JP4441936B2 - 水素吸蔵電極 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、水素吸蔵合金を負極材料として用いるニッケル水素化物電池は高エネルギー密度化が進み、携帯電話やノートタイプパソコンなどポータブル機器用として使用されている。一方、電気とガソリンの両方をエネルギー源として走行するハイブリッド自動車への用途など、高出力密度化が重要視される分野でも注目され始めている。従来、ニッケル水素化物電池は高出力用途には不向きであるといわれていたが、負極の高率放電特性を改良することで高出力密度が要求される分野でも使用が可能になった。また、ニッケル水素化物電池のサイクル寿命も重要視され、高率放電特性などの改良による弊害としてサイクル寿命の低下が起こらないことが要求されている。この様に高率放電特性が優れ、かつ、サイクル寿命が低下しない水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵電極の開発が不可欠である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、高率放電特性が優れ、かつ、長寿命な水素吸蔵合金を用いた水素吸蔵電極を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、CaCu5 型構造を有し、水素を可逆的に吸蔵放出しうる水素吸蔵合金を用いる電極であって、前記水素吸蔵合金の組成がMm a Ni b Co c Mn d Al e で表されるとき(ただし、MmはLa、Ce、Pr、Ndなどの希土類金属からなる複合体)、0.95≦a≦1.03、3.60≦b≦4.45、0.20≦c≦0.60、0.20≦d≦0.40、0.20≦e≦0.40、5.01≦x≦5.40〔ただし、x=B/A=(b+c+d+e)/a〕であり、Coの置換モル量cとB/A比xが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする水素吸蔵電極である。
−0.25×c+5.15≦x≦−0.75×c+5.55 式(1)
【0005】
本発明は、Alの置換モル量eとB/A比xが下記式(2)の関係を満たす。
x≦1.5×e+4.8 式(2)
【0006】
明は、前記水素吸蔵合金が1000〜100000℃/秒の冷却速度で急冷して作製したものであることが好ましい
【0007】
本発明は、前記水素吸蔵合金がニッケル、コバルトを主体とする遷移金属リッチ層を表面に備えていることが好ましい
【0008】
本発明は、前記金属リッチ層が、アルカリ水溶液による表面処理、または有機酸水溶液による表面処理により形成されたものであることが好ましい
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0010】
まず、MmNi4.35-yCoy Mn0.4 Al0.3 の組成になるように各金属を所定量秤量し、不活性雰囲気下、高周波誘導溶解炉で合金インゴットを作製し、1000℃で熱処理して合金試料を得た。ここで、Mmは希土類元素の混合物であるミッシュメタルを意味する。この合金インゴットを粒径75μm以下に機械的に粉砕して水素吸蔵合金粉末試料とした。合金組成はy=0.2、0.4、0.6、0.8の4種類を作製し、それぞれ粉末試料A、粉末試料B、粉末試料Cおよび粉末試料Dとする。これらの試料に増粘剤を加えてペースト状にし、ニッケル多孔体に充填し、乾燥後プレスして水素吸蔵合金電極を作製した。粉末試料A〜Dを用いた電極をそれぞれ比較電極A、発明電極B、発明電極Cおよび比較電極Dとする。このようにして作製した電極を用いて通常の水酸化ニッケル電極を相手極として開放型電池を作製し、2.9A/gの電流値で高率放電試験を行った。その結果を図1に示す。図1から明らかなとおり、比較電極A、発明電極Bおよび発明電極CはCo置換量を低減したので、良好な高率放電特性を示す結果が得られた。また、Co置換量の低減に伴い放電電位が卑にシフトし、放電容量も増大する効果が得られた。
【0011】
