JPWO2016006644A1 - 含フッ素共重合体および積層体 - Google Patents

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Abstract

柔軟性に優れ、他樹脂との接着性に優れる含フッ素共重合体およびこれを用いた積層体の提供。テトラフルオロエチレンに基づく単位(A)と、エチレンに基づく単位(B)と、イタコン酸、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シトラコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位(C)と、CH2=CX(CF2)nY、ヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位(D)とを含有し、単位(A)と単位(B)とのモル比[単位(A)/単位(B)]が63/37〜75/25で、単位(A)と単位(B)との合計量に対して単位(C)の割合が0.01〜1モル%、単位(D)の割合が0.01〜3モル%で、容量流速が4〜1000mm3/秒である含フッ素共重合体。

Description

本発明は、含フッ素共重合体およびこの含フッ素共重合体の層を有する積層体に関する。
エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、ETFEともいう。)は、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、難燃性、耐候性、成形加工性に優れており、航空機、原子力発電所、自動車、産業用ロボット等に使われる電線の絶縁被覆材料、産業用チューブ、燃料配管用チューブ、グリーンハウス用フィルム等の幅広い分野で使用されている。
しかし、市販されているETFEは、弾性率が700〜900MPaであり、柔らかさが要求されるチューブやフィルム等の用途に使用するには柔軟性が不充分である。
柔軟性の良好な含フッ素共重合体として、3M社が商品名ダイニオンとして市販している熱可塑性フッ素樹脂THV(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフルオライドとの3元共重合体)が知られている。
また、柔軟性の良好な含フッ素共重合体として、特許文献1には、テトラフルオロエチレン(以下、TFEともいう。)/エチレンの含有モル比が66/34〜75/25であり、TFEとエチレンの合計モル数に対して、任意成分として、CH=CX(CFY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2〜8である。)に基づく単位をTFE単位とエチレン単位の合計モル数に対して、0〜1モル%含有し、297℃で測定される容量流速が4〜1000mm/秒であり、弾性率が500MPa以下であるETFEが提案されている。
含フッ素共重合体について、結晶性の非フッ素樹脂、ゴム等の他樹脂と積層して積層体とすることが試みられている。この場合、含フッ素共重合体には、他樹脂との接着性が求められる。また、含フッ素共重合体をゴムなどの柔軟性のある素材と積層し、前述のような柔らかさが要求される用途に使用する場合、含フッ素共重合体には、接着性と柔軟性とを両立することが求められる。
しかし、市販されているETFEは、前述のとおり、柔軟性が不充分である。また、他樹脂との接着性に乏しく、該ETFEと他樹脂とが強固に接着した積層体を得ることは困難である。
前述のTHVや特許文献1に記載のETFEは、他樹脂との接着性が不充分である。
特許文献2には、非フッ素系重合体との接着性に優れる含フッ素共重合体として、TFE単位、エチレン単位および無水イタコン酸または無水シトラコン酸に基づく単位を含有する含フッ素共重合体であって、TFE単位/エチレン単位がモル比で20/80〜80/20であり、TFE単位とエチレン単位の合計に対する無水イタコン酸および無水シトラコン酸に基づく単位がモル比で1/10000〜5/100であり、かつ容量流速が1〜1000mm/秒である含フッ素共重合体が提案されている。しかし、特許文献2の実施例に記載の含フッ素共重合体はいずれも、柔軟性が不充分である。
国際公開第2011/007705号 特開2004−238405号公報
本発明は、柔軟性に優れ、他樹脂との接着性に優れる含フッ素共重合体およびこれを用いた積層体の提供を目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]テトラフルオロエチレンに基づく単位(A)と、エチレンに基づく単位(B)と、イタコン酸、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シトラコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位(C)と、CH=CX(CFY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2〜8である。)およびヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位(D)と、を含有し、
前記単位(A)と前記単位(B)とのモル比[単位(A)/単位(B)]が、63/37〜75/25であり、
前記単位(A)と前記単位(B)との合計量に対して、前記単位(C)の割合が0.01〜1モル%で、前記単位(D)の割合が0.01〜3モル%であり、
297℃で測定される容量流速が4〜1000mm/秒であることを特徴とする含フッ素共重合体。
[2]前記単位(A)と前記単位(B)とのモル比[単位(A)/単位(B)]が、63/37〜72/28である、[1]に記載の含フッ素共重合体。
[3]前記単位(A)と前記単位(B)との合計量に対する前記単位(C)の含有量が0.1〜0.8モル%である、[1]または[2]に記載の含フッ素共重合体。
[4]前記単位(A)と前記単位(B)との合計量に対する前記単位(D)の含有量が0.1〜2モル%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
[5]前記容量流速が4〜100mm/秒である、[1]〜[4]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
[6]前記単位(C)が、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物および無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位である、[1]〜[5]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
[7]前記単位(C)が無水イタコン酸に基づく単位である、[1]〜[5]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
[8]前記CH=CX(CFYにおいて、Xが水素原子、Yがフッ素原子かつnが2〜4である、[1]〜[7]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
[9]前記単位(D)の少なくとも一部が、前記CH=CX(CFYに基づく単位である、[1]〜[8]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
[10]前記単位(D)の少なくとも一部が、ヘキサフルオロプロピレンに基づく単位である、[1]〜[8]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
[11]前記[1]〜[10]のいずれかに記載の含フッ素共重合体、または該含フッ素共重合体を含む含フッ素共重合体組成物の層と、前記含フッ素共重合体以外の樹脂の層とを有する積層体。
本発明によれば、柔軟性に優れ、他樹脂との接着性に優れる含フッ素共重合体およびこれを用いた積層体を提供できる。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに基づく単位を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「モノマー」とは、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物を意味する。
本発明の含フッ素共重合体は、以下の単位(A)と、単位(B)と、単位(C)と、単位(D)と、を含有する。必要に応じて、単位(E)をさらに含有できる。
単位(A):
単位(A)は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEともいう。)に基づく単位である。
単位(B):
単位(B)は、エチレン(以下、Eともいう。)に基づく単位である。
