以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、この発明の第1の実施の形態に係る搬送機構1(紙葉類搬送機構)の概略構造を示してある。ここでは、処理対象となる紙葉類として、0.15〜6[mm]の厚さを有する封筒、はがき、写真入封筒、ビニール封筒、印刷塗工紙等の郵便物Pを例にとって説明する。また、ここでは、この搬送機構1の使用環境温度を0〜40[℃]に想定した。
搬送機構1は、郵便物Pを図中矢印T方向に搬送する搬送路2、搬送路2の一側(図中下側)に配置された駆動ローラ4、および搬送路2の他側(図中上側)に配置された従動ローラ6を有する。従動ローラ6は、搬送路2を介して駆動ローラ4に対向する位置に配置され、駆動ローラ4に圧接されて変形されている。
駆動ローラ4の回転軸4aは、搬送機構1の筐体1aに回動自在且つ固定的に取り付けられている。そして、駆動ローラ4の回転軸4aに固設されたプーリ4bに無端状のタイミングベルト11が巻回されている。タイミングベルト11は、プーリ12を介して、モータ13に接続されている。しかして、モータ13を付勢することにより、駆動ローラ4が図中矢印方向(時計回り方向)に所定速度で回転する。
従動ローラ6の回転軸6aは、筐体1aに対して回動自在且つ固定的に取り付けられている。すなわち、回転軸6aには、図示しない複数のベアリングが組み込まれたハウジング14が取り付けられ、このハウジング14が筐体1aに固設されている。従動ローラ6は、駆動ローラ4に転接して従動回転する。
駆動ローラ4と従動ローラ6の軸間距離は、搬送路2を介して両者が圧接するように設定されている。つまり、2つのローラ4、6を、それぞれ、筐体1aに対して固定的に配置したため、従動ローラ6を図示のように弾性変形せしめることにより、両者の間に押圧力を生じせしめている。
本実施の形態では、駆動ローラ4と従動ローラ6を圧接配置した状態で、従動ローラ6の変形量が0.5[mm]になるように、軸間距離を設定した。この変形量とは、2つのローラ4、6を接触した状態から軸間距離を縮めた長さを指す。
駆動ローラ4と従動ローラ6との間のニップ5の前後には、郵便物Pを搬送路2に沿って案内する2組のガイド板15、16が設けられている。また、郵便物Pの搬送方向に沿ってニップ5の上流側および下流側には、郵便物Pの通過を検知するためのセンサ17、18が設けられている。
図2に拡大して示すように、従動ローラ6は、駆動ローラ4に接触する外側の第1層をゴム21(中実弾性体)により形成し、内側の第2層をスポンジ22(発泡弾性体)により形成した弾性変形可能な2層構造を有する。
本実施の形態では、回転軸6aの外側にアルミの芯金23を設け、芯金23の外側にJIS K 6254圧縮永久ひずみが3[%]以下で、JIS K 6252引き裂き強度が2[kN/m]以上である(株)協和技研製LLラバーBタイプ(独立発泡ウレタンスポンジ)のスポンジでアスカーC硬度30(JIS K 6253 E型と同等)のスポンジ22を設け、スポンジ22の外側に日立電線(株)製HAN60(天然ゴム)のゴム硬度60(JIS K 6253 A型)のゴム21を設けた。
ゴム21は、一般的に対象とする相手材料、環境温度、相対速度によって摩擦係数が変動することが知られており、選定にあたってはこれを十分に考慮する必要がある。本実施の形態のように、使用環境温度を0〜40[℃]に想定し、郵便物Pとして、各種封筒、はがき、写真入封筒、ビニール封筒、印刷塗工紙等を想定した場合、上述した日立電線(株)製HAN60を使用すると、相対速度域200[mm/s]以下で0.8以上の動摩擦係数が長期にわたって維持できる。尚、ゴム21の材料として、この他に、北辰工業(株)製NBRシリーズ(ニトリルゴム系)などを用いても良い。又、スポンジ22としては、北辰工業(株)製ウレタンスポンジNo,15などを用いても良い。
また、本実施の形態では、従動ローラ6を製造する際、サンドブラスト処理により芯金23の表面粗さを高め、この芯金23の外周面にスポンジ22を加硫接着(アラルダイト等のエポキシ系接着剤やセメダイン社製のPM155等の弾性のある接着剤による接着も可)し、ロード・ファー・イースト・インコーポレーテッドのTYRITE7650をプライマー剤CHEMLOK7701と共に用いた接着剤により、スポンジ22の外周面にゴム21を接着固定した。この接着剤を芯金23とスポンジ22の接着に用いても良い。若干の耐久性を犠牲にして安価に製作する方法として、芯金23とスポンジ22の固定には接着剤を用いずに、芯金23の外径をスポンジ22の内径より10[%]程度大きくしてスポンジ22を芯金23にはめ込むようにしても良い。
また、本実施の形態では、ゴム21の肉厚t1を2[mm]とし、スポンジ22の肉厚t2を13[mm]とし、芯金23の直径を20[mm]とし、従動ローラ6の直径を50[mm]とした。尚、従動ローラ6の幅は、15[mm]とした。また、駆動ローラ4も、従動ローラ6のゴム21と同じゴム材料により形成した。
上述したように、従動ローラ6を駆動ローラ4に対して圧接した状態で固定的に配置したことにより、郵便物Pがニップ5に突入した際、従動ローラ6が搬送路2から跳ね上がることがない。つまり、この際、従動ローラ6が郵便物Pの厚さに応じて図3に示すように変形し、ニップ5を通過する郵便物Pに対して常に押圧力を与えながら挟持搬送する。このため、駆動ローラ4による搬送力が郵便物Pに対して効果的に伝えられ、郵便物Pの搬送速度の変動が抑えられる。
