JP6476664B2 - 樹脂被覆金属管およびその製造方法 - Google Patents

樹脂被覆金属管およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂被覆金属管およびその製造方法に関する。
車両(自動車等)等における各種配管(燃料輸送配管、ブレーキ系統配管等)には、高温環境下における耐熱性、塩水、バッテリー液等に対する耐食性、跳ね石等に対する耐衝撃性が必要とされる。そのため、該配管としては、耐熱性を有する金属管の外周面に耐食性、耐衝撃性を有する亜鉛めっき層を形成し、亜鉛めっき層の表面に耐食性、耐衝撃性を有する樹脂被覆層を形成した樹脂被覆金属管が用いられる。
樹脂被覆金属管としては、たとえば、下記のものが提案されている。
(1)金属管の外周面に電気めっきによって亜鉛めっき層を形成し、亜鉛めっき層の表面にプライマー層を形成し、プライマー層の表面にポリアミドを押出成形して樹脂被覆層を形成した樹脂被覆金属管(特許文献1)。
(2)金属管の外周面に電気めっきによって亜鉛めっき層を形成し、亜鉛めっき層の表面にプライマー層を形成し、プライマー層の表面にフッ素樹脂塗料を塗布して樹脂被覆層を形成した樹脂被覆金属管(特許文献2)。
(1)、(2)の樹脂被覆金属管においては、亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性が悪いため、亜鉛めっき層と樹脂被覆層との間にプライマー層を設ける必要がある。そのため、(1)、(2)の樹脂被覆金属管においては、プライマー層を形成するための工程が多くなる、プライマー層を形成する際の溶剤による環境負荷が増える、という問題がある。また、(1)の樹脂被覆金属管においては、樹脂被覆層がポリアミドであるため、フッ素樹脂に比べ、耐食性が劣る、という問題がある。また、(2)の樹脂被覆金属管においては、フッ素樹脂塗料を塗布する際の溶剤による環境負荷が増える、塗布によって形成される樹脂被覆層が薄いため、重ね塗りが必要であり、工程が多くなる、という問題がある。
特開平10−315295号公報 特開2003−269660号公報
本発明は、耐食性に優れ、プライマー層なしで亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性が良好であり、製造の際の工程数が少なく、かつ環境負荷が小さい樹脂被覆金属管;比較的少ない工程数、かつ比較的小さい環境負荷で、耐食性に優れ、プライマー層なしで亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性が良好である樹脂被覆金属管を製造できる方法を提供する。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]金属管と、前記金属管の外周面に形成された亜鉛めっき層と、前記亜鉛めっき層の表面に押出成形によって形成された樹脂被覆層とを有し、前記樹脂被覆層が、酸無水物残基を有する環状炭化水素単量体に基づく構成単位を有する溶融成形可能なフッ素樹脂(A)を含み、前記フッ素樹脂(A)中の前記酸無水物残基の含有量が前記フッ素樹脂(A)の主鎖炭素数1×10 個に対し600個以上10000個以下である樹脂材料からなる、樹脂被覆金属管。
[2]前記亜鉛めっき層と前記樹脂被覆層との界面における剥離強度が、20N/cm以上である、[1]の樹脂被覆金属管。
[3]下記工程(a)および下記工程(c)を有する、樹脂被覆金属管の製造方法。
(a)金属管の外周面に亜鉛めっき層を有するめっき金属管を用意する工程。
(c)前記めっき金属管の亜鉛めっき層の表面に、酸無水物残基を有する環状炭化水素単量体に基づく構成単位を有する溶融成形可能なフッ素樹脂(A)を含み、前記フッ素樹脂(A)中の前記酸無水物残基の含有量が前記フッ素樹脂(A)の主鎖炭素数1×10 個に対し600個以上10000個以下である樹脂材料を押出成形して樹脂被覆層を形成する工程。
[4]さらに下記工程(b)を有する、[3]の樹脂被覆金属管の製造方法。
(b)前記工程(a)と前記工程(c)との間に、前記めっき金属管の亜鉛めっき層に酸性水溶液を接触させる工程。
[5]前記酸性水溶液が、硝酸水溶液である、[4]の樹脂被覆金属管の製造方法。
[6]前記硝酸水溶液の濃度が、0.5〜5質量%であり、前記めっき金属管の亜鉛めっき層と前記硝酸水溶液との接触時間が、1〜30秒間である、[5]の樹脂被覆金属管の製造方法。
本発明の樹脂被覆金属管は、耐食性に優れ、プライマー層なしで亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性が良好であり、製造の際の工程数が少なく、かつ環境負荷が小さい。
本発明の樹脂被覆金属管の製造方法によれば、比較的少ない工程数、かつ比較的小さい環境負荷で、耐食性に優れ、プライマー層なしで亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性が良好である樹脂被覆金属管を製造できる。
本発明の樹脂被覆金属管の一例を示す断面図である。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「溶融めっき」とは、溶融金属中に被処理材を浸した後、引き上げて被処理材の表面に金属被覆を形成する方法を意味する。
「電気めっき」とは、金属塩を含む水溶液に被処理材および対極を浸し、被処理材を負極とし、対極を正極として電流を流して被処理材の表面に金属被覆を形成する方法を意味する。
「カルボニル基含有基」とは、構造中にカルボニル基(−C(=O)−)を有する基を意味する。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、メルトフローレート(以下、MFRと記す。)が0.1〜1000g/10分となる温度が存在することを意味する。
「構成単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位を意味する。構成単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「単量体」とは、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
<樹脂被覆金属管>
図1は、本発明の樹脂被覆金属管の一例を示す断面図である。