単位(C):
単位(C)は、イタコン酸、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(無水ハイミック酸とも称される。)、シトラコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(以下、極性官能基含有モノマーともいう。)に基づく単位である。極性官能基含有モノマーは、1種以上を用いることができる。
極性官能基含有モノマーとしては、重合媒体に対してより溶解しやすく、重合反応系に添加しやすい点で、無水マレイン酸、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が好ましく、無水イタコン酸が特に好ましい。
単位(D):
単位(D)は、CH=CX(CFYおよびヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位である。
CH=CX(CFYにおいて、X、Yはそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子である。Xは水素原子が好ましい。Yはフッ素原子が好ましい。
nは2〜8であり、2〜6が好ましく、2〜4が特に好ましい。nが前記範囲の下限値以上であると、本発明の含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物を成形した成形体が耐ストレスラック性に優れる。nが前記範囲の上限値以下であると、CH=CX(CFYのTFEやEとの共重合反応性が優れる。
CH=CX(CFYとしては、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。
CH=CX(CFYとしては、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFHおよびCH=CH(CFHからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、CH=CH(CFFおよびCH=CH(CFFからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
CH=CX(CFYおよびHFPは、1種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合、CH=CX(CFYとHFPとを併用できる。また、CH=CX(CFYとして2種以上を併用できる。
単位(D)は、含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物の成形性がより優れる点で、CH=CX(CFYに基づく単位を少なくとも含むことが好ましい。この場合、単位(D)は、CH=CX(CFYに基づく単位のみを含んでもよく、CH=CX(CFYに基づく単位およびHFPに基づく単位の両方を含んでもよい。
単位(E):
単位(E)は、単位(A)〜(D)以外の他の単位である。すなわち、TFE、E、イタコン酸、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シトラコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、CH=CX(CFYおよびHFP以外のモノマーに基づく単位である。
他のモノマーとしては、
プロピレン、ブテン等のα−オレフィン類;
フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)等の不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン(ただし、CH=CX(CFYを除く。);
クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEおよびHFPを除く。);
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)(PBVE)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE);等が挙げられる。他のモノマーは1種以上を用いることができる。
組成:
本発明の含フッ素共重合体において、単位(A)と単位(B)とのモル比[単位(A)/単位(B)]は、63/37〜75/25であり、63/37〜73/27が好ましく、63/37〜72/28がより好ましく、63/37〜69/31がさらに好ましく、64/36〜67/33が特に好ましい。単位(A)/単位(B)が前記の範囲内にあると、含フッ素共重合体が柔軟性および耐熱性に優れる。また、単位(A)/単位(B)が63/37〜69/31、特には64/36〜67/33であると、含フッ素共重合体の製造が容易になる点でも好ましい。
なお、以下、単位(A)/単位(B)を「(A)/(B)」で表す。
含フッ素共重合体中の単位(C)の含有量は、単位(A)と単位(B)との合計量に対する単位(C)の割合として、0.01〜1モル%であり、0.05〜1モル%が好ましく、0.1〜0.8モル%がより好ましく、0.1〜0.5モル%が特に好ましい。単位(C)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体が他樹脂との接着性に優れる。フッ素含有率の高い含フッ素重合体において単位(C)の含有量が前記範囲の上限値を超えると、含フッ素重合体本来の特性が損なわれたり、耐熱性が低下したり、極性官能基含有モノマーのオリゴマーが生成して接着性が低下したりするおそれがある。
含フッ素共重合体中の単位(D)の含有量は、単位(A)と単位(B)との合計量に対する単位(D)の割合として、0.01〜3モル%であり、0.05〜2.5モル%が好ましく、0.1〜2モル%が特に好ましい。単位(D)を少量含むことで優れた柔軟性向上効果が得られ、単位(D)の含有量が前記範囲内であれば、含フッ素共重合体が柔軟性に優れる。また、単位(D)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体が機械的強度、溶融成形性等に優れ、単位(D)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体が耐熱性に優れる。
含フッ素共重合体中の単位(E)の含有量は、全単位の合計に対して、0〜12モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましい。
すなわち、含フッ素共重合体中の単位(A)と単位(B)と単位(C)と単位(D)との合計量は、全単位の合計に対して、88〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。
本発明の含フッ素共重合体は、単位(A)と単位(B)と単位(C)と単位(D)とからなることが好ましく、単位(A)と単位(B)と単位(C)とCH=CX(CFYに基づく単位とからなることが特に好ましい。
融点:
本発明の含フッ素共重合体の融点は、225℃以上が好ましく、230℃以上がより好ましく、235℃以上が特に好ましい。含フッ素共重合体の融点が前記の下限値以上であると、含フッ素共重合体が耐熱性に優れ、高温で使用でき、耐熱電線や耐熱チューブ等の用途に適する。
含フッ素共重合体の融点は、単位(A)と単位(B)とのモル比[(A)/(B)]、単位(D)の含有量等により調整できる。例えば(A)/(B)の割合によっても変化をし、単位(D)の含有量が少ないほど、含フッ素共重合体の融点が高い傾向がある。
容量流速(Q値):
本発明の含フッ素共重合体は、297℃で測定される容量流速(以下、Q値という。)が4〜1000mm/秒であり、4〜200mm/秒が好ましく、4〜100mm/秒がより好ましい。Q値は、含フッ素共重合体の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。Q値が前記範囲の下限値以上であると、押出し成形等の溶融成形法による成形が可能である。Q値が前記範囲の上限値以下であると、含フッ素共重合体が機械的強度に優れる。
Q値は、単位(A)と単位(B)とのモル比[(A)/(B)]、重合条件(連鎖移動剤の濃度、重合圧力等)等により調整できる。例えば(A)/(B)における単位(A)の割合が高いほど、含フッ素共重合体のQ値が小さくなる(分子量が大きくなる)傾向がある。
弾性率:
本発明の含フッ素共重合体は、以下の方法で測定される弾性率が690MPa以下であることが好ましく、650MPa以下がより好ましく、630MPa以下が特に好ましい。該弾性率が690MPa以下であれば、本発明の含フッ素共重合体が、柔らかさが要求されるチューブやフィルム等の用途、ゴムなどの柔軟性のある素材と積層体とする用途等に有用である。