ここで、図3を参照して、郵便物Pがニップ5に突入する際の従動ローラ6および郵便物Pの挙動について考察する。尚、従動ローラ6は、郵便物Pがニップ5に到達する前の状態において、駆動ローラ4に転接して駆動力が伝達され図中矢印方向に従動回転している。
郵便物Pがニップ5に突入すると、従動ローラ6がつぶれて郵便物Pが駆動ローラ4との間に徐々に挟み込まれていく。このとき、従動ローラ6は、郵便物Pに対してローラ表面から垂直な方向の力Rを与える。このため、郵便物Pには、郵便物Pを搬送方向(図中矢印T方向)と逆向きに押し戻そうとする反力Rsinθが作用する。この反力Rsinθは、郵便物Pの厚さが厚いほど大きくなる。
ところで、郵便物Pは、駆動ローラ4の回転に基づく搬送力Fと従動ローラ6の回転(従動回転)に基づく搬送力F’によって矢印T方向に搬送される。このため、郵便物Pに作用する搬送力F、F’の合力が反力Rsinθより十分大きければ郵便物Pは正常に搬送されるが、搬送力F、F’が小さくなると搬送不良を生じる。
つまり、駆動ローラ4および従動ローラ6の郵便物Pに対する動摩擦係数が低いと、搬送力F、F’が小さくなり、上述した反力Rsinθの影響が大きくなってしまう。よって、郵便物Pを正常に搬送するためには、搬送力F、F’、すなわち各ローラ4、6の郵便物Pに対する動摩擦係数をできるだけ大きくする必要がある。
また、正常な搬送性能を得るため、動摩擦係数を大きくする以外に、反力Rsinθを小さくするように従動ローラ6の弾力性を弱める方法も考えられる。後述する試験の結果によると、従動ローラ6の弾力性を左右するスポンジ22として、JIS K 6254圧縮永久ひずみが5[%]以下で、アスカーC(またはJIS K 6253 E型)硬度が40以下であり、かつ、肉厚t2が処理対象となる郵便物Pのうち最も厚い郵便物P(本実施の形態では6[mm])の1.8倍以上であるものを使用した場合に良好な結果が得られた。
スポンジ22の圧縮永久ひずみは、郵便物Pに追従して変形する性能を維持するために大きく影響する。JIS K 6254圧縮永久ひずみが5[%]を超えると、非動作時の抑え付け力による負荷と、特に厚い郵便物Pを搬送するときの負荷により、永久変形がおき、円形状が保持されなくなってしまった。これにより、特に薄い郵便物Pに対して必要な押付力が与えられなくなり、正常な搬送ができなくなった。
また、スポンジ22の硬度および肉厚は、双方の交互作用により郵便物Pへの追従変形性能と適切な押圧を得るための必要条件となる。硬度が硬すぎる、もしくは肉厚が薄すぎる場合は、追従変形が困難になり、搬送不良を起こしたり、郵便物Pや駆動ローラ4(周辺部材を含む)にダメージを与えたりしてしまう。
すなわち、上述した搬送機構1によって郵便物Pを正常に搬送するためには、従動ローラ6の動摩擦係数、硬度、肉厚、および圧縮永久ひずみを適切な値に設定する必要がある。本発明者等は、以下に説明する試験により、この適正値を見出した。上述した第1の実施の形態の従動ローラ6は、この適正値を実現したものとなっている。
試験では、被検査媒体として、上述した厚さの範囲(0.15〜6[mm])を有し、2〜60[g]の重さの範囲を有する1000通の郵便物P(厚い郵便物が重い郵便物に相当するように均等に厚さと重さを割り当てた)を用意した。そして、これら1000通の郵便物を、搬送速度3.6[m/s]、搬送間隔100[mm]で、上述した搬送機構1を通して連続して搬送し、搬送機構1を通過した郵便物P同士の搬送間隔のバラツキ(標準偏差)を調べた。搬送間隔は、ニップ5の前後に配置したセンサ17、18により郵便物Pの通過を検知する時間差に基づいて測定した。
尚、試験では、上述した適正値を調べるため、動摩擦係数、ゴム21の肉厚、およびスポンジ22の硬度を種々変更せしめた複数種類の従動ローラ6を用意し、各従動ローラを搬送機構1にセットし、上述した搬送試験をそれぞれ行なった。この試験で使用した各従動ローラ6(S11〜S19、S21〜S29)の動摩擦係数、ゴム肉厚、およびスポンジ硬度を図4に表にして示してある。また、各従動ローラ6を用いた場合の試験結果を図5および図6にグラフにして示してある。各グラフの縦軸は、各従動ローラ6を用いた場合における搬送間隔のバラツキを標準偏差として示してある。つまり、標準偏差が大きい程、バラツキが大きいことを示す。
図4に示すように、従動ローラS11〜S19には、上述した日立電線(株)製HAN60のゴム21(0[℃]の環境温度でも0.7以上の動摩擦係数を得ることができる)を用いたため、動摩擦係数が1.0となっている。また、従動ローラS21〜S29には、動摩擦係数が0.6程度のウレタンゴムをゴム21として用いた。さらに、各従動ローラS11〜S19、S21〜S29の外径は50[mm]とし、芯金23の直径は20[mm]に統一した。
以下、試験結果について考察する。
図5に示すように、5つの従動ローラS11、S12、S14、S15、S17の標準偏差は0.5[ms]程度に収まっており、良好な結果を示している。これら従動ローラのゴム21の肉厚は、全て4[mm]以下となっている。すなわち、最大厚さ6[mm]の郵便物Pに対し、スポンジ22の肉厚(15−4[mm])が1.8倍以上で、ゴム21の肉厚がスポンジ22の肉厚の1/2以下となっている。