樹脂被覆金属管10は、金属管12と、金属管12の外周面に形成された亜鉛めっき層14と、亜鉛めっき層14の表面に形成された樹脂被覆層16とを有する。
(金属管)
金属管としては、鋼管、銅管、他の金属の管等が挙げられ、車両配管用樹脂被覆金属管の場合は、鋼管が好ましい。
鋼管としては、一重巻管、二重巻管、シームレス管等が挙げられる。鋼管は、表面、重合面等に銅層を有していてもよい。鋼管の鋼としては、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼等が挙げられる。
金属管の外径は、用途、材質によって異なるが、車両配管用樹脂被覆金属管の鋼管の場合は、20mm以下が好ましい。
金属管の肉厚は、用途、材質によって異なるが、車両配管用樹脂被覆金属管の鋼管の場合は、0.65〜1.2mmが好ましい。
(亜鉛めっき層)
亜鉛めっき層としては、溶融めっきによって形成されるものと、電気めっきによって形成されるものとが挙げられ、溶融めっきによって形成されるものが好ましい。車両配管用樹脂被覆金属管の鋼管の場合、従来の亜鉛めっき層は、通常、電気めっきによって形成されていた。亜鉛めっき層を溶融めっきによって形成することによって、短時間で電気めっきよりも膜厚の厚い亜鉛めっき層を形成できる。膜厚の厚い亜鉛めっき層は、樹脂被覆金属管に耐衝撃性を充分に付与できる。
亜鉛めっき層の材質としては、亜鉛または亜鉛合金が挙げられ、経済性・入手の容易性の点から、純度100%の亜鉛が好ましい。
亜鉛合金としては、めっき層自体の化学的安定性の点から、亜鉛と、亜鉛よりもイオン化傾向の高い金属を1種類以上と含む合金が好ましく、Zn−Al−Mg合金がより好ましい。
亜鉛合金(ただし、Zn−Al−Mg合金を除く。)における亜鉛の含有量は、鋼管に対する耐腐食性の点から、70質量%以上が好ましく、75〜95質量%がより好ましい。
Zn−Al−Mg合金としては、耐腐食性、表面外観の点から、、Mg:0.05〜10質量%、Al:4〜22質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなるものが好ましい。
溶融めっきによって形成されたZn−Al−Mg合金めっき層は、Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を有する。該三元共晶組織を形成しているAl相、Zn相およびZnMg相は、それぞれ不規則な大きさおよび形状を有し、互いに入り組んでいる。
Al相は、Al−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温でのAl”相に由来する。高温でのAl”相は、Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む。高温でのAl”相は、常温においては、通常、微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。
Zn相は、少量のAlを固溶し、場合によってはさらにMgを固溶するZn固溶体である。
ZnMg相は、Zn−Mgの二元系平衡状態図におけるZnが約84質量%の点付近に存在する金属間化合物相である。
Zn−Al−Mg合金めっき層の表面における三元共晶組織の面積率は高いほど好ましい。三元共晶組織の面積率を高くする、具体的にはZn相以外の相の面積率を20%以上とすることによって、樹脂被覆層との接着性を向上できる。また、金属管の耐食性を向上できる。
Zn−Al−Mg合金めっき層の表面におけるAl相の面積率は、15〜45%が好ましく、Zn相の面積率は、50〜80%が好ましく、ZnMg相の面積率は、5〜25%が好ましい。
三元共晶組織の面積率は、たとえば、めっき浴中のAlの濃度を低くすることによって高くすることができる。
三元共晶組織とその他の相とは、Zn−Al−Mg合金めっき層の表面を電子顕微鏡で観察することによって容易に区別できる。各相の面積率は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いてZn−Al−Mg合金めっき層の表面を分析することで求めることができる。
亜鉛めっき層の膜厚は、耐食性、耐衝撃性および経済性の点から、10〜50μmが好ましい。
亜鉛めっき層の付着量は、10〜600g/mが好ましい。亜鉛めっき層の付着量が10g/m以上であれば、耐食性がさらに向上する。亜鉛めっき層の付着量が600g/m以下であれば、金属管と亜鉛めっき層との延性が異なっていても、曲げ加工等の際に加工部において金属管と亜鉛めっき層との界面で剥離が発生しにくい。
(樹脂被覆層)
樹脂被覆層は、溶融成形によって形成される。樹脂被覆層を溶融成形によって形成することによって、一工程で塗布よりも膜厚の厚い樹脂被覆層を形成できる。膜厚の厚い樹脂被覆層は、樹脂被覆金属管に耐衝撃性を充分に付与できる。また、樹脂被覆層を溶融成形によって形成することによって、溶剤が不要となり、塗布に比べて製造の際の環境負荷が小さい。
樹脂被覆層の膜厚は、耐食性、耐衝撃性および経済性の点から、1〜50μmが好ましい。
亜鉛めっき層と樹脂被覆層との界面における剥離強度は、20N/cm以上が好ましく、25N/cm以上がより好ましく、30N/cm以上がさらに好ましい。
(樹脂材料)
樹脂被覆層は、フッ素樹脂(A)を含む樹脂材料からなる。
樹脂材料は、本発明の効果を損なわない範囲において、フッ素樹脂(A)以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、フッ素樹脂(A)以外の溶融成形可能な他の樹脂(B)、添加剤(C)等が挙げられる。
(フッ素樹脂(A))
フッ素樹脂(A)は、溶融成形可能なフッ素樹脂である。
フッ素樹脂(A)は、荷重49Nの条件下、フッ素樹脂(A)の融点よりも20℃以上高い温度において、MFRが0.1〜1000g/10分となる温度が存在するものであり、0.5〜100g/10分となる温度が存在するものが好ましく、1〜30g/10分となる温度が存在するものがより好ましく、5〜20g/10分となる温度が存在するものがさらに好ましい。MFRが前記下限値以上であれば、樹脂材料の流動性が良好となる。MFRが前記上限値以下であれば、樹脂被覆層の機械強度が良好となる。なお、MFRを測定する際の温度としては、フッ素樹脂(A)の融点に応じて、通常、297℃または372℃が採用される。
