JP2004277689A - 含フッ素共重合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位、(b)フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく重合単位、及び(c)イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸及び無水シトラコン酸からなる群から選ばれる1種以上に基づく重合単位を含有し、((a)+(b)+(c))に対して(a)が50〜99.8モル%、(b)が0.1〜49.99モル%、(c)が0.01〜5モル%であり、容量流速が0.1〜1000mm3/秒である含フッ素共重合体。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、耐ストレスクラック性に優れ、かつ合成樹脂、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス等の他材料との接着性に優れる含フッ素共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体等のフッ素系重合体は、半導体産業や自動車産業等の種々の分野で使用されている。
【0003】
フッ素系重合体は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、ガスバリア性等に優れるものの、他材料との接着性が充分でない。例えば、合成樹脂、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス等と接着させるために、フッ素系重合体の表面をコロナ放電処理やナトリウムエッチング処理等を行った上に、接着剤を塗布して接着させる方法等が用いられる。このような接着方法は、工程が煩雑で、生産性が低く、より簡易な方法で他材料と接着するフッ素系重合体の開発が要請されている。
【0004】
金属基材の表面にフッ素系重合体の塗膜を形成する方法としては、あらかじめサンドブラスト等で表面に凹凸形状を形成し、プライマーを塗布し、その上にフッ素系重合体の粒子を付着させ、ついでフッ素系重合体の融点以上の温度で溶融する方法等が挙げられる。この場合にも、コスト低減、生産性の向上の観点から、プライマーが不要で、金属等との接着性に優れるフッ素系重合体の開発が要請されている。
【0005】
近年、自動車用燃料タンク、燃料ホース等の材料として、フッ素重合体とポリアミドとの積層体が検討されている。フッ素系重合体の層とポリアミドの層とが強固に接着する必要がある。接着方法としては、薬液処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の方法により表面処理して、表面に種々の接着性の官能基を導入したフッ素系重合体のチューブに、必要に応じて接着剤を塗布した後、フッ素系重合体チューブの外側にポリアミドを押出し成形し積層する方法等が用いられる。しかし、この接着方法は、工程が煩雑で積層体の生産性が低い。そこで、フッ素系重合体の層の表面処理を必要とせず、かつ共押出し成形法等の簡便な方法によりフッ素系重合体とポリアミドとから積層体を成形できる、フッ素系重合体の開発が要請されている。
【0006】
そのようなフッ素系重合体として、特開平11−193312には、無水マレイン酸に基づく重合単位を含有する含フッ素共重合体が開示されている。該含フッ素共重合体は、他材料との接着性は向上するが、無水マレイン酸とフッ素モノマーとの共重合性が充分高くないので、該含フッ素共重合体の製造には、特殊な重合方法を用いる必要があった。そして、該方法では、種々の用途に合わせて設計された含フッ素共重合体を必ずしも充分に製造されなかった。
【0007】
英国特許1087999の実施例には、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位/イソブチレンに基づく重合単位/安息香酸ビニルに基づく重合単位/イタコン酸に基づく重合単位を含有する含フッ素共重合体が記載されている。該含フッ素共重合体は、金属との接着性に優れるものの、軟化温度が100℃と低く、耐熱性が不充分であった。
【0008】
米国特許3445434には、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位/エチレンに基づく重合単位/イタコン酸に基づく重合単位を含有するエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体が記載されている。しかし、このようなエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体は、耐熱性及びストレスクラック性等の機械的強度が充分でなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような背景のもとに開発が要請されている、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れ、かつ他材料との接着性に優れる含フッ素共重合体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位、(b)フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく重合単位、及び(c)イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸及び無水シトラコン酸からなる群から選ばれる1種以上に基づく重合単位を含有し、((a)+(b)+(c))に対して(a)が50〜99.8モル%、(b)が0.1〜49.99モル%、(c)が0.01〜5モル%であり、容量流速が0.1〜1000mm3/秒であることを特徴とする含フッ素共重合体を提供する。