該弾性率の下限は特に限定されないが、本発明の含フッ素共重合体が機械的物性、機械的耐久性等が要求される用途に用いられる場合には、520MPa以上が好ましい。該弾性率が520MPa以上であれば、機械的物性、機械的耐久性に優れる。
該弾性率が520〜690MPaである場合の含フッ素共重合体の好ましい用途として、ゴムなどとの積層体にして、チューブ、フィルム、フィラーネックホース、絶縁被覆材料等の用途等が挙げられる。
ただし本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の含フッ素共重合体の前記の弾性率は520MPa未満であってもよい。
「弾性率の測定方法」
本発明の含フッ素共重合体を、300℃で溶融し、プレス成形して厚み0.3mmのフィルムとし、該フィルムの弾性率(MPa)を、動的粘弾性測定装置(例えばアイティー計測制御株式会社製DVA−200)を用いて、25℃で10Hzの周波数を用いて測定する。
含フッ素共重合体の弾性率は、単位(A)と単位(B)とのモル比[(A)/(B)]、単位(D)の含有量等により調整できる。例えば(A)/(B)=63/37〜75/25の範囲内においては、単位(A)の割合が高いほど、含フッ素共重合体の弾性率が小さくなる傾向がある。
(含フッ素共重合体の製造方法)
本発明の含フッ素共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、重合させるモノマーを反応器に導入し、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤を用いて共重合させる方法が採用できる。
重合方法の例としては、塊状重合;重合媒体としてフッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化と水素等の有機溶媒を使用する溶液重合;重合媒体として水性媒体および必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合;重合媒体として水性媒体および乳化剤を使用する乳化重合;等が挙げられる。
重合方法としては、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤、重合媒体の存在下にTFE、E等のモノマーを共重合させる溶液重合が特に好ましい。
重合は、一槽または多槽式の撹拌型重合装置、管型重合装置等を使用し、回分式または連続式操作として実施することができる。
ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤としてはそれぞれ、一般に用いられているものを使用できる。
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である温度が0〜100℃である開始剤が好ましく、20〜90℃である開始剤がより好ましい。例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート;tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル;イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド;(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)等の含フッ素ジアシルペルオキシド;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール;1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン等が挙げられる。
連鎖移動剤の添加量は、通常、重合媒体に対して、0.01〜100質量%程度である。連鎖移動剤の添加量(連鎖移動剤の濃度)を調整することにより、得られる含フッ素共重合体のQ値(分子量)を調整できる。連鎖移動剤の添加量が上記範囲内で高くなるほど、高Q値(低分子量)の含フッ素共重合体が得られる傾向がある。
重合媒体としては、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒、水性媒体等が挙げられる。
溶液重合の重合媒体としては、ハイドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロカーボン、アルコール等が使用できる。
乳化重合の重合媒体としては、水が使用される。水に、アルコール等の水溶性の有機媒体を添加してもよい。
懸濁重合の重合媒体としては、水が使用される。水に、ハイドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロカーボン等の有機媒体を添加してもよい。
ハイドロフルオロカーボンとしては、1,1,2,2−テトラフルオロシクロブタン、CFCFHCFCFCF、CF(CFH、CFCFCFHCFCF、CFCFHCFHCFCF、CFHCFHCFCFCF、CF(CFH、CFCH(CF)CFCFCF、CFCF(CF)CFHCFCF、CFCF(CF)CFHCFHCF、CFCH(CF)CFHCFCF、CFCFCHCH、CF(CFCHCH等が挙げられる。なかでも、CF(CFH(1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン)が好ましい。
クロロフルオロカーボンとしては、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン等が挙げられる。
ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等が挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルとしては、CFCHOCFCFH、CF(CF)CFCFOCH、CF(CFOCH等が挙げられる。
ハイドロカーボンとしては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。
重合条件は特に限定されるものではないが、重合温度は通常0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。
重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合圧力を調整することにより、得られる含フッ素共重合体のQ値(分子量)を調整でき、また、溶融粘度も調整できる。重合圧力が上記範囲で高くなるほど、得られる含フッ素共重合体は低Q値(高分子量)になり、溶融粘度が高くなる傾向がある。
重合時間は重合温度および重合圧力等により変わりうるが、通常1〜30時間が好ましく、2〜10時間がより好ましい。
本発明の含フッ素重合体を得るためには、初期仕込比として、TFEとEのモル比率=91/9〜98.5/1.5で仕込み、重合の進行に伴い(圧力が低下するため)、圧力が一定となるように、目的の組成でのTFEとEとの混合ガスを連続的に仕込むことが好ましい。
重合反応終了時における重合媒体中の含フッ素共重合体の濃度、つまり重合媒体に対する本発明の含フッ素共重合体の量は、通常0.03〜0.2g/cm程度が好ましい。
この濃度により含フッ素共重合体の分子量を調整することもできる。すなわち、上記範囲で含フッ素共重合体の濃度を低くするほど、含フッ素共重合体のQ値が高くなる(分子量が低くなる)傾向がある。
(含フッ素共重合体組成物)
本発明の含フッ素共重合体に、該含フッ素共重合体以外の成分を配合して含フッ素共重合体組成物とすることができる。
他の成分としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。これら他の成分は、含フッ素共重合体組成物に発現させる特性に応じて、1種以上を使用できる。
炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の繊維強化材;
硝子ビーズ等の寸法安定性付与材;
カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フッ素化処理CNT、酸化第2スズ、チタン酸ブラック、チタン酸ウィスカー等の導電性または半導電性フィラー;
イオン性液体等の透明導電性付与剤;
各種ウィスカー/チタン酸カリ、ホウ酸アルミニウム、カーボンウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー等の表面性改質剤;
グラファイト、酸化マグネシウム、低融点金属、金属ファイバー等の熱伝導性付与材;
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ルブリカント等の摺動性付与材;
フェライト、金属等の電磁波シールド材;
ナノクレー、フッ素系有機化処理ナノクレー、タルク等の低ガス透過、強化材;
