更なる市場の増大に対しては、原料コストは、電極負極材料の選定において大きな割合を占め、このことが問題となっていた。
【0006】
このような問題を解決する一つの提案として、特許文献1には、Mm−Ni−Mn−Al−Co系合金の組成を特定し、特にCoを0.2〜0.4と減じた水素吸蔵合金が記載されている。この水素吸蔵合金は、水素吸蔵特性、微粉化特性に優れ、電池に用いたときに、良好な出力特性、初期特性を有し、しかも耐久性や保存性についても高い信頼性を有する。
【0007】
しかし、電気自動車用電源(EV)等の大型電池には、特許文献1に記載の水素吸蔵合金に比して、より低廉な材料が求められ、さらには初期活性が良好で、電池の放電特性、特に低温でのハイレート特性に優れた材料が求められている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−40442号公報
【0009】
従って、本発明の目的は、低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期特性が良好で、しかも電池の放電特性、特に低温ハイレート特性を向上させた水素吸蔵合金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は種々の研究を重ねた結果、従来に比べて微粉化抑制効果のあるコバルト量を低減し、その代わりに同様な効果のあるアルミニウムあるいは鉄を含有させ、かつニッケル及びマンガン量を増加させて組成を最適化することにより微粉化抑制につながることを知見し、併せてc軸長を特定することによって、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式
MmNiaMnbAlcCodFee
(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.5、0<d<0.2、0≦e≦0.4、5.2≦a+b+c+d+e≦5.4)
で表され、かつc軸長が406.5pm以上であり、CaCu5型の結晶構造を有することを特徴とする水素吸蔵合金を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の水素吸蔵合金は、下記一般式
MmNiaMnbAlcCodFee
(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.5、0<d<0.2、0≦e≦0.4、5.2≦a+b+c+d+e≦5.4)
で表されるCaCu5型の結晶構造を有するAB5型水素吸蔵合金である。
【0013】
ここで、MmはLa、Ce、Pr、Nd、Sm等の希土類系の混合物であるミッシュメタルである。Mm中のLaの含有量は、水素吸蔵合金に対して18〜30重量%)であることが望ましい。Laの含有量が、水素吸蔵合金に対して18重量%未満では、充分な容量が得られず、30重量%を超えると、寿命特性の低下を招く。また、この水素吸蔵合金は、CaCu5型の結晶構造を有するAB5型水素吸蔵合金であり、Bサイトが5.2〜5.4のBサイトリッチの非化学量論組成である。
【0014】
この水素吸蔵合金において、NiaMnbAlcCodFeeの組成割合(原子比)は、下記の関係を有するものである。すなわち、Niの割合は4.0≦a≦4.7であり、Mnの割合は0.2≦b≦0.7であり、Alの割合は0.2≦c≦0.5であり、Coの割合は0<d<0.2であり、Feの割合は0≦e≦0.4であり、かつa+b+c+d+eが5.2〜5.4の範囲にある。
【0015】
水素吸蔵合金中のNiは、電池の出力特性の向上に効果があり、その割合aは、4.0〜4.7、好ましくは4.2〜4.7、さらに好ましくは4.2〜4.5である。aが4.0未満では、電池としての出力特性及び初期活性が良好でない。また、aが4.7を超えると、微粉化が激しく、電池としての寿命特性が悪くなる。
【0016】
水素吸蔵合金中のMnは、自己放電抑制に効果があり、その割合bは、0.2〜0.7、好ましくは0.3〜0.6、さらに好ましくは0.4〜0.6である。bが0.2未満では、自己放電特性が良好であるための保護膜形成が充分でなく、電池としての寿命特性が悪くなる。また、bが0.7を超えると、保護膜形成割合が逆に多すぎて寿命特性が悪くなる。
【0017】
水素吸蔵合金中のAlは、特に微粉化抑制に効果があり、その割合cは、0.2〜0.5、好ましくは0.3〜0.5、さらに好ましくは0.3〜0.4である。cが0.2未満では、微粉化特性及び出力、活性特性が悪い。また、cが0.5を超えると、微粉化が激しく、電池としての寿命が悪くなる。