【0011】
また、本発明は、請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層が基材の表面に形成されてなることを特徴とする物品、を提供する。
【0012】
本発明の含フッ素共重合体は、(a)テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという。)に基づく重合単位を、(b)フッ素モノマー(ただし、TFE及びCTFEを除く。)に基づく重合単位、及び(c)イタコン酸(以下、IACという。)、無水イタコン酸(以下、IAHという。)、シトラコン酸(以下、CACという。)及び無水シトラコン酸(以下、CAHという。)からなる群から選ばれる1種以上に基づく重合単位を含有する。
【0013】
本発明の含フッ素共重合体において、((a)+(b)+(c))に対して(a)が50〜99.8モル%、(b)が0.1〜49.99モル%、(c)が0.01〜5モル%である。ここで、((a)+(b)+(c))は、(a)と(b)と(c)との合計を表す。
【0014】
好ましくは、(a)が50〜99モル%、(b)が0.5〜49.9モル%、(c)が0.1〜3モル%であり、より好ましくは(a)が50〜98モル%、(b)が1〜49.9モル%、(c)が0.1〜2モル%である。(a)、(b)及び(c)のモル%がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、耐熱性、耐薬品性に優れる。さらに、(b)のモル比がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、成形性に優れ、耐ストレスクラック性等の機械物性に優れる。(c)のモル比がこの範囲にあると、含フッ素共重合体は、他材料との接着性に優れる。
【0015】
(b)におけるフッ素モノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、CF2=CFOR1(ここで、R1は炭素数1から10の酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基。)、CF2=CFOR2SO2X1(R2は炭素数1から10の酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基、X1はハロゲン原子又は水酸基。)、CF2=CFOR3CO2X2(ここで、R3は炭素数1から10の酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基、X2は水素原子又は炭素数3以下のアルキル基。)、CF2=CF(CF2)pOCF=CF2(ここで、Pは1又は2。)、CH2=CX3(CF2)QX4(ここで、X3は水素原子又はフッ素原子、Qは2から10の整数、X4は水素原子又はフッ素原子。)及びペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン)等が挙げられる。
【0016】
好ましくは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、CF2=CFOR1又はCH2=CX3(CF2)QX4であり、より好ましくは、CF2=CFOR1又はCH2=CX3(CF2)QX4である。
CF2=CFOR1としては、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8F等が挙げられる。好ましくは、CF2=CFOCF2CF2CF3である。
CH2=CX3(CF2)QX4としては、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H等が挙げられる。好ましくは、CH2=CH(CF2)4F又はCH2=CH(CF2)2Fである。
【0017】
(c)としては、IAC、IAH、CAC及びCAHからなる群から選ばれる1種以上の重合単位である。より好ましくは、(c)はIAH又はCAHに基づく重合単位である。以下、IAC、IAH、CAC及びCAHを合わせて酸モノマーという。
含フッ素共重合体の製造時に酸モノマーを用いると特開平11−193312に記載の無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法を用いることなく、酸モノマーに基づく重合単位を有する含フッ素共重合体を容易に製造できるので好ましい。含フッ素共重合体の製造時にIAN又はCANを用いると酸無水物に基づく重合単位を有する含フッ素共重合体が容易に製造できる。
【0018】
本発明の含フッ素共重合体において、全重合単位に対する((a)+(b)+(c))は、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましく、68モル%以上が最も好ましい。