フッ素樹脂(A)のMFRは、フッ素樹脂(A)の分子量の目安であり、MFRが大きいと分子量が低く、小さいと分子量が大きいことを示す。フッ素樹脂(A)の分子量は、フッ素樹脂(A)の製造条件によって調整できる。たとえば、単量体の重合時に重合時間を短縮すると、分子量が小さくなり、MFRが大きくなる傾向がある。また、重合反応により得られたフッ素樹脂(A)を熱処理すると、架橋構造が形成され、分子量が大きくなり、MFRが小さくなる傾向がある。
フッ素樹脂(A)の融点は、180〜320℃が好ましく、200〜300℃がより好ましく、230〜300℃がさらに好ましい。フッ素樹脂(A)の融点が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂被覆層の耐熱性が良好になる。フッ素樹脂(A)の融点が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂材料の溶融成形性が良好になる。
フッ素樹脂(A)は、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する。
フッ素樹脂(A)が、反応性官能基を有することによって、亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性が良好となる。
フッ素樹脂(A)は、反応性官能基として、少なくともカルボニル基含有基を有することが好ましい。
カルボニル基含有基は、構造中にカルボニル基(−C(=O)−)を含む基である。カルボニル基含有基としては、たとえば、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を含む基、カーボネート基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基等が挙げられ、亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性がさらに良好となる点から、酸無水物残基が好ましい。
炭化水素基としては、たとえば、炭素数2〜8のアルキレン基等が挙げられる。なお、該アルキレン基の炭素数は、カルボニル基を含まない状態での炭素数である。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ハロホルミル基は、−C(=O)−X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。すなわち、ハロホルミル基としてはフルオロホルミル基(カルボニルフルオリド基ともいう。)が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。該アルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。
フッ素樹脂(A)中の反応性官能基の含有量は、フッ素樹脂(A)の主鎖炭素数1×10個に対し、500個以上が好ましく、600個以上がより好ましく、800個以上がさらに好ましい。フッ素樹脂(A)中の反応性官能基の含有量は、フッ素樹脂(A)の主鎖炭素数1×10個に対し、10000個以下が好ましく、5000個以下がより好ましく、3000個以下がさらに好ましい。
反応性官能基の含有量が前記下限値以上であれば、亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性がさらに良好となる。反応性官能基の含有量が前記上限値以下であれば、樹脂被覆層の耐熱性と接着性とのバランスに優れる。
フッ素樹脂(A)の反応性官能基の含有量は、後述する方法(1)を採用してフッ素樹脂(A)を製造することによって、前記範囲内に調整しやすい。
フッ素樹脂(A)の反応性官能基の含有量は、核磁気共鳴(NMR)分析、赤外吸収スペクトル分析等の方法によって測定できる。たとえば、特開2007−314720号公報に記載のように赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、フッ素樹脂(A)を構成する全構成単位中の反応性官能基を有する構成単位の割合(モル%)を求め、該割合から、反応性官能基の含有量を算出できる。
フッ素樹脂(A)は、フッ素樹脂(A)の製造に用いられた単量体、連鎖移動剤、重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する反応性官能基を有する。
フッ素樹脂(A)としては、単量体に由来する反応性官能基を有するフッ素樹脂(A)が好ましい。該フッ素樹脂(A)は、後述する方法(1)で製造できる。該方法(1)によれば、反応性官能基の含有量を容易に制御できるため、接着性が良好である樹脂被覆層を形成し得るフッ素樹脂(A)が得られやすい。
(含フッ素共重合体(A1))
単量体に由来する反応性官能基を有するフッ素樹脂(A)としては、樹脂被覆層の耐食性、耐衝撃性、接着性がさらに優れる点から、下記単量体(m1)に基づく構成単位(u1)と、下記単量体(m2)に基づく構成単位(u2)と、下記単量体(m3)に基づく構成単位(u3)とを有する含フッ素共重合体(A1)が好ましい。
単量体(m1):テトラフルオロエチレン。
単量体(m2):反応性官能基を有する単量体。
単量体(m3):単量体(m1)および単量体(m2)以外の単量体。
構成単位(u1):
構成単位(u1)を構成する単量体(m1)は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEとも記す。)である。
含フッ素共重合体(A1)が構成単位(u1)を有することによって、樹脂被覆層の耐食性、耐衝撃性が良好となる。
構成単位(u2):
構成単位(u2)を構成する単量体(m2)は、反応性官能基を有する単量体である。
含フッ素共重合体(A1)が構成単位(u2)を有することによって、樹脂被覆層の接着性が良好となる。
単量体(m2)としては、樹脂被覆層の接着性がさらに優れる点から、反応性官能基として酸無水物残基を有する環状炭化水素単量体が好ましい。
該環状炭化水素単量体としては、無水イタコン酸(以下、IAHとも記す。)、無水シトラコン酸(以下、CAHとも記す。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、NAHとも記す。)、無水マレイン酸等が挙げられる。該環状炭化水素単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
