JP6107613B2 - 含フッ素共重合体成形品の製造方法、電線被覆材および摺動部材 - Google Patents

含フッ素共重合体成形品の製造方法、電線被覆材および摺動部材 Download PDF

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本発明は、含フッ素共重合体成形品の製造方法、電線被覆材および摺動部材に関する。
含フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン重合体に代表されるように、耐熱性、難燃性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、低摩擦性、低誘電特性等に優れ、耐熱難燃電線用被覆材料、ケミカルプラント耐食配管材料、農業用ビニールハウス材料、厨房器用離型コート材料等として、幅広い分野に用いられている。特に、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、「PFA」とも記す。)およびエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、「ETFE」とも記す。)は、前記特性に優れ、溶融成形可能であるため、その用途や成形方法は多岐にわたる。なかでも、PFAは、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」とも記す。)と同様、ペルフルオロ系フッ素樹脂であることから、PTFEに匹敵する耐熱性、電気特性等の特性を有している。
ところが、含フッ素樹脂からなる成形品は、機械的特性が不充分である。また、含フッ素樹脂からなる成形品は、貯蔵弾性率が低く、耐摩耗性が不充分である。
例えば特許文献1には、PFAとPTFEとを含む組成物を固体状態で熱処理することにより、機械的特性等を向上させようとする技術が開示されている。
特表2013−535556号公報
しかし、PFAとPTFEとを含む組成物をたとえば押出成形して得られた成形品には、ウエルドラインが生じたり、該ウエルドラインを起点として亀裂が生じたりする場合がある。ウエルドラインは、組成物の均質性が不充分な場合に生じやすい。
また、特許文献1に記載のように、共結晶化の核剤となる低分子量のPTFEを用いた組成物は、熱処理によって組成物中の成分の結晶構造が大きく変わる。そのため、該組成物の成形品は寸法安定性が悪くなり、熱処理後に熱収縮がみられる。特に成形品が薄膜成形したフィルム、電線被覆材、チューブ等の場合には、熱収縮による厚みむらの影響が大きく、耐摩耗性が低下しやすい。なかでも電線被覆材においては、スクレープ摩耗性の低下が課題となり、自動車電線等の用途での使用が困難となることが予想される。
本発明は、貯蔵弾性率が高く、耐摩耗性に優れた含フッ素共重合体成形品の製造方法を提供する。
本発明は、下記[1]〜[5]の構成を有する。
[1]主鎖および主鎖末端の少なくとも一方にカルボニル基含有基を有し、融点が255℃以上である溶融成形可能な含フッ素共重合体(A)を成形して予備成形品を得る工程(I)と、前記予備成形品を熱処理して成形品を得る工程(II)とを有する含フッ素共重合体成形品の製造方法であって、
前記工程(II)において、250℃以上、かつ、前記含フッ素共重合体(A)の融点よりも5℃以上低い温度で、前記予備成形品の溶融流れ速度をMFR(I)とし、前記含フッ素共重合体成形品の溶融流れ速度をMFR(II)としたときの、MFR(I)とMFR(II)との比[MFR(II)/MFR(I)]が0.05〜0.5となるように熱処理を行う、含フッ素共重合体成形品の製造方法。
[2]前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンの少なくとも一方に基づく構成単位(a)と、カルボキシ基または酸無水物基を有する炭化水素モノマーに基づく構成単位(b)と、含フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく構成単位(c)とを含有し、
前記構成単位(a)と前記構成単位(b)と前記構成単位(c)の合計モル量に対して、前記構成単位(a)が50〜99.89モル%で、前記構成単位(b)が0.01〜5モル%で、前記構成単位(c)が0.1〜49.99モル%である、[1]に記載の含フッ素共重合体成形品の製造方法。
[3]前記含フッ素共重合体(A)が、カルボニル基を有するラジカル重合開始剤またはカルボニル基を有する連鎖移動剤を用いて得られた重合体である、[1]または[2]の含フッ素共重合体成形品の製造方法。
[4]前記[1]〜前記[3]のいずれかの製造方法により得られた電線被覆材。
[5]前記[1]〜前記[3]のいずれかの製造方法により得られた摺動部材。
本発明の含フッ素共重合体成形品の製造方法によれば、貯蔵弾性率が高く、耐摩耗性に優れた含フッ素共重合体成形品を製造できる。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
溶融流動性を示す指標として、溶融流れ速度(Melt Flow Rate)(以下、「MFR」と言う。)がある。本明細書では、含フッ素共重合体の融点+50℃、荷重49NにおけるMFRが2g/10分以上であれば、溶融成形可能であると定義する。