【0019】
本発明の含フッ素共重合体が、(a)、(b)、(c)に加えて、さらに(d)素モノマーに基づく重合単位を含有することがましい。(d)における非フッ素モノマーとしては、エチレン、プロピレン等の炭素数3以下のオレフィン、酢酸ビニル等のビニルエステル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。好ましくは、エチレン、プロピレン又は酢酸ビニルである。
【0020】
(d)を含有する場合には、((a)+(b)+(c))/(d)のモル比が100/5〜90が好ましく、100/5〜80がより好ましく、100/10〜65が最も好ましい。
【0021】
本発明の含フッ素共重合体の最も好ましい具体例としては、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/IAH共重合体、TFE/CF2=CFOCF2CF2CF3/CAH共重合体、TFE/ヘキサフルオロプロピレン/IAH共重合体、TFE/ヘキサフルオロプロピレン/CAH共重合体、TFE/フッ化ビニリデン/IAH共重合体、TFE/フッ化ビニリデン/CAH共重合体、TFE/CH2=CH(CF2)4F/IAH/エチレン共重合体、TFE/CH2=CH(CF2)4F/CAH/エチレン共重合体、TFE/CH2=CH(CF2)2F/IAH/エチレン共重合体、TFE/CH2=CH(CF2)2F/CAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)4F/IAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)4F/CAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)2F/IAH/エチレン共重合体、CTFE/CH2=CH(CF2)2F/CAH/エチレン共重合体等が挙げられる。
【0022】
本発明の含フッ素共重合体と該フッ素共重合体以外の合成樹脂とを積層する場合には、共押出し成形が好ましい。共押し出し成形するために、含フッ素共重合体は、該合成樹脂の成形温度に近い成形温度を有することが好ましい。このため、(a)、(b)、(c)及び必要に応じて(d)の含有割合を前記範囲内で適宜調節し、含フッ素共重合体の融点を最適化することが好ましい。
【0023】
本発明の含フッ素共重合体の末端基として、エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシル基、カルボニルフルオリド基、酸無水物等の官能基を有することも、他の材料との接着性が向上するので好ましい。該末端基は、含フッ素共重合体の製造時に使用される、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定することにより導入することが好ましい。
【0024】
本発明の含フッ素共重合体の容量流速(以下、Q値という。)は、0.1〜1000mm3/秒である。Q値は、含フッ素共重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。本発明におけるQ値は、島津製作所製フローテスタを用いて、樹脂の融点より50℃高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの含フッ素共重合体の押出し速度である。Q値が小さすぎると押出し成形が困難となり、大きすぎると含フッ素共重合体の機械的強度が低下する。本発明の含フッ素共重合体のQ値は5〜500mm3/秒が好ましく、10〜200mm3/秒がより好ましい。
【0025】
本発明の含フッ素共重合体の軟化温度は120〜310℃が好ましく、150〜300℃がより好ましく、180〜300℃が最も好ましい。ここで、軟化温度は、英国特許1087999の7頁49〜54行に記載された、粘着温度であり、過熱された真ちゅう(銅/亜鉛合金)塊を接触させたとき、溶融痕跡が含フッ素共重合体上に付着する最も低い温度をいう。
【0026】
本発明の含フッ素共重合体の製造方法は特に制限はなく、ラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合が挙げられ、特に溶液重合が好ましい。
【0027】
ラジカル重合開始剤としては、半減期10時間である温度が好ましくは0℃〜100℃、より好ましくは20〜90℃であるラジカル重合開始剤である。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CF2)pCOO)2(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
【0028】
本発明において、含フッ素共重合体のQ値を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。
【0029】
エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシ基、カルボニルフルオリド基等の官能基を有する連鎖移動剤を用いると含フッ素共重合体にポリアミド等の含フッ素重合体以外の合成樹脂との反応性を有する末端基が導入されるので好ましい。該連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0030】