【0018】
水素吸蔵合金中のCoは、電池の寿命特性の向上に効果があり、その割合dは0.2未満、好ましくは0.1以下である。dが0.2以上では、電池としての出力、活性効果が悪くなる。
【0019】
水素吸蔵合金中のFeは、特に微粉化抑制に効果があり、その割合eは、0〜0.4であり、eが0.4を超えると、微粉化及び活性、出力特性が悪くなる。
【0020】
本発明の水素吸蔵合金において、上記a+b+c+d+e(以下、場合によってxと総称する)は5.2〜5.4である。xが5.2未満では、微粉化が激しく、電池としての寿命が悪くなる。また、xが5.4を超えると、電池としての活性及び出力特性が悪くなる。
【0021】
本発明の水素吸蔵合金は、c軸長が406.5pm以上であり、この範囲で良好な電池の放電特性が得られる。c軸長が406.5pm未満では、出力、活性、容量、寿命特性を満足することができない。
【0022】
次に、本発明の水素吸蔵合金の好ましい製造方法について説明する。
先ず、上記で示したような範囲の合金組成となるように、水素吸蔵合金原料を秤量、混合し、例えば誘導加熱による高周波加熱溶解炉を用いて、上記水素吸蔵合金原料を溶解して溶湯となす。これを鋳型、例えば水冷型の鋳型に流し込んで水素吸蔵合金を1350〜1600℃で鋳造する。また、この際の鋳湯温度は1200〜1500℃である。
【0023】
次に、得られた水素吸蔵合金を不活性ガス雰囲気中、例えばアルゴンガス中で熱処理する。熱処理条件は1000〜1100℃、1〜6時間である。このような熱処理を行うのは、鋳造された合金の組織には通常Mn主体の微細な粒界偏析が認められるが、これを加熱することによって均質化するためである。
【0024】
このようにして、本発明の水素吸蔵合金が得られる。この水素吸蔵合金は、粗粉砕、微粉砕後、高出力用アルカリ二次電池の負極として好適に用いられる。本発明の水素吸蔵合金は、低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期特性が良好で、しかも電池の放電特性(レート特性)、特に−40℃〜0℃の低温ハイレート特性(1−10C)を向上させることができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例等に基づき具体的に説明する。
【0026】
[実施例1]
表1に示したように、Mm、Ni、Mn、Al及びCoを合金組成でそれぞれMm(La20重量%)Ni4.35Mn0.5Al0.35Co0.1 (AB5.30)となるように、各水素吸蔵合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10−4Torr以下まで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後、水冷式銅鋳型に流し込み、1430℃(鋳湯温度1330℃)で鋳造を行い、合金を得た。さらに、この合金をアルゴンガス雰囲気中で、1060℃、3時間熱処理を行い、水素吸蔵合金を得た。
【0027】
[実施例2〜8及び比較例1〜8]
合金組成を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして水素吸蔵合金を得た。
【0028】
[特性及び物性評価]
実施例1〜8及び比較例1〜8で得られた水素吸蔵合金について、下記に示す方法によって軸長、PCT容量、微粉化特性、単極特性及びニッケル磁化率上昇率を測定した。結果を表2に示す。
【0029】
<軸長>
X線回折により測定
【0030】
<PCT容量(H/M)>
ジーベルツPCT装置によって、PCT曲線を測定した時の、0.5MPaの時の水素吸蔵量、PCT測定温度:45℃
【0031】
<微粉化特性(微粉化残存率)>
水素吸蔵合金粉末を所定の粒度で分級し、平均粒径(D50)となるように調整し、この粉末をPCT装置にて水素吸脱10回あるいは50回を繰り返した後、回収して、再び平均粒径(D50)を測定した時に、次式から算出される値。
(微粉化残存率)=[D50(10サイクルあるいは50サイクル後)/D50(10サイクルあるいは50サイクル前)]×100
【0032】
<試験セルの作製>
平均粒径45ミクロンに調整した水素吸蔵合金粉末を、ニッケル粉末及びポリエチレン粉末と共に所定量混合し、得られた混合粉をプレスして直径15mmのペレット電極を作製して負極とし、開放型試験セルを作製し、充放電装置に接続した。
【0033】
<単極特性評価>
1)初期容量