「構成単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。構成単位は、重合反応によって直接形成された単位であっても、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「含フッ素モノマー」とは、分子内にフッ素原子を有するモノマーを意味し、「非フッ素モノマー」とは、分子内にフッ素原子を有しないモノマーを意味する。
「主鎖」とは、鎖式化合物の主要な炭素鎖であり、炭素数が最大となる幹にあたる部分を指す。
「カルボニル基含有基」とは、構造中にカルボニル基(−C(=O)−)を含む基をいう。
<含フッ素共重合体成形品の製造方法>
本発明の含フッ素共重合体成形品の製造方法は、主鎖および主鎖末端の少なくとも一方にカルボニル基含有基を有し、融点が255℃以上である溶融成形可能な含フッ素共重合体(A)を成形し、予備成形品を得る工程(I)と、予備成形品を特定条件で熱処理し、含フッ素共重合体成形品を得る工程(II)とを有する。
(含フッ素共重合体(A))
含フッ素共重合体(A)は溶融成形可能である。含フッ素共重合体(A)の融点+50℃、荷重49NにおけるMFRは、上述のとおり2g/10分以上であり、溶融成形性の点から、3g/10分以上が好ましく、6g/10分以上がより好ましく、10g/10分以上が特に好ましい。含フッ素共重合体(A)の融点+50℃、荷重49NにおけるMFRは、含フッ素共重合体成形品の機械的強度の点から、100g/10分以下が好ましく、50g/10分以下がより好ましく、30g/10分以下が特に好ましい。
含フッ素共重合体(A)の融点は、含フッ素共重合体成形品の機械的強度の点から、255℃以上であり、260℃以上が好ましく、280℃以上が特に好ましい。含フッ素共重合体(A)の融点は、含フッ素共重合体(A)の溶融成形性の点から、340℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、310℃以下が特に好ましい。
含フッ素共重合体(A)の融点は、該含フッ素共重合体(A)を構成する後述の構成単位の組合せ、各構成単位の含有割合等により調整できる。
含フッ素共重合体(A)は、カルボニル基含有基を主鎖または主鎖末端に有する。カルボニル基含有基を有することにより後述の工程(II)の熱処理において、分子間および分子内で架橋構造が形成され、主鎖の分解反応が抑制されると考えられる。これにより、得られる含フッ素共重合体成形品の貯蔵弾性率が高まり、耐摩耗性等が向上すると考えられる。
含フッ素共重合体(A)は、耐熱性の点から、側鎖を有しないものが好ましい。
カルボニル基含有基としては、たとえば、炭素原子間にカルボニル基を含む2価の炭化水素基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基等が挙げられる。カルボニル基含有基が含フッ素共重合体(A)の主鎖に存在する場合、カルボニル基含有基としては、炭素原子間にカルボニル基を含む2価の炭化水素基、カーボネート基、酸無水物基が挙げられる。カルボニル基含有基が含フッ素共重合体(A)の主鎖末端に存在する場合、カルボニル基含有基としては、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基等の1価の有機基が挙げられる。
炭素原子間にカルボニル基を含む2価の炭化水素基としては、たとえば、炭素数2〜10のアルキレン基における炭素−炭素の結合間にカルボニル基が組込まれてなる基等が挙げられる。
ハロホルミル基は、−C(=O)−X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。Xとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。すなわち、ハロホルミル基としては、フルオロホルミル基(「カルボニルフルオリド基」とも称する。)が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
含フッ素共重合体(A)は、カルボニル基含有基を1種有しても、2種以上有してもよい。
含フッ素共重合体(A)がカルボニル基を有することに基づく、含フッ素共重合体(A)中のカルボニル基含有量は、該含フッ素共重合体(A)の主鎖の炭素数1×10個に対して10〜60000個が好ましく、100〜10000個が好ましく、300〜5000個が好ましい。上記範囲の下限値以上であれば、工程(II)の熱処理による貯蔵弾性率および耐摩耗性の向上効果が充分に得られ、上記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体成形品の熱安定性がより優れる。
含フッ素共重合体(A)の主鎖の炭素数は、2000〜50000個が好ましく、3000〜30000個がより好ましく、5000〜25000個が特に好ましい。
含フッ素共重合体(A)が有するカルボニル基含有量は、たとえば、特開2007−314720号公報に記載のように、赤外吸収スペクトル分析法によりカルボニル基を有する構成単位の割合を測定し、該割合からカルボニル基の量を算出することにより求められる。
含フッ素共重合体(A)は、カルボニル基含有基の他、アミド基、水酸基、アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有してもよい。