本発明において重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
【0031】
重合中の酸モノマーの濃度は、全モノマーに対して0.01〜5%が好ましく、0.1〜3%がより好ましく、0.1〜1%が最も好ましい。酸モノマーの濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向となる。前記範囲にあると製造時の重合速度が低下せず、かつ、含フッ素共重合体の接着性が良好である。重合中、酸モノマーが重合で消費されるに従って、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、酸モノマーの濃度をこの範囲に維持することが好ましい。
【0032】
本発明の物品は、含フッ素共重合体の層が基材の表面に形成されてなる。
基材としては、前記含フッ素重合体以外の合成樹脂、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属、ガラス、セラミックス等が挙げられる。該基材を被覆する方法としては、静電粉体成形法、回転成形法、溶射成形法、流動浸漬法、ディスパージョン法、溶媒キャスト法等が採用できる。
【0033】
静電粉体成形法では、含フッ素共重合体の粉末に負の高電圧を印加して帯電させ、基材表面に付着させ、ついで付着した含フッ素共重合体をその融点以上分解点以下の温度で5分〜1時間、加熱して溶融させ一定の厚さの皮膜を形成させることが好ましい。
【0034】
回転成形法では、缶状や筒状の基材の内部に含フッ素共重合体の粉末を挿入し、基材を回転させながら含フッ素共重合体の融点以上分解点以下の温度に5分〜1時間、基材を加熱して含フッ素共重合体を溶融させ基材の内面に均一な厚さの皮膜を形成させることが好ましい。
【0035】
溶射成形法では、予熱した基材に粉末溶射器を用い、半融解状態の含フッ素共重合体を吹き付けることによって皮膜を形成させることが好ましい。
流動浸漬法では、含フッ素共重合体の粉末を、底が通気性の多孔板である容器に入れ、多孔板より気体を送ることにより粉末を流動化させ、この流動層中に含フッ素共重合体の融点以上分解点以下に加熱した基材を1分以上1時間以下浸漬することにより均一な皮膜を形成させることが好ましい。
【0036】
ディスパージョン法では、含フッ素共重合体の微粉末を水又は溶剤に、浮遊又は懸濁させ、基材に噴射し、水又は溶剤を蒸発させて均一な粉末の堆積層を形成させる。ついで、含フッ素共重合体の融点以上分解点以下に1分〜1時間、加熱し溶融させ皮膜を形成させることが好ましい。
【0037】
含フッ素共重合体が溶媒に溶解できる場合には、キャスティング、浸漬等により基材の表面に塗布できる。
前記基材は表面を前処理されることも好ましい。前処理方法としては、サンドブラスト処理、リン酸塩処理、塩酸処理、硫酸処理等が挙げられる。前処理により基材と含フッ素共重合体との接着性が向上するので好ましい。
【0038】
本発明において、物品が、請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層と該フッ素共重合体以外の合成樹脂の層とが直接積層されてなる積層体であることが好ましい。
【0039】
本発明の含フッ素共重合体と含フッ素共重合体以外の合成樹脂との積層体を得る場合には、溶融成形法を用いることができる。溶融成形法のなかで、共押出し成形法が生産性の点で有利であり好ましい。共押出し成形法は、フィルム、チューブ等の形状の2層以上の積層体を得る方法である。2機以上の押出機の吐出口から出てくる溶融物は、溶融状態で接触しつつダイを通り積層体に成形される。押出し温度は、含フッ素共重合体及び含フッ素重合体以外の合成樹脂の融点及び分解温度により調節される。スクリュー温度は100〜400℃が好ましく、ダイ温度は150〜400℃が好ましい。スクリュー回転数は特に限定されないが10〜200回転/分が好ましい。含フッ素共重合体の押出機内の滞留時間は1〜20分が好ましい。
【0040】
本発明の含フッ素共重合体との共押出し成形法に用いられる、含フッ素共重合体以外の合成樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6(半芳香族系ポリアミド)等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリ(エチレン/VAC)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(VAC)、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレン/ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレエート等が挙げられる。
【0041】
含フッ素共重合体以外の合成樹脂としては、ポリアミド及びポリエステルが好ましく、ポリアミド12及びポリブチレンナフタレートがより好ましい。
【0042】
本発明における積層体は、含フッ素共重合体の層とポリアミドの層とが直接積層されてなる積層体であることがより好ましい。
【0043】
本発明の含フッ素共重合体の層が基材の表面に形成されてなる物品は、耐熱性、耐薬品性、耐食性、耐油性、耐候性、耐磨耗性、潤滑性等に優れることから、食品用、医療用、半導体用、化学プラント用等の反応器、容器、配管等、薬液輸送用タンクローリー、飛散防止ガラス板、飛散防止ガラスビン、耐磨耗性セラミックス部品等の用途に用いられる。