該環状炭化水素単量体としては、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法(特開平11−193312号公報参照。)を用いることなく、酸無水物残基を有する含フッ素共重合体(A1)を容易に製造できる点から、IAH、CAHおよびNAHからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、樹脂被覆層の接着性がさらに優れる点から、NAHが好ましい。
構成単位(u3):
構成単位(u3)を構成する単量体(m3)は、単量体(m1)および単量体(m2)以外の単量体である。
単量体(m3)としては、下記単量体(m31)と、下記単量体(m32)とが挙げられる。単量体(m3)としては、樹脂被覆層の耐熱性がさらに優れる点からは、単量体(m31)が好ましい。単量体(m3)としては、樹脂材料の溶融成形性が優れる点からは、単量体(m32)が好ましい。
単量体(m31):含フッ素単量体(ただし、単量体(m1)を除く。)。
単量体(m32):非含フッ素単量体(ただし、単量体(m2)を除く。)。
単量体(m31)としては、耐熱性および機械特性の点から、重合性二重結合を1つ有する含フッ素単量体が好ましい。該含フッ素単量体としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
フルオロオレフィン(ただし、単量体(m1)を除く。):フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、VdFとも記す。)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEとも記す。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPとも記す。)等。
CF=CFORf1(ただし、Rf1は、炭素原子間に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である。)。
CF=CFORf2SO(ただし、Rf2は、炭素原子間に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基であり、Xは、ハロゲン原子または水酸基である。)。
CF=CFORf3CO(ただし、Rf3は、炭素原子間に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基であり、Xは、水素原子または炭素数3以下のアルキル基である。)。
CF=CF(CFOCF=CF(ただし、pは、1または2である。)。
CH=CX(CF(ただし、Xは、水素原子またはフッ素原子であり、qは、2〜10の整数であり、Xは、水素原子またはフッ素原子である。)。
ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン)等。
単量体(m31)としては、耐熱性がさらに優れる点から、VdF、CTFE、HFP、CF=CFORf1、およびCH=CX(CFからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、CF=CFORf1、HFPがより好ましい。
CF=CFORf1としては、下記のものが挙げられ、耐熱性がさらに優れる点から、CF=CFOCFCFCF(以下、PPVEとも記す。)が好ましい。
CF=CFOCFCF
CF=CFOCFCFCF
CF=CFOCFCFCFCF
CF=CFO(CFF等。
CH=CX(CFとしては、下記のものが挙げられ、耐熱性がさらに優れる点から、CH=CH(CFF、またはCH=CH(CFFが好ましい。
CH=CH(CFF、
CH=CH(CFF、
CH=CH(CFF、
CH=CF(CFH、
CH=CF(CFH等
単量体(m31)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(m32)としては、溶融成形性の点から、重合性二重結合を1つ有する非含フッ素単量体が好ましい。該非含フッ素単量体としては、たとえば、下記のものが挙げられ、溶融成形性、入手容易性の点から、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルが好ましく、エチレンがより好ましい。
炭素数3以下のオレフィン:エチレン、プロピレン等。
ビニルエステル:酢酸ビニル等。
単量体(m32)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
構成単位(u3)を構成する単量体(m3)が単量体(m31)である場合、構成単位(u1)と構成単位(u2)と構成単位(u3)との合計モル量に対して、構成単位(u1)が80〜99.69モル%であり、構成単位(u2)が0.01〜0.5モル%であり、構成単位(u3)が0.3〜19.99モル%であることが好ましく、構成単位(u1)が90〜99.58モル%であり、構成単位(u2)が0.02〜0.3モル%であり、構成単位(u3)が0.4〜9.98モル%であることがより好ましく、構成単位(u1)が97.5〜99.5モル%であり、構成単位(u2)が0.05〜0.3モル%であり、構成単位(u3)が0.45〜2.45モル%であることがさらに好ましい。
各構成単位の含有量が前記範囲内であれば、樹脂被覆層の耐食性、耐衝撃性、接着性、および耐熱性が良好となる。
構成単位(u3)を構成する単量体(m3)が単量体(m32)である場合、構成単位(u1)と構成単位(u2)と構成単位(u3)との合計モル量に対して、構成単位(u1)が50〜99.69モル%であり、構成単位(u2)が0.01〜1.0モル%であり、構成単位(u3)が0.3〜49.99モル%であることが好ましく、構成単位(u1)が52〜69.98モル%であり、構成単位(u2)が0.02〜1.0モル%であり、構成単位(u3)が30〜47.98モル%であることがより好ましく、構成単位(u1)が53〜64.95モル%であり、構成単位(u2)が0.05〜0.8モル%であり、構成単位(u3)が35〜46.95モル%であることがさらに好ましい。
