JP2004283109A - 飲食品の風味改良剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】乳清を含有する培地で、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)などの抗菌ペプチド産生性乳酸菌を培養して得られた培養液、不溶物及び乳酸菌体を除去した培養液、その濃縮物或いは乾燥品からなる飲食品の風味改良剤、及びこの風味改良剤を添加して風味が改良された飲食品である。
【選択図】 なし
Description
【発明が属する技術分野】
本発明は乳清を含有する培地で乳酸菌を培養することにより得られた培養液を飲食品に添加することにより、飲食品の異味、異臭をマスキングし、豊かな風味を付与し、更に日持ちを向上させて改良した風味を維持する飲食品の風味改良剤及び風味を改良された飲食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、タレ類、ドレッシング等の調味料に、旨味や風味を増強する目的でアミノ酸、核酸等の旨味調味料、畜肉、野菜エキス等を発酵させた旨味調味料を添加することが知られている。その中で近年、乳製品の製造時に生成する乳清を乳酸菌で発酵させた風味改良剤を利用する方法が提案されている。
具体的には食品へのコク味付与を目的として乳清の乳酸発酵液を利用する方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)がある。
また、調味料、飲料への熟成風味付与のため乳清の乳酸発酵液を使用する方法がある(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】
特許第1860189号
【特許文献2】
特開昭62−151155号公報
【特許文献3】
特開平7−75520号公報
【特許文献4】
特開平7−75521号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の乳清乳酸菌発酵液にあっては、食品が微生物汚染を受けると、折角の風味が変質して風味維持が困難になるという欠点があった。
また、製造中の微生物汚染を防止するために、乳清発酵液を加熱したり、保存安定性を高めるため異性化糖を加えたりする処理が行われていたが、これでは乳清発酵液本来の効果が充分に発揮されなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決することを目的とし、その構成は、乳清を含有する培地で、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)などの抗菌ペプチド産生性乳酸菌を培養して得られた培養液、不溶物及び乳酸菌体を除去した培養液、その濃縮物或いは乾燥品からなる飲食品の風味改良剤、及びこの風味改良剤を添加して風味が改良された飲食品である。
【0006】
すなわち、本発明者らは乳清を主体とする培地で、抗菌ペプチド産生能を有する乳酸菌を培養して乳清発酵液を得、これが飲食品の風味を顕著に改良するのみならず、改良した風味を長期間維持することを見出して本発明を完成するに至った。
本発明風味改良剤は不快臭であるアミン、アルデヒド類の発生を抑制することから生臭みのマスキング効果を発揮する。また、乳清由来蛋白質及び乳酸発酵によるペプチド、アミノ酸を多く含むため、食品にコク味、旨味、甘味を付与する他、pHを低く維持し、肉の保水性を高め、肉質を柔らかく維持する効果を有する。更に、抗菌性ペプチド、ナイシンを含むため顕著な日持ち向上効果を発現する。ナイシンは乳酸菌Lactococcus lactisが産生する抗菌ペプチドでバチルスやクロストリジウム、黄色ブドウ球菌、リステリア等の食中毒菌に対して抗菌作用を有することが知られている。
【0007】
乳清をベースとする培地で乳酸菌培養することにより製造中の雑菌汚染を防止し、乳清に加熱、加糖等の処理を加えることなく高品質の乳清培養液を得ることができる。更に、本発明乳清培養液を食品に添加することにより、飲食品の風味を改良し、日持ち向上効果によりその風味を長く維持することができる。
また本発明乳清発酵液は熱、pHに比較的安定であることから飲食品の作業工程に左右されることなく、風味改良、風味維持効果を発現することができる。
しかも、乳酸菌が生産する抗菌ペプチドは人の消化酵素によって分解されることから安全な風味改良剤として利用可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における乳清とは、乳製品製造時に生成する、牛乳等の獣乳から脂肪、カゼイン、脂溶性ビタミン等を除いた透明な液であり、乳清蛋白質、乳糖、ミネラル、香気成分等を含有する。乳清には、甘性ホエーと呼ばれる、チーズ製造時にレンネット凝固したカゼインを除去した上清、酸性ホエーと呼ばれる、等電点においてカゼインを沈殿させた後の上清、その他、膜濃縮で濃縮乳を作成した時の透過液等がある。これらはいずれも本発明に使用することができる。また、乳清の酵素分解物或いは乳清を噴霧乾燥して得られたパウダー等も使用することができる。