【0044】
また、本発明の含フッ素共重合体、及び含フッ素共重合体と含フッ素共重合体以外の合成樹脂との積層体は、耐熱性、耐薬品性、耐食性、耐油性、耐候性等に優れることから、自動車部品、工業材料、産業資材、電気電子部品、機械部品、事務機器用部品、家庭用品、容器、シート、フイルム、繊維、モノフィラメント、その他の任意の用途及び形状の各種成形品として利用される。
【0045】
より具体的には、自動車用燃料用チューブ又はホース、燃料フィラーネック、冷却液ホース、ブレーキホース、エアコンホース、燃料搬送用チューブ又はホース、石油掘削パイプ、ペイントスプレーチューブ、産業用ホース、食品用ホース等のチューブ、ホース類、農業用フィルム、ライニング、建築用内装材(壁紙等)、ラミネート鋼板等のフィルム、シート類、自動車ラジエータータンク、薬液ボトル、薬液タンク、バック、薬液容器、自動車用燃料用タンク等のタンク類、接着材等が挙げられる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例(例1〜3及び6)及び比較例(例4、5)を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、MIT折り曲げ試験及びIAH又はCAHの含有量は下記の方法によって測定した。
【0047】
[MIT折り曲げ試験]ASTM D2176に準じて測定した。すなわち、幅12.5mm、長さ130mm、厚さ0.23mmの試験片を東洋精機製作所製MIT測定器に装着し、荷重1.25kg、左右の折り曲げ角度は各々135度、折り曲げ回数は175回/分の条件下に試験片を屈曲させ、試験片が切断するまでの回数を測定した。この試験は含フッ素共重合体の耐屈曲疲労性試験であり、耐クラック性の指標となる。回数が多いほど耐クラック性に優れることを示す。
【0048】
[IAH又はCAHの含有量]含フッ素共重合体(A)をプレス成形して200μmのフィルムを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、含フッ素共重合体(A)中のIAH又はCAHに基づく重合単位におけるC=O伸縮振動の吸収ピークはいずれも1870cm−1に現れる。その吸収ピークの吸光度を測定し、M=aLの関係式を用いてIAH又はCAHに基づく重合単位の含有量M(モル%)を決定した。ここで、Lは1870cm−1における吸光度で、aは係数である。aとしては、IAHをモデル化合物として決定したa=0.87を用いた。
【0049】
[軟化温度]英国特許1087999の7頁49〜54行の記載に従い測定した。すなわち、軟化温度は、過熱された真ちゅう(銅/亜鉛合金)塊を接触させたとき、溶融痕跡が含フッ素共重合体上に付着する最も低い温度をいう。粘着温度ともいう。
【0050】
[例1]
内容積が94リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの71.3kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK225cb、以下、AK225cbという。)の20.4kg、CH2=CH(CF2)2Fの562g、IAHの4.45gを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFE/Eのモル比で89/11のガスで1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの0.7%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1Lを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるようにTFE/Eの59.5/40.5モル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して3.3モル%に相当する量のCH2=CH(CF2)2Fと0.8モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始9.9時間後、モノマー混合ガスの7.28kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0051】
得られたスラリ状の含フッ素共重合体1を、水の77kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、撹拌下105℃まで昇温して溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することにより、6.9kgの含フッ素共重合体1の造粒物1が得られた。
【0052】
溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体1の組成はTFEに基づく重合単位/CH2=CH(CF2)2Fに基づく重合単位/IAHに基づく重合単位/Eに基づく重合単位のモル比で93.5/5.7/0.8/62.9であった。融点は230℃、軟化温度は220℃、Q値は48mm3/秒、MIT折り曲げ回数は38900回であった。
【0053】