各構成単位の含有量が前記範囲内であれば、樹脂被覆層の耐食性、耐衝撃性、接着性、および樹脂材料の溶融成形性が良好となる。
構成単位(u3)を構成する単量体(m3)が単量体(m31)および単量体(m32)である場合、構成単位(u1)と構成単位(u2)と構成単位(u3)との合計モル量に対して、構成単位(u1)が50〜99.69モル%であり、構成単位(u2)が0.01〜1.0モル%であり、構成単位(u3)が1.0〜49.99モル%であることが好ましく、構成単位(u1)が52〜69.98モル%であり、構成単位(u2)が0.02〜1.0モル%であり、構成単位(u3)が30〜47.98モル%であることがより好ましく、構成単位(u1)が53〜64.95モル%であり、構成単位(u2)が0.05〜0.8モル%であり、構成単位(u3)が35〜46.95モル%であることがさらに好ましい。
各構成単位の含有量が前記範囲内であれば、樹脂被覆層の耐食性、耐衝撃性、接着性、耐熱性、および樹脂材料の溶融成形性が良好となる。
構成単位(u3)を構成する単量体(m3)が単量体(m31)および単量体(m32)である場合、単量体(m31)に基づく構成単位(u31)との単量体(m32)に基づく構成単位(u32)とモル比(構成単位(u31)/構成単位(u32))は、0/100〜100/0が好ましく、1/99〜10/90がより好ましい。
各構成単位の含有量は、含フッ素共重合体(A1)の溶融NMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等により算出できる。
なお、含フッ素共重合体(A1)が構成単位(u1)と構成単位(u2)と構成単位(u3)とからなり、構成単位(u2)が1つの酸無水物残基を有する環状炭化水素単量体に基づく場合、構成単位(u2)の含有量が、構成単位(u1)と構成単位(u2)と構成単位(u3)との合計モル量に対して0.01モル%とは、含フッ素共重合体(A1)中の酸無水物残基の含有量が含フッ素共重合体(A1)の主鎖炭素数1×10個に対して100個であることに相当する。構成単位(u2)の含有量が、構成単位(u1)と構成単位(u2)と構成単位(u3)との合計モル量に対して5モル%とは、含フッ素共重合体(A1)中の酸無水物残基の含有量が含フッ素共重合体(A1)の主鎖炭素数1×10個に対して50000個であることに相当する。
構成単位(u2)が、酸無水物残基を有する環状炭化水素単量体に基づく場合、含フッ素共重合体(A1)は、該環状炭化水素単量体の一部が加水分解して形成されたジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、マレイン酸等。)に基づく構成単位を有する場合がある。ジカルボン酸に基づく構成単位を有する場合、該構成単位の含有量は、構成単位(u2)の含有量に含まれるものとする。
構成単位(u3)を構成する単量体(m3)が単量体(m31)である場合、含フッ素共重合体(A1)の好ましい具体例としては、TFE/PPVE/NAH共重合体、TFE/PPVE/IAH共重合体、TFE/PPVE/CAH共重合体、TFE/HFP/IAH共重合体、TFE/HFP/CAH共重合体、TFE/VdF/IAH共重合体、TFE/VdF/CAH共重合体等が挙げられる。
構成単位(u3)を構成する単量体(m3)が単量体(m32)である場合、含フッ素共重合体(A1)の好ましい具体例としては、TFE/IAH/エチレン共重合体等が挙げられる。
構成単位(u3)を構成する単量体(m3)が単量体(m31)および単量体(m32)である場合、含フッ素共重合体(A1)の好ましい具体例としては、TFE/CH=CH(CFF/IAH/エチレン共重合体、TFE/CH=CH(CFF/CAH/エチレン共重合体、TFE/CH=CH(CFF/IAH/エチレン共重合体、TFE/CH=CH(CFF/CAH/エチレン共重合体等が挙げられる。
(フッ素樹脂(A)の製造方法)
フッ素樹脂(A)の製造方法としては、たとえば、下記の方法(1)〜(3)が挙げられ、反応性官能基の含有量を容易に制御でき、接着性が良好である樹脂被覆層を形成し得るフッ素樹脂(A)が得られやすい点から、方法(1)が好ましい。
方法(1):重合反応でフッ素樹脂(A)を製造する際に、反応性官能基を有する単量体を用いる方法。
方法(2):反応性官応基を有する連鎖移動剤を用いて、重合反応でフッ素樹脂(A)を製造する方法。ただし、ここで用いる連鎖移動剤は、該連鎖移動剤がラジカルを発生することに伴って開裂しない反応性官能基を有するものであることが必要である。
方法(3):反応性官応基を有するラジカル重合開始剤等の重合開始剤を用いて、重合反応でフッ素樹脂(A)を製造する方法。ただし、ここで用いるラジカル重合開始剤は、該重合開始剤がラジカルを発生することに伴って開裂しない反応性官能基を有するものであることが必要である。
方法(1)によれば、単量体に由来する反応性官能基を有するフッ素樹脂(A)を製造できる。この場合、反応性官能基は、フッ素樹脂(A)を構成する構成単位に存在する。
方法(2)によれば、連鎖移動剤に由来する反応性官能基を有するフッ素樹脂(A)を製造できる。この場合、反応性官能基は、フッ素樹脂(A)の主鎖末端に末端基として存在する。
方法(3)によれば、重合開始剤に由来する反応性官能基を有するフッ素樹脂(A)を製造できる。この場合、反応性官能基は、フッ素樹脂(A)の主鎖末端に末端基として存在する。
フッ素樹脂(A)の有する反応性官能基が、該フッ素樹脂(A)の製造に用いられた単量体、連鎖移動剤および重合開始剤のうちの2種以上に由来する場合、該フッ素樹脂(A)は、前記方法(1)〜(3)のうちの2種以上を併用することによって製造できる。
重合反応でフッ素樹脂(A)を製造する場合、重合方法としては、フッ素樹脂(A)のMFRの制御の点から、ラジカル重合開始剤を用いる重合方法が好ましい。
重合方法としては、塊状重合法;有機溶媒(フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等)を用いる溶液重合法;水性媒体と必要に応じて適当な有機溶媒とを用いる懸濁重合法;水性媒体と乳化剤とを用いる乳化重合法が挙げられ、フッ素樹脂(A)のMFRの制御の点から、溶液重合法が好ましい。
重合開始剤に由来する反応性官能基を有するフッ素樹脂(A)を製造する場合には、反応性官能基を有するラジカル重合開始剤を用いる。