乳酸菌培養に使用する乳清の濃度は、乳糖を基準とすると0.1〜10%、好ましくは3〜6%含有されていることが望ましい。
【0009】
培養にあたって、乳清に糖源や窒素源その他の乳酸菌増殖因子を添加することができる。糖源としてはグルコース、ガラクトース、ラクトース等を挙げることができる。窒素源としては、食品用酵母エキス、乳清蛋白濃縮物分解物、コーンペプチド、大豆ペプチド、業務用調味液原料、焼酎粕等を添加するとよい。
培養後にさわやかな芳香を得るためには、乳清蛋白濃縮物分解物を添加することが好ましく、飲食品に適度なコク味と熟成風味を付与するためには酵母エキスを添加することが好ましい。
【0010】
抗菌ペプチド産生性乳酸菌としては、ラクトコッカス・ラクティスに属し、ナイシンを産生する菌株であり、ATCC11454株、NCDO497株等を挙げることができる。これらの菌は容易に入手することができる。
【0011】
乳酸菌発酵は通常液体培地で行われる。25〜37℃で100〜300rpmで撹拌しながら10〜20時間培養する。本発明においては乳清を含有する培地で乳酸菌を培養することによって乳清の風味付与効果が一段と増強された。一方、乳清の存在は抗菌物質の産生量を増加させる効果を有することが判明した。
培養が終了した培養液は遠心分離、ろ過等の公知の手段を用いて不溶物及び菌体を除去して本発明飲食品の風味改良剤を得る。食品の風味改良剤はそのまま使用してもよいが、濃縮液或いは凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラムドライ等の公知の手段により粉体として使用に供する。
【0012】
乳清発酵液は飲食品の原料に、製造工程中に、或いは製品に添加すればよく、添加量は固形分として0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%で、風味改良、日持ち増進効果を発現する。本発明乳清発酵液は乳そのものの風味を持ち込むことなく、食品本来の風味を引き出すことができる。畜肉、魚介類製品の生臭みをマスキングし、旨味、コク味、甘味を付与できる。また、カスタードクリーム等の卵製品や蒸しパン等の小麦粉製品、更に果汁飲料等においても甘味や熟成風味を付与し、この風味を長期間維持することができる。
【0013】
【実施例】
実施例1(乳清培養液の調製)
乳清1リットルに、グルコース3%、酵母エキス2%、食塩0.5%を加え、121℃で15分間加熱滅菌を行った。次いで乳酸菌スターターとして前述のラクトコッカス・ラクティスをMRS broth (OXOID社製)にて前培養したものを上記上清培地に5%添加し、37℃、20時間、150rpmで撹拌しながら培養した。得られた乳酸菌発酵液を1万rpmで遠心分離し、不溶物及び菌体を除去した乳清発酵液を得た。この乳清発酵液を凍結乾燥して乾燥粉体200gを得た。
なお、粉体1gの抗菌物質としての力価はB .subtilis C1を検定菌としてバイオアッセイを行った結果、10万AUであった。
【0014】
実施例2(鶏肉に対する風味改良効果)
独特の獣臭が問題となる鶏肉について風味改良効果と日持ち効果を確認した。
鶏胸肉を実施例1で得られた乳清発酵液の乾燥粉体の5%溶液に浸漬し、10分間真空タンブリング処理した後、液切りし、5分間蒸して実施例2のサンプルを得た。乳清発酵液の乾燥粉体を加えない以外は実施例2と同様にして比較例1のサンプルを得た。
更に市販の乳清風味改良剤、コク味調味料及び日持ち向上剤として利用されているpH調整剤についても実施例2と同様の処理を行った。乳清風味改良剤を比較例2、コク味調味料を比較例3、pH調整剤を比較例4としてサンプルを得た。これらサンプルについて10人のパネラーによるマスキング効果、旨味、弾力性についての評価の平均点を表1に記載した。
【0015】
【表1】
【0016】
なお、マスキング効果については「全く臭みが無い」を+3点、「臭みが無い」を+2点、「臭みが少ない」を+1点、「標準」を0点、「少し臭みがある」を−1点、「臭みがある」を−2点、「かなり臭みがある」を−3点の7段階で評価し、平均点数を表示した。0.5点以上差がある場合を有意差として評価した。
旨味向上効果については、「明らかに良い」を+3点、「良い」を+2点、「少し良い」を+1点、「標準」を0点、「少し悪い」を−1点、「悪い」を−2点、「かなり悪い」を−3点の7段階で評価し、平均点数を表示した。