造粒物1を押出機を用いて、260℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素共重合体1のペレット1を作成した。
外層を形成するシリンダにポリアミド12(宇部興産社製、3030JLX)を供給し、内層を形成するシリンダにペレット1を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。ポリアミド12、ペレット1の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ240℃、260℃とした。共ダイの温度を260℃として2層共押出しを行い、2層の積層チューブを得た。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリアミド12の外層、含フッ素共重合体1の内層はそれぞれ0.7mm、0.3mmであった。内層と外層とは強固に接着していて剥がれず、剥離できなかった。
【0054】
[例2]
例1で得られた含フッ素共重合体1の造粒物1を300℃でプレス成形して、厚さ1mm、幅2.5cm長さ10cmのシートを得た。このシートをサンドブラスト処理したSUS304板上に置き260℃に20分間保持し、含フッ素共重合体1を溶融し、塗膜を形成させた。成形時、塗膜の変色はなく耐熱性に優れることがわかった。剥離試験を試みたが、含フッ素共重合体1の塗膜とSUS304板とは強固に接着しているために塗膜が破断した。
【0055】
含フッ素共重合体1の塗膜を有するSUS304板を濃塩酸に100℃で1週間浸漬後、剥離試験をしたが、強固に接着し剥離できなかった。
【0056】
造粒物1を300℃でプレス成形し、厚さ0.1mmのフィルムを作成し、スーパーUV試験機で500時間促進耐候性試験を実施したが、外観上の変化は何ら見られず、耐候性に優れることがわかった。
【0057】
[例3]
実施例1で用いた重合槽を脱気し、AK225cbの902kg、メタノールの0.216kg、CF3=CFOCF2CF2CF3の31.6kg、IAHの0.43kgを仕込み、重合槽内を50℃に昇温し、TFEを圧力が0.38MPaになるまで仕込んだ。重合開始剤溶液としてジ(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドの0.25%AK225cb溶液を50mL仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるようにTFEを連続的に仕込んだ。適宜前記重合開始剤溶液を追加添加し、TFEの仕込み速度をほぼ一定に保った。重合開始剤溶液は合計で120mL仕込んだ。また、連続的に仕込んだTFEの1モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始6時間後にTFEの7.0kgを仕込んだ時点で、重合槽内を室温まで冷却するとともに、未反応TFEをパージした。
【0058】
得られたスラリ状の含フッ素共重合体2を、水の75kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、撹拌下105℃まで昇温して溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で5時間乾燥することにより、7.5kgの含フッ素共重合体2の造粒物2が得られた。
【0059】
溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体2の組成は、TFEに基づく重合単位/CF2=CFOCF2CF2CF3に基づく重合単位/IAHに基づく重合単位=97.7/2.0/0.3であった。融点は292℃、軟化温度は280℃、Q値は15mm3/秒、MIT折り曲げ回数は46000回であった。
【0060】
含フッ素共重合体2の造粒物2を340℃のプレス成形して、厚さ1mm、幅2.5cm長さ10cmのシートを得た。このシートをサンドブラスト処理したSUS304板上に置き340℃で20分間保持し、含フッ素共重合体2を溶融し、塗膜を形成させた。成形時、塗膜の変色はなく耐熱性に優れることがわかった。剥離試験を試みたが、含フッ素共重合体2の塗膜とSUS304板とは強固に接着しているために塗膜が破断した。
【0061】
含フッ素共重合体2の塗膜を有するSUS304板を濃塩酸に100℃で1週間浸漬後、剥離試験をしたが、含フッ素共重合体2の塗膜とSUS304板とは強固に接着し剥離できなかった。また、含フッ素共重合体2を340℃にてプレス成形し、厚さ0.1mmのフィルムを作成し、スーパーUV試験機で500時間促進耐候性試験を実施したが、外観上の変化がなく、耐候性に優れるとわかった。
【0062】
[例4]
造粒物1のかわりに、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(旭硝子社製、フルオンETFE LM2300N)を用いた以外は例2と同様の方法でSUS304板上に塗膜を形成した。剥離試験の結果、フルオンETFE LM2300Nの塗膜とSUS304板との剥離強度は10N/cmで、剥離強度は充分でなかった。
【0063】
[例5]