これに対し、3つの従動ローラS13、S16、S19は、ゴム21の肉厚が6[mm]であり、上述した条件を満たしていない。このため、比較的厚い郵便物Pを搬送する際に、従動ローラが郵便物Pに追従変形できなくなり、搬送間隔にバラツキを生じてしまっている。よって、これら従動ローラの標準偏差は、上述した5つの従動ローラS11、S12、S14、S15、S17と比較して大きくなってしまっている。特に、この標準偏差は、郵便物Pの厚さに応じて、顕著に大きくなることが詳細分析により分っている。
また、従動ローラS18は、ゴム21の肉厚が4[mm]であり条件をクリアしている反面、スポンジ22の硬度がアスカーC硬度50と比較的硬いため、従動ローラS18が郵便物Pに対して追従変形できなくなっている。つまり、ゴム21の肉厚を薄くしても、スポンジ22の硬度が硬くなると、郵便物Pに対する追従変形ができなくなり、いずれにしても搬送不良の原因となることが分る。
以上のことから、スポンジ22の肉厚t2が最大厚さの郵便物Pの1.8倍以上の厚さを有し、ゴム21の肉厚t1がスポンジ22の肉厚t2の1/2以下であり、且つスポンジ22の硬度が40以下であることが、良好な搬送性能を得るために必要であることが分る。
図7には、比較例として、従動ローラ102を駆動ローラ101にピンチ圧接せしめた搬送機構100を例示してある。上述した搬送機構1と同様に機能する構成部材には同一符号を付してある。
この搬送機構100は、搬送路2の下側に固定的に配置した駆動ローラ101、および搬送路2の上側に配置した従動ローラ102を有する。従動ローラ102は、筐体1aに対して回動自在に取り付けられたアーム104の先端に回動自在に取り付けられ、バネ106により駆動ローラ101に向けて付勢されている。
このため、特に厚いもしくは重い郵便物Pが搬送路2に沿って比較的高速で搬送されて2つのローラ101、102間のニップ103に突入すると、その衝撃により従動ローラ102が跳ね上がり、適切な押圧が与えられなくなり、図中に波形を示したように搬送力が低下し、搬送速度変動、搬送ジャムなどを起こす場合がある。特に、一定間隔で連続して郵便物Pを搬送する場合には、搬送間隔が縮まってしまい処理不能となる問題を起こす。これを抑えるためにピンチ圧を高くしていくと、駆動ローラ101の寿命を著しく低下させてしまったり、郵便物Pを損傷してしまう問題が生じる。
図4および図5には、この従来の搬送機構100に組み込んで上述した搬送試験を行なった従動ローラ102を、P1、P2、P3として示してある。これら従動ローラP1〜P3は、2層構造を持たず、いずれも、動摩擦係数が1.0のムクのゴム材料により形成され、ゴムの肉厚が4[mm]に設定されている。
これによると、バネ106による押付力を5[N]に設定した従動ローラP1、および押付力が20[N]の従動ローラP2は、標準偏差が1.3〜2[ms]程度となり、正常な搬送性能を得られていないことが分る。これは、上述した従動ローラの跳ね上がり生じているものと考えられ、郵便物Pの搬送に必要な押付力が連続して与えられなくなっていることが原因である。
また、押付力を50[N]に設定した従動ローラP3では、上述した跳ね上がりを防止できる反面、押付力が高すぎて郵便物Pをニップ103に受け入れることができず、搬送ジャムを起こした。
つまり、搬送間隔にバラツキを生じない良好な搬送性能を得るためには、上述した第1の実施の形態の搬送機構1のように、従動ローラ6を上述した2層構造とした上で、この従動ローラ6を駆動ローラ4に対して圧接せしめた状態で固定的に配置することが重要であり、且つ従動ローラ6と駆動ローラ4の軸間距離を適切な距離に設定して押付力を適切な値に設定することが重要であることが分る。
また、図4および図6に示すように、動摩擦係数の比較的低いゴム材料を使用した従動ローラS21〜S29では、ゴム21の肉厚およびスポンジ22の硬度を上述した従動ローラS11〜S19と略同程度に設定しても、標準偏差が大きくなり、全てのローラに関して1.0[ms]を超える値を示していることが分る。つまり、従動ローラの動摩擦係数が低いと、図3を用いて説明した各ローラ4、6からの搬送力F、F’が弱くなり、十分な搬送力が得られなくなってしまい、搬送間隔にバラツキを生じてしまうことが原因である。
従動ローラ6の動摩擦係数は、郵便物Pとの間の相対的な速度差に応じて変化することが知られている。発明者等は、この相対速度差が200[mm/s]以下で動摩擦係数が0.7以上となるゴム材料をゴム21として使用した場合に、良好な搬送性能が得られることを見出した。
上述したように、郵便物Pを正確に搬送するためには、郵便物Pと従動ローラ6との間に大きなすべりを生じさせないことが重要である。ただし、郵便物Pと従動ローラ6は全くすべりを生じない状態を作ることは不可能であり、ゴム21の摩擦係数の選定にあたってはある程度のすべりを考慮する必要がある。郵便物Pと従動ローラ6との間の相対速度は200[mm/s]以下と考えれば十分であり、この範囲で0.7以上の動摩擦係数が得られれば搬送性能に悪影響が無いことを確認している。
次に、上述したように良好な搬送性能が得られた従動ローラS11、S12、S14、S15、S17について、搬送機構1を用いて複数通の郵便物Pを500時間連続して搬送する耐久試験を実施した。