硝子バルーン等の軽量化材;
各種エラストマー、フッ素ゴム等の柔軟性付与材;
ナイロン、アラミド等の高強度付与材;
酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、銅・クロムブラック、モリブデートオレンジ、酸化鉄、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、チタン・アンチモン・クロムイエロー、クロムグリーン、酸化クロムグリーン、コバルトグリーン等の着色顔料;
結晶核剤、トリアリルイソシアヌレート等の架橋剤、架橋助剤、発泡剤、発泡核材、熱安定剤、銅、銅化合物(酸化銅、ヨウ化銅等)、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤。
(成形体)
本発明の含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、インフレーション成形、トランスファー成形等の種々の成形方法により容易に成形し、所望の成形体とすることができる。
本発明の含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物から得られる成形体の用途としては、ポンプケーシング、ダイヤフラムバルブケーシング、継ぎ手類、パッキング、シール部材、チューブ、電線被覆材、シート、フィルム、ライニング、コーティング、フィラメント、テント膜等の膜構造部材、プリント基板等の幅広い分野のものが挙げられる。
(積層体)
本発明の含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物は、それら以外の材料と積層して積層体とすることができる。
他の材料としては、本発明の含フッ素共重合体以外の樹脂(以下、「他樹脂」ともいう。)、導体等が挙げられる。
他樹脂については後で詳しく説明する。導体としては、基本的には、電気伝導性の良好な材料であれば限定されるものでなく、例えば、軟銅、硬銅、無酸素銅、クロム鉱、アルミニウム等の線材、棒状あるいは板状体材料等が用いられる。また、これらに機械的強度が要求される場合は、上記材料にマグネシウム、ケイ素、鉄等が添加され得る。
積層体の例として、本発明の含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物と他樹脂とを積層した積層体(以下、樹脂積層体ともいう。)、電線用の芯線(導体)の表面に本発明の含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物からなる被覆層を積層した被覆電線、等が挙げられる。
本発明の含フッ素共重合体は、他樹脂との接着性に優れる。そのため、本発明の含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物の用途としては、樹脂積層体が好ましい。本発明の積層体はこの樹脂積層体である。すなわち、本発明の含フッ素共重合体または該含フッ素共重合体を含む含フッ素共重合体組成物の層と、前記含フッ素共重合体以外の樹脂の層とを有する積層体である。
樹脂積層体は、本発明の含フッ素共重合体またはこれを含む含フッ素共重合体組成物の層(I)と、他樹脂の層(II)とがこの順に積層した積層体〔(I)/(II)〕を含む。
前記樹脂積層体は、積層体〔(I)/(II)〕の層(II)の外側にさらに他樹脂の層が1層以上積層した積層体でもよい。このような積層体としては、例えば、層(II)の外側にさらに他樹脂の層(III)が積層した積層体〔(I)/(II)/(III)〕、層(III)の外側にさらに他樹脂の層(IV)が積層した積層体〔(I)/(II)/(III)/(IV)〕、層(IV)の外側にさらに他樹脂の層(V)が積層した積層体〔(I)/(II)/(III)/(IV)/(V)〕等が挙げられる。樹脂積層体を構成する層の総数に特に制限はない。
他樹脂の層(層(II)、層(III)、層(IV)、層(V)等)を形成する他樹脂としては、本発明の含フッ素共重合体以外の樹脂であれば特に限定されず、本発明の含フッ素共重合体以外の熱可塑性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー、硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。
熱可塑性の樹脂やエラストマー等の具体例としては、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等。)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ABS樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリスルホン、ポリフエニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリフェニレンエーテル、熱可塑性ウレタン樹脂等の単体または混合物が挙げられる。
他樹脂の層は、硬化性樹脂の硬化物である硬化樹脂の層であってもよい。硬化性樹脂としては、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の単体または混合物が挙げられる。
他樹脂は、グリシジル基等の接着官能基を有していてもよい。接着性官能基は、例えば、モノマーとしてメタクリル酸グリシジル等の接着官能基含有モノマーを用いて導入できる。
他樹脂の層には、該他樹脂をマトリックスとして、カーボンブラック、各種のエラストマー成分、ガラス繊維、カーボン繊維等が含まれていてもよい。
樹脂積層体における各層の厚みには特に制限はないが、例えば、層(I)は3〜2000μm、層(II)は2〜1500μm、層(III)以降は50〜100000μm程度である。
樹脂積層体における各層の比率には特に制限はないが、例えば、積層体〔(I)/(II)/(III)〕を挙げた場合、全体の厚みに対して、層(I)は0.003〜98%、層(II)は0.002〜97%、層(III)は1.4〜99.99%である。
樹脂積層体の全体の厚みには特に制限はないが、例えば、100μm〜100000μmである。
樹脂積層体は、シート状でも、シートが立体成形された立体形状でも、チューブ状等でもよく、その形状に制限はない。
(樹脂積層体の製造方法)
樹脂積層体は、成形の簡便性、生産性から、多層押出成形(共押出成形)、押し出しラミネート成形、加熱ロール、加熱プレスを用いた多層ラミネート成形、多層射出成形、多層ブロー成形等の熱積層工程を有する方法により、好適に製造できる。
具体的には、三層以上の構成の場合を例に挙げると、多層押出成形や多層ラミネート成形等の一段の熱積層工程で、層(I)と層(II)と層(III)と必要に応じて設けられる他の層とを積層、接着して樹脂積層体を製造する方法が挙げられる。また、例えば、層(I)と層(II)とを多層押出成形や押し出しラミネート成形で積層する第1の熱積層工程を行い、ついで、第1の熱積層工程で得られた層(I)と層(II)からなる積層体〔(I)/(II)〕に、層(III)を加熱プレスする第2の熱積層工程を行う方法;上述の第1の熱積層工程と第2の熱積層工程とを行った後、必要に応じて、さらに他の層を加熱プレスする第3の熱積層工程を行う方法;等、2段以上の多段の熱積層工程により樹脂積層体を製造する方法が挙げられる。
熱積層工程のうち、層(I)と他樹脂の層(層(II)等)とを加熱下で積層する熱積層工程は、100〜320℃で行うことが好ましく、150〜300℃がより好ましい。層(I)と他樹脂の層とを積層する熱積層工程の温度が上記範囲の下限値以上であると、充分に接着できる。上記範囲の上限値以下であると、他樹脂の熱分解が抑制され、接着力が充分となる。
熱積層工程のうち、他樹脂の層同士のみを加熱下で積層する熱積層工程は、150〜330℃で行うことが好ましく、180〜300℃がより好ましい。他樹脂の層同士を積層する熱積層工程の温度が上記範囲の下限値以上であると、充分に接着できる。上記範囲の上限値以下であると、他樹脂の熱分解が抑制され、接着力が充分となる。例えば、積層体〔(I)/(II)〕を多層押出成形や押出ラミネート成形で形成する第1の熱積層工程を行い、ついで、これに層(III)を熱プレスして、樹脂積層体〔(I)/(II)/(III)〕を得る第2の熱積層工程を行う場合には、第2の熱積層工程を上記温度範囲で行うことが好ましい。
各熱積層工程における加熱保持時間は、0.1秒〜1時間が好ましい。0.1秒以上であれば接着力が安定し、1時間以下であれば、生産性に優れる。
熱積層工程は、大気中で行っても、不活性ガス中で行っても、減圧下で行ってもよい。例えば、層(II)を構成する他樹脂がエポキシ基含有エチレン系共重合体である場合、熱分解を抑制する目的等においては、不活性ガス中または減圧下で行うことが好ましい。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