一方、重合開始剤に由来する反応性官能基を有しないフッ素樹脂(A)を製造する場合には、重合開始剤を用いてもよく、用いなくてもよい。重合開始剤を用いる場合は、反応性官能基を有しないラジカル重合開始剤を用いる。
ラジカル重合開始剤としては、10時間半減期温度が0〜100℃である開始剤が好ましく、20〜90℃である開始剤がより好ましい。
反応性官能基を有するラジカル重合開始剤としては、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
反応性官能基を有しないラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル等)、非フッ素系ジアシルペルオキシド(イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等)、ペルオキシジカーボネート(ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等)、ペルオキシエステル(tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等)、含フッ素ジアシルペルオキシド((Z(CFCOO)(ただし、Zは、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、rは、1〜10の整数である。)で表される化合物等)、無機過酸化物(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)等が挙げられる。
連鎖移動剤に由来する反応性官能基を有するフッ素樹脂(A)を製造する場合には、反応性官能基を有する連鎖移動剤を用いる。
一方、連鎖移動剤に由来する反応性官能基を有しないフッ素樹脂(A)を製造する場合には、連鎖移動剤を用いてもよく、用いなくてもよい。連鎖移動剤を用いる場合は、反応性官能基を有しない連鎖移動剤を用いる。
反応性官能基を有する連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられ、相手材料に対する反応性の高さの点から、無水物残基を有する無水酢酸が好ましい。
反応性官能基を有しない連鎖移動剤としては、アルコール(メタノール、エタノール等)、クロロフルオロハイドロカーボン(1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等)、ハイドロカーボン(ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等)等が挙げられる。
溶液重合法で用いる有機溶媒としては、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、クロロヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル等が挙げられる。炭素数は、4〜12が好ましい。
ペルフルオロカーボンとしては、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロシクロヘキサン等が挙げられる。
ヒドロフルオロカーボンとしては、1−ヒドロペルフルオロヘキサン等が挙げられる。
クロロヒドロフルオロカーボンとしては、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
ヒドロフルオロエーテルとしては、メチルペルフルオロブチルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチル2,2,1,1−テトラフルオロエチルエーテル等が挙げられる。
重合温度は、0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。
重合圧力は、0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。
重合時間は、1〜30時間が好ましい。
含フッ素共重合体(A1)の構成単位(u2)を構成する単量体(m2)として、酸無水物残基を有する環状炭化水素単量体を用いる場合、該環状炭化水素単量体の重合中の濃度は、全単量体に対して0.01〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましく、0.1〜2モル%がさらに好ましい。該環状炭化水素単量体の濃度が前記範囲内にあれば、製造時の重合速度が適度となる。該環状炭化水素単量体の濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向がある。重合中、該環状炭化水素単量体が消費されるにしたがい、消費された量を連続的または断続的に重合槽内に供給し、該環状炭化水素単量体の濃度を前記範囲内に維持することが好ましい。
(他の樹脂(B))
他の樹脂(B)としては、ポリエーテルイミド、ポリアリールケトン、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。
(添加剤(C))
添加剤(C)としては、無機フィラー、顔料等が挙げられる。
(用途)
本発明の樹脂被覆金属管の用途としては、輸送機器(車両(自動車、鉄道車両等)、航空機等)、重機械(建設機械、土木機械等)等における各種配管(燃料輸送配管、ブレーキ系統配管等)が挙げられる。
本発明の樹脂被覆金属管は、燃料輸送配管・ブレーキ系統配管として有用であり、車両燃料輸送配管・車両ブレーキ系統配管として特に有用である。
(作用機序)
以上説明した本発明の樹脂被覆金属管にあっては、金属管をベースとしているため、耐熱性を有する。
また、亜鉛めっき層の表面に溶融成形によって形成された樹脂被覆層を有するため、製造の際に溶剤を用いる必要がなく、環境負荷が小さい。また、製造の際に重ね塗りを行う必要がなく、工程数が少ない。
また、樹脂被覆層がフッ素樹脂であるため、ポリアミドに比べ、耐食性に優れる。
また、樹脂被覆層が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する溶融成形可能なフッ素樹脂(A)を含む樹脂材料からなるため、プライマー層なしで亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性が良好である。また、製造の際にプライマー層を形成する必要がないため、工程数が少なく、環境負荷が小さい。