この耐久試験の結果、スポンジ22の硬度が他の従動ローラと比べて硬い従動ローラS17を搬送機構1にセットした際に、試験開始から約100時間経過した時点で、従動ローラS17に対向する駆動ローラ4を回転可能に保持しているベアリング(図示せず)が壊れた。また、このとき、10000通に1通の割合で、特に厚さが0.2[mm]以下の郵便物Pが破れてしまうという問題が発生した。これは、スポンジ22が硬すぎるために、郵便物Pがニップ5に突入する際の衝撃を緩和できないことが原因である。
一方、従動ローラS11、S12、S14、S15を搬送機構1にセットした際には、搬送機構1の各部における損傷や郵便物Pの損傷などは認められなかった。つまり、これら4種の従動ローラS11、S12、S14、S15が良好な搬送性能を発揮するための条件を満たしているという結果になった。
よって、厚さの異なる郵便物Pを連続して搬送するときに、前述した条件を満たす従動ローラ6を駆動ローラ4に対して固定配置することで、搬送間隔にバラツキを生じない良好な搬送性能が得られることが分った。
さらに、本発明者等は、スポンジ22の引き裂き強度と耐久性の関係を調べるため、以下の耐久試験を実施した。すなわち、上述したように良好な搬送性能が得られた4種の従動ローラS11、S12、S14、S15に関し、スポンジ22をJIS K 6254圧縮永久ひずみが4[%]以下でJIS K 6252引き裂き強度が8[kN/m]以上の(株)協和技研製LLラバーAタイプのスポンジ22’に替えた従動ローラS11’、S12’、S14’、S15’を用意した。そして、これら従動ローラS11’、S12’、S14’、S15’を搬送機構1に組み込んで複数通の郵便物Pを1000時間連続して搬送する耐久試験をそれぞれ実施した。尚、この際、比較のため、上述した(株)協和技研製LLラバーBタイプのスポンジ22(JIS K 6252引き裂き強度;2[kN/m])を用いた従動ローラS11、S12、S14、S15についても1000時間の耐久試験を実施した。
この耐久試験の結果、1000時間経過した時点で、両タイプともに全ての従動ローラについて郵便物Pの破損や搬送バラツキ等は生じなかった。つまり、この耐久試験で調べたスポンジ22、22’に関しては、1000時間の耐久試験において問題は生じなかった。しかし、(株)協和技研製LLラバーBタイプのスポンジ22に関しては、500時間経過した時点で、従動ローラS11、S12のスポンジ部分にクラックが生じた。これに対し、(株)協和技研製LLラバーAタイプのスポンジ22’に関しては、全ての従動ローラについて1000時間経過してもクラックすら発生しなかった。
クラックを生じた従動ローラS11、S12は、同じタイプの他のローラS14、S15と比べて、スポンジ22の硬度が低い。スポンジの硬度が低いと、引き裂き強度も弱くなる傾向にある。つまり、クラックの原因は、引き裂き強度にあり、引き裂き強度が低いスポンジはクラックを生じ易いと言える。
よって、上述した耐久試験により、従動ローラのスポンジ22として、JIS K 6252引き裂き強度が8[kN/m]以上のスポンジを用いれば、より耐久性を向上できることが分った。尚、スポンジ22の材料として、この他に、イノアックコーポレーション製ポリオレフィンフォーム材PE−ライトRLシリーズや北辰工業(株)製ウレタンスポンジNo,15などを用いることが有効である。
次に、この発明の第2の実施の形態に係る方向変換機構30(紙葉類方向変換機構)について、図8を参照して説明する。尚、上述した第1の実施の形態の搬送機構1と同様に機能する構成部材については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、この方向変換機構30も、厚さの異なる郵便物Pを処理するものとする。
方向変換機構30は、モータ13’によって正逆両方向に回転する駆動ローラ4、および従動ローラ6を有する。各ローラ4、6は、上述した第1の実施の形態と同様の構造を有し、搬送路2を介して互いに圧接している。また、方向変換機構30は、2つのローラ4、6間のニップ5を介して、搬送路2の下面側に沿って延びたガイド板31を有する。
また、方向変換機構30は、ニップ5に向けて郵便物Pを送り込む(図中矢印T1方向)とともに、ニップ5から逆方向(図中矢印T2方向)に送り出された郵便物Pを受け取って矢印T2方向に搬送するための搬送機構35を備えている。搬送機構35は、複数の搬送ローラ36、およびこれら搬送ローラ36に巻回されて張設された複数の無端状の搬送ベルト37を有する。
しかして、搬送機構35により郵便物Pが矢印T1方向に送り込まれると、駆動ローラ4と従動ローラ6との間のニップ5に郵便物Pが突入する。このとき、駆動ローラ4は時計回り方向に回転しており、従動ローラ6は駆動ローラ4と同じ方向に従動回転している。
このようにして郵便物Pがニップ5に突入した後、所定のタイミングで駆動ローラ4が減速されて郵便物Pが停止される。郵便物Pが突入する際、従動ローラ6が弾性変形して郵便物Pに追従する。
その後、駆動ローラ4が逆転し、ニップ5で挟持拘束されている状態の郵便物Pが矢印T2方向に加速され、搬送機構35に受け渡される。これにより、郵便物Pの搬送方向が逆転される。