次に、MmNix-1.1 Co0.4 Mn0.4 Al0.3 の組成になるように、粉末試料Aと同様の手法で水素吸蔵合金粉末試料を作製した。ここでxはB/A比を指し、x=5.2、5.1、5.0、4.9の4種類を作製し、それぞれ粉末試料E、粉末試料F、粉末試料Gおよび粉末試料Hとする。合金粉末試料E〜Hを用いて比較電極Aと同様の手法で電極を作製し、それぞれ、発明電極E、発明電極F、比較電極Gおよび比較電極Hとし、サイクル寿命測定試験を行った。その結果を図2に示す。図2から明らかなとおり、B/A比xが増大するにつれ、サイクル寿命が長くなる効果が得られた。このような効果が得られたのは次に示す理由によると考えられる。
【0012】
合金のサイクル寿命は、合金腐食と微粉化に大きく影響される。サイクル寿命評価方法のひとつとして、合金試料の腐食量の定量を行った。まず、合金粉末試料を6mol/lの水酸化カリウム水溶液中に浸漬し、80℃で3日間、震とうした後、水洗乾燥し、X線回折測定を行った。合金腐食はLaなどの希土類金属が酸化されて生成する希土類水酸化物の定量により評価することができる。生成した希土類水酸化物のX線回折ピークの内、水素吸蔵合金の回折ピークと重ならないものを選択し、積分強度を測定した。図3に積分強度測定結果を示す。図3から明らかなとおり、B/A比xが増大するにつれ、腐食量が減少する効果が得られた。すなわち、発明電極E及び発明電極FはB/A比を増大させ、合金腐食を抑制したので、長寿命化を達成することができたと考えられる。
【0013】
以上のように、合金中のCo置換量を低減した場合にはB/A比を増大する必要がある。Co置換量をc、B/A比をxとしたとき、−0.25×c+5.15≦x≦−0.75×c+5.55と、0.2≦c≦0.6および5.01≦x≦5.40が取る範囲を図4に示す。図4中に示す点I〜点Lの組成となるように粉末試料Aと同様の方法で合金粉末を作製した。点IはMmNi4.05Co0.4Mn0.4 Al0.3 、点JはMmNi3.7 Co0.7 Mn0.4 Al0.3 、点KはMmNi4.15Co0.2 Mn0.4 Al0.3 、点LはMmNi4.55Co0.2 Mn0.4 Al0.3 であり、それぞれ粉末試料I、粉末試料J、粉末試料Kおよび粉末試料Lとする。合金粉末試料I〜Lを用いて比較電極Aと同様の手法で電極を作製し、それぞれ、発明電極I、比較電極J、比較電極Kおよび比較電極Lとし、高率放電試験およびサイクル寿命測定試験を行った。高率放電試験結果を図5に、サイクル寿命試験結果を図6にそれぞれ示す。図5から明らかなとおり、Co置換量が多い比較電極JとCo置換量は少ないがB/A比が大きい比較電極Lは高率放電特性が良好ではない。また、図6から明らかなとおり、Co置換量が少なくB/A比も小さい比較電極Kはサイクル寿命特性が良好ではない。図4に示した範囲内の合金を用いた発明電極Iのみが高率放電特性、サイクル寿命特性の両方を満足する結果が得られた。
【0014】
一方、Co置換量の低減に伴うB/A比の増大は水素平衡解離圧の上昇を引き起こし、充電効率の低下が起こる。従って、Al置換量をコントロールして平衡解離圧を低下させる必要がある。平衡解離圧はMn置換量によってもコントロールできるが、Mn置換量のさらなる増大は合金腐食を更に促進し、B/A比増大による腐食抑制効果を打ち消してしまうので、これ以上Mn置換量を増大させることは困難である。Al置換量をe、B/A比をxとしたとき、x≦1.5×e+4.8と、0.2≦e≦0.4および5.01≦x≦5.40が取る範囲を図7に示す。図7中に示す点M〜点Oの組成となるように粉末試料Aと同様の方法で合金粉末を作製した。点MはMmNi4.05Co0.4 Mn0.4 Al0.4 、点NはMmNi4.15Co0.4 Mn0.4 Al0.3 、点OはMmNi4.35Co0.4 Mn0.4Al0.1 であり、それぞれ粉末試料M、粉末試料Nおよび粉末試料Oとする。粉末試料M〜Oを用いて比較電極Aと同様の手法で電極を作製し、それぞれ、発明電極M、発明電極Nおよび比較電極Oとし、充電効率特性を測定した。充電効率測定結果と平衡解離圧を図8に示す。図8から明らかなとおり、Al置換量が少なく平衡解離圧が高い発明電極Nおよび比較電極Oは充電効率が良好ではない。図7に示した範囲内の合金を用いた発明電極Mのみが良好な充電効率特性を示した。