充電0.2C−120%;放電0.2C−0.7Vカット、温度25℃で充放電試験を行い、1サイクル目の放電容量を初期容量とし、初期活性を示す指標とした。
2)活性化試験
充電0.2C−120%;放電0.2C−0.7Vカット、サイクル:20サイクル、温度:25℃
3)出力特性1
活性化試験後、充電0.2C−120%;放電1C−0.7Vカット時の放電容量、温度:0℃
4)出力特性2(パルス放電特性)
活性化試験終了20サイクル後、充電0.2C−120%;放電 放電深度50%0.5h休止後、2C−10Sの電圧値、温度:0℃
5)活性度
開放型セルにおいて、活性化試験中の4〜5、16〜17サイクル目に低温負荷(0℃、1C)を与えた時の放電容量から算出される値。
充電1C−120%;放電1C−0.7Cカット、温度0℃
サイクル:100サイクル
(活性度)=(5サイクル目の放電容量/17サイクル目の放電容量)×100
6)寿命試験
充電:1C−120%;放電1C−0.7Cカット、温度25℃
サイクル:100サイクル
・電極寿命(残存率) 上記寿命試験後、充電0.2C−120%;放電0.2C−0.7Vカット時の放電容量を測定し、活性化試験後の放電容量に対する比を容量残存率とした。
(容量残存率)=(100サイクル後放電容量/20サイクル後放電容量)×100
【0034】
<Ni磁化率の上昇度:腐食の指標>
水素吸蔵合金粉末2gを適当量のKOH(比重1.3)の溶液中にて、80℃高温保存した時の下記の計算式で求められる値。
(Ni磁化率上昇度)=[(3週間保存後Ni磁化率)/(1週間保存後Ni磁化率)]×
100
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜8の水素吸蔵合金は、コバルトを含有しない比較例1〜4の水素吸蔵合金に比べて、概ね微粉化特性、単極特性及び耐腐食性に優れている。また、実施例1〜8の水素吸蔵合金は、コバルトを比較的多量に含有する比較例5〜8の水素吸蔵合金と比べても同等に近い又はそれ以上の特性を有し、特に、従来より実績のある比較例7〜8の水素吸蔵合金と比べても、遜色のない特性を有している。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の水素吸蔵合金は、従来の水素吸蔵合金に比べてコバルト量を低減し、かつニッケル及びマンガン量を増加させ、またc軸長を特定することによって、低廉で、寿命特性を劣化させることなく、初期特性が良好で、しかも電池の放電特性、特に低温ハイレート特性を向上させることができる。
Claims (2)
- 下記一般式
MmNiaMnbAlcCod
(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.5、0<d<0.2、5.2≦a+b+c+d≦5.4)
で表され、かつc軸長が406.5pm以上であり、CaCu5型の結晶構造を有することを特徴とする水素吸蔵合金。 - 下記一般式
MmNiaMnbAlcCodFee
(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.5、0<d<0.2、0<e≦0.4、5.2≦a+b+c+d+e≦5.4)
で表され、かつc軸長が406.5pm以上であり、CaCu5型の結晶構造を有することを特徴とする水素吸蔵合金。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007034892A1 (ja) * | 2005-09-21 | 2007-03-29 | Mitsui Mining & Smelting Co., Ltd. | 低Co水素吸蔵合金 |
WO2008123616A1 (ja) * | 2007-03-30 | 2008-10-16 | Mitsui Mining & Smelting Co., Ltd. | 水素吸蔵合金 |
JP2009030158A (ja) * | 2007-04-11 | 2009-02-12 | Mitsui Mining & Smelting Co Ltd | 水素吸蔵合金 |
CN111795923A (zh) * | 2020-08-24 | 2020-10-20 | 兰州金川科力远电池有限公司 | 快速测试储氢合金粉耐腐蚀性的方法 |
-
2003
- 2003-01-16 JP JP2003007846A patent/JP2004218017A/ja active Pending
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