このように、駆動ローラ4は、郵便物Pの投入タイミングに合わせて、正転および逆転を繰り返すように制御される。このため、本実施の形態の方向変換機構30のように従動ローラ6の第2層を比較的軽いスポンジ22により構成することが有利となる。つまり、郵便物Pの搬送方向を逆転させるためには、2つのローラ4、6を瞬時に逆転させる必要があり、2つのローラ4、6の慣性モーメントが小さいことが有利となる。
言い換えると、従動ローラ6が重い場合、郵便物Pの逆転時に大きな負荷となり、逆転時の反応速度が遅くなる。これに対し、本実施の形態の従動ローラ6は、第2層をスポンジ22で構成しているため軽量になり、慣性モーメントを小さくできる。よって、回転時の負荷を低減できる。本実施の形態では、従動ローラ6の重量は、芯金23の重量を含めて20〜26[g]の範囲に収まっており、従動ローラをソリッドゴムローラにした場合と比較して75[%]以下に抑えることができた。
本実施の形態の方向変換機構30についても、上述した第1の実施の形態の搬送機構1と同じ条件で、複数通の郵便物Pを投入して通紙試験を実施した。つまり、図4に示した各従動ローラS11〜S19、S21〜S29を方向変換機構30にセットし、上述した厚さおよび重さを有する1000通の郵便物Pを投入し、郵便物Pの搬送間隔のバラツキ(標準偏差)を調べた。その結果を図9および図10に示す。
以下、この試験結果について考察する。
図9に示すように、6つの従動ローラS11、S12、S14、S15、S17、S18の標準偏差は0.7〜1.1[ms]程度に収まっており、良好な結果を示している。これら従動ローラのゴム21の肉厚は、全て4[mm]以下となっている。すなわち、最大厚さ6[mm]の郵便物Pに対し、スポンジ22の肉厚(15−4[mm])が1.8倍以上で、ゴム21の肉厚がスポンジ22の肉厚の1/2以下となっている。
郵便物Pを処理する装置には、この種の方向変換機構30が通常1ヶ所もしくは2ヶ所だけ搭載されている。上述した搬送機構1と標準偏差を比較すると搬送間隔のズレが大きくなっているが、これは、郵便物Pを逆転させるための構造上の問題であり、1つの装置に複数個搭載する搬送機構1と比較して、搬送間隔のズレの許容範囲が大きく設定して良い。このため、上述した試験結果のように、標準偏差が0.7〜1.1[ms]程度に収まっている場合、良好な処理性能を示しているものと考えられる。
これに対し、従動ローラS13、S16、S19は、ゴム21の肉厚が6[mm]であるが、標準偏差が従動ローラS11、S12、S14、S15、S17、S18と比較して大きくなってしまっている。すなわち、本発明の条件を満たしていない。従動ローラS13、S16、S19では比較的厚い郵便物Pを搬送する際に、従動ローラが郵便物Pに追従変形できなくなり、搬送間隔にバラツキを生じてしまっている。また、ゴム21の肉厚が大きいので、従動ローラがその分重くなっているのもバラツキが大きくなった原因になっている。
以上のことから、スポンジ22の肉厚t2が最大厚さの郵便物Pの1.8倍以上の厚さを有し、ゴム21の肉厚t1がスポンジ22の肉厚t2の1/2以下であることが、良好な反転性能を得るために必要であることが分る。
また、比較例として、図7に示した搬送機構100と同様に従動ローラを駆動ローラにピンチ圧接せしめた構造を方向変換機構に採用し、上述した郵便物Pの通紙試験を実施したところ、図9にP1〜P3で示す結果が得られた。
これによると、全てのローラP1〜P3に関し、押付力に関わらず、正常な反転動作ができなかった。つまり、全てのローラP1〜P3に関し、跳ね上がりを生じ、郵便物Pに連続した十分な搬送力を与えることができずに、ジャムを生じてしまった。
つまり、郵便物Pを正常に反転させるためには、上述した第2の実施の形態の方向変換機構30のように、従動ローラ6を駆動ローラ4に対して圧接せしめた状態で固定的に配置することが重要であり、且つ従動ローラ6と駆動ローラ4の軸間距離を適切な距離に設定して押付力を適切な値に設定することが重要であることが分る。
また、図10に示すように、動摩擦係数の比較的低いゴム材料を使用した従動ローラS21〜S29では、ゴム21の肉厚およびスポンジ22の硬度を従動ローラS11〜S19と略同程度に設定しても、標準偏差が大きくなり、全てのローラに関して1.7[ms]を超える値になる。つまり、従動ローラの動摩擦係数が低いと、図3を用いて説明した各ローラ4、6からの搬送力F、F’が弱くなり、十分な搬送力が得られなくなることが原因になっている。従動ローラS29に至っては、他のローラと比較してゴム21の肉厚が大きく且つゴム21の硬度が高いため、郵便物Pとの間に滑りを生じてしまい、ジャムを生じてしまった。
発明者等は、従動ローラ6と郵便物Pとの間の相対速度差が200[mm/s]以下で動摩擦係数が0.7以上となるゴム材料をゴム21として使用した場合に、良好な反転性能が得られることを確認した。
次に、上述したように良好な反転性能が得られた従動ローラS11、S12、S14、S15、S17、S18について、複数通の郵便物Pを500時間連続して通紙する耐久試験を実施した。