【0015】
次に、MmNi4.05Co0.4 Mn0.4 Al0.4 の組成になるように各金属を所定量秤量し、不活性雰囲気下、高周波誘導溶解炉で合金を溶解した後、例えば水冷した回転ロール上に溶解合金を落下させて急速冷却して合金薄帯を作製し、1000℃で熱処理して合金試料を得た。この合金薄帯を粒径75μm以下に機械的に粉砕して合金粉末試料Pとした。この合金粉末試料Pと組成は同じでインゴットを粉砕して得た合金粉末試料Mを用いて比較電極Aと同様の手法で電極を作製し、それぞれ、発明電極Pおよび発明電極Mとし、サイクル寿命測定試験を行った。その結果を図9に示す。図9より明らかなとおり、発明電極Mよりもさらに発明電極Pは長寿命となる結果が得られた。このような効果が得られたのは次に示す理由によると考えられる。
【0016】
合金のサイクル寿命は合金腐食の他に微粉化にも影響される。サイクル寿命評価の一つとして微粉化を調べた。まず、合金粒子径を一定にするために、それぞれの合金粉末試料を45〜75μmに分級し、耐圧容器内で水素ガスの吸蔵放出を3回繰り返した。吸蔵放出前後の合金粉末試料の粒径分布測定結果より得られた平均粒径を図10に示す。図10から明らかなとおり、急速冷却で作製した合金粉末試料Pは微粉化を抑制する効果が得られた。急速冷却法により合金を作製することで組織が均質化し、Mnなどの偏析が抑制された結果、微粉化が起こりにくくなり長寿命になったものと考えられる。
【0017】
さらに、前記合金粉末試料PをKOHとLiOHを混合した高温アルカリ水溶液で表面処理を行ったものを用いて、比較電極Aと同様の方法で電極を作製し、発明電極Qとした。一方、合金粉末試料Pを例えば60℃に加温した酢酸−酢酸ナトリウム緩衝水溶液中に30分間浸漬して表面処理を行ったものを用いて、比較電極Aと同様の方法で電極を作製し発明電極Rとした。発明電極P〜Rを用いて初期容量の推移を測定した結果を図11に示す。図11から明らかなように、表面処理を行った発明電極Qおよび発明電極Rは活性化がより早く、放電容量も増大する効果が得られた。
【0018】
【発明の効果】
上記のように、本発明の水素吸蔵電極ではCo置換量を低減し、B/A比を増大し、それに伴いAl置換量を増大して合金組成を適正化し、急速冷却で合金を作製して組織を均質化し、表面処理を行った合金を用いたので、高率放電特性、サイクル寿命特性、充電効率、初期活性化特性を向上させるという極めて優れた効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電電位と放電容量の関係図である。
【図2】放電容量とサイクル数との関係図である。
【図3】X線回折より得られた腐食生成物積分強度とB/A比の関係図である。
【図4】Co置換量とB/A比の関係図である。
【図5】放電電位と放電容量の関係図である。
【図6】放電容量とサイクル数との関係図である。
【図7】Al置換量とB/A比の関係図である。
【図8】充電効率および平衡解離圧とAl量の関係図である。
【図9】放電容量とサイクル数との関係図である。
【図10】平均粒径と水素吸蔵放出回数の関係図である。
【図11】放電容量とサイクル数との関係図である。

Claims (1)

  1. CaCu型構造を有し、水素を可逆的に吸蔵放出しうる水素吸蔵合金を用いる電極であって、前記水素吸蔵合金の組成が、MmNiCoMnAlで表されるとき(ただし、MmはLa、Ce、Pr、Ndなどの希土類金属からなる複合体)、0.95≦a≦1.03、3.60≦b≦4.45、0.20≦c≦0.60、0.20≦d≦0.40、0.20≦e≦0.40、5.01≦x≦5.40〔ただし、x=B/A=(b+c+d+e)/a〕であり、Coの置換モル量cとB/A比xが下記式(1)の関係を満たし、かつ、Alの置換モル量eとB/A比xが下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする水素吸蔵電極。
    −0.25×c+5.15≦x≦−0.75×c+5.55 式(1)
    x≦1.5×e+4.8 式(2)
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