含フッ素共重合体(A)としては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)およびクロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」とも記す。)の少なくとも一方に基づく構成単位(a)と、カルボキシ基または酸無水物基を有する炭化水素モノマーに基づく構成単位(b)と、含フッ素モノマー(ただし、TFEおよびCTFEを除く。)に基づく構成単位(c)とを含有するものが好ましい。構成単位(b)を形成するカルボキシ基または酸無水物基を有する炭化水素モノマーを用いることによって、含フッ素共重合体(A)の主鎖中にカルボニル基含有基が導入される。
構成単位(b)を形成するカルボキシ基または酸無水物基を有する炭化水素モノマー(以下、「AMモノマー」とも記す。)としては、イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、マレイン酸等のジカルボン酸、無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸等のジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。AMモノマーは、1種を使用しても、2種以上を使用してもよい。AMモノマーとしては、熱安定性の点から、IAH、CAHおよびNAHのうちの1種以上が好ましい。
構成単位(c)を形成する含フッ素モノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」とも記す。)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」とも記す。)等のフルオロオレフィン;CF=CFOR(ここで、Rは炭素数1〜10であり、炭素結合間にエーテル性の酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基である。);CF=CFORSO(Rは炭素数1〜10の酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、Xはハロゲン原子または水酸基である。);CF=CFORCO(ここで、Rは炭素数1〜10であり、炭素結合間にエーテル性の酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、Xは水素原子または炭素数3以下のアルキル基である。);CF=CF(CFOCF=CF(ここで、pは1または2である。);CH=CX(CF(ここで、Xは水素原子またはフッ素原子、qは2〜10の整数、Xは水素原子またはフッ素原子である。)およびペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1、3−ジオキソラン)等が挙げられる。なかでも、機械強度、耐屈曲性および耐熱性の観点からVdF、HFP、CF=CFORおよびCH=CX(CFからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、CF=CFORおよびCH=CX(CFのうちの1種以上がより好ましい。
CF=CFORとしては、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF等が挙げられ、なかでも、CF=CFOCFCFCFが好ましい。
CH=CX(CFとしては、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH等が挙げられ、なかでも機械強度、耐屈曲性および耐熱性の観点からCH=CH(CFFおよびCH=CH(CFFの1種以上が好ましい。
構成単位(a)〜(c)の含有割合は、構成単位(a)と構成単位(b)と構成単位(c)との合計モル量に対して、構成単位(a)が50〜99.89モル%で、構成単位(b)が0.01〜5モル%で、構成単位(c)が0.1〜49.99モル%であることが好ましく、構成単位(a)が50〜99.4モル%で、構成単位(b)が0.1〜3モル%で、構成単位(c)が0.5〜49.9モル%であることがより好ましく、構成単位(a)が50〜98.9モル%で、構成単位(b)が0.1〜2モル%で、構成単位(c)が1〜49.9モル%であることが特に好ましい。
構成単位(a)〜(c)の含有割合が上記範囲内であれば、含フッ素共重合体(A)は溶融時の垂れ抵抗性に優れる。また、工程(II)の熱処理による貯蔵弾性率および耐摩耗性の向上効果が充分に得られるとともに、含フッ素共重合体成形品は耐熱性、耐薬品性、高温での形状保持性に優れる。
含フッ素共重合体(A)は、上述の構成単位(a)〜(c)の他に、非フッ素モノマー(ただし、カルボキシ基または酸無水物基を有する炭化水素モノマーを除く。)に基づく構成単位(d)を含有してもよい。
非フッ素モノマーとしては、エチレン(以下、「E」とも記す。)、プロピレン(以下、「P」とも称する。)等の炭素数3以下のオレフィン、酢酸ビニル(以下、「VOA」とも記す。)等のビニルエステル等が挙げられる。非フッ素モノマーは、1種を使用しても、2種以上を使用してもよい。非フッ素モノマーとしては、E、PおよびVOAの1種以上が好ましく、Eがより好ましい。