以下の例1〜16のうち、例1〜3、13〜14、16が実施例であり、例4〜12、15が比較例である。
以下の各例において、含フッ素共重合体の組成、融点、Q値、弾性率および剥離強度はそれぞれ以下の方法により測定した。
〔含フッ素共重合体の組成〕
単位(C)の含有量は、赤外吸収スペクトル分析で求めた。具体的には、以下の手順で測定した。他の単位の含有量(モル比)は、溶融NMR(核磁気共鳴)分析およびフッ素含有量分析で求めた。
「単位(C)の含有量(モル%)」
含フッ素共重合体をプレス成形して厚み200μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、フーリエ変換赤外分光器(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Nicolet iS10)により、1870cm−1付近に現れる酸無水物基(−CO−O−CO−)に由来する吸収の強度を測定した。その測定値と、モデル化合物から求めた酸無水物基のモル吸光係数(無水イタコン酸:237L・mol−1・cm−1)を用いて、酸無水物基の含有量を算出し、その値から単位(C)の含有量を求めた。
〔含フッ素共重合体の融点(℃)〕
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製DSC−220CU)を用い、試料約5mgを100℃から300℃まで10℃/分で昇温して求めた。
〔Q値(mm/秒)〕
島津製作所製フローテスタCFT−100Dを用いて、シリンダー面積1cm、温度297℃、荷重7kg(68.6N)下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に含フッ素共重合体を押出すときの含フッ素共重合体の押出し速度を求め、その値をQ値とした。
〔弾性率(MPa)〕
300℃で含フッ素共重合体を溶融し、プレス成形して厚み0.3mmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、動的粘弾性測定装置(SII社製DMA−6100)を用いて、室温(25℃)で10Hzの周波数を用いて弾性率を測定した。
〔剥離強度(N/cm)〕
300℃で含フッ素共重合体を溶融し、プレス成形して厚み100μmの含フッ素共重合体フィルムを作製した。
別途、ナイロン12 3030JI6L(宇部興産社製)を250℃で溶融し、プレス成形して厚み100μmのナイロンフィルムを得た。
含フッ素共重合体フィルムとナイロンフィルムとを重ね、300℃で10分間熱プレスして溶融接着させたのち、冷却して積層フィルムを得た。フッ素樹脂フィルムとナイロンフィルムとを重ねる際、剥離試験のため、一端に接着性を有していないETFEフィルム(旭硝子社製、アフレックスフィルム)を挿入し非接着端部を形成した。
得られた積層フィルムを縦5cm横1cmの短冊状に切断し、試験片を作成した。引張試験機の下側のつかみ具で試験片の含フッ素共重合体フィルムを、上側のつかみ具で試験片のナイロンフィルムをつかみ、上側のつかみ具を30mm/分の速度で上方に動かして180度の角度での剥離強度を測定した。剥離強度が大きいほど、積層フィルムの層間接着力が強いことを示す。
〔耐熱性試験〕
300℃で含フッ素共重合体を溶融し、プレス成形してフィルムを作製した。そのフィルムを時計皿の上に乗せ、320℃、30分オーブン中に保持する熱処理を行った。
熱処理後のフィルムについて、着色や発泡の有無を目視で観察し、熱処理前と比較して変化が見られなかったものをS、わずかな変化が見られたものをA、顕著な変化が見られたものをBとして評価を行った。
本試験は、含フッ素共重合体の耐熱性を確認するための加速試験であり、含フッ素共重合体の融点以上の温度で実施した。使用目的によるが、SまたはAの状態であれば、耐熱性が要求される用途に使用できるものと判断できる。
〔例1〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの897g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの384g、HFPの26gを仕込み、TFEの192g、Eの2.2gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの1.0質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1.9mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=70/30(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、このモノマー混合ガスに対して0.4モル%に相当する量の無水イタコン酸(以下、IAHという。)を連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始から3.9時間後、モノマー混合ガスの80gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体1を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体1をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体1を150℃で15時間乾燥することにより、75gの含フッ素共重合体1が得られた。
含フッ素共重合体1の組成は、TFE単位/E単位/HFP単位/IAH単位のモル比で66.1/33.2/0.3/0.4であった。含フッ素共重合体1の融点は246℃、Q値は9.2mm/秒、弾性率は620MPa、剥離強度は15.0N/cmであった。
〔例2〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの723g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの592g、CH=CH(CFF(以下、PFBEという。)の2.4gを仕込み、TFEの241g、Eの1.3gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、tert−ブチルペルオキシピバレートの0.5質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の3.85mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=73/27(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して0.6モル%に相当する量のPFBEと、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して0.4モル%に相当する量のIAHとを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始から2.8時間後、モノマー混合ガスの80gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体2を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体2をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体2を150℃で15時間乾燥することにより、84gの含フッ素共重合体2が得られた。
含フッ素共重合体2の組成は、TFE単位/E単位/PFBE単位/IAH単位のモル比で71.4/27.5/0.7/0.4であった。含フッ素共重合体2の融点は241℃、Q値は10.5mm/秒、弾性率は430MPa、剥離強度は13.8N/cmであった。
〔例3〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの917g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの412g、PFBEの3.0gを仕込み、TFEの228.6g、Eの3.4gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、tert−ブチルペルオキシピバレートの0.5質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の4.8mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=63/37(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して1.0モル%に相当する量のPFBEと、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して0.4モル%に相当する量のIAHとを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始2.7時間後、モノマー混合ガスの80gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体3を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体3をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体3を150℃で15時間乾燥することにより、83gの含フッ素共重合体3が得られた。