樹脂被覆層を溶融成形によって形成することによって、亜鉛めっき層と樹脂被覆層とが強固に接着する。これは、亜鉛めっき層の表面における水酸基と、樹脂被覆層に含まれるフッ素樹脂(A)の反応性官能基との相互作用(たとえば、水素結合)によるものと推定される。
<樹脂被覆金属管の製造方法>
本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)を有する方法である。
(a)金属管の外周面に溶融めっきによって形成された亜鉛めっき層を有するめっき金属管を用意する工程。
(b)前記工程(a)の後、必要に応じてめっき金属管の亜鉛めっき層に酸性水溶液を接触させる工程。
(c)前記工程(a)または前記工程(b)の後、めっき金属管の亜鉛めっき層の表面に、フッ素樹脂(A)を含む樹脂材料を溶融成形して樹脂被覆層を形成する工程。
(工程(a))
めっき金属管を用意する方法としては、(a1)金属管の外周面に溶融めっきまたは電気めっきによって亜鉛めっき層を形成することによってめっき金属管を得る方法、(a2)金属管の製造メーカからめっき金属管を購入する方法等が挙げられる。
溶融めっきまたは電気めっきの方法としては、公知の方法を用いればよい。
(工程(b))
めっき金属管の亜鉛めっき層に酸性水溶液を接触させる方法としては、(b1)めっき金属管を酸性水溶液に浸漬する方法、(b2)めっき金属管の亜鉛めっき層に酸性水溶液をかけ流す方法等が挙げられ、確実に亜鉛めっき層に酸性水溶液を接触させることができる点から、方法(b1)が好ましい。
めっき金属管の亜鉛めっき層に酸性水溶液を接触させることによって、亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性がさらに良好になる。
酸性水溶液としては、硝酸水溶液、塩酸水溶液、硫酸水溶液等が挙げられ、短時間での表面洗浄性の点から、硝酸水溶液が好ましい。
硝酸水溶液の濃度は、0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。硝酸水溶液の濃度が前記下限値以上であれば、充分な表面洗浄効果が得られ、不純物等が充分に取り除かれる。硝酸水溶液の濃度が前記上限値以下であれば、めっき層の外観光沢が保たれる。
めっき金属管の亜鉛めっき層と酸性水溶液との接触時間は、1〜30秒間が好ましく、5〜15秒間がより好ましい。接触時間が前記下限値以上であれば、充分な表面洗浄効果が得られる。接触時間が前記上限値以下であれば、生産効率を下げずに表面洗浄が行える。
(工程(c))
溶融成形法としては、押出成形法が挙げられる。
押出成形法においては、ダイスクロスヘッドが設けられた押出機等を用いる。
押出成形法による樹脂被覆層の形成方法としては、フッ素樹脂(A)を含む樹脂材料を押出機にて溶融し、ダイスクロスヘッドにめっき金属管を通過させながら、ダイスの吐出口からめっき金属管のまわりに溶融した樹脂材料を押し出して、めっき金属管のまわりに樹脂被覆層を形成する方法が挙げられる。
押出成形の条件(シリンダ温度、ダイス温度、押出量、ライン速度等)は、フッ素樹脂の種類、樹脂被覆層の膜厚等に応じて適宜設定すればよい。
(作用機序)
以上説明した本発明の樹脂被覆金属管の製造方法にあっては、金属管をベースとしているため、耐熱性を有する樹脂被覆金属管を製造できる。
また、亜鉛めっき層の表面に溶融成形によって樹脂被覆層を形成しているため、溶剤を用いる必要がなく、環境負荷が小さい。また、重ね塗りを行う必要がなく、工程数が少ない。
また、樹脂被覆層がフッ素樹脂であるため、ポリアミドに比べ、耐食性に優れる樹脂被覆金属管を製造できる。
また、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有する溶融成形可能なフッ素樹脂(A)を含む樹脂材料を用いて樹脂被覆層を形成しているため、プライマー層なしで亜鉛めっき層と樹脂被覆層との接着性が良好な樹脂被覆金属管を製造できる。また、プライマー層を形成する必要がないため、工程数が少なく、環境負荷が小さい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。
例1〜4は、実験例であり、例5は、実施例である。
(融点)
示差走査熱量計(DSC装置、セイコーインスツル社製)を用い、フッ素樹脂を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点とした。
(MFR)
メルトインデクサー(テクノセブン社製)を用い、297℃にて、49Nの荷重下に直径:2mm、長さ:8mmのノズルから10分間に流出するフッ素樹脂の質量(g)を測定し、MFRとした。
(容量流速)
容量流速(Q値)は、フッ素樹脂の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。本実施例におけるQ 値は、島津製作所社製のフローテスタを用いて、297℃にて、68.65Nの荷重下に直径:2.1mm、長さ:8mmのオリフィス中にフッ素樹脂を押し出すときの押出し速度である。
(剥離強度)
樹脂被覆金属板における亜鉛めっき層と樹脂被覆層との界面を約1cm剥がして剥離強度測定用試験片を作製した。試験片の樹脂被覆層を引張試験装置にて50mm/分で剥がしたときの荷重を試験片の幅で除して剥離強度を算出した。
(含フッ素共重合体(A1)の製造)