含フッ素共重合体(A)が構成単位(d)を含有する場合、構成単位(a)と構成単位(b)と構成単位(c)と構成単位(d)との合計モル量に対する、「構成単位(a)+構成単位(b)+構成単位(c)」の合計モル量の割合は、40モル%以上が好ましく、45モル%以上がより好ましく、50モル%以上が特に好ましい。
構成単位(a)〜(c)または構成単位(a)〜(d)の組合せとしては、たとえば、TFE/NAH/CF=CFOCFCFCF、TFE/IAH/CF=CFOCFCFCF、TFE/CAH/CF=CFOCFCFCF、TFE/IAH/HFP、TFE/CAH/HFP、TFE/IAH/VdF、TFE/CAH/VdF、TFE/IAH/CH=CH(CFF/E、TFE/CAH/CH=CH(CFF/E、TFE/IAH/CH=CH(CFF/E、TFE/CAH/CH=CH(CFF/E、CTFE/IAH/CH=CH(CFF/E、CTFE/CAH/CH=CH(CFF/E、CTFE/IAH/CH=CH(CFF/E、CTFE/CAH/CH=CH(CFF/Eが挙げられる。
含フッ素共重合体(A)は、適切な重合方法で製造して得られた重合体を用いても、市販品を用いてもよい。重合方法としては、塊状重合;フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合による手法;水性媒体および必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合による手法;水性媒体および乳化剤を使用する乳化重合による手法;等が挙げられ、なかでも溶液重合による手法が好ましい。
重合条件は特に限定されない。重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
重合においては、上記構成単位(b)を形成するAMモノマーを用いることによって、含フッ素共重合体にカルボニル基含有基を導入できる。カルボキシ基または酸無水物基を有する炭化水素モノマーは、原料として用いる全モノマー100モル%に対して0.01〜5モル%使用することが好ましく、0.1〜3モル%使用することがより好ましく、0.1〜2モル%使用することが特に好ましい。上記範囲内であれば、工程(II)の熱処理により、貯蔵弾性率が高く、耐摩耗性に優れた含フッ素共重合体成形品が得られやすく、重合速度も優れる。
重合中、AMモノマーが重合で消費されるにしたがって、消費された量を連続的または断続的に重合槽内に供給し、AMモノマーの濃度を上記範囲内に維持することが好ましい。
重合においては、ラジカル重合開始剤を使用できる。
ラジカル重合開始剤は、その半減期が10時間である温度が0〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。このようなラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;(ペルフルオロブチリル)ペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド;ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート等のペルオキシジカーボネート;tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル;(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子または塩素原子、rは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等;が挙げられる。
ここでラジカル重合開始剤として、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル等のカルボニル基を有する開始剤を使用すると、含フッ素共重合体(A)の主鎖末端にカルボニル基含有基を導入できる。具体的には、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
重合においては、MFRの制御等を目的として、連鎖移動剤を使用できる。
連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル等が挙げられる。
ここで連鎖移動剤として、たとえば、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル等のカルボニル基を有する連鎖移動剤を用いると、含フッ素共重合体(A)の主鎖の末端にカルボニル基含有基を導入できる。
カルボニル基を有するラジカル重合開始剤と、カルボニル基を有する連鎖移動剤を併用してもよい。また、カルボニル基を有するラジカル重合開始剤およびカルボニル基を有する連鎖移動剤のうちの1種以上を用い、かつ、AMモノマーを用い、含フッ素共重合体(A)の主鎖中および主鎖の末端の両方にカルボニル基含有基を導入してもよい。
含フッ素共重合体(A)は、主鎖末端に水酸基を有していてもよい。連鎖移動剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール等の水酸基を有する連鎖移動剤を用いると、含フッ素共重合体(A)の主鎖末端に水酸基を導入できる。