含フッ素共重合体3の組成は、TFE単位/E単位/PFBE単位/IAH単位のモル比で63.3/35.3/1.0/0.4であった。含フッ素共重合体3の融点は248℃、Q値は9.5mm/秒、弾性率は685MPa、剥離強度は16.4N/cmであった。
〔例4〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの876.2g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの340.8gを仕込み、TFEの180.5g、Eの2.66gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、tert−ブチルペルオキシピバレートの0.5質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1.3mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=70/30(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始から1.78時間後、モノマー混合ガスの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体4を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体4をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体4を120℃で15時間乾燥することにより、53gの含フッ素共重合体3が得られた。
含フッ素共重合体4の組成は、TFE単位/E単位のモル比で64.9/35.1であった。含フッ素共重合体4の融点は253℃、Q値は9.0mm/秒、弾性率は950MPaであった。剥離強度は、溶融接着させた後、積層フィルムを取り出した際にはがれてしまい、測定できなかった。
〔例5〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、CFCHOCFCFHの1180.1g、メタノールの5.7g、CH=CH(CFF(以下、PFEEという。)の7.0gを仕込み、TFEの176.9g、Eの6.1gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、tert−ブチルペルオキシピバレートの2質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の8.7mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力が一定になるように組成TFE/E=60/40(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して2.3モル%となるようにPFEEを、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して0.7モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始4時間後、モノマー混合ガスの100gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体5を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体5をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体5を150℃で15時間乾燥することにより、104gの含フッ素共重合体5が得られた。
含フッ素共重合体5の組成は、TFE単位/E単位/PFEE単位/IAH単位のモル比で54.7/42.8/2.1/0.4であった。含フッ素共重合体5の融点は240℃、Q値は25.0mm/秒、弾性率は900MPa、剥離強度は18.5N/cmであった。
〔例6〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの648.4g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの552.3gを仕込み、TFEの212.9g、Eの0.6gを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、tert−ブチルペルオキシピバレートの1質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=80/20(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して0.4モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始から3時間後、モノマー混合ガスの50gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体6を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体6をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体6を120℃で15時間乾燥することにより、51gの含フッ素共重合体5が得られた。
含フッ素共重合体6の組成は、TFE単位/E単位/IAH単位のモル比で79.0/20.6/0.4であった。含フッ素共重合体6の融点は271℃、Q値は15.9mm/秒であった。
重合後の開始剤ノズルにTFE比率の高いポリマーが付着しており、それが異物となって含フッ素共重合体6の中に含まれており、均一なポリマーが得られなかった。そのため、弾性率、剥離強度、耐熱性の評価は行わなかった。
〔例7〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの927.7g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの293gを仕込み、TFEの180.5g、Eの2.7g、CH=CH(CFFの3.4gを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの0.5質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の8.7mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=65/35(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して0.75モル%に相当する量のPFBEを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始から2.83時間後、モノマー混合ガスの100gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体7を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体7をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体7を120℃で15時間乾燥することにより、105gの含フッ素共重合体7が得られた。
含フッ素共重合体7の組成は、TFE単位/E単位/PFBE単位のモル比で64.4/34.6/1.0であった。含フッ素共重合体7の融点は245℃、Q値は4.8mm/秒、弾性率は620MPaであった。剥離強度は、溶融接着させた後、積層フィルムを取り出した際にはがれてしまい、測定できなかった。