この耐久試験の結果、スポンジ22の硬度が他の従動ローラと比べて硬い従動ローラS17、S18を方向変換機構30にセットした際に、以下のような不具合を生じた。従動ローラS17を用いた場合、試験開始から約80時間経過した時点で、従動ローラS17に対向する駆動ローラ4を回転可能に保持しているベアリング(図示せず)が壊れた。また、従動ローラS18を用いた場合、試験開始から約60時間経過した時点で、駆動ローラ4のベアリングが壊れた。また、このとき、5000通に1通の割合で、特に厚さが0.2〜0.4[mm]の郵便物Pが破れてしまうという問題が発生した。これは、スポンジ22が硬すぎるために、郵便物Pがニップ5に突入する際の衝撃を緩和できないことが原因である。従動ローラS11、S12、S14、S15では、方向変換機構30の各部における損傷や郵便物Pの損傷などは認められなかった。つまり、これら4種の従動ローラS11、S12、S14、S15が良好な反転性能を発揮するための条件を満たしているという結果になった。
よって、厚さの異なる郵便物Pを連続して反転させるときに、前述した条件を満たす従動ローラ6を駆動ローラ4に対して固定配置することで、搬送間隔にバラツキを生じない良好な反転性能が得られることが分った。
さらに、本発明者等は、スポンジ22の引き裂き強度と耐久性の関係を調べるため、以下の耐久試験を実施した。すなわち、上述したように良好な反転性能が得られた4種の従動ローラS11、S12、S14、S15に関し、スポンジ22をJIS K 6254圧縮永久ひずみが4[%]以下でJIS K 6252引き裂き強度が8[kN/m]以上の(株)協和技研製LLラバーAタイプのスポンジ22’に替えた従動ローラS11’、S12’、S14’、S15’を用意した。そして、これら従動ローラS11’、S12’、S14’、S15’を方向変換機構30に組み込んで複数通の郵便物Pを1000時間連続して処理する耐久試験をそれぞれ実施した。尚、この際、比較のため、上述した(株)協和技研製LLラバーBタイプのスポンジ22(JIS K 6252引き裂き強度;2[kN/m])を用いた従動ローラS11、S12、S14、S15についても1000時間の耐久試験を実施した。
この耐久試験の結果、500時間経過した時点で、両タイプともに全ての従動ローラについて郵便物Pの破損や機構の破損は生じなかった。つまり、この耐久試験で調べたスポンジ22、22’に関しては、500時間の耐久試験において問題は生じなかった。しかし、(株)協和技研製LLラバーBタイプのスポンジ22に関しては、500時間を経過した時点で、従動ローラS11、S12のスポンジ部分にクラックが生じた。また、これら2つの従動ローラS11、S12に関しては、800時間経過した時点でローラの形状が変形し円形を保持できなくなった。これに対し、(株)協和技研製LLラバーAタイプのスポンジ22’に関しては、全ての従動ローラについて1000時間経過してもクラックの発生もなく、ローラの変形もなかった。
クラックを生じ且つ変形を生じた従動ローラS11、S12は、同じタイプの他のローラS14、S15と比べて、スポンジ22の硬度が低い。スポンジの硬度が低いと、引き裂き強度も弱くなる傾向にある。つまり、クラックおよび変形の原因は、引き裂き強度にあり、引き裂き強度が低いスポンジはクラックや変形を生じ易いと言える。
よって、上述した耐久試験により、従動ローラのスポンジ22として、JIS K 6252引き裂き強度が8[kN/m]以上のスポンジを用いれば、より耐久性を向上できることが分った。尚、スポンジ22の材料として、この他に、イノアックコーポレーション製ポリオレフィンフォーム材PE−ライトRLシリーズや北辰工業(株)製ウレタンスポンジNo,15などを用いることが有効である。
次に、この発明の第3の実施の形態に係る押印機構40(紙葉類押印機構)について、図11を参照して説明する。尚、上述した第1の実施の形態の搬送機構1と同様に機能する構成部材については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、この押印機構40も、厚さの異なる郵便物Pを処理するものとする。
押印機構40は、モータ13’によって回転する押印ハブ41、およびモータ42によって回転するプラテンローラ6を有する。プラテンローラ6は、郵便物Pに押印する消印の幅に合わせた幅(本実施の形態では30[mm])にされている以外、上述した第1および第2の実施の形態の従動ローラ6と同様の構造を有する。押印ハブ41は搬送路2の上方で筐体1aに対して回動自在に固定的に設けられ、プラテンローラ6は搬送路2の下方で押印ハブ41に対向して固定的に配置されている。
搬送路2の上方には、押印ハブ41の外周面にインクを供給するためのインク供給ローラ43(インク供給手段)が設けられている。インク供給ローラ43は、その外周面にインクを保持して押印ハブ41の外周面に転接して回転し、押印ハブ41の外周面上にインクを供給する。
プラテンローラ6の回転軸6aには、筐体1aに固設されるハウジング14の他に、無端状のタイミングベルト44を巻回するためのプーリ45が固設されている。タイミングベルト44は、モータ42の回転軸42aに固設されたプーリ46に巻回されて張設されている。しかして、モータ42が回転されると、プラテンローラ6が郵便物Pの搬送方向(矢印T方向)に回転されるようになっている。
押印ハブ41およびプラテンローラ6は、両者の間に搬送路2を介して矢印T方向に送り込まれる郵便物Pと同じ方向に同じ速度で回転する。尚、この押印機構40を通る搬送路2の上面および下面に沿って搬送ベルト2a、2bが張設され、郵便物Pが両者の間に挟持拘束された状態で搬送されるようになっている。