含フッ素共重合体(A)は、カルボニル基を有しない含フッ素共重合体を加熱して、該共重合体を部分的に熱分解することで、カルボニル基を生成させる方法でも製造できる。
(工程(I))
工程(I)は、含フッ素共重合体(A)を溶融成形法により成形し、予備成形品を製造する工程である。
溶融成形法としては、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形等の成形法が挙げられる。成形法は、後述の工程(II)を経て得られる含フッ素共重合体成形品の用途、形状等に応じて選択される。
たとえば、含フッ素共重合体成形品の用途が電線被覆材、フィルム、チューブ材等である場合には、押出成形が主に採用され、含フッ素共重合体成形品の用途が軸受け、歯車、ギア部材、摺動部材、電子機器、スペーサー、ローラー、カム等である場合には、射出成形が主に採用される。
予備成形品の溶融流れ速度(以下、「MFR(I)」とも記す。)は、成形性及び機械強度の観点から0.1〜100g/10分であるのが好ましく、1〜30g/10分であるのが特に好ましい。予備成形品の溶融流れ速度は、含フッ素共重合体(A)の分子量や、溶融成形法による成形時の熱履歴を調整することにより制御できる。
成形時の熱履歴は、たとえば押出成形の場合、押し出し機の成形速度、スクリュー回転数または原料のフィード流量などを変更して、滞留時間またはせん断発熱を調整することにより行える。その結果、予備成形品の溶融流れ速度は制御される。
含フッ素共重合体(A)の分子量は、主として連鎖移動剤の種類や添加量によって制御される。
なお、予備成形品の溶融流れ速度MFR(I)および後述の含フッ素共重合体成形品の溶融流れ速度MFR(II)は、いずれも372℃、49Nの荷重下で測定された値である。
工程(I)において、樹脂として含フッ素共重合体(A)のみを用いた場合は、他の樹脂を混合する必要がないため、種類の異なる複数種の樹脂を含む組成物を押出成形等で成形した場合に生じやすいウエルドラインや、該ウエルドラインを起点とした亀裂のない予備成形品を製造できる。
工程(I)では、含フッ素共重合体(A)に、必要に応じて充填剤、可塑剤、難燃剤等の添加剤を添加して成形してもよい。
充填剤としては、高分子充填剤が挙げられる。
高分子充填剤としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカプロラクトン、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールケトン、ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ABS、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、EPDM、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリルゴム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
高分子充填剤は、アロイまたはブレンドにより、含フッ素共重合体(A)中に分散していることが望ましい。
一方、無機充填剤としては、CaCO、SiO、TiO、BaSO、ZnO、Al(OH)、Mg(OH)、タルク、マイカ等が挙げられる。また、有機物充填剤としてはカーボンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル等が挙げられ、難燃剤としては、リン酸エステル等が挙げられる。
これら添加剤の含有量の総量は、体積比として、含フッ素共重合体(A):添加剤=100:1〜80となる範囲が好ましい。高分子充填剤は、体積比として、含フッ素共重合体(A):高分子充填剤=100:0.1〜50となる範囲が好ましい。可塑剤は、体積比として、含フッ素共重合体(A):可塑剤=100:1〜50となる範囲が好ましい。また、難燃剤は、体積比として、含フッ素共重合体(A):難燃剤=100:1〜30となる範囲が好ましい。
(工程(II))
工程(II)は、工程(I)で得られた予備成形品を熱処理し、含フッ素共重合体成形品を得る工程である。成形品の用途には特に制限はなく、たとえば、フィルム、電線被覆材、摺動部材、ギア部材などが挙げられる。
工程(II)では、予備成形品の溶融流れ速度をMFR(I)とし、含フッ素共重合体成形品の溶融流れ速度をMFR(II)とした時に、MFR(II)とMFR(I)との比[MFR(II)/MFR(I)]が0.05〜0.5となるように、250℃以上、かつ、含フッ素共重合体(A)の融点よりも5℃以上低い温度で、予備成形品を熱処理する。このように予備成形品を熱処理することにより、貯蔵弾性率および耐摩耗性が向上し、貯蔵弾性率が高く、耐摩耗性の優れた含フッ素共重合体成形品が得られる。また、高温での形状保持性に優れた含フッ素共重合体成形品が得られる。
工程(II)では、[MFR(II)/MFR(I)]が0.05〜0.4となるように熱処理することが好ましく、0.05〜0.35となるように熱処理することがより好ましく、0.1〜0.3となるように熱処理することが特に好ましい。[MFR(II)/MFR(I)]が上記範囲内であると、熱処理が適度であり、貯蔵弾性率および耐摩耗性の向上効果が充分に得られる。[MFR(II)/MFR(I)]が上記範囲の上限値を超えると、熱処理が不充分となり、上記範囲の下限値未満であると、熱劣化が進行する。