〔例8〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの1336g、メタノールの8.0gを仕込み、TFEの191.3g、Eの6.0g、PFBEの8.2gを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、tert−ブチルペルオキシピバレートの2.0質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の7.7mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=60/40(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して1.9モル%に相当する量のPFBEを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始から2時間後、モノマー混合ガスの90gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体8を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体8をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体8を150℃で15時間乾燥することにより、90gの含フッ素共重合体8が得られた。
含フッ素共重合体8の組成は、TFE単位/E単位/PFBE単位のモル比で56.8/41.0/2.2であった。含フッ素共重合体8の融点は244℃、Q値は38.0mm/秒、弾性率は930MPaであった。剥離強度は、溶融接着させた後、積層フィルムを取り出した際にはがれてしまい、測定できなかった。
〔例9〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、脱イオン水の273g、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの866.3g、メタノールの96.3gを仕込み、TFEの157.8g、Eの4.3g、PFBEの10.6gを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、tert−ブチルペルオキシピバレートの2.0質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の7.7mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=60/40(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して3.3モル%に相当する量のPFBEを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始から3.5時間後、モノマー混合ガスの110gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体9を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体9をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体9を120℃で15時間乾燥することにより、102gの含フッ素共重合体9が得られた。
含フッ素共重合体9の組成は、TFE単位/E単位/PFBE単位のモル比で57.1/39.5/3.4であった。含フッ素共重合体9の融点は227℃、Q値は45.8mm/秒、弾性率は900MPaであった。剥離強度は、溶融接着させた後、積層フィルムを取り出した際に剥がれてしまい、測定できなかった。
〔例10〕
例1において重合中に連続的に仕込むIAHの量を、モノマー混合ガスに対して1.1モル%に相当する量に変更した以外は同様の仕込み手法にて重合を行い、スラリ状の含フッ素共重合体10を得た。また、重合時間は10.5時間であった。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体10をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体10を150℃で15時間乾燥することにより、78gの含フッ素共重合体10が得られた。出来上がった含フッ素共重合体10は[例1]と比較して黄色がかったものとなっており、耐熱性が弱いことをうかがわせる結果となった。
含フッ素共重合体10の組成は、TFE単位/E単位/HFP単位/IAH単位のモル比で65.7/32.9/0.3/1.1であった。含フッ素共重合体10の融点は244℃、Q値は33.2mm/秒、弾性率は600MPa、剥離強度は3.0N/cmであった。
〔例11〕
例2において重合中に連続的に仕込むIAHの量を、モノマー混合ガスに対して1.1モル%に相当する量に変更した以外は同様の仕込み手法にて重合を行い、スラリ状の含フッ素共重合体11を得た。また、重合時間は7.8時間であった。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体11をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体11を150℃で15時間乾燥することにより、80gの含フッ素共重合体11が得られた。出来上がった含フッ素共重合体11は[例1]と比較して黄色がかったものとなっており、耐熱性が弱いことをうかがわせる結果となった。
含フッ素共重合体11の組成は、TFE単位/E単位/PFBE単位/IAH単位のモル比で71.0/27.2/0.7/1.1であった。含フッ素共重合体11の融点は239℃、Q値は40.8mm/秒、弾性率は420MPa、剥離強度は4.5N/cmであった。
〔例12〕
例3において重合中に連続的に仕込むIAHの量を、モノマー混合ガスに対して1.1モル%に相当する量に変更した以外は同様の仕込み手法にて重合を行い、スラリ状の含フッ素共重合体12を得た。また、重合時間は7.5時間であった。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体12をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体12を150℃で15時間乾燥することにより、81gの含フッ素共重合体12が得られた。出来上がった含フッ素共重合体12は[例1]と比較して黄色がかったものとなっており、耐熱性が弱いことをうかがわせる結果となった。
含フッ素共重合体12の組成は、TFE単位/E単位/PFBE単位/IAH単位のモル比で63.0/34.9/1.0/1.1であった。含フッ素共重合体12の融点は245℃、Q値は27.5mm/秒、弾性率は650MPa、剥離強度は2.5N/cmであった。
〔例13〕
例1において重合中に連続的に仕込むIAHの量を、モノマー混合ガスに対して0.2モル%に相当する量に変更した以外は同様の仕込み手法にて重合を行い、スラリ状の含フッ素共重合体13を得た。また、重合時間は2.0時間であった。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体13をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体13を150℃で15時間乾燥することにより、80gの含フッ素共重合体13が得られた。
含フッ素共重合体13の組成は、TFE単位/E単位/HFP単位/IAH単位のモル比で66.3/33.2/0.3/0.2であった。含フッ素共重合体13の融点は247℃、Q値は6.4mm/秒、弾性率は620MPa、剥離強度は14.3N/cmであった。
〔例14〕
例1において重合中に連続的に仕込むIAHの量を、モノマー混合ガスに対して0.6モル%に相当する量に変更した以外は同様の仕込み手法にて重合を行い、スラリ状の含フッ素共重合体14を得た。また、重合時間は4.3時間であった。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体14をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体14を150℃で15時間乾燥することにより、81gの含フッ素共重合体14が得られた。
含フッ素共重合体14の組成は、TFE単位/E単位/HFP単位/IAH単位のモル比で65.9/33.2/0.3/0.6であった。含フッ素共重合体14の融点は245℃、Q値は13.1mm/秒、弾性率は600MPa、剥離強度は12.0N/cmであった。
〔例15〕
内容積が1.3リットルの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの1336g、メタノールの6.80gを仕込み、TFEの191.3g、Eの6.0g、CH=CH(CFFの13.6gを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、tert−ブチルペルオキシピバレートの2.0質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の12.7mLを仕込み、重合を開始させた。