押印ハブ41は、断面が略D字形に形成され、回転の途中で郵便物Pの表面に転接する外周面、および回転の途中で郵便物Pに接触しない切欠き部を有する。押印ハブ41の外周面には、郵便物Pの表面に押印する消印に対応する図示しない凸版が設けられている。
プラテンローラ6は、搬送路2を介して郵便物Pが搬送されていない状態で、押印ハブ41の外周面に接触しないように、所定のギャップを介して対向配置されている。尚、両者の間のギャップは、処理対象となる郵便物Pのうち最も薄い郵便物の厚さより少なくとも小さく設定されている。本実施の形態では、このギャップを0.05[mm]に設定した。
しかして、搬送路2を介してこの押印機構40に郵便物Pが送り込まれると、所定のタイミングで押印ハブ41およびプラテンローラ6が回転され、郵便物Pの表面所定位置に消印が押印される。このとき、押印ハブ41に転接されたインク供給ローラ43が従動回転されて、押印ハブ41の外周面に形成された凸版にインクが供給される。
尚、郵便物Pが押印ハブ41とプラテンローラ6との間のギャップを通過する際、郵便物Pの厚さに応じてプラテンローラ6が弾性変形し、郵便物Pの厚さ変化に対応する。これにより、厚さの異なる郵便物Pに対して、常に十分な押付力を作用させることができ、郵便物Pの表面に消印を確実且つ明瞭に押印できる。
本実施の形態の押印機構40についても、上述した第1の実施の形態の搬送機構1、および第2の実施の形態の方向変換機構30と同じ条件で、複数通の郵便物Pを投入して通紙試験を実施した。この際、オペレータが目視により郵便物Pに押印された消印の状態を検査し、正常に消印が押印されていない郵便物Pを欠陥有りとしてカウントし、欠陥率を測定した。欠陥有りの郵便物Pとして、消印に欠けを生じているものや、形状がいびつに歪んだものがある。
つまり、図4に示した各従動ローラS11〜S19、S21〜S29をプラテンローラ6として押印機構40にセットし、上述した厚さおよび重さを有する1000通の郵便物Pを投入し、欠陥率を調べた。言うまでもなく、各従動ローラの幅は30[mm]にした。試験の結果を図12および図13に示す。尚、図12、13において、欠陥率が10[%]を超えるものに関しては、実用に耐えないものと判断し、グラフ上にデータを記載する代りに×を記載した。
以下、この試験結果について考察する。
図12に示すように、7つの従動ローラS12、S13、S14、S15、S16、S17、S18を用いた場合の欠陥率は0[%]となっており、良好な結果を示している。また、従動ローラS11は、他のローラと比較してゴム21の肉厚が薄く且つスポンジ22の硬度が低い(柔らかい)ため、薄い郵便物に対してのみ押印不良が生じたものであり、欠陥率が5[%]となっている。
これに対し、従動ローラS19は、ゴム21の肉厚が6[mm]であり、且つスポンジ22の硬度が50であり、本発明の条件を満たしていない。このため、従動ローラS19を用いた場合、比較的厚い郵便物Pを通紙する際に、従動ローラS19が郵便物Pに追従変形できなくなり、ジャムを生じてしまった。よって、従動ローラS19を用いた場合の欠陥率は、10[%]を超えてしまっている。
以上のことから、スポンジ22の肉厚t2が最大厚さの郵便物Pの1.8倍以上の厚さを有し、ゴム21の肉厚t1がスポンジ22の肉厚t2の1/2以下であることが、良好な押印を行なうために必要であることが分る。
また、比較例として、図7に示した搬送機構100と同様に、プラテンローラ6を押印ハブ41にピンチ圧接せしめた構造を押印機構に採用し、上述した郵便物Pの通紙試験を実施したところ、図12にP1〜P3で示す結果が得られた。
これによると、全てのローラP1〜P3に関し、その押付力に関わらず、良好な押印ができなかった。すなわち、ローラP1、P2を用いた際には、ローラの跳ね上がりを生じ、印影に欠けを生じ、欠陥率が10[%]を超えてしまった。また、押付力を強くしたローラP3を用いた際にも、欠陥率が5[%]となった。
つまり、郵便物Pに対する良好な押印を実現するためには、上述した第3の実施の形態の押印機構40のように、上述した構造のプラテンローラ6を押印ハブ41に対して所定のギャップを介して固定的に配置することが重要であることが分る。
また、図13に示すように、動摩擦係数の比較的低いゴム材料を使用した従動ローラS21〜S29をプラテンローラ6として用いた場合、ゴム21の肉厚およびスポンジ22の硬度を上述した従動ローラS11〜S19と同じ値に設定しても、欠陥率が全体的に大きくなってしまった。これは、従動ローラの動摩擦係数が低いと、郵便物Pとの間に十分な搬送力が得られなくなり、押印ハブ41と郵便物Pとの間に滑りを生じてしまうことが原因である。押印ハブ41と郵便物Pとの間に滑りを生じると、印影が郵便物Pの搬送方向に延びて歪んでしまう。従動ローラS29に至っては、他のローラと比較してゴム21の肉厚が大きく且つゴム21の硬度が高いため、押印ハブ41との間に郵便物Pを受け入れることができずにジャムを生じてしまった。
発明者等は、従動ローラ6と郵便物Pとの間の相対速度差が200[mm/s]以下で動摩擦係数が0.7以上となるゴム材料をゴム21として使用した場合に、良好な押印を実現できることを確認した。