[MFR(II)/MFR(I)]は、工程(II)における熱処理温度を調整する方法、熱処理時間を調整する方法、これらを組み合わせる方法等により、制御できる。
熱処理温度は、250℃以上、かつ、含フッ素共重合体(A)の融点よりも5℃以上低い温度であって、[MFR(II)/MFR(I)]が上記範囲内となる温度であればよく、260℃以上、かつ、含フッ素共重合体(A)の融点よりも5℃以上低い温度であることが好ましい。熱処理温度が上記範囲の下限値以上であれば、熱処理が短時間で済み、含フッ素共重合体成形品の生産性に優れる。上記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体成形品の熱劣化を抑制できる。
熱処理時間は、たとえば1時間以上360時間未満が好ましく、3時間以上336時間未満がより好ましく、6時間以上192時間未満が特に好ましい。
熱処理設備としては特に限定されず、たとえば熱風循環式乾燥機、ウィケット乾燥機、トンネル型乾燥機、赤外線乾燥機など種々の乾燥機が挙げられる。
<含フッ素共重合体成形品>
上述の製造方法で製造された含フッ素共重合体成形品は、たとえば、電線被覆材、フィルム、チューブ材、軸受け、歯車、ギア部材、摺動部材、電子機器、スペーサー、ローラー、カム等の様々な用途に使用される。
特に、樹脂として含フッ素共重合体(A)のみを用いた場合は、種類の異なる複数種の樹脂を含む組成物を押出成形等で成形した場合に生じやすいウエルドラインや、該ウエルドラインを起点とした亀裂のない、電線被覆材等の含フッ素共重合体成形品を製造できる。よって、本発明の製造方法によって得られる含フッ素共重合体成形品としては、複数の樹脂を含む組成物を用いた場合にはウエルドラインが形成されやすい電線被覆材、チューブ材等の押出成形品が好ましい。
<作用効果>
本発明の製造方法においては、主鎖および主鎖末端の少なくとも一方にカルボニル基含有基を有する含フッ素共重合体(A)を用いているため、予備成形品を熱処理することにより、分子間および分子内で架橋構造が形成され、主鎖の分解反応と該分解反応に起因する含フッ素共重合体成形品の脆化が抑制されると考えられる。そのため、得られる含フッ素共重合体成形品の貯蔵弾性率、耐摩耗性等が向上すると推察できる。架橋構造は、カルボニル基が熱により活性ラジカルを発生することで分子内および分子間で共有結合が生じ、その結果、形成されるものと推察できる。仮に、カルボニル基含有基を有しない含フッ素共重合体の予備成形品を熱処理した場合には、架橋構造が充分には形成されない。そのため、主鎖の分解反応が架橋反応よりも優先的に進行する等し、含フッ素共重合体成形品の物性は充分には向上しないと考えられる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
例1〜13中、例1〜7は実施例、例8〜13は比較例である。
<評価方法>
以下の方法により、各種測定、試験および評価を行った。
(共重合組成)
溶融NMR分析、フッ素含有量分析および赤外吸収スペクトル分析により測定したデータから算出した。
(融点)
熱分析装置「EXSTAR DSC7020」(セイコーインスツル社製)を用いて、10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点とした。
(MFR)
プレス成形品を1〜5mm角に細かくカットして得られたサンプルを5g用いて、「メルトインデクサー」(タカラサーミスタ社製)により、372℃、49N荷重の条件下、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に流出する質量(g)を測定することで、MFRを求めた。サンプルを充分に溶融させるため、シリンダー内において、測定温度で5分間滞留させた後に、測定を行った。
MFRは、樹脂成分の分子量の目安であり、MFRが大きければ分子量が小さく、MFRが小さければ分子量が大きいことを表す。
([MFR(II)/MFR(I)])
上述の測定法により、熱処理前のプレス成形品(予備成形品)の溶融流れ速度MFR(I)と、熱処理後のプレス成形品(含フッ素共重合体成形品)の溶融流れ速度MFR(II)をそれぞれ測定し、MFR(I)とMFR(II)との比[MFR(II)/MFR(I)]を求めた。測定には、プレス成形品を1〜5mm角に細かくカットして用いた。
(貯蔵弾性率)
動的粘弾性装置「DMS6100」(セイコーインスツル社製)を用い、引っ張りモード、周波数1Hzの条件で、2℃/分で昇温し、23℃における貯蔵弾性率を測定した。
(曲げ試験)
大型テンシロン万能試験機(東洋ボールドウィン社製)を用い、曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(MPa)を測定した。具体的には、ロードセル:100(kg)、クロスヘッドスピード:1(mm/min)、支点間距離:40(mm)の条件下で測定を実施し、下式(1)および(2)を用いて、曲げ強度σおよび曲げ弾性率Eを求めた。
σ=3FL/(2bh)・・・(1)
ただし、F:曲げ荷重(N)、L:支点間距離(mm)、b;サンプル幅(mm)、h:厚み(mm)。