重合中、圧力が一定になるように組成TFE/E=60/40(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して3.3モル%に相当する量のPFBEを連続的に仕込んだ。重合中の圧力は1.5MPa(ゲージ圧)とした。重合開始から2時間後、モノマー混合ガスの90gを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージして、スラリ状の含フッ素共重合体15を得た。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体15をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体15を150℃で15時間乾燥することにより、93gの含フッ素共重合体15が得られた。
含フッ素共重合体15の組成は、TFE単位/E単位/PFBE単位のモル比で57.2/39.4/3.4であった。含フッ素共重合体15の融点は226℃、Q値は38.0mm/秒、弾性率は910MPaであった。剥離強度は、溶融接着させた後、積層フィルムを取り出した際にはがれてしまい、測定できなかった。
〔例16〕
例1において重合中に連続的に仕込むIAHの量を、モノマー混合ガスに対して1.0モル%に相当する量に変更した以外は同様の仕込み手法にて重合を行い、スラリ状の含フッ素共重合体16を得た。また、重合時間は6.8時間であった。
得られたスラリ状の含フッ素共重合体16をガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ取した含フッ素共重合体16を150℃で15時間乾燥することにより、85gの含フッ素共重合体16が得られた。
含フッ素共重合体16の組成は、TFE単位/E単位/HFP単位/IAH単位のモル比で65.7/33.0/0.3/1.0であった。含フッ素共重合体16の融点は249℃、Q値は20.0mm/秒、弾性率は625MPa、剥離強度は10.5N/cmであった。
例1〜16それぞれで得られた含フッ素共重合体1〜16について、単位(A)と前記単位(B)とのモル比[(A)/(B)]、単位(A)と単位(B)との合計量に対しての単位(C)、単位(D)それぞれの割合(モル%)、融点、Q値を表1に示す。また、弾性率、剥離強度、耐熱性試験の評価結果を表1に併記する。
Figure 2016006644
上記結果に示すとおり、例1〜3、13〜14、16の含フッ素共重合体1〜3、13〜14は、弾性率が低く、柔軟性に優れていた。また、剥離強度が高く、他樹脂との接着性に優れていた。また、耐熱性も良好であった。
これに対し、単位(C)〜(D)を含まない例4の含フッ素共重合体4は、柔軟性が低かった。また、他樹脂との接着性に乏しかった。
(A)/(B)=63/37よりも単位(A)の割合が少ない例5の含フッ素共重合体5は、柔軟性が低かった。また、耐熱性に劣っていた。
(A)/(B)=75/25よりも単位(A)の割合が多く、単位(D)を含まない例6の含フッ素共重合体6は、重合後の開始剤ノズルにTFE比率の高いポリマーが付着しており、それが異物となって均一なポリマーが得られなかったため、実用性でない。
単位(C)を含まない例7の含フッ素共重合体7は、他樹脂との接着性に乏しかった。
(A)/(B)=63/37よりも単位(A)の割合が少なく、単位(C)を含まない例8〜9の含フッ素共重合体8〜9は、柔軟性が低く、他樹脂との接着性に乏しかった。
例10〜12の含フッ素共重合体10〜12は、弾性率が低く、柔軟性に優れていた。しかし、例1〜3、13〜14の含フッ素共重合体1〜3、13〜14よりも単位(C)の含有量が多いにもかかわらず、例1〜3、13〜14よりも剥離強度が低かった。また、重合体の分子量が上がりにくくQ値が高い傾向にあった。更に、重合時間が長く、乾燥上がりの状態で、着色をしており、耐熱性試験の結果も悪かった。
(A)/(B)=63/37よりも単位(A)の割合が少なく、単位(C)を含まない例15の含フッ素共重合体15は、柔軟性が低く、他樹脂との接着性に乏しかった。
以上の結果より、フッ素含有量の高い含フッ素共重合体においては、単位(C)の含有量を、単位(A)と単位(B)との合計量に対して0.1〜1.0モル%の範囲にすることによって、他樹脂との接着性に優れたものとなり、その一方で、単位(C)の前記の含有量が1モル%を超えると、重合時間が長くなり生産性が低下したり、分子量が上がりにくい傾向があったり、極性官能基含有モノマーのオリゴマーが生成して接着性が低下してしまったりする懸念点が発生することが示された。
本発明の含フッ素共重合体は、柔軟性に優れる。また、他樹脂との接着性にも優れる。さらに耐熱性も良好である。そのため、本発明の含フッ素共重合体は、チューブ、フィルム、絶縁被覆材料等の用途に使用することができ、その様態は、積層体、コンパウンドによるアロイ等が挙げられる。
なお、2014年7月9日に出願された日本特許出願2014−141570号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (11)

  1. テトラフルオロエチレンに基づく単位(A)と、エチレンに基づく単位(B)と、イタコン酸、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シトラコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位(C)と、CH=CX(CFY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、nは2〜8である。)およびヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位(D)と、を含有し、
    前記単位(A)と前記単位(B)とのモル比[単位(A)/単位(B)]が、63/37〜75/25であり、
    前記単位(A)と前記単位(B)との合計量に対して、前記単位(C)の割合が0.01〜1モル%で、前記単位(D)の割合が0.01〜3モル%であり、
    297℃で測定される容量流速が4〜1000mm/秒であることを特徴とする含フッ素共重合体。
  2. 前記単位(A)と前記単位(B)とのモル比[単位(A)/単位(B)]が、63/37〜72/28である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
  3. 前記単位(A)と前記単位(B)との合計量に対する前記単位(C)の含有量が0.1〜0.8モル%である、請求項1または2に記載の含フッ素共重合体。
  4. 前記単位(A)と前記単位(B)との合計量に対する前記単位(D)の含有量が0.1〜2モル%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
  5. 前記容量流速が4〜100mm/秒である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
  6. 前記単位(C)が、無水イタコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物および無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーに基づく単位である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
  7. 前記単位(C)が無水イタコン酸に基づく単位である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
  8. 前記CH=CX(CFYにおいて、Xが水素原子、Yがフッ素原子かつnが2〜4である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
  9. 前記単位(D)の少なくとも一部が、前記CH=CX(CFYに基づく単位である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
  10. 前記単位(D)の少なくとも一部が、ヘキサフルオロプロピレンに基づく単位である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体、または該含フッ素共重合体を含む含フッ素共重合体組成物の層と、前記含フッ素共重合体以外の樹脂の層とを有する積層体。
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