内容積が94Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロペルフルオロヘキサンの71.3kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK225cb)の20.4kg、CH=CH(CFFの562g、IAHの4.45gを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFE/エチレンの89/11モル比の単量体混合ガスで1.5MPa[gage]まで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの0.7質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1Lを仕込み、重合を開始させた。重合中、圧力が一定になるようにTFE/エチレンの60/40モル比の単量体混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとエチレンの合計モル数に対して3.3モル%に相当する量のCH=CH(CFFおよび0.5モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始から9.9時間後、単量体混合ガスの7.28kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体(A1−1)を、水の77kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、撹拌下に105℃まで昇温して溶媒を留出除去しながら造粒物を造粒した。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することによって、6.9kgの含フッ素共重合体(A1−1)の造粒物を得た。
含フッ素共重合体(A1−1)について、溶融NMR分析、フッ素含有量分析および赤外吸収スペクトル分析を行った。該分析の結果から、含フッ素共重合体(A1−1)におけるTFEに基づく構成単位/CH=CH(CFFに基づく構成単位/IAHに基づく構成単位/エチレンに基づく構成単位の比は、58.6/2.0/0.3/39.1(モル比)であった。含フッ素共重合体(A1−1)中の反応性官能基の含有量は、含フッ素共重合体(A1−1)の主鎖炭素数1×10個に対し、3000個であった。含フッ素共重合体(A1−1)の融点は240℃であり、MFRは18.5g/10分であり、Q値は28mm/秒であった。
(例1)
加熱プレス(テスター産業社製、SA301)を用い、含フッ素共重合体(A1−1)を成形して、フッ素樹脂シート1(厚さ:200μm)を得た。
鋼板の表面に溶融めっきによって亜鉛めっき層が形成されためっき鋼板(JFEスチール社製、ガルバジンク、<鋼板>縦:10cm、横:10cm、厚さ:1.0mm、<めっき層>亜鉛純度:100%、厚さ:30μm)を用意した。
めっき鋼板にフッ素樹脂シート1を密着させ、温度:350℃、圧力:5MPaの条件下で120秒間熱圧着を行い、樹脂被覆金属板を得た。
樹脂被覆金属板における樹脂被覆層と亜鉛めっき層との界面における剥離強度は、25N/cmであった。
(例2)
例1と同じめっき鋼板を1質量%の硝酸溶液に10秒間浸漬した後、水洗、乾燥した。
硝酸溶液に浸漬した後のめっき鋼板にフッ素樹脂シート1を密着させ、温度:350℃、圧力:5MPaの条件下で120秒間熱圧着を行い、樹脂被覆金属板を得た。
樹脂被覆金属板における樹脂被覆層と亜鉛めっき層との界面における剥離強度は、41N/cmであった。
(例3)
含フッ素共重合体(A1−1)を、反応性官能基を有しないフッ素樹脂(旭硝子社製、フルオン(登録商標)ETFE LM−720AP)に変更した以外は、例1と同様にして樹脂被覆金属板を得た。
樹脂被覆金属板における樹脂被覆層と亜鉛めっき層との界面における剥離強度は、5N/cmであった。
(例4)
含フッ素共重合体(A1−1)を、反応性官能基を有しないフッ素樹脂(ダイキン社製、ネオフロン(登録商標)ETFE EP−521)に変更した以外は、例1と同様にして樹脂被覆金属板を得た。
樹脂被覆金属板における樹脂被覆層と亜鉛めっき層との界面における剥離強度は、7N/cmであった。
(例5)
鋼管の表面に溶融めっきによって亜鉛めっき層が形成されためっき鋼管(<鋼管>外径:480mm、肉厚:1.0mm、<めっき層>亜鉛純度:100%、厚さ:30μm)を用意した。
ダイスクロスヘッドが設けられた押出機(田辺プラスチック社製、VDC40−100)を用意した。押出成形の条件は、シリンダ温度:300℃、ダイス温度:300℃、押出量:0.5kg/時間、ライン速度:10m/分とした。
含フッ素共重合体(A1−1)を押出機にて溶融し、ダイスクロスヘッドにめっき鋼管を通過させながら、ダイスの吐出口からめっき鋼管のまわりに溶融した含フッ素共重合体(A1−1)を押し出して、めっき鋼管のまわりに樹脂被覆層(膜厚:100μm)を形成し、樹脂被覆金属管を得た。
本発明の樹脂被覆金属管は、輸送機器(車両(自動車、鉄道車両等)、航空機等)、重機械(建設機械、土木機械等)等における各種配管(燃料輸送配管、ブレーキ系統配管等)として有用である。
10 樹脂被覆金属管
12 金属管
14 亜鉛めっき層
16 樹脂被覆層

Claims (6)

  1. 金属管と、
    前記金属管の外周面に形成された亜鉛めっき層と、
    前記亜鉛めっき層の表面に押出成形によって形成された樹脂被覆層とを有し、
    前記樹脂被覆層が、酸無水物残基を有する環状炭化水素単量体に基づく構成単位を有する溶融成形可能なフッ素樹脂(A)を含み、前記フッ素樹脂(A)中の前記酸無水物残基の含有量が前記フッ素樹脂(A)の主鎖炭素数1×10 個に対し600個以上10000個以下である樹脂材料からなる、樹脂被覆金属管。
  2. 前記亜鉛めっき層と前記樹脂被覆層との界面における剥離強度が、20N/cm以上である、請求項1に記載の樹脂被覆金属管。
  3. 下記工程(a)および下記工程(c)を有する、樹脂被覆金属管の製造方法。
    (a)金属管の外周面に亜鉛めっき層を有するめっき金属管を用意する工程。
    (c)前記めっき金属管の亜鉛めっき層の表面に、酸無水物残基を有する環状炭化水素単量体に基づく構成単位を有する溶融成形可能なフッ素樹脂(A)を含み、前記フッ素樹脂(A)中の前記酸無水物残基の含有量が前記フッ素樹脂(A)の主鎖炭素数1×10 個に対し600個以上10000個以下である樹脂材料を押出成形して樹脂被覆層を形成する工程。
  4. さらに下記工程(b)を有する、請求項3に記載の樹脂被覆金属管の製造方法。
    (b)前記工程(a)と前記工程(c)との間に、前記めっき金属管の亜鉛めっき層に酸性水溶液を接触させる工程。
  5. 前記酸性水溶液が、硝酸水溶液である、請求項4に記載の樹脂被覆金属管の製造方法。
  6. 前記硝酸水溶液の濃度が、0.5〜5質量%であり、
    前記めっき金属管の亜鉛めっき層と前記硝酸水溶液との接触時間が、1〜30秒間である、請求項5に記載の樹脂被覆金属管の製造方法。
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