E=L/(4bh)×I・・・(2)
ただし、I:傾き=ΔF/ΔS、S:たわみ。
(耐摩耗性(スクレープ摩耗))
下記の電線押し出し成型により得られたサンプル試験片を長さ2mに切り出し、安田精機社製、製品名「マグネットワイヤー摩耗試験機(往復式)」を用い、ISO6722−1に準拠した試験方法によって、スクレープ摩耗試験を実施した。具体的には、ニードル直径:0.45±0.01mm、ニードル材質:SUS316(JISK−G7602準拠)、摩耗距離:15.5±1mm、摩耗速度:55±5回/min、荷重:7N、試験環境:23±1℃の条件下で実施した。摩耗抵抗はニードルの往復運動によって、導体が絶縁被覆から露出するまでに要したニードルの往復回数であらわされる。摩耗抵抗(回数)が多ければ、その電線被覆材の耐摩耗性は優れる。
(電線押し出し成型)
電線製造装置として、下記の構成のものを用い、電線径の厚み精度が±0.03mmとなるように、サンプル試験片を作成した。成型温度は350℃の条件下で実施した。
押出機:アイ・ケー・ジー社製、MS30−25押し出し機、
スクリュー:IKG社製、フルフライト、L/D=24、φ30mm、
電線ダイスクロスヘッド:ユニテック社製、最大導体径:3mm、最大ダイス孔径:20mm、
電線引き取り機、巻き取り機:聖製作所社製。
芯線としては、安田工業社製(練り線、芯線径:1.8mm、構成:37/0.26mm(1層:右撚7本、2層:左撚12本、3層:右撚18本))のものを用意した。
(耐摩耗性(滑り摩耗))
回転式摩擦摩耗試験機を用い、JIS−K−7218に準拠した試験方法により、板状のサンプル片の耐摩耗性を評価した。具体的には、対金属(サンプル片に対する相手材:SMC45、2cm)、荷重10kgf(98N)、速度0.5m/秒の条件で24時間の摺動試験を行い、試験後の摩耗量(cm)を測定した。
<製造例1>
含フッ素共重合体(A1)を以下のようにして製造した。
TFE(構成単位(a)のモノマー)、NAH(構成単位(b)のモノマー)およびCF=CFO(CFF(ペルフルオロプロピルビニルエーテル。以下、「PPVE」とも記す。)(構成単位(c)のモノマー)を、以下のように重合して、含フッ素共重合体(A1)を得た。
まず、369kgの1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン「AK225cb」(旭硝子社製)(以下、「AK225cb」とも称する。)と、30kgのPPVE(旭硝子社製)とを予め脱気し、内容積430Lの重合槽に入れた。
重合槽内を、50℃に昇温し、TFEを重合槽内に送り込むことで0.89MPa/Gまで昇圧した。
重合開始剤として、0.36質量%の(ペルフルオロブチリル)ペルオキシド/AK225cb溶液を、1分間に6.25mLの速度で合計3Lを重合槽内に送り込み、重合を行った。
重合中は、重合槽内を0.89MPa/Gに維持するため、TFE(旭硝子社製)を重合槽内に送り込んだ。同時に、該TFEを100モル%とした場合に、0.1モル%のNAH(日立化成社製)を重合槽内に送り込んだ。
重合開始8時間後、32kgのTFEを仕込んだ時点で、重合槽内を室温まで降温し、常圧まで降圧し、含フッ素共重合体(A1)を含むスラリを得た。
得られたスラリを固液分離した後、150℃で15時間乾燥し、33kgの含フッ素共重合体(A1)の造粒物を得た。
含フッ素共重合体(A1)の共重合組成は、(TFEに基づく構成単位):(NAHに基づく構成単位):(PPVEに基づく構成単位)=97.9:0.1:2.0(モル比)であった。
含フッ素共重合体(A1)の比重は、2.15、融点は300℃、372℃、49N荷重でのMFR(I)は17.2g/10分、融点+50℃、49N荷重でのMFRは13.27g/10分であった。
〔例1〜11〕
製造例1で得られた含フッ素共重合体(A1)の造粒物をプレス成形し、80mm×80mm×0.25mm±0.05のプレス成形品(a)を得た。プレス成形は、メルト熱プレス機「ホットプレス二連式」(テスター産業社製)を用い、350℃、10MPa、プレス時間5分のプレス条件で行った。
得られたプレス成形品(a)から、長さ30mm、幅5mm、厚み0.25±0.05mmの板状のサンプル片を切り出し、表1に示す各例の条件(熱処理温度および熱処理時間)で、熱処理を実施した。熱処理後のサンプル片について、上述の方法で貯蔵弾性率を測定した。結果を表1に示す。
一方、製造例1で得られた含フッ素共重合体(A1)の造粒物を用いて、上述の方法で電線押し出し成型を実施し、電線被覆材のサンプル試験片(電線径:φ2.8mm、被覆厚み:0.5mm)を得た。得られたサンプル試験片について、表1に示す各例の条件で熱処理を実施し、熱処理後のサンプル片について、上述の方法で耐摩耗性(スクレープ摩耗)の試験を実施した。結果を表1に示す。
また、上述の方法で、[MFR(II)/MFR(I)]を求めた。結果を表1に示す。
さらに、例6、8、10においては、上述のプレス成形品(a)の成形時と同じ条件でプレス成形して、長さ80mm、幅80mm、厚み1.0±0.05mmのプレス成形品(b)を得て、得られたプレス成形品(b)から、長さ40mm、幅40mm、厚み1.0±0.05mmの板状のサンプル片を切り出し、表2に示す各例の条件で、熱処理を実施した。熱処理後のサンプル片について、上述の方法で耐摩耗性(滑り摩耗)を評価した。結果を表2に示す。