次に、上述した試験の結果、良好な押印が実現できた従動ローラS11〜S18について、複数通の郵便物Pを500時間連続して通紙する耐久試験を実施した。
この耐久試験の結果、スポンジ22の硬度が他の従動ローラと比べて硬い従動ローラS17、S18を押印機構40にセットした際に、以下のような不具合を生じた。従動ローラS17を用いた場合、試験開始から約100時間経過したとき、押印ハブ41の回転軸が折れた。また、従動ローラS18を用いた場合、試験開始から約80時間で押印ハブ41の回転軸が折れた。また、このとき、1000通に1通の割合で、特に厚さが0.2〜0.4[mm]の郵便物Pが破れてしまうという問題が発生した。これは、スポンジ22が硬すぎるために、押印ハブ41と従動ローラとの間に郵便物Pが突入する際の衝撃を緩和できないことが原因である。
また、ゴム21の肉厚が他のローラと比較して厚い(6[mm])従動ローラS13、S16をプラテンローラ6として用いた場合、押印ハブ41の回転軸が折れることはなかったが、5000通に1通の割合で、厚さが3〜6[mm]の郵便物Pが破れる不具合を生じた。これは、ゴム21の肉厚を厚くしたことで、従動ローラの硬度が高くなったことが原因である。従動ローラS11、S12、S14、S15では、上述した耐久試験を500時間実施したところ、押印機構40の各部における損傷や郵便物Pの損傷などは認められなかった。つまり、これら4種の従動ローラS11、S12、S14、S15が良好な押印を実現するための条件を満たしているという結果になった。
よって、厚さの異なる郵便物Pを連続して搬送して消印を押印する場合、前述した条件を満たすプラテンローラ6を押印ハブ41に対して固定配置することで、印影の欠けや歪みを防止でき、良好な押印を実現できることが分った。
さらに、本発明者等は、スポンジ22の引き裂き強度と耐久性の関係を調べるため、以下の耐久試験を実施した。すなわち、上述したように良好な反転性能が得られた4種の従動ローラS11、S12、S14、S15に関し、スポンジ22をJIS K 6254圧縮永久ひずみが4[%]以下でJIS K 6252引き裂き強度が8[kN/m]以上の(株)協和技研製LLラバーAタイプのスポンジ22’に替えた従動ローラS11’、S12’、S14’、S15’を用意した。そして、これら従動ローラS11’、S12’、S14’、S15’を押印機構40に組み込んで複数通の郵便物Pを1000時間連続して処理する耐久試験をそれぞれ実施した。尚、この際、比較のため、上述した(株)協和技研製LLラバーBタイプのスポンジ22(JIS K 6252引き裂き強度;2[kN/m])を用いた従動ローラS11、S12、S14、S15についても1000時間の耐久試験を実施した。
この耐久試験の結果、500時間経過した時点で、両タイプともに全ての従動ローラについて郵便物Pの破損や機構の破損は生じなかった。つまり、この耐久試験で調べたスポンジ22、22’に関しては、500時間の耐久試験において問題は生じなかった。しかし、(株)協和技研製LLラバーBタイプのスポンジ22に関しては、500時間を経過した時点で、従動ローラS11、S12のスポンジ部分にクラックが生じた。また、これら2つの従動ローラS11、S12に関しては、700時間経過した時点でローラの形状が変形し円形を保持できなくなり、厚さが0.3[mm]以下の郵便物Pに対して正常な印影を形成することができなくなった。これに対し、(株)協和技研製LLラバーAタイプのスポンジ22’に関しては、全ての従動ローラについて1000時間経過してもクラックの発生もなく、ローラの変形もなかった。
クラックを生じ且つ変形を生じた従動ローラS11、S12は、同じタイプの他のローラS14、S15と比べて、スポンジ22の硬度が低い。スポンジの硬度が低いと、引き裂き強度も弱くなる傾向にある。つまり、クラックおよび変形の原因は、引き裂き強度にあり、引き裂き強度が低いスポンジはクラックや変形を生じ易いと言える。
よって、上述した耐久試験により、従動ローラのスポンジ22として、JIS K 6252引き裂き強度が8[kN/m]以上のスポンジを用いれば、より耐久性を向上できることが分った。尚、スポンジ22の材料として、この他に、イノアックコーポレーション製ポリオレフィンフォーム材PE−ライトRLシリーズや北辰工業(株)製ウレタンスポンジNo,15などを用いることが有効である。
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
例えば、上述した実施の形態では、厚さの異なる郵便物Pを処理する機構に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、厚さの異なる通帳などの帳票類を処理する機構に本発明を適用しても良い。
また、上述した各実施の形態で説明した従動ローラ6の各層の材料、および接着剤は、これに限るものではなく、特許請求の範囲に記載した条件を満たすものであれば良く、任意に変更可能である。
1…搬送機構、1a…筐体、2…搬送路、4…駆動ローラ、5…ニップ、6…従動ローラ(プラテンローラ)、6a…回転軸、21…ゴム、22…スポンジ、23…芯金、30…方向変換機構、35…搬送機構、40…押印機構、41…押印ハブ、43…インク供給ローラ、P…郵便物、S11〜S19、S21〜S29…従動ローラ、T…搬送方向。