例1で用いた重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの53.1kg、AK225cbの42.5kgを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFE/Eのモル比で89/11のモノマー混合ガスを仕込んで1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤溶液としてtert−ブチルペルオキシピバレートの0.7%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の0.2Lを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるようにTFE/Eの59.5/40.5モル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して0.8モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始6.5時間後、モノマー混合ガスの7.28kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
【0064】
得られたスラリ状の含フッ素共重合体3を、水の77kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、撹拌下105℃まで昇温して溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することにより、7.5kgの含フッ素共重合体3の造粒物3が得られた。
【0065】
溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、含フッ素共重合体3の組成はTFEに基づく重合単位/IAHに基づく重合単位/Eに基づく重合単位のモル比で99.2/0.8/67.0であった。融点は260℃、軟化温度は250℃、Q値は48mm3/秒、MIT折り曲げ回数は4900回であり、耐ストレスクラック性が充分でなかった。
【0066】
[例6]
外層を形成するシリンダにポリブチレンナフタレート(東洋紡社製、ペルプレン EN−5000)を供給し、内層を形成するシリンダに例1のペレット1を供給し、それぞれシリンダの輸送ゾーンに移送させた。ポリブチレンナフタレート、ペレット1の輸送ゾーンにおける加熱温度をそれぞれ250℃、260℃とした。共ダイの温度を260℃として2層共押出しを行い、2層の積層チューブを得た。積層チューブの外径は8mm、内径は6mm、厚さは1mmであり、ポリブチレンナフタレートの外層、含フッ素共重合体1の内層はそれぞれ0.7mm、0.3mmであった。内層と外層とは強固に接着していて剥がれず、剥離できなかった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の含フッ素共重合体は、含フッ素重合体以外の合成樹脂、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス等の基材との接着性に優れ、耐熱性、耐薬品性、耐候性、耐ストレスクラック性に優れる。
【0068】
また、本発明の含フッ素共重合体は、金属、ガラス、セラミックス等の基材との接着性に優れ、プライマーを使用することなく含フッ素共重合体の層が基材の表面に形成されてなる物品が得られる。該物品は、耐熱性、耐薬品性、耐食性、耐油性、耐候性、耐磨耗性、潤滑性等に優れる。
【0069】
本発明の含フッ素共重合体は、含フッ素重合体以外の合成樹脂等との共押出し成形性に優れ、含フッ素共重合体の層と該フッ素共重合体以外の合成樹脂の層とが直接積層され、該層間の接着性に優れる積層体を与える。
Claims (5)
- (a)テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位、(b)フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく重合単位、及び(c)イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸及び無水シトラコン酸からなる群から選ばれる1種以上に基づく重合単位を含有し、((a)+(b)+(c))に対して(a)が50〜99.8モル%、(b)が0.1〜49.99モル%、(c)が0.01〜5モル%であり、容量流速が0.1〜1000mm3/秒であることを特徴とする含フッ素共重合体。
- さらに(d)非フッ素モノマーに基づく重合単位を含有し、((a)+(b)+(c))/(d)のモル比が100/5〜90である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
- 請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層が基材の表面に形成されてなることを特徴とする物品。
- 前記物品が、請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層と該フッ素共重合体以外の合成樹脂の層とが直接積層されてなる積層体である請求項3に記載の物品。
- 請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体の層とポリアミドの層とが直接積層されてなる積層体。
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