さらに、例6、8、10においては、上述のプレス成形品(a)の成形時と同じ条件でプレス成形して、130mm×130mm×3mm±0.1のプレス成形品(c)を得て、得られたプレス成形品(c)から、長さ60mm、幅25mm、厚み3mm±0.1の板状のサンプル片を切り出し、表2に示す各例の条件で、熱処理を実施した。熱処理後のサンプル片について、上述の方法で曲げ試験を実施し、曲げ強度および曲げ弾性率を求めた。結果を表2に示す。
なお、例8においては、熱処理を実施しなかった。
〔例12および例13〕
含フッ素共重合体(A1)のかわりに、PFA−1(TFE/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、融点305℃、MFR13.6g/10分、旭硝子社製、製品名「Fluon PFA 73PT」)を用いた。例12においては、例8と同様に熱処理を実施せず、各種測定等を行った。例13においては、例6と同様の条件で熱処理を行い、各種測定等を行った。PFA−1は、カルボニル基を有しない。結果を表1および表2に示す。
Figure 0006107613
表1に示すように、含フッ素共重合体(A1)の予備成形品を特定の条件で熱処理した例1〜7によれば、熱処理を実施しなかった例8と比較して、貯蔵弾性率および耐摩耗性(スクレープ摩耗)が向上した。また、電線被覆材においてウエルドラインは認められなかった。例9および例10は熱処理が不充分であり、貯蔵弾性率および耐摩耗性(スクレープ摩耗)の向上が認めらなかった。例11は熱処理が過度であり、貯蔵弾性率および耐摩耗性(スクレープ摩耗)が低下した。
PFA−1の予備成形品を特定の条件で熱処理した例13は、熱処理をしない例12と同程度の貯蔵弾性率および耐摩耗性(スクレープ摩耗)であり、これらの特性の向上が認められなかった。これは、PFA−1はカルボニル基含有基を有さず、そのため、熱処理を行っても架橋構造が形成されないことに起因すると考えられる。
Figure 0006107613
表2に示すように、含フッ素共重合体(A1)の予備成形品を特定の条件で熱処理した例6によれば、熱処理を実施しなかった例8と比較して、曲げ強度、曲げ弾性率および耐摩耗性(滑り摩耗)が向上した。例10は熱処理が不充分であり、曲げ強度、曲げ弾性率および耐摩耗性(滑り摩耗)の向上が認められなかった。
PFA−1の予備成形品を特定の条件で熱処理した例13では、熱処理をしない例12と同程度の曲げ強度、曲げ弾性率および耐摩耗性(滑り摩耗)であり、これらの特性の向上が認められなかった。これは、PFA−1はカルボニル基含有基を有さず、そのため、熱処理を行っても架橋構造が形成されないことに起因すると考えられる。
本発明の含フッ素共重合体成形品の製造方法によれば、貯蔵弾性率が高く、耐摩耗性に優れた含フッ素共重合体成形品(たとえば、電線被覆材、フィルム、チューブ材、軸受け、歯車、ギア部材、摺動部材、電子機器、スペーサー、ローラー、カム等。)を製造できる。

Claims (5)

  1. 主鎖および主鎖末端の少なくとも一方にカルボニル基含有基を有し、融点が255℃以上である溶融成形可能な含フッ素共重合体(A)を成形して予備成形品を得る工程(I)と、前記予備成形品を熱処理して成形品を得る工程(II)とを有する含フッ素共重合体成形品の製造方法であって、
    前記工程(II)において、250℃以上、かつ、前記含フッ素共重合体(A)の融点よりも5℃以上低い温度で、前記予備成形品の溶融流れ速度をMFR(I)とし、前記含フッ素共重合体成形品の溶融流れ速度をMFR(II)としたときの、MFR(I)とMFR(II)との比[MFR(II)/MFR(I)]が0.05〜0.5となるように熱処理を行う、含フッ素共重合体成形品の製造方法。
  2. 前記含フッ素共重合体(A)が、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンの少なくとも一方に基づく構成単位(a)と、カルボキシ基または酸無水物基を有する炭化水素モノマーに基づく構成単位(b)と、含フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく構成単位(c)とを含有し、
    前記構成単位(a)と前記構成単位(b)と前記構成単位(c)の合計モル量に対して、前記構成単位(a)が50〜99.89モル%で、前記構成単位(b)が0.01〜5モル%で、前記構成単位(c)が0.1〜49.99モル%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体成形品の製造方法。
  3. 前記含フッ素共重合体(A)が、カルボニル基を有するラジカル重合開始剤またはカルボニル基を有する連鎖移動剤を用いて得られた重合体である、請求項1または2に記載の含フッ素共重合体成形品の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られた成形品からなる電線被覆材。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られた成形品からなる摺動部材。
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