弾力性については、「かなり弾力性がある」を+3点、「弾力性がある」を+2点、「少し弾力性がある」を+1点、普通(標準)を0点、「少し弾力性がない」を−1点、「弾力性がない」を−2点、「かなり弾力性がない」を−3点の7段階で評価し、平均点数を表示した。
【0017】
表1より、本発明風味改良剤を使用すると明らかな獣臭のマスキング効果及び風味改良効果が得られることが判明した。
次に、上記サンプルを25℃で保存し、直後及び2日後の一般生菌数(/g)を測定し、表2に示した。実施例2は2日後も風味に変化が認められなかった。
表2より、本発明風味改良剤を使用すると顕著な日持ち向上効果が得られることが判明した。
【0018】
【表2】
【0019】
実施例3(サーモンに対する風味改良剤の効果)
魚介類の生臭みが問題になっているサーモンに対する食味改良効果及び日持ち向上効果を確認した。
サーモンの切り身を実施例1で得られた乳清発酵液の乾燥粉体の5%溶液に浸漬し、10分間真空タンブリング処理した後、液切りし、6分間焼成して実施例3のサンプルを得た。乳清発酵液の乾燥粉体を加えない以外は実施例3と同様にして比較例5のサンプルを得た。
更に市販の乳清風味改良剤、コク味調味料及び日持ち向上剤として利用されているグリシン製剤についても実施例3と同様の処理を行い、それぞれ比較例6、比較例7、比較例8としてサンプルを得た。
これらサンプルについて10人のパネラーによるマスキング効果、旨味、弾力性についての評価の平均点を表3に記載した。評価基準は実施例2と同様である。
【0020】
【表3】
【0021】
次いで、上記サンプルを25℃で保存し、直後及び2日後の一般生菌数(/g)を測定した結果を表4に示した。実施例3は2日後も風味に変化が認められなかった。
表4より、本発明風味改良剤を使用すると顕著な日持ち向上効果が得られることが判明した。
【0022】
【表4】
【0023】
実施例4(カスタードクリームに対する風味向上効果)
殺菌乳、グラニュー糖、卵黄、コーンスターチ、生クリーム及びバターを原料としてカスタードクリームを製造した。実施例1で製造した乳清発酵液の乾燥粉末を全原料の0.5質量%添加し、常法により90℃で15分間、加熱しながら材料の混合を行い、冷却し実施例4のサンプルを得た。
別に、乳清発酵液の乾燥粉末を添加しなかった以外は実施例4と同様にしてカスタードクリームを製造し比較例9のサンプルを得た。更に、市販の乳清風味改良剤、及び日持ち向上剤として利用されているグリセリン脂肪酸エステルについても実施例4と同様の処理を行い、それぞれ比較例10、比較例11のサンプルを得た。これらのサンプルについて10人のパネラーによる風味改良効果、コク味についての評価の平均点を表5に記載した。
【0024】
【表5】
【0025】
なお、風味については「かなり良い」を+3点、「良い」を+2点、「少し良い」を+1点、「標準」を0点、「少し悪い」を−1点、「悪い」を−2点、「かなり悪い」を−3点の7段階で評価し、平均点数を表示した。
コク味向上効果については、「かなり良い」を+3点、「良い」を+2点、「少し良い」を+1点、「標準」を0点、「少し悪い」を−1点、「悪い」を−2点、「かなり悪い」を−3点の7段階で評価し、平均点数を表示した。
表5より、本発明乳清発酵物を使用するとカスタードクリームの風味が向上することが判明した。
【0026】
次いで、上記サンプルを30℃で保存し、直後、2日後及び3日後の一般生菌数(/g)の変化を測定し、その結果を表6に記載した。
実施例4は3日後も風味に変化が認められなかった。
表6より、本発明の風味改良剤を使用すると顕著な日持ち向上効果が得られることが判明した。
【0027】
【表6】
【0028】
【発明の効果】
本発明の抗菌ペプチド産生乳酸菌を乳清含有培地で発酵させると、食品に添加するのみで飲食品の異味、異臭をマスキングし、豊かな風味を付与し、更に日持ちを向上させて改良された風味を維持する飲食品の風味改良剤を提供することができる。
Claims (5)
- 乳清を含有する培地で、抗菌ペプチド産生性乳酸菌を培養して得られた飲食品の風味改良剤。
- 乳酸菌培養液が、抗菌ペプチド産生性乳酸菌を培養した乳清液から不溶物及び乳酸菌体を除去した培養液、その濃縮物或いは乾燥品であることを特徴とする飲食品の風味改良剤。
- 乳酸菌培養液が、乳清に分解酵素を作用させた後、乳酸菌を作用させた乳酸菌培養液であることを特徴とする請求項1又は2記載の飲食品の風味改良剤。
- 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載する飲食品の風味改良剤。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載する飲食品の風味改良剤を添加してなる風味が改良された飲食品。
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